説明

水系消火配管での配管方法

【課題】 建造物に配設される消火用配管を高い作業性で確実に配管することのできる配管方法を提供する。
【解決手段】 建造物の配管スペースに配管されている消火用給水主管(1)にヘッダー(3)を連通接続し、このヘッダー(3)と建造物での適所に配置されている消火用端末機器(7)とを枝管(6)で連通接続する消火配管系での配管方法である。可撓性を有する素材で構成した枝管(6)を、施工現場におけるヘッダー(3)の位置から消火用端末機器(7)までの寸法に対応させた長さに工場加工により予めそれぞれ形成する。この枝管(6)の一端を前記ヘッダー(3)ワンタッチ継手(5a)やシモク式継手(5b)等の迅速接続継手(5)を介して接続するととともに、枝管(6)の他端を消火用端末機器(7)と接続する接続具(8)に連通接続させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物に配管される消火用水配管での配管方法に関し、特に、スプリンクラーヘッドに消火用水を供給する消火用水配管での接続を高い作業性で行える配管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物に施される消火用水配管は、天井等に配設されたスプリンクラーヘッド等の端末機器に給水する枝管を天井裏等の配管スペースや天井板に沿って配設している(特許文献1)。ところが、この場合、各枝管は、施工現場で配管施工図面に準拠して図面指定の長さに切断加工したり、現場での実寸法に応じて切断加工したりし、その切断加工された管材をフランジやソケツト等のフィッティング類を用いて適宜接合しつつ組み合わせていく、いわゆる現場加工で行っていた。
【0003】
枝管を施工現場で現場加工する場合、寸法精度や加工精度は作業者の技量が大きく影響するうえ、それらの精度自体も低くなることから、使用材料に無駄が生じやすいという問題がある。また、天井裏などに形成される配管スペースが狭いことから、接続作業性も悪いという問題もある。
【0004】
そこで、建築物での配管において、可撓性部材で構成した枝管を寸法加工するとともに、主管に接続してなる配管ユニットを予め工場加工(プレハブ加工)したものを現場に搬入し、現場で主管部分を本館部分につなぎ込むようにする技術が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001-25514号公報
【特許文献2】特許第2606808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の可撓性部材を利用して形成した枝管をプレハブ加工し、現場に搬入してつなぎ込むようにした場合でも、給水管などとの連結接続は、天井部で接続するため、ヘッダーに枝管が接続された状態では重量が重くなり、取扱いも困難で、ヘッダーを設置しずらい。
また、枝管が梁を貫通しなければならない場合には、ヘッダー及び他端に接続具が接続された状態では、梁に設けられている貫通孔を通過できない場合がある。その場合、枝管を一度途中で切断し、貫通孔に枝管を通貨させた後に枝管を再びソケツト等の継手で接続する必要がある。
【0006】
本発明はこのような点に着目して形成されたもので、建造物に配設される消火用水配管を高い作業性で確実に配管することのできる配管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した本発明は、建造物の配管スペースに配管されている消火用給水主管にヘッダーを連通接続し、このヘッダーと建造物での適所に配置されている消火用端末機器とを枝管で連通接続する消火配管系での配管方法であって、可撓性を有する素材で構成した枝管を、施工現場におけるヘッダーの位置から消火用端末機器までの寸法に対応させた長さに工場加工により予めそれぞれ形成し、この枝管の一端を前記ヘッダーに迅速接続継手を介して接続するととともに、枝管の他端を消火用端末機器と接続する接続具に連通接続させるようにしたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1での迅速接続継手をワンタッチ継手で構成したことを特徴とし、請求項3に記載した発明は請求項1での迅速接続継手をシモク式継手で構成したことを特徴とし、請求項4に記載した発明は請求項1〜3のいずれかでの枝管をボリブテン管で構成したことを特徴としている。また、請求項5に記載した発明は、枝管の他端に接続する接続具をワンタッチ継手としたことを特徴としている。さらに、請求項6に記載した発明は、枝管の他端に接続する接続具を融着継手としたことを特徴としている。
