説明

水系エマルジョン組成物

【課題】水系エマルジョン組成物中にDBUを使用することにより、夏季においても安定に加工を行うことを可能とする。
【解決手段】(A)水系エマルジョン(固形分換算)100重量部に対し、(B)無機充填材 100〜1,000重量部、(C)1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 0.05〜1.0重量部、および(D)ポリイソシアネート化合物 0.1〜10.0重量部を含有させた水系エマルジョン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットのバッキング用などに有用な水系エマルジョン組成物、およびこの組成物を用いたカーペットの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、敷物原反の裏面加工は、水系エマルジョン組成物を塗工し、加熱乾燥する方法、熱可塑性樹脂を押し出し機から溶融塗工する方法、水系エマルジョンに熱可塑性樹脂パウダーを混合したものを塗工し、加熱乾燥する方法、熱可塑性樹脂の粉末を塗工し、加熱溶融塗工する方法、あるいは、熱可塑性樹脂のシートを乗せて加熱溶融塗工する方法、更に各種塗工後、必要に応じてさらに不織布などの布帛を貼り合わせる方法などが採用されている。水系エマルジョン組成物の塗工量を多くする場合、硬化の促進を目的に水系エマルジョン組成物にポリイソシアネート化合物を使用することが一般的であるが、夏季(25℃以上)の環境では、イソシアネートの反応が良すぎるために、硬化速度がコントロールできず問題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、夏季のような高温状態においても、硬化速度をコントロールでき、安定的に加工を行うことができる、水系エマルジョン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(A)水系エマルジョン(固形分換算)100重量部に対し、(B)無機充填材 100〜1,000重量部、(C)1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(以下「DBU」ともいう。CAS No.6674−22−2) 0.05〜1重量部、および(D)ポリイソシアネート化合物 0.1〜10重量部を含有してなる水系エマルジョン組成物に関する。
ここで、(A)成分としては、好ましくはスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンおよび天然ゴムラテックスの群から選ばれた少なくとも1種である。
また、(B)無機充填材としては、炭酸カルシウムが好ましい。
さらに、(D)ポリイソシアネート化合物としては、好ましくはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである。
本発明の水系エマルジョン組成物は、カーペットバッキング用として有用である。
次に、本発明は、カーペットの裏面に、上記の水系エマルジョン組成物を塗工し、必要に応じてさらに布帛を貼り合わせて、加熱硬化させたのち、乾燥することを特徴とするカーペットの加工方法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によると、水系エマルジョン組成物中のDBUの存在により、ポリイソシアネート化合物の硬化が抑制されるため、夏季のような高温状態においても、硬化速度をコントロールでき、安定的に加工を行うことができる、水系エマルジョン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の水系エマルジョン組成物は、例えばカーペットの裏面加工において、バッキングに用いられるエマルジョン組成物中にDBUを用いることにより、ポリイソシアネート化合物の硬化を抑制し、安定的な加工を供給することが可能となるものである。
なお、組成物中には、上記(A)〜(D)成分のほか、(E)分散剤、(F)消泡剤、その他の添加剤として、顔料、老化防止剤、界面活性剤、架橋剤、酸化防止剤、増粘剤、防腐剤も添加することができる。
【0007】
(A)水系エマルジョン;
本発明のバッキング用組成物に用いられる(A)水系エマルジョンは、樹脂エマルジョンおよびゴムラテックスの群から選ばれた少なくとも1種のベースエマルジョンであり、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス、ウレタン樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックスなどが含まれる。好ましくは、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンおよび天然ゴムラテックスの群から選ばれた少なくとも1種である。
この(A)成分は、本発明のカーペットバッキング用水系エマルジョン組成物において、無機充填材のバインダーや、カーペットパイルの固着、耐折れ性付与、弾性付与の役目を果たすものである。
【0008】
ここで、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(SBRラテックス)は、例えば、全単量体100重量%中、スチレン15〜85重量%、好ましくは25〜50重量%、ブタジエン85〜15重量%、好ましくは75〜50重量%、共重合可能なその他の単量体0〜8.0重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%を共重合して得られるガラス転移温度が−60℃〜−10℃、好ましくは−50℃〜−15℃のSBRラテックスである。
