説明

水系アイライナー組成物

【課題】耐摩擦性に優れ、鮮やかな発色と滑らかな書き味を有し、さらに保存安定性が良好な水系アイライナー組成物を提供する。
【解決手段】光輝性顔料、カーボンブラック、微生物由来の多糖類、揮発性アルコール、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョンを組み合わせて配合する水系アイライナー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩擦性に優れ、鮮やかな発色と滑らかな書き味を有し、さらに保存安定性が良好な水系アイライナー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりアイライナーは目の周りに適用し、目元の印象を高める目的で用いられているが、近年ではその用途も多様化し、目元を大きく見せる効果の高い黒色のものだけでなく、光輝性の高いパール顔料やラメ剤などを配合したものも増加する傾向にあり、高いファッション性が求められている。
【0003】
しかしながら、従来のアイライナーにはパール顔料やラメ剤の粒径が非常に大きいために、筆ペンタイプでは筆の繊維の隙間で詰まってしまうという問題点があり、また筆ペンタイプ以外であってもアイライナーのような低粘度な組成物ではこれらが経時的に沈殿してしまい、光輝性顔料を多量に配合するのは困難であった。
【0004】
また一方で、黒さを出す目的で黒酸化鉄などよりも着色力の強いカーボンブラックを配合する努力がなされているが、その強力な凝集力のために、系中で均一に分散せず、塗膜の黒さにムラが出来てしまうという問題があり、加えて良好な保存安定性を得ることは非常に困難であった。
【0005】
そこでこれらの課題を解決するために、水、硫酸バリウム及びリン酸ナトリウムを混合したスラリーをあらかじめ調整した後に高分子及び顔料と混合するという液状化粧料の製造方法が開示されている(特許文献1参照)。しかしこの発明では、硫酸バリウムなどの体質顔料を配合するため、組成物が白濁してしまい、鮮やかな発色を得ることはできず、また光輝性顔料の沈殿を防止する能力にも乏しかった。さらに塗膜の耐摩擦性においても満足のいくものではなかった。
【0006】
なお、光輝性顔料の沈殿を防止するために水系剤型ではなく乳化剤型のアイライナーを調製したり、水系アイライナーを水溶性高分子などで増粘させて高粘度にする努力が従来よりなされている。しかし、系を乳化物にしてしまうと液体の外観が白濁してしまうため鮮やかな発色を得ることはできず、また塗膜の膜圧が厚くなってしまうため、耐摩擦性にも乏しくなってしまうという問題があった。一方、ただ単に高粘度にした場合には、液体の伸びが悪くなって書き味が悪くなってしまううえ、光輝性顔料の沈殿を完全に防止するほどの効果はなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−277362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、耐摩擦性に優れ、鮮やかな発色と滑らかな書き味を有し、さらに保存安定性が良好な水系アイライナー組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、光輝性顔料、カーボンブラック、微生物由来の多糖類、揮発性アルコール、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョンを組み合わせて配合することにより、耐摩擦性に優れ、鮮やかな発色と伸びのよい書
き味を有し、さらに保存安定性が良好な水系アイライナー組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記成分(A)〜(E)
(A):光輝性顔料
(B):カーボンブラック
(C):微生物由来の多糖類
(D):揮発性アルコール
(E):アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン
を含有することを特徴とする水系アイライナー組成物にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、耐摩擦性に優れ、鮮やかな発色と伸びのよい書き味を有し、さらに保存安定性が良好な、従来技術にない水系アイライナー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0013】
本明細書において水系とは、非乳化型であり、かつ主な溶媒として水を使用し、さらに化粧料全量に対して30質量%(以下、%と示す)以上の水を含有する組成物のことを指す。
【0014】
本発明に用いる成分(A)の光輝性顔料は、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず何れのものも使用できる。例えば、雲母チタン、色素被覆雲母チタン、金属被覆ガラス末、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化鉄・酸化チタン被覆合成金雲母、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、アルミニウムパウダー、酸化鉄被覆アルミニウム末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・銀・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が用いられる。
【0015】
これらの中でも、色素被覆雲母チタンを使用すると、より鮮やかで優れた発色を発揮することができるため好ましい。ここで用いられる色素としては、有機色素でも無機色素でも何れでもよく、この色素被覆雲母チタンの例としては、酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン被覆雲母チタン、コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化クロム被覆雲母チタン、チタンブラック被覆雲母チタンなどが挙げられる。
