説明

水素下での前処理工程を含む連続的水素化処理による、再生可能材料を用いるパラフィン燃料の製造

【課題】再生可能な資源、例えば、植物油からの供給原料を水素化処理して、パラフィン系炭化水素を製造する方法を提供。
【解決手段】全処理供給原料の流れは、非触媒固体材料と混合されたまたは混合されない触媒固体材料を有する0.25〜0.8の空隙率の固定床における供給原料の予備水素化による前処理工程、前処理物を反応器中の触媒帯域の数に等しい所定数の異なる部分流に分け、水素化処理触媒帯域に注入されパラフィン系炭化水素を含有する流出物が生じる水素化処理工程、水素化処理流出物をガスフラクションと、パラフィン系炭化水素を含有する液体フラクションとの分離を可能にする分離工程に付す。前記液体フラクションの少なくとも一部は、前処理工程または少なくとも1つの触媒帯域のいずれかに再循環させられ、この再循環と第1の触媒帯域に導入される部分流との間の重量比は、10以上であるようにされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物または動物起源の油脂のような再生可能な資源からの供給原料の水素化処理による、燃料として用いられ得るパラフィン系炭化水素の製造方法に関する。特に、本発明は、再生可能な資源からの供給原料の水素化処理による、パラフィン系炭化水素の製造方法であって、前記供給原料中に含まれる無機不純物の除去を可能にする徹底的な前処理工程が固定床水素化処理触媒帯域の上流に組み入れられる、方法に関する。
【0002】
現在の国際的状況は、主に、燃料、特に、ガスオイル(gas oil)およびケロセン(kerosene)ベースの燃料の必要性が急成長していることによって、また、地球温暖化、および温室効果ガスの排出に関連する問題の規模によっても特徴付けられる。その結果、化石起源の原材料にエネルギー依存することを低減させること、およびCOの排出量を低減させることが望まれている。これに関連して、再生可能な資源からの新たな供給原料の模索がますます重要な大きな課題となっている。このような供給原料の例として、(食物または非食物の品質の)植物油、または藻由来の油および動物脂肪が含まれる。
【0003】
このような供給原料は、主に、トリグリセリドと遊離脂肪酸とからなり、そのような分子は、脂肪酸の炭化水素鎖を含み、この炭化水素鎖の炭素原子数は4〜24であり、不飽和結合の数は一般的に0〜3であり、例えば藻類油ではレベルはより高い。
【0004】
トリグリセリドの分子量が非常に大きく(>600g/モル)かつ関連する供給原料の粘度が高いことは、直接的にもしくは燃料ベース中の混合物でこれらを使用すれば、近代的なエンジンに対して困難性が示されることを意味する。しかし、トリグリセリドを構成する炭化水素鎖は、実質上線状であり、それらの長さ(炭素原子の数)は、燃料ベース中に存在する炭化水素に適合可能である。
【0005】
したがって、高品質の、特に、直接的にまたは原油からの他のフラクションと混合した後に規格に合う燃料ベース(ディーゼルおよびケロセンを含む)を得るようにそのような供給原料を転化させることが必要である。ディーゼルは、規格EN590を満たさなければならず、ケロセンは、国際航空運送協会(International Air Transport Association:IATA)のASTM D1655に基づくAviation Turbine Fuel SpecificationsについてのGuidance Materialに記載された要件を満たさなければならない。
【0006】
可能性のあるアプローチの1つは、水素の存在下でのトリグリセリドの脱酸素パラフィン系燃料への接触転化である(水素化処理)。
【0007】
水素化処理の間、トリグリセリドを含有する供給原料が経る反応は、以下の通りである:
・トリグリセリドおよびエステルの脂肪酸の炭化水素鎖の不飽和結合の水素化反応;
・以下の2つの反応経路を経由する脱酸素反応:
− 水素化脱酸素(hydrodeoxygenation:HDO):水素の消費による水の形成、および初期の脂肪酸鎖の炭素数に等しい炭素数(C)を有する炭化水素の形成に至る、;
− 脱炭酸/脱カルボニル:炭素酸化物(一酸化炭素および二酸化炭素:COおよびCO)の形成、および初期の脂肪酸鎖より1つ少ない炭素(Cn−1)を含有する炭化水素の形成に至る;
・水素化脱窒(hydrodenitrogenation:HDN)反応;この用語は、NHの生成を伴って供給原料からの窒素の除去を可能にする反応を示すように用いられる。
【0008】
炭化水素鎖の不飽和結合(炭素−炭素二重結合)の水素化は、非常に発熱性であり、熱の放出によってもたらされる温度の上昇は、脱炭酸反応の寄与が重要となる温度レベルをもたらし得る。脱炭酸反応を含む水素化脱酸素反応も発熱性の反応である。水素化脱酸素は、一般的に、脱炭酸/脱カルボニルよりもより低い温度において有利とされる。水素化脱窒反応は、より困難であり、水素化および水素化脱酸素よりもより高い温度を必要とする。水素化脱窒が一般的に必要であるのは、窒素化合物は、水素化処理の後に場合により用いられる水素化異性化触媒の阻害物質であるからである。水素化異性化により、水素化処理の後の燃料ベースの冷温状態での特性の向上が、特にケロセンの製造が想定される場合に可能となる。
【0009】
その結果、水素化処理セクションにおける厳密な温度制御が必要である。なぜなら、過剰の温度によって、不所望の二次反応、例えば、重合、分解、コークスの堆積、および触媒の失活等に有利に働くという不利な点がもたらされるからである。
【0010】
更に、再生可能な資源からのこのような供給原料は、著しい量の不純物も含有する。これらの不純物は、少なくとも1種の無機元素を含有し得る。少なくとも1種の無機元素を含有する前記不純物は、本質的に、リンを含有する化合物、例えば、リン脂質を含み、これは、乳化する界面活性剤であり、精製操作を妨げ、グリセリド性化合物の族に属する。少なくとも1種の無機元素を含有する前記不純物はまた、アルカリ土類元素、例えば、ホスファチジン酸の塩あるいはまた金属、アルカリ金属、クロロフィル、または、種々の形態の遷移元素等を含み得る。
【0011】
複合性かつ極性のリン脂質は、両親媒性分子であり、2つの脂肪酸によって構成される1つの親油性かつ無極性の「頭部」と、リン酸と可変種の基(アミノ−アルコール、ポリオール等)とのペアリングをベースとする1つの親水性かつ極性の「頭部」を有する。これらの不純物はまた、有機性であり得る。前記有機不純物は、窒素、例えば、スフィンゴ脂質および非キレートクロロフィルの誘導体を実質的に含む。
【0012】
実際、前記供給原料中に含まれる、少なくとも1種の無機元素を含有する前記不純物は、水素化処理条件下で、油に混和性である。トリグリセリドおよび/または脂肪酸のパラフィン系炭化水素への転化の間に、前記不純物は分解し、次いで、それらの無機残渣は結合して非混和性の塩を形成する。該塩は、例えば、CaMg(POタイプのカルシウムおよび/またはマグネシウムの混合型リン酸塩の形態で沈殿し、これは、反応媒体中に不溶性である。これらの塩の沈殿により、触媒床中に無機固体が蓄積させられて、その結果、反応器中の圧力損失、触媒床の閉塞、および細孔の閉塞による水素化処理触媒の失活が増大させられる。サイクルタイムは、これらの不純物の存在によって低減させられる。
【0013】
更に、前記供給原料中に存在する、有機窒素不純物、および少なくとも1種の無機元素を含有する窒素不純物は、水素化処理工程の間に完全には除去されない。その結果、任意の下流の水素化異性化工程の性能は低下する。
【0014】
本発明の目的は、これらの不利な点に対応することである。
【0015】
本発明の目的の1つは、再生可能な供給原料のための水素化処理方法であって、水の形成によって水素化脱酸素反応を主に促進することを可能にしながら、同時に:
− この同じ方法による、任意の水素化異性化セクションの触媒活性を保持するのに必要な水素化脱窒の効率的な性能;および
− 水素化処理触媒を含有する触媒床(単数または複数)の閉塞、前記触媒の失活、およびそれ故の触媒床中の無機固体の蓄積と関連する圧力損失を制限すること;これは、前記触媒床の上流での、水素流の存在下の特定の前処理工程の使用を通じたものであり、この前処理工程により、前記供給原料中に存在する無機不純物の除去および前記供給原料のトリグリセリドの不飽和結合の少なくとも一部の水素化が同時に可能となる;
を可能とする、方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、再生可能な供給原料の水素化処理方法であって、水素化脱酸素反応を主に促進し、それ故に、パラフィン系炭化水素の収率を最大にすることを可能にし、同時に、不溶性のケーキング種の除去を通じて接触水素化処理システムの耐用期間を増大させる、方法を提供することである。
【背景技術】
【0017】
従来技術からの数多くの文献には、水素化処理の上流で任意の前処理工程を用いて、再生可能な供給原料を水素化処理するための方法が提案されている。
【0018】
特許文献1には、再生可能な出発材料、例えば、植物および動物起源の油脂に由来する燃料、特に、ガスオイルを製造するための方法が記載されている。この方法は、再生可能な出発材料の第1の部分を、第1の反応帯域における水素化および脱酸素によって、再生可能な出発材料の第2の部分を、第2の反応帯域における水素化および脱酸素によって処理することからなる。得られたパラフィン系炭化水素生成物の一部は、第1の反応帯域に再循環させられて、これにより反応混合物の水素溶解性が増大させられ、その際、再生可能な出発材料の第1の部分に対する再循環についての体積比2〜8(重量比1.7〜6.9)が用いられる。液相中の水素の量が最大化させられるという事実は、触媒の失活の程度が低減させられ得ることを意味し、このことは、圧力が低減させられ得、脱炭酸/脱カルボニル反応が促進され得、かつ、水素化脱酸素反応が低減させられ得、従って、水素消費量が低減させられることを意味する。出発材料およびパラフィン系流出物中の窒素の量に関する情報は、なんら与えられていない。再生可能な出発材料に由来する供給原料は、有利には、前記供給原料中に存在する汚染物質、例えばアルカリ金属を除去するために前処理を経ることがあり得る。前処理工程は、樹脂上のイオン交換、酸洗浄、脱金属触媒を有するまたは有しない保護床の使用、または溶媒抽出およびろ過からなり得る。
【0019】
特許文献2には、直列に配置されかつ水素化触媒を含む複数の触媒床を含む固定床反応器システムにおける、トリグリセリドを含有する再生可能な資源由来の供給原料の連続的水素化方法であって、より少ない再循環を用い、その結果、既存装置の制限された転換を必要とする、方法が提案されている。供給原料は、段階的注入によって導入され、その結果、種々の触媒床は、流れの方向においてますますより多くの供給原料を受け取る。再循環させられる液体は、第1の触媒帯域の上流のみに加えられる。反応器に再循環させられる生成物の量に対するこの制限は、反応器中の全流量、および従って反応器の下流の液圧負荷(hydraulic load)が制限され得ることを意味する。新鮮な供給原料に対する全再循環の好ましい範囲は、重量で1未満、好ましくは0.5未満である。希釈剤の、各触媒床に入る新鮮な供給原料に対する比は、重量で4以下である。各床における入口温度は、すべて同一である。
【0020】
