説明

水素ガスを発生させる化合物の製造方法

【課題】 副作用が弱く、水素ガスを発生させる化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】 水素ガスを発生させる化合物の製造方法とは、サージ果実、ホソバワダン粉末を乳酸菌により発酵させる工程からなる。ここでいう水素ガスを発生させる化合物とは、レスベラトロール1分子、2分子の没食子酸、1分子のマグネシウムからなり、レスベラトロールの2個の水酸基を有するフェノールの水酸基に1分子の没食子酸のカルボキシル基がエステル結合している。この製造方法ではサージの果実1重量に対し、ホソバワダン粉末は0.01〜0.09重量、乳酸菌は0.004〜0.01重量が添加されて、34〜48℃に加温され、24〜98時間発酵される。さらに、ここで得られる水素ガスを発生させる化合物は、医薬品、食品、化粧品分野で応用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サージ果実、ホソバワダン粉末を乳酸菌により発酵させる工程からなる水素ガスを発生させる化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エイジングまたは老化とは紫外線や酸化物質による酸化を原因とし、全身の細胞の新陳代謝や再生力を低下させて、血管や神経の障害などの疾病にも結び付くことが知られている。また、脂肪が蓄積された状態に、酸化が生じることにより、過酸化物質が産生されて体を錆びさせ、老化を促進する。
【0003】
一方、アンチエイジングとは酸化や老化を防止する方法であり、この老化防止を目的として、様々な抗酸化性の食品が利用され、紫外線から防止方法などが考えられている。
【0004】
水素ガスは、地球上で最も小さな分子であり、種々の利用が実施されている。潜水病の防止のために、潜水者のボンベには酸素ともに微量の水素が混入されている。
【0005】
水素には酸化に抵抗する働きが知られており、これが還元作用であり、酸化を防止する方法である。
【0006】
日本医科大学の太田教授は水素ガスが脳梗塞や腎障害などの血管障害に対して改善することを報告し、水素ガスの利用を推奨している。
【0007】
水素ガスを発生させる系としては、有機酸と金属による反応が一般的であるが、金属による副作用が心配されるため、食品や医薬品としての利用は制限されている。
【0008】
サージにはビタミン、テルペノイドやミネラルが豊富に含まれており、中国を中心として100年以上の食経験が知られている安全な植物である。しかし、特有な香りを有することから、その利用が制限されている。
【0009】
そこで、サージの香りを軽減するために、乳酸菌により発酵させることにより香りを軽減でき、かつ、偶然にして、有機酸とミネラルの一種が水素ガスを発生させることがわかった。
【0010】
水素を利用した発明としては、豆乳又はおから入り豆汁を乾燥させた粉末とマイナス水素イオンを吸着させたサンゴカルシウムの粉末とを混合して得られた抗酸化組成物に関する文献がみられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
また、水と反応して電子を放出するミネラル粉末と水と反応して水素を放出するサンゴ粉末とからなることを特徴とする健康食品の発明がみられる(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
一方、食品廃棄物などの有機性排水から水素を生成する処理槽から生ずる残渣や排水中に含まれる有機物を設置面積やコストを抑制しつつ高効率で処理可能に構成した水素発生装置の発明がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0013】
しかし、上記のいずれの発明において水素ガスを発生させる有用な化合物として特定された成分や誘導体は同定されておらず、また、その働きについても、確認されていない。
【0014】
ここでは、医薬品、食品、化粧料などの産業に利用できる水素ガスを発生させる化合物について記述する。
【特許文献1】特開2007−217351
【特許文献2】特開2006−176483
【特許文献3】特開2006−21130
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の水素ガスを発生させる方法としては、サンゴカルシウムを利用した方法があるが、サンゴの乱獲による自然破壊につながることから、産業としての利用は制限されている。
【0016】
また、化学合成された水素ガスの発生系は副作用が危惧され、安全性の面から産業上、特に、食品や化粧料への利用には制限がある。
