説明

水系プライマー組成物

【課題】各種被着材と離型剤層との間の接着性やエタノール耐性を高めることができる水系プライマー組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものであることを特徴とする水系プライマー組成物、それを用いて製膜してなるプライマー層、その上に離型剤層有する工程紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系プライマー組成物に関し、更に詳細には、特定のチタン化合物オリゴマーに対し特定のシリコン化合物を反応させた構造又は混合させた組成を有するものを含有するプライマー組成物に関するものであり、特に、シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いた離型剤層や、付加型シリコーン系離型剤を用いて得られる離型剤層と、各種被着材に対する接着性を向上させる水系プライマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いる離型剤は、シリルイソシアネート化合物と、「水酸基等のイソシアネート基と反応をする官能基」を有するジメチルポリシロキサンと、溶剤等を混合することによって得られ、加熱硬化することによって、離型効果を各種被着材に付与できる。
【0003】
しかしながら、シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いた離型剤層は、エタノールに対する耐性が無く、エタノールを含んだ脱脂綿等で離型剤層の表面を擦ると離型剤層が脱落するといった被着材との接着性の面で問題があった。
【0004】
一方、付加型シリコーン系離型剤は、ヒドロシリル基を有するジメチルポリシロキサンとビニル基を有するジメチルポリシロキサンを、塩化白金酸を代表とする触媒を使用して、付加反応をさせて得られるもので、製膜することで、各種被着材に離型効果を付与できることが知られている。この効果の利用は、各種金属やプラスチックフィルムに塗布、硬化し、離型フィルムの分野で様々な検討がされている。
【0005】
しかしながら、付加型シリコーン系離型剤を用いた離型剤層は、空気中に暴露すると経時により剥離力が上昇する;高温・高湿度下に暴露後、膜を擦ると脱落する;特にエタノールに対する耐性が弱く、エタノールを含んだ脱脂綿等で離型剤層表面を擦ると離型剤層が脱落する;といった被着材との接着性の面で問題があった。
【0006】
そこで、被着材に対する「シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いた離型剤層」や「付加型シリコーン系離型剤層」の、エタノールに対する耐性や、接着性を改良するために、被着材をまずプライマーで処理し、その上にかかる離型剤層を設けることが知られている。このようなプライマーに関しては、シランカップリング剤を単独で使用して接着性を高めたり、ポリエステル樹脂等を使用して接着性を高めたり、樹脂とシランカップリング剤を併用させること等によって接着性を高めることが行われている。
【0007】
しかしながら、このようなものは何れも溶剤を使用するため、環境汚染につながると考えられ、有機溶剤を極力減じた無溶剤型や水系の、塗料や表面処理組成物の開発が広く求められている。また、離型剤層をエタノールで擦ると離型剤層が脱落したり、高温、高湿度下に処理したフィルムを暴露すると、離型剤層が脱落し易かったり、柔らかい被着材への変形追従性が乏しかったりして、十分な接着性が得られないことがあった。
【0008】
【特許文献1】特公平5−083074号公報
【特許文献2】特開平10−029288号公報
【特許文献3】特開平11−349714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、各種被着材と離型剤層との間の接着性を高めることができる水系プライマー組成物を提供することにある。特に、シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いた離型剤層、又は、付加型シリコーン系離型剤層と、被着材との間の接着性を著しく高めることができる水系プライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、チタン化合物オリゴマーとグリコール化合物とアミン化合物を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物に、特定のシリコン化合物を溶剤中で反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものが、水系化合物として水に溶解又は分散して存在することを見出し、また、被着材との間の接着性に関し、上記課題を解決できるものであることを見出して本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、本発明は、少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものであることを特徴とする水系プライマー組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記の水系プライマー組成物を用いて製膜してなるプライマー層を提供するものであり、また、上記プライマー層の上に離型剤層を有する工程紙を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上記プライマー層の上に形成された離型剤層の上に粘着剤層を有する粘着フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水系プライマー組成物を用いれば、各種被着材と離型剤層との間の接着性を高めることができる。また、離型剤層の上に設けられた接着剤層を除くためにエタノールが使用される場合があるが、そのエタノールに対する離型剤層の耐性を高めることができる。
