説明

水素ハイドレート生成方法及び水素貯蔵システム

【課題】従来よりも短時間で水素ハイドレートを生成する。
【解決手段】水素ハイドレートの相平衡圧力・温度を低圧・高温側にシフトさせるハイドレート生成補助剤を利用して水素ハイドレートを生成する方法であって、ハイドレート生成補助剤含有水にポアサイズがナノサイズからサブミクロンサイズの多孔質フィルタを介して水素ガスを供給する水素ガス供給工程を含み、水素ガス供給工程を、水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件下にて実施するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ハイドレート生成方法及び水素貯蔵システムに関する。さらに詳述すると、本発明は、水素ハイドレートを効率よく生成するのに好適な水素ハイドレートの生成方法、並びに水素ガスを水素ハイドレートに効率よく変換して貯蔵するのに好適な水素貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、二次エネルギーとして、様々なエネルギー変換との連携が可能な物質である(図4、非特許文献1を参照)。そこで、水素をより利用しやすい形態で貯蔵すべく、様々な貯蔵技術が提案されている。
【0003】
ところで、近年、水素の新たな貯蔵技術として、水素ガスを水素ハイドレートに変換して貯蔵する技術に関する研究が各種進められている。Louw等は、ハイドレートの相平衡圧力・温度条件を低圧・高温側にシフトさせるハイドレート生成補助剤として、THF(テトラヒドロフラン)等が有効であることを見出し、水素ハイドレートを5MPa、7℃といった低圧・高温条件で生成することが可能であることを報告している(例えば非特許文献2を参照)。THF等のハイドレート生成補助剤を用いない場合、水素ハイドレートの相平衡圧力・温度条件は、200MPa、280K(7℃)である(非特許文献2を参照)。したがって、ハイドレート生成補助剤を用いることで水素ハイドレートの相平衡圧力・温度条件を劇的に緩和させることが可能となる。これにより、水素ガスを水素ハイドレートに変換して貯蔵するために必要なエネルギーを大幅に低減することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】佐々木、電気化学および工業物理化学、Vol.75[3](2007)
【非特許文献2】Louw J, Florusse, et al: Stable low pressure hydrogen clusters stored in a binary clathrate hydrate, Science vol.306, pp469-471, 2004
【非特許文献3】Lee,H et. al.Tuning clathrate hydrate for hydrogen storage, Nature, vol.434, 7 April 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、THF等のハイドレート生成補助剤を利用することで、水素ガスを水素ハイドレートに変換して貯蔵するために必要なエネルギーを大幅に低減することができるとはいえ、これを水素貯蔵技術に適用する上では未だ問題が残っている。例えば、非特許文献3では、THFを利用して水素ハイドレートを生成させた際に、水素ハイドレートの生成までに常温に近い7℃付近でも最短で100分もの時間を要したことが報告されている。このように水素ハイドレートの生成に長時間を要すると、水素ガスを効率よく水素ハイドレートに変換して貯蔵することができず、実用化が極めて難しいものとなる。したがって、水素ハイドレートをより短い時間で生成することを可能とする技術の確立が望まれる。
【0006】
また、非特許文献2では、温度7℃、圧力12MPaの温度・圧力条件下にてシリカビーズの積層体にTHFを溶解させた水を入れ、この中に水素ガスを供給して、水素ガスと水との折衝面積を広げながら水素ハイドレートを生成するようにしているが、この方法では、所謂バッチ式での水素ハイドレート生成を行うことしかできず、極めて効率が悪い。水素ガスを効率よく水素ハイドレートに変換して貯蔵する上では、水素ハイドレートを連続的に生成する技術の確立が望まれる。
【0007】
さらには、水素ガスを効率よく水素ハイドレートに変換して貯蔵するのみならず、必要なときに、簡易な操作で、水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出すことのできる水素貯蔵技術の確立が、水素ガスの有効利用を図る上では望ましいと言える。
【0008】
本発明は、従来よりも短時間で水素ハイドレートを生成することを可能とする水素ハイドレート生成方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、従来よりも水素ハイドレートを短時間で水素ハイドレートを生成することを可能にすると共に水素ハイドレートを連続的に生成することを可能とする水素ハイドレート生成方法を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、短時間で連続的に水素ガスを水素ハイドレートに変換して貯蔵することができると共に、簡易な操作で、水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出すことのできる水素貯蔵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の水素ハイドレート生成方法は、水素ハイドレートの相平衡圧力・温度を低圧・高温側にシフトさせるハイドレート生成補助剤を利用して水素ハイドレートを生成する方法であって、ハイドレート生成補助剤含有水にポアサイズがナノサイズからサブミクロンサイズの多孔質フィルタを介して水素ガスを供給する水素ガス供給工程を含み、水素ガス供給工程を、水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件下にて実施するようにしている。
