説明

水素化処理触媒を活性化する方法

【課題】第VIB族金属酸化物および第VIII族金属酸化物を含む、新品の水素化処理触媒または使用されて再生されている水素化処理触媒を活性化する方法を提供する。
【解決手段】触媒を酸並びに80〜500℃の範囲の沸点およびリットル当たり少なくとも5グラムの水中溶解度(20℃、大気圧)を持つ有機添加剤と接触させ、任意的に引き続いて少なくとも50%の添加剤が触媒中に保持されるような条件下に乾燥することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化処理触媒を活性化する方法に関する。活性化されるべき水素化処理触媒は、新品の水素化処理触媒であるか、あるいは使用されそして再生された水素化処理触媒である。本発明は、当該方法によって得ることができる水素化処理触媒およびそれを水素化処理に使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭化水素含有原料を接触水素化処理する目的は、不純物の除去である。通常の不純物は、硫黄化合物および窒素化合物である。原料からのこのような不純物の少なくとも部分的な除去は、最終製品が燃やされるときに、環境に有害な硫黄酸化物および/または窒素酸化物がより少なく放出されることを保証するだろう。さらに、硫黄化合物および窒素化合物は、石油産業において直ぐに使用できる製品に原料を転換するために採用される触媒の多くにとって有毒である。このような触媒の例は、分解触媒、水素化分解触媒および改質触媒を包含する。したがって、原料がたとえば分解装置で処理される前に、原料は接触水素化処理に供されるのが慣例である。接触水素化処理とは、水素化処理触媒の存在下に高められた温度および圧力で原料を水素と接触させることを意味する。このプロセスで、原料中に存在する硫黄化合物および窒素化合物は、容易に除去できる硫化水素およびアンモニアへと転化される。
【0003】
一般に、水素化処理触媒は、その上に第VI族金属成分および第VIII族金属成分が堆積された担体から構成される。もっとも普通に使用される第VI族金属は、モリブデンおよびタングステンであり、一方、コバルトおよびニッケルが、慣用の第VIII族金属である。リンが触媒中に存在することもできる。これらの触媒を調製するための従来技術の方法は、担体物質が、たとえば含浸によって水素化金属成分と複合化され、その後に該複合物が焼成されて、金属成分がその酸化物へと転化されるという特徴を持つ。水素化処理に使用される前に、触媒は一般に予備硫化されて、水素化金属がその硫化物へと転化される。
【0004】
燃料中の法的に許される硫黄および窒素の含有量に関する要件は、ますます厳しくなっているので、改善された活性を持つ水素化処理触媒へのとぎれることのない必要性が存在する。さらに、所定の最終硫黄含有量において、より活性な触媒は、より温和なプロセス条件(エネルギーの節約)下で操業すること、または再生から再生までの触媒の寿命(サイクル長さ)を増加することを可能にするだろう。
【0005】
担体上に第VIII族水素化金属酸化物および第VI族水素化金属酸化物を含む水素化処理触媒が、それを少なくとも2のヒドロキシル基と2〜10の炭素原子とを含む化合物およびこれらの化合物の(ポリ)エーテルの群から選ばれた少なくとも1の化合物である添加剤と接触させることによって活性化され、その後に該触媒が、添加剤が実質的に触媒中に残留するような条件下に乾燥される方法を、国際特許出願公開第96/41848号は記載している。この参考文献に記載された添加剤は、糖並びに各種のエーテルおよびポリエーテルを包含する。該触媒は、新品の(使用されていない)触媒であるか、あるいは使用されて再生された触媒である。
【0006】
添加剤に基づいた使用された触媒を、最大温度500℃で酸素含有ガスと接触させることによって再生しそして活性化し、引き続いてそれを有機添加剤と接触させることによって活性化し、必要により引き続いて少なくとも50%の添加剤が触媒中に保持されるような温度で乾燥する方法を、国際特許出願公開第01/02092号は記載している。この参考文献に記載された好まれる添加剤は、少なくとも2の酸素含有部分と2〜10の炭素原子とを含む化合物およびこれらの化合物から構成された化合物の群から選ばれたものである。挙げられた例は、酸、脂肪族ジアルコール、そのエーテル、糖、およびN含有化合物を包含する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願公開第96/41848号公報