【0015】
特に、「シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いた縮合型の離型剤層」又は「付加型シリコーン系離型剤を使用することによって得られる離型剤層」と被着材との接着性を高めることができ、エタノールに対する耐性を高めることができる。また特に、付加型シリコーン系離型剤を用いた場合には、エタノールに対する耐性を著しく高めることができ、更に、高温、高湿度下に、離型剤を製膜して離型層を設けたフィルムを静置した場合の接着性を高めることができる。また特に、二軸延伸をしたポリオレフィンフィルムやポリエチレンテレフタレートに代表されるプラスチックフィルム等の被着材に対しての接着性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0017】
[チタン複合組成物]
本発明の水系プライマー組成物は、特定のチタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものである。
そして、かかる特定のチタン複合組成物は、少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有する。
【0018】
[[チタン化合物オリゴマー(a)]]
チタン化合物オリゴマー(a)は特に限定はないが、「下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物」が縮合した構造を有するものが好ましい。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【0019】
縮合前の出発物質である「式(1)で表されるチタンアルコキシド」は、上記式(1)中のR〜Rが、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基であるものであるが、それぞれ独立に炭素数1〜8個のアルキル基であるものが好ましく、それぞれ独立に炭素数1〜5個のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0020】
「式(1)で表されるチタンアルコキシド」としては、具体的には例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、ジイソプロポキシジn−ブトキシチタン、ジtert−ブトキシジイソプロポキシチタン、テトラtert−ブトキシチタン、テトライソオクトキシチタン、テトラステアロキシチタン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0021】
縮合前の出発物質としては、上記した「式(1)で表されるチタンアルコキシド」の他に、「式(1)で表されるチタンアルコキシド」にキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物も好ましいものとして挙げられる。かかるキレート化剤としては特に限定はないが、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが、チタン化合物の加水分解等に対する安定性を向上する点で好ましい。
【0022】
β−ジケトン化合物としては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば具体的には、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、ジベンゾイルメタン、テノイルトリフルオロアセトン、1,3−シクロヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0023】
β−ケトエステルとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば具体的には、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0024】
多価アルコールとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0025】
アルカノールアミンとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0026】
オキシカルボン酸としては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0027】
上記「式(1)で表されるチタンアルコキシド」又は「該チタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物」が縮合することによってチタン化合物オリゴマー(a)が得られる。ここで縮合させる方法としては特に限定はないが、該チタンアルコキシド又は該チタンキレート化合物に、アルコール溶液中で水を反応させることにより行う方法、又は、後述のアミン化合物(b)の存在下で、アルコール溶液中で水を反応させることにより行う方法が好ましい。
【0028】
縮合させてオリゴマー化するために用いる水の量については、チタンアルコキシド及び/又はチタンキレート化合物の合計量1モルに対し、すなわちチタン原子1モルに対して、水のモル数が0.2〜2モルであることが、水に対する安定性、製膜性、塗布性等の点で好ましく、0.3〜1.7モルであることがより好ましく、0.5〜1.6モルであることが特に好ましく、1.0〜1.5モルであることが更に好ましい。
【0029】