特許文献2は、触媒床の入口温度を制御することによって、脱炭酸反応により酸素を除去するのではなく、酸素を除去しかつ水を形成することによって水素化脱酸素の経路を促進させている。特許文献2には、前記供給原料中に無機汚染物質が存在するという問題についての記載はない。
【0021】
特許文献3には、トリグリセリドを、単独で、または炭化水素化供給原料、例えば、中間留分供給原料、特に、ガスオイル供給原料との混合物中に含有する供給原料の処理のための方法が記載されている。この処理方法は、40〜540℃の温度での前記供給原料の熱による前処理からなり、この前処理は、場合によっては、ガス、例えば、水素、窒素、ヘリウム、一酸化炭素、および二酸化炭素等の存在下に行われ、次いで、水素化処理が行われ、これにより、ガスオイルタイプの燃料が製造される。
【0022】
本出願人は、再生可能な出発材料中の窒素の量が、材料の起源に応じて大幅に変わり得ることを観測した。特に、窒素含有量は、一般的に、植物油中よりも動物脂肪においてより高い。更に、水素化処理反応器の種々の触媒帯域内の温度を、可能な限り低いレベルに調節して、水の形成に至る水素化脱酸素反応を促進することにより、水素化処理後に製造されるパラフィン系燃料中に低い窒素含有量レベルを得る際に困難性が引き起こされ得る。従って、水素化脱窒反応(HDN)は、水素化脱硫反応(hydrodesulphurization:HDS)または水素化脱酸素反応(HDO)より実施するのが困難であり、その結果、同一レベルに達するためにより高い温度を必要とすることは周知である。水素化処理方法によって製造されるパラフィン系燃料中の窒素化合物のレベルが高すぎると、任意の下流の水素化異性化のための性能が乏しくなる。向上した冷温流特性を有するディーゼルを製造するためおよび/または凝固点の規格を満たすケロセンを製造するためには、水素化異性化(hydroisomerization:HIS)が有利であり得る。この効果を補うために、従って、HISセクションの過酷度(severity)を増大させることが必要となり、その結果、高価値生成物、例えば、ディーゼル燃料およびケロセンの収率が低下し、サイクルが低減し、その結果、操作コストが増大するに至るであろう。
【0023】
従って、本出願人は、水素化処理触媒を含む触媒床(単数または複数)の上流で、前記水素化処理触媒の耐用期間が増大するように、水素流の存在下に、この供給原料の徹底的な前処理工程を実施し、これにより、水素化処理条件下に、前記供給原料中に存在する、不溶性の無機汚染物質の除去と、前記供給原料のトリグリセリドの不飽和結合の少なくとも一部の水素化が可能となった。この特定の前処理工程により、特定の窒素化合物の吸着によって、前記供給原料中に存在する窒素化合物の補強された除去も可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0318737号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2226375号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0266743号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
(発明の目的)
従って、本発明の目的は、増加する割合での供給原料の導入、および第1の帯域における高い再循環、ならびに水素の流れの存在下に行われかつ再循環の一部を用いる特定の前処理工程の実施の組み合わせを通した、再生可能な供給原料の水素化処理方法であって、
− 水素化処理条件下に不溶性であり、前記供給原料中に存在する、無機不純物の除去と、前記供給原料中のトリグリセリドの不飽和結合の少なくとも一部の水素化を同時に可能とすること;
− 水の形成により水素化脱酸素反応を主に促進すること;
− これと同じ方法によって、任意の水素化異性化セクションの触媒活性を保持するのに必要な水素化脱窒を効果的に行うこと;
− 窒素化合物の除去を補強すること;および
− 接触水素化処理系の耐用期間を向上させること
を同時に可能にする方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
従って、本発明は、理論水素消費量を超過する水素の存在下に、および、水素化処理条件下に、直列に配置されかつ水素化処理触媒を含む複数の触媒帯域を有する固定床反応器において、再生可能な資源を起源とする供給原料を水素化処理して、パラフィン系炭化水素を製造する方法であって、少なくとも:
a) 全供給原料流F0を、分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有する液体フラクションRの少なくとも一部によって構成される流れRPPおよび水素リッチなガスHPの流れと混合し、前記混合物を、140〜250℃の温度にする、工程a);
b) 前記混合物を、前処理帯域中に導入し、該前処理帯域において、前記混合物の流れは、固定床と称される粒子床からなる多孔性媒体を介して起こり、前記粒子床は、固体触媒材料からなり、該固体触媒材料は、固体非触媒材料と混合されてもされなくてもよく、前記固定床は、0.25〜0.8の空隙率を有する、前処理工程b);
c) 前処理工程b)に由来する水素化処理されるべき少なくとも1つの流出物(F+εRPP+δHPP)(εおよびδは、0〜1である)を、反応器中の触媒帯域の数nに等しい、少なくとも所定数の異なる部分流(F1+εRPP+δPP)〜(Fn+εRPP+δPP)に分け、第1の部分流(F1+εRPP+δPP)を、第1の触媒帯域に注入し、第2の部分流(F2+εRPP+δPP)を、第2の触媒帯域に注入し、nが2超である場合、以下同様にして注入し;
種々の部分流を、増加する割合で、F1/FはF2/F以下であり、F2/FはF3/F以下であり、F(n−1)/FがFn/F以下となるまで以下同様であるようにして連続する触媒帯域に注入し、これによりパラフィン系炭化水素を含有する流出物が生じる、水素化処理工程c)
d) パラフィン系炭化水素を含有する前記流出物を、少なくとも1回の分離工程に付し、少なくとも1つのガスフラクションと、パラフィン系炭化水素を含有する少なくとも1つの液体フラクションとの分離がなされる、分離工程d);
e) 工程b)からのパラフィン系炭化水素を含有する前記液体フラクションの少なくとも一部Rを、少なくとも1つの流れRLCと、上流の工程a)で全供給原料流F0と混合される前記再循環流RPPとに分け、前記流れRLCを、反応器中の触媒帯域の数n以下の、少なくとも所定数の異なる部分流R1−Rnに分け、前記流れR1−Rnを、触媒帯域1−nの上流に再循環させ、第1の触媒帯域に送られるパラフィン系炭化水素流(R1+εRPP)と、第1の触媒帯域に導入される供給原料の部分流F1との間の重量比が10以上であるようにされる、工程e)
を含むことを特徴とする、方法に関するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の利点は、下流の第2の水素化脱窒反応器への償還(recourse)を有することなく、同一の触媒帯域で水素化脱窒および水素化脱酸素を行うために、それが用いられ得ることである。実際、第1の帯域への大量の再循環と結び付けられて、増加する割合で供給原料を導入することは、上昇する温度プロファイルによって、十分に高温の帯域が触媒帯域の終わりで得られ得、これにより触媒帯域への入口において十分に低い温度を維持しながら水素化脱窒が可能となり、水素化脱酸素反応が促進されることを意味する。更に、水素化処理触媒を含有する触媒床(単数または複数)の上流で採用される前処理工程により、不純物の除去、特に、特定の窒素化合物、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジルセリンタイプのアミノ−アルコール、ならびにスフィンゴ脂質およびクロロフィルの除去によって、前記供給原料中に存在する窒素化合物の補強された除去も可能となる。
【0028】
本発明の別の利点は、本発明が、前記触媒床(単数または複数)の上流での採用による、前記触媒の失活、触媒床(単数または複数)中の無機固体の蓄積に関連する圧力損失、およびそれ故の水素化処理触媒を含む触媒床の閉塞を制限することであり、前記特定の前処理工程は水素流の存在下で行われ、沈殿/結晶化および/または高温吸着による、前記供給原料中に存在する無機汚染物質の除去と、前記供給原料中のトリグリセリドの不飽和結合の少なくとも一部の水素化とを同時に可能とする。
【0029】
水素の存在下で行われる前記前処理工程は、トリグリセリドの不飽和結合の全体的または部分的な水素化の発熱性の反応によって放出される熱を用いて、水素化処理されることになる流出物の事前加熱も可能とする。水素の存在下で行われるこの前処理工程は、従って、用いられる再循環送達の最小化および操作コストの低減に至る、方法の向上した熱的統合の可能性を提供する。
【0030】
本発明の更なる利点は、各触媒帯域への入口において水素化脱酸素に適応させられた温度を維持するように温度を制御することによって、脱炭酸反応によって酸素を除去するのではなく、酸素を除去しかつ水を形成することによって水素化脱酸素経路を促進することにある。この解決策の利点は、パラフィン系炭化水素の収率が増加することと、形成されるCO/COの量が低減することであり、これは、水素化処理触媒の活性に対するCOの阻害効果が制限され得ることを意味する。水素化脱酸素経路を促進することはまた、反応器中にCOが存在することによる腐食が低減させられ得ることも意味する。
【0031】
反応器に再循環させられる生成物の量が制限されることにより、反応器中の全流、および従って、反応器の下流の液圧供給原料が制限されることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(説明)
本発明の方法は、トリグリセリドおよび脂肪酸から実質的に構成される、再生可能な起源の幅広い範囲の供給原料を、パラフィン系炭化水素、より正確には中間留分(ケロセンおよび/またはガスオイル)に転化させることにある。これらの供給原料は、一般的に、高いモル質量(通常800g/モル超)によって特徴付けられ;それらが構成される脂肪酸の鎖は、4〜24個の炭素原子、一般的には鎖当たり0〜3の不飽和結合を含み、より高い値が、場合によっては、所定の特定の供給原料について得られる。本発明の方法によって転化させられてもよい供給原料の包括的でない例として以下のものが列挙されてもよい:植物油、例えば、ナタネ、ジャトロファ、大豆、パーム核、ヒマワリ、オリーブ、コプラ、カメリナの油、魚油、あるいは、従属栄養性または独立栄養性の藻類油または動物脂肪、例えば、ビーフスエット(beef suet)、あるいは、製紙産業からの残留物(例えば、トール油)あるいは、これらの種々の供給原料の混合物。
【0033】
好ましくは、再生可能な資源を起源とする供給原料は、トリグリセリドおよび/または遊離脂肪酸および/またはエステルを含有する、植物または動物由来の油脂、またはそのような供給原料の混合物から選択される。
【0034】
これらの供給原料は全て、酸素含有量が高く、また、供給原料の起源に応じて大きく変化し得る量で著しい量の不純物を有し、該不純物は、少なくとも1種の無機元素を含有してもよく、有機不純物は、上記したように実質的に窒素を含有する。前記供給原料の無機化合物の含有量は、一般的に0.1〜2500ppmであり得る。窒素および硫黄の量は、それらの性質に応じて、一般的に約1〜100重量ppmの範囲、好ましくは100重量ppm未満である。特定の供給原料の場合、それらは1重量%にまで達してもよい。