【0017】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、副作用が弱く、優れた水素ガスの発生作用を有するサージ果実とホソバワダン粉末を乳酸菌により発酵させる工程からなる化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、サージ果実、ホソバワダン粉末を乳酸菌により発酵させる工程からなる水素ガスを発生させる下記の式(1)で示される化合物の製造方法に関するものである。
【0019】
【化1】

【0020】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
【0021】
請求項1に記載のサージ果実、ホソバワダン粉末を乳酸菌により発酵させる工程からなる水素ガスを発生させる化合物の製造方法によれば、水素ガスを発生させる化合物を効率良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0023】
サージ果実、ホソバワダン粉末を乳酸菌により発酵させる工程からなる水素ガスを発生させる下記の式(1)で示される化合物の製造方法について説明する。
【0024】
【化2】

【0025】
そもそも、ここでいう水素をガス発生させる化合物とは上記の式(1)で示されるように、レスベラトロール1分子、2分子の没食子酸、1分子のマグネシウムからなる。
【0026】
この水素ガスを発生させる化合物では、レスベラトロールの2個の水酸基を有するフェノールの水酸基に1分子の没食子酸のカルボキシル基がエステル結合している。
【0027】
このレスベラトロールの対にあるフェノール基の水酸基に1分子の没食子酸のカルボキシル基がエステル結合している。
【0028】
2分子の没食子酸は、蟹のハサミのように、対になったフェノール性水酸基を有しており、これらの水酸基は水溶液中では、陰イオンとして存在している。
【0029】
この対の位置にある没食子酸のフェノール性水酸基のうち、最も近位にある没食子酸のフェノール性水酸基が1分子のマグネシウムと結合する。この結合はイオン結合であり、胃酸などの酸性条件下では、マグネシウムはマグネシウムイオンとして遊離する。
【0030】
遊離したマグネシウムイオンは別の分子の没食子酸のフェノール性水酸基2分子と反応する際に、水素ガスを発生させる。その後、マグネシウムイオンは遊離して別の本化合物のフェノール性水酸基2分子と反応し、水素ガスを発生させる。
【0031】
上記のようにマグネシウムイオンが次々と別分子の水酸基と連鎖反応することにより、水素ガスを持続的に発生することができる。ただし、空気中の酸素によって、マグネシウムが酸化されると酸化マグネシウムが形成され、水素ガスの発生は停止する。
【0032】
サージの実の粉砕物に大豆の粉砕物と乳酸菌を添加し、発酵した溶液をアルカリ還元処理する工程からなる前記の水素を発生させる化合物の製造方法では、上記の化合物を製造する方法である。
【0033】
原料となるサージとは、サージから得られる果実である。サージとは、学名Hippophae rhamnoidesであり、中国名は沙棘、日本での別呼びはサジーである。また、英名はSea Buckthornである。
【0034】
サージは日本をはじめとしたユーラシア大陸中央部から中国、ヨーロッパの広範囲地域に生育し、その木は樹高2m〜3mであり、枝葉は細く銀葉で枝垂れ柳に類似している。雌木と雄木があり、栽培では混植が必要となる。野生種はトゲが多く鋭いが、黄色からオレンジ色の実を着けるが、赤味の多い品種もある。ここで製造に用いるサージはいずれの産地でも良い。
【0035】
サージの実は、採取された後に、水洗されることは雑菌を除外できる点から好ましい。水洗後、乾燥後、粉砕されることは、以降の工程を行う点から好ましい。
【0036】
乾燥機として西村鐵工所製のCDドライヤー、株式会社大川原製作所製のバイブロンやロートスルー、株式会社奈良機械製作所製の旋回気流乾燥機、トルネッシュドライヤー、流動層乾燥などが用いられる。
【0037】
粉砕機として株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20などが用いられる。
【0038】
ホソバワダン粉末とは学名がCrepidiastrum lonceolatumであり、沖縄ではンジャナまたはニガナと呼ばれる植物の粉末である。ホソバワダンは本州の島根県・山口県の日本海側から沖縄、朝鮮南部や中国の海岸の岩場などに生育し、太い木化した根茎を有し、地表面にロゼット状の葉を広げる。
【0039】
