説明

水系ポリウレタン樹脂組成物、該組成物を用いた塗料及び塗装品

【課題】耐水性、耐薬品性及び基材との密着性等に優れると供に塗料安定性に優れた、表面処理鋼板塗料用途に好適に使用することのできる水系ウレタン樹脂組成物、該水系ポリウレタン樹脂を含有する塗料、及び該塗料を塗布してなる板状塗装品の提供。
【解決手段】ポリオール(A)、イソシアネート(B)、及び、カルボキシル基又はスルホン酸基を含有するアニオン性基導入ポリオール(C)を反応させて得られた末端イソシアネート基ウレタンプレポリマーを、アニオン性基中和剤(D)を用いて水に分散させ、水伸長させてなる水系ポリウレタン樹脂組成物。前記(A)成分が、炭素原子数10〜32の長鎖アルキレンジオール化合物(a)を必須成分とすると供に、前記(a)成分の配合量が、(A)、(B)及び(C)成分の総量の1〜20質量%であり、前記(B)成分におけるイソシアネート基(NCO)と、前記(A)成分及び前記(C)成分の全水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が1.3〜1.9であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系ポリウレタン樹脂組成物に関し、特に、耐水性及び耐酸性、耐アルカリ性等の耐薬品性並びに塗料安定性に優れる水系ポリウレタン樹脂組成物、該水系ポリウレタン樹脂組成物を含有する塗料、及び、該水系ポリウレタン樹脂組成物を板状材料表面に塗布してなる塗装品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性、接着性、非粘着性、及びゴム弾性を有することから、塗料、接着剤、バインダー、及びコーティング剤等として広く用いられており、近年においては、対環境汚染や労働衛生等の安全性の面から、水系ポリウレタン樹脂組成物の報告が多数なされている。
しかしながら、水系ポリウレタン樹脂組成物は、溶剤系あるいは無溶剤系のものに比べて、耐水性、耐薬品性、耐熱性、及び引張特性等の物性に劣るという問題点がある。
例えば、表面処理鋼板の塗装に用いる塗料には、特に耐水性及び耐酸性、耐アルカリ性等の耐薬品性を有することが必須条件とされるが、現状の水系ポリウレタン樹脂組成物には、未だこれらの物性を満足できるものは知られていない。
【0003】
また、繊維基材の撥水性及び撥油性を向上させたものとして、多官能イソシアネートとフッ素化アルコールとの反応生成物にポリオキシアルキレン含有物質を反応させたフッ素化ポリマーが提案されている(特許文献1)が、このフッ素化ポリマーは、鋼板との密着性が良好でないため、鋼板用塗料として使用することは適当でない。
【0004】
また、耐水性、耐薬品性、耐熱性等が改善された水系ポリウレタン樹脂として、側鎖に長鎖アルキル基を含有する水系ポリウレタン樹脂が開示されている。しかしながら、この水系ポリウレタン樹脂は、主鎖として短い分岐ジオールを使用してウレタン化した場合(特許文献2〜4)、凝集エネルギーが高いウレタン結合が互いに近接し、生成したウレタンプレポリマーが凝集して粘度が上昇するために、水分散が困難となる。
更に、長鎖アルキル基を有するイソシアヌレート化合物とポリオール及び水からなる水分散型ポリウレタン樹脂組成物が開示されている(特許文献5及び6)。この場合には、耐水性、耐薬品性、及び耐熱性に改善は見られるものの、塗料の安定性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−511814号公報
【特許文献2】特開2000−007909号公報
【特許文献3】特表2005−510600号公報
【特許文献4】特開2005−068228号公報
【特許文献5】WO06/038466号公報
【特許文献6】特開2009−203316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、前記した従来の欠点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ウレタン樹脂骨格内に一定量の長鎖アルキレンジオール化合物が組み込まれたウレタンプレポリマーを水伸長させることにより、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性等の耐薬品性及び基材との密着性等に優れ、かつ、塗料安定性に優れた水系ウレタン樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
従って、本発明の目的は、耐水性、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性)及び基材との密着性等に優れると供に塗料安定性に優れた、表面処理鋼板塗料用途に好適に使用することのできる水系ウレタン樹脂組成物、該水系ポリウレタン樹脂を含有する塗料、及び該塗料を塗布してなる板状塗装品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明は、ポリオール(A)、イソシアネート(B)、及び、カルボキシル基又はスルホン酸基を含有するアニオン性基導入ポリオール(C)を反応させて得られた末端イソシアネート基ウレタンプレポリマーを、アニオン性基中和剤(D)を用いて水に分散させ、水伸長させてなる水系ポリウレタン樹脂組成物であって、前記(A)成分が、炭素原子数10〜32の長鎖アルキレンジオール化合物(a)を必須成分とすると供に、前記(a)成分の配合量が、(A)、(B)及び(C)成分の総量の1〜20質量%であり、前記(B)成分におけるイソシアネート基(NCO)と、前記(A)成分及び前記(C)成分の全水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が1.3〜1.9であることを特徴とする、水系ポリウレタン樹脂組成物、該水系ポリウレタン樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料、及び、該塗料を板状材料に塗布してなることを特徴とする塗装品である。
前記化合物(a)は、炭素原子数12〜18の長鎖アルキレンジオール化合物であることが好ましく、前記アニオン性基導入ポリオール(C)の配合量は、前記(A)、(B)、及び(C)成分の総量の0.1〜30質量%であることが好ましい。