【特許文献2】国際特許出願公開第01/02092号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第0601722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、触媒が酸と特定の添加剤との組み合わせを用いて活性化されるならば、これらの参考文献に記載された方法は改善されることができることが、今見出された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、第VIB族金属酸化物および第VIII族金属酸化物を含む水素化処理触媒を活性化する方法において、該触媒を酸並びに80〜500℃の範囲の沸点およびリットル当たり少なくとも5グラムの水中溶解度(20℃、大気圧)を持つ有機添加剤と接触させ、任意的に引き続いて添加剤の少なくとも50%(添加剤の元の全量に対して)が触媒中に保持されるような条件下に乾燥してもよいことを含む、上記方法に関する。本発明の方法は、新品の水素化処理触媒を活性化することだけでなく、炭化水素供給原料の水素化処理に使用された触媒を活性化することにも適している。
【0010】
再活性化された後に高活性な触媒を得る観点から、本発明に従う方法において、活性化された水素化処理触媒が、5重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満、またもっとも好ましくは0.5重量%未満(触媒の全重量に対する第VIB族および第VIII族の金属の結晶質化合物の重量分率として表現された)の結晶質部分を含むことが好まれることを、本発明者らは見出した。理想的には、活性化された水素化処理触媒は、実質的に結晶質部分を含まない。結晶質化合物は、単一の結晶質化合物または種々の結晶質化合物の混合物であることができる。たとえば、コバルトモリブデン触媒の場合には、活性な水素化処理金属はアルファ−モリブデン酸コバルト(α CoMoO4)に結晶化することができることが見出された。触媒の水素化処理金属組成に応じて、種々の結晶質化合物が形成されることができ、たとえばモリブデン酸ニッケル、タングステン酸コバルトおよびタングステン酸ニッケル、これらの混合物または混合金属の結晶が、見出されることができる。結晶質部分は、X線回折手法によって測定されることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従う方法の利点は、使用されて再生された触媒についてだけでなく、新品の水素化処理触媒についても得られることができることが見出された。特に、新品の焼成されている水素化処理触媒では、本発明に従う活性化方法を使用することによって、活性のかなりの改善が得られることができる。特に350℃より上の温度で焼成されたときに、またはさらにもっと特に400℃より上、450℃、若しくは500℃より上で焼成されたときに、新品の焼成された水素化処理触媒中にはかなりの結晶質部分が見出された。本発明に従う方法において、新品の水素化処理触媒が、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2.5重量%、またもっとも好ましくは少なくとも5重量%の結晶質部分を含むときに、非常に良好な活性の改善が得られことができる。
【0012】
本発明は、上記の方法によって得ることができる水素化処理触媒にも関する。特に、第VIII族金属酸化物および第VI族金属酸化物を含む水素化処理触媒であって、該触媒がさらに酸並びに80〜500℃の範囲の沸点およびリットル当たり少なくとも5グラムの水中溶解度(20℃、大気圧)を持つ有機添加剤を含んでいるものに関する。該触媒は、好ましくは使用されて再生された触媒または新品の焼成された触媒であって、該触媒が好ましくは5重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満、もっとも好ましくは1重量%未満(触媒の全重量に対する第VIB族および第VIII族の金属の結晶質化合物の重量分率として表現された)の結晶質部分を含んでいるものである。
【0013】
欧州特許出願公開第0601722号は、水素化処理金属元素、リン酸および有機添加剤を含有する溶液をアルミナ担体物質に含浸させ、引き続いて該添加剤の分解または蒸発を防ぐために200℃未満の温度で乾燥することによって触媒を調製する方法を記載している。この方法は、新品のまたは使用されそして再生された水素化処理触媒の活性化には関係していない。この方法では、活性な水素化処理金属が、含浸溶液中のリン酸および有機添加剤の存在下に、かつこれらと錯体を形成して堆積される。使用されそして再生されたまたは新品の触媒であって、その中に水素化処理金属が既に堆積されている触媒が、酸並びに特定された沸点および溶解度の特徴を持つ有機添加剤を用いて活性化されることができることは、驚くべきことである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従う方法のための出発物質は、第VIII族水素化金属酸化物および第VI族水素化金属酸化物を含む水素化処理触媒であって、さらに酸化物触媒として表示されるものである。一般に、触媒中に存在するすべての第VIII族および第VI族の水素化金属の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%が酸化物の形態をしている。触媒中に酸化物の形態で存在する金属の百分率は、X線蛍光分光分析法(XRF)または誘導結合プラズマ分光分析法(ICP)によって測定されることができる。該百分率は、金属の全重量に対する重量百分率である。
