説明

水系液体アイライナー化粧料

【課題】 液体化粧料用塗布容器に充填し、筆穂様の塗布用途部分を用いて塗布され化粧用途に供するために適した水系液体アイライナー化粧料であって、耐水性及び肌密着性に優れ、かつ、色ムラの少ない褐色の水系液体アイライナー化粧料を提供する。
【解決手段】 酸素を含む雰囲気下、200℃〜400℃で黒酸化鉄を酸化処理した顔料であって、該顔料の色調が、L表色系において、aが2〜20、bが2〜15、かつLが20〜32であることを特徴とする水系液体アイライナー化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイライナー化粧料、特に液状タイプの水系アイライナー化粧料に関する。より具体的には、本発明は、液体化粧料用塗布容器に充填し、筆穂様の塗布用途部分を用いて塗布され化粧用途に供するために適した水系液体アイライナー化粧料であって、耐水性及び肌密着性に優れ、かつ、色ムラの少ない褐色の水系液体アイライナー化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイライナー等の目元付近用の化粧品としては、例えば高粘度の液体化粧料を容器に内蔵し、該化粧料を刷毛に含ませた後、筆ならしを行って描くボトルタイプや、低粘度の液体化粧料を容器に内蔵し誘導芯の毛細管力で該化粧料をスポンジなどからなる先端ペン芯部に導出させるペンタイプ、その他固形化粧料を芯としたペンシルタイプがある。しかしながら、該ボトルタイプのアイライナーでは内容物が高粘度であるために描線がかすれやすく、使用中に液をたびたび塗布部に付け直す必要があるといった点において不便であり、必ずしも使用し易いものではない。一方、中綿等に化粧料を内蔵した、いわゆるペンタイプのアイライナー化粧料では、キャップをとれば直ちに塗布できるといった使いやすさがあるが、そのためには低い粘度のものとして調製しなければならない等、組成上の制約を伴う。
【0003】
特許文献1では、実施例1はチタンブラックとベンガラの色材で構成され、分離試験や濃度試験で良好な結果となっている。しかし、チタンブラックに関しては、使用が制限されている国が存在するという問題もある。又、比較例1には、黒酸化鉄とベンガラで構成されているアイライナー液が記載されているが、分離試験で色分かれなど多少の分離が認められるとの評価がされている。
【0004】
特許文献2では実施例1に、赤色226号とカーボンブラックで色材が構成されている褐色の液状化粧料(アイライナー液)が記載されている。ここには、又、実施例と同じ組成の比較例も記載されており、色材の粒子径によって色ムラ等の不具合が生じることが開示されている。又、ここで使用されている色材、赤色226号に関しては、その使用が制限されている国も存在するという問題もある。
【0005】
特許文献3では、実施例2にベンガラのみで構成されたアイライナー用褐色顔料分散液が記載されている。ベンガラにも様々な色調のものが存在するが、暗褐色を呈する化粧料として用いる場合には、黒色の色材を配合させて調色する必要がある。このように種類の異なる複数の色材を使用した場合、それぞれの色材の間で粒子径や比重等の色材自体の基材の物性の差異があることに起因して、化粧料として用いた際における発色に色ムラを引き起こしたり、あるいは均一な厚さの化粧が容易でなかったり、あるいはしばらく化粧料を使用しない場合に化粧料容器中で色分かれを生じたりする等の問題を生じ易い。
【0006】
これらのように、黒色に近い暗褐色のアイライナー液を作成する場合、汎用性の高い酸化鉄で構成することとすると、酸化鉄にも様々な種類(組成・粒径・色調)のものが存在することに起因して、アイライナー液の呈する色調が勢い明るい褐色から赤褐色を帯びてしまう。この問題を解消するために、黒酸化鉄や別の黒色色材を配合することとすれば、上述したようにアイライナー液の粘度が高くなるにつれて色ムラの発生が懸念される。このようにアイライナー液の調製においては、その色調を所望とするものとするには、多くの解決されるべき問題点がある。
【特許文献1】特開平10−231233号公報
【特許文献2】特開2004−292410号公報
【特許文献3】特開2004−175709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術において見られた問題点を解決し、耐水性および肌密着性に優れ、色ムラの少ない褐色のアイライナー液および該アイライナー液を液体化粧料用塗布容器に充填してなる水系液体アイライナー化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の解決課題の解決を図るべく、本発明者は、鋭意研究を重ねることにより、本発明を完成した。すなわち、本発明は、
