説明

水稲用肥料及び水稲栽培方法

【課題】米粒におけるタンパク値やアミロース値を低下させることができる水稲用肥料及び水稲栽培方法を提供すること。
【解決手段】亜燐酸マグネシウムを含むことを特徴とする水稲用肥料。本発明の水稲用肥料は、米粒におけるタンパク値やアミロース値を低下させることができる。その結果、米粒の食味が向上する。また、本発明の水稲用肥料は、実を肥大化させ、米の収量を向上させる効果も奏する。本発明の水稲用肥料としては、例えば、亜燐酸マグネシウムの水溶液が挙げられる。この場合、亜燐酸マグネシウムの濃度は、例えば、0.1〜100g/Lとすることができる。上述した水稲用肥料を水稲の葉面に散布することを特徴とする水稲栽培方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水稲の栽培に用いられる水稲用肥料及び水稲栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水稲用肥料として、各種成分を配合したものが用いられてきた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−39253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米の品質を向上させるには、米粒におけるタンパク値やアミロース値を低下させる必要がある。従来の水稲用肥料は、タンパク値やアミロース値を低下させる効果において十分ではなかった。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、米粒におけるタンパク値やアミロース値を低下させることができる水稲用肥料及び水稲栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水稲用肥料は、亜燐酸マグネシウムを含むことを特徴とする。本発明の水稲用肥料は、有効成分として、亜燐酸マグネシウムを含むことにより、水稲に使用した場合、米粒におけるタンパク値やアミロース値を低下させることができる。その結果、米粒の食味が向上する。よって、本発明の水稲用肥料は、米粒におけるタンパク値やアミロース値の低下、及び食味の向上を目的として使用することができる。
【0006】
また、本発明の水稲用肥料は、水稲の光合成を増進することにより、実を肥大化させ、米の収量を向上させる効果(増収効果)も奏する。よって、本発明の水稲用肥料は、実の肥大化、及び増収を目的として使用することができる。
【0007】
本発明の水稲用肥料としては、例えば、液状の水稲用肥料が挙げられる。液状の水稲用肥料としては、例えば、亜燐酸マグネシウムの水溶液が挙げられる。この亜燐酸マグネシウムの水溶液での、亜燐酸マグネシウムの濃度は、使用時(水稲に散布するとき)において、例えば、0.1〜100g/L(好ましくは1〜60g/L)とすることができる。亜燐酸マグネシウムの濃度を上記の範囲内とすることにより、上述した効果(タンパク値やアミロース値の低下、増収効果)が一層顕著になる。
【0008】
また、本発明の水稲用肥料は、例えば、製造時や販売時(使用時以外)においては、上述した濃度範囲よりも、亜燐酸マグネシウムの濃度が高い水溶液であってもよい。この場合、例えば、使用時に水で希釈して、亜燐酸マグネシウムの濃度を、上述した濃度範囲内にすることができる。その希釈倍率は、例えば、8〜250倍とすることができる。
【0009】
本発明の水稲用肥料の剤型は、液状の他にも、粉末、又は固形物であってもよい。この場合、使用前に、粉末、又は固形物である水稲用肥料を水等の溶媒に溶かし、液状の水稲用肥料にしてから、水稲に散布することができる。
【0010】
本発明の水稲用肥料の使用方法としては、葉面散布が好ましい。また、本発明の水稲用肥料は、亜燐酸マグネシウムの他に、各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明の水稲栽培方法は、上述した水稲用肥料を水稲の葉面に散布することを特徴とする。本発明の水稲栽培方法により、米粒におけるタンパク値やアミロース値を低下させ、米粒の食味を向上させることができる。また、本発明の水稲栽培方法は、実を肥大化させ、米の収量を向上させる効果(増収効果)を奏する。
【0011】
本発明の水稲栽培方法で使用する水稲用肥料としては、例えば、液状の水稲用肥料が挙げられる。液状の水稲用肥料としては、例えば、亜燐酸マグネシウムの水溶液が挙げられる。この亜燐酸マグネシウムの水溶液における亜燐酸マグネシウムの濃度は、例えば、0.1〜100g/L(好ましくは1〜60g/L)とすることができる。亜燐酸マグネシウムの濃度を上記の範囲内とすることにより、上述した効果(タンパク値やアミロース値の低下、増収効果)が一層顕著になる。
【0012】
