説明

水素リッチガス流中の一酸化炭素を検出する方法

水素リッチガス流中の一酸化炭素を検出する方法並びに装置を提供する。このようなガス流は、例えば、燃料電池に供給される。小型の電気化学電池を利用して、一酸化炭素が陽極のスクリーンと陽極の材料とを通って伝送されるという原則に基づき、検出を行なう。この結果、陽極で水素と反応することが避けられる。電流密度の低下を測定することにより、時間関数として覆う程度と、かくして一酸化炭素の割合とを決定することが可能である。本発明に関われば、ガス流は、陽極のみを通って供給され、陰極は、水槽と直接接触されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、水素リッチガス流中の一酸化炭素を検出する方法に関する。この方法は、電気化学センサーを通るようにガス流を供給することと、一酸化炭素が酸化されずに水素が酸化されることによって電気化学電池内に電流を発生させるように電極のセンサーに加えられている電位で、前記電気化学電池を流れる電流の密度を測定することと、この測定結果から一酸化炭素の濃度を決定することとを有している。水素リッチガス流は、センサーの陽極を通るように供給され、センサーの陰極は、水でぬらされる。
【0002】
このような方法は、当分野で一般的に公知である。例えば、US−A4820386を参照したい。
【0003】
水素を含むガス流中の一酸化炭素の測定は、燃料電池を使用するときに、この電池では一酸化炭素は望ましくない成分であるため、重要である。赤外線測定は、大型の静止した装置の場合は利用可能であるが、小さな、特に携帯型の設備の場合は複雑すぎる。
【0004】
従って、当分野では、小さな電気化学電池を使用して一酸化炭素を測定することが行なわれてきた。一酸化炭素が主として酸化され得る気体および他のガス流の場合には、陽極を通るように一酸化炭素を供給して陽極でこれを酸化することによって、一酸化炭素が検出され得る。測定される酸化流は、一酸化炭素の濃度の尺度である。このような方法により、一酸化炭素を酸化できるために、比較的高い電極電圧が加えられる。この電圧は、電極の材料とその状況とによって決まる。規定水素電極(NHE)の電位を超え600mVより高い電圧が、典型的な値として挙げられる。この例は、US−A5650054とEP1154267A2とに示されている。しかし、このような方法は、水素リッチガスが有望なエネルギー担体である燃料電池設備内など、水素が豊富な状況のときには向かない。
【0005】
水素リッチガスは、測定電池の陽極を通るように供給される。この処理の間、一酸化炭素が陽極触媒の一部を覆い、水素のための電池の発生率が低下する。
【0006】
第1の実施形態に関われば、確立されている電流密度の均衡値を測定することが可能である。しかし、この方法には時間がかかる。
【0007】
他の方法は、一酸化炭素が陽極を覆うことによって生じる電流密度の低下を測定することである。
【0008】
所定の時間ののち、陽極の電位を高くすることによって、一酸化炭素がこれから取り除かれる。そして、新しい測定サイクルが開始可能となる。
【0009】
この方法では、一酸化炭素の酸化が行なわれるのを防ぐために、センサー電極で比較的低い電位が使用される。いうまでもなく、水素の酸化は可能なままである。
【0010】
水素が豊富な状況で一酸化炭素を測定する上記の方法を利用して、測定ガスは陽極と陰極との両方を通るようにも供給され得る。正確な測定値を得るためには、ガスの圧力を正確に制御することが必須であり、また良く知られている。同様のことが、電池の温度についても当てはまる。他の重要な事項は、ガスの相対湿度である。
【0011】
この相対湿度は、膜が一定の陽子伝送能力を有さなくてはならないため、重要である。膜が陽子伝送能力を全く有していない場合は、測定結果が不正確になる。ガスの露点よりも高い測定電池の温度では、正確な測定を果たすには不十分な水分が存在するのみであることが分かっている。
【0012】
当分野の状態で、ガスは、測定電池に晒される前に予めぬらされる。このような方法は複雑であり、源と測定電池との間に付加的な緩衝部(buffer volumes)を導くことになり、その結果、センサーの反応が遅くなる。
【0013】
本発明の目的は、水素リッチガス流中の一酸化炭素を検出する方法を提供することである。
【0014】
この目的は、水素リッチガス流が陽極のみを通るように供給され、陰極は水中に位置される上述された本方法によって果たされる。
【0015】
本発明に関われば、測定されるガス流は、陽極と陰極との両方を通るのではなく、陽極のみを通るように供給される。陰極は、これに与えられた水分によって常にぬらされた状態で維持される。この水は、膜を通って拡散する。このため、おおむね、測定前に影響を生じるような測定されるガス流のぬれは不要である。上記の方法は、電気化学電池内に平衡状態が確立されるまでに電流が測定される、水素リッチガス流中の一酸化炭素の測定を伴う方法と、電流密度の変化を一酸化炭素濃度の尺度とする方法との両方に適している。