なお、上記は、本発明におけるチタン化合物オリゴマー(a)の製造方法を限定しているものではなく、該チタン化合物オリゴマー(a)の縮合度等の化学構造を、縮合方法等の製造方法によって特定しているものである。該チタン化合物オリゴマー(a)は、2次元的又は3次元的な化学構造を有する場合があるため、その化学構造は製造方法によってしか特定できないためであり、従って、異なる製造方法で製造された同様の化学構造を有するチタン化合物オリゴマー(a)も本発明においては用いられる。
【0030】
該チタン化合物オリゴマー(a)を組成式で表わすと、チタン原子2モルに対して、反応する水のモル数がxモルのとき、下記式(2)で表わされるチタン化合物オリゴマー(a)が、通常、縮合によって得られる。
TiOx/2(OR)4−x (2)
[式(2)中、Rは、式(1)におけるR〜Rの何れかを表す。]
【0031】
チタン原子1モルに対して、水1モルを反応させた場合、すなわち、チタン原子2モルに対して水2モルを反応させた場合、x=2であるので、式(2)は、
TiO(OR) (3)となり、
チタン原子1モルに対して、水1.5モルを反応させた場合、すなわち、チタン原子2モルに対して水3モルを反応させた場合、x=3であるので、式(2)は、
TiO3/2(OR) (4)となる。
【0032】
前記した「縮合させてオリゴマー化するために用いる好ましい水の量」に対応するxの値を式(2)に代入して得られた組成式を有するものが、チタン化合物オリゴマー(a)の縮合度としては好ましい。
【0033】
本発明におけるチタン化合物オリゴマー(a)は、オリゴマーであれば特に限定はないが、平均で、1.5〜20量体が好ましく、2〜15量体がより好ましく、4〜13量体が特に好ましく、5〜12量体が更に好ましい。水に対する安定性、製膜性、塗布性等の点で、縮合度は大きいものの方が好ましい。上記式(3)は、原理的には1次元的に無限の縮合度を有するものを表すが、製造される実際のチタン化合物オリゴマー(a)は有限の縮合度を有する。本発明におけるチタン化合物オリゴマー(a)は、原理的には無限の縮合度を有するような水の量を用いて製造される化学構造を有するものが更に好ましい。
【0034】
縮合時には、アルコール等の溶剤を用い、該チタンアルコキシド又は該チタンキレート化合物をアルコール溶液とし、場合により還流等の熱処理を経由し、チタン化合物オリゴマー(a)を得てもよい。このとき用いられるアルコールとしては特に限定はないが、前記式(1)中のアルキル基R〜Rを有する1価アルコールが、チタン化合物オリゴマー(a)の反応性を変化させない点で好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0035】
かかるアルコールの使用量は特に限定はないが、縮合してオリゴマー化するために用いる水の量を、水と該アルコールの合計量に対して0.5〜20質量%の濃度になるように該アルコールを用いて希釈することが、薬液の白濁や白色沈殿物の発生を抑制する点で好ましく、0.7〜15質量%の濃度になるように希釈することがより好ましく、1.0〜10質量%の濃度になるように希釈することが特に好ましい。
【0036】
上記縮合は、チタンアルコキシド又はチタンキレート化合物を、アミン化合物(b)の存在下で、かつアルコール溶液中で水を反応することにより行われたものも、薬液の白濁や白色沈殿物の発生をより抑制しやすい点で好ましい。この時に使用されるアミン化合物(b)としては、後述の、チタン化合物オリゴマー(a)に反応及び/又は混合させてチタン複合組成物を調製する際に使用されるアミン化合物(b)と同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
チタン化合物オリゴマー(a)は、上記したチタン化合物オリゴマーに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものであることも好ましい。すなわち、前記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、それにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物が縮合した構造を有するものに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものも好ましい。すなわち、縮合前及び/又は縮合後に、キレート化剤を反応させた構造のものは、チタン化合物オリゴマー(a)の加水分解等に対する安定性を高める点で好ましい。
【0038】
縮合後に用いるキレート化剤としては特に限定はないが、前記したキレート化剤が好適に使用できる。特に好ましくは、β−ジケトン、β−ケトエステル又はアルカノールアミンである。
【0039】
[[アミン化合物(b)]]
チタン複合組成物を得るための、上記チタン化合物オリゴマー(a)と反応及び/又は混合させるアミン化合物(b)については特に限定はないが、置換若しくは非置換の脂肪族アミン又は第四級アンモニウム水酸化物であることが、チタンオリゴマー化合物(a)の加水分解等に対する安定性を向上させ、水溶化させる点で好ましい。
【0040】
「置換若しくは非置換の脂肪族アミン」における置換基としては、アルコール性水酸基が好ましい。置換の脂肪族アミンとしてはアルカノールアミンが特に好ましい。
【0041】
非置換の脂肪族アミンとしては、具体的には例えば、脂肪族アルキルアミンであるメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、アミルアミン、sec−アミルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン;脂肪族環状アミンであるピペリジン、ピロリジン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0042】
アルカノールアミンとしては、具体的には例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0043】
