説明

水系エマルジョン塗料および塗装方法

【課題】金属亜鉛末の分散安定性を向上させることにより、金属亜鉛末の凝集や塗料のゲル化を抑制するとともに、水素ガスの発生を抑制し、塗装作業性を向上させる、金属亜鉛末および水系エマルジョンバインダを含み、主溶剤として水を用いる水系エマルジョン塗料の提供。
【解決手段】水溶性樹脂の水溶液および水分散性樹脂の水分散液から選ばれる少なくとも1種の水系エマルジョンバインダ、水溶性高分子化合物、金属亜鉛末、並びに有機溶剤を含む水系エマルジョン塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系エマルジョン塗料および塗装方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、金属亜鉛末を含む水系エマルジョン塗料、および該水系エマルジョン塗料を用いる塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛は鉄に対して優れた防錆効果を有することから、金属亜鉛末を含む塗料が開発され、広く使用されている。このような塗料としては、たとえば、ジンクリッチペイント、ジンクペイントなどが挙げられる。ジンクリッチペイントは、例えば、住宅部材や、橋梁、タンク、プラント、船などの鋼材が多用された大型構造物などに使用されている。一方、ジンクペイントは、例えば、亜鉛めっきの補修塗料、溶接箇所の補修塗料などとして使用されている。これらの中でも、ジンクリッチペイントにより形成される硬化膜は、金属亜鉛末の含有量が通常70重量%以上と非常に多く、鉄を含む各種部材に対して非常に優れた防錆効果を示す。
【0003】
ジンクリッチペイントは、エチルシリケートをバインダとする無機ジンクリッチペイントと、エポキシ樹脂をバインダとする有機ジンクリッチペイントとに大別される。無機ジンクリッチペイントは速乾性であり、その硬化膜は、金属亜鉛末を80重量%以上含有し、金属亜鉛末とバインダとの相乗効果により優れた防錆効果を発揮する。また、有機ジンクリッチペイントは、良好な防錆効果を有していると共に、塗装作業性に優れ、例えば、刷毛塗りなどの作業も容易である。さらに、その硬化膜は、鉄を含む部材表面との密着性および上塗り塗料との密着性が高い。
【0004】
これらのジンクリッチペイントは、いずれも、溶媒として有機溶剤を含んでいるが、環境保全、作業者の安全性確保、VOC(揮発性有機化合物)規制といった観点から、溶剤の一部または全部を水に代えた水系ジンクリッチペイントが要望され、種々の提案がなされている。
【0005】
例えば、アルカリ珪酸塩、金属亜鉛末、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤および水を含む水系ジンクリッチペイント(特許文献1参照)、アルカリ珪酸塩、金属亜鉛末、薄片状シリカおよび水を含む水系ジンクリッチペイント(特許文献2参照)、エポキシ樹脂の水系エマルジョン、金属亜鉛末およびアミン硬化剤を含む水系ジンクリッチペイント(特許文献3参照)、珪酸アルカリ、アンモニウムイオンおよびハロゲンイオンを含有する水溶液と、金属亜鉛末とを含む水系ジンクリッチペイント(特許文献4参照)などが挙げられる。
【0006】
一方、各種の塗料に、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類を増粘剤として添加することは公知である。金属亜鉛末とセルロースエーテル類とを併用した例としては、金属亜鉛末、バインダ樹脂、炭酸カルシウムウィスカおよび有機溶剤を含み、バインダとして、ポリアルキルシリケートの部分加水分解物またはその変性物とセルロースエーテル類との混合物を用いる無機ジンクリッチペイントが提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−154557号公報
【特許文献2】特開2006−160776号公報
【特許文献3】特開2008−272666号公報
【特許文献4】特開2009−249490号公報
【特許文献5】特開平11−293200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜4に記載の水系ジンクリッチペイントでは、金属亜鉛末とバインダであるアルカリ珪酸塩またはエポキシ樹脂とが水中にて共存している。このような共存下では、ペイント中での金属亜鉛末の分散性が低下し、金属亜鉛末の凝集や塗料のゲル化などの不都合が発生し易くなる。このような不都合が発生したペイントを部材表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させて硬化膜を形成すると、硬化膜の膜厚にばらつきが生じ、さらに硬化膜の表面が凸凹になり、防錆効果が部分的に不十分になる場合がある。
【0009】
