説明

水素ステーション

【課題】 経済性および技術的安定性を確保しつつ、定置形燃料電池および燃料電池自動車のいずれの水素仕様にも対応して、いずれへの水素供給をも可能とする水素ステーションを提供する。
【解決手段】 本発明に係る水素ステーション1は、改質原料Aから定置形燃料電池仕様の水素Bを製造する水素製造装置2と、この水素Bを貯蔵する水素貯蔵タンク3と、この水素貯蔵タンク3から、家庭およびオフィスの定置形燃料電池と燃料電池自動車とのそれぞれに水素を供給する水素供給ライン4,5とを備えてなり、燃料電池自動車への水素供給ライン5の途中にCO吸着剤を充填したCO除去器と必要な場合COおよびHO吸着剤を充填した吸着器とで構成される不純物ガス除去器6を備え、燃料電池自動車仕様の超高純度水素に精製することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用水素を供給する水素ステーションに関し、詳しくは、定置形燃料電池および燃料電池自動車のいずれへの水素供給をも可能とする水素ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷が小さいクリーンな発電技術として期待される燃料電池は、近年、固体高分子型燃料電池(PEFC)の実用化にむけた開発が加速され、定置形燃料電池(家庭用/業務用コージェネレーション)および燃料電池用自動車については、実証段階に進んできている。
【0003】
PEFCは、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型に比較して、低作動温度(約80℃)、高出力密度という特徴があり、電池システムがコンパクトになる期待が高い。しかし、電極に使用する白金触媒が一酸化炭素の被毒を受けるため、その実用化に際しては、燃料水素中の微量一酸化炭素を少なくとも10ppm以下まで除去する必要があるとされている。
【0004】
燃料電池用水素は、将来的には太陽光を利用した水の電気分解で製造することが環境負荷から考えて理想的とされるものの、当面は化石燃料の改質によって製造された水素を燃料とし、水素供給インフラの整備とともに燃料電池が普及していくとの見通しが主流になっている。改質の候補原料となる化石燃料としては、天然ガス、都市ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油、メタノール、DME、GTLなどが検討されているが、いずれから水素を製造しても、一酸化炭素(CO)の副生は避けられない。たとえば天然ガスを原料にする場合、一般的には、水蒸気改質反応(700℃程度)で、水素(H)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)の混合ガスを製造し、さらに、一酸化炭素(CO)と水蒸気(HO)を水素(H)と二酸化炭素(CO)に変える変成反応(300℃程度)で一酸化炭素(CO)を極力低減させる方法がとられるが、それでもなお1000ppm〜1容積%(以下、単に「%」と表示する。)程度のCOが含まれている。したがって、PEFCの燃料として使用するためには、さらにCOを10ppm以下程度まで除去するプロセスの併設が不可欠であり、このような仕様に見合うCO除去プロセスとして圧力スイング吸着法(PSA法)、水素選択透過膜分離法、一酸化炭素選択酸化法が提案されている。また、本発明者らは、これらの方法に匹敵するCOを選択的に吸着する吸着剤を用いた一酸化炭素吸着除去法に関する発明を完成し、先に特許出願(特願2004−334932、特願2004−352309)を行った。
【0005】
これらの発明は、水素インフラ整備にも十分に活用できるものと考えられる。例えば、「地域のコミュニティが自立化し、自ら水素ステーションを保有して、コミュニティ内の消費電力相当分を燃料電池で賄うため、水素を製造するとともに、余剰水素を燃料電池自動車用の燃料として外販する」というような仕組みの実現とそれを促進するための政策による誘導が図られたとする。インフラ整備の初期においては、行政主導の実施が不可欠であるものの、その経済性が検証されれば、水素ステーションの普及にむけた機運に拍車がかかるものと思われる(例えば、非特許文献1参照)。上記本発明者らの出願に係る発明は、コミュニティを自立化させる際に重要となるコスト低減を技術面でサポートする有望な発明である。さらに本発明者らは、コミュニティ普及のための有望技術として、安全で安心なコミュニティを確立するための概念と技術に係る発明を完成し、すでに特許出願(特願2004−067697)を行った。
