説明

水稲育苗培土

【課題】持ち運び作業が容易に行え、かつ流亡しづらく播種機械への適応性を具備し、さらに健全な育苗を可能とする水稲育苗培土の提供。
【解決手段】ガラス質発泡体および少なくとも1種の他の資材を含む水稲育苗培土。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水稲育苗培土に関する。
【背景技術】
【0002】
水稲育苗培土として、黒土や赤土をはじめとする山土を主たる成分として混練・造粒したものが既に普及している。しかしながら、山土は有限であるうえに、その採取自体が環境破壊に繋がるため、将来的にその供給が困難になる可能性が高い。そのため、山土に代わる永続的かつ環境保全に配慮した資材が求められている。
【0003】
また、水稲育苗培土には、その軽量化が望まれると同時に播種機械への適応性が求められているところ、山土を造粒して得られる培土(造粒培土)は播種機械による播種作業への適応性は高いが、比重が約1.2と重く、持ち運び作業が困難である。
【0004】
なお、播種作業は、
・培土(床土)の育苗箱への充填、
・種籾の播種、
・灌水、
・培土(覆土)の充填
の一連の作業工程からなり、播種機械を用いた播種作業においては、これらの作業が作業ラインにより全自動でスムーズになされることが好ましい。
【0005】
上記希求されている事項のうち、軽量化については、ピートモスやココピート、バーミキュライトなどの軽量保水性資材を用いることによって改善される(特許文献1)。しかしながら、これらの軽量保水性資材のみで製造した水稲育苗培土は、培土ホッパーでの圧密がかかりづらく供給に難があるといった点において播種機械適応性が不十分である。また、従来の水稲育苗培土には、透水性が悪いことに起因して育苗時に根腐れを生じるという欠点や、灌水不良になるといった問題もある。
【0006】
また、透水性を高める軽量資材としてパーライト、籾殻薫炭、木炭などがある。しかし、これらの軽量資材は重量が不十分であり、育苗時の灌水によって流亡しやすいという欠点がある。粉状化した活性アルミナ、シリカゲル、焼成ゼオライト、合成ゼオライト、多孔質ケイ酸カルシウム水和物などの多孔性物質(特許文献2または3)についても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−313105号公報
【特許文献2】特開平5−316873号公報
【特許文献3】特開平11−137074号公報
【特許文献4】特開昭59−92944号公報
【特許文献5】特開昭61−6141号公報
【特許文献6】特開平11−236232号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】http://www.supersol.jp/sol-k/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、持ち運び作業が容易に行え、かつ流亡しづらく播種機械への適応性を具備し、さらに健全な育苗を可能とする水稲育苗培土が希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み、本発明者らは、水稲育苗培土に用いる資材について検討したところ、ある種のリサイクル資材が上記課題の解決に資するものである可能性があることを見出し、さらに鋭意研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、少なくとも以下の発明に関する:
(1)ガラス質発泡体および少なくとも1種の他の資材を含む水稲育苗培土。
(2)少なくとも1種の他の資材が、造粒培土および/または軽量資材である前記水稲育苗培土。
(3)軽量資材が、ピートモス、ココピート、バーミキュライト、パーライト、籾殻薫炭、活性炭および木炭から選択される前記(2)の水稲育苗培土。
【0011】
(4)ガラス質発泡体の粒径が1mm以上6mm以下である前記(1)〜(3)のいずれかの水稲育苗培土。
(5)ガラス質発泡体の配合割合が10〜50容量%である前記(1)〜(4)のいずれかの水稲育苗培土。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかの水稲育苗培土を用いて育苗された水稲苗。