(1) 酸素を含む雰囲気下、200℃〜400℃で黒酸化鉄を酸化処理した顔料を少なくとも含んでなる水系液体アイライナー化粧料、
(2) 酸化処理していない黒酸化鉄を顔料として更に含んでなる上記(1)に記載の水系液体アイライナー化粧料、
(3) 上記(1)に記載の処理顔料の色調が、L表色系において、aが2〜20、bが2〜15、かつLが20〜32であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水系液体アイライナー化粧料、
(4) 分散剤として、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらの(C〜C、C)アルキルエステルのいずれか1種又は2種以上から選択されるものからなる単独重合体又は共重合体と、被膜形成剤として、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらの(C〜C、C)アルキルエステルのいずれか1種又は2種以上から選択されるものからなる単独重合体又は共重合体のエマルジョンとを少なくとも含んでなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の水系液体アイライナー化粧料、
(5) 更に、界面活性剤を水系液体アイライナー化粧料の全質量中、1質量%以下で含んでなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水系液体アイライナー化粧料、
(6) 粘度が50〜200mPa・sであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の水系液体アイライナー化粧料、及び、
(7) 筆穂状の塗布用途部分を具備し液収容部に撹拌子を内蔵した液体化粧料用塗布容器に、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の水系液体アイライナー化粧料が充填されてなるアイライナー。
であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)〜(7)に記載の本発明水系液体アイライナー化粧料は、
(A) 色材として同種の黒酸化鉄を処理したものからなる単体を用いていることから、色材粒子の粒子径や比重等の物性がほぼ同一であり、色ムラがないこと、
(B) 黒酸化鉄の酸化処理の温度や時間を適宜調整することにより、所望とする黒褐色度の色調に調製できること、
(C) 均一混合した状態を維持しやすい。このため、使用時に色ムラを生じ難く、液体化粧料塗布容器中で異なる色材間で色分かれを生じ難いので、ペンタイプの塗布具を採用した場合であっても筆穂タイプの塗布具であっても、塗布跡の化粧料は均一の色を呈し、均一の厚さの塗布が容易にできること、
(D) 耐水性及び肌密着性に優れ、化粧もちに優れている。更には、化粧料としての塗布感、塗布後の使用感においても良好なものであること、及び、
(E) 比較的低粘度であり、化粧料として塗布面への伸ばしやすさに優れ、べたつき感も少ないこと、
等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の水系液体アイライナー化粧料においては、黒酸化鉄を酸素を含む雰囲気下で200℃から400℃の温度範囲で酸化処理して得た無機顔料を少なくとも含んでなることを特徴とする。該無機顔料の含有量は特に限定されないが、本願液体アイライナー化粧料の全質量に対して1質量%〜30質量%、好ましくは5質量%〜25質量%である。しかし、一般的に1質量%未満では、発色が薄くて化粧料としての用を為さない。また、30質量%を超えて添加しても発色の向上はさほどではなく、かえって塗布ムラを生ぜしめる結果を招いたりする。
【0011】
配合される黒酸化鉄としては、具体的には、一次粒子径が0.2μm〜1μmの黒酸化鉄であって、略球形状、立方体形状、8面体形状、その他の多面体形状のものが好適である。これらの外形的性状の基準を満たした黒酸化鉄を、酸素雰囲気下、200℃〜400℃の温度範囲で酸化処理する。酸化処理時の加熱温度を200℃より低い温度で行うと、おそらくは完全な酸化が起こせないことが理由で、得られる顔料の色調に色ムラが生じる結果となる。一方、酸化処理時の加熱温度を400℃よりも高温で行うと、得られる顔料の色調が明るい赤みを呈し、これは本発明で所望とする黒色〜黒褐色の色相とは異なる結果となるため好ましくない。このことから、本発明においては、黒酸化鉄の酸化処理は200℃〜400℃で行い、より好ましくは200℃〜350℃の範囲で行う。この酸化処理は、温度が均一に保たれた炉の中に黒酸化鉄を入れ、空気を流しながら所定の温度で加熱処理する。黒酸化鉄の酸化処理に要する時間は、黒酸化鉄の処理量にもよるが、炉中に導入した黒酸化鉄が所定の加熱温度に達した後、10分間〜4時間である。この加熱時間は特に限定されないが、加熱時間を長くすると、無機顔料(黒酸化鉄)の色調変化の加熱温度依存性よりも色調への響は小さいものの、徐々に明るい色調になってしまうため好ましくない。