【0016】
炭素を含む燃料の再生が行なわれる、燃料電池と、更に詳細にはPEM燃料電池と組み合わせた上述の使用以外では、本発明は、水素と一酸化炭素が生成される産業用再生方法で測定電池として使用できる。
【0017】
本発明に関われば、陰極材料としてPt/Ruのような別個の一酸化炭素耐性触媒を使用する必要がない。白金自体は陽極にも使用される材料であるが、他の安価な材料も使用可能である。
【0018】
一酸化炭素の酸化を起こらせることのない上述された比較的低い電圧は、使用される電極の材料と、使用状況と、温度とによって決まる。この電圧は、典型的には600mVより低いが、NHEと比較するとこの規定水素電極よりは高い。更に詳細には、典型的な値は、350mV未満である。この値は、HSO溶液に晒される白金/炭素電極の場合に当てはまる。
【0019】
陰極への水の供給は、電気化学電池をコンテナ内に配置し、陰極が水槽の底部を形成して、水(液体)と直接接触するようにするという特に簡単な方法で行なわれる。しかし、別個のラインを利用して水を供給することもまた可能である。この場合は、2つの電極のみを有したシステムを使用することが望ましい。
【0020】
本発明はまた、水素リッチガス流中の一酸化炭素を検出する装置に関する。この装置は、陽極、プラスチック膜、および陰極を有する電気化学電池を備えていて、陽極と陰極とに接続されて陽極から一酸化炭素を取り除くように設計された制御手段と同様に、ガス用入口とガス用出口とが設けられている。ガス用入口とガス用出口とは、陽極にのみ接続されており、陰極には、水供給部が設けられている。
【0021】
乾性ガスに特に適した特定の変形例に関われば、膜/電極システムには、測定区域だけでなくぬれ区域がまた設けられている。陽極と陰極の触媒は、測定区域内に配置されている。この測定区域は、ぬれ区域の下流に位置し、主として、陰極から測定されるガスへと水分を導くように働く。この水分が実際にガスに移されるように確実にするために、有利な実施形態に関われば、測定されるガス用の通路が、陽極側の電流コレクタのような所定の構成部品によって規定される。
【0022】
本発明は、図面に示された実施形態を参照しながら以下に詳しく説明される。
【0023】
本発明に関わる測定装置が、図1に示されている。電気化学電池1が、陰極3と陽極4とが収容されているコンテナ2を有している。矢印によって概略的に示された、測定される一酸化炭素が中に存在し基本的に水素ガスから成るガス流が、陽極を通って流れる。陰極側では、水槽が矢印6で示されている。
【0024】
水槽6が設けられているため、膜(例えばナフィオン(Nafion))が陰極3を介して常に適度にぬらされることが確実にできる。陰極と陽極とには、示されていない方法で制御装置が接続されている。本発明の特定の変形の実施形態に関われば、測定の間は、10〜400mVの、更に詳細には約350mVの電圧が陰極と陽極との間に印加される。この結果、陽極で水素が酸化され、陽子が陰極で水素に再生される。陽極を覆う一酸化炭素により生じる電流密度の変化が、ガス中の一酸化炭素の量の尺度となる。更に高い600mV〜1.0Vの電位差を印加することにより、一酸化炭素が二酸化炭素に酸化するため、電池が再生され得る。この結果、被覆(covering)が消される。電流密度がサンプリングされる際の程度と同様に温度および圧力に応じて、1000ppmを超えるまでの一酸化炭素が検出され得る。測定電池内に、特に、膜内に不適当な水分が存在している場合は、測定誤差が生まれる。図1に示されている構成により、本装置では、常に適当な水分が存在するように保証されている。
【0025】
本明細書で示されている構成物は、あらゆる適用のための、水素リッチガス用の供給ライン内に設置されると好ましい。一般に、このラインは、正確な測定を果たすためには小さな容量で十分なため、バイパスラインとして構成される。また、陰極を介した水の供給は、制限されたままに留まる。標準的な状況下での20〜100mlのガスの一分毎の値が、例として述べられる。
【0026】
いうまでもなく、陰極側で生成された水素は、排出されなくてはならない。しかしながら、この水素と、測定のために主ガス流から取り出された比較的少量のガス流との両方を外部に排出するか、これらを主ガス流中に戻すことが可能である。
【0027】
陰極と陽極との両方が、白金材料で形成されていると好ましい。陽極への低い白金の装荷(low platinum loading)を利用することにより、迅速で正確な測定が行なえる。例えば1cm毎に5μgの白金が、陽極のために使用される。陰極側への高い白金の装荷を利用すると、陰極は、良い対向電極としてだけでなくよい基準電極としても働く。例えば1cm毎に5mgの白金が陰極側で使用される。白金は、当分野で公知の所定の方法により関連の電極に適用され得る。
【0028】