【0012】
したがって、多孔質フィルタを介して供給された水素ガスが、ハイドレート生成補助剤含有水の中にナノサイズからサブミクロンサイズの微細気泡として存在し、ハイドレート生成補助剤含有水と水素ガスとの接触面積が拡大する。さらには、水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件下にてハイドレート生成補助剤含有水に水素ガスが供給されることによって、圧力溶解によりハイドレート生成補助剤含有水には瞬時に水素ガスが溶け込んで水素の過飽和状態となる。これらの状況が相俟って、水素ハイドレートの生成が極めて短時間で起こり得る状況、換言すれば水素ハイドレート生成が促進される状況が形成される。
【0013】
本発明において使用することのできるハイドレート生成補助剤は、特に制限がなく、水素ハイドレートの相平衡圧力・温度を低圧・高温側にシフトさせ得る公知または新規の物質の一種または2種以上を適宜用いることができる。例示すると、THF(テトラヒドロフラン)、臭化テトラブチルアンモニウム、アセトン、プロパン、メタン、TBAB(テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド)、シクロペンタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
次に、請求項2に記載の水素ハイドレート生成方法は、請求項1に記載の水素ハイドレート生成方法において、水素ガス供給工程を、水素ハイドレートの相平衡圧力以上で且つ相平衡温度よりも高温の圧力・温度条件下にて実施し、ハイドレート生成補助剤含有水に供給された水素ガスがハイドレート生成補助剤含有水の中を浮上する浮上路全体を水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件として断熱し、浮上路の一部を水素ハイドレートの相平衡温度未満に冷却するようにしている。
【0015】
したがって、水素ガス供給工程では、ハイドレート生成補助剤含有水に水素ガスの微細気泡を発生させると共に圧力溶解による水素の過飽和状態が形成されながらも、水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温の温度条件とすることによって、水素ハイドレートの生成は起こらない。したがって、ハイドレート生成補助剤含有水に発生させた水素ガスの微細気泡は、水素の過飽和状態が形成されたハイドレート生成補助剤含有水を巻き込みながら、ハイドレート生成補助剤含有水の水面に向けて浮上する。そして、浮上路全体を水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件として断熱し、浮上路の一部を水素ハイドレートの相平衡温度未満に冷却することで、微細気泡が浮上する過程で水素ハイドレートが生成されて、水よりも密度の小さな水素ハイドレートはさらに浮上を続けて水面に到達する。ここで、水素ハイドレート生成反応は発熱反応であることから、浮上路の一部が水素ハイドレートの相平衡温度未満に冷却されても、水素ガスの微細気泡が浮上する過程で水素ハイドレートが生成されるのと同時に発熱して、最終的には水素ハイドレートの相平衡温度と等温となる。したがって、浮上路にはスラリー状の水素ハイドレートが浮上して流動性が維持され、連続的に水素ハイドレートが生成される。
【0016】
尚、本発明における「断熱」とは、真空による断熱や断熱材による断熱等によって外部からの熱の出入りが完全に遮断されている状態は勿論のこと、外部を水素ハイドレートの相平衡温度に維持して外部からの熱の出入りが見かけ上遮断されている状態も含んでいる。
【0017】
次に、請求項3に記載の水素貯蔵システムは、水素ハイドレートの相平衡圧力・温度を低圧・高温側にシフトさせるハイドレート生成補助剤を含むハイドレート生成補助剤含有水にポアサイズがナノサイズからサブミクロンサイズの多孔質フィルタを介して水素ガスを供給する水素ガス供給部を備える第一の耐圧容器と、水素ハイドレートを生成して貯蔵すると共に貯蔵された水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出す第二の耐圧容器と、密閉構造のセパレータとを有し、セパレータと第一の耐圧容器は、ハイドレート生成補助剤含有水をセパレータ内から第一の耐圧容器内に加圧しながら供給可能にポンプを介して接続され、第一の耐圧容器と第二の耐圧容器は、水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水を第一の耐圧容器内から第二の耐圧容器内に導入可能に接続され、第二の耐圧容器とセパレータは、水素ガスを含むハイドレート生成補助剤含有水を第二の耐圧容器内からセパレータ内に排出可能に圧力調整弁を介して接続され、ハイドレート生成補助剤含有水を第一の耐圧容器内から導入するための第二の耐圧容器の導入部または導入部よりも上方の一部を冷却または加熱する熱交換器が備