【0015】
本発明に従う方法に出発物質として使用される酸化物水素化処理触媒は、したがって水素化金属成分が担体と複合化され、その後に該複合化物質が焼成段階に供されて、該水素化金属成分がその酸化物へと転化される方法によって調製された酸化物水素化処理触媒であることができる。しかし、それは、使用されそれからコークを除くことによって再生された水素化処理触媒であることもできる。この場合には、触媒は、その最初の使用前に添加剤を含有していたものでも含有していなかったものでもよい。
【0016】
出発触媒は、第VIII族金属酸化物および第VI族金属酸化物を、一般には担体上に含む。第VI族金属として、モリブデン、タングステン、およびクロムが挙げられることができ、モリブデンまたはタングステンが好まれる。モリブデンが特に好まれる。第VIII族金属は、ニッケル、コバルト、および鉄を包含する。ニッケル、コバルト、またはそれらの組み合わせが好まれる。触媒は通常、触媒の全重量基準で酸化物として計算されて、0.1〜50重量%の範囲の金属含有量を持つ。第VI族金属成分は一般に、三酸化物として計算されて、5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは15〜30重量%の量で存在する。第VIII族金属成分は一般に、酸化物として計算されて、1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の量で存在する。所望であれば、触媒は、他の成分、たとえばリン、ハロゲン、およびホウ素を含有することもできる。特に、触媒の水素化脱窒素活性を改善するために、Pとして計算されて1〜10重量%の量でリンが存在することは、好まれることができる。
【0017】
触媒担体は、慣用の酸化物、たとえばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、その中にシリカ−アルミナが分散されたアルミナ、シリカで被覆されたアルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、およびチタニア、並びにこれらの酸化物の混合物を含むことができる。概して、アルミナ、シリカ−アルミナ、その中にシリカ−アルミナが分散されたアルミナ、またはシリカで被覆されたアルミナを有する担体が優先される。アルミナおよび10重量%までのシリカを含有するアルミナが特に優先される。相転移アルミナ、たとえばイータ、シータ、またはガンマアルミナを含有する担体が、この群の中で好まれ、ガンマアルミナ担体が、もっともとりわけて好まれる。
【0018】
(接触角140°、480ダイン/cmの表面張力で水銀圧入法によって測定された)触媒の細孔容積は、本発明に従う方法にとって決定的に重大ではなく、一般に0.2〜2ml/g、好ましくは0.4〜1ml/gの範囲にあるだろう。比表面積もまた、本発明に従う方法にとって決定的に重大ではなく、一般に(BET法を使用して測定された)50〜400m/gの範囲にあるだろう。好ましくは、触媒は、水銀細孔分布測定法によって測定された7〜15nmの範囲の中央値細孔直径を持つだろう、そして全細孔容積の少なくとも60%は、中央値細孔直径から±2nmの範囲にあるだろう。
【0019】
触媒は、球または押出成形物の形態で慣用の様式で使用される。好適な種類の押出成形物の例は、文献に開示されている(とりわけ、米国特許第4028227号を参照せよ)。使用するのに非常に好適なのは、(中空であってもなくてもよい)円柱形粒子並びに対称および非対称の多葉形粒子(2、3または4葉)である。
【0020】
本発明に従う方法では、酸化物水素化処理触媒は、酸並びに80〜500℃の範囲の沸点およびリットル当たり少なくとも5グラムの水中溶解度を持つ有機添加剤と接触させられる。
【0021】
該酸および該有機添加剤は、含浸によって液体の形で触媒中へと取り込まれる。酸については、これは一般にそれが溶解された状態にあることを意味するだろう。添加剤については、溶媒が必要であるか否かは、その特性に依存するだろう。添加剤が十分に流動性であって、溶媒が存在することなく触媒の細孔に入るならば、溶媒は無しで済ませられることができる。しかし、一般に溶媒が使用されるだろう。溶媒は、一般に水である。もっとも他の化合物、たとえばメタノール、エタノール、および他のアルコールが、添加剤および酸の性質に依っては適していることもありうる。
【0022】
