説明

水素化ポリゲルマシランを製造するための方法および水素化ポリゲルマシラン

本発明は、水素化ポリゲルマシランを純粋な化合物または化合物の混合物として製造するための方法であって、ハロゲン化ポリゲルマシランが水素化される方法に関する。本発明はまた、水素化ポリゲルマシラン、該水素化ポリゲルマシランから製造されるゲルマニウム層、およびかかる層を製造するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水素化ポリゲルマシランを製造するための方法、および純粋な化合物または化合物の混合物としての水素化ポリゲルマシランも詳述される。
【背景技術】
【0002】
ポリゲルマシランを調製するための公知の方法は、出発物質としてGeH4および短鎖シランを用いて実施され、まず、結果として以下を伴う。健康に有害であり取り扱いが困難である物質を扱う必要があることや、特定のポリゲルマシランしか達成可能でないこと、通常多段階の合成が必要とされることや、およびこれらの合成において、特に長鎖ポリゲルマシランの得られる収率がしばしば低いことである。特に、目標とされる方法において、より長い鎖の化合物を調製することがこれまで可能ではなかった。
【0003】
ポリゲルマシランは、公報テキスト(例えば、特許文献1参照)に詳述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0078252A1号
【特許文献2】国際公開第2010/031390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、公知の方法と比較して改善された収率を示す、水素化ポリゲルマシランを調製するための簡潔化された方法を提供すること、および改善された特性を有する水素化ポリゲルマシランも提供することである。これらの目的は、請求項1に記載の方法によって、および請求項8に記載の水素化ポリゲルマシランによっても達成される。水素化ポリゲルマシランによって調製されるケイ素−ゲルマニウム層、ケイ素−ゲルマニウム層を製造するための方法、ならびに水素化ポリゲルマシランを調製するための方法および水素化ポリゲルマシランのさらなる実施形態がさらなる請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水素化ポリゲルマシランを純粋な化合物または化合物の混合物として調製するための方法であって、ハロゲン化ポリゲルマシランが水素化される方法が詳述される。水素化ポリゲルマシランは、2個のゲルマニウム原子間および/または2個のケイ素原子間および/または1個のゲルマニウム原子と1個のケイ素原子との間のそれぞれに少なくとも1個の直接結合を有し、例えば、純粋な化合物または化合物の混合物を意味し得る。水素化ポリゲルマシランは、水素を含む置換基Zを有し、少なくとも1:1のZ対ゲルマニウム/ケイ素比を有し、平均式SiaGebz(式中、a+b=1であり、zは、1≦z≦3、好ましくは1.5≦z≦3、より好ましくは2≦z≦3から選択される)を有し、および2≦n≦100の平均鎖長nを有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
用語「純粋な化合物」は、水素化ポリゲルマシランが、分枝として存在しても鎖長に差異がなく、かつ/または環の数および性質に差異がない化合物を含むことを意味すると理解される。換言すると、純粋な化合物には、水素化ポリゲルマシランが1種類しか存在しない。本明細書における「純粋な」とは、典型的な精密化学基準に従って理解されるべきである。したがって、純粋な化合物であっても、少量の不純物、例えば、微量の炭素もしくはハロゲン、または少量の異なる水素化ポリゲルマシランを含むことがある。この文脈における少量とは、0.5mol%未満、好ましくは10ppm未満である。
【0008】
これと同様に、「化合物の混合物」は、水素化ポリゲルマシランが少なくとも2種類あり、その水素化ポリゲルマシランは、分枝として存在しても鎖長が異なり、かつ/または環の性質および数が異なることを意味すると理解される。
【0009】
したがって、純粋な化合物の分子の全てまたは化合物の混合物の少なくとも2種類の分子の全てのどちらであっても、2個のゲルマニウム原子間および/または2個のケイ素原子間および/または1個のゲルマニウム原子と1個のケイ素原子との間のそれぞれに少なくとも1個の直接結合を有し得る。
【0010】
したがって、より長い鎖のポリゲルマシランについて、特に、公知の調製方法と比較して収率が増大し、あらゆる所望の鎖長も達成可能となる水素化ポリゲルマシランを調製するための方法が提供される。水素化ポリゲルマシランがハロゲン化ポリゲルマシランから調製されることから、ハロゲン化ポリゲルマシランに存在する構造は、大部分が水素化ポリゲルマシランにおいても保持されることもあれば、水素化ポリゲルマシランの構造と一致することもある。
【0011】