ここで、上記共重合可能なその他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜4の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、アミド基を有する(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシル基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エポキシ基を有するグリシジルメタクリレートなどの官能基モノマー、その他(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらの共重合可能なその他の単量体は、1種類以上の単量体を併用してもよい。
市販のSBRラテックスとしては、JSR社製 JSR 0545、JSR 0533、JSR 0548などが好ましく使用される。
【0009】
また、アクリル樹脂エマルジョンとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンを乳化共重合して得られる、ガラス転移温度が−60℃〜−10℃、好ましくは−50℃〜−15℃の(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体エマルジョンが好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜4の(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとスチレンの共重合割合は、通常、全単量体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル40〜90重量%、好ましくは70〜90重量%、スチレン60〜10重量%、好ましくは30〜10重量%、共重合可能なその他の単量体0〜8.0重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%である。
ここで、上記共重合可能なその他の単量体としては、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、アミド基を有する(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシル基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エポキシ基を有するグリシジルメタクリレートなどの官能基モノマー、その他(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらの共重合可能な他の単量体は1種類以上の単量体を併用してもよい。
市販のアクリル樹脂エマルジョンとしては、JSR社製 JSR AE940、JSR AE336、JSR AE332などが好ましく使用される。
【0010】
さらに、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン(EVAエマルジョン)としては、全単量体100重量%中、エチレン10〜40重量%、好ましくは15〜30重量%、酢酸ビニル90〜60重量%、好ましくは85〜70重量%、共重合可能なその他の単量体0〜8.0重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%を共重合して得られる、ガラス転移温度が−35℃〜+10℃、好ましくは−30℃〜0℃のエチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンである。
ここで、上記共重合可能なその他の単量体としては、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、アミド基を有する(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシル基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エポキシ基を有するグリシジルメタクリレートなどの官能基モノマー、その他(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらの共重合可能な他の単量体は1種類以上の単量体を併用してもよい。
市販のEVAエマルジョンとしては、住友化学工業社製 スミカフレックス755などが好ましく使用される。
【0011】
さらに、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス(NBRラテックス)としては、例えば、全単量体100重量%中、アクリロニトリル15〜50重量%、好ましくは20〜45重量%と、ブタジエン85〜50重量%、好ましくは80〜55重量%、共重合可能なその他の単量体0〜8重量%、好ましくは0.5〜5重量%を共重合して得られる、ガラス転移温度が−60℃〜−10℃、好ましくは−50℃〜−15℃のNBRラテックスが挙げられる。