また、本発明の塗料は、表面処理鋼板の塗装に好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物により、安定性に優れた塗料が得られる。また、本発明の塗料を、表面処理鋼板に塗装することにより、耐水性及び耐薬品性等に優れた塗膜を有する塗装品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール(A)、イソシアネート(B)、及び、カルボキシル基及びスルホン酸基から選ばれるアニオン性基を含有するアニオン性基導入ポリオール(C)を反応させて得られる末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、(D)アニオン性基中和剤成分を用いて水に分散させ、水伸長させてなる水系ポリウレタン樹脂組成物である。
【0011】
前記(A)成分は、炭素原子数10〜32の長鎖アルキレンジオール化合物(a)を必須成分とし、該(a)成分の配合量は、(A)、(B)及び(C)成分の総量の1〜20質量%であり、1.5〜15質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
1質量%未満であると、水系ポリウレタン樹脂組成物の耐水性及び耐薬品性が低くなり、また、20質量%を超えるとウレタンプレポリマーの水への分散性が低下し、水系ポリウレタン樹脂の製造が困難となったり、塗料の安定性が低下したりするため好ましくない。
【0012】
炭素原子数10〜32の長鎖アルキレンジオール化合物としては、例えば、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオール、イコサンジオール、へンイコサンジオール、ドコサンジオール、トリコサンジオール、テトラコサンジオール、ペンタコサンジオール、ヘキサコサンジオール、ヘプタコサンジオール、オクタコサンジオール、ノナコサンジオール、トリアコンタンジオール、ヘントリアコンタンジオール、ドトリアコンタンジオール等の直鎖又は分岐のジオールが挙げられる。
【0013】
これらの中でも、耐水性及び耐薬品性に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物が得られることから、(a)成分は、炭素原子数12〜18の長鎖アルキレンジオールであることが好ましく、1,12−ドデカンジオール又は1,12−オクタデカンジオールであることが特に好ましい。
【0014】
前記(a)成分以外のポリオール(A)は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類、数平均分子量200未満の低分子ポリオール類等を使用することができる。
【0015】
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール等の前記低分子ポリオールの他、ビスフェノールA、エチレンジアミン等のアミン化合物等へのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0016】
前記ポリエステルポリオール類としては、前述した低分子ポリオール等のポリオールと、その化学量論量より少ない量の多価カルボン酸、又は、そのエステル、酸無水物、カルボン酸ハライド等のエステル形成性誘導体との直接エステル化反応又はエステル交換反応によって得られるポリエステルポリオール;及び、前記ポリオールと、ラクトン類又はその加水分解開環反応によって得られるヒドロキシカルボン酸との直接エステル化反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0017】
上記多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等の4価以上のカルボン酸が挙げられる。
【0018】
前記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、上述した多価カルボン酸の、無水物、或いはクロライド、ブロマイド等のカルボン酸ハライド;上記多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステル等が挙げられる。
【0019】
前記ラクトン類としては、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0020】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオール類としては、例えば、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、エチレンカーボネートと多価アルコールとの反応生成物に有機ジカルボン酸と反応させて得られる反応生成物が挙げられる。
【0021】
また、前記結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類としては、1,3‐プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び/又はポリテトラメチレングリコール等のジオールとホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)若しくは環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物等が挙げられる。
【0022】
前記ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類の数平均分子量は、300〜5000であることが好ましく、500〜3000であることがより好ましい。
【0023】
前記数平均分子量200未満の低分子ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の3価以上のポリオールが挙げられる。
【0024】
イソシアネート(B)は、特に限定されるものでなく、ジイソシアネート及びイソシアネート基を1分子中に3個以上有するポリイソシアネート等を使用することができる。
ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス及び/又はシス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4及び/又は(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、これらの混合物等の3官能以上のイソシアネート、これらの3官能以上のイソシアネートのカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物、これらを各種のブロッキング剤によってブロックしたブロックイソシアネート、前述したジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)及びビウレット三量体等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、入手が容易で、耐候性及び強度等に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物が得られることから、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートを使用することが好ましく、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0027】
(C)アニオン性基導入ポリオールとは、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を含有するポリオール類であり、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類が挙げられる。
中でも入手容易性の面からカルボン酸基を含有するポリオール類を使用することが好ましく、特に、ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。
【0028】
また、(C)アニオン性基導入ポリオールの配合量は、前記(A)、(B)、及び(C)成分の総量に対して、0.1〜30質量%の範囲となる量であることが好ましく、0.5〜20質量%となる量であることがより好ましく、1.0〜10質量%となる量であることが特に好ましい。(C)成分の配合量が0.1質量%未満では、ポリウレタンの水分散性が劣るため、水系ポリウレタン樹脂の保存安定性や、塗料の安定性が低下する場合があり、30質量%を超えると、ウレタン結合の凝集エネルギー増加に伴ってウレタンプレポリマーの粘度が上昇し、水分散が困難になる等の問題が生じる。
【0029】
また、前記ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)及び(C)アニオン性基導入ポリオールの配合量は、これらを反応させる段階で、前記ポリオール(A)及びアニオン性基導入ポリオール(C)の全水酸基1当量に対するイソシアネート(B)のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.3〜1.9となる量であり、1.4〜1.8となる量であることが好ましく、特に1.5〜1.7となる量であることが好ましい。
NCO/OH比が1.3未満では、ウレタンプレポリマーが比較的高分子量化するため、ウレタンプレポリマーの水分散性が低下する傾向にあり、水系ポリウレタン樹脂の保存安定性や、塗料の安定性が悪くなる場合がある。また、NCO/OH比が1.9を超えると、プレポリマーの水分散時に、イソシアネート基と水との反応により生成する二酸化炭素が急激に発泡するため、樹脂組成物の製造に支障が生じたり、樹脂の耐水性、耐酸性等の効果が低下したりする場合がある。
【0030】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物を製造するには、先ず、反応に不活性であり、且つ水との親和性の大きい溶媒を必要に応じて用い、ポリオール(A)、イソシアネート(B)、及びアニオン性基ポリオール(C)を反応させて末端イソシアネートウレタンプレポリマーを合成する。
【0031】
前記反応に不活性且つ水との親和性の大きい溶媒として好適なものは、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒は、通常、プレポリマーを製造するために用いられる前記原料の合計量100質量部に対して、3〜100質量部となるように用いられる。これらの溶媒として沸点100℃以下の溶媒を使用する場合には、水系ポリウレタン樹脂を合成した後、その溶媒を減圧留去等によって除去することが好ましい。
【0032】
末端イソシアネートウレタンプレポリマーを水分散する方法としては、(1)水中にプレポリマーを加えて分散させるプレポリマーミキシング法、(2)プレポリマー中に水を加えて分散させる転相法等が挙げられる。水分散に用いるアニオン性基中和剤(D)は、プレポリマー及び水の何れに添加してもよい。
このようにして末端イソシアネートウレタンプレポリマーを水分散した後、水中で水伸長させることにより、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物を合成する。
【0033】
前記アニオン性基中和剤(D)としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン類、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン類等の3級アミン化合物;アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基性化合物が挙げられる。
【0034】
これらの中和剤の使用量は、前記(C)成分のアニオン性基1当量に対して0.5〜2.0当量となる量であることが好ましく、0.8〜1.5当量となる量であることがより好ましい。中和剤の使用量の過不足が大きいと、水系ポリウレタン樹脂から得られる塗膜等の耐水性、強度、伸び等の物性が低下するおそれがある。
【0035】
前記水伸長を行う場合、温度を30〜75℃として撹拌しながら水伸長させることが好ましく、温度は、40〜65℃とすることがより好ましい。
温度が30℃より低いと、反応に長時間を要するため生産効率が低下し、75℃を越えると、水伸長反応による急激な二酸化炭素の発生に伴う発泡現象が生じることがあり、低沸点溶媒を含む場合等には製造上の問題が生じる。