この場合における「大部分」とは、少なくとも50%を意味する。しかし、水素化の間に、ハロゲン化ポリゲルマシランの既存の構造の再配置も起こり、結果として、例えば、出発物質のハロゲン化ポリゲルマシランに存在したときよりも水素化ポリゲルマシランに分枝が多くなることもある。しかし、本方法によって調製される水素化ポリゲルマシランは、これらが調製されるハロゲン化ポリゲルマシランによって、依然として識別可能であり得る。
【0012】
方法によって、一般式GexSiyz(式中、x+y≧2であり、x+y≦z≦2(x+y)+2である)を有する完全に水素化されたポリゲルマシランの純粋な化合物または化合物の混合物を調製することが可能である。調製は、一般式GexSiyz(x+y≧2であり、X=F、Cl、Br、Iまたはこれらの混合物であり、x+y≦z≦2(x+y)+2である)のハロゲン化ポリゲルマシランの水素化によって起こる。
【0013】
この方法により、水素化ポリゲルマシランおよび水素化オリゴゲルマシランも調製することが可能である。水素化オリゴゲルマシランは、2≦n≦8の範囲から選択される鎖長n=x+yを有する。これらの実験式は、GexSiyz(式中、x+y≧2であり、x+y≦z≦2(x+y)+2である)である。水素化ポリゲルマシランは、n>8の鎖長n=x+y、および混合物についての実験式GexSiyzを有する。原則として、2≦n≦6の鎖長が短鎖と称され、n>6の鎖長が長鎖と称される。「鎖長」は、互いに直接結合したケイ素原子および/またはゲルマニウム原子の数を意味する。
【0014】
ハロゲン化ポリゲルマシランは、熱的に調製されたハロゲン化ポリゲルマシランおよびプラズマ化学反応によって調製されたハロゲン化ポリゲルマシランから選択され得る。熱的に調製されたハロゲン化ポリゲルマシランは、大部分が分枝を含まない場合があるプラズマ化学反応によって調製されたハロゲン化ポリゲルマシランよりも高い割合で分枝を有し得る。ハロゲン化ポリゲルマシランは、純粋な化合物であっても化合物の混合物であってもよい。
【0015】
プラズマ化学反応によって調製されたハロゲン化ポリゲルマシランを調製するための方法は、例えば、公報(例えば、特許文献2参照)に開示されている。この公報は、これを参照することにより本明細書に援用されている。
【0016】
ハロゲン化された、さらに特定すると高度にハロゲン化されたポリゲルマシランは、F、Cl、Br、およびI、ならびにこれらの混合物を包含する群から選択される置換基を有し得る。水素化の間に、これらのハロゲンは、置換基としてのHによって大部分が完全に置き換えられてよい。本明細書において、大部分が完全にとは、少なくとも50%程度を意味する。この方法によって調製される水素化ポリゲルマシランのハロゲン含量は、2原子%未満、さらに特定すると1原子%未満であってよい。したがって、水素化ポリゲルマシランは、置換基Zとして、専ら水素のみを有しても、水素およびハロゲン、例えば塩素を有してもよい。
【0017】
本特許出願の目的のために、化合物または混合物、すなわち、方法から調製される塩素化ポリゲルマシランおよび水素化ポリゲルマシランの両方の塩素含量は、サンプルの完全な分解およびその後のモール法による塩化物の滴定によって求められる。H含量は、内部標準を用いた1H NMRスペクトルの積分および得られた積分の比較によって求められ、ここで、混合比は既知である。本発明のハロゲン化および水素化ポリゲルマシランのモル質量、ならびにハロゲン化および水素化ポリゲルマシランの混合物の平均モル質量は、凝固点降下を用いて求められる。この状態変数から、ハロゲンおよび/または水素対ケイ素/ゲルマニウムの比を求めることが可能である。
【0018】
ハロゲン化ポリゲルマシランは、金属水素化物および/または半金属水素化物から選択される、水素化物である水素化剤と反応し得る。金属水素化物および/または半金属水素化物はまた、それぞれ、混合された金属水素化物および/または半金属水素化物、換言すると、種々の金属および/もしくは半金属または金属ならびに有機ラジカルを含有する水素化物も包含する。水素化剤は、MH、MBH4、MBH4-xx、MAlH4、AlHx3-x、およびこれらの好適な混合物を包含する群から選択され得る。含まれるかかる剤の例として、LiAlH4、DibAlH(ジイソブチル=Dib)、LiH、およびHClがある。ゲルマン−ケイ素骨格を変更することなくハロゲン化ポリゲルマンの水素化を可能にする穏和な水素化剤を優先する。
【0019】
一実施形態によると、水素化は、−60℃〜200℃を包含する範囲から選択される温度で実施され得る。温度範囲は、好ましくは−30℃〜40℃、さらに特定すると−10℃〜25℃であってよい。さらに、水素化は、1Pa〜2000hPa、好ましくは1hPa〜1500hPa、より好ましくは20hPa〜1200hPaを包含する範囲から選択される圧力で実施されてよい。したがって、穏やかな水素化条件は、従来技術と比較して低い圧力および温度に設定される。このように、安定性の低いハロゲン化ポリゲルマシランであっても良好な収率および高い転換率で水素化され得る。