ここで、上記共重合可能なその他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーやカルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、アミド基を有する(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシル基を有する2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エポキシ基を有するグリシジルメタクリレートなどの官能基モノマーなどが挙げられる。これらの共重合可能なその他の単量体は1種類以上の単量体を併用してもよい。
市販のNBRラテックスとしては、日本ゼオン社製 ニポール1571などが好ましく使用される。
【0012】
さらに、ウレタン樹脂エマルジョンとしては、ウレタンエラストマーを水中に分散させて得られる、ガラス転移温度が−60℃〜+10℃、好ましくは−50℃〜0℃のウレタン樹脂エマルジョンが挙げられる。
市販のウレタン樹脂エマルジョンとしては、旭電化社製 アデカボンタイターHUX−290Hなどが好ましく使用される。
【0013】
さらに、天然ゴムラテックスとしては、通常の市販の高アンモニア天然ゴムラテックスのほか、スチレンやメチルメタクリレートなどで改質された天然ゴムラテックス、低アンモニア天然ゴムラテックス、低(脱)タンパク質天然ゴムラテックスなどが挙げられる。
市販の天然ゴムラテックスとしては、IOIコーポレーション社製、天然ゴムラテックスHAタイプなどが好ましく使用される。
【0014】
以上のベースエマルジョン(ラテックス)である(A)成分は、いずれも、固形分濃度が好ましくは45重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60〜70重量%の高濃度エマルジョン(ラテックス)が用いられる。固形分濃度が45重量%未満では、高濃度の組成物が得られず、乾燥に時間を要し、生産性が劣る。
【0015】
(B)無機充填材;
この(B)無機充填材は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、珪砂および硫酸バリウムの群から選ばれた少なくとも1種の粉末充填材が挙げられる。中でも、炭酸カルシウムが好ましく、特に好ましいのは、重質炭酸カルシウムである。
(B)無機充填材は、増量材として、また固形分濃度の増加や重量感を付与する目的で用いられる。
【0016】
上記(B)無機充填材の使用量は、(A)成分(固形分換算)100重量部に対し、100〜1,000重量部、好ましくは150〜500重量部である。100重量部未満では、増量材としての効果に乏しく、また重量感を付与し難く、一方、1,000重量部を超えると、重くなりすぎたり、バッキング材のゴム弾性が低下する。
以上の(B)無機充填材は、それぞれ、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0017】
(C)DBU;
この(C)DBUは、本発明のカーペットバッキング用水系エマルジョン組成物において、後記(D)ポリイソシアネート化合物の硬化を遅延させ、特に夏季におけるポリイソシアネート化合物の硬化を制御することができ、夏季においても安定に加工を行うことを可能とするものである。(C)DBUは、通常、ポリイソシアネート化合物の硬化触媒として作用するが、驚くべきことに、本発明の組成物においては、(D)ポリイソシアネート化合物による硬化を遅延させて、夏季などにおける組成物の粘度を安定化させ、また長時間安定的に加工することが可能である。
(C)DBUの使用量は、(A)成分(固形分換算)100重量部に対し、0.05〜1重量部、好ましくは0.1〜0.8重量部である。0.05重量部未満では、夏季におけるポリイソシアネート化合物による硬化の遅延効果が無く、一方、1重量部を超えると、硬化の遅延効果が高すぎ硬化しない。
【0018】
(D)ポリイソシアネート化合物(硬化剤);
(D)ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2つ以上有する化合物である。(D)ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基は、本発明の組成物中において、該イソシアネート基が水と反応して水を脱水硬化させ、塗工された組成物の速乾燥性をもたらす硬化剤として機能する。
【0019】
この(D)ポリイソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;ビフェニルトリイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレントリイソシアネートなどのトリイソシアネート化合物;これらの重合物、例えばポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0020】
この(D)ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物と、ポリアミン化合物、ポリオール化合物(多価アルコールを含む)などとの反応により得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの形態で用いることもできる。
【0021】
上記ポリアミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンヘキサミン、ペンタエチレンヘキサミン、シクロヘキシレンジアミン類、イソホロンジアミン類、フェニレンジアミン類、トリレンジアミン類、キシリレンジアミン類、ジフェニルメタンジアミン類、トリフェニルメタンポリアミン類、ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどを挙げることができる。
【0022】
