説明

水系のための液状増粘剤

水系のための液状増粘剤であって、粘度抑制剤として5〜40重量%の、エトキシル化された、6個〜18個の炭素原子を有するカルボン酸のモノ−および/またはジ−グリセリド、15〜40重量%のポリウレタン会合増粘剤であって、少なくとも1種の有機ポリイソシアナート、少なくとも1種の水溶性ポリエーテルジオールおよび少なくとも1種の疎水性キャッピング剤であって10個〜24個の炭素原子を含有するものの反応によって得られるもの、20〜80重量%の水を含み、有機溶媒、揮発性有機化合物および他の粘度抑制剤を含まないもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、水系のための液状増粘剤であって、ポリウレタン会合増粘剤およびエトキシル化されたグリセリドを含有するもの、および化粧品、ラテックス塗料、水ベースインクおよび印刷ペースト、ペーパーコーティング剤、洗剤等の製造のためのそれらの使用を指向している。
本発明の液状増粘剤は、有利に、有機溶媒、揮発性有機化合物、他の粘度抑制剤を含有せず、容易に水系に取り込まれ、化粧品における使用に許容される。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ポリウレタン会合増粘剤は周知であり、数多くの刊行物に記載されている(US 4,079,028およびUS 4,155,892等。いずれもRohm and Haasに譲渡された)。
それらの特徴は、ウレタン基ならびに親水鎖および疎水鎖が、同時に存在することにある。
それらの、ラテックス塗料のような水ベース系における増粘剤としての使用は、広く行われている。
【0003】
しかし、それらにはいくつかの欠点がある。
それらの疎水鎖が水における急速溶解を妨げるので、それらを乾燥形態で水系に導入することは困難であり、多大なる操作が必要となる。他方において、それらの増粘能により、液状増粘剤として用い得る濃縮度が高い水溶液の製造が妨げられる。
会合ポリウレタン類を含有する、濃縮度が高い増粘組成物を調製する多くの試みが、文献において報告されている。提案されているのは、溶媒および/または界面活性剤の添加;ポリウレタンの分子量の低減;粘度低減剤として作用する特定の化合物の、増粘製剤への導入、である(例えばUS 5,378,756、US 5,425,806、US 5,959,013、US 6,090,876、US 6,150,445を参照)。
【0004】
企図された機能を発揮する一方で、有機溶媒は、潜在的な環境面、安全性および衛生上の問題を頻繁に招来する。
ある界面活性剤、アルコキシル化フェノール等は、毒性面で受け入れられがたい。他のものは、増粘剤の粘度を低減する効果が不十分であり、それは濃縮度が高い、極端に擬塑性(pseudoplastic)な増粘剤の場合にとくにそうであり、不安定な組成物を生成せしめたり、または適用物における物性に悪影響を与える。
溶媒および特定の界面活性剤の使用に関連する環境および毒性問題とともに、従来技術の増粘剤の満足しがたい効果に鑑み、本出願人は、液状増粘剤として会合ポリウレタンをベースとした下記のようなものを与えることを視野に入れながら鋭意研究を重ねた。注ぎ入れることができ、水系への導入が容易であり、効果が高く、経時的安定性を有し、化粧品としての使用に許容され、有機溶媒および揮発性有機化合物を含まないものである。
【発明の開示】
【0005】
発明の開示
水系のための液状増粘剤であって、粘度抑制剤として5〜40重量%の、エトキシル化された、6個〜18個の炭素原子を有するカルボン酸のモノ−および/またはジ−グリセリド、15〜40重量%のポリウレタン会合増粘剤であって、少なくとも1種のポリイソシアナート、少なくとも1種の水溶性ポリエーテルジオールおよび少なくとも1種の疎水性キャッピング剤であって10個〜24個の炭素原子を含有するものの反応によって得られるもの、20〜80重量%の水、を含有し、有機溶媒、揮発性有機化合物および他の粘度抑制剤を含まないものが、上記段落において述べた特性を示すことが、今見いだされた。
【0006】
驚くべきことに、カルボン酸のエトキシル化モノ−および/またはジ−グリセリドであって、6個〜18個の炭素原子を有するものが、通常の界面活性剤より粘度低減剤としてより効果が高い一方、会合ポリウレタンベースの液状増粘剤として極めて良好な増粘効果を示し、極めて好ましい毒性プロフィールを有することが見いだされた。
本発明のとくに有利な側面によれば、上記エトキシル化モノ−および/またはジ−グリセリドは、液状増粘剤の安定化剤としての効果も有する。
【0007】
前記モノ−および/またはジ−グリセリドとして本発明の実施に有用なものは知られていて、例えばUS 3,934,003に記載されている。これらは、例えば、天然のオイル脂肪酸を分画することにより得られる部分グリセリド類とエチレンオキシドとを反応させるか、またはグリセリンをエトキシル化した後、生成物を脂肪酸とともに加水分解することにより調製することができる。
それらは普通、化粧品および医薬の乳化剤、潤滑剤、離型化合物、可塑剤等として用いられている。
化粧品においては、脂肪酸のモノ−および/またはジ−グリセリドは、とくに重用されている。軟化剤成分としても作用するからである。
本発明の脂肪酸のモノ−および/またはジ−グリセリドは、水溶性であり、4〜12モルのエチレンオキシドによってエトキシル化されている。
本発明の好ましい側面においては、前記液状増粘剤は、少なくとも1種の有機ポリイソシアナート、少なくとも1種の水溶性ポリエーテルジオールおよび少なくとも1種の疎水性キャッピング剤であって12個〜24個の炭素原子を含有するものの反応によって得られる会合ポリウレタンを含む。
【0008】
用いることができるポリウレタンの例は、直鎖または分枝のポリウレタンであって、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール(平均分子量として4,000〜14,000を有する)、直鎖または分枝一価アルコールであって10個〜24個の炭素原子を有するものおよびヘキサメチレン−1,6−ジイソシアナート、1−イソシアナートメチル−5−イソシアナート−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、1,6−ジイソシアナート−2,4,4−トリメチルヘキサン、2,6−および2,4−トリレンジイソシアナート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアナートイソシアヌラート、から選択される1種または2種以上のイソシアナート、任意に多価アルコール(トリメチロールプロパン等)の存在下、の反応によって得られる。前記ポリウレタンは、一般に平均分子量として6,000〜30,000を有する。