また、亜鉛が両性金属であり、かつ、バインダが酸性またはアルカリ性を有していることから、金属亜鉛末とバインダとが水の存在下で反応して水素ガスが発生するという問題がある。このため、特許文献1〜4に記載の水系ジンクリッチペイントからなる塗膜中では水素ガスの気泡が発生し易くなる。水素ガスの気泡は、塗膜表面に浮き上がって割れるので、塗膜を乾燥して得られる硬化膜の表面には、クレータ状の窪みや亀裂などが発生する。その結果、硬化膜の機械的強度や耐久性が局所的に低下し、それが原因となって硬化膜の防錆効果が低下し、耐用寿命が短くなる。また、窪みや亀裂は、硬化膜表面の平滑性を損なう。
【0010】
さらに、硬化膜の表面に上塗り硬化膜を形成する場合、硬化膜表面の窪みや亀裂は、上塗り硬化膜の膜厚のばらつき、硬化膜と上塗り硬化膜との密着性の低下、上塗り硬化膜の機械的強度や耐久性の低下などを引き起こす。
【0011】
一方、特許文献5は、金属亜鉛末とバインダ樹脂とセルロースエーテル類とを有機溶剤中にて共存させることを記載するのみであり、金属亜鉛末とバインダ樹脂とセルロースエーテル類とを水中で共存させることを記載も示唆もしていない。
【0012】
本発明の目的は、金属亜鉛末およびバインダ樹脂を含み、主溶媒として水を用いるにもかかわらず、金属亜鉛末の凝集や塗料のゲル化および水素ガスの発生が抑制され、塗装作業性に優れた水系エマルジョン塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、従来技術の課題に鑑みて鋭意研究を重ねた。その結果、水系エマルジョンバインダ、水溶性高分子化合物、金属亜鉛末、および有機溶剤を合わせて用いることにより、有機溶剤の含有量が少なく、金属亜鉛末の凝集や塗料のゲル化が抑制され、塗装作業性の良好な塗料が得られることを見出した。さらに、本発明者らは、この塗料においては、水溶性高分子化合物が、金属亜鉛末の凝集を抑制する機能や、水系エマルジョンバインダと金属亜鉛末との反応による水素の発生を抑制する機能を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明の水系エマルジョン塗料は、水溶性樹脂の水溶液および水分散性樹脂の水分散液から選ばれる少なくとも1種の水系エマルジョンバインダ、水溶性高分子化合物、金属亜鉛末、並びに有機溶剤を含むことを特徴とする。
本発明の好ましい水系エマルジョン塗料は、水系エマルジョンバインダおよび水溶性高分子化合物を含む液と、金属亜鉛末および有機溶剤を含む液と、を混合することにより得られる。
本発明の別の好ましい水系エマルジョン塗料は、金属亜鉛末、水溶性高分子化合物および有機溶剤を含む液と、水系エマルジョンバインダと、を混合することにより得られる。
【0015】
本発明の水系エマルジョン塗料では、水系エマルジョンバインダに含まれる水の量が、有機溶剤の量と同量であるか又はそれよりも多いことが好ましい。
本発明の水系エマルジョン塗料では、水系エマルジョンバインダの樹脂固形分100重量部に対して、金属亜鉛末0.1〜500重量部、水溶性高分子化合物0.01〜20重量部、および有機溶剤0.1〜100重量部を含み、水系エマルジョンバインダに含まれる水の量が、有機溶剤の含有量の1〜20倍であることがさらに好ましい。
本発明の水系エマルジョン塗料では、金属亜鉛末の体積平均粒子径が0.1μm〜100μmであることが好ましい。
【0016】
本発明の水系エマルジョン塗料では、水溶性高分子化合物が、セルロースエーテル類およびポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
水溶性高分子化合物は、セルロースエーテル類であることが好ましく、セルロースエーテル類が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、および、カルボキシメチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましい。
水溶性高分子化合物の数平均分子量が、8000〜75000であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明の水系エマルジョン塗料の好ましい形態では、水系エマルジョンバインダが水分散性樹脂の水分散液であり、水分散性樹脂の水分散液が、シリコーン樹脂の水系エマルジョンである。このような、水系エマルジョン塗料の硬化膜は、200℃〜400℃の温度下で耐熱性を有している。
【0018】
また、本発明の好ましい形態の水系エマルジョン塗料は、シリコーン樹脂の水分散液100重量部(樹脂固形分)および数平均分子量が8000〜75000である水溶性高分子化合物0.01〜20重量部を含む液と、金属亜鉛末0.1〜500重量部および有機溶剤0.1〜100重量部を含む液とを混合することにより得られ、前記水分散液に含まれる水の量が、前記有機溶剤の量の1〜20重量倍であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の塗装方法は、水溶性樹脂の水溶液および水分散性樹脂の水分散液から選ばれる少なくとも1種の水系エマルジョンバインダならびに水溶性高分子化合物を含む液と、金属亜鉛末および有機溶剤とを含む液、とを混合し、得られた水系エマルジョン塗料を、鉄を含む部材の表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させることを特徴とする。