えられ、第二の耐圧容器は断熱され、第二の耐圧容器には、貯蔵された水素ハイドレートを分解する際に第二の耐圧容器内の最上部に滞留する水素ガス及び水素ガスを含むハイドレート生成補助剤含有水から分離して第二の耐圧容器内の最上部に滞留する水素ガスを、第二の耐圧容器内から排出させて回収するための第一の水素ガス排出管と、第一の水素ガス排出管を開閉する第一のバルブとが備えられ、セパレータには、水素ガスを含むハイドレート生成補助剤含有水から分離されてセパレータの最上部に滞留する水素ガスを、セパレータ内から排出させて回収するための第二の水素ガス排出管と、第二の水素ガス排出管を開閉する第二のバルブとが備えられ、第一の耐圧容器が水素ハイドレートの相平衡温度以下の温度条件の場合には、第一の耐圧容器を水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温に加熱する加熱手段が備えられ、第二の耐圧容器とセパレータとを圧力調整弁を介して接続する接続路が水素ハイドレートの相平衡温度未満の温度条件の場合には、接続路を水素ハイドレートの相平衡温度以上に加熱する加熱手段が備えられ、水素ハイドレートを生成して貯蔵する際には、第一のバルブと第二のバルブを閉じ、第一の耐圧容器内と第二の耐圧容器内にハイドレート生成補助剤含有水を満たすと共に、セパレータ内にハイドレート生成補助剤含有水を収容して、ポンプと圧力調整弁により第一の耐圧容器内と第二の耐圧容器内を水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件に維持し、第一の耐圧容器内にて水素ガス供給部からハイドレート生成補助剤含有水に水素ガスを供給し、第二の耐圧容器の導入部から導入される水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水を、熱交換器にて水素ハイドレートの相平衡温度未満に冷却して、第二の耐圧容器内にて水素ハイドレートを連続的に生成させて第二の耐圧容器内のハイドレート生成補助剤含有水に浮かせて貯蔵し、貯蔵された水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出す際には、第一の耐圧容器内の水素ガス供給部からの水素ガスの供給を止め、熱交換器による冷却を止め、第一のバルブを開けて第二の耐圧容器内を減圧し、貯蔵されている水素ハイドレートを分解させて第一の水素ガス排出管から第二の耐圧容器内の水素ガスを回収すると共に、第二のバルブを開けて第二の水素ガス排出管からセパレータ内の水素ガスを回収するものとしている。
【0018】
したがって、水素ハイドレートを生成して貯蔵する際には、水素ガス供給部が備えられた第一の耐圧容器内が、水素ハイドレートの相平衡圧力以上で且つ相平衡温度よりも高温の圧力・温度条件となり、水素ハイドレートを生成させることなく、ハイドレート生成補助剤含有水に水素ガスの微細気泡を発生させると共に圧力溶解による水素の過飽和状態が形成される。そして、水素ガスの微細気泡を含み且つ水素の過飽和状態が形成されたハイドレート生成補助剤含有水が第二の耐圧容器内に導入されると、微細気泡が水素の過飽和状態が形成されたハイドレート生成補助剤含有水を巻き込みながら、第二の耐圧容器内に収容されたハイドレート生成補助剤含有水中を浮上する。ここで、第二の耐圧容器は、水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件とされ且つ断熱されていると共に、第二の耐圧容器の導入部または導入部よりも上方の一部が熱交換器にて水素ハイドレートの相平衡温度未満に冷却されることによって、第二の耐圧容器内を微細気泡が浮上する過程で水素ハイドレートが生成されて、水よりも密度の小さな水素ハイドレートはさらに浮上を続けて水面に到達し、これが貯蔵される。ここで、水素ハイドレート生成反応は発熱反応であることから、第二の耐圧容器の導入部または導入部よりも上方の一部が水素ハイドレートの相平衡温度未満に冷却されても、第二の耐圧容器が断熱されていることによって、水素ガスの微細気泡が浮上する過程で水素ハイドレートが生成されるのと同時に発熱して、最終的には水素ハイドレートの相平衡温度と等温となる。したがって、浮上路にはスラリー状の水素ハイドレートが浮上して流動性が維持され、連続的に水素ハイドレートが生成されて貯蔵される。
【0019】
一方、貯蔵されている水素ハイドレートを分解して水素ガスを回収する際には、第一のバルブを開けて第二の耐圧容器内を減圧することで、第二の耐圧容器内の圧力が水素ハイドレートの相平衡圧力未満の圧力となり、第二の耐圧容器内に貯蔵されている水素ハイドレートが分解されて水素ガスが生成される。この水素ガスは第一の水素ガス排出管から回収される。また、第二のバルブを開けることで、セパレータ内の水素ガスを第二の水素ガス排出管から回収することができる。
【0020】
ここで、請求項3に記載の水素貯蔵システムにおいて、請求項4に記載したように、第一の水素排出管の出口をセパレータと接続し、貯蔵された水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出す際には、第一のバルブと第二のバルブを開けて第二の耐圧容器内を減圧し、貯蔵されている水素ハイドレートを分解させて、第二の耐圧容器内の水素ガスを第一の水素ガス排出管によりセパレータ内に導くと共に、この水素ガスをセパレータ内の水素ガスと共に第二の水素ガス排出管から回収するものとすることが好ましい。
【0021】