【0009】
本発明の液状増粘剤は、溶媒、揮発性有機化合物および他の粘度抑制剤を含んでいない。すなわち、当該物質の総含量は1重量%未満である。
前記会合ポリウレタンとして本発明の液状増粘剤に含有されているものは、ニュートンの粘性法則に従うもの(newtonian)であってよく、すなわち、中程度の剪断速度における効果が高く、擬塑性でさえあり、すなわち低い剪断速度における効果が高い。
エトキシル化モノ−および/またはジ−グリセリドが8〜14個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のグリセリドであり、6〜7モルのエチレンオキシドによってエトキシル化されているものは、粘度低減剤として、項活性であり、極端に擬塑性であるポリウレタンの場合においても、とくに好適であることが見いだされた。
【0010】
本明細書において、「極端に擬塑性のポリウレタン」なる表現によって、会合ポリウレタン増粘剤として、調製が疎水性キャッピング剤であって少なくとも16個の炭素原子を含有するものからなされるものを意味する。
液状増粘剤のうち会合化合物を含むものは、通常、水ベースペーパーコーティング剤や水ベースワニスおよび塗料のような、結合剤含有組成物の増粘に用いられる。
好適な結合剤は、乳化結合剤であり、アルキド樹脂、およびラテックス結合剤、例えばポリビニルアセタート、ビニルアセタートおよびアクリレート、および/またはエチレン、および/または塩化ビニル、および/またはスチレン、ポリアクリレートのコポリマーである。
【0011】
本発明の液状増粘剤は、水ベース結合剤含有組成物の増粘に好適であることが明らかになった。
とくに好ましい本発明の液状増粘剤は、予想外なことに、結合剤を含有しない水性組成物においても極めて好適に用いられることが見いだされたものであり、以下を含有する:5〜30重量%の、カプリル酸またはカプリン酸のモノおよび/またはジ−グリセリドであって、約6モルのエチレンオキシドによってエトキシル化されているもの、15〜30重量%の会合ポリウレタンであって、ポリエチレングリコール、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートおよび/または1−イソシアナートメチル−5−イソシアナート−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンならびにC16〜C24の分枝一価アルコール、好ましくはC16またはC20ゲルベット(Guerbet)アルコール、の反応によって得られ、分子量約6,000〜20,000であるもの、および40〜80重量%の水。この好ましい液状増粘剤は、無色、透明であり、経時的に極めて安定であり、増粘した、透明かつ無色の化粧品および洗剤製剤を得るために、有機結合剤がない場合でも有利に用いることができる。
【0012】
本発明の液状増粘剤の調製は、少なくとも1種の有機ポリイソシアナート、少なくとも1種の水溶性ポリエーテルジオールおよび少なくとも1種の疎水性キャッピング剤の反応によって、会合ポリウレタンを得た後、前記ポリウレタンを、適切な量の、6個〜18個の炭素原子を有するカルボン酸のエトキシル化モノおよび/またはジ−グリセリドと混合し、水による量の調整を、混合工程の前または後に行うことによって行うことができる。
前記会合ポリウレタンの調製は、ウレタンの合成に一般に知られた手法に従って行い、好ましくは未反応のイソシアナートが残っていないようにする。
【0013】
水は反応から除く必要がある。水は、イソシアナート官能基と反応するからである。
無水条件とするためには、反応生成物の予備的な乾燥を行う。
反応を行う際には、好ましくは溶媒を用いない。
反応温度の選択は、反応を合理的に速いものとし、ポリマーの粘度を得つつ、望ましくない副反応を回避するように行う。
【0014】
ある好ましい態様においては、本発明の液状増粘剤の調製は、エトキシル化モノ−および/またはジ−グリセリドの添加を、会合ポリウレタンの調製の直後に、溶融形態のままで行う。
上記溶解または無溶媒工程を会合ポリウレタンの調製に用いる場合、ポリグリコールをミキサーに入れ、加熱し、脱水を数時間行う。
真空を解放し、温度を一定にする。
イソシアナートおよび触媒を添加し、好適な反応時間の後、キャッピング剤を添加し、反応せしめる。次に、エトキシル化モノ−および/またはジ−グリセリドを、好ましくは溶融ポリウレタンに添加し、次にポリウレタンを水に分散せしめる。
もしくは、本発明の液状増粘剤を得るためには、適切な量の、乾燥形態の会合ポリウレタン、炭素原子6個〜18個を有するカルボン酸のエトキシル化モノ−および/またはジ−グリセリド、および適切な量の水を混合する。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、液状増粘剤を製造する方法であって、以下の工程を含むものである。a)少なくとも1種の有機ポリイソシアナート、少なくとも1種の水溶性ポリエーテルジオールおよび少なくとも1種の疎水性キャッピング剤であって10個〜24個の炭素原子を含有するものの反応によって、会合ポリウレタンを、好ましくは溶融形態で、得る工程;b)前記ポリウレタンの混合を、好ましくは溶融形態で、0.1〜2.7重量部の、6個〜18個の炭素原子を有するエトキシル化モノおよび/またはジ−グリセリドを0.5〜5.3重量部の水と行う工程。
【0016】
本発明の液状増粘剤がとくに好適なのは、以下のものの調製についてである。化粧品、例えば、シャンプー、ヘア・ローションおよびクリーム、マスク;ラテックス塗料;水ベースペーパーコーティング;クリーナー、とくに家庭用クリーナーとして活性成分として酸を含有しているもの、例えばメタルクリーナー、デスカラント(descalant)、便器用クリーナー、自動ディッシュウォッシャーリンス添加剤等。
本発明の液状増粘剤の特徴は、例外的である低い粘度とともに、高い増粘効果を有することであり、高活性な会合ポリウレタンを含有する場合においても当てはまる。
しかも、本発明のエトキシル化グリセリドによって、安定な水性組成物として、室温における保存の間に分離せず、増粘剤を合成する際の扱いが容易なものを得ることが可能となる。
【0017】