黒酸化鉄のより詳細な酸化処理条件に関しては、後に詳述する。
【0012】
本発明の液体アイライナー化粧料には、顔料分散剤として、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらの(C〜C、C)アルキルエステルの1種又は2種以上から選択されるものからなる単独重合体又は共重合体が配合されてもよい。
【0013】
前記顔料分散剤としてのアクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらの(C〜C、C)アルキルエステルの1種又は2種以上から選択されるものからなる単独重合体又は共重合体は、望ましくは、その組成中に酸基があり、中和によって水に溶解できるものがよい。
【0014】
本発明において使用され得る上記顔料分散剤として特に望ましいアクリル樹脂には、下式によって例示されるtert−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、及びメタクリル酸からなる混合物の共重合体がある。
【0015】
【化1】

【0016】
これらの顔料分散剤の使用量は、特に限定されないが、顔料100質量部に対して5質量部〜30質量部が好ましい。5質量部未満では、顔料の分散安定化が不十分となり、アイライナー化粧料中に経時的に顔料の沈降を引き起こし易く、又、30質量部を超えて配合すると液体アイライナー化粧料自体の粘度を徒に増大せしめる結果を招き、共に好ましくない。
【0017】
上記の酸残基の中和の目的で使用される塩基性化合物としては、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、L−アルギニン、アンモニア水、水酸化ナトリウム等のいずれかを使用することが可能であって、これらの中でも特に2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを使用することが好ましい。なお、ここに列挙した塩基性化合物に限定されないが、実使用上、低分子量のアミノアルコール類が好ましく使用され得る。
【0018】
本発明において使用され得る上記被膜形成剤としては、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの(C1〜C4およびC8)アルキルエステルならびにスチレンの1種又は2種以上から選択される化合物を原料モノマーとする単独重合体(但し、ポリスチレンのみからなるホモポリマーを除く)もしくは共重合体のエマルジョン(単独重合体、共重合体のいずれの場合であっても、モノマーを重合溶媒としての水の中で乳化重合させて得られたものであって、水懸濁液)が例示される。
【0019】
該被膜形成剤エマルジョンの本発明水系液体アイライナー化粧料への配合量は、固形分換算で、水系液体アイライナー化粧料全体の2〜15質量%が好ましい。2質量%未満では耐水性が悪く、15質量%を超えると塗布具の塗布部が乾燥して塗布不能となる恐れがある。
【0020】
上記の酸残基の中和の目的で使用される塩基性化合物としては、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、L−アルギニン、アンモニア水、水酸化ナトリウム等のいずれかを使用することが可能であって、これらの中でも特に2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを使用することが好ましい。なお、ここに列挙した塩基性化合物に限定されないが、実使用上、低分子量のアミノアルコール類が好ましく使用され得る。
【0021】
本発明水系液体アイライナー化粧料においては、主溶剤として水を使用する。水以外であっても、必要に応じて、主にアルコール類からなる水溶性有機溶剤を配合させることも可能である。例えば、実施例及び比較例の結果を表した表における1,3−ブチレングリコールは、上記の顔料分散剤及び被膜形成剤としての樹脂成分の溶解度を高める目的で加えられたものであり、水溶性有機溶剤として好適である。
【0022】