この場合、水素ハイドレートの分解に由来する水素ガスとハイドレート生成補助剤含有水からの分離に由来する水素ガスとをセパレータから一括して回収することができる。
【0022】
また、請求項3または4に記載の水素貯蔵システムにおいて、請求項5に記載したように、貯蔵された水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出す際に、第二の耐圧容器の導入部から導入されるハイドレート生成補助剤含有水を、熱交換器にて水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温に加熱するものとすることが好ましい。
【0023】
第二の耐圧容器内を減圧することで、貯蔵されている水素ハイドレートを分解することができるが、水素ハイドレートの分解反応は吸熱反応であることから、最終的には相平衡温度に到達し、分解速度が低下してしまう。そこで、第二の耐圧容器の導入部から導入されるハイドレート生成補助剤含有水を、熱交換器にて水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温に加熱することで、分解速度を低下させることなく、水素ハイドレートを分解して、水素ガスの回収を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、従来よりも短時間で水素ハイドレートを生成することが可能となる。
【0025】
また、請求項2に記載の発明によれば、従来よりも水素ハイドレートを短時間で水素ハイドレートを生成することが可能になると共に、水素ハイドレートを連続的に生成することが可能となる。
【0026】
さらに、請求項3〜5に記載の発明によれば、短時間で連続的に水素ガスを水素ハイドレートに変換して貯蔵することができると共に、簡易な操作で、水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出すことのできる水素貯蔵システムの実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の水素貯蔵システムの実施形態の一例を示す図である。
【図2】水素ガス供給部の構成の一例を示す図である。
【図3】水素−THFハイドレートの安定領域を示す図である。
【図4】水素が二次エネルギーとして様々なエネルギー変換と連携していることを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
本発明の水素貯蔵システムの実施形態の一例を図1に示す。
【0030】
図1に示す水素貯蔵システム1は、大まかには、水素ハイドレートの相平衡圧力・温度を低圧・高温側にシフトさせるハイドレート生成補助剤を含むハイドレート生成補助剤含有水2にポアサイズがナノサイズからサブミクロンサイズの多孔質フィルタ11を介して水素ガスを供給する水素ガス供給部12を備える第一の耐圧容器10と、水素ハイドレートを生成して貯蔵すると共に貯蔵された水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出す第二の耐圧容器20と、密閉構造のセパレータ30とを有している。
【0031】
ポアサイズがナノサイズからサブミクロンサイズの多孔質フィルタ11としては、アルミナ等の多孔質セラミックスや、多孔性金属等を用いることができるが、特にシラス多孔質ガラスを用いることが好適である。シラス多孔質ガラスは、微細孔の直径が0.05μm〜250μmであることから、ナノサイズからサブミクロンサイズの微細孔に水素ガスを通過させて、ハイドレート生成補助剤含有水2にナノサイズからサブミクロンサイズの水素ガスの微細気泡を発生させることができ、ハイドレート生成補助剤含有水2と水素ガスの接触面積を拡大することができる。これにより、水素ハイドレートの生成が促進される。
【0032】
本実施形態において、水素ガス供給部12は、水力発電、太陽光発電、風力発電及び波力発電等により得られる電力や夜間電力等を利用して電気分解等により生成された水素ガスを加圧する加圧ポンプ13と、加圧水素ガスを調圧する供給水素ガス圧力調整バルブ14と、多孔質フィルタ11により構成される。加圧ポンプ13や調圧弁14によって、ハイドレート生成補助剤含有水2と水素ガスの混合比を調整することができる。
【0033】
多孔質フィルタ11は、例えば図2に示されるように、多孔質フィルタ11により形成された一端が閉塞した管状部材としてこれを第一の耐圧容器10内に収容し、他端から水素ガスを導入することで、この水素ガスが多孔質フィルタ11を通過してハイドレート生成補助剤含有水2に供給され、微細気泡となる。但し、多孔質フィルタ11の構成はこれに限定されるものではなく、例えば管状部材の全体ではなく一部のみを多孔質フィルタ11により構成するようにしてもよい。また、形状は管状には限定されず、球体や直方体等としても構わない。
【0034】
セパレータ30と第一の耐圧容器10は、ハイドレート生成補助剤含有水2をセパレータ30内から第一の耐圧容器10内に加圧しながら供給可能にポンプ40を介して接続されている。当該ポンプ40は、例えば複数(通常3個)の注射器状のピストンで構成され、ピストン運動に位相差を設けて、高圧水を連続的に排出するブランジャーポンプ等である。符号41はセパレータ30と第一の耐圧容器10を接続する第一の配管である。
【0035】