別形態の本発明の塗装方法は、金属亜鉛末、水溶性高分子化合物および有機溶剤を含む液と、水溶性樹脂の水溶液および水分散性樹脂の水分散液から選ばれる少なくとも1種の水系エマルジョンバインダと、を混合し、得られた水系エマルジョン塗料を、鉄を含む部材の表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させることを特徴とする。
水系エマルジョン塗料を塗布する部材が、200℃〜400℃の温度に晒される部材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水系エマルジョン塗料は、金属亜鉛末と酸性またはアルカリ性を呈する水系エマルジョンバインとを水の存在下で共存させているにも関わらず、金属亜鉛末その他の成分の分散性が良好であり、金属亜鉛末の凝集や塗料のゲル化などが発生せず、さらに水素ガスの発生が抑制され、優れた塗装作業性を有している。より具体的には、本発明の水系エマルジョン塗料を40℃の温度下に24時間放置しても、水素の発生がなく、金属亜鉛の凝集および塗料のゲル化が発生しない。
【0021】
このため、本発明の水系エマルジョン塗料は、塗装作業性に優れ、ローラ塗り、刷毛塗りなどの簡単な作業で塗装を容易に行うことができ、膜厚のばらつきが少なく、組織が緻密で、機械的強度の高い硬化膜を形成することができる。また、本発明の水系エマルジョン塗料から形成される硬化膜の表面には、クレータ状の窪みや亀裂といった欠陥が非常に少ない。
【0022】
本発明の塗装方法は、上記水系エマルジョン塗料を用いることにより、鉄を含む部材表面に効率良く硬化膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の水系エマルジョン塗料は、水溶性樹脂の水溶液および水分散性樹脂の水分散液から選ばれる少なくとも1種の水系エマルジョンバインダ、水溶性高分子化合物、金属亜鉛末、並びに有機溶剤を含む。
【0024】
水系エマルジョンバインダとしては、水溶性樹脂の水溶液および水分散性樹脂の水分散液を使用する。ここで、水溶性樹脂および水分散性樹脂としては、水溶性および/または水分散性を有する樹脂であれば特に制限されないが、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン、繊維素誘導体樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、および、ポリアクリル酸樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
これらの樹脂の中でも、塗料から形成される硬化膜の耐熱性を一層向上させるという観点からは、水分散性樹脂であるシリコーン樹脂が好ましい。水系エマルジョンバインダとして、シリコーン樹脂の水系エマルジョンを含む水系エマルジョン塗料から形成される硬化膜は、高い耐熱性を有し、例えば、200℃〜400℃程度の温度に晒されても、変質することなく、高い防錆性能を示す。また、塗料から形成される硬化膜の耐食性を一層向上させるという観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
水系エマルジョンバインダにおける水溶性樹脂または水分散性樹脂の含有量、即ち樹脂固形分の含有量は、好ましくは水系エマルジョンバインダ全量の10〜60重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。樹脂固形分の含有量を前記範囲とすることにより、本発明の水系エマルジョン塗料における水の含有量と、有機溶剤の含有量とが適切な比率になり、水溶性高分子化合物による水素の発生の抑制効果を十分に発揮させることができる。また、本発明の水系エマルジョン塗料の塗装作業性がさらに向上する。
【0027】
固形分含有量が10重量%よりも少なすぎると、本発明の水系エマルジョン塗料の物品表面への塗装作業性が低下し、高い強度および耐久性を有する硬化膜を形成できない傾向がある。固形分含有量が60重量%を大きく超えると、水溶性樹脂の溶解性又は水分散性樹脂の水分散性が低下し、これらの沈降などが発生する傾向がある。
【0028】
なお、水系エマルジョンバインダに含まれる水の量は、後述する有機溶剤の量と同量であるかまたは多い方が好ましく、有機溶剤の量の1〜20倍であることがさらに好ましい。これにより、有機溶剤の含有量が少なく、環境や作業員に対して安全性の高い水系エマルジョン塗料となる。また、水の量と有機溶剤の量とが前記範囲にある場合には、水溶性高分子化合物による、水系エマルジョンバインダと金属亜鉛末との反応を抑制する効果および金属亜鉛末の凝集を抑制する効果が一層高まり、水素の発生がさらに少なくなる。