前記水伸長における反応の終点を見極める方法としては、IR(赤外分光光度計)を用いてイソシアネート基の消失を確認する方法が簡便であり、好ましい。
【0036】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の製造においては、ポリウレタンの水分散に際して乳化剤を使用することもできる。乳化剤としては、通常のアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤、並びに第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩及びピリジニウム塩等のカチオン性界面活性剤、更に、ベタイン型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等の両性界面活性剤等の、公知のものを挙げることができる。
【0037】
前記アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、アンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;N−アシルアミノ酸塩;N−アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。
【0038】
前記ノニオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1〜18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0039】
前記アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第3ブチルフェノール、2,5−ジ第3ブチルフェノール、3,5−ジ第3ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第3オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
【0040】
前記アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、アルキレンジアミンとしては、これらのアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたもの等が挙げられる。また、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物は、ランダム付加物であってもブロック付加物であってもよい。
【0041】
前記カチオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムブロマイド及びイミダゾリニウムラウレート等が挙げられる。
【0042】
前記両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酸ベタイン、2‐アルキル‐N‐カルボキシメチル‐N‐ヒドロキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタイン、ヒドロキシプロピルリン酸の金属塩等のベタイン型、β‐ラウリルアミノプロピオン酸の金属塩等のアミノ酸型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等が挙げられる。
【0043】
前記乳化剤の使用量は特に制限されるものではないが、水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布して得られる塗膜の耐水性、強度、伸び等の物性的観点から、前記(A)〜(C)成分の総量100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好ましい。1質量部より小さいと分散性向上効果が得られない場合があり、30質量部を超えると前記した塗膜の物性が低下するおそれがある。
【0044】
また、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物においては、必要に応じて、ポリウレタン分子に架橋構造を与えるために、ウレタンプレポリマーに通常用いられる架橋剤を更に配合してもよい。
【0045】
前記架橋剤としては、メラミン、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、メラミン樹脂等を挙げることができる。本発明においては、これらの中から、ポリウレタンへの分散性が優れた安価なメラミンを、適宜選択して使用することが好ましい。
【0046】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物を、塗料等として用いる場合、適宜希釈して使用することができる。希釈する際の固形分濃度は特に制限されることはないが、分散性や塗膜、成形体を得るための操作性等の観点から、前記(A)〜(C)成分の総量100質量部に対して1〜65質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。
【0047】
また、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、通常用いられる各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば、顔料;染料;造膜助剤;硬化剤;外部架橋剤;粘度調整剤;レベリング剤;消泡剤;ゲル化防止剤;ヒンダードアミン等の光安定剤;フェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物等の酸化防止剤;トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール系化合物からなる紫外線吸収剤;ラジカル捕捉剤;耐熱性付与剤;無機及び有機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;補強剤;触媒;揺変剤;抗菌剤;防カビ剤;防腐触剤;及び防錆剤等が挙げられる。
【0048】
また、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物を塗料やコーティング剤に用いる場合には、基材に対して特に強固な密着性を与えるシランカップリング剤、コロイダルシリカ、テトラアルコキシシラン及びその縮重合物、キレート剤、及びエポキシ化合物を用いてもよい。