【0006】
しかし、コミュニティが保有する水素ステーションにもいろいろな考え方がある。例えば、定置形燃料電池と燃料電池自動車それぞれに求められる燃料源としての水素仕様は大きく異なっており、水素ステーションの水素に求められる仕様については明確ではない。
【0007】
定置形燃料電池は通常、水素製造装置を併設しているため、必要水素量より過剰の水素を燃料電池セルの燃料極に導入しつつ、余剰水素を燃料極から排出される未反応ガス(水素やその他不純物ガス)を回収し、水素製造用(水蒸気改質)の熱源として活用することが考えられている。
【0008】
いっぽう、燃料電池自動車は、軽量化の観点等から水素製造装置を保有することは想定されておらず、また燃料電池自動車に給給する水素は極力有効利用を図りたいことから、燃料電池セルから未反応水素が排出されることは想定されておらず、すべて電力に変換して消費してしまえるようできるだけ高い純度の水素が望まれている。
【0009】
したがって、コミュニティが保有する水素ステーションに求められる水素ガスの仕様としては、定置形燃料電池には、それほどの純度が要求される訳ではないが、燃料電池自動車には相当高い純度が求められることとなる。
【非特許文献1】吉田 隆(発行),水素利用技術集成 製造・貯蔵・エネルギー利用,初版,株式会社エヌ・ティー・エス,2003年11月1日,p.543−578
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明の目的は、経済性および技術的安定性を確保しつつ、定置形燃料電池および燃料電池自動車のいずれの水素仕様にも対応して、いずれへの水素供給をも可能とする水素ステーションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、以下のような検討を行った。
【0012】
定置形燃料電池に求められる水素仕様は、H濃度70%以上、CO濃度10ppm以下が一般的に望まれている。H濃度は燃料電池の発電効率を高めるためには高い方が望ましいが、電極に供給されるH分圧が常時一定以上であれば致命的な発電低下が起こる訳ではない。CO濃度は、燃料電池のセル電極の被毒成分として極力除去すべきものであるが、昨今の技術開発により10ppm程度の混入であっても致命的な性能低下に結びつく訳ではないとされている。
【0013】
したがって、コミュニティ内の発電燃料用に水素ステーションで貯蔵される水素仕様としては、少なくとも定置形燃料電池用の水素の仕様を満たす程度の仕様に定めることが無理のない設計であると考えられる。すなわち、水素製造、精製の各工程を経てH濃度が70%以上に高められ、CO濃度が10ppm以下に低減されたものがコミュニティの有する水素ステーションで貯蔵される水素の仕様となる。実際には、CO濃度を10ppm以下に抑えるような精製工程を経た水素は、純度が90%以上に到達しているのが普通である。
【0014】
このようにして貯蔵された水素は、コミュニティ内の個々の家庭あるいはオフィスの燃料電池(定置形燃料電池)にパイプラインを介して供給される。
しかしながら、上記程度の純度の水素は、燃料電池自動車用途に対しては安心して用いることができない。自動車に搭載された燃料電池は、水素を余らせない、すなわち水素を極力使い切るような方式となっており、COが存在すれば、たとえ10ppmといえども電極の白金触媒に蓄積されてその耐久性に大きく影響を与える。したがって、燃料電池自動車用水素中のCO濃度は可及的に低くすることが要請されており、0.2ppm以下まで低減することが必要とされている。
【0015】
そこで本発明者らは、さらに検討を進めた結果、水素貯蔵タンクから燃料電池自動車へ水素を供給する際にはCO除去器によりCO濃度を例えば0.2ppm以下へとさらに低減し、必要な場合には吸着器によりCO、HOなどその他の不純物ガスも除去して高純度化してから供給するようにすれば、上記本発明の解決課題である経済性および技術的安定性を確保しつつ水素仕様の問題を解決しうることに想到し、以下の発明を完成するに至った。
【0016】