例1〜6 溶融ポリウレタンから調製した液状増粘剤の粘度
例1
反応容器として、内部温度計、攪拌機、冷却器を備えたものに、窒素雰囲気下および室温下にて、254.3gの、平均分子量4,000であるポリエチレングリコールを充填する。
ポリエチレングリコールを溶かし、110℃に加温し、3時間にわたり、真空下にて脱水する。次に温度を75℃に安定させ、反応器の内容物を窒素にて覆う。
【0018】
次に、28.3gの1−イソシアナートメチル−5−イソシアナート−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアナートまたはIPDI)の反応器への添加を、触媒としての2.8gのトリメチロールプロパンおよび0.1gのジラウリル酸ジブチルスズとともに、攪拌しながら行う。
温度を110℃に上げ、反応を進行せしめ、遊離NCO基が滴定による理論値(この例および他の例における測定は、標準法であるASTM D2572に従う)を与えるようにする。
続いて6.8gのIsalchem 123(C12〜C13一級単側鎖アルコール、Condeaより)および7.7gのIsalchem 145(C14〜C15一級単側鎖アルコール、Condea製)を添加する。
1時間の反応後、ポリマーがNCOネガティブであることのチェックを、I.R.スペクトラムによって行う。
【0019】
最後に、溶融ポリマーの希釈を300gのSterol CC 595(PEG−6カプリン−カプリルグリセリド、Cesalpinia Chemicalsより)および400gの脱ミネラル水によって行い、溶媒フリーな液状増粘剤として、約30%のポリウレタン/30%のSterol CC 595/40%の水からなり、20℃におけるBrookfield粘度として7,320 mPa*s(S06; 50rpm)を有するものを得る。
得られた液状増粘剤は無色透明である。
【0020】
例2〜6(比較例)
例1の手順を繰り返す。ただしSterol CC 595を、下記に掲げた非イオン性粘度抑制剤に替え、液状増粘剤として表1に記載の組成および粘度を20℃にて有するものを得た。
粘度抑制剤(商品名=化学的物性、製造者):
Rolfor 123/6.5 =C12〜C13アルコール 6.5 OE、Cesalpinia Chemicals;
Rolfor TR/40 =イソトリデシルアルコール 40 OE、Cesalpinia Chemicals;
Rolfor TR8/L =イソトリデシルアルコール 8 OE、Cesalpinia Chemicals;
Borchigen DFN =p−ヒドロキシビフェニルエトキシル化ベンジル、Borchers。
【0021】
表1に記載した粘度のデータによって、本発明のエトキシル化グリセリドにおける、疎水性に修飾したポリウレタン増粘剤の粘度の低下の度合いは、市販の粘度抑制剤より良好であり、活性成分(ポリウレタン)のパーセントが高い場合にもそうであることが示される。
【0022】
【表1】