第一の耐圧容器10と第二の耐圧容器20は、水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水2を第一の耐圧容器10内から第二の耐圧容器20内に導入可能に接続されている。本実施形態では、第二の耐圧容器20を第一の耐圧容器10の上方に設置すると共に、第一の耐圧容器10の上面に設けた排出部15と第二の耐圧容器20の底面に設けた導入部25を接続して第一の耐圧容器10と第二の耐圧容器20を連通させて、ハイドレート生成補助剤含有水2(水素ガス供給部12により水素ガスが微細気泡として供給されたハイドレート生成補助剤含有水2)を第一の耐圧容器10内から第二の耐圧容器20内に導入可能としている。より詳細には、第一の耐圧容器10内にて発生した微細気泡が、第一の耐圧容器10内のハイドレート生成補助剤含有水2を巻き込みながら浮上して、第二の耐圧容器20内に導入される。また、ポンプ40によるハイドレート生成補助剤含有水2の供給によって、水素ガスが微細気泡として供給されたハイドレート生成補助剤含有水2が第二の耐圧容器20内に導入される。尚、第一の耐圧容器10と第二の耐圧容器20の接続形態は、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば第二の耐圧容器の底面ではなく、側面から第一の耐圧容器10内の水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水2を導入するようにしてもよい。
【0036】
第二の耐圧容器20とセパレータ30は、水素ガスを含むハイドレート生成補助剤含有水2を第二の耐圧容器20内からセパレータ30内に排出可能に圧力調整弁32を介して接続されている。符号31は第二の耐圧容器20とセパレータ30を接続する接続路(第二の配管)である。
【0037】
熱交換器26は、第二の耐圧容器20の導入部25の近傍に備えられている。具体的には、第二の耐圧容器20内部の底部に備えられて、導入部25を冷却または加熱するようにしている。但し、熱交換器26の設置位置は、導入部25近傍には限定されず、これよりも上方の第二の耐圧容器20の内部の側面等に設置してもよい。
【0038】
第二の耐圧容器20は断熱されている。本実施形態において、第二の耐圧容器20は断熱材にて形成され、外部からの熱の出入りが完全に遮断されるようにしているが、断熱方法はこのような形態には限定されず、例えば、真空を利用した断熱としてもよいし、第二の耐圧容器20の外部を水素ハイドレートの相平衡温度に維持して外部からの熱の出入りが見かけ上遮断されている状態としてもよい。あるいは、断熱材の使用と第二の耐圧容器20の外部を水素ハイドレートの相平衡温度に維持する方法とを併用するようにしてもよい。第二の耐圧容器20の外部を水素ハイドレートの相平衡温度に維持することで、第二の配管31と第一の水素ガス排出管51を水素ハイドレートの相平衡温度に維持できる利点もある。
【0039】
第二の耐圧容器20内の最上部には、貯蔵された水素ハイドレートを分解する際に発生する水素ガス及び水素ガスを含むハイドレート生成補助剤含有水から分離した水素ガスが滞留する。本実施形態では、これらの水素ガスをセパレータ30に導く第一の水素ガス排出管51が備えられると共に、この第一の水素ガス排出管51を開閉する第一のバルブ52が備えられている。但し、第一の水素ガス排出管51をセパレータ30に接続することなく、第一の水素ガス排出管51から第二の耐圧容器20内の水素ガスを直接回収するようにしてもよい。
【0040】
また、密閉構造のセパレータ30の最上部には、第二の耐圧容器20内から排出された水素ガスを含むハイドレート生成補助剤含有水2から分離した水素ガスが滞留する。また、第二の耐圧容器20内にて発生した水素ガスが第一の水素ガス排出管51を介して送られる。本実施形態では、これらの水素ガスをセパレータ30の外に排出する第二の水素ガス排出管61が備えられると共に、この第二の水素ガス排出管61を開閉する第二のバルブ62が備えられている。
【0041】
尚、図1では図示省略しているが、第一の耐圧容器10が水素ハイドレートの相平衡温度以下の温度条件となる場合には、第一の耐圧容器10を水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温に加熱する加熱手段が備えられている。これにより、第一の耐圧容器10内は水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温に制御され、第一の耐圧容器10内にて水素ハイドレートが生成されることがなく、水素ハイドレートの生成による多孔質フィルタ11のポア(微細孔)が閉塞するのを防ぐことができる。
【0042】
また、図1では図示省略しているが、第二の配管31が水素ハイドレートの相平衡温度未満の温度条件となる場合には、第二の配管31を水素ハイドレートの相平衡温度以上に加熱する加熱手段が備えられている。これにより、仮に第二の配管31内で水素ハイドレートの生成が起こったとしても、第二の配管31の閉塞が起こらない程度の流動性が常に確保される。
【0043】
また、本実施形態では、第二の耐圧容器20内部の下部から第二の配管31の入口より上の位置までが固体・気液分離フィルタ70で充填され、導入部25から固体・気液分離フィルタの上面に向けて、水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水2が浮上する浮上路71が備えられている。これにより、第二の耐圧容器20内で生成された水素ハイドレートが第二の配管31に侵入して第二の配管31が閉塞するのを防ぐことができる。また、水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水2の浮上(流れ)が安定すると共に、熱交換器26にて冷却または加熱された水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水2が拡散し難くなるので、冷却による水素ハイドレート生成、または加熱により水素ハイドレート分解をより行い易くできる。
