説明

水系コーティング組成物

【課題】着色剤の貯蔵安定性に優れ、塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の疎水性の高い基材との濡れ性が良く密着性に優れた塗膜を形成し得る水系コーティング組成物を提供することである。
【解決手段】平均粒子径が15nm〜100nmであるウレタンディスパージョンと、ガラス転移温度Tgが60℃以上で平均粒子径が50nm〜200nmであるアクリルエマルションとが混合されたバインダー、水、着色剤、及び
下記一般式(1)で示される溶剤
−O−(CH−CH(R)−O−)H (1)
(式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。)
を含んだことを特徴とする水系コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系コーティング組成物に関し、着色剤の貯蔵安定性に優れ、塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の疎水性の高い基材や金属板等との濡れ性が良く、密着性に優れた塗膜を形成し得る水系コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から有機溶剤希釈型のコーティング物が多用されてきたが、近年では、シックハウス/シックスクール症候群や揮発性有機化合物(VOC)規制に見られるような大気中への有機溶媒の放散等の環境問題への配慮により溶剤型のコーティング物から水系のコーティング物への社会的ニーズが高まってきている。
【0003】
しかしながら、水系のコーティング物を塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の疎水性の高い基材や金属板等に塗布した場合、水系コーティング物と基材表面との表面張力の違いから、コーティング物が基材表面で濡れ広がらず、均一な塗装膜厚の被塗物が得られ難いといった不具合が生じており、また、塗装膜と基材との密着性も良好ではなかった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−179965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、着色剤の貯蔵安定性に優れ、塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の疎水性の高い基材や金属等との濡れ性が良く密着性に優れた塗膜を形成し得る水系コーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従って、平均粒子径が15nm〜100nmであるウレタンディスパージョンと、ガラス転移温度Tgが60℃以上で平均粒子径が50nm〜200nmであるアクリルエマルションとが混合されたバインダー、水、着色剤、及び
下記一般式(1)で示される溶剤
−O−(CH−CH(R)−O−)H (1)
(式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。)
を含んだことを特徴とする水系コーティング組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の疎水性の高い基材や金属板等に対し濡れ性が良く、密着性・擦過性に優れた塗膜を形成し、貯蔵安定性が良く、更に塗装を安定して行える水系コーティング組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、下記一般式(1)で示される溶剤
−O−(CH−CH(R)−O−)H (1)
(式中、Rは炭素数1〜6アルキル基、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である)
を加えることで基材との濡れ性を向上させ、そしてガラス転移温度Tgの高いアクリルエマルションを用いることで擦過性を向上し、更に溶存酸素を減少させることで貯蔵安定性の向上・塗布の均一化を行ったものである。
【0010】
本発明で記載されているディスパージョンとは乳化剤を用いておらず樹脂自身に親水基が付与しその親水基により樹脂が水中で分散したものを示しており、エマルションとは乳化剤を用い乳化剤により樹脂が分散されたものを示している。
【0011】
<ウレタンディスパージョン>
本発明に用いられるウレタンディスパージョンは特に制限はないが、ウレタンディスパージョンが、ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖伸長剤を反応させて得られるウレタンディスパージョン組成物であることが好ましい。ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖伸長剤を反応させてブロック構造にすることでウレタンディスパージョンの水への分散性安定性が向上する。
【0012】
ポリイソシアネート成分は、その化合物中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート成分中、好ましくは、キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートが用いられる。これらのポリイソシアネート成分は、1種を単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0013】
ポリオール成分は、その化合物中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオール化合物であり、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びアクリルポリオール等が挙げられる。
【0014】
ポリエステルポリオールには特に制限はなく、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクタムジオール又はポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)等を用いることができる。
【0015】
ポリエーテルポリオールには特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を用いることができる。
【0016】
ポリカーボネートポリオールにも特に制限はなく、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール又はポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート等を用いることができる。
【0017】
アクリルポリオールにも特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルやこれらのε−カプロラクトン付加物等のアクリル系単量体を必須成分とするものを用いることができる。
【0018】
これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのポリオール化合物の内、耐加水分解性、耐候性の面から、好ましくは、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール又はポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート等のポリカーボネートポリオールが用いられる。
【0019】
鎖伸長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコールや低分子量のポリアミンを挙げることができる。低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールや、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸等のジメチロールアルカン酸類等が挙げられる。低分子量のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0020】
特に、本発明の水系コーティング組成物に用いられるウレタンディスパージョンはガラス転移温度Tgが50℃以上でありことが好ましく、更に好ましくは60〜80℃である。ウレタンディスパージョンの平均粒子径は15〜100nmであることが必須であり、好ましくは20nm〜80nmである。平均粒子径が15nm未満では擦過性が低下し、100nmを超えると一般式(1)で示される溶剤を用いると平均粒子径が大きくなり粒子の膨潤が見られ貯蔵安定性が低下する。
【0021】
ウレタンディスパージョンの固形分が1〜10重量%、一般式(1)で示される溶剤が15〜40重量%ならびに水を混合した液を60℃で1週間静置した時、静置前と後でウレタンディスパージョンの平均粒子径の増加比率が50%未満であることが好ましい。平均粒子径の増加比率が50%以上であると平均粒子径が大きくなり貯蔵安定性が低下する傾向がある。
【0022】
<アクリルエマルション>
本発明の水系コーティング組成物で用いることができるアクリルエマルションとしても使用されている組成として次のものが挙げられる。
【0023】
重合開始剤としては、一般的にラジカル重合に使用されているものが使用可能であるが、中でも水溶性のものが好適であり、例えば、過硫酸カリウムや、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、4,4’−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物、過酸化水素水及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。更に、L−アスコルビン酸や、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤と硫酸第一鉄等を組み合わせたレドックス系も使用できる。
【0024】
乳化剤としては、例えば、
ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基又は硫酸エステル基を有するモノマーのような反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、反応性ノニオン界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;
アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;及び
(変性)ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0025】
連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン等の長鎖のアルキルメルカプタン類や、芳香族メルカプタン類及びハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。前記乳化重合は、エチレン性不飽和単量体を一括して仕込む単量体一括仕込み法や、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体と水又は水と特定の有機溶剤(a)との混合物(b)と乳化剤や乳化安定剤とを予め混合乳化しておき、これを滴下するプレエマルション法、あるいは、これらを組み合わせる方法等が挙げられる。
【0026】
エチレン性不飽和単量体としては具体的には、例えば、
メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;
スチレンや、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル等のカルボキシル基含有単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;
(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;
2−アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;
グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と、活性水素原子を有する単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴマー;その他
N−メチロール基を有した、N−メチロールアクリルアミドや、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート
等が代表的なものとして挙げられる。
【0027】
特に、水系コーティング組成物に用いられるアクリルエマルションはガラス転移温度Tgが60℃以上であることが必須であり、好ましくは80〜100℃である。ガラス転移温度Tgが60℃未満であると擦過性・耐アルコール性が劣る。ガラス転移温度Tgの上限は120℃である。アクリルエマルションの平均粒子径は50nm〜200nmであり、好ましくは60nm〜150nmである。平均粒子径が50nm未満では粘度の上昇と擦過性の低下が見られ、200nmを超えると一般式(1)で示される溶剤を用いると平均粒子径が大きくなり粒子の膨潤が見られ貯蔵安定性が低下する。
【0028】
<有機溶剤>
本発明においては、下記一般式(1)
−O−(CH−CH(R)−O−)H (1)
(式(1)中、Rは炭素数1〜6アルキル基、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。)
で示される溶剤を配合することにより塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の疎水性の高い基材や金属板等に対する水系コーティング組成物の濡れ性が良くなる。本発明の水系コーティング組成物においては上記一般式(1)で示される溶剤を水系コーティング組成物の全量を基準にして10〜45質量%の量で配合することが濡れ性の点から好ましい。
【0029】
本発明の水系コーティング組成物で用いることができる上記一般式(1)で示される溶剤として、
エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、
エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、
エチレングリコールペンチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、
エチレングリコールシクロヘキシルエーテル、
ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、
ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、
ジエチレングリコールペンチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、
ジエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、
トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、
トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、
トリエチレングリコールペンチルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、
プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、
プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、
プロピレングリコールペンチルエーテル、プロピレングリコールヘキシルエーテル、
プロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、
ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、
ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、
ジプロピレングリコールペンチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、
トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、
トリプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールペンチルエーテル、トリプロピレングリコールヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、及び
の置換基が異なる構造異性体等を挙げることができる。特に、上記溶剤は単独でも混合状態で用いることができ、水系コーティング組成物に上記溶剤を添加することで塩化ビニルシートやPETシートや金属板等との接触角を好ましくは15〜45°、特に好ましくは20〜30°にすることが可能となる。これにより、疎水性の高い基材であっても水との接触性が低下し、水系コーティング組成物の濡れ性が良好となり塗布した際に基材表面に均一に広がる。
【0030】
<着色剤>
本発明の水系コーティング組成物で用いる着色剤については、特に制限は無く、コーティング組成物に一般的に用いられている種々の無機及び有機の顔料ならびに染料を用いることができる。本発明の使用される着色顔料として、
ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、55、74、83、86、93、109、110、117、125、128、129、137、138、139、147、148、150、153、154、155、166、168、180、181、185、
ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71、
ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254、
ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50、
ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、30、64、80、
ピグメントグリーン7、36、
ピグメントブラウン23、25、26、
ピグメントブラック7、26、27、28、
カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0031】
本発明の使用される着色染料として、例えば、
黄色系染料のオイルイエロー129(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントイエロー29)、オレオゾルブリリアントイエロー5G(商品名、田岡化学工業株式会社製、C.I.ソルベントイエロー150)、アイゼンゾットイエロー1(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ソルベントイエロー56)、オラゾールイエロー3R(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントイエロー25)等、
赤色系染料のオイルレッド5B(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントレッド27)、バリファストレッド1306(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントレッド109)、オレオゾルファストレッドBL(商品名、田岡化学工業株式会社製、C.I.ソルベントレッド132)、アイゼンゾットレッド1(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ソルベントレッド24)、オラゾールレッド3GL(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントレッド130)、フィラミッドレッドGR(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントレッド225)、アルコールピンクP−30(商品名、中央合成化学株式会社製)等、
青色系染料のオイルブルー2N(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブルー35)、バリファストブルー1605(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブルー38)、オレオゾルファストブルーELN(商品名、田岡化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブルー70)、アイゼンゾットブルー1(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブルー25)、オラゾールブルーGN(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントブルー67)、アルコールブルーB−10(商品名、中央合成化学株式会社製)等、