第四級アンモニウム水酸化物としては、具体的には例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0044】
[[グリコール化合物(c)]]
チタン複合組成物を得るための、上記チタン化合物オリゴマー(a)と反応及び/又は混合させるグリコール化合物(c)としては特に限定はないが、隣り合った炭素原子にそれぞれ水酸基を有するグリコール化合物が好ましく、具体的には例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリン等が挙げられる。中でも、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール又は2,3−ブタンジオールが、チタンオリゴマー化合物の加水分解等に対する安定性の向上、水溶化する点で特に好ましい。
【0045】
グリコール化合物(c)を用いることによって、チタンオリゴマー化合物(a)の加水分解等に対する安定性を向上させ、水溶化させることができる。
【0046】
[[チタン複合組成物における各成分の比率]]
「チタン化合物オリゴマー(a)」と「アミン化合物(b)」と「グリコール化合物(c)」の使用割合は特に限定はないが、(b)と(a)のモル比は、(b)/(a)=0.1/10〜10/0.1が好ましく、(b)/(a)=0.3/10〜10/0.3がより好ましく、0.5/10〜10/0.5が特に好ましい。(a)と(b)の合計量に対して(a)が少なすぎると、架橋性、製膜性、接着性等を低下させる原因となり、一方、(a)が多すぎると、水に対する溶解性や加水分解する等の安定性が不足する場合がある。
【0047】
(c)と(a)のモル比は、(c)/(a)=0.1/10〜10/0.1が好ましく、(c)/(a)=0.5/10〜10/0.5がより好ましく、1/10〜10/1が特に好ましい。(a)と(c)の合計量に対して(a)が少なすぎると、架橋性、製膜性、接着性等を低下させる原因となり、一方、(a)が多すぎると、水に対する溶解性や加水分解する等の安定性が不足する場合がある。
【0048】
チタン複合組成物中の、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)の反応によって得られる構造を有する化合物(以下、「化合物A」と略記する)の化学構造については、前記製造方法で得られる構造を有するものであれば、特定の製造方法で製造されたものには限定されない。
【0049】
化合物Aの化学構造としては、チタン化合物オリゴマー(a)が、アミン化合物(b)及びグリコール(c)によって反応し、チタン化合物オリゴマーのグリコールキレートや、アミノ基がチタンに配位した構造が好ましい。特に、チタン化合物オリゴマー(a)の末端であるアルコキシル基と、アミン化合物(b)及び/又はグリコール化合物(c)とが反応し、キレート化した構造やアミン化合物に存在するアミノ基やグリコール化合物に存在する水酸基がチタン原子に配位した構造が好ましい。
【0050】
本発明におけるチタン複合組成物は、上記化合物A、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及び/又はグリコール(c)を含有する。チタン複合組成物は、チタン化合物オリゴマー(a)に対し、アミン化合物(b)とグリコール化合物(c)とを室温で混合させた組成を有するものであってもよいし、チタン化合物オリゴマー(a)に対し、アミン化合物(b)とグリコール化合物(c)とを加熱還流させて得られる組成を有するものであってもよい。上記「混合させた組成」には、全量反応が進まず未反応のまま残ったものが混合している場合も、一部のみが反応した場合も含まれる。
【0051】
本発明におけるチタン複合組成物は、上記方法で得られる組成のものであれば特に限定はないが、以下の5形態が好ましい。
(1)化合物A;
(2)化合物A及びチタン化合物オリゴマー(a)の混合物;
(3)化合物A及びグリコール化合物(c)の混合物;
(4)化合物A、チタン化合物オリゴマー(a)及びグリコール化合物(c)の混合物;
(5)チタン化合物オリゴマー(a)とアミン化合物(b)とグリコール化合物(c)の混合物;
このうち、形態(1)及び形態(5)が、前記した本発明の効果を好適に得られる点で好ましい。
【0052】
[シリコン化合物(d)]
本発明の水系プライマー組成物は、上記チタン複合組成物に、更に「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)」(以下、「シリコン化合物(d)」と略記する)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものである。上記「反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成」には、該チタン複合組成物とシリコン化合物(d)が全て反応せずに未反応のまま残ったものが混合している場合も、一部のみが反応した場合も含まれる。
【0053】
シリコン化合物(d)としては特に限定はないが、シランカップリング剤や、ケイ素原子に4個のアルコキシ基が結合したシリコン化合物等が、製膜性を高める点で好ましい。このうち、アミノ基、メルカプト基又はエポキシ基を含有するものが、更に、製膜性を高める点で好ましい。また、ケイ素原子にアルキル基が直接結合した構造を有するものも製膜性を高める点で好ましい。このときのアルキル基としてはメチル基が好ましい。また、上記化合物の部分加水分解縮合物も好適に使用できる。
【0054】
シリコン化合物(d)としては、具体的には例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラノルマルプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0055】