【0035】
本発明による方法において用いられる再生可能な資源からの供給原料は、有利には未精製の形態であり得、あるいは、当業者に公知の食用油のための精製工程、例えば、脱ガムまたは脱リン酸を経たものでもよい。少なくとも前記精製工程を経た前記供給原料は、半精製として称され、この処理の終了時に、依然として、20ppm以下のリン、カルシウム、マグネシウム、鉄および/または亜鉛を、リン脂質の形態で含有する。
【0036】
理解を促進するために、図面を参照しながら、以下に本発明を説明することする;図面は、本発明の一般的な性質を制限するものではない。
【0037】
(前処理)
未精製の状態の、あるいは場合により少なくとも1回の精製工程を経た供給原料(全新鮮供給原料F0とも称される)は、図1に示されるライン(0)に注入される。
【0038】
本発明による方法の工程a)によると、全新鮮供給原料F0の流れは、分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有する再循環液体フラクションRの少なくとも一部によって構成される流れRPPおよび水素リッチなガス流HPと混合される。
【0039】
実際、本発明によると、本発明による処理方法によって生じたパラフィン系炭化水素を含有し、かつ、分離工程d)に由来する、液体フラクションの少なくとも一部Rは、再循環させられ、少なくとも流れRLCおよび流れRPPに分けられる。流れRLCは、本発明による方法の工程e)による触媒帯域の上流に再循環させられ、流れRPPは、パラフィン系炭化水素を含有する液体フラクションRの少なくとも一部によって構成され、前処理帯域の上流に再循環させられる。
【0040】
前記水素リッチなガスHPは、好ましくは、精製工程を経た分離工程d)からのガスフラクションの少なくとも一部によって、場合により新鮮な水素との混合物で構成される。
【0041】
好ましくは、全新鮮供給原料F0の流れは、デバイス内で前記流れRPPおよびHPと混合され、これにより、流れを接触させることが可能となり、これらの均質な混合が可能となる。
【0042】
本発明によると、全新鮮供給原料F0および前記流れRPPおよびHPの混合物は、140〜250℃、好ましくは160〜230℃、最も好ましくは160〜210℃の温度にされる。前記混合物は、有利には、RPPおよびHPの流れからの熱の寄与によって加熱され得る。RPPおよびHPの流れによって寄与される熱が不十分である場合、前記混合物は、有利には、当業者に公知のいずれかの手段、例えば、熱交換器を通過させるかまたはオーブンによって加熱される。
【0043】
本発明による方法の工程a)において導入される流れRPPの、全新鮮供給原料F0の流れに対する割合は、質量流の比RPP/F0が、有利には0.1〜5、好ましくは0.5〜3、最も好ましくは1〜3であるようにされる。
【0044】
本発明による方法の工程a)において導入される流れHPの、全新鮮供給原料F0の流れに対する割合は、水素リッチ流の標準体積送達の新鮮供給原料の体積送達に対する比HP/F0が、有利には100〜1500NL/L、好ましくは300〜1000NL/L、最も好ましくは400〜900NL/Lであるようにされる。
【0045】
本発明による方法の工程b)によると、前記混合物は、ライン(1)を介して、図示された前処理帯域F−01に導入され、該帯域において、混合物の流れが、固定床と称される粒子の床からなる多孔性媒体を通って起こり、前記粒子床は、触媒固体材料によって構成され、該触媒固体材料は、非触媒固体材料と混合された状態にあるかまたは非触媒固体材料と混合された状態ではなく、前記固定床は、0.25〜0.8の空隙率を有する。
【0046】
非触媒固体材料と混合された、あるいは非触媒固体材料と混合されていない、触媒固体材料によって構成されるこれらの粒子の比表面積は、有利には0.5〜320m/gである。
【0047】
本発明による方法の前処理工程b)において用いられる触媒固体材料は、有利には、周期律表の第6、8、9、および10族からの1種以上の元素、好ましくは、ニッケル、モリブデン、タングステンおよび/またはコバルトと、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土、「珪藻土」タイプの担体、およびこれら鉱物の少なくとも2種の混合物から構成される群からの担体とを含む触媒(好ましくは硫化物)の中から選択される。前記担体はまた、有利には、他の化合物、例えば、酸化ホウ素、ジルコニア、酸化チタン、および無水リン酸を含む群から選択される酸化物を含み得る。好ましい担体は、アルミナ担体であり、非常に好ましくはη、δ、またはγアルミナである。
【0048】
前処理工程b)において用いられる前記触媒固体材料は、好ましくは、水素化処理工程c)において用いられる触媒と同一である。前記触媒は、以下に詳細に記載される。
【0049】
前記触媒固体材料はまた、有利には、植物油の精製または処理の方法からの使用済み触媒であり得る。
【0050】
本発明による方法の前処理工程b)において用いられる非触媒固体材料は、有利には、周期律表の第6族および第8〜12族から選択される触媒金属を含まない固体材料である。本発明による方法の前処理工程b)において用いられる非触媒固体材料は、有利には多孔性耐火性酸化物の中から、好ましくはアルミナ、シリカ、活性アルミナ、シリカ−アルミナ、金属酸化物、および非金属酸化物の中から選択される。前記非触媒固体材料はまた、有利には、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス、または複合材料セラミックス、あるいは、炭化ケイ素、活性炭、アルミン酸カルシウム、金属、およびグラファイトのような材料、粘土、およびマグネシアの中から選択され得る。非常に好ましい方法において、前記非触媒固体材料は、多孔性耐火性酸化物の中から選択される。
【0051】
前記非触媒固体材料が多孔性耐火性酸化物である場合、好ましい多孔性耐火性酸化物は、マクロ多孔度を有する。
【0052】
前記多孔性耐火性酸化物は、好ましくは、水銀圧入によって測定されるマクロ孔容積、すなわち、平均径が500Å超である細孔の容積0.1mL/g超、好ましくは0.125〜0.4mL/gを有する。前記多孔性耐火性酸化物の全細孔容積はまた、有利には0.60mL/g超、好ましくは0.625〜1.5mL/gであり、SBETで表される比表面積は、有利には30〜320m/gである。
【0053】
好ましい態様によると、前記粒子床は、触媒固体材料および非触媒固体材料からなる。
【0054】
この場合、触媒固体材料および非触媒固体材料から構成される前記粒子は、床中に不均質なまたは均質な混合物状で配置され得る。第1の方法である不均質な配置によると、前記粒子床は、有利には、2つの異なる帯域からなり、第1の帯域は、触媒固体材料からなる粒子を含み、第2の帯域は、非触媒固体材料からなる粒子を含む。第2の方法である前記床の不均質な配置によると、触媒固体材料からなる粒子の濃度勾配が適用され、触媒固体材料の全固体材料に対する割合は、床への入口において10〜100%であり、その後、床からの出口においてゼロの触媒固体材料含有量まで減少していく。第3の態様である前記床の不均質な配置によると、前記粒子床の配置は、2つの異なる帯域からなり、第1の帯域は、非触媒固体材料からなる粒子を含み、第2の帯域は、触媒固体材料からなる粒子を含む。
【0055】
前記粒子床の均質な配置の方法によると、前記粒子床は、床の体積全体にわたって一定である触媒固体材料からなる粒子の部分と、全固体材料に対して100〜10重量%の触媒固体材料からなる粒子の部分とを含む。非触媒固体材料からなる前記粒子は、有利には、触媒固体材料の粒子床内に分散させられ、また、前記床の体積全体にわたって一定の割合を有する。
【0056】
本発明による前処理帯域において用いられる固定床の前記粒子は、有利には成形され得、好ましくは球状粒子、または長楕円状、円筒状(中空または中実)、ねじられた円筒状、例えば葉の数が2〜5である多葉状、あるいは環状押出物の形態である。前記粒子は、好ましくは、球状または押出物状の粒子の形態であり、0.5〜20mm、好ましくは0.5〜10mmの径を有する。
【0057】
固定床の前記粒子は、粒子の空隙率を増大させるために、有利には、より具体的な幾何学的形態を有し得る。固定床の前記粒子はまた、有利には以下の形態を有し得る:中空円筒物、中空環状物、ラシヒリング、のこぎり歯状中空円筒物、銃眼状(Crenelated)中空円筒物、車輪状物、ブレンドサドル(Blend saddle)状物、または多数孔付円筒物。
【0058】
それらの外径は、有利には1〜35mmの間で変動する。
【0059】
固定床の前記粒子は、有利には、単独でまたは混合物で用いられ得る。
【0060】
異なる高さの、少なくとも2つの異なる固定床中に、異なる材料を積層することは、特に有利である。異なる形態の粒子を積層することも、特に有利であり、最も高い空隙率を有する固定床を形成する粒子は、好ましくは第1の固定床(単数または複数)における、前処理帯域への入口において用いられる。
【0061】
全新鮮供給原料F0の流れと前記流れRPPおよびHPとの混合物の加熱の後に続く、前記前処理固定床上の前記混合物の温度および通過の観点での良好な条件下での、水素の存在下における未精製あるいは半精製の供給原料の前記前処理工程b)によって、一方で、処理される供給原料のトリグリセリドの不飽和結合が、少なくとも一部、場合により完全に水素化し、水素化反応の発熱性により前記混合物の温度が上昇し、最終的に、少なくとも1種の無機元素を含有する不純物が分解し、その後に、それらの無機残渣が再結合して、非混和性の塩を形成することを可能とし、この塩は、沈殿し、反応媒体に不溶性である。この沈殿が促進されるのは、極性の性質の不純物は、RPPパラフィンが加えられた完全にあるいは部分的に水素化された油混合物中において、油単独の中よりもより混和しにくいからである。トリグリセリドリッチな相とパラフィンリッチな相の間の、前処理工程の多孔性媒体と接触する界面に濃縮され、好ましくは大きい接触面積を有する固体からなるので、無機不純物は、これらの表面で沈殿する。反応媒体に非混和性であるこの固体沈殿物は、多孔性媒体上に堆積する。この多孔性媒体は、再度、保護床と称され、求められる熱結晶化および/または沈殿反応の最小限の活性化温度により用いられるという特徴を有する。
【0062】
前記前処理工程は、水素の存在下で行われかつ水素化処理触媒を含む触媒床(単数または複数)の上流で行われ、従って、供給原料中に存在する無機不純物の除去が可能となる。
【0063】
更に、水素の存在下で行われる前記前処理工程によって、前記供給原料中に存在する窒素化合物、特に、有機窒素不純物および少なくとも1種の無機元素を含有する窒素不純物、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、またはホスファチジルセリンタイプのアミノ−アルコール、ならびにスフィンゴ脂質およびクロロフィルの除去の補強も可能となる。
【0064】