請求項1に記載の発明は、定置形燃料電池および燃料電池自動車のいずれへの水素供給をも可能とする水素ステーションであって、定置形燃料電池に適した純度の水素(以下、「定置形燃料電池用水素」という。)を貯蔵する水素貯蔵タンクと、この水素貯蔵タンクから前記定置形燃料電池用水素を定置形燃料電池および燃料電池自動車へ別個に供給する少なくとも2系統の水素供給ラインと、を備え、前記燃料電池自動車への水素供給ラインには、燃料電池自動車に適した純度の水素(以下、「燃料電池自動車用水素」という。)となるように、前記貯蔵された水素からCOを除去するCO除去器を備えたことを特徴とする水素ステーションである。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記燃料電池自動車への水素供給ラインに、COおよびHOを除去する吸着器をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の水素ステーションである。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記定置形燃料電池用水素のCO濃度を10ppm以下とし、前記燃料電池自動車用水素のCO濃度を0.2ppm以下、水素純度を99.999容量%以上とする請求項1または2に記載の水素ステーションである。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記CO除去器がCO吸着剤を充填してなるものであって、このCO吸着剤が、シリカ、アルミナ、活性炭、グラファイトおよびポリスチレン系樹脂よりなる群から選択される1種以上の担体に、ハロゲン化銅(I)および/もしくはハロゲン化銅(II)を担持させた材料、またはこの材料を還元処理したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素ステーションである。
【0020】
請求項5に記載の発明は、燃料電池自動車への前記燃料電池自動車用水素の供給時に前記定置形燃料電池用水素から除去したCOが吸着して吸着能力が低下した前記CO吸着剤を再生するために、COを実質的に含まないガスを再生ガスとして前記CO除去器に供給する再生ガス供給ラインを備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素ステーションである。
【0021】
請求項6に記載の発明は、改質用原料を改質して前記定置形燃料電池用水素を製造する水素製造装置を備えた請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素ステーションである。
【0022】
請求項7に記載の発明は、前記再生ガスが、前記改質用原料または前記燃料電池自動車用水素である請求項1〜6のいずれか1項に記載の水素ステーションである。
【0023】
請求項8に記載の発明は、前記CO吸着剤を再生する際に前記CO除去器から排出されたオフガスを、前記水素製造装置の加熱用燃料として利用する請求項1〜7のいずれか1項に記載の水素ステーションである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、定置形燃料電池に適した純度の水素を貯蔵し、定置形燃料電池へはそのままの純度で水素を供給するとともに、燃料電池自動車へは、CO除去器でさらに水素の純度を高めてから供給することができる。したがって、燃料電池自動車に水素を供給する場合に限って必要量だけ高純度化することで水素製造コストを大幅に低減できるので、経済性および技術的安定性を確保しつつ、定置形燃料電池および燃料電池自動車のいずれの水素仕様にも対応して、いずれへの水素供給をも可能とする水素ステーションが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔実施形態〕
実施形態の一例を図1の概略フロー図に基づいて詳細に説明する。本実施形態は水素製造装置を水素ステーション内に保有する例を示すものである。
【0026】
すなわち、本実施形態に係る水素ステーション1は、同図に示すように、改質原料から定置形燃料電池用水素を製造する水素製造装置2と、この水素製造装置2で製造された定置形燃料電池用水素を貯蔵する水素貯蔵タンク3と、この水素貯蔵タンク3から、住居(家庭)およびオフィスの燃料電池(定置形燃料電池)に水素を供給する定置形燃料電池用水素供給ライン4と、燃料電池自動車に水素を供給する燃料電池自動車用水素供給ライン5と、この燃料電池自動車用水素供給ライン5の途中に設けられた不純物ガス除去器6とで構成されている。
【0027】
水素製造装置2は、タンクローリで天然ガス等の改質用原料を定期的に受入れいったん貯蔵する原料ホルダ21と、この改質用原料を改質・変成して水素リッチな改質ガスを生成する改質器22と、この改質ガスを精製して定置形燃料電池に適した仕様の水素(定置形燃料電池用水素)を得る精製機23と、この定置形燃料電池用水素を水素貯蔵タンク3に貯蔵するために圧縮・昇圧する圧縮機24とで構成されている。