黒色系染料のオイルブラックHBB(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック3)、バリファストブラック3804(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック34)、スピリットブラックSB(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック5)、オレオゾルファストブラックRL(商品名、田岡化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック27)、アイゼンゾットブラック8(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック7)、オラゾールブラックCN(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントブラック28)、アルコールブラックBk−10(商品名、中央合成化学株式会社製)等、
また、分散染料のオラセットイエロー8GF(商品名、チバガイギー社製、C.I.ディスパースイエロー82)、アイゼンゾットイエロー5(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ディスパースイエロー3)、スミプラスイエローHLR(商品名、住友化学工業株式会社製、C.I.ディスパースイエロー54)、カヤセットイエローA−G(商品名、日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースイエロー54)、スミプラスレッドB−2(商品名、住友化学工業株式会社製、C.I.ディスパースレッド191)、フィレスターバイオレットBA(商品名、チバガイギー社製、C.I.ディスパースバイオレット57)
等を挙げることができる。
【0032】
本発明の水系コーティング組成物においては着色剤を水系コーティング組成物の全量を基準にして0.5〜25質量%配合することが好ましく、2〜15質量%配合することがより好ましい。着色剤の配合量が0.5質量%未満である場合には光学濃度が低過ぎる傾向があり、逆に25質量%を超える場合には保存安定性が低下する場合がある。
【0033】
<顔料分散剤>
また、着色剤である顔料の分散剤として合成高分子を用いることができ、その具体例として脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル類、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミド、ポリアリールアミン、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂等を水に溶解又は分散した状態のものを挙げることができる。また、自己分散タイプのウレタンディスパージョンも用いることができる。
【0034】
<添加剤>
本発明の水系コーティング組成物は水系であるので当然に水を含有する。水としてイオン交換水、蒸留水等の純水、超純水を用いることができる。また、水系コーティング組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止するために、紫外線照射等により滅菌した水を用いることもできる。水を水系コーティング組成物の全量を基準にして20〜90質量%の量で配合することが好ましい。
【0035】
本発明の水系コーティング組成物には、必要に応じて、表面張力調整剤、アミン類等のpH調整剤、尿素及びその誘導体等のヒドロトロピー剤、防カビ・防腐剤、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、防錆剤、酸化防止剤又はアルカリ増粘タイプ・ウレタン会合タイプの増粘剤等を添加することも可能である。
【0036】
<脱酸素方法>
本発明の水系コーティング組成物の貯蔵安定性の向上・塗布の均一化を図るために水系コーティング組成物中の溶存酸素量を減量することが好ましい。溶存酸素量の減量方法としては、減圧脱酸素法、真空脱酸素法、酸素以外の気体、特に不活性ガスで置換する置換法(バブリング)、超音波脱酸素法等を挙げることができる。これらの溶存酸素量を減量する方法は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの溶存酸素量を減量する方法を行うことによって、水系コーティング組成物中の溶存酸素量は、0.5〜6.0ppm程度にまで減量することができる。水系コーティング組成物中の溶存酸素量は0.5〜5.0ppmが好ましい。なお、溶存酸素量の測定方法としては特に限定されず、例えば、DO METER OM−14(堀場製作所社製)を用いて測定することができる。水系コーティング組成物中の溶存酸素量が6.0ppmを超えると塗装機中で気泡が発生し塗装の均一性を低下させたり、水系コーティング組成物中に含まれる溶剤や樹脂等が酸化され貯蔵安定性を低下させたり、塗膜物性を低下させたりする。
【0037】
<塗装方法>
本発明の水系コーティング組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば単色を塗布するのであればエアースプレー、エアレススプレー、ロールコーター、又はカーテンフローコーターによる塗装や刷毛に塗りによる方法があり、多色を塗布するのであればマスキングを行ないエアースプレー、エアレススプレー、又は刷毛塗り等で塗り重ねる方法や各色をドットとして塗布するディスペンサーやインクジェット装置を用いた方法がある。また、塗布厚は乾燥膜厚で0.5〜800μm程度が好ましい。0.5μm未満では膜性能及び色濃度が十分ではなく、逆に800μmを超えると膜厚が厚く、乾燥過程で塗膜にクラックが生じる可能性があるので好ましくない。
【0038】
<塗膜乾燥方法>
本発明の水系コーティング組成物の塗布後の乾燥温度は特に限定されないが、塗布後の水系コーティング組成物が凍る温度や水分の気化により気泡を発生させる温度では問題が生じるため、常識的には0〜100℃の範囲で乾燥させる。
【0039】
<物性>
本発明の水系コーティング組成物は粘度を1〜100mP・S(20℃)、表面張力を20〜40mN/m、比重を0.8〜1.2の範囲にすることが好ましい。水系コーティング組成物の固形分は1〜30%であることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
【0041】
なお、本発明における平均粒子径は、大塚電子社製「ELS−Z2」粒径測定器を用い25℃で測定し、ガラス転移温度Tgはセイコー電子工業社製「DSC220C」を用いて測定した。
【0042】
(ウレタンディスパージョン−1)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)157.0g、トリメチロールプロパン1.0g、1,4-シクロヘキサンジメタノール10.2g、プロピオン酸10.5g、ジブチル錫ジラウレート0.002g及びメチルエチルケトン110.0gを仕込み、均一に混合した後、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0gを加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン7.5gを加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0043】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水450.0gを徐々に加えてカルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、50%ヒドラジン水溶液6.0gとジエチレントリアミン1.2gとを水20.0gに溶解したポリアミン水溶液を前記分散液に添加し、2時間反応させた後、減圧下、30℃で脱溶剤を行い、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂分35質量%、粘度70mPa・s、平均粒子径21nmの安定なカルボキシル基含有ウレタンディスパージョン−1を得た。