【0012】
本発明の水稲育苗培土の一つの成分であるガラス質発泡体のうちのある種のものは、土木・建築分野のほか、その通気性・透水性の高さを利用した無機質土壌改良材や保水性の高さを利用した人工土壌資材等として、緑化分野あるいは農業分野においても用いられている(非特許文献1)。しかしながら、ガラス質発泡体が、通気性・透水性および保水性のバランスを取りやすく、とくに水稲育苗培土において好適に用いられることについては、これまで知られていなかったのである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水稲育苗培土は、適度な重量を有する(同一容量の造粒培土の約40%)ため、持ち運び作業、育苗および播種機械による播種作業に適するばかりでなく、ガラス由来のリサイクル資材を用いるため環境保全に資するといった格別な効果を奏する。
【0014】
また、本発明の水稲育苗培土は、全育苗期間全般にわたり、各資材が分離したり灌水によって流亡したりすることがなく、水稲苗の生育に支障をきたさず、健全な水稲苗の育苗を可能にする。
さらに、本発明の水稲育苗培土は、田植え機に搭載するために育苗箱から分離された際に、崩壊や苗の脱落が生じずにロール形成が可能であり、ハンドリングが一層容易であるといった効果も併せて奏する。
【0015】
また、本発明の水稲育苗培土を用いて育苗された水稲苗は、田植え機に適合し、定植の作業性は従来の培土で育苗した苗と遜色がない。また、定植後の浮き苗や欠株についても、従来の培土で育苗した苗と同様である。
【0016】
理論に拘束されるものではないが、ガラス質発泡体が、比重、大きさ、形状、通気性および形状保持性において水稲育苗培土の資材として好適であるため、本発明の水稲育苗培土は上記のような格別な効果を奏するものと推察される。このことは、同様に無機質発泡体の性状を有するバーミキュライトと比較することによって、より明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の水稲育苗培土の育苗性能を造粒培土と比較して示す図である。各写真は、上段は播種後10日目(平成22年12月6日)における地上部生育状況を比較的微視的に示し、下段は播種後18日目(平成22年12月14日)における地上部生育状況を側面から示す。上段・下段ともに、左から順に本発明の水稲育苗培土を床土および覆土の両方に用いた区、本発明の水稲育苗培土を床土のみに用いた区、および造粒培土を用いた区をそれぞれ示す。
【図2】本発明の水稲育苗培土の育苗性能をロール形成した状態により示す図である。播種後42日目(平成23年1月7日)における、左から順に本発明の水稲育苗培土を床土および覆土の両方に用いた区、本発明の水稲育苗培土を床土のみに用いた区、および造粒培土を用いた区のロール形成をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、とくに他の記載がない限り「%」は容量%を示す。
また、本明細書において「資材」とは、他に記載がない限り、ある用途に用いられる物品・材料のうち典型的なものを表わす。本明細書において「軽量資材」とは、ある特定の用途に用いられる資材のうち比較的軽量であるものを表わす。
【0019】
(1)ガラス質発泡体
(種類)
本明細書において「ガラス質発泡体」とは、ガラスビン等の廃ガラスを用いて製造された内部に気泡を有する資材を意味する。
本発明において用いられるガラス質発泡体は、典型的には廃ガラスの破砕・粉砕および焼成発泡を含む製造方法によって製造される:
・粒度選別、および
・添加材(炭酸塩粉の少なくとも1種等)との混合。
【0020】
本発明において用いられるガラス質発泡体は、より具体的には以下のような製造方法によって製造される:
・ソーダ石灰ガラス粉末に3重量%以上のジルコニウム、チタン等の遷移金属化合物と0.5重量部以上のアルカリ土類金属化合物を添加混合し、加熱する方法(特許文献4)、
・発泡材を硝子粉に混入して造粒して成る原料ペレットを筒状をなす竪型焼却炉内に連続的に投入し、加熱発泡することにより粒状泡硝子を連続焼成する方法(特許文献5)、