実際、前処理工程に用いられる固体の性質、あるいは、無機不純物の結晶化または沈殿に由来する固体の性質に関連する多孔度の存在によって、窒素不純物、例えば、スフィンゴ脂質またはクロロフィルまたは任意の他の残留窒素化合物の吸着も可能となる。
【0065】
最後に、水素の存在下での前記前処理工程によって、水素化されることとなる流出物の事前加熱もトリグリセリドの不飽和結合の完全なあるいは部分的な水素化反応からの熱によって可能となる。水素の存在下でのこの前処理工程は、従って、用いられる再循環送達の最小化および操作コストの低減につながる、方法のより良好な熱統合の可能性を提供する。
【0066】
前処理工程d)は、好ましくは、前処理帯域に加えて、分離帯域を含む。
【0067】
前記前処理工程d)が分離帯域を含む場合、前処理帯域からの流出物は、分離帯域に導入され、その際、トリグリセリドを含有する少なくとも1つの流出物(F+εRPP+δHPP)(εおよびδは0〜1である)と、少なくとも1つのパラフィンリッチな液体流出物((1−ε)RPP+αHPP)と、少なくとも1つの水素リッチなガス流出物(1−δ−α)HPP((α+δ)は0〜1である)とを分離するようにされる。εおよびδは、好ましくは0.01〜0.5である。
【0068】
PPは、前処理帯域を通過した後かつ分離帯域を通過する前の水素リッチなガスの流れを示す。
【0069】
前処理帯域からの前記流出物は、ライン(2)を介して、図1に示される分離帯域B−01に導入される。
【0070】
前記パラフィンリッチな流出物((1−ε)RPP+αHPP)(好ましくは少なくとも90重量%のパラフィンからなる)は、有利には分離される。前記流出物((1−ε)RPP+αHPP)は、有利には、図1に示されるケースi)により流れRLCと共に触媒帯域に再注入されるか、あるいは、ケースii)によりRPP流との混合物で前処理帯域の上流に再循環させられるかのいずれかである。
【0071】
前記水素リッチなガス流出物(1−δ−α)HPPは、有利には、図1に示されるケースj)により流れRLCと共に触媒帯域に再注入されるか、あるいは、ケースjj)により流れHPとの混合物で前処理工程b)の上流に再循環させられるかのいずれかである。
【0072】
εは、前処理工程b)の終了時に供給原料Fと共に同伴されるパラフィン流RPPの割合を表す。
【0073】
δは、供給原料Fと同伴されるかまたは場合により供給原料Fに溶解した水素リッチなガス流の割合を表す。
【0074】
αは、前処理工程b)の終了時に、パラフィンリッチな液体流出物と同伴されるかあるいは場合によりパラフィンリッチな液体流出物に溶解した水素リッチなガス流の割合を表す。
【0075】
本発明による方法の水素化処理工程c)によると、パラフィンリッチな流出物の分離工程を経てもよい、前処理工程b)からの流出物(F+εRPP+δHPP)は、反応器中の触媒帯域の数nに等しい少なくとも所定数の異なる部分流(F1+εRPP+δPP)〜(Fn+εRPP+δPP)に分けられ、第1の部分流(F1+εRPP+δPP)は、第1の触媒帯域に注入され、第2の部分流(F2+εRPP+δPP)は、第2の触媒帯域に注入され、nが2超である場合、以降も同様に注入される。種々の部分流は、連続する触媒帯域に増加する割合で注入され、F1/FがF2/F以下であり、F2/FがF3/F以下であるようにされ、F(n−1)/FがFn/F以下となるまで以下同様にされ、これによりパラフィン系炭化水素を含有する流出物が生じる。
【0076】
ライン(3)を介して前処理工程b)から来るトリグリセリドリッチな流出物(F+εRPP+δHPP)からの、反応器中の触媒帯域の数nに等しい前記異なる部分流(F1+εRPP+δPP)〜(Fn+εRPP+δPP)は、水素リッチなガス(4)と混合される。前記水素リッチなガスはまた、他の不活性炭化水素化合物、すなわち、供給原料の構成要素または痕跡量の硫黄化合物、例えばHSと反応しない化合物を含有し得る。水素は、有利には、追加の水素から、および/または水素化処理工程の下流で採用される分離工程からの水素リッチなガスの再循環から来てもよい。実際、追加水素は、水蒸気改質から、あるいは、場合によっては水蒸気改質からの追加水素および分離工程d)からの軽質ガスを伴う従来の接触改質から来てよく、その水素純度は有利には75〜95体積%であり、存在する他のガスは、一般的にメタン、エタン、プロパン、およびブタンである。水素化処理工程の下流で採用される分離工程からの、あるいは、場合による水素化異性化工程の後に採用される分離工程からの水素リッチなガスは、好ましくは、まず、1回以上の中間精製処理を経て、その後に、水素化処理および/または水素化異性化方法に再循環させられる。
【0077】
本発明の1つの特徴によると、用いられる水素は、理論的水素消費量を超過し、超過の水素は、この理論的消費量の少なくとも50%、好ましくは75〜400%、より好ましくは100〜300%を表し、150%が典型的な値である。用いられる水素の量は、水素分圧によって制御される。
【0078】
本発明のより良い理解を提供するために、以下の定義がここに与えられることになる。これらの定義は図1を参照してなされる。反応器は、「n」個の触媒帯域を含む。全ての流れは、重量による流量として表される。
【0079】
F0: 本方法で処理される再生可能な供給原料の全流;
F+εRPP+δHPP: 少なくとも部分的に水素化された再生可能な供給原料を含有する前処理工程b)からの流出物および場合によるパラフィン(εRPP)および水素(溶解したまたは溶解していない)δHPP;
F1+εRPP+δPP+R1: 場合によりパラフィン(εRPP)を含有する再生可能な供給原料の部分流および水素(溶解したあるいはしていない)(δPP)および第1の触媒帯域Z1に導入される再循環部分流R1;
F2+εRPP+δPP+R2: 場合によりパラフィン(εRPP)を含有する再生可能な供給原料の部分流および水素(溶解したあるいは溶解していない)(δPP)および第2の触媒帯域Z2に導入される再循環部分流R2等;
Fn+εRPP+Rn+δPP: 場合によりパラフィン(εRPP)を含有する再生可能な供給原料の部分流および水素(溶解したあるいは溶解していない)(δPP)および最終触媒帯域Znに導入される再循環部分流Rn;
R: 再循環全流:分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有する再循環液体フラクション;Rは、流れRLCと流れRPPに分けられる;
RLC: 触媒帯域への再循環流であって、パラフィン系炭化水素を含有する再循環液体フラクションRの少なくとも一部によって構成され、少なくとも第1の触媒帯域Z1に再循環させられる;RLCは、送られる触媒帯域の数に応じて、種々の流れR1〜Rnに分けられ得る;
RPP: パラフィン系炭化水素を含有する再循環液体フラクションRの少なくとも一部によって構成される流れであって、前処理帯域の上流に再循環させられる。
【0080】
全再循環率(RT)は、触媒帯域Z1〜Znに送られる再循環のパラフィンの全流と、前処理帯域(F)の通過後に触媒帯域Z1〜Znに送られる再生可能な供給原料の全流との間の重量比として定義される:
RT=(RLC+RPP)/F=R/F
全再循環率(RT)は、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.5未満であり、前記流れは、重量による流量として表される。
【0081】
第1の触媒帯域に向かう局所再循環率(RF1)は、第1の触媒帯域Z1に送られる再循環のパラフィンの流れ、すなわち、(R1+εRPP)と、第1の触媒帯域1に導入される供給原料の部分流(F1)との間の重量比として定義される:
RF1=(R1+εRPP)/F1
方法の始動段階の間を除いて、前処理帯域のレベルと水素化処理触媒帯域Z1−Znのレベルに再循環させられる希釈剤は、水素化処理セクションを出る液体炭化水素生成物の一部によって構成される。本明細書の以降において、前処理の入口および少なくとも1つの触媒帯域の入口に再循環させられるこの希釈剤は、全再循環流Rとも称され、その送達は、上記定義においてRで示される。方法の水素化処理セクションは、処理された供給原料を完全に転化させるように設計され、従って、生じた全再循環流Rは、酸素を含まない炭化水素の流れであり、このことは、その酸素含有量は、分析検出限界未満であり、実質的にパラフィンから構成されることを意味する。その結果、この全再循環流は、水素化処理反応に対して不活性であり、それ故に、供給原料の希釈剤としてのその役割を果たし、このことは、触媒帯域中の温度上昇が、その中で起こる反応の発熱性の性質によって制限されることを意味する。それにも関わらず、所与の容量について、すなわち、F0と示される、処理される供給原料の所与の質量流量について、その目的は、RLCと示される、触媒帯域に注入される液体再循環の量を制限して、前記触媒帯域に供給される流れの全流量を制限することである。このことは、オイルカット、例えば、ガスオイルの水素化処理のための反応器の寸法に匹敵する寸法を有する水素化処理反応器が用いられ得ること(これによりコストが制限される)、圧力降下が制限され得ること、および、反応器のチョーキング現象が回避され得ることを意味する。更に、水素化処理触媒を含む触媒床(単数または複数)の上流で採用される前処理帯域はまた、パラフィン系炭化水素(不活性)を含有する液体フラクションRの少なくとも一部によって構成される流れRPPを用い、これにより、無機不純物が、その沈殿および/または吸着によって除去される現象の加速が可能となる。
【0082】
供給原料を種々の触媒帯域に注入すること(質量流量(F1+R1+εRPP)が帯域Z1に注入され、F2+R2+εRPPが帯域Z2に注入され、以下同様である)が有利であり、これにより、増加する割合の供給原料が連続する触媒帯域内に注入されることを確実にすることが発見された。このことは、以下の関係として表され得る:
F1/FはF2/F以下であり、F2/FはF3/F以下である、以下同様であり、より一般的には、F(n−1)/FはFn/F以下であり、一般的な場合について、nは、採用される触媒帯域の数である。
【0083】
種々の連続する触媒帯域における、このような供給原料の分配の利点は、種々の触媒帯域の出口温度が上昇するプロファイルをたどるという事実にあり、このことは、下流の水素化異性化セクションの触媒活性を保持する目的で、前処理工程において除去されない、種々の帯域を出る生成物中の窒素の残量を可能な限り低減させるために、十分な温度が得られ得ることを意味する。
【0084】
本発明によると、流れR1は、第1の触媒帯域Z1の上流に再循環させられ、前記第1の触媒帯域Z1への入口に注入されるパラフィン流(R1+εRPP+δPP)と、Z1に導入される供給原料の部分流F1との間の重量比が10.0以上であるようにされ、前記流れは質量流として表される。この比は、局所再循環(RF1)とも称され、上記に定義されている。供給原料および液体再循環の流れをこのように配置して使用することは:
− 第1に、均質な温度が、反応器の全体的なセクションにおける、帯域Z1からの出口において得られ得る;
− 第2に、帯域Z1からの出口において十分な温度が得られ得る;このことは、水素化脱窒反応が誘発され得、生じた液体炭化水素中の窒素の残留量が、帯域Z1からの出口において、それ故に、低減され得ることを意味する;および
− より高い温度が、帯域Z1に続く触媒帯域(帯域Z2〜Zn)からの出口で得られ得る;窒素除去の割合(百分率)を高めるのに十分である;