【0049】
前記各種添加剤の中でも、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物を屋外で曝される塗膜や塗装に用いる場合には、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤を使用することが好ましい。
【0050】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第3−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第3オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0051】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第3オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜C13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)‐4,6‐ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5‐トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール‐1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第3ブチルフェニル−3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩又は金属キレート、特にニッケル又はクロムの塩又はキレート類等が挙げられる。
【0052】
前記酸化防止剤としては、リン系、フェノール系又は硫黄系抗酸化剤が挙げられる。
リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第3ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第3ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第3ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第3ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−メチル−4−[3−[[2,4,8,10−トラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]プロピル]フェノール2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第3ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0053】
フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第3ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第3ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第3ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第3ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第3ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第3ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第3ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第3ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トコフェロール等が挙げられる。
【0054】
硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等の、ポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0055】
前記ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤のそれぞれの使用量は、前記(A)〜(C)成分の総量100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.01〜5質量部であることがより好ましい。0.001質量部より少ないと充分な添加効果を得られない場合があり、10質量部より多い場合には分散性や塗装物性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0056】
これらのヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤を添加する方法としては、ポリオールに添加する方法、プレポリマーに添加する方法、水分散時に水相に添加する方法、水分散後に添加する方法の何れでもよいが、操作が容易であるという観点から、ポリオールに添加する方法及びプレポリマーに添加する方法が好ましい。
【0057】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の用途としては、塗料、接着剤、表面改質剤、有機及び/又は無機粉体のバインダー、成形体等が挙げられる。
具体的には、ガラス繊維集束剤、感熱紙コート剤、インクジェット紙コート剤、印刷インクのバインダー剤、鋼板用コート剤、農業用フィルム用コート剤、ガラス、スレート、コンクリート等無機系構造材用塗料、木工塗料、繊維処理剤、スポンジ、パフ、手袋、コンドーム等が挙げられる。これらの中でも、塗料、木材、紙、繊維、ガラス、電子材料部品及び鋼板へのコーティング材料として使用することが好ましく、特に表面処理鋼板用の塗料として使用することが好ましい。