ホソバワダンの葉は沖縄料理として日常的に利用されており、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを豊富に含んでいることから、マグネシウムの供給源として用いられる。
【0040】
用いるホソバワダンは、水道水により水洗された後、上記の乾燥機により乾燥され、上記の粉砕機により粉砕されることは製造工程が効率的に進められることから好ましい。
【0041】
原料となる乳酸菌とは、ラクトバチルスに属する微生物であり、ヨーグルト、チーズ、ぬか漬けなどの食品加工用に用いられる有用菌の一種である。このうち、植物性の乳酸菌は、ブドウ糖を利用して発酵が効率的に実施できることから好ましい。また、小林製薬製やビオフェルミン製薬製の植物性乳酸菌は品質が安定していることから好ましい。
【0042】
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は、サージの果実1重量に対し、ホソバワダン粉末は0.01〜0.09重量が好ましく、乳酸菌は0.004〜0.01重量が好ましい。さらに、ブドウ糖を発酵エネルギー源として添加することは、発酵を短期間に実施できることから、好ましい。
【0043】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0044】
また、この発酵は、34〜48℃に加温され、発酵は、24〜98時間行われる。発酵後に、以下の抽出を効率良く実施するために、水道水で希釈される。
【0045】
この発酵の工程によって、レスベラトロール、没食子酸、マグネシウムが結合し、目的とする化合物が得られる。
【0046】
前記の発酵により生成された発酵物は35〜59℃の温水で抽出され、この製造工程により、生成物を分解から守り、効率良く回収でき、かつ、次の工程を実施しやすい。
【0047】
得られた発酵物は真空乾燥や凍結乾燥などにより、濃縮することは、好ましい。
【0048】
この発酵物はアルカリ還元されることがより好ましい。アルカリ還元の工程は、アルカリ還元装置やアルカリ還元整水器により実施されることが好ましい。たとえば、ゼマイティス製のアルカリ還元水・強酸化水連続生成器「プロテックATX−501」、エヌアイシー製のアルカリ還元水製造装置「テクノスーパー502」、マルタカ製「ミネリア・CE−212」、クレッセント製「アキュラブルー」、株式会社日本鉱泉研究所製「ミネラル還元整水器などの装置が好ましい。
【0049】
前記の発酵物から、目的とする水素を発生させる化合物を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0050】
分離用担体または樹脂としては、表面がコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。適切な分離用溶媒により分離し、精製され、有機溶媒を除去して目的とする精製物を得ることは好ましい。
【0051】
分離用溶媒としてはメタノール、エタノール、クロロホルム、ヘキサン、酢酸エチル、ベンゼン、エーテルなどが用いられ、このうち、食品加工用エタノールまたは含水エタノールはその利用範囲が高いことから好ましい。
【0052】
このようにして得られる化合物は、液体または粉末として得られる。得られた水素を発生させる化合物は医薬品、食品製剤、化粧料、衛生用具、衣類や繊維、プラスチックなどに利用される。
【0053】
医薬品としては、水素ガスを利用した医薬品製剤や医薬部外品製剤に利用され、抗癌剤、抗酸化剤、還元作用剤、抗癌剤、免疫調節剤として医薬的に応用される。また、メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防や改善などに利用される。さらに、動物に用いる獣医用の医薬品やペットに用いる医薬品としても抗酸化剤、高脂血症改善剤、抗動脈硬化剤などとして利用される。
【0054】
前記の食品製剤としては、抗酸化作用を利用してエイジングを予防又は改善するサプリメント、メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防や改善を目的としたサプリメントなどに使用される。また、動物に用いる獣医用の食品や食品製剤、又はペットに用いる食品製剤としても高脂血症改善、動脈硬化抑制や予防の目的などとして利用される。
【0055】
前記の化粧料としては、抗酸化作用を利用した美白作用、シワの改善を目的として化粧料やメラニン産生抑制を目的とした化粧料、医薬部外品やマッサージオイルとして利用される。また、動物に用いる獣医用の化粧料やペットに用いる化粧料としても利用される。
【0056】
また、前記の水素を発生させる化合物を添加した繊維を利用して脂肪を除去する目的とした衣類にも利用され、特に、下着、ストッキング、肌着、水着、靴下、パジャマ、布団やシーツなどに利用される。