ことを意味する。
【0085】
実際、第1の帯域への大きい局所再循環と結び付けられる増加する割合で供給原料を導入することは、増加する温度プロファイルを用いることによって、十分に高温の帯域が、触媒帯域の終わりに得られ、これにより、触媒帯域への入口において水素化脱酸素反応を促進するのに十分低い温度を維持しながら水素化脱窒が可能となることを意味する。局所再循環比が10以上であることは、比較的少量の供給原料が第1の帯域上に注入され、これにより、供給原料の残りを連続する触媒帯域により大きくかつ増加する割合で注入することが可能になることを意味する。連続する帯域に注入される供給原料の量の増加は、入口および出口の温度の増加するプロファイルが、種々の帯域に対して得られ得ることを意味する。
【0086】
第2の触媒帯域Z2に入る流れは、従って、以下の通りである:
− 帯域Z2の入口に注入される前処理帯域からの追加されたパラフィンを伴う供給原料の少なくとも一部(F2+εRPP+δPP);重量比F2/Fが重量比F1/F超であるようにされる;
− 帯域Z1の入口に注入され、ほとんどパラフィン系炭化水素のみから構成され、帯域Z1を通過した再循環液体R1;
− 帯域Z1中の供給原料の転化によって形成された、流れF1に相当する流出物;この流出物中に存在する液体炭化水素は、酸素を含まず、ほとんどパラフィン系炭化水素のみである;
− 場合による再循環液体R2;ほとんどパラフィン系炭化水素のみから構成され、触媒帯域への再循環流RLCの少なくとも一部からなる。
【0087】
始動段階の間、十分な量のパラフィン系生成物が、少なくとも1つの触媒帯域の入口への再循環のために利用可能となるまで、幅広い範囲の炭化水素、例えば、軽質ガスオイルが注入されてもよい。
【0088】
供給原料は、図1に示されるように、ライン(0)を介して供給され、同時に、水素リッチなガスは、ライン(4)を介して供給される。供給原料は、水素化処理の出口で生じたパラフィンの一部からの再循環流Rの一部からのパラフィン流RPPとの混合物で、前処理帯域に注入される。前処理帯域からの流れF+εRPP+δHPPは、種々の連続する触媒帯域に供給する、種々の流れF1+εRPP+δPP、F2+εRPP+δPP、...、Fn+εRPP+δPPに分配される。水素リッチなガス(流れ(4))は、同数の流れH1、H2、...、Hnの中に分配される。流れF1+εRPP+δPはガス流(H1)と混合され、流れF2+εRPP+δPはガス流(H)と混合され、n番目の触媒帯域まで以下同様である。
【0089】
前処理からの出口における流れF+εRPP+δHPPの温度は、300℃未満、好ましくは260℃未満、より好ましくは230℃未満の温度に達するように調節され得る。粘度の十分な低減、およびそれゆえに貯蔵タンクから水素化処理反応セクションへの適切な移動を可能とすることが十分でなければならない。同様に、供給原料と混合される水素リッチなガスの温度は、可及的に低い一方で、方法の操作に適合可能である。種々の触媒帯域を出る炭化水素生成物に適用されるクエンチ効果により温度を低減させるために低い温度で供給原料を水素と混合することは方法にとって有利であるからである。実際、水素リッチなガスを圧縮する際、温度が上昇するため、水素は圧縮後頻繁に冷却される。好ましくは水素リッチなガスの温度は、40〜100℃の範囲であり、例えば50℃である。
【0090】
触媒帯域Z1への入口に注入される流れ、すなわち、前処理帯域からの流出物(F1+εRPP++δHPP)と、再循環液体R1の温度は、注意深く調節されなければならない。
【0091】
触媒帯域Z1への入口に注入される前記流れの温度は、好ましくは、最低180℃、好ましくは230℃である。これにより、反応系列を誘発することが可能になる:水の形成に至る機構によるか、あるいは、COおよびCOの形成に至る脱炭酸/脱カルボニルの機構による、酸素を除去するための反応だけでなく、前記触媒帯域の少なくとも一部における水素化脱窒反応も。この入口温度は、供給原料の性質に応じて調節されてもよい。有利には、帯域Z1からの出口における温度は250℃超である。前記触媒帯域において採用される触媒の体積は、転化、すなわち、酸素の除去の程度が、前記帯域Z1からの出口において完全であるように適合させられる。
【0092】
触媒帯域Z1からの出口において、供給原料の第2の流れF2+εRPP+δPPが加えられ、これは、帯域Z1への入口において注入される供給原料の割合よりもより大きい供給原料の割合を表す。この供給原料の流れは、水素(H)リッチなガスの流れ、および場合による、流れRLCの少なくとも一部によって構成される液体再循環R2に加えられる。流れRLC自体は、分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有する液体フラクションRに由来する。混合物は、反応帯域に注入され、そこで、それは帯域Z1からの流出物と混合される。これにより、帯域Z1の出口で形成される生成物の温度を低減させることが可能になり、従って、帯域Z2への入口における温度は、一般的に、帯域Z1への入口における温度より高い。同じカテゴリーの反応が、帯域Z2および帯域Z1内で起こるが、より高い平均温度に起因して、帯域Z2における反応速度が僅かにより早い。
【0093】
同様の原則が、連続する触媒帯域において適用され、前処理された供給原料の流れ(Fn+εRPP+δPP)および場合による再循環流Rnは、先行する触媒帯域において形成された、完全に転化させられた生成物に加えられる。
【0094】
触媒帯域内で供給原料がパラフィン系炭化水素に転換される時、水素化および脱酸素の反応が非常に発熱性の高い反応であるため、帯域内の温度は上昇する。それ故に、温度は、触媒帯域の出口に向かって十分高温であり、水素化脱窒反応を行うことが可能である。少なくとも1つの触媒帯域の出口における温度は、好ましくは300℃超、より好ましくは320℃超である。
【0095】
前記流れ(F1),...,(Fn)のそれぞれに加えられる水素流と、供給原料質量流量(F1),...,(Fn)との間の比は、一連の触媒帯域について同じオーダーの大きさであり、水素の流量と供給原料の流量との間の比は、300〜1500Nm/m、好ましくは400〜900Nm/mである。
【0096】
場合により、供給原料を更に希釈する必要があると思われる場合、触媒帯域間に補完の液体流を注入することが可能である。
【0097】
好ましい変形例において、供給原料および水素の部分流を調節するための弁が触媒帯域の入口および出口における温度によって制御されて、操作の間、供給原料の部分流および水素流、ならびに液体再循環流R1〜Rnを調節するようにしてもよい。この方法で、触媒帯域への入口および触媒帯域内における所望の温度が維持される。同様に、温度は、前処理の後の供給原料(F+εRPP+δHPP)および/または注入される水素および/または反応器システム中の再循環の温度を変えることによって制御されてもよい。
【0098】
本発明による方法のための水素化処理反応器は、可変数nの触媒帯域を含んでもよい。好ましくは、nは、3〜10、好ましくは3〜6である。用語「触媒帯域」は、触媒床を意味する。各触媒帯域は、同一または異なる、1つ以上の触媒の層を含んでもよく、場合により不活性な相によって補足されてもよい。触媒帯域は、同一または異なる触媒を含んでいてもよい。
【0099】
本方法の水素化処理セクションにおいて用いられる触媒のタイプは、当該技術において周知である。
【0100】
硫化物の形態の活性な触媒、および、一般的に制限された硫黄含有量(一般に100重量ppm未満、通常50重量ppm未満)を有する処理された未精製の供給原料に関し、硫黄含有化合物、例えば、ジメチルジスルフィド(dimethyldisulphide:DMDS)を一式の供給原料流に加えることは、十分である;水素化処理セクションにおける温度条件下、それは、HSおよびメタンへと分解する。このデバイスは、本方法において用いられる水素化処理触媒がそれらの硫化物の形態で維持され、それ故に、サイクル中、十分な触媒活性が維持され得ることを意味する。推奨される注入DMDS含有量は、供給原料に対して硫黄当量の重量で10〜50ppmの範囲である。実際、供給原料に対して硫黄当量の重量で50ppmに相当するDMDSを加えることは、サイクルにわたって触媒活性を保持するのに十分である。
【0101】
本発明による方法の水素化処理セクションにおいて用いられる触媒は、下記の触媒に関連するものであってよい。
【0102】
水素化処理触媒は、元素周期律表の第6、8、9、および10族からの1種以上の元素、好ましくは、ニッケル、モリブデン、タングステン、および/またはコバルトを含む硫化触媒である。
【0103】
水素化処理触媒は、好ましくは固定床において用いられ、有利には、単独でまたは混合物として用いられる、第VIII族および/または第VIB族からの少なくとも1種の金属を含む水素化脱水素機能(function)と、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土、およびこれら鉱物の少なくとも2種の混合物によって形成される群から選択される担体とを含む水素化処理触媒である。前記担体はまた、有利には、他の化合物、例えば、酸化ホウ素、ジルコニア、酸化チタン、および無水リン酸から形成される群から選択される酸化物を含んでもよい。好ましい担体は、アルミナ担体であり、非常に好ましくはη、δ、またはγアルミナである。
【0104】
前記触媒は、有利には、第VIII族からの金属を含む触媒であり、この第VIII族からの金属は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選択され、単独でまたは混合物として用いてられ、好ましくは、第VIB族からの少なくとも1種の金属と関連し、この第VIB族金属は、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選択され、単独でまたは混合物として用いられる。好ましくは、NiMoタイプの触媒が用いられる。
【0105】
第VIII族からの金属の酸化物、好ましくはニッケル酸化物の量は、有利には酸化ニッケル(NiO)の重量で0.5〜10%、好ましくは1〜5重量%であり、第VIB族からの金属の酸化物、好ましくは三酸化モリブデンの量は、有利には酸化モリブデン(MoO)の重量で1〜30%、好ましくは5〜25重量%であり、割合(%)は、全触媒質量に対する重量%として表される。
【0106】
用いられる触媒中の第VIB族および第VIII族からの金属の酸化物の全量は、全触媒質量に対して、有利には5〜40重量%、好ましくは6〜30重量%である。
【0107】
金属酸化物として表される、第VIB族からの金属(単数または複数)の、第VIII族からの金属(単数または複数)に対する重量比は、有利には20〜1、好ましくは10〜2である。
【0108】
本発明による方法の水素化処理工程において用いられる前記触媒は、有利には、脂肪鎖の炭素原子の数を維持する水素化、すなわち、水素化脱酸素経路の方にできるだけ反応の選択性を方向づけて、ガスオイルおよび/またはケロセンの蒸留範囲内の炭化水素の収率を最大にするために強い水素化力によって特徴付けられなければならない。この理由から、比較的低い温度で操作することが好ましい。水素化機能を最大にすることはまた、触媒性能の安定性を劣化させることになるであろう、コークスの形成に至るポリマー化および/または縮合反応が制限されることを意味する。