【0029】
水溶性高分子化合物としては、水溶性を有する高分子化合物であれば特に限定されないが、セルロースエーテル類およびポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。すなわち、複数の水酸基を有する水溶性高分子化合物が好ましい。水溶性高分子化合物は、水溶液の形態で使用しても良い。このような水溶性高分子化合物を本発明の水系エマルジョン塗料中に存在させることにより、水系エマルジョンバインダと金属亜鉛末との反応による水素ガスの発生が抑制される。
【0030】
水溶性高分子化合物の中でも、セルロースエーテル類が好ましい。セルロースエーテル類としては特に限定されないが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、および、カルボキシメチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらのセルロースエーテル類の中でも、水素の発生を抑制する効果と水系エマルジョン塗料の塗装作業性とを高水準で両立させるという観点からは、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどが好ましい。
【0031】
水溶性高分子化合物の数平均分子量は、好ましくは8000〜75000である。水溶性高分子化合物が前記範囲の数平均分子量を有することにより、水素ガスの発生を抑制する効果が高まると共に、水系エマルジョン塗料の鉄を含む部材への塗装作業性をさらに向上させることができる。数平均分子量が8000よりも著しく低いと、水素ガスの発生を抑制する効果が不十分になる傾向がある。数平均分子量が75000を大幅に超えると、水素ガスの発生を抑制する効果が不十分になると共に、水系エマルジョン塗料の塗装作業性を低下させる傾向がある。
【0032】
水溶性高分子化合物の使用量は特に限定されないが、水系エマルジョンバインダの樹脂固形分100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5重量部以上、5重量部未満である。水溶性高分子化合物を前記範囲で使用することにより、水素の発生を抑制する効果が高まり、水系エマルジョン塗料の塗装作業性も良好である。水溶性高分子化合物の使用量が0.01重量部未満では、水素の発生を抑制する効果が不十分になる傾向がある。一方、水溶性高分子化合物の使用量が20重量部を大幅に超えると、水系エマルジョン塗料の塗装作業性が著しく低下する傾向がある。
【0033】
金属亜鉛末としては、従来からジンクリッチペイントやジンクペイントの分野で使用されている粒状、球状、鱗片状など種々の形状の金属亜鉛末を特に限定なく使用できる。金属亜鉛末の体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは3〜40μmである。これにより、金属亜鉛末の塗料中での分散安定性を高め、金属亜鉛末の凝集を抑制することができる。
【0034】
金属亜鉛末の体積平均粒子径が0.1μmを大幅に下回ると、水溶性高分子化合物による水素の発生を抑制する効果が低下し、水素が発生する傾向がある。さらに、金属亜鉛末の水系エマルジョン塗料中での分散安定性が低下し、金属亜鉛末の凝集や塗料のゲル化が発生する傾向がある。金属亜鉛末の体積平均粒子径が100μmを超えると、水系エマルジョン塗料から形成される硬化膜(亜鉛膜)の緻密性が損なわれ、硬化膜の組織の状態に局所的なばらつきを生じ、硬化膜の耐用寿命が短くなる傾向がある。
【0035】
なお、金属亜鉛末の体積平均粒子径は、Multisizer3(ベックマン・コールター社製)を用い、本体備え付けのISOTON2(ベックマン・コールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながら金属亜鉛末をスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた後、400μmのアパーチャーを使用して測定することができる。
【0036】
金属亜鉛末の使用量は、水系エマルジョンバインダの樹脂固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜500重量部、さらに好ましくは30〜300重量部である。金属亜鉛末の使用量が0.1重量部よりも大幅に少ないと、強度および耐久性の高い硬化膜を形成できない傾向がある。金属亜鉛末の使用量が500重量部を大幅に超えると、水素の発生を十分に抑制できない傾向がある。また、水系エマルジョン塗料の塗装作業性が低下する傾向がある。
【0037】