また、上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
【0023】
さらに、上記ポリオール化合物としては、上記多価アルコール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド類との付加重合により得られるポリエーテルポリオール化合物;上記多価アルコール類と、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、酒石酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの多塩基酸類との縮合反応により得られるポリエステルポリオール化合物;ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類の開環重合により得られるポリエステルポリオール化合物;両末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂にモノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類を反応させたエポキシポリオール化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸モノエステルなどの水酸基含有重合性モノマーの単独重合体またはそれらの共重合体;上記水酸基含有重合性モノマーと、他の共重合可能なモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレンなどとの共重合体;ヒマシ油もしくはその誘導体などを挙げることができる。
上記(D)ポリイソシアネート化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
市販のポリイソシアネート化合物としては、BASF INOAC ポリウレタン社製 ルプラネートM−20S、ルプラネートMB−9Sなどが好ましく使用される。
【0024】
(D)ポリイソシアネート化合物の使用量は、(A)成分(固形分換算)100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8.0重量部である。0.1重量部未満では、得られる組成物の硬化性が遅い。一方、10重量部を超えると、組成物の硬化性が早く、塗工する前に硬化するため、作業性が悪い。
なお、(D)ポリイソシアネート化合物は、他の成分を混合して水系エマルジョン組成物を調製後、最終の使用直前までの適宜の段階で配合することができるが、本発明の組成物を塗工する直前に添加して攪拌混合することが望ましい。
また、本発明の組成物には、上記(A)〜(D)成分のほかに、下記のような添加剤を配合することができる。
【0025】
(E)分散剤;
この(E)分散剤は、本発明の組成物において、無機充填材の均一な分散と組成物粘度を保持するという役目を果たすものである。
(E)分散剤としては、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩などの無機系分散剤、ポリカルボン酸塩、ホルマリン縮合ナフタレンスルホン酸塩などの高分子分散剤などが挙げられ、好ましくは無機系分散剤である。
(E)分散剤の使用量は、(A)成分(固形分換算)100重量部に対し、0.3〜2.0重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部である。0.3重量部未満では、無機充填材が均一に分散せず、一方、2.0重量部を超えると、粘度保持ができず、分離と無機充填材の沈降現象が発生する。
【0026】
(F)消泡剤;
この(F)消泡剤は、本発明の組成物において、組成物の生産時における泡立ち防止、および加工時における泡立ち防止という役目を果たすものである。
(F)消泡剤としては、鉱物油系消泡剤や、ポリジメチルシロキサンオイル、エチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド変性の、ジメチルシリコーンもしくはジメチルシリコーンエマルジョンなどのシリコーン系消泡剤、アセチレンアルコールなどのアルコール系消泡剤などが挙げられる。
(F)消泡剤の使用量は、(A)成分(固形分換算)100重量部に対し、0.1〜4.0重量部、好ましくは0.3〜3.0重量部である。0.1重量部未満では、充分な消泡効果がなく、一方、4.0重量部を超えると、ハジキ現象が出て、加工製品の外観を悪くする。
【0027】
その他の添加剤(老化防止剤など);
本発明の組成物には、その他、カーボンブラック、ベンガラ、有機系着色剤などの顔料のほか、架橋剤、老化防止剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤などを配合することができる。
【0028】
本発明の組成物の調製
本発明の組成物は、塗工前に、例えば、上記(A)〜(C)および(E),(F)成分、さらにその他の添加剤を配合してなる、固形分濃度が75重量%以上の水系エマルジョン組成物に、上記(D)ポリイソシアネート化合物を配合して得られる。
ここで、本発明の水系エマルジョン組成物の固形分濃度は、通常、70〜90重量%、好ましくは77〜87重量%である。70重量%未満では、得られる組成物中の水分量が多くなり、乾燥性が悪くなる。また、この組成物を硬化させるための(D)ポリイソシアネート化合物の使用量が多くなり、組成物が発泡するため性能が劣ると共にコストアップとなる。一方、90重量%を超えると、エマルジョンとしての安定性が著しく損なわれる。