前記したチタン複合組成物に、シリコン化合物(d)を併用し、水系プライマー組成物を得る場合は、該チタン複合組成物にシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させることによって得られる構造を有するものであることが好ましい。ここで、反応方法は特に限定はないが、チタン複合組成物とシリコン化合物(d)を混合した後、使用した溶剤の沸点にて還流して反応を進行させることが好ましい。ここで用いる溶剤としては、特に制限はないが、チタン複合組成物を得る過程で用いた溶剤と同種の溶剤又はその希釈液であることが好ましい。なお、配合の順序に規定はない。
【0056】
前記チタン複合組成物と上記シリコン化合物(d)との使用割合は特に限定はないが、チタン複合組成物とシリコン化合物(d)の質量比が、0.1/10〜10/0.1であることが好ましく、0.5/10〜10/0.5であることがより好ましく、1/10〜10/1であることが特に好ましい。チタン複合組成物とシリコン化合物(d)の合計量に対してチタン複合組成物が少なすぎると、製膜性を低下させる原因となり、一方、チタン複合組成物が多すぎると、製膜性を低下させ、加水分解性等の安定性が不足する場合がある。
【0057】
本発明の水系プライマー組成物は、上記した製造方法で製造されたものには限定されず、上記した製造方法で製造される化学構造と組成とを有する組成物であれば、製造方法が異なっていても本発明に含まれる。ただし、本発明の水系プライマー組成物は、上記した製造方法で製造されたものが好ましい。すなわち、少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させることが、チタン複合組成物の製造方法として好ましく、また、チタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させることが、本発明の水系プライマー組成物の製造方法として好ましい。
【0058】
本発明の水系プライマー組成物を調製する際に、チタン化合物オリゴマー(a)の使用量は特に限定はないが、水系プライマー組成物100質量部を調製するために、チタン化合物オリゴマー(a)を0.1〜60質量部使用することが好ましく、0.5〜50質量部使用することがより好ましく、1.0〜45質量部使用することが特に好ましく、5.0〜40質量部使用することが更に好ましい。
【0059】
本発明の水系プライマー組成物をプラスチックフィルムや金属等の被着体に塗布する場合は、必要に応じて、水及び/又はアルコール等を用いて希釈し、塗布を行うことができる。希釈を行う際には、特に限定はないが、各種被着体に対しての濡れ性を考慮して水単独ではなくアルコールを併用してもよい。好ましいアルコールとして具体的には、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等が挙げられる。被着材へのぬれ性、塗布液の安定性を考慮して、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0060】
本発明の水系プライマー組成物をプラスチックフィルムや金属等の被着体に塗布し製膜してプライマー層を形成する場合の塗布量は特に限定はないが、乾燥後の塗布量として0.01〜5g/mが好ましく、0.05〜3g/mがより好ましく、0.1〜2g/mが特に好ましい。
【0061】
本発明のプライマー層の上に離型剤層を塗布する際に用いる離型剤としては、シリコーン系の離型剤を用いることが好ましい。シリコーン系離型剤としては、特に限定はないが、シリルイソシアネート化合物を硬化剤とした縮合型のシリコーン系離型剤、チタン化合物を触媒として用いた縮合型のシリコーン系離型剤、スズ化合物を触媒として用いた縮合型のシリコーン系離型剤、付加型シリコーン系離型剤等が挙げられる。
【0062】
特に、本発明の水系プライマー組成物は、シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いた離型剤層用、又は、付加型シリコーン系離型剤層用に用いることが好ましい。すなわち、本発明の水系プライマー組成物は、上記離型剤層を塗布する前に被着材に付与することが好ましい。「シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いた離型剤層」とは、モノメチルトリイソシアナトシラン、テトライソシアナトシラン、ジメチルジイソシアナトシラン、モノメトキシトリイソシアナトシラン、モノエトキシトリイソシアナトシラン、モノノルマルプロポキシトリイソシアナトシラン、モノイソプロポキシトリイソシアナトシラン、モノノルマルブトキシトリイソシアナトシラン、モノターシャリーブトキシトリイソシアナトシラン、ジメトキシジイソシアナトシラン、ジエトキシジイソシアナトシラン、ジノルマルプロポキシジイソシアナトシラン、ジイソプロポキシジイソシアナトシラン、ジノルマルブトキシジイソシアナトシラン、ジターシャリーブトキシジイソシアナートシラン等のシリルイソシアネート化合物を硬化剤として用い、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の上述したシリルイソシアネート化合物と反応をする官能基を有するジメチルポリシロキサンを硬化させて得られた離型剤層をいう。
【0063】
また、「付加型シリコーン系離型剤層」とは、分子内に1つ以上のビニル基を有するジメチルポリシロキサンと分子内に1つ以上のヒドロシリル基を有するジメチルポリシロキサンとを白金等を使用した触媒を用いて硬化させた離型剤層をいう。
【0064】
本発明のプライマー層上に塗布する離型剤の塗布量については特に限定はないが、乾燥後の塗布量として0.01〜5g/mが好ましく、0.05〜3g/mがより好ましく、0.1〜2g/mが特に好ましい。
【0065】