金属亜鉛末の使用量を適宜調整することにより、水系エマルジョン塗料をジンクリッチペイントとすることもでき、さらに、ジンクペイントにすることもできる。ジンクリッチペイントは、硬化膜における亜鉛含有量が70重量%、好ましくは80重量%を超えるような高亜鉛含量の硬化膜を形成できる塗料である。ジンクペイントは、亜鉛含有量が20〜70重量%程度の硬化膜を形成できる塗料であり、例えば、亜鉛めっきの補修塗料、車、建設足場材、各種産業機械などの亜鉛めっき面、鉄部の防蝕下塗り、溶接箇所などの補修塗料として使用できる。
【0038】
有機溶剤としては、従来からジンクリッチペイントの分野で使用されている有機溶剤を特に限定なく使用できるが、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、アセテート系溶剤、石油系溶剤、および、グリコールエーテル系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0039】
ケトン系溶剤の具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。芳香族炭化水素系溶剤の具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。アルコール系溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロバノール、イソプロバノール、n−ブタノールなどが挙げられる。エステル系溶剤の具体例としては、例えば、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸tret−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ―ブチロラクトンなどが挙げられる。アセテート系溶剤の具体例としては、例えば、メチルアセテート、エチルアセテートなどが挙げられる。石油系溶剤の具体例としては、例えば、石油エーテル,石油べンジン、リグロインなどが挙げられる。グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0040】
これらの有機溶剤の中でも、水系エマルジョン塗料における金属亜鉛末の凝集や塗料のゲル化をさらに抑制するという観点からは、グリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0041】
有機溶剤の使用量は特に限定されず、金属亜鉛末の使用量に応じて適宜選択できるが、好ましくは水系エマルジョンバインダの樹脂固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部である。有機溶剤の使用量が0.1重量部よりも少ないと、有機溶剤による金属亜鉛末の処理が不十分になり、各成分特に金属亜鉛末の凝集や塗料のゲル化などが発生する傾向がある。有機溶剤の使用量が100重量部を超えると、環境や作業員に負荷を与える傾向がある。
【0042】
本発明の水系エマルジョン塗料は、さらに、一般的な防錆塗料用添加剤を含有することができる。このような添加剤としては、例えば、タレ止め剤、顔料、無機系腐食抑制剤、有機系腐食抑制剤などが挙げられる。
【0043】
タレ止め剤の具体例としては、例えば、無定形シリカ、コロイド状炭酸カルシウム、有機ベントナイト、水添ヒマシ油、脂肪族アミド類、高級脂肪酸、マイクロジェル粒子などが挙げられる。
顔料の具体例としては、例えば、タルク、マイカ、硫酸バリウム、クレー、炭酸カルシウム、亜鉛華、チタン白、ベンガラ、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、メタホウ酸バリウム、モリブデン酸アルミニウム、リン化鉄などが挙げられる。
【0044】
無機系腐食抑制剤の具体例としては、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸亜鉛などのモリブデン酸塩、タングステン酸亜鉛、タングステン酸カルシウムなどのタングステン酸塩、クロム酸亜鉛、塩基性クロム酸鉛、ストロンチウムクロメート、ジンククロメートなどのクロム酸化合物、塩基性硫酸鉛、塩基性炭酸鉛などの塩基性鉛化合物、メタホウ酸バリウムなどのメタホウ酸塩、メタケイ酸カルシウムなどのメタケイ酸化合物、亜硝酸塩、ポリリン酸などが挙げられる。
【0045】
有機系腐食抑制剤の具体例としては、オレイン酸、ダイマー酸、ナフテン酸などのカルボン酸、カルボン酸金属石鹸、スルホン酸塩、アミン塩、エステル類などが挙げられる。
これらの添加剤は、それぞれ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
本発明の水系エマルジョン塗料は、2液型塗料であることが好ましい。たとえば、鉄を含む部材の表面に塗布する直前に、水系エマルジョンバインダおよび水溶性高分子化合物を含むA液と、金属亜鉛末および有機溶剤を含むB液とを混合することにより、本発明の水系エマルジョン塗料を調製することが好ましい。このとき、各成分の含有量が上記した各範囲になるように、A液とB液との混合比を適宜調整する。