【0028】
以下、水素ステーション1に改質原料を受け入れて水素を製造し、定置形燃料電池および燃料電池自動車へ水素を供給するまでの工程について順を追って説明する。
【0029】
まず、タンクローリで定期的に補充して原料ホルダ21に天然ガス等の改質用原料Aを貯蔵しておく。そして、この原料ホルダ21から改質用原料Aを改質器22に供給し、例えば水蒸気で改質してHおよびCOを主成分とするガスとした後、このガスにさらに水蒸気を添加し変成してHを主成分とし、CO含有量を1000ppm〜1%程度に低減した水素リッチな改質ガスBを製造する。さらに、この改質ガスBを例えば通常用いられる水素PSA装置、選択酸化触媒塔などの精製機23を流通させてCO,CO、CH、HOなどの不純物ガスを粗く吸着除去しCO濃度10ppm以下の定置形燃料電池用水素Cを得る。精製機2に水素PSA装置を用いた場合は、通常CO以外の成分が除去された99.999%以上の高純度水素となっているが、選択酸化触媒塔を用いた場合は、COおよびHOを依然%オーダーで含んでいる。そして、この定置形燃料電池用水素Cを圧縮機24にて、現段階における燃料電池自動車の水素容器の充填圧力である35MPa(将来的には70MPa)以上に圧縮・昇圧して水素貯蔵タンク3に貯蔵する。定置形燃料電池用水素CにHOが含まれている場合は、圧縮機24で昇圧された際に凝縮水としてHOを除去でき、ドレインとして排出される。
【0030】
そして、住居(家庭)およびオフィスの定置形燃料電池に水素を供給する場合は、水素貯蔵タンク3から直接、定置形燃料電池用水素供給ライン4を介して各供給先に供給する。
【0031】
一方、燃料電池自動車に超高純度水素(燃料電池自動車用水素)Dを供給する場合は、燃料電池自動車用水素供給ライン5の途中に設けた不純物ガス除去器6で精製する。不純物ガス除去器6は、COを除去するCO除去器を必須の構成要素とし、必要な場合にはCOおよびHOを除去する吸着器を追加の構成要素として構成されている。水素貯蔵タンク3の水素中の不純物ガスがすでにCO以外除去されている場合は、COおよびHOを除去する吸着器は不要であり、CO除去器でCOを例えば0.2ppm以下まで除去してから供給する。CO除去器には、COを選択的に吸着するCO吸着剤を充填し、CO吸着剤としては、COに対する吸着選択性に優れ、かつ吸着容量が大きい、シリカ、アルミナ、活性炭、グラファイトおよびポリスチレン系樹脂よりなる群から選択される1種以上の担体に、ハロゲン化銅(I)および/もしくはハロゲン化銅(II)を担持させた材料、またはこの材料を還元処理したものを用いるのが特に推奨される。さらに、CO吸着剤の吸着容量は吸着対象ガスであるCOの分圧にほぼ比例して増加するので、CO除去器は水素貯蔵タンク3から、燃料電池自動車の燃料タンクに水素を供給するためのディスペンサ(図示せず)までの間の高圧部に設置するのが好ましい。CO除去器は、上記CO吸着特性に優れたCO吸着剤を高圧下で使用することでCO吸着剤の充填量が大幅に節減でき小型化できるので、CO吸着剤の交換作業等の便宜を考慮して例えば上記ディスペンサに付設ないし内蔵するとよい。水素貯蔵タンク3の水素中の不純物ガスとしてCO以外にCOおよびHOを含んでいる場合は、それらの除去を目的とした吸着器と、CO除去器とを直列に接続した不純物ガス除去器6の構成とする。
【0032】
燃料電池自動車に供給する超高純度水素(燃料自動車用水素)Dの純度を確保するため、定期的にCO吸着剤ならびに必要な場合COおよびHO吸着剤(以下、「CO吸着剤等」といい、CO吸着剤等に吸着したガスを「CO等」という。)を再生してその吸着性能を維持しておく必要がある。CO吸着剤等の再生は、吸着サイトに吸着したCO等を脱離洗浄する必要があるため、不純物ガス除去器6に再生ガス供給ライン(図示せず)を設けておき、再生ガスとしてCOを実質的に含まないガスをこの再生ガス供給ラインを介して不純物ガス除去器6に流通させつつ行う。また、CO等の脱離反応は温度が高いほど促進されるため、CO吸着剤等は例えばヒータで40〜150℃に加熱した状態で再生を行うことが望ましい。上記再生ガスとして用いるCOを実質的に含まないガスとしては、改質用原料Aまたは燃料電池自動車用水素Dの一部を用いるとよい。CO吸着剤等を再生すべき時期は、不純物ガス除去器6に充填するCO吸着剤等の量や燃料電池自動車への水素供給量(すなわち、CO吸着剤等通過ガス量)などの条件によって変化するが、燃料電池自動車へ水素を供給中に不純物ガス除去器6からCOが漏れ出して水素純度が低下してしまう危険を回避するため、例えば燃料電池自動車への水素供給が終了するたびごとに必ず再生するようにするのが望ましい。