【0058】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物を塗料として用いる場合には、例えば、ハケ塗り、ローラーコート、スプレーコート、グラビアコート、リバースロールコート、エアナイフコート、バーコート、カーテンロールコート、ディップコート、ロッドコート、ドクターブレートコート等の、適宜選択した方法により基材に塗布することができる。
【0059】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0060】
ポリオール(A)中の長鎖アルキレンジオール化合物(a)として、1,12−オクタデカンジオール6.0g(0.0209モル)、その他の(A)成分として、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸及びイソフタル酸(アジピン酸/イソフタル酸の質量比は50/50)から得られたポリエステルポリオール(数平均分子量1750)65.7g(0.0375モル)、イソシアネート(B)としてジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下水添MDIと記す)を42.5g(0.1620モル)、アニオン性基導入ポリオール(C)としてジメチロールプロピオン酸5.74g(0.0428モル)を反応フラスコに仕込んだ。
このときの(A)〜(C)成分の総量中における(a)成分の比率は5質量%、(C)成分の比率は4.8質量%であり、NCO/OHの当量比は1.6であった。
【0061】
更に、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン25.7gを加え、窒素気流下の100〜110℃で2〜3時間反応させて、NCOの含有率%が3.4%以下となったことを確認した後、アニオン性基中和剤(D)としてトリエチルアミンを、中和率が1.0となるように4.33g(0.0428モル)加え、固形分が80質量%のウレタンプレポリマーを得た。
【0062】
水110g中に消泡剤((株)ADEKA製、B1016)0.1g、及び、前記ウレタンプレポリマーとの中和率が0.2となるように、トリエチルアミン1.18g(0.0117モル)を加え、撹拌して得られた水溶液の中に、前記ウレタンプレポリマーを109g加え、20〜40℃で15分間撹拌を行って分散させた。得られたウレタンプレポリマー分散液を、30〜40℃で12時間、及び、50〜55℃でIR(赤外分光光度計)による測定においてNCO基が消失するまでの時間、水伸長反応を行い、固形分40%の水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【実施例2】
【0063】
ポリオール(A)中の長鎖アルキレンジオール化合物(a)として、1,12−ドデカンジオール12.0g(0.0593モル)、他の(A)成分として、1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネートジオール(数平均分子量2000)49.0g(0.0245モル)、イソシアネート(B)としてイソホロンジイソシアネート(以下IPDIと記す)を51.9g(0.234モル)、アニオン性基導入ポリオール(C)としてジメチロールプロピオン酸7.17g(0.0535モル)を反応フラスコに仕込んだ。
このときの(A)〜(C)成分における総量中の(a)成分の比率は10質量%、(C)成分の比率は6.0質量%であり、NCO/OHの当量比は1.7であった。
【0064】
更に、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン24.6gを加えて窒素気流下の100〜110℃で2〜3時間反応させて、NCO%が5.4%以下となったことを確認した後、アニオン性基中和剤(D)としてトリエチルアミンを、中和率が1.0となるように5.41g(0.0535モル)加え、固形分が80質量%のウレタンプレポリマーを得た。
【0065】
水110g中に消泡剤((株)ADEKA製、B1016)0.1g、及び、前記ウレタンプレポリマーとの中和率が0.2となるように、トリエチルアミン1.47g(0.0145モル)を加え、撹拌して得られた水溶液の中に、前記ウレタンプレポリマーを108g加え、20〜40℃で15分間撹拌を行って分散させた。得られたウレタンプレポリマー分散液を、30〜40℃で12時間、及び、40〜45℃でIR(赤外分光光度計)による測定においてNCO基が消失するまでの時間、水伸長反応を行い、固形分40%の水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【実施例3】
【0066】
ポリオール(A)中の長鎖アルキレンジオール化合物(a)として、1,12−オクタデカンジオール2.4g(0.0084モル)、他の(A)成分として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量2000)81.4g(0.0407モル)、イソシアネート(B)として水添MDIを31.9g(0.1216モル)、アニオン性基導入ポリオール(C)としてジメチロールプロピオン酸4.30g(0.0321モル)を反応フラスコに仕込んだ。
このときの(A)〜(C)成分の総量中における(a)成分の比率は2質量%、(C)成分の比率は3.6質量%であり、NCO/OHの当量比は1.5であった。
【0067】
更に、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン26.8gを加え、窒素気流下の100〜110℃で2〜3時間反応させて、NCO%が2.3%以下となったことを確認した後、(D)アニオン性基中和剤成分としてトリエチルアミンを、中和率が1.0となるように3.24g(0.0320モル)加え、固形分が80質量%のウレタンプレポリマーを得た。
【0068】
水110g中に消泡剤((株)ADEKA製、B1016)0.1g、及び、前記ウレタンプレポリマーとの中和率が0.2となるように、トリエチルアミン0.88g(0.0087モル)を加え、撹拌して得られた水溶液の中に、前記ウレタンプレポリマーを109g加え、20〜40℃で15分間撹拌を行って分散させた。得られたウレタンプレポリマー分散液を、30〜40℃で12時間、及び、60〜65℃でIR(赤外分光光度計)による測定においてNCO基が消失するまでの時間、水伸長反応を行い、固形分40%の水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0069】