【0044】
水素ハイドレートを生成して貯蔵するための操作は、以下のようにして行われる。
【0045】
まず、第一の水素ガス排出管51の第一のバルブ52を閉じて、第二の耐圧容器20の密閉性を確保すると共に、第二の水素ガス排出管61の第二のバルブ62を閉じて、セパレータ30からの水素ガスの漏れ出しを防ぐ。
【0046】
第一の耐圧容器10内と第二の耐圧容器20内にハイドレート生成補助剤含有水2を満たすと共に、セパレータ30内にハイドレート生成補助剤含有水2を収容して、ポンプ40と圧力調整弁32により第一の耐圧容器10内と第二の耐圧容器20内を水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件に維持する。尚、圧力条件は、水素ハイドレートが安定に生成し得る条件であれば上限値は特に規定されないが、圧力制御に必要なエネルギーを考慮すると、できるだけ低圧とすることが好ましい。具体的には、相平衡圧力+5MPaを上限とすることが好ましく、相平衡圧力+2MPaを上限とすることがより好ましく、圧力条件を相平衡圧力とすることが最も好ましい。
【0047】
次に、第一の耐圧容器10内にて水素ガス供給部12からハイドレート生成補助剤含有水2に水素ガスを供給する。これにより、ハイドレート生成補助剤含有水2に水素ガスの微細気泡が発生してハイドレート生成補助剤含有水2と水素ガスの接触面積が拡大すると共に、第一の耐圧容器10内が水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件に維持されていることによって、圧力溶解によりハイドレート生成補助剤含有水2に水素が瞬時に溶け込んで水素の過飽和状態が形成される。しかも、第一の耐圧容器10内が水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温の温度条件に維持されているので、第一の耐圧容器10内では水素ハイドレートが発生せず、多孔質フィルタ11の閉塞は起こらない。したがって、第一の耐圧容器10内にてハイドレート生成補助剤含有水2に水素ガスが供給されることによって、水素ハイドレートが極めて短時間に生成され得る状態のハイドレート生成補助剤含有水2が得られることになる。
【0048】
尚、第一の耐圧容器10内の温度を高め過ぎても、系全体としてのメリットは無く、しかも熱交換器26での冷却が困難になるので、相平衡温度超〜相平衡温度+3℃とすることが好ましく、相平衡温度超〜相平衡温度+2℃とすることがより好ましく、相平衡温度超〜相平衡温度+1℃とすることがさらに好ましい。
【0049】
第一の耐圧容器10内にて水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水2には、第二の耐圧容器20内に導入される。第二の耐圧容器20内では、水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水2の微細気泡が、水素の過飽和状態が形成されているハイドレート生成補助剤含有水2を巻き込みながら浮上路71を浮上する。そして、水素ガスが供給されたハイドレート生成補助剤含有水2が、第二の耐圧容器20の導入部25にて熱交換器26により水素ハイドレートの平衡温度未満の温度に冷却されることによって、浮上路71を浮上する過程で水素ハイドレートが生成される。水素ハイドレートは水よりも密度が小さいことから、水素ハイドレートは浮上路71を浮上し続けて、第二の耐圧容器20の上部に貯蔵される。また、第二の耐圧容器20は断熱されており、水素ハイドレートの生成反応は発熱反応であることから、水素ガスの微細気泡が浮上路71を浮上する過程で水素ハイドレートが生成されるのと同時に発熱して、最終的には水素ハイドレートの相平衡温度と等温となる。したがって、浮上路71にはスラリー状の水素ハイドレートが浮上して流動性が維持され、連続的に水素ハイドレートが生成されて貯蔵される。但し、熱交換器26により第二の耐圧容器20の導入部25を冷却させ過ぎると、浮上路71が閉塞する虞があるので、熱交換器26による冷却温度は、水素ハイドレートの相平衡温度未満で且つ浮上路71が閉塞することのなく浮上路71にスラリー状の水素ハイドレートが浮上し続ける温度以上とすることが好ましい。具体的には、相平衡温度−2℃とすることが好ましく、相平衡温度−3℃とすることがより好ましく、相平衡温度−4℃とすることがさらに好ましく、相平衡温度−5℃とすることがなお好ましい。
【0050】
例えば、ハイドレート生成補助剤をTHFとした場合を例に挙げて説明すると、図3に示される相平衡図(非特許文献3より引用)に示されるように、第一の耐圧容器と第二の耐圧容器を相平衡圧力である5MPaとし、熱交換器26により導入路25を相平衡温度である7℃よりも低温、好ましくは5℃、より好ましくは4℃、さらに好ましくは3℃、なお好ましくは2℃に冷却する。尚、図3において、「H」はハイドレート相、「L」は液相、「V」は気相を示しており、HLV>LVは3相が同時に存在する条件と、液相と気相の2相が同時に存在する条件の境界の温度・圧力条件(相平衡温度・圧力条件)を示している。
【0051】