【0033】
再生ガスとして改質用原料Aまたは燃料電池自動車用水素Dを用いる場合、CO吸着剤を再生した後の、不純物ガス除去器6を構成するCO除去器から排出されるオフガスは、改質用原料Aまたは燃料電池自動車用水素Dに、CO吸着剤から脱着されたCOが加わったものであるので、このオフガスを回収して水素製造装置1(本実施形態では改質器22)の加熱用燃料として有効利用するとよい。
(変形例)
上記実施形態では、水素ステーション内に水素製造装置を保有してオンサイトで定置形燃料電池用水素を製造する例を示したが、これに代えて、専用の水素製造工場で一括して製造(オフサイト製造)し、これを水素貯蔵タンク以降の装置のみを保有する水素ステーションに配給し、水素ステーションでは超高純度水素(燃料電池自動車用水素)への精製のみを行うようにしてもよい。
【0034】
あるいは、水素製造工場では改質ガスまで製造し、これを精製機以降の装置のみを保有する水素ステーションに配給し、水素ステーションでは定置形燃料電池用水素および超高純度水素(燃料電池自動車用水素)への精製のみを行うようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、水素供給ラインは定置形燃料電池および燃料電池自動車へそれぞれ1系統ずつの合計2系統の場合を例示したが、複数の異なる水素仕様の定置形燃料電池に水素を供給するような場合は、異なる水素仕様ごとに別個の水素供給ラインを設け、他の定置形燃料電池よりも高い純度の水素仕様の水素供給ラインに精製機を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、改質用原料として天然ガスを例示したが、都市ガス、LPG、ナフサ、ガソリン、灯油、メタノール、DME、GTLなどを用いてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、水素リッチな改質ガスの製造を水蒸気改質+変成反応により行う例を示したが、水蒸気改質に代えて部分酸化を用いてもよく、さらには変成反応に代えてセラミックフィルタ等の粗製分離膜を流通させてH濃度を高める手段を用いてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、精製機として水素PSA装置と選択酸化触媒塔を例示したが、水素選択透過膜分離装置を用いてもよい。
【実施例1】
【0039】
まず、本発明の技術的な適用性を確認するため、定置形燃料電池仕様の高純度水素からCO吸着剤を充填したCO除去器にてCOを除去して燃料電池自動車仕様の超高純度水素を得ることを想定し、超高純度水素を得るのに必要なCO除去器のSV値を計算により推定した。
(計算の前提条件)
(1)CO吸着剤としては塩化銅(I)担持アルミナを対象とし、実験により求めた吸着性能の値(図2参照)を用いる。
【0040】
(2)燃料電池自動車への水素補給量は、その走行可能距離等を考慮して1回あたりせいぜい50〜60Nm程度とする。
【0041】
(3)燃料電池自動車に搭載する水素容器への充填圧力は現段階では35MPa(将来的には70MPa)とされているので、上記水素容器への押し込み圧を考慮してCO除去器を通過する水素の実容積は150〜160リットル(将来的には70〜80リットル)程度とする。
【0042】
(4)定置形燃料電池仕様の水素のCO濃度を3500〜7000ppm(0.35〜0.7%)程度とし、これからCOをほぼ完全に(0.2ppm以下に)除去して燃料電池自動車仕様の超高純度水素を得る。
【0043】
(5) 燃料電池自動車への水素補給時間を30分、CO除去器への吸着剤充填量を5リットルとする。
(計算結果)
CO除去器のSV値は500h−1程度で十分であり、技術的に問題なく適用できる範囲である。
【実施例2】
【0044】
つぎに、上記実施形態で説明した図1の構成からなる水素ステーションを用いた、コミュニティによる水素外販事業の済性の評価を行った。なお、CO吸着剤は上記実施例1と同じものとした。
(計算の前提条件)
(1) 水素製造コスト :40円/Nm
(2) 住居またはオフィスの消費電力
・ 1戸あたりの定格電力 :1kW
・ 1戸あたりの平均消費電力量 :20kWh/日
(3) 燃料電池自動車の燃費
・燃料補給ごとの走行距離 :500km
・ 1回あたりの燃料補給量 :5kg(56Nm