本発明の実用的な実施形態が、図2〜4に示されている。電気化学電池が、参照符号11で示されている。参照符号12は、水槽である。参照符号13(図3を参照)は、陰極である。陽極は、参照符号14で示されており、拡散層により囲まれている。陰極と陽極とは、ナフィオンなどの陽子伝送ポリマー材料(proton-conducting polymer material)でできた膜15によって分離されている。電流コレクタが、参照符号19,20で示されている。電流コレクタ19には、開口24が設けられ、電流コレクタ20には、好ましくは、蛇紋形状のチャネル21が設けられている。電流コレクタ19,20に接続されているコントローラ(制御手段)が、参照符号25で示されている。参照符号22は、測定されるガスのためのガス入口であり、参照符号23は、測定されるガスのためのガス出口である。水供給部は、参照符号16で示され、ガス(水素)排出部は参照符号17で示されている。電池の液体/気体密を与えるように様々のシール18が設けられている。
【0029】
図2〜4を参照して示されている装置は、以下のように機能する。ガスが入口22から入り、チャネル21によって陽極14を通るように伝送される。チャネル21中を通って伝送されるとき、測定される水素リッチガスは、ぬれ区域28を通り、ここでぬらされる(図4)。ライン16を介してコンテナ12内に存在し、電流コレクタ19の開口24を介して膜15中を拡散する水によって行なわれる。膜を通りすでにぬらされていたガスは、区域29中に入る。この区域29では、ガスは、陽極を通って供給される。一酸化炭素が、活性の陽極を覆う。所定の時間が経過した後、平衡状態(equilibrium situation)になる。この平衡状態での電流密度が、一酸化炭素の濃度のための尺度である。一酸化炭素を測定するもう1つの方法が、電流密度で生じる変化の測定である。所定時間が経過したのちに、測定装置25によって電流コレクタ19,20全体に増加した電位を加えることにより、再生が生じ得る。
【0030】
本発明は、好ましい実施形態を参照して上記で説明されてきたが、本発明の範囲を逸脱することなく様々に変形され得ることが理解されるだろう。本発明に関わる電池は、電気化学電池によってすぐに酸化される他のガスと同様に一酸化炭素が中に存在しているガス流の測定の様々の応用例を有している。この電池はまた、触媒スクリーニング成分がまた高い電位で再び酸化され得るときに電気化学電池によって触媒スクリーニング成分よりも早く酸化される他のガスと同様に、一酸化炭素でなく触媒スクリーニング成分を中に含むガス流の場合の応用例をも有している。このような変形は、添付請求項の範囲内に収まると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に関わる装置を概略的に示している。
【図2】本発明に関わる測定電池の実施形態を断面で示している。
【図3】図2の装置の様々の構成部品の分解図である。
【図4】ぬれ/測定区域の一部分の概略的な平面分解図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素リッチガス流中の一酸化炭素を検出する方法であって、電気化学センサーを通るようにガス流を供給することと、一酸化炭素が酸化されずに水素が酸化されることによって電気化学電池内に電流を発生させるようにセンサーの電極に加えられている電位で、電気化学電池を流れる電流の密度を測定することと、こうして得られた電流密度から一酸化炭素の濃度を決定することとを具備し、前記水素リッチガス流は、センサーの陽極を通るように供給され、センサーの陰極は、水でぬらされている方法において、前記水素リッチガス流は、陽極のみを通るように供給され、前記陰極は、水中に位置されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電流密度から一酸化炭素の濃度を決定することは、電流密度の低下の度合を算出することを含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記陽極に存在する一酸化炭素を酸化させるために次により高い電位を印加することを含む前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項4】
前記陽極と陰極とには同じ触媒材料が使用されている前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項5】
測定される水素リッチガス流のための前記センサーの入口と出口とは、陽極のみに接続されている、前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項6】
陽極(4,14)、プラスチック膜(5,15)、および陰極(3,13)を備え、前記陽極と陰極とに接続された制御手段(25)とガス用の入口(22)とガス用の出口(23)とが設けられ、前記陽極から一酸化炭素を取り除くように設計されている電気化学電池(1,11)を具備した、水素リッチガス流中の一酸化炭素を検出する装置において、前記ガス用の入口および出口は、陽極のみに接続されており、また、陰極には、給水部(2,12,16)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項7】