【0109】
本発明による方法の水素化処理工程において用いられる前記触媒は、有利には、単独でまたは混合物として用いられる、リンおよびホウ素から選択されるドーピング元素を含有してもよい。前記ドーピング元素は、マトリクス中に導入されてもよく、好ましくは、担体上に沈着させられてもよい。ケイ素を、単独で、あるいは、リンおよび/またはホウ素および/またはフッ素と共に、担体上に沈着させることも可能である。
【0110】
前記ドーピング元素の酸化物の重量による量は、有利には20%未満、好ましくは10%未満であり、それは、有利には、全触媒質量に対して少なくとも0.001%である。
【0111】
好ましい変形例において、用いられる触媒は、特許出願FR 2 943 071に記載されたようなものであり、該特許出願において、水素化脱酸素反応に対して高い選択性を有する触媒が記載されている。
【0112】
別の好ましい変形例によると、特許出願EP 2 210 663に記載されたような触媒の使用がなされており、該特許出願において、第VIB族の硫化物からなる活性相を含む担持型またはバルクの触媒が扱われており、ここで第VIB族元素はモリブデンである。
【0113】
本発明の背景は、本発明による方法の水素化処理工程において、同時にあるいは連続して、単一の触媒または複数の異なる触媒を触媒帯域において使用することも包含する。
【0114】
本発明に関連して、従って、再生可能な資源を起源とする供給原料の全体的な転化率、すなわち、一緒に水素化脱酸素および脱炭酸/脱カルボニルによる転化率を維持することは可能であり、転化率は有利には90%以上である;好ましくは、供給原料の全体的な転化率は、100%に等しく、同時に、水素化脱酸素生成物の収率または水素化脱酸素による転化率を最大にし、該水素化脱酸素は、本発明によると、50%以上で留まる。
【0115】
(上記のような)HDOに対して高い選択性を有する触媒が用いられる場合、水素化脱酸素による転化率は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上である。この場合、再生可能な資源からの供給原料からの脱炭酸/脱カルボニルによる転化率または分解/脱カルボニル生成物収率は、有利には最大10%、好ましくは最大5%、より好ましくは最大4%に制限される。
【0116】
水素化脱酸素反応により、水素の消費によって水が形成され、初期の脂肪酸鎖と同数の炭素原子を有する炭化水素が形成されるに至る。水素化脱酸素反応からの流出物は、偶数の炭化水素、例えばC14〜C24の炭化水素を含み、脱炭酸/脱カルボニル反応によって得られる奇数の炭化水素、例えばC15〜C23と比較して、大部分において幅広い。水素化脱酸素経路に対する選択性は、燃料に品質向上され得る液体フラクション中の、偶数の炭素原子を含有する炭化水素の全収率と、奇数の炭素原子を含有する炭化水素の全収率とを測定することによって示される。反応選択性(HDO/脱炭酸/脱カルボニル)へのアクセスを提供する、偶数および奇数の炭化水素の収率は、燃料に品質向上され得る、反応からの液体流出物のガスクロマトグラフィー分析によって得られる。ガスクロマトグラフィー分析技術は、当業者に公知の方法である。
【0117】
特に断りのない限り、本発明による水素化処理方法は、一般的に、例えば、特許EP 1 741 768に記載されたような、当該技術において公知の水素化処理条件下で操作される。全圧は、有利には2〜15MPa、好ましくは5〜10MPaである。
【0118】
本発明によると、水素は過剰に用いられる。本発明による方法において、水素の流量と、未精製の供給原料の流量との間の比は、有利には300〜1500Nm/mの範囲、好ましくは600〜900Nm/mの範囲である。
【0119】
本発明による方法の満足な操作によって、全体的なHSV(処理された未精製の供給原料の全体積流量と、水素化処理セクション中の触媒の全体積との間の比として定義される):有利には0.1〜5.0h−1、好ましくは0.1〜1.5h−1が得られる。
【0120】
水素化処理セクションの種々の帯域において使用される温度は、可能な限り、不所望の反応、例えば:
− 供給原料のポリマー化反応(これにより、コークスの沈着、および、それ故に、触媒の失活に至る);
− 脱炭酸/脱カルボニル反応(これにより、中間留分収率の損失に至る);
を回避し、同時に、
酸素含有化合物の除去および窒素含有化合物の除去の両方に関して、供給原料の全転化を行うために、注意深く制御されなければならない。一般に、本発明による方法は、200〜400℃の温度で操作される。第1の触媒帯域への大幅な再循環と結び付けられる、増加する割合で供給原料を導入することは、増加する温度プロファイルが、帯域への入口において、さらには帯域からの出口において得られ得ることを意味する。
【0121】
帯域Z1への入口における温度は、好ましくは180℃超、好ましくは200℃超でなければならない。次の触媒帯域への入口における温度は、先行する帯域への入口における温度より高くなければならず、一般的に300℃未満、好ましくは280℃未満である。
【0122】
少なくとも1つの触媒帯域からの出口における温度は、好ましくは300℃超、好ましくは320℃超である。各触媒帯域からの出口における温度は、コーキングによる触媒の失活を制限するために、好ましくは400℃未満、より好ましくは380℃未満でなければならない。
【0123】
本発明による方法は、当業者に公知の固定トリックルベッド(trickle bed)反応器を用いる。試剤(供給原料および水素)は、反応器の頂部から底部への下降並流として反応器に導入される。そのような反応器の例は、文献US 7,070,745に記載されている。
【0124】
各触媒帯域の間で、補充水素を注入して、クエンチ効果から利益を得、かつ、次の触媒帯域への入口において所望の温度を得ることが可能である。従って、反応器のセクション全体にわたって、かつ、全ての触媒帯域において、最適温度の均質性を確実なものとするために、各触媒帯域の間にクエンチボックスが取り付けられてもよい。
【0125】
同様に、反応器のセクション全体にわたって、かつ全ての触媒帯域において、液体供給原料の均質な供給を保証するために分配器が各触媒帯域の間に取り付けられてもよい。
【0126】
本発明による方法の利点の1つは、供給原料の起源に応じたその高い柔軟性にある。異なる供給原料、特に炭化水素鎖の種々の不飽和度において異なる供給原料が、酸素の除去(これにより、次の帯域における未精製の供給原料の希釈の最大の効率に至る)および窒素の除去(これにより、下流の水素化異性化工程のより良好な機能に至る)の両方に関し、完全に転化させられてもよい。
【0127】
場合により、本発明による方法はまた、オイルカット、例えば、ガスオイル、ケロセン、さらには石油精製方法からのガソリンと混合された再生可能な資源からの供給原料を転化させてもよい。好ましくは、オイルカットは、直留ガスオイルおよび/またはケロセン、転化方法からのおよびガスオイルおよび/またはケロセン、あるいはそれらの任意の混合物から形成される群から選択される中間留分タイプの油供給原料である。
【0128】
好ましくは、オイルカットは、直留常圧ガスオイル、転化方法からのガスオイル、例えば、コーキングに由来するようなもの、例えば、固定床水素化転化に由来するもの(例えば、重質供給原料を扱い、本出願人によって開発されたHYVAHL(登録商標)方法に由来するもの)または重質供給原料についての沸騰床水素化処理方法に由来するもの(例えば、H-OIL(登録商標)方法に由来するようなもの)、または脱アスファルト直留真空蒸留残渣からの溶媒脱アスファルト化油(例えば、プロパン、ブタンまたはペンタンを用いる)または重質供給原料転化方法、例えば、HYVAHL(登録商標)またはH-OIL(登録商標)に由来する残渣によって形成される群から選択される。供給原料はまた、有利には、これらの種々のフラクションを混合することによって形成されてもよい。供給原料はまた、有利には、蒸留プロファイルが約100℃〜約370℃である、軽質ガスオイルまたはケロセンの留分を含有していてもよい。それらはまた、有利には、潤滑油の製造に関連して得られる芳香族の抽出物およびパラフィンを含有してもよい。
【0129】
この場合、水素化処理セクションの第1の触媒帯域に送られる液体再循環の量は、大幅に低減させられるか、さらにはなしですまされてもよい。なぜなら、油供給原料のこれらの流れが、水素を用いるそれらの処理に由来し、相当の量の酸素を含む、再生可能な起源の供給原料が用いられる場合より少ない熱が放出されるからである。
【0130】
(分離)
本発明による方法の工程d)によると、工程c)の最終触媒帯域からのパラフィン系炭化水素を含有する流出物は、少なくとも1回の分離工程に付され、この分離工程によって、少なくとも1つのガスフラクションと、パラフィン系炭化水素を含有する少なくとも1つの液体フラクションの分離が可能となる。ガスフラクションは、水素、CO、CO、HSおよび軽質ガスを含有する。前記ガスフラクションは、有利には、精製工程を経て、これにより、水素リッチなガス流が回収される。前記精製は、有利には、当業者に公知のあらゆる手段によって、好ましくは圧力スウィング吸着(pressure swing adsorption:PSA)によって実施される。前記水素リッチなガス流は、次いで、有利には、精製所あるいは当業者に公知のあらゆる水素製造方法から加えられた補足的な水素を有し得る。水素リッチなガスの前記流れは、次いで、水素化処理工程c)に再循環させられる少なくとも1つの水素リッチなガス流と、HPリッチなガスの少なくとも1つの流れとに分けられる。HPリッチなガスの前記流れは、次いで再循環させられて、本発明による方法の工程a)より流れF0およびRPPと混合される。
【0131】
工程c)の最終触媒帯域からのパラフィン系炭化水素を含有する前記流出物は、ライン(5)において抜き出される。
【0132】
第1の実施形態によると、分離工程d)は、145〜280℃の温度で圧力低減を伴わず作動する高温高圧分離器(S)によって、単一の工程において行われ得る。
【0133】
第2の実施形態(図1に示されない)によると、分離工程d)は、圧力低減を伴わない、二工程での分離を含み、第1の分離は、高温分離器中、145〜280℃で行われ、第2の分離は、図示されない低温分離器中、25〜100℃で行われる。好ましい実施形態において、第2の分離工程から得られるフラクションの凝縮物は、図示されない脱ガス容器に導入される。
【0134】
好ましくは、気/液分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有する前記液体フラクションは、次いで、水素化脱酸素反応の間に形成された残りの水の少なくとも一部、好ましくは全ての分離を経る(図示されない)。
【0135】
この工程の目的は、パラフィン系炭化水素を含有する液体フラクションから水を分離することである。用語「水の除去」は、水素化脱酸素(HDO)反応によって生じた水の除去を意味する。多かれ少なかれの完全な水の除去は、有利には、本発明による方法の任意の次の工程において用いられる水素化異性化触媒の水に対する耐久性次第である。水は、当業者に公知の任意の方法および技術を用いて、例えば、乾燥、乾燥剤を通過させること、フラッシュ、溶媒抽出、蒸留、またはデカンテーションによって、あるいは、これらの方法の少なくとも2つを組み合わせることによって、除去されてもよい。