本発明の水稲栽培方法において、水稲用肥料の散布量は、水田1000m2あたりの亜燐酸マグネシウムの散布量が1〜1000gとなる量であることが好ましく、亜燐酸マグネシウムの散布量が10〜100gとなる量であることがより好ましく、亜燐酸マグネシウムの散布量が20〜70gとなる量であることがさらに好ましい。亜燐酸マグネシウムの量が上記の範囲内となることにより、上述した効果(タンパク値やアミロース値の低下、増収効果)が一層顕著になる。
【0013】
なお、本発明の水稲栽培方法で使用する水稲用肥料における有効成分(亜燐酸マグネシウム)の濃度、水稲用肥料の散布量等は、上述した範囲が好ましいが、水稲用肥料を散布する時期、期間、水稲の種類等に応じて適宜設定できる。
【0014】
前記水稲の種類は特に限定されない。水稲の種類として、例えば、ジャポニカ種等が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0016】
1.水稲用肥料A〜Cの製造
濃度が1.0g/Lである亜燐酸マグネシウム水溶液を調製し、これを水稲用肥料Aとした。また、濃度が2.0g/Lである亜燐酸マグネシウム水溶液を調製し、これを水稲用肥料Bとした。また、濃度が10g/Lである亜燐酸マグネシウム水溶液を調製し、これを水稲用肥料Cとした。
【0017】
さらに、比較例として、濃度が1.0g/Lである燐酸マグネシウム水溶液(水稲用肥料R1)、濃度が2.0g/Lである燐酸マグネシウム水溶液(水稲用肥料R2)、濃度が10g/Lである燐酸マグネシウム水溶液(水稲用肥料R3)を調製した。
【0018】
なお、水稲用肥料A〜Cの調製には、高濃度の亜燐酸マグネシウム水溶液であるトップスコア・マグ(晃栄化学工業株式会社製、登録商標)を用いることができる。
2.水稲栽培方法の実施
水稲用肥料Aを、噴霧器を用いて、出穂始めから、2〜3回、水稲の葉面に散布した。水稲の種類は、「ゆめぴりか」である。水稲用肥料Aの1回あたりの散布量は、水田1000m2あたりの亜燐酸マグネシウムの散布量が26gとなる量とした。なお、水稲用肥料Aの散布以外の点では、周知の方法で水稲を栽培した。
【0019】
また、水稲用肥料B、C、R1〜R3についても、上と同様に散布を行った。このとき、水稲用肥料B、C、R1〜R3の1回あたりの散布量は、水稲用肥料Aの場合と同様とした。
【0020】
水稲用肥料A〜C、及び水稲用肥料R1〜R3を散布した水稲について、それぞれ、タンパク値、アミロース値、水田10a当りの収量を評価した。また、水稲用肥料を散布していない水稲についても、同様に評価した。なお、タンパク値とは、米粒においてタンパク質が占める比率(単位は重量%)である。また、アミロース値とは、米粒においてアミロースが占める比率(単位は重量%)である。タンパク値やアミロース値は、静岡製機株式会社製のVPA−5500X−ES−BRを用いて測定した。
【0021】
その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1に示すように、水稲用肥料A〜Cを散布した水稲から収穫された米粒におけるタンパク値やアミロース値は、顕著に低くなった。また、水稲用肥料A〜Cを散布した場合の収量は顕著に多くなった。
【0024】
一方、水稲用肥料を散布せずに栽培した水稲(表1における「無散布」)から収穫された米粒では、水稲用肥料A〜Cを散布した場合に比べて、タンパク値やアミロース値が高かった。また、米の収量も、水稲用肥料A〜Cを散布した場合に比べて少なかった。
【0025】
また、水稲用肥料R1〜R3を散布した水稲から収穫された米粒では、水稲用肥料A〜Cを散布した場合に比べて、タンパク値が高かった。また、米の収量も、水稲用肥料A〜Cを散布した場合に比べてやや少なかった。
【0026】
また、水稲用肥料A〜Cを散布した水稲、水稲用肥料R1〜R3を散布した水稲、及び水稲用肥料を散布しなかった水稲について、官能評価(人が試食した際の感覚)により食味を評価したところ、水稲用肥料A〜Cを散布した水稲における食味は、他の水稲における食味よりも優れていた。また、水稲用肥料A〜Cは、水稲の病気を予防する効果を有する。
【0027】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、水稲用肥料A〜Cにおける亜燐酸マグネシウム濃度は、使用状況等に応じて適宜変更できる。例えば、水稲用肥料における亜燐酸マグネシウムの濃度は、60g/Lであってもよい。また、水稲用肥料A〜Cには、必要に応じて、各種添加剤を添加してもよい。
【0028】
また、水稲用肥料A〜Cの散布量は、使用状況に応じて適宜変更できる。また、水稲用肥料A〜Cを散布する水稲として、他の種類の水稲を用いても、略同様の効果を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜燐酸マグネシウムを含むことを特徴とする水稲用肥料。
【請求項2】
請求項1記載の水稲用肥料を水稲の葉面に散布することを特徴とする水稲栽培方法。