【0016】
本発明においては、これらの中から1種または2種以上を適時選択して用いることができ、またその配合量は化粧料全量に対して、好ましくは0.01〜40%であり、より好ましくは、10〜30%である。この範囲内であれば、鮮やかな発色を有し、かつ良好な保存安定性を更に高めることができる。
【0017】
本発明に用いる成分(B)のカーボンブラックとしては、化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限されず使用できるが、より鮮やかな発色を出すためには、水を溶媒として分散された水性分散体の形態のものを用いることが望ましい。さらに、90%以上の顔料粒子の分散径が0.7μm以下にコントロールされたものであれば、顔料の凝集や沈降などの保存安定性面でもより好ましい。これらは詳細には、特開2002−363031号公報等に記載されているものが使用できる。なお、上記の水性分散体や分散径の定義についても、この特開2002−363031号公報に記載されている定義に従う。こ
のような市販品としては、TNPシリーズ(御国色素社製)などが挙げられる。
【0018】
本発明においては、この配合量は化粧料全量に対してカーボンブラック純分が、好ましくは0.01〜10%であり、より好ましくは0.1〜5.0%である。この範囲内であれば、鮮やかな発色を有し、かつ良好な保存安定性をより高めることができる。
【0019】
本発明に用いる成分(C)の微生物由来の多糖類とは、微生物が産生した多糖類を場合により、精製、加熱滅菌処理などをされたものであり、化粧品に一般的に用いられるものであれば、特に制限されず使用できる。例えば、キサンタンガム、ジェランガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等を例示できる。なかでも、キサンタンガムを使用するのが、滑らかな書き味の面と顔料の凝集や沈殿のない保存安定性の面でより好ましい。
【0020】
本発明においては、これらの中から1種または2種以上を適時選択して用いることができ、その配合量は化粧料全量に対して、好ましくは0.01〜5.0%であり、より好ましくは0.05〜3.0%である。この範囲内であれば、滑らかな書き味を有しながら、優れた保存安定性をより高めることができる。
【0021】
本発明に用いる成分(D)の揮発性アルコールとしては、化粧品に一般的に用いられているものであれば、特に限定されず何れのものも使用できる。また本明細書において「揮発性」とは、皮膚に接触すると1時間以内に97%以上が蒸発してしまう傾向を意味する。つまり本成分(D)は、肌に相当する温度(30℃)と大気圧(1atm)の条件下において液状であり、蒸気圧が好ましくは0.7kPa〜40kPaの蒸気圧を有するアルコールである。例としては、エタノール、イソプロパノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール等が挙げられる。これらは通常、清涼剤や溶剤、抗菌剤として化粧料に用いられているものであるが、本発明においては、成分(A)〜(E)を組み合わせて配合した場合にのみ、光輝性顔料やカーボンブラックなどの顔料の沈殿や凝集を完全に防止することができ、かつ滑らかな書き味を有する水系アイライナーが得られることを見出したものであり、従来の使用目的とは全く異なる。
【0022】
本発明においては、これらの中から1種または2種以上を適時選択して用いることができるが、フェノキシエタノールを用いることが最も好ましい。またその配合量は、化粧料総量を基準として好ましくは0.01〜15%であり、より好ましくは0.1〜10%である。これらの範囲内であれば、良好な保存安定性が特に良好である。
【0023】
本発明に用いる成分(E)のアクリル酸アルキル共重合体エマルジョンとしては、化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限されず使用できるが、より鮮やかな発色と高い耐摩擦性を発揮するためには、酸のモノマーとしてメタクリル酸を用いることが望ましい。さらに、樹脂分0.6重量%水溶液の塗膜形成前の状態での光の透過率が、425nmの波長で分光光度計により計測した場合に60%以上のものであればより好ましい。これらは詳細には、特開2005−2207号公報等に記載されているものが使用できる。なお、上記の光の透過率の計測方法やその他のモノマーの組成についても、この特開2005−2207号公報に記載されているものを使用することができる。このような市販品としては、ヨドゾールGH256(日本NSC社製)などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、これらの中から1種または2種以上を適時選択して用いることができる。その配合量は化粧料全量に対して、好ましくは0.1〜40%であり、より好ましくは0.5〜30%である。これらの範囲内であれば、鮮やかな発色と高い耐摩擦性が得られる。40%を超えてしまうと流動性が無くなり、書き味が悪くなってしまう場合がある。また、0.1%未満では所望の発色性と耐摩擦性を得られない場合がある。
【0025】
本発明の水系アイライナー組成物は種々の形態で用いることができ、半固形形態または液状形態のアイライナー、アイライナーオーバーコート、アイライナー下地など、目の周りに塗付する剤型として、常法に従い製造することができる。
【0026】
また本発明においては、成分(E)のアクリル酸アルキル共重合体エマルジョン以外にも、皮膜形成性のポリマーエマルションを本発明を損なわない程度で、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、ポリアクリル酸エステルエマルジョン、ポリ塩化ビニルエマルジョン、(メタ)アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、(メタ)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション、シリコーン系ポリマーエマルション等が挙げられる。