【0047】
A液は、たとえば、水系エマルジョンバインダと水溶性高分子化合物とを混合することにより調製できる。A液に含まれる水は、上記水溶性樹脂の水溶液または水分散性樹脂の水分散液に含まれる水であるが、本発明の水系エマルジョン塗料の好ましい特性を損なわない範囲で、加水してもかまわない。
【0048】
B液は、たとえば、金属亜鉛末と有機溶剤とを混合し、金属亜鉛末を有機溶剤中に均一に分散させることにより調製できる。さらに、B液に水溶性高分子化合物を添加しても良い。このように、金属亜鉛末と水系エマルジョンバインダとを接触させる前に、金属亜鉛末と有機溶剤とを混合して、金属亜鉛末の表面に有機溶剤が付着させることが好ましい。これにより、本発明の水系エマルジョン塗料中における金属亜鉛末の分散安定性が一層向上し、金属亜鉛末の凝集や塗料のゲル化などがさらに発生し難くなる。なお、防錆用添加剤は、A液およびB液のいずれに添加してもよく、さらに、A液とB液とを混合した後の本発明の水系エマルジョン塗料に添加しても良い。
【0049】
また、本発明の水系エマルジョン塗料は、水系エマルジョンバインダと、水溶性高分子化合物、金属亜鉛末および有機溶剤を含むC液とを混合することによっても、調製できる。C液は、たとえば、水溶性高分子化合物と、金属亜鉛末と、有機溶剤とを混合することにより調製できる。水系エマルジョンバインダに水溶性高分子化合物を添加しても良い。水系エマルジョンバインダと金属亜鉛末とが接触する前に、金属亜鉛末を水溶性高分子化合物および有機溶剤と接触させることにより、塗料中における金属亜鉛末の分散安定性および水素の発生を抑制する効果がさらに高まる。なお、防錆用添加剤は、水系エマルジョンバインダおよびC液のいずれに添加してもよく、さらに、水系エマルジョンバインダとC液とを混合した後の本発明の水系エマルジョン塗料に添加しても良い。
なお、本発明の水系エマルジョン塗料を調製する際には、水の量が有機溶剤の量の1〜20倍になるように、加水して調製してもよい。
【0050】
こうして得られる本発明の水系エマルジョン塗料は、優れた防錆性能を有するだけでなく、有機溶剤と等量又はそれよりも多い水を多く含んでいることにより、環境保全や作業者に対する安全性の面でも有用である。さらに、本発明の水系エマルジョン塗料からなる硬化膜は、物品の表面との密着性に優れている。本発明の水系エマルジョン塗料は、たとえば、ジンクリッチペイント、ジンクペイントなどの防錆塗料として使用できる。
【0051】
本発明の塗装方法は、上記で得られた水系エマルジョン塗料を、鉄を含む物品の表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させて、金属亜鉛末を含む硬化膜を形成することを特徴とする。水系エマルジョン塗料の鉄を含む物品への塗布は、A液とB液とを混合した直後、および水系エマルジョンバインダとC液とを混合した直後から、好ましくは8時間以内、さらに好ましくは3時間以内に実施するのが良い。混合した直後から8時間を超えると、水系エマルジョン塗料中での金属亜鉛末などの分散安定性が低下し、金属亜鉛末などの凝集や沈殿が生じる傾向がある。このような凝集や沈殿により、塗装作業性が低下すると共に、硬化膜の機械的強度、物品表面への密着性や防錆性能などが局所的に低下する傾向がある。
【0052】
また、水系エマルジョン塗料の塗布方法としては、液状物の固形物表面への塗布方法をいずれも採用できるが、水系エマルジョン塗料の塗装作業性の良好さなどを考慮すると、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、ロール塗り、エアースプレー、エアレススプレーなどの塗布方法が好ましい。
【0053】
鉄を含む部材としては、鋼などの、鉄を含む材料からなる部品であれば特に限定されないが、例えば、住宅部材、橋梁、タンク、プラント、船、各種車両、建設足場材、製鋼設備、石油精製設備などの鋼材が多用された大型構造部材などが挙げられる。これらの中でも、例えば、製鋼設備、石油精製設備などの、200℃〜400℃の高温に晒される部材が好ましい。さらに、本発明の水系エマルジョン塗料は、大型構造部材に限定されず、表面に亜鉛めっきが施され、亜鉛めっきの一部が損傷した物品、溶接個所を有する物品などにおいて、亜鉛めっきの補修用塗料、溶接個所の保護塗料などとしても使用できる。
【0054】
鉄を含む物品の表面に塗布される水系エマルジョン塗料の塗膜の乾燥温度は特に限定されず、常温にて放置してもよく、また、加熱することにより、塗膜中の液状成分を揮散させてもよい。しかし、本発明の水系エマルジョン塗料は、常温にて効率良く乾燥するので、通常は加熱しなくてもよい。こうして形成される硬化膜の膜厚は、鉄を含む物品の種類に応じて適宜選択されるが、通常は10〜150μm程度、好ましくは30〜60μm程度である。これにより、金属亜鉛末を含み、耐久性及び鉄に対する防錆性能に優れ、物品表面に対する密着性の高い硬化膜が形成される。
【実施例】