また、請求項7に記載した発明は、請求項1〜6での消火用端末機器がスプリンクラーヘッドであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した本発明では、可撓性を有する素材で構成した枝管を、施工現場におけるヘッダーの位置から消火用端末機器までの寸法に対応させた長さに工場加工により予めそれぞれ形成し、この枝管の一端をヘッダーに迅速接続継手を介して接続するように構成してあることから、施工現場での枝管を配管するスペースが狭くても、容易に枝管をつなぎ込むことができ、作業性を高めることができる。また、枝管が可撓性を有する素材で形成されていることから、工場加工した枝管を巻回した状態で施工現場に搬入することができるから輸送効率も向上することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図は本発明を適用した水系消火配管の一形態を示し、図1は概略斜視図である。この水系消火配管は、建造物に敷設されている消火用給水主管(1)から分岐導出した分岐管(2)にヘッダー(3)が接続固定されている。このヘッダー(3)は複数のT管(4)を相互に相対回転可能な状態で組み付けることにより、導出方向をヘッダー(3)の軸芯周りに自由に設定できるようにしてある。
【0011】
ヘッダー(3)の各導出口には、枝管(6)を迅速に接続することのできる迅速接続継手(5)が組み込んである。この迅速接続継手(5)は図2及び図3に示されているワンタッチ継手(5a)で構成してあり、このワンタッチ継手(5a)は枝管(6)の一端を挿入するだけで、枝管(6)とヘッダー(3)とが水密状に接続できるように構成してある。
【0012】
枝管(6)は可撓性を有する樹脂管であるポリブテン管で形成してあり、配管施工図面に応じて定められた長さに予め工場で切断するとともに所定の形状に加工してある。そして、この枝管(7)の他端部には、消火用端末機器としてのスプリンクラーヘッド(7)との接続具(8)が装着してある。この接続具(8)は熱融着あるいは電気融着で枝管(6)と一体化している。なお、この接続具(8)としては、ねじ付きソケット(8a)や座付エルボ(8b)を使用しており、この接続具(8)にスプリンクラーヘッド(7)を直接的に、あるいは、補助連結管(10)を介して連結固定するようにしてある。
【0013】
前記ワンタッチ継手(5a)は、図2及び図3に示すように、T管(4)から一体に突出形成した本体部分(10)と、この突出している本体部分(10)の外周部分に、挿入されるポリブテン管の肉厚を基準に設定された所定寸法の挿入空間(11)を隔てて配置したスペーサ(12)と、このスペーサ(12)の外周に挿嵌されて本体部分(10)に外嵌している外筒(13)とを有し、スペーサ(12)と本体部分(10)の基端部との間にバックアップゴム(14)が、また、スペーサ(12)の先端部と外筒(13)との間にはストッパリング(15)がそれぞれ装着してある。また、本体部分(10)の外周面にはOリング(16)が嵌着してあり、前記挿入空間(11)にはテーパー付きガイド(17)が該挿入空間(11)を先端側から基端側に移動可能な状態で装着されている。
【0014】
上述の構成からなるワンタッチ継手(5a)では、図2(a)及び図3(a)に示されている非接続状態から、ワンタッチ継手(5)の先端開口部に枝管(6)の管壁部分を挿入空間(11)にあてがってテーパー付きガイド(17)とともに押し込み挿入することによって、図2(b)及び図3(b)に示す接続状態になる。
【0015】
上述の構成からなる水系消火配管にあっては、予め工場加工で所定寸法ならびに所定形状に形成した枝管(6)を使用して、天井裏などの狭い空間内に配管し、枝管(6)のヘッダー側端部をヘッダー(3)にワンタッチ継手(5a)を介して接続するとともに、枝管の他端部をスプリンクラーヘッド(7)に接続具(8)を介して連通接続するようにしている。この場合、消火用端末機器であるスプリンクラーヘッド(7)は室内空間における天井等の構造物に固定されており、その接続部分は室内側からでも比較的操作しやすいため、消火用端末機器との接続を容易に行うことができる。
【0016】
一方、ヘッダー(3)に対しては、枝管(6)の端部をヘツダー(3)に設けてあるワンタッチ継手(5a)に対して直線的に差し込むだけであるからヘッダー(3)へのつなぎ込み作業も容易に行うことができる。そして、可撓性を有する素材で枝管(6)が構成してあることから、施工現場で生じる多少の寸法誤差は、枝管(6)のたわみ変形で吸収することができることになる。
【0017】