【0023】
例7〜14.乾燥形態のポリウレタンから調製した液状増粘剤の粘度
乾燥形態の会合ポリウレタン(ポリウレタンA)の調製:
反応容器として、内部温度計、攪拌機、冷却器を備えたものに、窒素雰囲気下および室温下にて、255.1gの、平均分子量4,000であるポリエチレングリコールを充填する。ポリエチレングリコールを溶かし、110℃に加温し、3時間にわたり、真空下にて脱水する。次に温度を75℃に安定させ、反応器の内容物を窒素にて覆う。
【0024】
次に、28.3gのイソホロンジイソシアナートの反応器への添加を、触媒としての2.8gのトリメチロールプロパンおよび0.1gのジラウリル酸ジブチルスズとともに、攪拌しながら行う。
温度を110℃に上げ、反応を進行せしめ、遊離NCO基が滴定による理論値を与えるようにする。
続いて13.6gのIsalchem 123を添加する。1時間の反応後、ポリマーがNCOネガティブであることのチェックを、I.R.スペクトラムによって行う。
前記会合ポリウレタン(ポリウレタンA)を、固体であり、冷却すると容易に砕けるワックスとして、得る。
【0025】
液状増粘剤の調製:
25gのポリウレタンA25gの粘度抑制剤(表2参照)および50gの水の混合物への添加を、1時間にわたり、激しく攪拌しながら行い、次に液状増粘剤を20°Cに保存する。
上記のもの以外に、粘度抑制剤として下記のものについても評価を行った:粘度抑制剤(商品名=化学的物性、製造者):
Sterol LG 492 =PEG−7グリセリルココエート、Cesalpinia Chemicals;
Rolfor LA 8 =ラウリルアルコール 8 OE、CesalpiniaChemicals;
Emulson AG 7717/A =ポリ−アリールエトキシル化フェノール、Cesalpinia Chemicals;
Sorbilene LH = ポリオキシエチレン(20) ソルビタンモノラウラート、Cesalpinia Chemicals;
Tegodisperse 650 =改質ポリエーテル、Tego。
【0026】
このようにして得られた液状増粘剤に関するデータを表2に示す。
粘度の測定は、Brookfield viscometer RVT-DV-Iを用いて、20℃にて、それぞれの生成物から泡が消えた後に行った。
安定性は月数にて表し、評価はサンプルの均一性を目視にてチェックして行う。
外観の評価も、視覚的に行う。
泡の持続性についても、日数によって表したものを、表2に示す。
当該結果から、本発明のエトキシル化グリセリドは、ポリウレタンAのようなポリウレタン会合増粘剤に対して、高〜中剪断速度において、粘度低減効果を有することが示される。
【0027】
【表2】