(A)〜(C)および(E),(F)成分、さらにその他の添加剤の混合や、これらの成分を含有する組成物と(D)ポリイソシアネート化合物との混合は、ラインブレンダー、ニーダー、ブレンダーなどの混合機により行うことができる。また、この際の混合温度は、通常、5〜35℃である。
【0029】
カーペットの加工方法
本発明では、カーペットの裏面に、上記(A)〜(C)および(E)、(F)成分、さらにその他の添加剤を含有する水系エマルジョン組成物と、硬化剤である(D)ポリイソシアネート化合物とを混合して得られる本発明の水系エマルジョン組成物を塗工し、さらに布帛を貼り合わせて、加熱硬化させたのち、乾燥することにより、乾燥工程が大幅に短縮され、しかも高強度の硬化体を貼り合わせ材として有するカーペットが得られる。
本発明のカーペットの加工方法によれば、(A)〜(C)および(E)、(F)成分、さらにその他の添加剤を主成分とする組成物に、硬化剤である(D)ポリイソシアネート化合物を添加することにより、エマルジョン中の脱水、水との反応による水処理により、例えば、160℃で約3分加熱する程度で、実用可能な強度の硬化体(裏打ち材)が得られ、乾燥工程が大幅に短縮できる。また、硬化遅延成分である(C)DBUを使用することにより、ポリイソシアネートの硬化速度を制御することができ、夏季においても安定に加工を行うことが可能となる。
【0030】
その加工方法の一例を以下に示すが、本発明は、以下に限定されるものではない。
すなわち、上記(A)〜(C)および(E)、(F)成分、さらにその他の添加剤を配合して得られる、固形分濃度が77〜87重量%の組成物に、使用直前に、ラインブレンダーなどの混合機を用いて、上記(D)ポリイソシアネート化合物を添加・混合した本発明の水系エマルジョン組成物を、例えば、フッ素樹脂加工したコンベア上に、1〜3mmの厚さに塗工する。その後、寸法安定、反り防止として、ガラスやポリエステル製のメッシュまたは不織布などを貼り合わせる。さらに、再度、本発明の組成物を、1〜3mmの厚さに塗工したのち、カーペットの裏面と貼り合わせる。その後、100〜180℃、好ましくは150〜170℃の熱風乾燥機内を1〜5分、好ましくは1〜3分通過させて、加熱硬化を行い、コンベア面からカーペットを剥がして、さらに100〜180℃、好ましくは150〜170℃の熱風乾燥機で、1〜15分、好ましくは3〜10分乾燥することにより、裏打ちされたカーペットが得られる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、実施例中における部および%は特に断らない限り重量基準である。
実施例1
表1に示すように、(A)SBRラテックス(JSR社製 0545) 100部(固形分換算)に対し、(B)無機充填材(清水工業社製 重質炭酸カルシウム) 500部、(C)DBU(サンアプロ社製 DBU) 0.1部および上記組成物の固形分が85%となるようにイオン交換水を加え、ヤマト科学社製LR500B型攪拌機を用いて、約600rpmの回転速度で約20分間混合した。その後(D)ポリイソシネート化合物(BASF INOAC ポリウレタン社製 ルプラネートM−20S) 5.0部を加えて、同様の攪拌機で3分間攪拌し、本発明の水系エマルジョン組成物を得た。
得られた水系エマルジョン組成物の粘度変化、硬化性、カーペットの性能(熱および水の影響、パイル糸の引き抜き強さ)を評価した。結果を表1に示す。
【0032】
ここで、コンパウンドの固形分濃度、粘度は、次のようにして測定した値である。
コンパウンドの固形分濃度;
JIS K 6833「接着剤の一般試験方法」に準拠した。
コンパウンドの粘度;
JIS K 6833に準拠した。
【0033】
カーペットの塗工試験
得られた水系エマルジョン組成物をフッ素樹脂加工したクロス状シート面に1.2mm厚さにガイドロールを用いて塗布したのち、ガラスメッシュとポリエステル不織布を貼り合わせ、さらにガイドロールを用いて1.2mm厚さに塗り足して、その上に、カーペットの原反を貼り合わせ、160℃の乾燥機で3分間(剥がせない場合は、さらに3分間ごとに追加乾燥し硬化性を判定した。判定は、上限乾燥時間を9分とし、上限を超えても硬化しない時は、硬化性を×とした。)、加熱硬化したのち、シート面より剥がし、剥がし状態を調べた。また、剥がしたのち、さらに160℃で5分間乾燥して、カーペットの性能(熱および水の影響、パイル糸の引き抜き強さ)を試験した。結果を表1に示す。
【0034】
ここで、熱および水の影響、パイル糸の引き抜き強さは、次のようにして測定した。
熱および水の影響による反り(熱および水による反り);
JIS L 4406「タイルカーペット」に準拠した。
熱および水の影響による幅および長さの変化率(熱および水による寸法変化率);
JIS L 4406に準拠した。
パイル糸の引き抜き強さ;
JIS L 4406に準拠した。
【0035】
実施例2〜4、比較例1、2
表1に示すように、DBUの添加量を変えた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4および比較例1、2で用いた水系エマルジョン組成物を作製した。得られた水系エマルジョン組成物について、実施例1と同様にして粘度変化、硬化性、カーペットの性能(熱および水の影響、パイル糸の引き抜き強さ)を評価した。結果を表1に示す。
【0036】