【0020】
ハロゲン化ポリゲルマシランは、水素化の前に溶媒で希釈されてもよい。この場合における溶媒は、溶媒がハロゲン化ポリゲルマシランに対して不活性であるように、すなわち、ハロゲン化ポリゲルマシランといずれの化学反応も起こさないものが選択される。選択される不活性な溶媒は、アルカン類であっても芳香族類であってもよく、例えば、ベンゼン、トルエンまたはヘキサンである。溶媒の混合物も想定される。水素化は、代替的には、溶解されていないハロゲン化ポリゲルマシランを用いて実施してもよい。
【0021】
したがって、この方法により、水素化ポリゲルマシランは、良好な収率で、あらゆる所望の鎖長で、危険をほとんど提示しない前駆体によって調製され得る。さらに、前駆体の好適な選択によって、水素化ポリゲルマシランの構造をほぼ決定することが可能である。さらに、ハロゲン化ポリゲルマシランのほぼ完全な水素化が、この方法によって達成され得る。
【0022】
純粋な化合物または化合物の混合物としての水素化ポリゲルマシランがさらに詳述される。水素化ポリゲルマシランは、水素を含む置換基Z、少なくとも1:1のZ対ゲルマニウム/ケイ素比、平均式SiaGebz(式中、a+b=1であり、zは、1≦z≦3、好ましくは1.5≦z≦3、より好ましくは2≦z≦3から選択される)、および2≦n≦100の平均鎖長nを有する。水素化ポリゲルマシランは、2個のゲルマニウム原子間および/または2個のケイ素原子間および/または1個のゲルマニウム原子と1個のケイ素原子との間のそれぞれに少なくとも1個の直接結合を有し、例えば、純粋な化合物または化合物の混合物であってよい。
【0023】
用語「純粋な化合物」および「化合物の混合物」に関しては、類似の方法適用に関連させて既に記述している。ひいては、「純粋な」とは、典型的な精密化学基準の下に理解されるということである。したがって、純粋な化合物であっても、少量の不純物、例えば、微量の炭素またはハロゲンを含むことがある。本明細書における少量とは、0.5mol%未満、好ましくは10ppm未満である。
【0024】
「鎖長」は、互いに直接結合するケイ素原子および/またはゲルマニウム原子の数を意味する。水素化ポリゲルマシランの鎖長は、さらに特定すると4≦n≦50、さらに特定すると6≦n≦20から選択され得る。
【0025】
したがって、平均式GeaSibzは、水素化ポリゲルマシラン中のゲルマニウム原子またはケイ素原子が平均で1〜3個の置換基Zを有することを意味することが理解されるべきである。ここでは、直鎖ポリゲルマシランにおいておよびさらには環または分枝状のポリゲルマシランにおいての両方のゲルマニウム原子およびケイ素原子が考慮される。この種の水素化ポリゲルマシランは、その化学的特性に基づいて多様な用途に好適である。
【0026】
水素化ポリゲルマシランは、上記に従った方法によって調製され得た。したがって、水素化ポリゲルマシランは、ハロゲン化ポリゲルマシランの水素化によって調製される。これにより、調製方法を経ての、水素化ポリゲルマシランの構造は、ハロゲン化ポリゲルマシランの構造から誘導可能であっても、ハロゲン化ポリゲルマシランの構造と一致していてもよい。
【0027】
例えば、大部分が直鎖状の水素化ポリゲルマシランは、プラズマ化学反応によって調製されたハロゲン化ポリゲルマシランを水素化することによって得ることができ、または高い割合で分枝を有する水素化ポリゲルマシランは、熱的に調製されたハロゲン化ポリゲルマシランを水素化することによって得ることができる。水素化は、大部分が完全に実施されてよく、そのため、ポリゲルマシラン中の置換基Zは大部分が水素を含む。本明細書における「大部分」とは、同じく、置換基中の水素の割合が少なくとも50%であることを意味する。しかし、水素化は、完全に進行して、置換基Zとして100%の割合で水素であってもよい。
【0028】
一実施形態によると、水素化ポリゲルマシランは、ゲルマニウム原子とケイ素原子との間に少なくとも0.0001mol%の直接結合を有し得る。したがって、ポリゲルマンおよびポリシランの混合物だけでなく、純粋な形態の化合物ならびに鎖中にゲルマニウムおよびケイ素の両方を含有する混合物の形態の化合物も存在する。
【0029】
一実施形態によると、水素化ポリゲルマシランは、3個を超える直接結合したゲルマニウム原子および/またはケイ素原子を有するポリゲルマシラン分子の部分を有し得、ここで、これらのゲルマニウム原子およびケイ素原子の少なくとも8%、さらに特定すると11%超が分枝部位である。この場合における、3個を超える直接結合したゲルマニウム原子および/またはケイ素原子を有するポリゲルマシラン分子の部分は、純粋な化合物であっても、化合物の混合物の場合には水素化ポリゲルマシランの部分であってもよい。各場合において、かかるポリゲルマシラン分子は、n>3の鎖長を有する。用語「分枝部位」は、2個を超える他のゲルマニウム原子および/またはケイ素原子に結合した、換言すると、置換基Zを1個しか有さないまたは全く有さないゲルマニウム原子およびケイ素原子の両方を称する。分枝部位は、例えば、1H NMRスペクトルを用いて決定され得る。