【0028】
例15〜20.液状増粘剤の増粘効果
例15
0.3gのポリウレタンAの添加を99.7gのRolflex D148に行った。Rolflex D148は、市販のポリウレタン分散剤の結合剤で、Lamberti SpAからのものである。
【0029】
例16〜20
例7〜11からの液状増粘剤1.2gを、それぞれ、98.8gのRolflex D148に添加した。
【0030】
活性成分であるポリウレタン関連増粘剤のコンテントは、例15〜20の各混合物において、0.3重量%である。
このようにして得た混合物を、それぞれ5分間、600rpmにて攪拌し、20℃にて24時間保存した。
次に粘度曲線の測定を、Physica UDS200 rheometerを用いて、20℃にて行った。
結果を表3にまとめ、低剪断粘度を示す。
粘度のデータから、エトキシル化グリセリドは、ポリウレタンの増粘効果に大きい悪影響を及ぼさないことが示される。
【0031】
【表3】

【0032】
例21.溶融状態の極端に擬塑性である会合ポリウレタンから調製した液状増粘剤の粘度
反応容器として、内部温度計、攪拌機、冷却器を備えたものに、窒素雰囲気下および室温下にて、221.4gの、平均分子量4,000であるポリエチレングリコールを充填する。ポリエチレングリコールを溶かし、110℃に加温し、3時間にわたり、真空下にて脱水する。次に温度を75℃に安定させ、反応器の内容物を窒素にて覆う。
【0033】
次に、16.4gのイソホロンジイソシアナートの反応器への添加を、触媒としての0.1gのジラウリル酸ジブチルスズとともに、攪拌しながら行う。温度を110℃に上げ、反応を進行せしめ、遊離NCO基が滴定による理論値を与えるようにする。
続いて12.1gの2−オクチルデカノールを添加する。1時間の反応後、ポリマーがNCOネガティブであることのチェックを、I.R.スペクトラムによって行う。最後に、溶融ポリマーの希釈を250gのSterol CC 595および500gの脱ミネラル水によって行い、無色透明な液状増粘剤として、25%のポリマー/25%のSterol CC 595 /50%の水からなり、20℃におけるBrookfield粘度として4,070 mPa*s(S05; 50rpm)を有するものを得る。
【0034】
例22〜27.乾燥形態の極端に擬塑性である会合ポリウレタンから調製した液状増粘剤の粘度
ポリウレタン(ポリウレタンB)の調製:
ポリウレタンBの調製は、例21に記載の通りに行ったが、Sterol CC 595および水の添加は行わず、ポリウレタンの単離を、固体で、容易に砕けるワックスとして行った。
【0035】
液状増粘剤の調製:
25gのポリウレタンBを25gの粘度抑制剤(表4参照)および50gの水に、1時間激しく攪拌しながら添加し、次に液状増粘剤を20℃にて保存した。
このようにして得られた液状増粘剤に関するデータを表4に示す。
粘度の測定は、Brookfield viscometer RVT-DV-Iを用いて、20℃にて、それぞれの生成物から泡が消えた後に行った。
安定性は月数にて表し、評価はサンプルの均一性を目視にてチェックして行う。
外観の評価も、視覚的に行う。
泡の持続性についても、日数によって表したものを、表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
表2および表4のデータを比較すると、同一の粘度抑制剤であり、ポリウレタンA(効果を有する媒体であるポリウレタン会合増粘剤)に効果を示すものが、擬塑性がより高いポリウレタン(ポリウレタンB)を用いた場合には同等の効果を示さないが、前記エトキシル化グリセリドは、極めて良好なパフォーマンスをポリウレタンBにも示すことが明らかである。
【0038】
例22、25および26の液状増粘剤の増粘効果の測定
2gの例22、25および26の液状増粘剤を、それぞれ98gの市販のアクリル乳化剤であるNeoCryl XK-90(Avecia NeoResinsより)に添加し、活性成分のコンテントを45%から36%に希釈した。各溶液における増粘剤活性成分のコンテントは0.5重量%であった。
このようにして得られた混合物の攪拌を、5分間、600rpmにおいて行った。このようにして得られた均一な分散物を20℃にて24時間保存した。次に粘度曲線の測定を、Physica UDS200 rheometerを用いて、20℃にて行った。
結果を表5に記載し、低剪断および高剪断粘度(単位mPa*s)を示す。
【0039】
【表5】