【0136】
場合によっては、種々の汚染物質の精製のための最終工程は、当業者に公知の方法を用いて、例えば、水蒸気ストリッピングまたは窒素ストリッピングまたはコアレッセンス(coalescence)によって、および/または、質量捕捉(capture mass)によって行われてよい。
【0137】
本発明による方法の工程e)によると、パラフィン系炭化水素を含有する前記液体フラクションの少なくとも一部Rは、少なくとも1つの流れRLCおよび上流の工程a)で全流F0と混合される前記再循環流RPPに分けられ、前記流れRLCは、反応器中の触媒帯域の数n以下である少なくとも所定数の異なる部分流R1〜Rnに分けられ、前記流れR1〜Rnは、触媒帯域1〜nの上流に再循環させられ、第1の触媒帯域に送られるパラフィン系炭化水素流(R1+ε1RPP)と、第1の触媒帯域に導入される供給原料の部分流F1との間の重量比は、10以下であるようにされる。
【0138】
本発明による方法の工程a)に導入される流れRPPの、全再循環流Rに対する割合は、質量流の比RPP/Rが、有利には0.1〜0.9、好ましくは0.15〜0.8であるようにされる。
【0139】
分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有する液体フラクションの少なくとも別の部分は、有利には再循環させられない。
【0140】
好ましくは、少なくとも1つの触媒帯域中、あるいは、前処理工程の上流の全新鮮供給原料流F0との混合物中に再循環させられない、分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有する液体フラクションの部分は、ガスオイルプールか、あるいは、任意の水素化異性化(HIS)セクション(6)のいずれかに直接送られ、これにより、高品質のケロセンおよび/またはガスオイルのベース、特に、良好な冷温特性を有するケロセンベースが製造される。実際、本発明による方法の分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有する液体フラクションの前記再循環させられない部分は、水素化異性化セクションの触媒活性を維持するように十分に脱窒素される。水素化処理と水素化異性化の間の水素化脱窒反応器は不必要である。
【0141】
(水素化異性化)
好ましい実施形態によると、分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有し、かつ再循環させられない液体フラクションの少なくとも一部は、水素化異性化触媒の存在下で水素化異性化させられる。任意の水素化異性化工程は、有利には、操作条件下、当業者に公知の水素化異性化触媒の存在下で実施される。前記水素化異性化工程において用いられる操作条件および触媒は、好ましくは、FR 2 943 071に記載されたものである。
【0142】
水素化異性化させられた流出物は、次いで、有利には、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、1回以上の分離を経る。
【0143】
前記分離工程(単数または複数)は、有利には、液体からガスを分離するフラッシュ分離および/または常圧蒸留を含み得る。好ましくは、分離工程(単数または複数)は、常圧蒸留を含む。この工程の目的は、液体からガスを分離すること、特に、軽質化合物、例えば、C−C留分、ガソリン留分(150℃)、およびケロセンおよび/またはガスオイルを含有する少なくとも1種の中間留分(150℃)を含有してもよい水素リッチなガスを回収することである。
【0144】
ガソリン(または、ナフサ)留分を品質向上させることは、本発明の目的ではないが、この留分は、有利には、水素製造のための、あるいは、触媒改質のための水蒸気分解装置に送られてもよい。これにより生じた水素は、水素化処理および/または任意の水素化異性化工程に注入されてもよい。
【0145】
所望の燃料ベースを表す、中間蒸留物留分は、ガスオイルおよびケロセンを含有する留分を含んでよく、あるいは、その2種の留分は別個に回収されてもよい。これらの生成物は、再生可能な資源をベースとし、硫黄含有化合物を含有しない。
【0146】
中間蒸留物留分(単数または複数)の少なくとも一部は、有利には、水素化処理工程に再循環させられてもよい。
【0147】
1つの変形例において、150℃留分の少なくとも一部は、水素化異性化工程に再循環させられてもよい。このフラクションは、従って、もう一度異性化を経、このことは、前記フラクションの冷温特性が向上され得ることを意味する。
【0148】
別の変形例において、300℃フラクションの少なくとも一部は、水素化異性化工程に再循環させられてもよい。従って、このフラクションは、もう一度異性化を経、このことは、この留分がより軽質の生成物に品質向上され得、冷温特性が向上され得ることを意味する。
【0149】
別の変形例において、150℃留分の少なくとも一部は、水素化処理工程に再循環させられてもよい。
【0150】
本発明による方法の分離工程d)および/または任意の水素化異性化工程の間に分離された水素含有ガスは、必要な場合、有利には、少なくとも部分的に処理されて、その軽質化合物含有量(C〜C)が低減させられる。同様に、それは、有利には、1回以上の中間の精製処理、好ましくは少なくとも1種のアミンを用いる少なくとも1回の洗浄を経た後、好ましくは、メタネーションおよび/または圧力スウィング吸着(PSA)による分離が行われ、その後に再循環させられる。
【0151】
有利には、再循環水素、好ましくは精製されたものは、本発明による水素化脱酸素工程および/または任意の水素化異性化工程に入る供給原料と共にか、あるいは、本発明による水素化脱酸素触媒の床および/または水素化異性化触媒の床の間のクエンチ水素の形態でかのいずれかで、導入されてもよい。
【0152】
再循環ガスに所定量の硫黄含有化合物(例えば、DMDS(ジメチルジスルフィド))を補足することも有利であり、これにより、熱分解の際に硫化水素(HS)が生じる。このデバイスは、必要な場合、水素化処理工程および/または任意の水素化異性化工程(活性触媒が硫化物の形態である場合)の触媒を硫化条件に維持するために用いられ得る。
【0153】
(実施例1(本発明に合致しない))
実施例1において、前処理工程は行われなかった。
【0154】
処理されるべき供給原料は、一部精製されたジャトロファ油であり、その特徴を表1aに示す。
【0155】
【表1a】

【0156】
この供給原料100g/h(F=Fo)を、事前の前処理工程なしで、4つの触媒床で構成された水素化処理反応器中で処理することとした。
【0157】
各触媒帯域は、1つの触媒床によって構成されていた。用いた触媒は、水素化処理工程の3つの触媒帯域において同一であり、4重量%のNiO、21重量%のMoOおよび5重量%のPをガンマアルミナ上に担持させられて含んでいた。前記触媒のNi/Mo原子比は0.4であった。
【0158】
担持触媒を、溶液中の酸化物前駆体の乾式含浸によって調製し、次いで、試験前に現場で硫化した。その際の温度は350℃であり、ジメチルジスルフィド(DMDS)からの2重量%の硫黄で補足された直留ガスオイル供給原料を用いた。圧力下の装置における現場硫化の後、表1aに記載されたナタネ油によって構成される再生可能な資源からの供給原料を、3つの触媒帯域のそれぞれに送った。
【0159】
触媒を硫化状態に維持するために、DMDSの形態の硫黄50重量ppmを、供給原料に加えた。反応条件下、DMDSは完全に分解し、メタンとHSを形成した。
【0160】
用いられかつ未精製の供給原料と共に帯域Z1に注入された再循環液体の量は、100g/h(R)であり、これにより、全質量再循環比が1.0となった。この再循環は、全体として、第1の触媒帯域Z1に送られた(R1=RおよびR2=R3=0)。
【0161】
全操作圧力は、5相対MPaであった。90体積%の水素、4体積%のメタン、および6体積%のプロパンを含有する水素リッチなガスの流れを、各触媒帯域への入口における、H/未精製の供給原料比が700Nm/mであるようにした流量で、供給原料の流れのそれぞれと混合した。
【0162】
表1bは、3つの供給原料流のそれぞれについての流量、並びに、3つの触媒帯域のそれぞれについての希釈剤/供給原料比を示す。
【0163】
【表1b】

【0164】
実験は、この場合、液体再循環を第1の水素化処理帯域Z1の入口に送ることによって行われ、前処理工程はなく、HSVは油供給原料上で1h−1であった。生じた炭化水素は、水素化処理セクションを出る際に、相当な窒素含有量(5重量ppm)を有していた。
【0165】
表1cは、水素化処理反応器中の圧力損失についての経時変化を示す。
【0166】
【表1c】

【0167】
圧力損失を測定は、床の入口と出口に配置された2つの計器の圧力表示における差異によって行われた。
【0168】
水素化処理反応器において測定された圧力損失は、試験中継続的に増加し、それは800時間後、10相対バールの値を超えるに至り、この時点で試験を中断せざるを得なかった。この圧力損失の増加は、反応器中のリン脂質の分解からの金属沈着物の蓄積によるものであった。工業規模の装置において、この現象によって、水素化処理反応器のより低いサイクルタイムに至るであろう。
【0169】
次いで、事前に生じていた液体炭化水素を、NiW/SiOAlを含む水素化異性化触媒100cmを含有する反応器に注入した。
【0170】
炭化水素を、100cm/gの体積流量で、あるいは、1.0h−1の水素化異性化セクション中のHSVで注入した。
【0171】
水素化異性化工程を触媒固定床上で行った。その際、5相対MPaの圧力、330℃の温度、高純度水素の送達を用い、水素の体積流量と液体炭化水素の体積流量との間の比が700Nm/mになるようにした。ガス出口(C4)において、ナフサ留分(C5−150℃)とケロセン留分(150℃)とを得た。表1dは、このケロセン留分の特徴を示す。このケロセン留分は、常圧蒸留終留点D86(終留点>300℃)、あるいは、凝固点(最大−40℃での特定された値に対して−5℃)の観点で、ASTM D7566の規格を満たさない。
【0172】
【表1d】

【0173】
(実施例2(本発明に合致する))
前の実施例と同様の供給原料である半精製のジャトロファ油を、同一の供給原料流:Fo=F=100g/hで処理した。触媒およびその調製は実施例1と同一であった。
【0174】
用いた液体再循環Rの量は、100g/hであった。この再循環を、分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有するRLCと、20g/hの流れRPPとに分けた。流れRLCをその全体として、第1の触媒帯域Z1に送達し、その流量は80g/hであった。流れRPPを、ナタネ油の供給原料流F0と混合した。比RPP/F0は、従って0.2であった。90体積%の水素(4体積%のメタンおよび6体積%のプロパン)を含有する、水素リッチなガスの流れHPを、比HP/F0が930NL/Lであるようにし、油供給原料の流れF0およびパラフィンの流れRPPと共に注入した。
【0175】