【0030】
化合物の混合物である水素化ポリゲルマシランは、混合物の形態において、混合物中に存在する少なくとも1種の個々の化合物よりも高い溶解性を有し得る。したがって、混合物の少なくとも1種の個々の成分は、化合物の混合物の他の成分と関連する個々の成分よりも低い溶解性を有する。この背景にある理由は、混合物の種々の成分が互いに可溶化剤として作用するからである。原則として、より短い鎖の分子は、より長い鎖の分子よりも良好な溶解性を有するため、化合物の混合物において、より長い鎖の分子の溶解性も改善する。
【0031】
さらなる一実施形態によると、水素化ポリゲルマシランは、3個を超える直接結合したゲルマニウム原子および/またはケイ素原子を有するポリゲルマシラン分子の部分を有してよく、ここで、これらのポリゲルマシラン分子は、平均式SiaGebz(式中、a+b=1であり、1.9≦z≦2.5である)を有する。さらに特定すると、zは、2.0≦z≦2.4から選択されてよい。
【0032】
さらに、水素化ポリゲルマシランは、ハロゲンをさらに含む置換基Zを有してよい。したがって、水素化ポリゲルマシランは、水素の他に、置換基としてハロゲン、例えばF、Br、IもしくはCl、またはこれらの混合物をも有してもよい。この場合、水素化ポリゲルマシラン中のハロゲンの割合は、2原子%未満、さらに特定すると1原子%未満であってよい。したがって、ほんの少量のハロゲン置換基を有する、大部分が水素化されたポリゲルマシランが提供される。
【0033】
さらに、水素化ポリゲルマシランは、50原子%超、好ましくは60原子%超、さらに特定すると66原子%超である水素の割合を有してよい。このように、水素化ポリゲルマシランは、非常に高い水素の割合を有し、少なくとも1:1の置換基対ケイ素/ゲルマニウム比が、高い水素含量と併せて確立される。
【0034】
1H NMRスペクトルにおいて、水素化ポリゲルマシランは、6.1から2.0ppmの間、さらに特定すると5から2.1ppmの間の化学シフト範囲に、有意な生成物シグナルを有してよい。この文脈における「有意な」は、積分が全積分の1%を超えることを意味する。さらに、1H NMRスペクトルにおいて、水素化ポリゲルマシランは、5.0から2.9ppmの間、さらに特定すると4.0から3.0の間の化学シフト範囲に、有意な生成物シグナルの全積分のシグナル強度の少なくとも80%を有してよい。
【0035】
29Si NMRスペクトルにおいて、水素化ポリゲルマシランは、−80から−130ppmの間の化学シフト範囲に、有意な生成物シグナルを有し得る。
【0036】
さらに、ラマンスペクトルにおいて、水素化ポリゲルマンは、2250波数から2000波数まで、および550波数未満の範囲に、有意な生成物バンドを有し得る。ラマンスペクトルに関連する「有意な」とは、最大ピークの強度の10%超を意味する。
【0037】
一実施形態によると、水素化ポリゲルマシランは、無色から黄色または象牙色であってよい。水素化ポリゲルマシランは、非結晶質固体または結晶性固体として存在し得る。水素化ポリゲルマシランは、高い粘度を有さないことが好ましい。
【0038】
さらに、水素化ポリゲルマシランは、不活性溶媒中10%までの濃度で、少なくとも20%程度まで可溶性であってよい。これは、水素化ポリゲルマシランの化合物の混合物の少なくとも1種の化合物が、不活性溶媒に易溶性であることを意味する。不活性溶媒は、水素化ポリゲルマシランと反応しない溶媒である。例えば、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、SiCl4、およびGeCl4を包含する群から選択される溶媒を選択することが可能である。
【0039】
上記化合物の混合物の易溶性の水素化ポリゲルマシランは、減圧下に20%超の程度まで、好ましくは80%超の程度まで分解することなく蒸留可能および/または揮発性であってよい。この場合における減圧は、好ましくは1〜100Paを含む。したがって、水素化ポリゲルマシランは、効果的に単離され得る。
【0040】
上記の水素化ポリゲルマシランから製造されるケイ素−ゲルマニウム層がさらに詳述される。
【0041】
水素化ポリゲルマシランは、ひいては、ケイ素−ゲルマニウム層の製造のために工業規模で容易に入手可能である出発化合物である。水素化ポリゲルマシランは、500℃未満、好ましくは450℃未満の低い熱分解温度の結果として、単一源の前駆体であり、これを用いて、低温において、複数の層の形態でケイ素−ゲルマニウム合金を基材に堆積することが可能である。低い熱分解温度により、担体層、例えばガラスの担体層用の、およびケイ素−ゲルマニウム層が適用される基材用の材料の比較的多くの選択が可能となる。さらに、得られるケイ素−ゲルマニウム層内への担体材料からの不純物の拡散が減少または回避されるだろう。