【0040】
表4および5のデータから、本発明のエトキシル化グリセリドは、濃縮した組成物の粘度低減効果が最も高い一方、ポリウレタンの増粘効果の維持についても最も優れていることが明らかである。
【0041】
例28〜31.液状増粘剤の調製
例28
反応容器として、内部温度計、攪拌機、冷却器を備えたものに、窒素雰囲気下および室温下にて、214.4gの、平均分子量4,000であるポリエチレングリコールを充填する。ポリエチレングリコールを溶かし、110℃に加温し、3時間にわたり、真空下にて脱水する。次に温度を75℃に安定させ、反応器の内容物を窒素にて覆う。
【0042】
次に、17.9gのイソホロンジイソシアナート(IPDI)および触媒としての0.1gのジラウリル酸ジブチルスズの反応器への添加を、攪拌しながら行う。
温度を110℃に上げ、反応を進行せしめ、遊離NCO基が滴定による理論値を与えるようにする。
続いて17.6gの2−オクチルデカノールを添加する。
1時間の反応後、ポリマーがNCOネガティブであることのチェックを、I.R.スペクトラムによって行う。
最後に、溶融ポリマーの希釈を200gのSterol CC 595、550gの脱ミネラル水によって行い、液状増粘剤として、25%のポリウレタン/20%のSterol CC 595/55%の水からなり、Brookfield粘度として5620 mPa*s(S05; 50rpm)を有するものを得る。
【0043】
例29〜31.
例28に記載の手順に従い、表6に示す試薬を用い、さらに3種類の液状増粘剤の調製を行った。
それらのBrookfield粘度として50rpmにおいて測定したものを、同様に表6に示す。
【0044】
【表6】

1) 水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート
2) ポリウレタン(重量%)/グリセリド(重量%)/水(重量%)
3) 2−オクチルドデカノール
4) 2−ヘキシルデカノール
5) 1−デカノール
【0045】
例28〜31の液状増粘剤の増粘効果
2gの例28〜31からの液状増粘剤それぞれの添加を、98gのNeoCryl XK-90に行った(活性成分のコンテントは45%から36%に希釈された)。各溶液中の増粘剤の活性成分のコンテントは、常に0.5重量%であった。
【0046】
このようにして得た混合物を、それぞれ5分間、600rpmにて攪拌した。0℃にて24時間保存した。このようにして得られた均一な分散物を20℃にて24時間保存した。次に粘度曲線の測定を、Physica UDS200 rheometerを用いて、20℃にて行った。
結果を表7に記載し、低剪断および高剪断粘度(単位mPa*s)を示す。
【0047】
【表7】