本発明の水系液体アイライナー化粧料に配合され得る被膜形成剤エマルジョンとしては、前述したものの他に、更に構成するモノマーとしてスチレンを含んでなる、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらの(C〜C、C)アルキルエステルの1種又は2種以上及びスチレンとの共重合体も、好ましく使用され得る。
【0023】
なお、これらの被膜形成剤エマルジョンの乳化安定化に界面活性剤が使用されることもあるが、これらに配合されている界面活性剤については、本発明水系液体アイライナー化粧料の固着性に与える影響は少ないので、その配合量は特に限定されない。その理由は定かではなく推測に過ぎないが、フリーの状態で存在している界面活性剤の量が少ないためと考えられる。このため、本発明水系液体アイライナー化粧料に用いられる被膜形成剤エマルジョンは、界面活性剤フリーのものがより好ましい。
【0024】
上記の各種配合成分からなる本発明水系液体アイライナー化粧料には、これらの必須構成成分に加えて、防腐剤、pH調整剤、保湿剤、粘性調節・増粘剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、香料等を適宜、配合され得る。
防腐剤としては、フェノキシエタノール、パラベン、その他ある種の天然物抽出物が選択され得る。
pH調整剤としては、アミノアルコール類やその他の有機アミン類、アンモニア水等が選択され得る。
保湿剤としては、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類が選択され得る。
粘性調整・増粘剤としては、キサンタンガム等の多糖類増粘剤、多価アルコール類等が選択され得る。粘性調整・増粘剤としては、例えば、トラガントガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、アラビアゴム、カラヤゴム、クインシード、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等が好ましく、これらのうちから任意の1種を選択して単独で使用するか、あるいは、これらのうちから選択される任意の2種以上を組み合わせて併用使用するかのいずれでもよい。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸、ならびにこれらの一ナトリウム塩、二ナトリウム塩、及び三ナトリウム塩等が選択され得る。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル等のパラベンが選択され得る。
なお、上記の防腐剤、pH調整剤、保湿剤、粘性調節・増粘剤、キレート剤、防腐剤、香料等はいずれも例示であって、上記したものに限定はされず、当業者であればおよそ使用が考えられるものを適宜選択され得る。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の具体的な実施の形態を実施例によって、更に詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[黒酸化鉄の酸化処理]
以下に記す処理を施して得た無機顔料をそれぞれ処理品1〜10(本発明の範囲内)及び比較品1〜5(本発明の範囲外)として表記する。
処理品1. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、2時間かけて炉内の温度を300℃まで昇温した後、300℃に維持して1時間加熱し、その後、空冷した。
処理品2. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、2時間かけて炉内の温度を300℃まで昇温した後、300℃に維持して2時間加熱し、その後、空冷した。
処理品3. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、2時間かけて炉内の温度を250℃まで昇温した後、250℃に維持して4時間加熱し、その後、空冷した。
処理品4. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、2時間かけて炉内の温度を200℃まで昇温した後、200℃に維持して2時間加熱し、その後、空冷した。
処理品5. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、30分間かけて炉内の温度を350℃まで昇温した後、350℃に維持して1時間加熱し、その後、空冷した。
処理品6. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、30分間かけて炉内の温度を300℃まで昇温した後、300℃に維持して1時間加熱し、その後、空冷した。