【0055】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜6および比較例1)
(1)A液の調製
シリコーン樹脂を50重量%の割合で含む水系エマルジョンに、樹脂固形分100重量部に対し、下記表1に示す配合割合(重量部)で、メチルセルロース(水溶性高分子化合物、信越化学工業(株)製、数平均分子量8000)、下記表1では「MC」と略記する)を分散および溶解させて、実施例1〜6および比較例1のA液を調製した。比較例1では、メチルセルロースを用いていない。
【0056】
(2)B液の調製
金属亜鉛末(本荘ケミカル(株)製、形状:粒状、体積平均粒径:20μm)30重量部と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(有機溶剤)5重量部とを混合し、B液(金属亜鉛末のスラリー)を調製した。水:有機溶剤(重量比)=10:1になる。
【0057】
(3)水系エマルジョン塗料の調製
上記で得られたA液とB液とを重量比1:1の割合で混合し、実施例1〜6および比較例1の水系エマルジョン塗料を調製した。
【0058】
(実施例7)
メチルセルロースに代えてカルボキシメチルセルロース(水溶性高分子化合物、日本製紙ケミカル(株)製、数平均分子量8000、下記表1では「CMC」と略記する)に使用する以外は、実施例3と同様にして、水系エマルジョン塗料を調製した。
【0059】
(金属亜鉛末の凝集および沈降状態の評価)
実施例1〜7および比較例1で得られた各塗料を、A液とB液との混合直後から20分間放置した後、各塗料中での金属亜鉛末の凝集および沈降状態を目視で観察し、次のように評価した。結果を表1に示す。
【0060】
◎:凝集物および沈殿が生じていない。
○:凝集力の弱い凝集物が生じているが、撹拌により容易に均一に分散する。
△:塗料中の全体に凝集が発生し、上部の凝集物の凝集力は弱いが、底部に凝集力の
強い沈殿が生じている。
×:塗料中の全体に凝集が発生し、上部には凝集力の強い凝集物が生じ、底部には凝
集力の強い沈殿が生じている。
【0061】
(塗膜の液面状態および水素ガスの発生状態の評価)
実施例1〜7および比較例1で得られた各塗料を1リットル容のガラス製ビーカーに入れ、塗料の液面状態および水素ガスの発生状態を目視で観察し、次のように評価した。結果を表1に示す。
【0062】
◎:気泡の発生が認められず、液面にも変化がない。
○:気泡の発生が僅かに認められる。
△:発生した気泡のうち、一部が液面にて潰れるのを確認できる。
×:気泡が多量に発生し、液面にて激しく潰れるのを確認できる。
【0063】
(塗装作業性の評価)
実施例1〜7および比較例1で得られた塗料をローラ刷毛にて鉄板表面に塗布し、各塗料の塗装作業性を調べ、次のように評価した。結果を表1に示す。
【0064】
◎:ローラ刷毛による塗装が容易であり、塗膜表面が平坦でかつ塗膜が均一である。
○:ローラ刷毛による塗装は容易であるが、塗膜表面がユズ肌になっている。
△:ローラ刷毛による塗装に注意を要し、塗膜の厚みに小さなばらつきが生じている。
×:ローラ刷毛で塗装することができない。
【0065】
【表1】

【0066】
表1から、水系エマルジョンバインダおよび水溶性高分子化合物を含むA液と、金属亜鉛末および有機溶剤を含むB液と、を混合して水系エマルジョン塗料を調製することにより、金属亜鉛末の水系エマルジョン塗料中での分散安定性が向上することが明らかである。また、実施例1〜7と比較例1との比較から、水溶性高分子化合物が、金属亜鉛末の分散安定性を高める効果と、水素の発生を抑制する効果と、を有していることが明らかである。
【0067】
また、実施例1〜6(特に実施例2〜4)と比較例1との対比から、所定量のメチルセルロース(CM)を含有することにより、水素ガスの発生が抑制され、かつ、塗装作業性に優れた水系エマルジョン塗料が得られることが明らかである。また、実施例7から、水溶性高分子化合物としてメチルセルロースに代えてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いる場合でも、金属亜鉛末などの成分の分散安定性が良好で、水素ガスの発生が抑制され、塗装作業性に優れた水系エマルジョン塗料が得られることが明らかである。
【0068】
また、実施例2〜4の結果から、水溶性高分子化合物の含有量が、樹脂固形分100重量部に対して、0.5重量部以上、5重量部未満であれば、金属亜鉛末の分散安定性、水素ガスの発生を抑制する効果、並びに塗装作業性を高水準で満足できる水系エマルジョン塗料が得られることがわかる。
【0069】
実施例2〜4および比較例1の水系エマルジョン塗料を、エアースプレーにより、サンドプラスト鋼板の表面に塗布し、得られた塗膜を室内で3日間乾燥させ、さらに屋外で7日間暴露し、厚さ50μmの硬化膜を作製した。この硬化膜の表面を目視観察した。実施例2〜4の硬化膜は、膜厚がほぼ均一であり、表面にはクレータ状の窪みや亀裂は存在せず、平滑な表面であった。これに対し、比較例1の硬化膜は、膜厚がばらつき、その表面にはクレータ状の窪みが多数存在し、表面は凸凹であった。