【0027】
また本発明においては、成分(A)の光輝性顔料や成分(B)のカーボンブラック以外の顔料についても本発明を損なわない程度で用いることができる。これらは、化粧品に通常使用されるものであれば何れでもよい。その形態についても、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されない。例えば、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン・酸化チタン焼結物、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、カオリン、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、珪ソウ土、ヒドロキシアパタイト、窒化硼素等の無機粉体類、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、N−アシルリジン等の有機粉体類、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられる。またこれらの色素及び顔料は、表面をシリコーン類、ラウロイルリジン、ステアロイルグルタミン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩、ポリエチレン、その他の油剤等で被覆処理されていても良い。
【0028】
本発明の水系アイライナー組成物は、前記の各成分に加えて必要に応じ、かつ本発明の効果を損なわない範囲において、化粧品に一般的に用いられる各種の成分、例えば、固形または半固形または液状の油性成分、多価アルコール、保湿剤、増粘剤、水溶性高分子、界面活性剤、香料、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、溶剤、抗炎症剤、抗アンドロゲン剤、育毛剤、抗酸化剤、清涼剤、生薬抽出物やビタミン類、キューティクル保護成分等を適時配合することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。尚、表中の数値は含有量(%)を表わす。実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0030】
(1)保存安定性評価試験方法
所定の方法で調製した水系アイライナーを5〜40℃の1サイクル/日の往復恒温槽内に放置して、3週間後の保存安定性を下記の評価基準に従って評価した。
沈降、凝集なし ;◎
沈降、凝集がごくわずかに有り ;○
沈降、凝集あり ;△
完全に沈降、凝集 ;×
【0031】
(2)官能評価試験方法
女性パネラー20名によって、目の周りに塗布後の耐摩擦性、発色の鮮やかさについて下記の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
良いと答えた人数が17人以上 ;◎
〃 12〜16人;○
〃 8〜11人;△
〃 7人以下 ;×
(評価項目)
a.耐摩擦性
b.滑らかな書き味
c.発色の鮮やかさ
【0032】
・水系アイライナー組成物の調製方法
製法:(1)〜(15)を混合し90℃に加熱して溶解、均一化する。そして、これを室温まで攪拌冷却した後、(16)〜(34)を添加して、ホモミキサーにより攪拌する。これを所定の気密容器に充填し、目的の水系アイライナー組成物を得る。ただし、比較例4は特開2004−277362号公報に記載の製造方法に従う。
【0033】
上記各組成物の成分組成、及び評価試験結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
(12):カーボポール940(Goodrich Chemical社製)
(13):ノムコートZZ(日清オイリオグループ社製)
(16):ヨドゾールGH256(日本NSC社製)
(17):ヨドゾールGH800(日本NSC社製)
(26)、(27):TNPシリーズ(御国色素社製)
(28):TIMIRON SPLENDIDシリーズ(メルク社製)
(29):CLOISONNEシリーズ(エンゲルハード社製)
(30):COLORONAシリーズ(エンゲルハード社製)
(31):レインボーフレークIIシリーズ(ダイヤ工業社製)
(32):ダイヤホログラムシリーズ(ダイヤ工業社製)
(33)、(34):メタシャインシリーズ(日本板硝子社製)
【0036】
表1に示すように、本発明の実施例1〜4のものは、耐摩擦性及び発色の鮮やかさと滑らかな書き味、保存安定性の全ての点において比較例1〜4のものより明らかに優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上記載の如く、本発明により、耐摩擦性に優れ、鮮やかな発色と滑らかな書き味を有し、さらに保存安定性が良好な水系アイライナー組成物を提供することができ、例えばアイライナーオーバーコートなどの目の周りに塗付する剤型において、常法に従い製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(E)
(A):光輝性顔料
(B):カーボンブラック
(C):微生物由来の多糖類
(D):揮発性アルコール
(E):アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン
を含有することを特徴とする水系アイライナー組成物。

【公開番号】特開2007−153744(P2007−153744A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347334(P2005−347334)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)
【Fターム(参考)】