・ガラス質廃材を粉砕して得られる0.21mm以上2.38mm以下の粒度分布を有する粗粉砕ガラス粉96重量%以下と0.21mm未満の粒度分布を有する微粉砕ガラス粉4重量%以上とを配合して成るガラス質配合粉に、該ガラス質配合粉に対して0.1〜3重量%の炭化珪素を添加、混合して成る混合粉をガラスの軟化点以上に加熱焼成し、次で冷却する方法(特許文献6)。
本発明において用いられるガラス質発泡体として、特許文献6に記載されたガラス質発泡体の製造方法によって製造されたガラス質発泡体は好適である。
【0021】
(大きさ)
本発明においてガラス質発泡体の粒径はとくに限定されないところ、粒径が1mm以上6mm以下であるガラス質発泡体を用いた本発明の水稲育苗培土は好ましい。ガラス質発泡体の粒径を1mm以上とすることにより培土の透水性およびpHが好適に維持され、ガラス質発泡体の粒径を6mm以下とすることによって育苗培土の播種機械へ適合性と資材の均等な混合がより適切に達成される。
【0022】
(比重)
本発明においてガラス質発泡体の比重はとくに限定されないところ、仮比重が0.4〜1.0であるガラス質発泡体を用いた本発明の水稲育苗培土は好ましい。仮比重を0.4以上とすることにより播種機械への適合性および育苗期間中の根上りや種もみの露出をより適切に抑えることができる。また、仮比重を1.0以下とすることにより、育苗培土全体の重量を適切に低減することが容易になる。本発明の水稲育苗培土において、ガラス質発泡体の仮比重が0.4〜0.7であるものはより好ましく、0.4〜0.6であるものは一層より好ましい。
【0023】
(量)
本発明において用いられるガラス質発泡体の量(配合割合)はとくに限定されないところ、同配合割合が10〜50容量%であるものは一般に好ましく、15〜40容量%であるものはより好ましく、20〜30容量%であるものは一層より好ましい。
【0024】
(気泡の形状)
本発明において、ガラス質発泡体の気泡の形状は限定されず、開放気泡(他の気泡または外部と相互に連結しているもの。連続気泡と呼ばれることもある。)および独立気泡(他の気泡と連結せず。壁によってすべて囲まれているもの。)のいずれであってもよい。
【0025】
本発明において用いられるガラス質発泡体として、廃ガラス粉砕粉を発泡剤と混合し、焼成してできる軽量発泡資材であるガラス質発泡体(特許文献6)であるスーパーソル(登録商標)は好適に用いられる。スーパーソル(登録商標)はφ2〜75mmの不定形塊状の資材で、絶乾比重は0.3〜1.6、吸水率は5〜60%であるところ、土木・建築分野のほか、通気性・透水性の高さを利用した無機質土壌改良材や保水性の高さを利用した人工土壌資材等として、緑化分野あるいは農業分野においても用いられている(非特許文献1)。しかしながら、スーパーソル(登録商標)のようなガラス質発泡体が、通気性・透水性および保水性のバランスを取りやすく、とくに水稲育苗培土において好適に用いられることついては、これまで知られていなかった。
スーパーソル(登録商標)は廃ガラスを100%の原料としているため、環境保全の面からも好ましい。
【0026】
(2)他の資材
本発明の水稲育苗培土は、ガラス質発泡体とともに少なくとも1種の他の資材を用いる。かかる少なくとも1種の他の資材として、造粒培土および/または軽量資材が例示される。
また、pHを調整してもみ枯細菌病やピシウム属菌等による苗立枯病などの発病を低減するために硫酸や硫酸塩、リン酸、リン酸塩などのpH調整剤を配合してもよい。
本発明の水稲育苗培土に含まれる他の資材として、各種肥料も好ましい。
【0027】
造粒培土としては、山土を造粒して得られる通常のものを用いることができる。
【0028】
本発明の水稲育苗培土に用いられる軽量資材として、ピートモス、ココピートおよびバーミキュライト等の軽量保水性資材、ならびにパーライト、籾殻薫炭、活性炭および木炭等の透水性を高める軽量資材等を例示することができる。かかる水稲育苗培土として、ガラス質発泡体およびピートモスを含む本発明の水稲育苗培土は好ましく、ガラス質発泡体、ピートモスおよび活性炭を含む本発明の水稲育苗培土はより好ましい。
【0029】
これらの軽量資材の配合割合はとくに限定されないところ、同配合割合が50〜90容量%である本発明の水稲育苗培土は好ましい。