本発明の水素貯蔵システムによれば、水素ガスを微細気泡とすることによるハイドレート生成補助剤含有水2と水素ガスの接触面積の拡大、さらにはハイドレート生成補助剤含有水2への水素の過飽和状態の形成によって、第二の耐圧容器20の導入部25における熱交換器26での冷却によって、水素ハイドレートが極めて短時間(1分〜数分程度)で生成され得ることになる。したがって、第二の耐圧容器20の浮上路71を浮上する水素ガスの大部分が水素ハイドレート生成に寄与することになる。水素ガスがハイドレート化すると、その体積は収縮することから、水素ガスの導入による第二の耐圧容器(さらには第一の耐圧容器)における体積増加が抑えられることになる。したがって、セパレータ30へのハイドレート生成補助剤含有水2の排出量が抑えられる。また、セパレータ3に滞留する水素ガスの量も抑えられる。したがって、セパレータ30を小型化できる。また、本実施形態では、第二の水素排出管61を水素タンク80に接続するようにしているが、セパレータ3に滞留する水素ガスの量が抑えられることによって、セパレータ内の圧力増加を緩和するための水素ガスの水素タンク80への排出を抑えることができるので、水素タンク80の容量も小さくできる。以上のことから、水素貯蔵システムのコンパクト化を図ることができる。
【0052】
次に、貯蔵されている水素ハイドレートを分解して水素ガスを回収する際の操作について説明する。
【0053】
まず、第一の水素排出管51の第一のバルブ52と第二の水素排出管61の第二のバルブ62を開いて、第二の耐圧容器内を減圧する。この操作により、第二の耐圧容器20内に貯蔵されている水素ハイドレートが分解し、第二の耐圧容器20内の最上部に滞留する水素ガスが第一の水素排出管51を通過してセパレータ30に導入される。この水素ガスが、第二の耐圧容器20から排出されたハイドレート生成補助剤含有水2から分離された水素ガスと共に第二の水素排出管から排出され、利用に供される。尚、第一の水素排出管51をセパレータ30と接続することによって、第一の水素排出管51から第二の耐圧容器20内のハイドレート生成補助剤含有水2が若干含まれた状態で水素ガスが排出された場合にも、これをセパレータ30で回収して再利用でき、ハイドレート生成補助剤含有水2の無駄な消費を確実に抑えることができる利点がある。
【0054】
但し、水素ハイドレートの分解反応は吸熱反応であることから、貯蔵されている水素ハイドレートの分解が進むと、徐々に相平衡温度に近づき、最終的には分解が殆ど起こらなくなる。そこで、貯蔵されている水素ハイドレートを分解する際には、熱交換器26により第二の耐圧容器20の導入部25を水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温に加熱し、加熱されたハイドレート生成補助剤含有水2を浮上(対流)させて水素ハイドレートの分解を促進するのが好適である。但し、急激に加熱し過ぎると、第二の耐圧容器内で急激な体積膨張が起こるので、相平衡温度+3℃に加熱することが好ましく、相平衡温度+2℃に加熱することがより好ましく、相平衡温度+1℃に加熱することがさらに好ましい。
【0055】
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では水素ハイドレートを第二の耐圧容器20から取り出すことなく、第二の耐圧容器20内で分解して水素ガスを回収するようにしていたが、第二の耐圧容器20内で水素ハイドレートを生成して貯蔵した後、必要に応じて貯蔵されている水素ハイドレートを取り出して、これを別途貯蔵したり輸送したりすることにより、水素ガスの貯蔵や輸送を簡易且つ安全に行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 水素貯蔵システム
2 ハイドレート生成補助剤含有水
10 第一の耐圧容器
11 多孔質フィルタ
12 水素ガス供給部
20 第二の耐圧容器
25 導入部
26 熱交換器
30 セパレータ
32 圧力調整弁
40 ポンプ
51 第一の水素排出管
52 第一のバルブ
61 第二の水素排出管
62 第二のバルブ
71 浮上路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ハイドレートの相平衡圧力・温度を低圧・高温側にシフトさせるハイドレート生成補助剤を利用して水素ハイドレートを生成する方法であって、
ハイドレート生成補助剤含有水にポアサイズがナノサイズからサブミクロンサイズの多孔質フィルタを介して水素ガスを供給する水素ガス供給工程を含み、
前記水素ガス供給工程を、水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件下にて実施することを特徴とする水素ハイドレート生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水素ハイドレート生成方法において、
前記水素ガス供給工程を、水素ハイドレートの相平衡圧力以上で且つ相平衡温度よりも高温の圧力・温度条件下にて実施し、
前記ハイドレート生成補助剤含有水に供給された前記水素ガスが前記ハイドレート生成補助剤含有水の中を浮上する浮上路全体を水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件として断熱し、
前記浮上路の一部を水素ハイドレートの相平衡温度未満に冷却する水素ハイドレート生成方法。
【請求項3】