【0070】
さらに実施例2〜4の硬化膜を300℃の恒温槽に入れて3日間保存した後に、取り出して外観を調べたが、硬化膜には亀裂などは発生せず、硬化膜の剥離も認められなかった。そして、この後も、硬化膜を形成した鉄板表面には錆は発生せず、防錆性能が維持されていることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性樹脂の水溶液および水分散性樹脂の水分散液から選ばれる少なくとも1種の水系エマルジョンバインダ、水溶性高分子化合物、金属亜鉛末、並びに有機溶剤を含む、水系エマルジョン塗料。
【請求項2】
前記水系エマルジョンバインダおよび前記水溶性高分子化合物を含む液と、前記金属亜鉛末および前記有機溶剤を含む液と、を混合することにより得られる、請求項1に記載の水系エマルジョン塗料。
【請求項3】
前記金属亜鉛末、前記水溶性高分子化合物および前記有機溶剤を含む液と、前記水系エマルジョンバインダと、を混合することにより得られる、請求項1に記載の水系エマルジョン塗料。
【請求項4】
前記水系エマルジョンバインダに含まれる水の量が、前記有機溶剤の量と同量であるか又はそれよりも多い請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系エマルジョン塗料。
【請求項5】
前記水系エマルジョンバインダの樹脂固形分100重量部に対して、前記金属亜鉛末0.1〜500重量部、前記水溶性高分子化合物0.01〜20重量部、および前記有機溶剤0.1〜100重量部を含み、前記水系エマルジョンバインダに含まれる水の量が、前記有機溶剤の量の1〜20倍である請求項4に記載の水系エマルジョン塗料。
【請求項6】
前記金属亜鉛末の体積平均粒子径が0.1μm〜100μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の水系エマルジョン塗料。
【請求項7】
前記水溶性高分子化合物が、セルロースエーテル類およびポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の水系エマルジョン塗料。
【請求項8】
前記水溶性高分子化合物が前記セルロースエーテル類であり、前記セルロースエーテル類が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、および、カルボキシメチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の水系エマルジョン塗料。
【請求項9】
前記水溶性高分子化合物の数平均分子量が、8000〜75000である請求項1〜8のいずれか1項に記載の水系エマルジョン塗料。
【請求項10】
前記水系エマルジョンバインダがシリコーン樹脂の水分散液であり、その硬化膜が200℃〜400℃の温度下で耐熱性を有している請求項1〜9のいずれか1項に記載の水系エマルジョン塗料。
【請求項11】
シリコーン樹脂の水分散液100重量部(樹脂固形分)および数平均分子量が8000〜75000である水溶性高分子化合物0.01〜20重量部を含む液と、金属亜鉛末0.1〜500重量部および有機溶剤0.1〜100重量部を含む液とを混合することにより得られ、前記水分散液に含まれる水の量が、前記有機溶剤の量の1〜20重量倍である水系エマルジョン塗料。
【請求項12】
水溶性樹脂の水溶液および水分散性樹脂の水分散液から選ばれる少なくとも1種の水系エマルジョンバインダ並びに水溶性高分子化合物を含む液と、金属亜鉛末および有機溶剤を含む液と、を混合し、得られた水系エマルジョン塗料を、鉄を含む部材の表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させる塗装方法。
【請求項13】
金属亜鉛末、水溶性高分子化合物および有機溶剤を含む液と、水溶性樹脂の水溶液および水分散性樹脂の水分散液から選ばれる少なくとも1種の水系エマルジョンバインダと、を混合し、得られた水系エマルジョン塗料を、鉄を含む部材の表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させる塗装方法。
【請求項14】
前記部材が、200℃〜400℃の温度に晒される部材である請求項12または13に記載の塗装方法。

【公開番号】特開2013−60536(P2013−60536A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200212(P2011−200212)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(500223246)熱研化学工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】