【0044】
(ウレタンディスパージョン−2)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)157.0g、トリメチロールプロパン1.5g、1,4-シクロヘキサンジメタノール12.3g、プロピオン酸8.0g、ジブチル錫ジラウレート0.002g及びメチルエチルケトン110.0gを仕込み、均一に混合した後、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0gを加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン5.8gを加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0045】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水450.0gを徐々に加えてカルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、50%ヒドラジン水溶液6.0gとジエチレントリアミン1.1gとを水20.0gに溶解したポリアミン水溶液を前記分散液に添加し、2時間反応させた後、減圧下、30℃で脱溶剤を行い、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂分35質量%、粘度120mPa・s、平均粒子径91nmの安定なカルボキシル基含有ウレタンディスパージョン−2を得た。
【0046】
(ウレタンディスパージョン−3)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)105.0g、トリメチロールプロパン1.0g、1,4-シクロヘキサンジメタノール8.0g、プロピオン酸16.0g、ジブチル錫ジラウレート0.002g及びメチルエチルケトン90.0gを仕込み、均一に混合した後、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0gを加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン11.5gを加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0047】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水380.0gを徐々に加えてカルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、50%ヒドラジン水溶液6.0gとジエチレントリアミン1.1gとを水20.0gに溶解したポリアミン水溶液を前記分散液に添加し、2時間反応させた後、減圧下、30℃で脱溶剤を行い、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂分35質量%、粘度50mPa・s、平均粒子径12nmの安定なカルボキシル基含有ウレタンディスパージョン−3を得た。
【0048】
(ウレタンディスパージョン−4)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)157.0g、トリメチロールプロパン4.8g、1,4-シクロヘキサンジメタノール10.0g、プロピオン酸6.9g、ジブチル錫ジラウレート0.002g及びメチルエチルケトン110.0gを仕込み、均一に混合した後、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0gを加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン5.0gを加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0049】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水380.0gを徐々に加えてカルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、50%ヒドラジン水溶液6.0gとジエチレントリアミン1.1gとを水20.0gに溶解したポリアミン水溶液を前記分散液に添加し、2時間反応させた後、減圧下、30℃で脱溶剤を行い、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂分35質量%、粘度150mPa・s、平均粒子径124nmの安定なカルボキシル基含有ウレタンディスパージョン−4を得た。
【0050】
得られたウレタンディスパージョン−1〜−4と一般式(1)で示される溶剤ならびに水を表1に示される量比で混合し、その後、液を60℃で1週間静置した時、静置前と後でウレタンディスパージョンの平均粒子径の増加比率を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
(アクリルエマルション−1)
撹拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水30部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.2部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル1部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.1部を加えた後、アクリル酸ブチル3部、アクリル酸1部、スチレン12部、メタクリル酸メチル24部を混合したものを滴下し、その後、水30部を加え、アンモニア水でpHが9になるように調製した。平均粒子径は105nm、ガラス転移温度Tg=83℃であった。
【0053】
(アクリルエマルション−2)
撹拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水30部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.4部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル1部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.1部を加えた後、アクリル酸ブチル3部、アクリル酸1部、スチレン12部、メタクリル酸メチル24部を混合したものを滴下し、その後、水30部を加え、アンモニア水でpHが9になるように調製した。平均粒子径は55nm、ガラス転移温度Tg=82℃であった。