水素ハイドレートの相平衡圧力・温度を低圧・高温側にシフトさせるハイドレート生成補助剤を含むハイドレート生成補助剤含有水にポアサイズがナノサイズからサブミクロンサイズの多孔質フィルタを介して水素ガスを供給する水素ガス供給部を備える第一の耐圧容器と、
水素ハイドレートを生成して貯蔵すると共に前記貯蔵された水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出す第二の耐圧容器と、
密閉構造のセパレータとを有し、
前記セパレータと前記第一の耐圧容器は、前記ハイドレート生成補助剤含有水を前記セパレータ内から前記第一の耐圧容器内に加圧しながら供給可能にポンプを介して接続され、
前記第一の耐圧容器と前記第二の耐圧容器は、前記水素ガスが供給された前記ハイドレート生成補助剤含有水を前記第一の耐圧容器内から前記第二の耐圧容器内に導入可能に接続され、
前記第二の耐圧容器と前記セパレータは、前記水素ガスを含む前記ハイドレート生成補助剤含有水を前記第二の耐圧容器内から前記セパレータ内に排出可能に圧力調整弁を介して接続され、
前記ハイドレート生成補助剤含有水を前記第一の耐圧容器内から導入するための前記第二の耐圧容器の導入部または前記導入部よりも上方の一部を冷却または加熱する熱交換器が備えられ、
前記第二の耐圧容器は断熱され、
前記第二の耐圧容器には、前記貯蔵された水素ハイドレートを分解する際に前記第二の耐圧容器内の最上部に滞留する水素ガス及び前記水素ガスを含む前記ハイドレート生成補助剤含有水から分離して前記第二の耐圧容器内の最上部に滞留する水素ガスを、前記第二の耐圧容器内から排出させて回収するための第一の水素ガス排出管と、前記第一の水素ガス排出管を開閉する第一のバルブとが備えられ、
前記セパレータには、前記水素ガスを含む前記ハイドレート生成補助剤含有水から分離されて前記セパレータの最上部に滞留する水素ガスを、前記セパレータ内から排出させて回収するための第二の水素ガス排出管と、前記第二の水素ガス排出管を開閉する第二のバルブとが備えられ、
前記第一の耐圧容器が水素ハイドレートの相平衡温度以下の温度条件の場合には、前記第一の耐圧容器を水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温に加熱する加熱手段が備えられ、
前記第二の耐圧容器と前記セパレータとを前記圧力調整弁を介して接続する接続路が水素ハイドレートの相平衡温度未満の温度条件の場合には、前記接続路を水素ハイドレートの相平衡温度以上に加熱する加熱手段が備えられ、
水素ハイドレートを生成して貯蔵する際には、
前記第一のバルブと前記第二のバルブを閉じ、
前記第一の耐圧容器内と前記第二の耐圧容器内に前記ハイドレート生成補助剤含有水を満たすと共に、前記セパレータ内に前記ハイドレート生成補助剤含有水を収容して、前記ポンプと前記圧力調整弁により前記第一の耐圧容器内と前記第二の耐圧容器内を水素ハイドレートの相平衡圧力以上の圧力条件に維持し、
前記第一の耐圧容器内にて前記水素ガス供給部から前記ハイドレート生成補助剤含有水に前記水素ガスを供給し、
前記第二の耐圧容器の前記導入部から導入される前記水素ガスが供給された前記ハイドレート生成補助剤含有水を、前記熱交換器にて水素ハイドレートの相平衡温度未満に冷却して、前記第二の耐圧容器内にて水素ハイドレートを連続的に生成させて前記第二の耐圧容器内の前記ハイドレート生成補助剤含有水に浮かせて貯蔵し、
前記貯蔵された水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出す際には、
前記第一の耐圧容器内の前記水素ガス供給部からの前記水素ガスの供給を止め、
前記熱交換器による冷却を止め、
前記第一のバルブを開けて前記第二の耐圧容器内を減圧し、前記貯蔵されている水素ハイドレートを分解させて前記第一の水素ガス排出管から前記第二の耐圧容器内の水素ガスを回収すると共に、前記第二のバルブを開けて前記第二の水素ガス排出管から前記セパレータ内の水素ガスを回収することを特徴とする水素貯蔵システム。
【請求項4】
請求項3に記載の水素貯蔵システムにおいて、
前記第一の水素排出管の出口を前記セパレータと接続し、
前記貯蔵された水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出す際には、
前記第一のバルブと前記第二のバルブを開けて前記第二の耐圧容器内を減圧し、前記貯蔵されている水素ハイドレートを分解させて、前記第二の耐圧容器内の水素ガスを前記第一の水素ガス排出管により前記セパレータ内に導くと共に、この水素ガスを前記セパレータ内の水素ガスと共に前記第二の水素ガス排出管から回収する水素貯蔵システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の水素貯蔵システムにおいて、
前記貯蔵された水素ハイドレートを分解して水素ガスを取り出す際に、
前記第二の耐圧容器の前記導入部から導入される前記ハイドレート生成補助剤含有水を、前記熱交換器にて水素ハイドレートの相平衡温度よりも高温に加熱する水素貯蔵システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−236740(P2012−236740A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106640(P2011−106640)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000173809)一般財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】