本発明のプライマー層の上に離型剤層を設けたプラスチックフィルムや金属は、離型性を必要とする工程紙として使用できる。かかる工程紙の使用分野は特に限定はないが、積層セラミックコンデンサーを製造する際のグリーンシート用の工程紙、人工皮革を製造する際に使用する工程紙、偏光板等の保護のために用いられる工程紙、樹脂シートを製造する際に使用する工程紙等が挙げられる。
【0066】
また、本発明のプライマー層の上に離型剤層を設けたのち、離型剤層の上に更に粘着剤層を設けることにより、粘着フィルムに使用することができる。粘着フィルムに用いる粘着剤にとしては特に限定はないが、アクリル樹脂系の粘着剤、ゴム系の粘着剤、シリコーン系の粘着剤等が挙げられる。
【0067】
粘着剤層の塗布量については特に限定はないが、乾燥後の塗布量として1〜100g/mが好ましく、5〜80g/mがより好ましく、10〜50g/mが特に好ましい。
【0068】
粘着フィルムの用途としては、特に限定はないが、プロテクトフィルム、マスキングフィルム、キャリアフィルム、ウインドウフィルム、半導体ウェハーのダイシングフィルム、ラベル等が挙げられる。
【0069】
本発明の水系プライマー組成物は、プラスチックフィルムや金属等と離型剤層との接着性を向上させるために好適に使用できる。すなわち、離型剤を被着体に塗布する前に、本発明の水系プライマー組成物を被着体に塗布することが好ましい、本発明の水系プライマー組成物は、特に好ましくは、接着性の向上の点で、プラスチックフィルム表面に塗布し、シリコーン系の離型剤をプライマー層の上に設けるために用いられる。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0071】
製造例1
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール50.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)A」を得た。次に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物A」を得た。
【0072】
製造例2
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール50.0gとN−n−ブチルエタノールアミン5.9g(0.05モル)の混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌した。次に、グリセリン36.8g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物B」を得た。
【0073】
製造例3
テトラn−ブトキシチタン34.0g(0.10モル)をn−ブタノール30.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とn−ブタノール60.0gとN,N−ジメチルモノエタノールアミン4.5g(0.05モル)の混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌した。次に、1時間攪拌した後、1,2−ブタンジオール36.0g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物C」を得た。
【0074】
製造例4
テトラn−ブトキシチタン34.0g(0.10モル)をn−ブタノール30.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とn−ブタノール60.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)D」を得た。次に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加後、1時間攪拌した後、2,3−ブタンジオール36.0g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物D」を得た。
【0075】
製造例5
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)に対する水の量を、水2.2g(0.12モル)とした以外は、製造例4と同様の方法で、「チタン化合物オリゴマー(a)E」及び「チタン複合組成物E」を得た。
【0076】
製造例6
ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン36.4g(0.1モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール100.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌し、更に1時間還流して「チタン化合物オリゴマー(a)F」を得た。次に、トリエチルアミン5.1g(0.05モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物F」を得た。
【0077】
製造例7
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール50.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)G」を得た。次に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物G」を得た。
【0078】
製造例8
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加した。添加後、1時間攪拌した。更に、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し「チタン化合物a」を得た。
【0079】
製造例9