ジャトロファ油を、混合器中でRPP流およびHP流と混合し、混合物を165℃の温度まで加熱した。この混合物を、前処理帯域に導入し、ここで、前記混合物は、4重量%のNiO、21重量%のMoO、および5重量%のPをガンマアルミナ上に担持させて含有する硫化触媒の固定床70cmの中を流れた。前記触媒は0.4の原子比Ni/Moを有しており、球体に成形された。床の空隙率は0.46であり、径は3〜6mmであった。アルミナは、水銀圧入によって測定されるマクロ孔性の容積、すなわち、平均径が500Å超である細孔の容積を有し、これは0.35mL/gに等しく、全細孔容積は、1.2mL/gであり、SBETで表される比表面積は140m/gであった。
【0176】
この前処理工程の終了時に、前処理されかつ事前水素化された油の流れFと、パラフィン系炭化水素を含有する流れRPPと、水素および未転化のガスを含有するガス流HRPPの完全な分離を行った。従って、ε=α=δ=0であった。これらの流れRPPおよびHPPを、方法のフローシートの構成(i)および(j)に従って、第1の触媒帯域に送られる再循環流RLCと混合した。
【0177】
前処理の終了時に、油流Fの確認された特徴は、表2aに示されたようなものであった。
【0178】
【表2a】

【0179】
供給原料のトリグリセリドの不飽和結合の水素化率、すなわち、前記供給原料の飽和を、標準NF ISO 3961に従ってヨウ素価を測定することによってモニタリングした。したがって、前処理によって、ジャトロファ油中に含まれるトリグリセリドの不飽和結合の少なくとも一部の水素化が可能となった。
【0180】
前処理によって、リンと油中に存在する主要な元素(カルシウム、マグネシウム、およびナトリウム)の同時の除去が可能となる。この工程により、所定の窒素化合物の除去に起因して、出発油の窒素含有量の大幅な低減も可能となる(初期の29ppmのかわりに13ppm)。
【0181】
水素化処理セクションの操作条件は、実施例1で用いたものと同一であった。
【0182】
全質量再循環比RT=(RLC+RPP)/F0=R/F(構成(i))は、実施例1と同一であり、1.0に等しかった。
【0183】
種々の接触水素化処理帯域にわたる供給原料の分布は、実施例1で採用したものと同一であった。表2bは、種々の流量、特に、接触水素化処理帯域に供給する3つの流れのそれぞれの流量、および、3つの触媒帯域のそれぞれについての希釈剤/供給原料比を示す。
【0184】
【表2b】

【0185】
実施例1と比較して、前処理セクションによって、水素化処理セクションに供給する油の流れの窒素含有量の非常に大幅な降下が可能となり、また、酸素および窒素を含まない炭化水素流を出口において得ることが可能となった(窒素含有量は、検出限界未満、または0.3重量ppm未満である)。
【0186】
表2cは、水素化処理セクションにおける圧力損失の経時変化を示す。
【0187】
【表2c】

【0188】
圧力損失の測定は、実施例1と同様に行った。
【0189】
800時間の間に水素化処理試験を行い、その間に、反応器中の圧力損失の大幅な増加は観察されなかった。これは、反応器に供給する油の流れが金属を含まず、これにより、固体金属沈着物の蓄積を通した反応器中の進行性の閉塞が除去されるという事実によるものであった。
【0190】
この炭化水素を、次いで、水素化異性化反応器中で、実施例1に記載したものと厳密に同一の操作条件下で処理した。その後に、ガス出口(C4)において、ナフサ留分(C5−150℃)およびケロセン留分(150℃)を得た。
【0191】
表2dは、これらの条件下で生じたケロセン留分の特徴を示す。
【0192】
【表2d】

【0193】
本発明に従って生じたケロセン留分の凝固点が、最大−40℃の凝固点を要求するASTM D7566の規格を満たすことが理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明の方法を説明するフローシートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能な資源を起源とする供給原料を水素化処理して、パラフィン系炭化水素を製造する方法であり、水素化処理工程c)は、理論的水素消費量を超過する水素の存在下、および水素化処理条件下に、直列に配置されかつ水素化処理触媒を含む複数の触媒帯域を有する固定床反応器において行われる、方法であって、少なくとも:
a) 全供給原料流F0を、分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有する液体フラクションRの少なくとも一部によって構成される流れRPPおよび水素リッチなガス流HPと混合し、前記混合物を、140〜250℃の温度にする、工程a);
b) 前記混合物を、前処理帯域に導入し、前処理帯域において、前記混合物流は、固定床と称される粒子床からなる多孔性媒体を介して起こり、前記粒子床は、固体触媒材料からなり、該固体触媒材料は、固体非触媒材料と混合されてもされなくてもよく、前記固定床は、0.25〜0.8の空隙率を有する、前処理工程b);
c) 前処理工程b)に由来する水素化処理されるべき少なくとも1つの流出物(F+εRPP+δHPP)(εおよびδは、0〜1である)を、反応器中の触媒帯域の数nに等しい、少なくとも所定数の異なる部分流(F1+εRPP+δPP)〜(Fn+εRPP+δPP)に分け、第1の部分流(F1+εRPP+δPP)を第1の触媒帯域に注入し、第2の部分流(F2+εRPP+δPP)を第2の触媒帯域に注入し、nが2超である場合、以下同様の注入を行い;
種々の部分流を、増加する割合で、F1/FがF2/F以下であり、F2/FがF3/F以下であり、F(n−1)F/FがFn/F以下となるまで以下同様であるようにして、連続する触媒帯域に注入し、これによりパラフィン系炭化水素を含有する流出物が生じる、水素化処理工程c);
d) パラフィン系炭化水素を含有する前記流出物を、少なくとも1回の分離工程に付し、該分離工程は、少なくとも1つのガスフラクションと、パラフィン系炭化水素を含有する少なくとも1つの液体フラクションの分離を可能とする、分離工程d);
e) 工程b)からのパラフィン系炭化水素を含有する前記液体フラクションの少なくとも一部Rを、少なくとも1つの流れRLCと、上流の工程a)で全供給原料流F0と混合される前記再循環流RPPとに分け、前記流れRLCを、反応器中の触媒帯域の数n以下の、少なくとも所定数の異なる部分流R1−Rnに分け、前記流れR1−Rnを、触媒帯域1−nの上流に再循環させ、第1の触媒帯域に送られるパラフィン系炭化水素流(R1+εRPP)と、第1の触媒帯域に導入される供給原料の部分流F1との間の重量比が10以上であるようにする、工程e)
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
再生可能な資源を起源とする前記供給原料は、トリグリセリドおよび/または遊離脂肪酸および/またはエステルを含有する、植物または動物起源の油脂、またはそのような供給原料の混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
本発明による方法の工程a)において導入される流れRPPの、全新鮮供給原料流F0に対する割合は、質量流の比RPP/F0が0.1〜5であるようにされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
質量流の比RPP/F0は、0.5〜3である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水素リッチなガス流HPは、場合によっては新鮮な水素との混合物での精製工程を経た、分離工程d)からのガスフラクションの少なくとも一部からなる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
工程a)において導入される流れHPの、全新鮮供給原料流F0に対する割合は、水素リッチな流れの標準体積測定送達の、新鮮供給原料の体積測定送達に対する比HP/F0が100〜1500NL/Lであるようにされる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前処理工程b)において用いられる触媒固体材料は、周期律表の第6、8、9、および10族からの1種以上の元素と、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土、「珪藻土」タイプの担体、およびこれら鉱物の少なくとも2種の混合物から構成される群から選択される担体とを含む触媒の中から選択される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前処理工程b)において用いられる前記非触媒固体材料は、アルミナ、シリカ、活性アルミナ、シリカ−アルミナ、金属酸化物、および非金属酸化物の中から選択される多孔性耐火性酸化物の中から、および、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス、または複合材料セラミックス、あるいは、炭化ケイ素、活性炭、アルミン酸カルシウム、金属、およびグラファイトのような材料、粘土、およびマグネシアの中から選択される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記前処理工程d)は、前処理帯域に加えて、分離帯域を含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前処理帯域からの流出物を分離帯域に導入し、トリグリセリドを含有する、水素化されるべき少なくとも1つの流出物(F+εRPP+δHPP)(εおよびδは0〜1である)と、少なくとも1つのパラフィンリッチな液体流出物((1−ε)RPP+αHPP)と、少なくとも1つの水素リッチなガス流出物(1−δ−α)HPP((α+δ)は0〜1である)とを分離する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
全再循環比(RT)は、1.0未満である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記工程a)に導入される流れRPPの、全再循環流Rに対する割合は、質量流の比RPP/Rが、0.1〜0.9であるようにされる、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
再生可能な資源からの前記供給原料を、油精製方法からの、ガスオイル、ケロセン、およびガソリンの中から選択されるオイルカットとの混合物で処理する、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
分離工程d)からのパラフィン系炭化水素を含有し、かつ、再循環させられない液体フラクションの少なくとも一部を、水素化異性化触媒の存在下で水素化異性化させる、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−100501(P2013−100501A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−244024(P2012−244024)
【出願日】平成24年11月6日(2012.11.6)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】