【0048】
表7に示したデータから、本発明の粘度抑制剤は、異なるレオロジープロフィールを有する、低剪断速度用の増粘剤から高剪断速度用の増粘剤である、疎水性改質ポリウレタン会合増粘剤の粘度を低減する効果が、非常に優れていることが明らかである。
【0049】
例28および30の液状増粘剤の水中における増粘効果
ここで、下記表8において、水中における増粘性につき、本発明の液状増粘剤を異なるレオロジーを有する、3種の市販の無溶媒会合ポリウレタン増粘剤と比較して示す。
【0050】
【表8】

【0051】
本発明の液状増粘剤のみが、水を顕著に増粘し、透明かつ無色の水溶液を与えることができる。
【0052】
適用例
以下の表においては、活性物質(活性成分)のパーセンテージを、処方した量と異なる場合に示す。
【0053】
シャワークリームの調製
表9に示した成分を混合する。
まず、界面活性剤を水に添加し、次に混合物の増粘を液状増粘剤によって行い、その他の成分を添加する。
ソフトでシルキーなシャワークリームが得られる。pHは生理学的なものである。
【0054】
【表9】

【0055】
デリケートなシャワージェルの調製
表10に示した成分を混合する。
【表10】

【0056】
ニュートンの粘性法則に従う(Newtonian)シャワージェルを得る。酒石酸ココポリグルコースのような解毒性界面活性剤が存在するため、肌に優しい。
液状増粘剤の添加によって、製剤のpHは変わらない。
【0057】
アフター・シャンプーバームの調製
表11に示した成分を混合する。
得られるアフター・シャンプーバームは、小麦プロテインおよびグアーのコンディショニング力とともに、本発明の液状増粘剤の軟らかいタッチを具備する。
増粘剤のフィルミング特性により、髪が保護される。
【0058】
液体クレンジング製品の調製
表12に示した成分を混合する。
簡便かつ同時に効果に優れる製剤が得られる。ファミリーニーズに良好に合致するものである。
LESのコンテントが低く、また、ベタインが存在するため、繊細さ(delicacy)が与えられた製品である。透明度が高く、無色である。
【0059】
【表11】

【0060】
【表12】

【0061】
バームシャンプーの調製
表13に示した成分を混合する。
得られる製品は、界面活性剤混合物の極めて良好な洗浄力と小麦プロテインのコンディショニング力とを併せて有する。
本発明の増粘剤は、デリケートな被膜(film)による保護を髪に与える。当該製剤は高い透明度を有する。
【0062】
デリケートなシャンプーの調製
表14に示した成分を混合する。
得られるシャンプーは、界面活性剤の組み合わせおよび酒石酸のLESに対する解毒作用により、デリケートさに優れたプロフィールを有し、毎日使うことが可能である。
当該製剤は、薄黄色かつ透明である。
【0063】
【表13】

【0064】
【表14】

【0065】
脂髪用のシャンプーの調製
表15に示した成分を混合する。
透明で薄黄色のジェルを得る。
ココポリグルコースが存在するため、LESからの解毒作用に寄与し、同時に高い脂除去力を与える。
【0066】
ベビーシャンプーの調製
表16に示した成分を混合する。
得られるシャンプーは、乳幼児のデリケートな肌に好適である。
本発明の増粘剤は、極めて好ましい毒性プロフィールを有する製剤によく適合する。
【0067】
【表15】

【0068】
【表16】

【0069】
保護ミルクの調製
表17に示した成分を混合する。
シリコーン類の組み合わせにより、ドライなタッチの保護ミルクを得る。
本発明の増粘剤により、エマルションは安定し、粘性を得る。また、そのわずかな膜形成性により、肌にある程度の保護が与えられる。
【0070】
ピュリファイングミルクの調製
表18に示した成分を混合する。
サリチル酸により、ピュリファイングミルクが得られる。
本発明の増粘剤により、製剤が安定化し、サリチル酸を酸化から保護する。
【0071】
ハンドクリームの調製
表19に示した成分を混合する。
得られる保護クリームは、本発明の増粘剤により、シルキーな側面および極めてソフトなタッチを有する。
オイルの選択により、当該クリームはとても軽い。
【0072】
【表17】