【0042】
この種のケイ素−ゲルマニウム層は、例えば、太陽電池産業において、またはエレクトロニクス産業において用いられ得る。例えば、導電性ポリマーまたは発光ダイオードの製造に関しての有機金属化学における適用がさらに想到可能である。
【0043】
基材にケイ素−ゲルマニウム層を製造するための方法であって、A)固体または溶解された上記の水素化ポリゲルマシランを基材に適用するステップ、およびB)水素化ポリゲルマシランを熱分解するステップを含む方法が詳述される。この方法により、高い収率および高い転換率で、水素化ポリゲルマシランから製造されるケイ素−ゲルマニウム層が得られる。水素化ポリゲルマシランは、ケイ素前駆体およびゲルマニウム前駆体の従来の混合物よりも高い収率および高い転換率で処理されて、ケイ素−ゲルマニウム層を形成することができる。これに関連して、溶解されたまたは固体の水素化ポリゲルマシランは、容易な方法で基材に適用され得る。したがって、CVD(化学気相蒸着)もPVD(物理気相蒸着)もプラズマ蒸着も必要でない。したがって、ケイ素−ゲルマニウム層を製造する簡潔化された方法が提供される。
【0044】
水素化ポリゲルマシランの調製に関する実施例を以下に示す。
【0045】
GeCl4とSiCl4およびH2とのプラズマ反応によって生成されるポリクロロゲルマシラン(PCGS)は、高粘性油または固体の形態をとり、それぞれ、黄色から橙色−褐色までの色を有する。8.5g(60mmol、GeCl2当量)のPCGSを40mlの無水ベンゼンと混合し、結果として、部分的に溶解させる。0℃において、26mlのジイソブチルアルミニウムヒドリド(145mmol、約20%過剰)を30分間にわたって滴加する。約1時間にわたって橙色の沈降物が反応して淡黄色の粉末を形成する。反応混合物を、その後16時間撹拌し、この間に、室温まで加温する。固体を濾過によって単離し、25mlの無水ヘキサンで2回洗浄する。減圧下に乾燥した後、2.1gの水素化ポリゲルマシランを単離する。
【0046】
本発明は、実施例に基づいた記載によっては制限されない。代わりに、本発明は、いかなる新規の特徴およびさらには特徴のいかなる組み合わせも包含し、これらは、かかる特徴または組み合わせ自体が特許請求の範囲または実施例に明確に詳述されていなくても、特許請求の範囲における特徴のあらゆる組み合わせを特に含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化ポリゲルマシランを純粋な化合物または化合物の混合物として調製するための方法であって、ハロゲン化ポリゲルマシランが水素化される方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化ポリゲルマシランが、熱的に調製されたハロゲン化ポリゲルマシランおよびプラズマ化学反応によって調製されたハロゲン化ポリゲルマシランから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化ポリゲルマシランが、金属水素化物および/または半金属水素化物から選択される、水素化物である水素化剤と反応する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素化剤が、MH、MBH4、MBH4-xx、MAlH4、AlHx3-x、およびこれらの混合物を包含する群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化が、−60℃〜200℃を包含する範囲から選択される温度で実施される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記水素化が、1Pa〜2000hPaを包含する範囲から選択される圧力で実施される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化ポリゲルマシランが、水素化の前に溶媒で希釈される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
純粋な化合物または化合物の混合物としての水素化ポリゲルマシランであって、
水素を含む置換基Zと、
少なくとも1:1のZ対ゲルマニウム/ケイ素比と、
平均式SiaGebz(式中、a+b=1であり、zは1≦z≦3から選択される)と、
2≦n≦100の平均鎖長nと
を有する水素化ポリゲルマシラン。
【請求項9】
請求項1から7に記載の方法によって調製される、請求項8に記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項10】
ゲルマニウム原子とケイ素原子との間に少なくとも0.0001mol%の直接結合を有する、請求項8および9のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項11】