[比較例1]
(A)成分として実施例1で使用したポリエステルポリオールを77.7g(0.0444モル)、及び(B)成分として水添MDIを36.6g(0.140モル)使用し、(a)成分を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の手法により、(A)〜(C)成分を反応させ、NCOの含有率%が2.9%以下となったことを確認した後、アニオン性基中和剤(D)としてトリエチルアミンを、中和率が1.0となるように4.33g(0.0428モル)加え、固形分が80質量%のウレタンプレポリマーを得た。
仕込み時の(A)〜(C)成分の総量中における(C)成分の比率は4.8質量%であり、NCO/OHの当量比は1.6であった。
得られたウレタンプレポリマーを、実施例1と同様の手法により、水分散及び水伸長反応させ、固形分40%の水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0070】
[比較例2]
(a)成分として1,12−オクタデカンジオールを30.0g(0.105モル)、その他の(A)成分として実施例1で使用したポリエステルポリオールを18.0g(0.0103モル)、及び(B)成分として水添MDIを66.2g(0.252モル)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法により(A)〜(C)成分を反応させ、NCOの含有率%が5.3%以下となったことを確認した後、アニオン性基中和剤(D)としてトリエチルアミンを、中和率が1.0となるように4.33g(0.0428モル)加え、固形分が80質量%のウレタンプレポリマーを得た。
仕込み時の(A)〜(C)成分の総量中における(a)成分の比率は25質量%、(C)成分の比率は4.8質量%であり、NCO/OHの当量比は1.6であった。
得られたウレタンプレポリマーを用いて、実施例1と同様の手法により水系ポリウレタン樹脂組成物の製造を試みたところ、ウレタンプレポリマーの水分散が悪く、分散性の良好な水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができなかった。
【0071】
[比較例3]
(a)成分以外の(A)成分として実施例1で使用したポリエステルポリオールポリエステルポリオールを77.1g(0.0441モル)、及び(B)成分として水添MDIを31.1g(0.119モル)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法により(A)〜(C)成分を反応させ、NCOの含有率%が0.6%以下となったことを確認した後、アニオン性基中和剤(D)としてトリエチルアミンを、中和率が1.0となるように4.33g(0.0428モル)加え、固形分が80質量%のウレタンプレポリマーを得た。
仕込み時の(A)〜(C)成分の総量中における(a)成分の比率は5質量%、(C)成分の比率は4.8質量%であり、NCO/OHの当量比は1.1であった。
得られたウレタンプレポリマーを実施例1と同様の手法により水系ポリウレタン樹脂組成物の製造を試みたところ、ウレタンプレポリマーが水中に分散せず、水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができなかった。
【0072】
[比較例4]
(a)成分以外の(A)成分として実施例1で使用したポリエステルポリオールポリエステルポリオールを53.8g(0.0307モル)、(B)成分として水添MDIを54.5g(0.208モル)使用したこと以外は、実施例1と同様の手法により(A)〜(C)成分を反応させ、NCOの含有率%が6.3%以下となったことを確認した後、アニオン性基中和剤(D)としてトリエチルアミンを、中和率が1.0となるように4.33g(0.0428モル)加え、固形分が80質量%のウレタンプレポリマーを得た。
仕込み時の(A)〜(C)成分の総量中における(a)成分の比率は5質量%、(C)成分の比率は4.8質量%であり、NCO/OHの当量比は2.2であった。
得られたウレタンプレポリマーを用いて、実施例1と同様の手法により水系ポリウレタン樹脂組成物の製造を試みたところ、ウレタンプレポリマーの水分散時に二酸化炭素発生に伴う発泡が著しく、水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができなかった。
【0073】
[比較例5]
(a)長鎖アルキレンジオール化合物の替わりに1,8−オクタンジオールを6.0g(0.041モル)、その他の(A)成分として実施例1で使用したポリエステルポリオールポリエステルポリオールを58.9g(0.0337モル)、及び(B)成分として水添MDIを49.3g(0.188モル)使用したこと以外は実施例1と同様の手法により(A)〜(C)成分を反応させ、NCOの含有率%が4.0%以下となったことを確認した後、アニオン性基中和剤(D)としてトリエチルアミンを、中和率が1.0となるように4.33g(0.0428モル)加え、固形分が80質量%のウレタンプレポリマーを得た。
仕込み時の(A)〜(C)成分の総量中の1,8−オクタンジオールの比率は5質量%、(C)成分の比率は4.8質量%であり、NCO/OH当量比は1.6であった。
得られたウレタンプレポリマーを、実施例1と同様の手法により、水分散及び水伸長反応させ、固形分40%の水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0074】
[比較例6]
前記実施例1で使用したものと同様のウレタンプレポリマーを、同様の条件において水分散させた後、鎖伸長剤としてエチレンジアミン3.57g(0.119モル)を用いて高分子量化し、水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0075】
[比較例7]