ガラス質発泡体および軽量資材を含む本発明の水稲育苗培土において、ガラス質発泡体および軽量資材の配合量がそれぞれ10〜50容量%および50〜90容量%であるものは好ましく、15〜40容量%および60〜85容量%であるものはより好ましい。
【0030】
ガラス質発泡体、ピートモスとともに活性炭を含む本発明の水稲育苗培土は好ましい。ガラス質発泡体、ピートモスおよび活性炭の配合量が、それぞれ25容量%、50容量%および25容量%である水稲育苗培土は、より好ましい。
【0031】
軽量資材として、ピートモスを配合した本発明の水稲育苗培土は好ましい。ピートモスを配合することによって、ガラス質発泡体に混入している場合がある炭酸塩によるpHに対する影響を低減することができる。ガラス質発泡体の配合割合と等量以上のピートモスを配合した本発明の水稲育苗培土はより好ましく、水稲育苗培土のpHが4.5〜5.5に維持されたものは一層より好ましい。培土のpHを適切に維持することによって、もみ枯細菌病やピシウム属菌等による苗立枯病などの発病を低減することができる。
上記軽量資材とともに造粒培土を含む本発明の水稲育苗培土は、より好ましい。かかる水稲育苗培土として、ガラス質発泡体、ピートモス、活性炭および造粒培土を含む本発明の水稲育苗培土はとくに好ましい。ガラス質発泡体、ピートモス、活性炭および造粒培土の配合量がそれぞれ20〜30容量%、30〜60容量%、10〜20容量%および1〜15容量%である水稲育苗培土は、さらに好ましい。
【0032】
また、本発明の植物育成培地には、適宜バーク堆肥、腐葉土、泥炭、もみがら等の有機質系土壌改良資材、ゼオライト、ベントナイト、けいそう土等無機質系土壌改良資材、ポリエチレンイミン系およびポリビニルアルコール系等の高分子系土壌改良資材等、さらに植物の生育に有用な微生物などを含んでよい。
【0033】
(3)製造方法
本発明の水稲育苗培土は、典型的にはガラス質発泡体と造粒培土および/または軽量資材等の他の資材を添加・混合して製造することができる。適宜pH調整剤および/または肥料の添加を行い、生育に適するように調整する。
ガラス質発泡体は、所望の粒径のものを選択するために、適宜篩にかけたものを用いてよい。例えば、粒径が1mm〜6mmの大きさのものを選択するために、目地の大きさが3mm程度の篩にかけることは好ましい。
【0034】
(4)使用方法
本発明の水稲育苗培土は、従来の培土と同様に用いることができる。すなわち、上記のように製造した水稲育苗培土に催芽もみを播種し、水田に移植するまで温室等で管理して苗を生育させる。
本発明の水稲育苗培土の標準的な使用量は、育苗箱1枚当たりの量として、床土では1kg(2リットル)、覆土では約1.0〜1.2kg(1リットル)でよく、灌水量は約0.8リットルでよい。本発明の水稲育苗培土は、保水性に優れているため、灌水の回数は比較的少なく済み、水分管理の手間が小さいばかりでなく、良好な根張りを達成することができる。
【0035】
本発明の水稲育苗培土は、保水性・透水性のバランスが取りやすく、育苗期間中の水分管理の容易に行うことができる。また、本発明の水稲育苗培土は、育苗期間中の根上りや種もみの露出の問題、および根腐れの問題も回避することができる。
【0036】
本発明の水稲育苗培土は、播種機械への適応性を具備しているため、上記催芽もみの播種のための一連の作業はすべて通常の播種機械によって行うことができる。
【0037】
(5)水稲苗
本発明は、上記いずれかの水稲育苗培土を用いて育苗された水稲苗にも関する。
本発明の水稲苗は、根の生育が造粒培土等によって育苗したものより早いばかりでなく、成苗についても地上部・地下部ともに生育が良好である。とくに、本発明の水稲苗は、根が太く量も多いため、ロール形成性に優れたものとなる。
【0038】
以下に実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、如何なる意味においてもこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
[実施例1]水稲育苗培土の播種機械への適応性
(材料と方法)
下記供試培土を用いた:
(a)造粒培土無し培土(ピートモス:ガラス質発泡体:活性炭=50%:25%:25%)