【0057】
また、前記の水素を発生させる化合物を添加したプラスチックを利用して抗酸化作用を目的とした容器やトイレ、バスなどに利用される。
【0058】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。まず、水素ガスを発生させる化合物の製造について具体的に説明する。
【実施例1】
【0059】
中国で栽培されたサージより果実を採取した。これを水洗後、乾燥機により乾燥し、粉砕機(クイジナート)により粉砕して、サージ果実の粉砕物1kgを得た。
【0060】
沖縄産のホソバワダンを水洗後、乾燥してミキサー(クイジナート)に供し、ホソバワダンの粉砕物1kgを得た。これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形20リットルタンク)の容器に50gを入れてさらに、水道水5kgを添加し、攪拌した。
【0061】
これに、グルコース0.3kgを添加し、さらに、粉末乳酸菌(ワカモト製薬株式会社製)5gを発酵タンクに供し、攪拌後、39〜41℃の温度範囲内で発酵させた。
【0062】
発酵過程の途中段階で3回攪拌した。発酵終了の判定には、目的とする水素ガスを発生させる化合物を指標とした。
【0063】
その方法は、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)に発酵液を供して分析し、目的とする物質の生成を確認した。また、同時に溶存水素計(日機装製、7130型)により水素量を測定した。
【0064】
その結果、発酵40時間後に、HPLCと溶存水素計により確認した結果、目的とする水素ガスを発生させる化合物が十分量生成された。この発酵時間を42時間として発酵を終了させた。この発酵液に39℃の温水2kgを添加した。
【0065】
この発酵液を珪藻土を敷いたろ過器に供し、ろ過した。得られたろ過液を日本エフディ製の凍結乾燥機に供し、目的とする水素ガスを発生させる化合物を粉末として661gを得た。これを検体1とした。なお、溶存水素計による測定の結果、この検体1は127ppbの水素を発生させた。
【0066】
以下に、水素ガスを発生させる化合物の精製物について説明する。
【実施例2】
【0067】
実施例1で得られた水素ガスを発生させる化合物100gをエタノール100mLに懸濁し、三菱化学製ダイヤイオンの900gを充填したカラムに供した。これを7%エタノール含有水1000mLで洗浄した。さらに15%エタノール含有水900mLで洗浄後、60%エタノール含有水800mLで溶出し、次いで93%エタノール含有水の分画を採取した。
【0068】
この分画を減圧乾燥機に供してエタノールと水を留去した後、日本エフディ製の凍結乾燥機により水素ガスを発生させる化合物の精製物42gを得た。これを実施例2の検体とした。なお、溶存水素計による測定の結果、この検体2は198ppbの水素を発生させた。
【0069】
以下に、水素ガスを発生させる化合物の同定試験について説明する。
(試験例1)
【0070】
上記のように得られた実施例1及び実施例2で得られたそれぞれの水素を発生させる化合物を精製エタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析し、さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製、AC−250)お呼びアミノ酸分析装置(島津製作所製)により解析した。
【0071】
その結果、実施例1及び実施例2の検体から、水素ガスを発生させる化合物としてレスベラトロール、没食子酸、マグネシウムよりなる化合物が同定された。この化合物にはレスベラトロール1分子に対して、没食子酸が2分子およびマグネシウムが1分子含有されていた。
【0072】
以下に、水素ガスを発生させる化合物の抗酸化作用の測定試験について説明する。
(試験例2)
【0073】
ここでは抗酸化作用の指標としてラジカル消去活性を測定した。すなわち、キサンチンオキシダーゼにより産生されたラジカルを1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH、アルドリッチ製)を用いて測定する方法を用いた。
【0074】
この方法は、抗酸化作用を確認する方法として確立され、豊富な試験成績が得られている。
【0075】
まず、キサンチンオキシターゼ(アルドリッチ製)を0.01Mリン酸緩衝液に溶解し、これにヒポキサンチンを添加し、37℃に加温し、ラジカルを生成させた。この溶液に、実施例1及び実施例2の試験検体溶液を添加した。