テトラn−ブトキシチタン34.0g(0.10モル)に、トリエチルアミン5.1g(0.05モル)を添加後、1時間攪拌した。その後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し「チタン化合物b」を得た。
【0080】
製造例10
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.1モル)に、トリエチルアミン10.1g(0.1モル)を30分かけて添加した。続いて、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを46.8g(0.2モル)を加え、その後、1,2−エタンジオールを49.6g(0.8モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し「チタン化合物c」を得た。
【0081】
実 施 例1
製造例1で製造したチタン複合組成物Aを39質量%(0.03モル)、及びγ−アミノプロピルアミノエチルトリメトキシシラン10質量%(0.06モル)を混合後、溶剤(水26質量%及び2−プロパノール25質量%)を加えて水系プライマー組成物を得た。
【0082】
実 施 例2〜24、比 較 例1〜10
実施例1において、チタン複合組成物A、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)、溶剤として加えた水及びイソプロパノールを、表1に記載の種類と量に代えた以外は、実施例1と同様にして、水系プライマー組成物を得た。用いたシリコン化合物(d)の一部はチタン複合組成物と反応し、一部は未反応で混合されていた。また、比較例として、表1に記載の表面処理組成物を用意した。なお、表1の中の数値は質量%を示す。
【0083】
比 較 例11
チタン化合物オリゴマー(a)に、アミン化合物(b)のみを反応及び/又は混合させずに、それ以外は製造例1〜7と同様に調製したものは、全て白色のスラリー状態になってしまった。従って、水系プライマー組成物として得られなかったため、以下の評価は行わなかった。
【0084】
比 較 例12
チタン化合物オリゴマー(a)にグリコール化合物(c)のみを反応及び/又は混合させずに、それ以外は製造例1〜7と同様に調製したものは、全て不安定で水系化ができなかった。従って、水系プライマー組成物として得られなかったため、以下の評価は行わなかった。
【0085】
【表1】

【0086】
評 価 例 1
[シリルイソシアネート化合物を硬化剤とした縮合型のシリコーン系離型剤のPETフィルムに対する接着性等の向上効果]
実施例1〜12、比較例1、比較例2、比較例5〜8、比較例10で調製又は用意した水系プライマー組成物を、表2に記載の各種希釈溶剤にて5倍に希釈した後、厚さ50μmの未処理PETフィルム上に、バーコーターNo.4で塗布した。その後、120℃にて30秒乾燥した。
【0087】
乾燥後、「シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いた離型剤」の1種の「シリルイソシアネート化合物を硬化剤とした縮合型のシリコーン離型剤」であるオルガチックスSIC−330(マツモトファインケミカル(株)社製)を、酢酸エチルとシクロヘキサノンの9:1(質量比)の混合溶剤で5倍に希釈した塗布液を調製した後、それをバーコーターNo.4で塗布し、120℃にて30秒乾燥した。得られた離型剤層について以下の評価を行った。
【0088】
[剥離力]
25mm幅のニットーポリエステルテープ31B(日東電工(株)社製)を離型剤層上に、2kgのローラーを用いて1往復圧着し、20℃で12時間以上静置後、300mm/分の速度で180度方向に剥離するときにかかる力を引っ張り試験機にて測定した。
【0089】
[残留接着率]
25mm幅のニットーポリエステルテープ31B(日東電工(株)社製)を離型剤層上に2kgのローラーを用いて1往復圧着し、20℃で12時間以上静置後、SUS304の板にテープを貼り替え、180度方向に剥離するときにかかる力を引っ張り試験機にて測定した。ブランクとして、SUS304の板に25mm幅のニットーポリエステルテープ31B(日東電工(株)社製)を1往復圧着し、180度方向に剥離するときにかかる力を引っ張り試験機にて測定した。
【0090】
これらの剥離強度の値を以下の式に代入し、残留接着率を求めた。
残留接着率(%)=100×(サンプルの剥離強度)/(ブランクの剥離強度)
【0091】
[耐エタノール性]
離型剤層上にエタノールを含んだ脱脂綿を置き、500gの分銅にて、加重をかけながら、50往復回表面を擦った。擦った後、室温下で表面を乾燥した。擦った部分に、25mm幅のニットーポリエステルテープ31B(日東電工(株)社製)を離型剤層上に2kgのローラーを用いて1往復圧着し、20℃で12時間以上静置後、300mm/分の速度で180度方向に剥離するときにかかる力を引っ張り試験機にて測定した。
【0092】
評価例1の結果を以下の表2に示す。なお、表2中の希釈溶剤の数値は質量%を示す。
【0093】
【表2】

【0094】
実施例1〜12の水系プライマー組成物を用いて表面を処理した場合、評価した何れの離型剤層に対しても、残留接着率の向上や耐エタノール性の向上といった接着性の向上が認められた。一方、シランカップリング剤を用いて表面処理をした比較例1、比較例2、比較例5〜8、比較例10では、残留接着率や耐エタノール性の面で良好な接着性を示さなかった。
【0095】
評 価 例 2
[白金化合物を触媒として用いた付加型シリコーン系離型剤のPETフィルムに対する接着性等の向上効果]
実施例13〜24、比較例3〜比較例7、比較例9、比較例10で調製又は用意した水系プライマー組成物を、各種希釈溶剤にて5倍に希釈した後、厚さ50μmの未処理PETフィルムに、バーコーターNo.4で塗布した。その後、120℃にて30秒乾燥した。
【0096】