前記給水部は、貯水部(2,12)を有している、請求項6の装置。
【請求項8】
前記陰極には、水素ガス排出手段(17)が設けられている、請求項6もしくは7の装置。
【請求項9】
前記膜には、陽極を通って流れたガスのためのぬれ区域(28)と、このぬれ区域の下流に配置されている前記ガスのための測定区域(29)とが設けられている、請求項6ないし8のいずれか1の装置。
【請求項10】
測定されるガス用の通路(21)が、陽極と、膜から離れるように面している隣接部との間に規定されている、請求項6ないし8のいずれか1の装置。
【請求項11】
水素リッチガス用の供給ラインを具備し、請求項6ないし10のいずれか1の装置が組み込まれている補助ラインが、前記供給ラインから分岐している、設備。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素リッチガス流中の一酸化炭素を検出する方法であって、電気化学センサーを通るようにガス流を供給することと、一酸化炭素が酸化されずに水素が酸化されることによって電気化学電池内に電流を発生させるようにセンサーの電極に加えられている電位で、電気化学電池を流れる電流の密度を測定することと、こうして得られた電流密度から一酸化炭素の濃度を決定することとを具備し、前記水素リッチガス流は、センサーの陽極を通るように供給され、センサーの陰極は、水槽内に位置されることによって水でぬらされている方法において、前記水素リッチガス流は、陽極のみを通るように供給され、前記陰極は、水(液体)と直接接触するように位置されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記陰極は、前記水槽の底を形成するようにこの水槽内に位置されている、請求項1の方法。
【請求項3】
電流強度から一酸化炭素の濃度を決定することは、電流強度の低下の度合を算出することを含む請求項1の方法。
【請求項4】
前記陽極に存在する一酸化炭素を酸化させるために次により高い電位を印加することを含む前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項5】
前記陽極と陰極とには同じ触媒材料が使用されている前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項6】
測定される水素リッチガス流のための前記センサーの入口と出口とは、陽極のみに接続されている、前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項7】
陽極(4,14)、プラスチック膜(5,15)、および陰極(3,13)を備え、前記陽極と陰極とに接続された制御手段(25)とガス用の入口(22)とガス用の出口(23)とが設けられ、前記陽極から一酸化炭素を取り除くように設計されている電気化学電池(1,11)を具備しており、前記陰極には、給水部(2,12,16)が設けられている、水素リッチガス流中の一酸化炭素を検出する装置において、前記ガス用の入口および出口は、陽極のみに接続され、前記給水部は、液体の水および陰極の直接接触を与えていることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記給水部は、貯水部を有し、この貯水部の底は前記陰極となっている、請求項7の装置。
【請求項9】
前記給水部は、貯水部(2,12)を有している、請求項7の装置。水槽
【請求項10】
前記陰極には、水素ガス排出手段(17)が設けられている、請求項7もしくは8の装置。
【請求項11】
前記膜には、陽極を通って流れたガスのためのぬれ区域(28)と、このぬれ区域の下流に配置されている前記ガスのための測定区域(29)とが設けられている、請求項7ないし10のいずれか1の装置。
【請求項12】
測定されるガスのための通路(21)が、陽極と、膜から離れるように面している隣接部との間に規定されている、請求項7ないし10のいずれか1の装置。
【請求項13】
水素リッチガス用の供給ラインを具備し、請求項7ないし12のいずれか1の装置が組み込まれている補助ラインが、前記供給ラインから分岐している、設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−517296(P2006−517296A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502737(P2006−502737)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000084
【国際公開番号】WO2004/070380
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(500512759)シュティヒティン・エネルギーオンデルツォイク・セントラム・ネーデルランド (15)
【Fターム(参考)】