【0054】
(アクリルエマルション−3)
撹拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水30部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.2部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル0.7部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.1部を加えた後、アクリル酸ブチル3部、アクリル酸1部、スチレン12部、メタクリル酸メチル24部を混合したものを滴下し、その後、水30部を加え、アンモニア水でpHが9になるように調製した。平均粒子径は195nm、ガラス転移温度Tg=84℃であった。
【0055】
(アクリルエマルション−4)
撹拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水30部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.2部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル1部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.1部を加えた後、アクリル酸ブチル6部、アクリル酸1部、スチレン9部、メタクリル酸メチル24部を混合したものを滴下し、その後、水30部を加え、アンモニア水でpHが9になるように調製した。平均粒子径は117nm、ガラス転移温度Tg=67℃であった。
【0056】
(アクリルエマルション−5)
撹拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水30部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.2部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル0.5部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.1部を加えた後、アクリル酸ブチル12部、アクリル酸1部、スチレン3部、メタクリル酸メチル24部を混合したものを滴下し、その後、水30部を加え、アンモニア水でpHが9になるように調製した。平均粒子径は214nm、ガラス転移温度Tg=37℃であった。
【0057】
(実施例1〜40及び比較例1〜6)
溶媒と顔料と顔料分散剤とを表2〜表6に示す量比で混合し、練合を行った後、その練合した混合物に表2〜表6に示す量比でアクリルエマルションを徐々に添加し、十分攪拌を行ったのち必要なものには脱酸素処理として1回目は超音波照射、2回目には窒素バブリングを行い、実施例1〜40及び比較例1〜6の水系コーティング組成物を得た。
【0058】
上記の各々の水系コーティング組成物を塗装機(コニカミノルタ社製、HEK−1)により基材(塩化ビニル樹脂板・PET樹脂板・金属板)上に塗布し、下記の評価法で基材に対する水系コーティング組成物の濡れ性を評価した。その評価結果は表2〜表6に示す通りであった。また、上記の各々の水系コーティング組成物を基材上に乾燥膜厚で5μm程度となるように塗布し、50℃で60分間乾燥させた。その塗膜の基材に対する密着性を下記の評価法で評価した。その評価結果は表2〜表6に示す通りであった。
【0059】
<水系コーティング組成物の貯蔵安定性>
60℃で1週間静置した時、静置前と後で水系コーティング組成物の平均粒子径を測定し貯蔵安定性の評価を下記の基準で評価した。
○:平均粒子径が変化無し
△:平均粒子径の増加が50%以下であった
×:平均粒子径の増加が50%超過であった
【0060】
<水系コーティング組成物の濡れ性>
基材上に対する水系コーティング組成物の濡れ性を目視により下記の基準で評価した。
○:基材全体に水系コーティング組成物が均一に広がり、ハジキやピンホール等の発生がない
△:膜厚に若干のばらつきが生じるものの、水系コーティング組成物が均一に広がる
×:ハジキ・ピンホールが発生する
【0061】
<塗膜の密着性>
基材上の表面塗膜を2mm巾碁盤目ガイドを用いてカッターナイフでカットし、カット部分の塗膜面に粘着セロハンテープを貼り付け強く剥離した後の塗膜面を下記評価基準にて評価した。
○:剥離無し
△:若干剥離有り
×:著しい剥離有り
【0062】
<塗膜の消しゴム擦過性>
基材上の表面塗膜を消しゴム(商品名:MONO トンボ鉛筆社製)で30回擦った際に、表面塗膜の状態を目視で観察評価した。
○:塗膜表面に変化無し
△:塗膜表面に若干キズがあり
×:塗膜が削れたもの
【0063】
<塗膜のアルコール擦過性>
基材上の表面塗膜を、60%エタノール水溶液を滲みこませたキムワイプ(クレシア社製)で10回擦った際に、表面塗膜の濃度の変化を目視で観察評価した。
○:塗膜表面に変化無し
△:塗膜表面の色が若干薄くなったもの
×:基材まで塗膜が削れたもの
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

表2〜表6の結果より、本願発明で用いられる一般式(1)で示される溶剤は水系コーティング組成物の基材への濡れ性を向上させることができるものである。しかしながら、本願発明の範囲外のウレタンディスパージョンではウレタンディスパージョンと一般式(1)で示される溶剤とを混合する比率によってウレタンディスパージョン自身の貯蔵安定性を悪くし、更には水系コーティング組成物の貯蔵安定性を悪くすることがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が15nm〜100nmであるウレタンディスパージョンと、ガラス転移温度Tgが60℃以上で平均粒子径が50nm〜200nmであるアクリルエマルションとが混合されたバインダー、水、着色剤、及び
下記一般式(1)で示される溶剤
−O−(CH−CH(R)−O−)H (1)
(式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。)
を含んだことを特徴とする水系コーティング組成物。
【請求項2】
減圧脱気又は不活性ガスを用いたバブリング又は超音波照射により脱酸素処理を行った請求項1に記載の水系コーティング組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される溶剤が15〜40重量%、前記ウレタンディスパージョンの固形分が1〜10重量%ならびに水を混合した液を60℃で1週間静置した時、静置前と後でウレタンディスパージョンの平均粒子径の増加比率が50%未満であるウレタンディスパージョンを用いた請求項1又は2に記載の水系コーティング組成物。

【公開番号】特開2011−207945(P2011−207945A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74878(P2010−74878)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】