【0076】
さらに、0.1MDPPH溶液を添加して520nmの吸光度を測定した。陽性対照として、ビタミンEを用いた。
【0077】
その結果、実施例1の検体についてはアスタキサンチンの2.6倍、コエンザイムQ10の8.5倍、ビタミンEに比して223倍のラジカル消去能を呈した。また、実施例2の検体についてはアスタキサンチンの3.7倍、コエンザイムQ10の10.1倍、ビタミンEに比して455倍のラジカル消去能を呈した。
【0078】
これらの結果から、実施例1及び実施例2の水素ガスを発生させる化合物は優れた抗酸化作用を呈するものと結論された。
【実施例3】
【0079】
以下に、水素ガスを発生させる化合物からなる化粧料について説明する。
【0080】
前記の実施例1で得られた水素ガスを発生させる化合物100gに、金剛薬品株式会社製のブドウ果汁エキス7gを添加し、30℃で8時間混合させて組成物を得た。
【0081】
この組成物90gに、グルコン酸ナトリウム0.1g、モノステアリン酸ポリエチレングリコール0.8gを添加し、混合後、23℃で、6時間加温した。
【0082】
冷却後、親油型モノステアリン酸グリセリン1.1g、馬油エステル1g及びオレイン酸2gを加熱し、溶解した。さらに、プロピレングリコール2g、α−トコフェロール0.1g及び精製水63gを添加した。これらを溶解した後、冷却して乳液を得た。これを実施例3の検体とした。
【0083】
以下に、化粧料の紫外線による日焼け改善作用の試験について説明する。
(試験例3)
【0084】
実施例3で得られた乳液について32〜68才の女性20例を対象に、紫外線による日焼けとシワに対する改善試験を行なった。
【0085】
すなわち、20例を2群に分け、前記の実施例3の乳液を1日当たり1gずつ、14日間、顔面部に塗布させた。同時に、基材のみを含有する乳液を使用する群を設定した。
【0086】
前記の女性に、日焼け用紫外線照射装置(エムロック製、ネオタン888)により毎日1時間、紫外線を浴びさせた。使用前及び使用14日後に、顔面の肌温度、皮表角層水分量測定装置(IBS社製、SKICON200)を用いて角質水分量、弾力計(クトメーター)を用いて肌弾性及び単位面積当たりのシワの長さを計測した。
【0087】
その結果、基材のみの乳液使用に比して実施例4の乳液では、平均値として0.39℃の肌温度の低下が認められた。また、皮表角層水分量は、基材のみの乳液使用に比して実施例3の乳液の使用例では、151%に増加した。さらに、弾力計による弾力は、基材のみの乳液に比して実施例3の乳液の使用例では、139%に増加した。
【0088】
シワの長さは、基材のみの乳液の使用例に比して実施例3の使用例では、79%となり、明らかに、シワの減少が認められ、優れたアンチエイジング作用及びシワ改善効果が確認された。
【0089】
一方、使用感においても特に、違和感や不都合な点は認められなかった。この結果、実施例3で得られた乳液には肌温度の低下作用、肌水分量の保持作用及びシワの改善作用が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明である水素ガスを発生させる化合物は、水素ガスによる抗酸化作用を示すことから、全身及び内臓の酸化を防止し、副作用の弱い、優れた働きを示す。紫外線や化学物質による酸化や癌に苦しむ患者、生活習慣病の患者又はその予備軍のQOLを改善する。また、医療分野の産業の育成にも寄与するものである。
【0091】
また、本発明である水素ガスを発生させる化合物からなる食品製剤は、メタボリックシンドロームの原因である内臓脂肪や皮下脂肪の酸化を改善又は予防し、国民生活の質的向上に寄与するものである。
【0092】
さらに、水素ガスを発生させる化合物からなる化粧料は、皮膚の酸化に対して美白作用及びシワ改善作用を示し、女性を含めた日本国民のQOLを向上させるものである。
【0093】
加えて、ここで示した水素ガスを発生させる化合物の製造方法は、医療、食品、化粧料領域の産業に寄与するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サージ果実、ホソバワダン粉末を乳酸菌により発酵させる工程からなる水素ガスを発生させる下記の式(1)で示される化合物の製造方法。
【化1】


【公開番号】特開2010−148415(P2010−148415A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329449(P2008−329449)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(504447198)
【Fターム(参考)】