(b)造粒培土有り培土(ピートモス:ガラス質発泡体:活性炭:造粒培土=50%:25%:15%:10%)
【0040】
ガラス質発泡体として(株)アベックス製のスーパーソル(登録商標)、ピートモスとして一般的な採掘物(カナダ産)および活性炭(粒径1〜6mm、中国産)を、それぞれ用いた。
試験は平成22年9月14日に行った。
上記各供試培土について、播種機械((株)クボタ、SR−8001)を用いて、培土(床土)の育苗箱への充填、種籾の播種、灌水、および培土(覆土)の充填の一連の作業が問題なく行われるかを調査した。
【0041】
(結果・考察)
その結果上記いずれの供試培土も播種機械による上記作業は問題なく行われた。すなわち、本発明の水稲育苗培土は播種機械に適応性を有することが明らかになった。
【0042】
[実施例2]本発明の水稲育苗培土の評価(1)
(材料と方法)
ガラス質発泡体((株)アベックス製のスーパーソル(登録商標))およびピートモス(一般的な採掘物(カナダ産))を所定の割合で混合し、さらに肥料を添加して培土を作製した。同培土について、機械製造の可否、機械播種への適応性およびイネの出芽について調査を行った。
【0043】
播種および機械播種試験は平成23年1月13日に、出芽の調査は平成23年1月26日に、それぞれ行った。また、播種後の管理はガラス温室内として、通常通りの管理を行った。
【0044】
なお、「出芽」以外の各調査項目における各指標の判断基準は以下のとおりであった:
◎:大変良好
○:良好
×:不良
【0045】
「出芽」については、下記の判断基準を用いた:
◎:出芽率80%以上
○:出芽率60%以上80%未満
×:出芽率60%未満
【0046】
(結果・考察)
結果を表1に示す。
【表1】

【0047】
表1に示す結果から、ガラス質発泡体を含む本発明の水稲育苗培土は、いずれの項目においても良好であるかまたは大変良好であると判断された。これに対し、ピートモスのみを用いた場合、通気性が十分でなかったため根腐れが生じた。
また、ガラス質発泡体の配合量としては、培土全体の30〜50容量%がとくに好適であることが明らかになった。
【0048】
[実施例3]本発明の水稲育苗培土の評価(2)
(材料と方法)
ガラス質発泡体((株)アベックス製のスーパーソル(登録商標))、ピートモス(一般的な採掘物(カナダ産))、活性炭(一般的なもの(中国産))および造粒培土(スミリン農産工業株式会社製、商品名:水稲培土)を25:50:15:10の割合(容積比)で混合し、さらに肥料(緩効性窒素肥料)およびpH調整剤を添加して本発明の水稲育苗培土を作製した。同培土および市販の造粒培土について、各種物性、田植え機への適応性および育苗性能について調査を行った。
本発明の水稲育苗培土は、床土および覆土の両方または床土のみに用いた。
なお、本発明の水稲育苗培土の製造は平成22年11月1日に、播種は平成同年11月26日に、育苗性能の調査は同年12月6日(播種後10日目)、同年12月24日(播種後18日目)および平成23年1月7日(播種後42日目)に、田植え機適応性試験は平成23年1月7日に、それぞれ行った。また、播種後の管理はガラス温室内として、通常通りの管理を行った。
【0049】
(結果・考察)
上記本発明の水稲育苗培土の各種物性および育苗性能についての結果を、それぞれ表2および表3に示す。
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
本発明の水稲育苗培土の比重は0.5であった(表2)。この比重は造粒した従来の育苗培土の約40%であった。苗箱重は3.0kgと市販の造粒培土を用いた場合の70%未満であり(表3)、軽量であるため運搬性が向上した。
また、本発明の水稲育苗培土は播種機械適応性にも問題はなく、良好であった(表2)。
さらに、本発明の水稲育苗培土を用いて育苗された水稲苗は、田植え機に適合し、定植の作業性は従来の培土で育苗した苗と遜色がなかった。また、定植後の浮き苗や欠株についても、従来の培土で育苗した苗と同様で問題はなかった。
【0052】
育苗性能については、本発明の水稲育苗培土を用いた場合、全育苗期間全般にわたり、各資材が分離することがなく、水稲苗の生育に支障をきたさず、健全な水稲苗の育苗が可能であった。