3個を超える直接結合したゲルマニウム原子および/またはケイ素原子を有するポリゲルマシラン分子の部分を有し、これらのゲルマニウム原子および/またはケイ素原子の少なくとも8%が分枝部位である、請求項8から10のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項12】
化合物の混合物であり、前記混合物が、前記混合物中に存在する少なくとも1種の個々の化合物よりも高い溶解性を有する、請求項8から11のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項13】
3個を超える直接結合したゲルマニウム原子および/またはケイ素原子を有するポリゲルマシラン分子の部分を有し、これらのポリゲルマシラン分子が、平均式SiaGebz(式中、a+b=1であり、1.9≦z≦2.5である)を有する、請求項8から12のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項14】
Zが、ハロゲンをさらに包含する、請求項8から13のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項15】
ハロゲンの割合が2原子%未満である、請求項14に記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項16】
水素の割合が50原子%超である、請求項8から15のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項17】
1H NMRスペクトルにおいて、6.1から2.0ppmの間の化学シフト範囲に、有意な生成物シグナルを有する、請求項8から16のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項18】
1H NMRスペクトルにおいて、5.0から2.9ppmの間の化学シフト範囲に、有意な生成物シグナルの全積分のシグナル強度の少なくとも80%を有する、請求項8から17のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項19】
29Si NMRスペクトルにおいて、−80から−130ppmの間の化学シフト範囲に、有意な生成物シグナルを有する、請求項8から18のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項20】
ラマンスペクトルにおいて、2250波数から2000波数まで、および550波数未満の範囲に、有意な生成物バンドを有する、請求項8から19のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項21】
無色から黄色または象牙色である、請求項8から20のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項22】
非結晶質固体または結晶性固体として存在する、請求項8から21のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項23】
不活性溶媒中10%までの濃度で、少なくとも20%程度まで可溶性である、請求項8から22のいずれかに記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項24】
易溶性の水素化ポリゲルマシランが、減圧下に20%超の程度まで分解することなく蒸留可能および/または揮発性である、請求項23に記載の水素化ポリゲルマシラン。
【請求項25】
請求項8から24に記載の水素化ポリゲルマシランから製造されるケイ素−ゲルマニウム層。
【請求項26】
基材にケイ素−ゲルマニウム層を製造するための方法であって、
A)固体または溶解された、請求項8〜24に記載の水素化ポリゲルマシランを基材に適用するステップ、および
B)前記水素化ポリゲルマシランを熱分解するステップ
を含む方法。

【公表番号】特表2013−512845(P2013−512845A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541539(P2012−541539)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068994
【国際公開番号】WO2011/067417
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(510313360)シュパウント プライベート ソシエテ ア レスポンサビリテ リミテ (14)
【氏名又は名称原語表記】Spawnt Private S.a.r.l
【住所又は居所原語表記】16, Rue Jean l’Aveugle, 1148 Luxembourg, Luxembourg
【Fターム(参考)】