(4) 販売価格
・電力料金 :20円/kWh
・燃料自動車用水素(水素外販) :90円/Nm
(5) 販売量
・住居およびオフィスの戸数 :200戸
・ 燃料自動車の台数 :100台/日
(6) 設備導入コスト :3億円
(計算結果)
下記の表1に示すように、設備導入コスト3億円に対し、年間約0.9億円の利益が得られることから、初期投資を4年で回収できることとなり、本発明に係る水素ステーションを用いたコミュニティの水素外販事業はフィージブルであるとの結果が得られた。
【0045】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態に係る水素ステーションの概略を示すフロー図である。
【図2】CO吸着剤の吸着性能を示すグラフ図であり、(a)はCO破過挙動を、(b)はCO分圧とCO飽和吸着量との関係をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0047】
1…水素ステーション
2…水素製造装置
3…水素貯蔵タンク
4…定置形燃料電池用水素供給ライン
5…燃料電池自動車用水素供給ライン
6…不純物ガス除去器
21…原料ホルダ
22…改質器
23…精製機
24…圧縮機
A…改質用原料
B…改質ガス
C…定置形燃料電池用水素
D…超高純度水素(燃料電池自動車用水素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定置形燃料電池および燃料電池自動車のいずれへの水素供給をも可能とする水素ステーションであって、
定置形燃料電池に適した純度の水素(以下、「定置形燃料電池用水素」という。)を貯蔵する水素貯蔵タンクと、この水素貯蔵タンクから前記定置形燃料電池用水素を定置形燃料電池および燃料電池自動車へ別個に供給する少なくとも2系統の水素供給ラインと、を備え、
前記燃料電池自動車への水素供給ラインには、燃料電池自動車に適した純度の水素(以下、「燃料電池自動車用水素」という。)となるように、前記貯蔵された水素からCOを除去するCO除去器を備えたことを特徴とする水素ステーション。
【請求項2】
前記燃料電池自動車への水素供給ラインに、COおよびHOを除去する吸着器をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の水素ステーション。
【請求項3】
前記定置形燃料電池用水素のCO濃度を10ppm以下とし、前記燃料電池自動車用水素のCO濃度を0.2ppm以下、水素純度を99.999容量%以上とする請求項1または2に記載の水素ステーション。
【請求項4】
前記CO除去器がCO吸着剤を充填してなるものであって、このCO吸着剤が、シリカ、アルミナ、活性炭、グラファイトおよびポリスチレン系樹脂よりなる群から選択される1種以上の担体に、ハロゲン化銅(I)および/もしくはハロゲン化銅(II)を担持させた材料、またはこの材料を還元処理したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素ステーション。
【請求項5】
燃料電池自動車への前記燃料電池自動車用水素の供給時に前記定置形燃料電池用水素から除去したCOが吸着して吸着能力が低下した前記CO吸着剤を再生するために、COを実質的に含まないガスを再生ガスとして前記CO除去器に供給する再生ガス供給ラインを備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素ステーション。
【請求項6】
改質用原料を改質して前記定置形燃料電池用水素を製造する水素製造装置を備えた請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素ステーション。
【請求項7】
前記再生ガスが、前記改質用原料または前記燃料電池自動車用水素である請求項1〜6のいずれか1項に記載の水素ステーション。
【請求項8】
前記CO吸着剤を再生する際に前記CO除去器から排出されたオフガスを、前記水素製造装置の加熱用燃料として利用する請求項1〜7のいずれか1項に記載の水素ステーション。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−16975(P2007−16975A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201972(P2005−201972)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】