処理品7. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、30分間かけて炉内の温度を350℃まで昇温した後、350℃に維持して20分間加熱し、その後、空冷した。
処理品8. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、2時間かけて炉内の温度を400℃まで昇温した後、400℃に維持して2時間加熱し、その後、空冷した。
処理品9. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、30分間かけて炉内の温度を150℃まで昇温した後、150℃に維持して1時間加熱し、その後、空冷した。
処理品10. 黒酸化鉄2kgをアルミナ製角箱に入れ、酸化炉の中に導入した。該酸化炉に30L/minの流量で空気を送り込みながら、2時間かけて炉内の温度を500℃まで昇温した後、500℃に維持して4時間加熱し、その後、空冷した。
【0026】
又、比較例において用いた無機顔料としての比較品1〜5については、以下の物を使用した。
比較品1. 酸化処理前の黒酸化鉄
比較品2. 市販のベンガラA
比較品3. 市販のベンガラB
比較品4. 市販のベンガラC
比較品5. 比較品1の酸化処理前の黒酸化鉄、及び、比較品2の市販のベンガラAの、
質量比5:6混合物
【0027】
直径15mm,深さ3mmの粉体試料皿に上記比較品1〜5をそれぞれ山盛りにして載せた後、試料皿の縁を越える試料部分を平板によって擦り切りで除去し、約1Nの圧力で脱気しながらプレスして測定試料とした。これをColor TOOLS/SF600XV(Datacolor International社製)で光源D65 10°視野でCIELを測定した。
【0028】
【表1】

【0029】
処理品1から処理品8までは、所望とする暗褐色の外観粉体として得られた。
処理品9は、ほとんど未処理の黒酸化鉄と同じ外観であった。
処理品10は、赤みの強い外観の粉体として得られた。
処理品9と処理品10の色調は、本発明水系液状アイライナー化粧料において所望とする黒色〜黒褐色の色調の顔料ではなかった。
【0030】
[水系液体アイライナー化粧料の調製方法]
以下の配合でアイライナー液を作成した。
アイライナーの製造方法は、表1に記載したLの各値を有する処理顔料(処理品1−10及び比較品1−5)を表2に記載したアクリル樹脂と界面活性剤、水、pH調整剤、防腐剤の一部との混合品として、メディア分散機で所定の粘度・粒子径等になるまで分散した。
そして、この分散液に、防腐剤の残部、増粘剤、pH調整剤、被膜形成剤エマルジョン、及び水を添加してアイライナー液とした。
本発明の水系液体アイライナー化粧料には、表2に記載した各種組成分の他に必要に応じて、保湿剤、キレート剤、香料等の他の化粧料用原料を配合組成分として配合してもよい。本発明の水系液体アイライナー化粧料に配合し得る前記他の原料としては、化粧料の分散系に支障を来さないものであるならば、任意のものを使用し得る。
【0031】
[水系液体アイライナー化粧料の調製方法]
上記の調製方法によって得た水系液体アイライナー化粧液を、先端部に筆穂を装備し、ペン型容器の後端部に回転させることによって容器内のピストンを前進させ、一定量の内容液を塗布部である筆穂部へと吐出させることができる機構を有し、化粧料を内蔵した容器の内部には、充填されている水系液体アイライナー化粧料を均一に撹拌し得る撹拌球が装備された液状化粧料塗布用容器に充填することによって、水系液体アイライナー化粧料を調製した。
【0032】
[水系液体アイライナー化粧料の性能評価]
表1に記載した各種黒酸化鉄を配合して調製した本発明水系液体アイライナー化粧料(処理品1,2,3及び8を使用)の原料組成並びにそれによる化粧性等の試験結果を本発明の範囲外の比較例(比較品2及び5を使用)とともに表2に示した。
【0033】
なお、以下の表2に記載の各実施例および比較例に対応する各水系液体アイライナー化粧料の粘度は、測定時温度25℃で、トキメック社製 EMD型粘度計 標準ローター 20rpm(ずり速度 76.8[s−1])にて測定した。
【0034】
【表2】

【0035】
[水系液体アイライナー化粧料の保存試験]