【0073】
【表18】

【0074】
【表19】

【0075】
ヘアージェルバームの調製
表20に示した成分を混合する。
べたつかない、非常に透明なジェルを得る。
【表20】

【0076】
保護アフターシェーブの調製
表21に示した成分の混合を、溶解機を用いて行う。
【表21】

前記増粘剤により、製品に粘性が与えられ、水溶性がより低い成分が安定化される。得られる製品は、肌に広がり、軽い保護膜を形成する。
【0077】
衛生器具および硬表面用の洗浄ジェルの調製
表22に示した成分を混合する。
完全に透明な製品を得る。Brookfield粘度は、20rpmおよび25℃において3,000 mPa*sである。
薄片(scale)に接触すると、当該製品は、容易に除去が可能な、しっかりした(consistent)ムースを形成する。
【表22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系のための液状増粘剤であって、以下を含み:a)5〜40重量%の、エトキシル化された、6個〜18個の炭素原子を有するカルボン酸のモノ−および/またはジ−グリセリド;b)15〜40重量%のポリウレタン会合増粘剤であって、少なくとも1種のポリイソシアナート、少なくとも1種の水溶性ポリエーテルジオールおよび少なくとも1種の疎水性キャッピング剤であって10個〜24個の炭素原子を含有するものの反応によって得られるもの;c)20〜80重量%の水、
有機溶媒、揮発性有機化合物および他の粘度抑制剤を含まないもの。
【請求項2】
モノ−および/またはジ−グリセリドが、4〜12モルのエチレンオキシドによってエトキシル化されている、請求項1に記載の液状増粘剤。
【請求項3】
ポリウレタン会合増粘剤が、少なくとも1種の有機ポリイソシアナート、少なくとも1種の水溶性ポリエーテルジオールおよび少なくとも1種の疎水性キャッピング剤であって12個〜24個の炭素原子を含有するものの反応によって得られるものである、請求項2に記載の液状増粘剤。
【請求項4】
エトキシル化されたモノ−および/またはジ−グリセリドが、8〜14個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のグリセリドであり、約6〜7モルのエチレンオキシドによってエトキシル化されている、請求項3に記載の液状増粘剤。
【請求項5】
以下を含有する請求項4に記載の液状増粘剤:a)5〜30重量%の、カプリル酸またはカプリン酸のモノ−および/またはジ−グリセリドであって、約6モルのエチレンオキシドによってエトキシル化されているもの;b)15〜30重量%の会合ポリウレタンであって、ポリエチレングリコール、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートおよび/または1−イソシアナートメチル−5−イソシアナート−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンならびにC16〜C24の分枝一価アルコール、好ましくはC16またはC20ゲルベットアルコール、の反応によって得られ、分子量約6,000〜20,000であるもの;c)40〜80重量%の水。
【請求項6】
液状増粘剤を製造する方法であって、以下の工程を含むもの:a)少なくとも1種の有機ポリイソシアナート、少なくとも1種の水溶性ポリエーテルジオールおよび少なくとも1種の疎水性キャッピング剤であって10個〜24個の炭素原子を含有するものの反応によって、会合ポリウレタンを得る工程;b)前記ポリウレタンを、0.1〜2.7重量部の、6個〜18個の炭素原子を有するカルボン酸のエトキシル化されたモノ−および/またはジ−グリセリドおよび0.5〜5.3重量部の水と混合する工程。
【請求項7】
工程a)およびb)のポリウレタンが、溶融形態である、請求項6に記載の液状増粘剤を製造する方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の液状増粘剤を含む化粧品用組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の液状増粘剤を含むラテックス塗料。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の液状増粘剤を含む家庭用洗浄組成物。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の液状増粘剤の、以下の製造のための使用:化粧品;ラテックス塗料;水ベースペーパーコーティング;家庭用洗浄剤。

【公表番号】特表2009−513763(P2009−513763A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537068(P2008−537068)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067654
【国際公開番号】WO2007/048766
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(501185604)ランベルティ ソシエタ ペル アチオニ (17)
【Fターム(参考)】