乾燥後、「付加型シリコーン系離型剤」の1種の「白金化合物を触媒として用いた付加型シリコーン系離型剤」であるKS−847(信越化学工業社製)を、主剤と触媒の比を100:2(質量比)で混合し、トルエンを用いて10倍に希釈した塗布液をバーコーターNo.4で塗布し、130℃にて30秒乾燥した。得られた離型剤層について以下の評価を行った。
【0097】
[剥離力]、[残留接着率]及び[耐エタノール性]については、評価例1と同様に評価した。
【0098】
[耐暴露性]
離型剤層を塗布し、乾燥したPETフィルムを温度70℃、湿度90%の環境下に24時間静置した。その後、表面に、脱脂綿を置き、500gの分銅にて、加重をかけながら、50往復回表面を擦った。擦った部分に、25mm幅のニットーポリエステルテープ31B(日東電工(株)社製)を、離型剤層上に2kgのローラーを用いて1往復圧着し、12時間以上静置後、300mm/分の速度で180度方向に剥離するときにかかる力を引っ張り試験機にて測定した。
【0099】
評価例2の結果を以下の表3に示す。なお、表3中の希釈溶剤の数値は、希釈溶剤全体に対する各希釈溶剤の質量%を示す。
【表3】

【0100】
実施例13〜24の水系プライマー組成物を用いて表面を処理した場合、評価した何れの離型剤層に対しても、耐暴露性や耐エタノール性の向上といった接着性の向上が認められた。一方、シランカップリング剤を用いて表面処理をした比較例3〜比較例7、比較例9、比較例10では、耐暴露性や耐エタノール性の面で良好な接着性を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の水系プライマー組成物は、金属やプラスチックフィルム等の被着体に塗布し、製膜することで表面を改質し、シリコーン系離型剤との接着性を著しく向上させることができる。特に、被着材にプラスチックフィルムを用いた場合はこの効果が顕著であるため、離型層を必要とする工程紙、粘着フィルム等が使用される産業分野に広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものであることを特徴とする水系プライマー組成物。
【請求項2】
シリルイソシアネート化合物を硬化剤として用いた離型剤層用、又は、付加型シリコーン系離型剤層用である請求項1記載の水系プライマー組成物。
【請求項3】
該チタン化合物オリゴマー(a)が、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物、が縮合した構造を有するものである請求項1又は請求項2記載の水系プライマー組成物。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【請求項4】
該チタン化合物オリゴマー(a)が、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物が縮合した構造を有するものに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものである請求項1又は請求項2記載の水系プライマー組成物。
【化2】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【請求項5】
上記縮合が、該チタンアルコキシド又は該チタンキレート化合物を、アルコール溶液中で水を反応させることにより行われたものである請求項3又は請求項4記載の水系プライマー組成物。
【請求項6】
上記縮合が、チタンアルコキシド及び/又はチタンキレート化合物1モルに対し、アルコール溶液中で、水0.2〜2モルを反応させることにより行われたものである請求項3ないし請求項5の何れかの請求項記載の水系プライマー組成物。
【請求項7】
上記縮合が、チタンアルコキシド又はチタンキレート化合物をアミン化合物(b)の存在下でかつアルコール溶液中で水を反応することにより行われたものである請求項3ないし請求項6の何れかの請求項記載の水系プライマー組成物。
【請求項8】
該キレート化剤が、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項3ないし請求項7の何れかの請求項記載の水系プライマー組成物。
【請求項9】
式(1)中のR〜Rが、それぞれ独立に炭素数1〜8個のアルキル基である請求項3ないし請求項8の何れかの請求項記載の水系プライマー組成物。
【請求項10】
分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)が、アミノ基、メルカプト基又はエポキシ基を有するものである請求項1ないし請求項9の何れかの請求項記載の水系プライマー組成物。
【請求項11】
分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)が、ケイ素原子にアルキル基が直接結合した構造を有するものである請求項1ないし請求項10の何れかの請求項記載の水系プライマー組成物。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11の何れかの請求項記載の水系プライマー組成物を用いて製膜してなるプライマー層。
【請求項13】
請求項12記載のプライマー層の上に離型剤層を有する工程紙。
【請求項14】
請求項12記載のプライマー層の上に形成された離型剤層の上に粘着剤層を有する粘着フィルム。

【公開番号】特開2009−155420(P2009−155420A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333945(P2007−333945)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000188939)マツモトファインケミカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】