前記比較例6で使用した乳化剤((株)ADEKA製、製品名アデカプルロニックF−108:ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物、平均分子量15500、エチレンオキサイド含有量80質量%)を、前記(A)、(B)及び(C)成分の総量100質量部に対して10質量部、水中に添加して水分散させたこと以外は、NCO/OHの当量比、中和率及び固形分等を比較例6の場合と同様に設定し、比較例6と同様の製造条件にて水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0076】
<性能評価>
前記実施例1〜3及び比較例1、5〜7により得られた水系ポリウレタン樹脂組成物の塗料安定性、塗膜の耐水性、耐酸性、耐アルカリ性及び密着性の評価を下記のように行った。
これらの結果を表1に示した。
【0077】
〔塗料安定性〕
前記実施例及び比較例により得られた水系ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、サイメル325(日本サイテックインダストリーズ社製、メチル化メラミン樹脂、固形分80%)15質量部を混合撹拌し、更にジメチルエタノールアミンを加えてpH8.5に調整し、試験液を得た。得られた試験液を40℃にて10日間放置した前後の粘度を測定し、上昇した粘度によって塗料の安定性を評価した。
○:粘度上昇がなく安定性良好。
△:粘度上昇が見られた。
×:著しい粘度上昇が見られた。
【0078】
〔試験体作製〕
基材として電気亜鉛メッキ鋼板を使用し、pH11〜13の脱脂剤を用いて60℃で5分間脱脂を行った後、脱脂処理した電気亜鉛メッキ鋼板上に、前記実施例1〜5及び比較例1〜4により得られた水系ポリウレタン樹脂組成物を1μm厚に塗布した。300℃の雰囲気下で4秒、鋼板の板温が75℃になるように加熱乾燥させ、試験体を作製した。
【0079】
〔耐水性試験〕
得られた試験体について、65℃/95%相対湿度の下で、24時間の耐水スポット試験を行い、試験後の塗膜の状態を下記の基準で目視評価した。
5:塗膜に異常なし。
4:塗膜の浮きが全面積の5%以下であった。
3:塗膜の浮きが全面積の6〜20%であった。
2:塗膜の浮きが全面積の21%以上であった。
1:塗膜が完全に剥がれた。
【0080】
〔耐酸性試験〕
試験体を1%HSO水溶液(25℃)に24時間浸漬し、浸漬後の塗膜の状態を、下記の基準で目視評価した。
5:塗膜に異常なし。
4:塗膜の浮きが全面積の5%以下であった。
3:塗膜の浮きが全面積の6〜20%であった。
2:塗膜の浮きが全面積の21%以上であった。
1:塗膜が完全に剥がれた。
【0081】
〔耐アルカリ性試験〕
前記試験体を使用し、1%NaOH水溶液(25℃)に1時間浸漬し、浸漬後の塗膜の状態を、下記の基準で目視評価した。
5:塗膜に異常なし。
4:塗膜の浮きが全面積の5%以下であった。
3:塗膜の浮きが全面積の6〜20%であった。
2:塗膜の浮きが全面積の21%以上であった。
1:塗膜が完全に剥がれた。
【0082】
〔密着性〕
水系ポリウレタン樹脂組成物を未処理の電気亜鉛メッキ鋼板上に1μm厚に塗布した後、300℃の雰囲気下で15秒、鋼板の温度が150℃になるように加熱乾燥して、試験片を得た。
JIS K5600−5−6(クロスカット法)により、該試験片の塗膜の剥がれ具合を下記基準にて評価した。
5:塗膜に異常なし。
4:塗膜にわずかに(5%以下の面積)浮きが見られた。
3:塗膜に少し(5%超、20%以下の面積)浮きが見られた。
2:塗膜に多く(20%超の面積)浮きが見られた。
1:塗膜が完全に剥がれた。
【0083】
【表1】

【0084】
前記実施例及び比較例の結果から、本発明の水系ポリウレタン組成物のみが、塗料安定性、耐水性、耐薬品性及び密着性のすべてにおいて良好な結果が得られていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、水系であるから環境を破壊しないばかりでなく、作業性も良好である上、塗料安定性、耐水性、耐酸性及び耐アルカリ性等の耐薬品性に優れた塗膜を形成するので、木材、紙、繊維、ガラス、電子材料部品及び鋼板等の表面に塗装することによって、耐水性、耐薬品性に優れた材料や成形品を製造するのに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、イソシアネート(B)、及び、カルボキシル基又はスルホン酸基を含有するアニオン性基導入ポリオール(C)を反応させて得られた末端イソシアネート基ウレタンプレポリマーを、アニオン性基中和剤(D)を用いて水に分散させ、水伸長させてなる水系ポリウレタン樹脂組成物であって、前記(A)成分が、炭素原子数10〜32の長鎖アルキレンジオール化合物(a)を必須成分とすると供に、前記(a)成分の配合量が、(A)、(B)及び(C)成分の総量の1〜20質量%であり、前記(B)成分におけるイソシアネート基(NCO)と、前記(A)成分及び前記(C)成分の全水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が1.3〜1.9であることを特徴とする、水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)化合物が、炭素原子数12〜18の長鎖アルキレンジオール化合物である、請求項1に記載された水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記アニオン性基導入ポリオール(C)の配合量が、前記(A)、(B)、及び(C)成分の総量の0.1〜30質量%である、請求項1又は2に記載された水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載された水系ポリウレタン樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料。
【請求項5】
請求項4に記載された塗料を板状材料に塗布してなることを特徴とする塗装品。
【請求項6】
前記板状材料が表面処理鋼板である、請求項5に記載された塗装品。

【公開番号】特開2012−102210(P2012−102210A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250813(P2010−250813)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】