上述の実施形態では、消火用端末機器側となる枝管(6)の端部(他端部)に接続具(8)を融着し、その接続具(8)にスプリンクラーヘッド(7)を直接又は補助連結管(9)を介して連結するように構成しているが、接続具(8)として、一端がねじ継手で他端が前記ワンタッチ継手と同じ構成になっている管継手を使用し、枝管(6)の他端をワンタッチ継手に挿入固定するように構成してもよい。
【0018】
図4は枝管(6)をヘッダー(3)につなぎ込むための迅速接続継手(5)として、シモク式継手(5b)を使用した実施態様を示し、図4(a)は継手が外れている場合、図4(b)は継手が接続している状態を示す。このシモク式継手(5b)は、ヘッダー(3)と一体に形成されている接続筒(18)とこの接続筒(18) 先端部に当接して接続されるラップジョイントのスタブエンド(19)とこのスタブエンド(19)に套嵌する袋ナット(20)とで構成してある。袋ナット(20)はその先端内周面に接続筒(18)の先端外周面に形成された雄ネジ部(21)に螺合する雌ネジ部(22)が刻設してある。そして、スタブエンド(19)の他端部に枝管(6)が連通接続してある。
【0019】
図は省略したが、枝管(6)をヘッダー(3)につなぎ込むための迅速接続継手(5)として、バヨネット係合を用いた管継手を使用するようにしてもよい。この場合、バヨネット突起とこのバヨネット突起が係合する係着板の当接面とを楔係合させて、その係合時に密着力を増大させることにより、水密構造にすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、建造物の天井や壁内に配管される消火用水の配管に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】水系消火配管の一形態を示す概略斜視図である。
【図2】ヘッダーの縦断面図を示し、図2(a)は枝管接続前の縦断面図、図2(b)は枝管接続状態での縦断面図である。
【図3】ワンタッチ継手の要部を示す図であり、図3(a)は枝管接続前の縦断面図、図3(b)は枝管接続状態での縦断面図である。
【図4】シモク式継手の要部を示す図であり、図4(a)は接続前の縦断面図、図4(b)は枝管接続状態での縦断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…消火用給水主管、3…ヘッダー、5…迅速接続継手(5a…ワンタッチ継手、5b…シモク式継手)、6…枝管、7…消火用端末機器(スプリンクラーヘッド)、8…接続具。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の配管スペースに配管されている消火用給水主管(1)にヘッダー(3)を連通接続し、このヘッダー(3)と建造物での適所に配置されている消火用端末機器(7)とを枝管(6)で連通接続する水系消火配管での配管方法であって、
可撓性を有する素材で構成した枝管(6)を、施工現場におけるヘッダー(3)の位置から消火用端末機器(7)までの寸法に対応させた長さに工場加工により予めそれぞれ形成し、この枝管(6)の一端を前記ヘッダー(3)に迅速接続継手(5)を介して接続するととともに、枝管(6)の他端を消火用端末機器(7)と接続する接続具(8)に連通接続させるようにしたことを特徴とする水系消火配管での配管方法。
【請求項2】
枝管(6)とヘッダー(3)とを接続する迅速接続継手(5)がワンタッチ継手(5a)である請求項1に記載の水系消火配管での配管方法。
【請求項3】
枝管(6)とヘッダー(3)とを接続する迅速接続継手(5)がシモク式継手(5b)である請求項1に記載の水系消火配管での配管方法。
【請求項4】
枝管(6)がボリブテン管で構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系消火配管での配管方法。
【請求項5】
枝管(6)の他端に接続する接続具(8)がワンタッチ継手である請求項1〜4のいずれか1項に記載の水系消火配管での配管方法。
【請求項6】
枝管(6)の他端に接続する接続具(8)が融着継手である請求項1〜4のいずれか1項に記載の水系消火配管での配管方法。
【請求項7】
消火用端末機器(7)がスプリンクラーヘッドである請求項1〜6のいずれか1項に記載した水系消火配管での配管方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−130195(P2007−130195A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325503(P2005−325503)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】