また、本発明の水稲育苗培土を用いた場合、苗の初期生育が早く、とくに床土および覆土の両方に同培土を用いた場合に顕著であった(表3、図1)。
【0053】
成苗についても、茎が太く、地上部の生育は良好であった(表3)。また、根が白く太く、根量も多かったため、市販の造粒培土を用いた場合に比較して根張りロール形成が格段に優れていた。(表3、図2)。
【0054】
[比較例]ガラス質発泡体に代えてバーミキュライトを添加した水稲育苗培土
(材料と方法)
バーミキュライト(ベルミテック株式会社製、商品名)、ピートモス(一般的な採掘物(カナダ産))および活性炭(一般的なもの(中国産))を40:40:20の割合(容積比)で混合し、さらに肥料を添加して水稲育苗培土(以下「対照育苗培土」という)を作製した。同対照育苗培土および市販の軽量培土(バーミキュライト、ピートモス、木炭、造粒培土および肥料を配合したもの)ならびに市販の造粒培土について、各種物性、機械播種への適応性および育苗性能について調査を行った。
対照育苗培土は、床土および覆土の両方に用いた。
なお、対照育苗培土の製造は平成21年11月2日に、機械播種試験は同年11月5日に、育苗性能の調査は同年11月27日に、それぞれ行った。また、播種後の管理はガラス温室内として、通常通りの管理を行った。
【0055】
(結果・考察)
各種物性および育苗性能についての結果を表4に示す。
【表4】

【0056】
対照育苗培土によって育苗した苗は、地下部の生育は良好であったが、根上がりや初期の生育のムラが生じるとともに、茎がやや細かった。また、対照育苗培土は、比重が0.35と小さかったため(表4)、機械播種への適応性も不十分であった。
【0057】
(総合考察)
本発明の水稲育苗培土は、播種機械適応性・運搬性が従来の育苗培土に比較してより優れている。
また、本発明の水稲育苗培土は、育苗性能についても問題はなく、健全な水稲苗の育苗が可能である。同培土は、苗の初期生育において優れるばかりでなく地下部の生育にも優れ、ロール形成に優れる。そのため、本発明の水稲育苗培土は田植え機に適合し、定植の作業性は従来の培土で育苗した苗と同等であり、定植された苗の定着性にも問題はない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、持ち運び作業が容易に行え、かつ流亡しづらく播種機械への適応性を具備し、さらに健全な育苗を可能とする水稲育苗培土が提供される。また、本発明は環境保全への貢献もなし得るものである。
したがって、本発明は、培土製造業および高齢化・大規模化する農業等の他の関連産業の発展に資するところ大であるのみならず、環境保全にも大きく寄与するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス質発泡体および少なくとも1種の他の資材を含む水稲育苗培土。
【請求項2】
少なくとも1種の他の資材が、造粒培土および/または軽量資材である請求項1に記載の水稲育苗培土。
【請求項3】
軽量資材が、ピートモス、ココピート、バーミキュライト、パーライト、籾殻薫炭、活性炭および木炭から選択される請求項2に記載の水稲育苗培土。
【請求項4】
ガラス質発泡体の粒径が1mm以上6mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の水稲育苗培土。
【請求項5】
ガラス質発泡体の配合割合が10〜50容量%である請求項1〜4のいずれかに記載の水稲育苗培土。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水稲育苗培土を用いて育苗された水稲苗。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−165657(P2012−165657A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26949(P2011−26949)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(501088590)スミリン農産工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】