筆穂様の塗布用途部分を有する液体化粧料用塗布容器に、上記のようにして調製した水系液体アイライナー化粧料を充填し、筆先を上に向けて固定した。これを精密に温度コントロールできる試験室に入れ、0℃から40℃まで一定の温度上昇で1時間かけて昇温させ、40℃で5時間恒温の後、40℃から0℃まで一定の温度下降で1時間かけて冷却させ、0℃で5時間恒温とさせた。この一連の操作を1サイクルとし、このサイクルを繰り返した。このサイクルを連続して1ヶ月間実施した後、該水系液体アイライナー化粧料について、以下のような塗布性能試験を行った。すなわち、温度変化環境に1ヶ月曝した塗布容器入りの水系液体アイライナー化粧料を上記温度可変試験室から取り出して、ペン型容器の軸方向に10回よく振ってから、ペン型容器の先端部の筆穂部に含浸させ、それを化粧経験5年以上の女性パネラー20人の協力を得て、各自の肌に塗布してもらい、その塗布色を目視評価するとともに、その塗布時及び塗布後の感触・性状を官能評価してもらった。
各種の官能評価の評価基準は以下に記す通りである。
【0036】
[塗布性]
塗布時および塗布後の感触を意味し、以下の基準を採用して評価した。
◎: すこぶる良い。(パネラー20人中、15人以上が、使用感に優れると回答した
もの。)
○: 良い。(パネラー20人中、10人以上14人以下が、使用感に優れると回答し
たもの。)
△: 化粧料の塗布感として、普通である。(パネラー20人中、6人以上9人以下が
使用感に優れると回答したもの。)
×: 悪い。(パネラー20人中、5人以下しか、使用感に優れると回答しなかったも
の。)
【0037】
[固着性]
固着性としては、被検者(女性パネラー)の内腕に約10cmの長さで線状にアイライナー化粧料を塗布し、20分放置した後、塗布部位を35℃の温水流にさらした上で、当該塗布部位を手の平で軽く擦過し、肌上に残存したアイライナー化粧料の状態を目視にて評価した。以下の基準を採用して評価した。
◎: 温水洗浄の前後で、目視では全く変化が認められなかった。
○: 温水洗浄の前後で、目視ではほとんど変化が認められなかった。
△: ところどころ、塗布ラインが消失ないしは薄れた。
×: 肌上に塗布した化粧料の描線が完全に消失した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、アイライナー化粧料、特に、液体化粧料用塗布容器に充填し筆穂様の塗布用途部分を用いて塗布され化粧用途に供するために適した水系液体アイライナー化粧料であって、耐水性及び肌密着性に優れ、かつ、シャープな細線を色ムラなく描くことが可能な褐色の水系液体アイライナー化粧料であり、産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含む雰囲気下、200℃〜400℃で黒酸化鉄を酸化処理した顔料を少なくとも含んでなる水系液体アイライナー化粧料。
【請求項2】
酸化処理していない黒酸化鉄を顔料として更に含んでなる請求項1に記載の水系液体アイライナー化粧料。
【請求項3】
前記処理顔料の色調が、L表色系において、aが2〜20、bが2〜15、かつLが20〜32であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水系液体アイライナー化粧料。
【請求項4】
分散剤として、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらの(C〜C、C)アルキルエステルのいずれか1種又は2種以上から選択されるものからなる単独重合体又は共重合体と、被膜形成剤として、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらの(C〜C、C)アルキルエステルのいずれか1種又は2種以上から選択されるものからなる単独重合体又は共重合体のエマルジョンとを少なくとも含んでなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の水系液体アイライナー化粧料。
【請求項5】
更に、界面活性剤を水系液体アイライナー化粧料の全質量中、1質量%以下で含んでなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の水系液体アイライナー化粧料。
【請求項6】
粘度が50〜200mPa・sであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水系液体アイライナー化粧料。
【請求項7】
筆穂状の塗布用途部分を具備し液収容部に撹拌子を内蔵した液体化粧料用塗布容器に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水系液体アイライナー化粧料が充填されてなるアイライナー。

【公開番号】特開2007−217320(P2007−217320A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38001(P2006−38001)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】