比較例3は本発明の水系エマルジョン組成物の代わりに、市販の塩化ビニル樹脂系バッキング材を使用し、実施例1と同様にしてカーペットの性能(熱および水の影響、パイル糸の引き抜き強さ)を評価した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から明らかなように、比較例2のDBU未添加品はポリイソシアネート化合物添加後、20分で硬化しているのに対し、実施例1〜4は30分以上流動性が有り、加工に適していることが判る。
【0039】
実施例5〜7
表2に示すように、水系エマルジョンを変更する以外は、実施例3と同様にして調製した実施例5〜7を、実施例1と同様にして粘度変化、硬化性、カーペットの性能(熱および水の影響、パイル糸の引き抜き強さ)を評価した。結果を表2に示す。

【0040】
【表2】

【0041】
表1、2における配合材料の説明
*1)SBRラテックス:JSR社製、JSR 0545(カルボキシ変性SBRラテックス 固形分54%)
*2)アクリル樹脂エマルジョン:JSR社製 JSR AE940(固形分60%)
*3)EVAエマルジョン:住友化学工業社製、スミカフレックス755(固形分50%)
*4)天然ゴムラテックス:IOIコーポレーション社製 天然ゴムラテックスHAタイプ (固形分61.5%)
*5)無機充填材:炭酸カルシウム(清水工業社製 重質炭酸カルシウム)
*6)DBU:サンアポロ社製、DBU
*7)ポリイソシアネート化合物:BASF INOAC ポリウレタン社製、ルプラネートM−20S(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)
*8)固形分濃度(%):水系エマルジョン、無機充填材(CaCO)およびDBUからなる水系エマルジョン組成物の固形分濃度
【0042】
表1および2から明らかなように、表1の比較例2のDBU未添加品はポリイソシアネート化合物添加後、20分で硬化しているのに対し、表2の実施例5〜7は、30分以上流動性が有り、加工に適していることが判る。
【0043】
燃焼試験
実施例3および比較例3の水系エマルジョン組成物を、フッ素樹脂加工したクロス状シート面に2mm厚さにガイドロールを用いて塗布したのち、160℃の乾燥機で3分間、加熱硬化したのち、シート面より剥がし、さらに160℃で5分間、乾燥して試験用成形体シートを作製した。この試験体を燃焼させて、燃焼発熱量を測定した。燃焼試験の結果を表3に示す。又、可燃物含量、燃焼ガス中のCO、Cl濃度に関しては、下記の方法によって算出した。
【0044】
【表3】

【0045】
ここで、試験体の可燃物含量、燃焼発熱量、燃焼ガス中のCO、Cl2濃度の測定は、次のようにして行った。
可燃物含量;
水性エマルジョン組成物の可燃物配合割合より算出した。
燃焼発熱量;
JIS K 2279「原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法」に準拠した。
燃焼ガス中のCO、Cl濃度;
「プラスチックの燃焼性」(1979年6月15日発行、(株)工業調査会 喜多 信之著)より算出した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、カーペットバッキング用途として、水系エマルジョン組成物の塗工量を多くすることを目的に、水系エマルジョン組成物とポリイソシアネート化合物を混合して使用する場合、夏季における硬化制御成分としてDBUを添加することにより、ポリイソシアネート化合物の硬化速度をコントロールでき、安定に加工を行うことが可能となる。また、本発明によれば、現行の塩化ビニル樹脂系バッキング材の裏面加工と比べて、燃焼発熱量、燃焼ガス中のCO、Cl濃度が少なく、環境汚染の減少にも極めて有効である。
したがって、本発明の水系エマルジョン組成物は、オフィスおよび戸建住宅・マンションの室内に敷くタイルカーペットの用途に特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水系エマルジョン(固形分換算)100重量部に対し、
(B)無機充填材 100〜1,000重量部、
(C)1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 0.05〜1重量部、および
(D)ポリイソシアネート化合物 0.1〜10重量部
を含有してなる水系エマルジョン組成物。
【請求項2】
(A)成分が、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン、および天然ゴムラテックスの群から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の水系エマルジョン組成物。
【請求項3】
(B)無機充填材が炭酸カルシウムである請求項1記載の水系エマルジョン組成物。
【請求項4】
(D)ポリイソシアネート化合物がポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである請求項1記載の水系エマルジョン組成物。
【請求項5】
カーペットバッキング用である請求項1〜4いずれかに記載の水系エマルジョン組成物。
【請求項6】
カーペットの裏面に、請求項1〜4いずれかに記載の水系エマルジョン組成物を塗工し、必要に応じてさらに布帛を貼り合わせて、加熱硬化させたのち、乾燥することを特徴とするカーペットの加工方法。

【公開番号】特開2006−45530(P2006−45530A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191150(P2005−191150)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000230397)株式会社イーテック (49)
【Fターム(参考)】