本発明の方法の好まれる実施態様では、触媒は、酸の取り込みの後に熟成段階に供される。熟成段階は、触媒がまだ湿っている間に、すなわち溶媒が触媒から除かれる前に実施される。炭化水素供給原料の水素化処理に使用された触媒が再活性化されることになるときに、熟成工程は特に有利であることが見出された。熟成段階に適用される熟成時間は、温度の関数である。一般に、熟成時間は、熟成温度の増加とともに減少する。熟成段階は、典型的には少なくとも15分間かかる。ある時間後には、たとえば48時間より多くの後には、さらなる活性の改善は観察されない。熟成段階が0℃〜50℃の温度で実施されるならば、熟成時間は典型的には少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも6時間である。熟成段階が50℃より上の温度で実施されるならば、熟成時間は一般に少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間である。100℃より上の温度で熱水条件下に15分間を超える期間、熟成段階を実施することも可能である。熟成段階は、触媒をマイクロ波または誘導加熱を用いて加熱することによって実施されることもできる。好ましくは、触媒組成物は、結晶質部分を5重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満に低減するのに十分な時間、熟成される。本発明に従う方法において、酸濃度が(触媒の全重量に対して)少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも7重量%、もっとも好ましくは少なくとも10重量%であれば、熟成の時間はかなり低減されることができおよび/または有意によりよい結果が達成されることができることが、さらに見出された。
【0023】
溶媒が添加剤および/または酸を触媒中に取り込むために使用されていたならば、含浸段階が完了した後、溶媒の少なくとも一部、一般的には(化合物の元の重量に対する重量パーセントで)少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%を除くために、触媒は乾燥されることができる。添加剤の少なくとも一部が触媒中に残留するような様式で任意の乾燥段階が実施されることが、本発明に従う方法には必須である。触媒は、したがって焼成されない。その結果として、適用されるべき乾燥条件は、特定の添加剤が沸騰しまたは分解する温度に大きく依存する。本発明の文脈において、含浸段階において触媒中に取り込まれた添加剤の少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%が、乾燥段階後に依然として触媒中に存在するような条件下に、乾燥段階は実施されなければならない。もちろん、乾燥段階の間、触媒中にできるだけ多くの添加剤を保つことが好まれるが、より揮発性の化合物では乾燥段階の間の蒸発は、常に避けられることができるわけではない。乾燥段階は、たとえば空気中で、真空下に、または不活性ガス中で実施されることができる。添加剤の性質に依っては、220℃より高いまたは低い温度が必要になるかもしれないけれども、一般に220℃未満の乾燥温度を持つことが有利である。
【0024】
酸および添加剤は、触媒中に同時にまたは特定の順番ではなく逐次的に取り込まれることができる。
【0025】
1の実施態様では、出発物質が酸の溶液と接触させられ、任意的に引き続いて乾燥される。それから、有機添加剤が触媒中に取り込まれ、任意的に引き続いて(化合物の元の重量に対する重量パーセントで)少なくとも50%の添加剤が触媒中に残留するような条件下に乾燥段階に供される。この実施態様で熟成段階が実施されるならば、それは有機添加剤が触媒組成物中に取り込まれてしまう前または後で実施されることができる。
【0026】
他の実施態様では、最初の段階で有機添加剤が出発物質中に取り込まれ、任意的に引き続いて少なくとも50%の添加剤が触媒中に残留するような条件下に乾燥段階に供される。それから、得られた物質が酸の溶液と接触させられ、任意的に引き続いて熟成段階および/または少なくとも50%の添加剤が触媒中に残留するような条件下に乾燥に供される。
【0027】
酸および添加剤を別々の段階で触媒中に取り込む利点は、酸および添加剤の要件を満たすように含浸溶液の特性が調整されることができることである。それにもかかわらず、効率の理由から、出発触媒を酸および添加剤の両方を含む単一の含浸溶液に接触させ、任意的に引き続いて熟成段階および/または少なくとも50%の添加剤が触媒中に残留するような条件下に乾燥段階に供することが好まれる。
【0028】
酸は、無機または有機の酸であることができる。無機酸は、炭素原子を含有していない酸性成分として定義される。無機酸の例は、HCl、HSO、HNO、HPO、(NH)HPO、(NHHPO、HPHO、H、およびH(n+2)(3n+1)を包含する。無機酸の群の中で、リン含有酸が好まれる。というのは、リンそれ自体が水素化処理触媒の活性に増加方向の影響を与えるからである。HPOが特に好まれる。
【0029】
無機酸の使用の1つの不利な点は、対イオン、たとえば塩化物イオン、硫酸イオン、または硝酸イオンが触媒組成物中に取り込まれることである。本発明の活性化工程が何回も繰り返されると、それは触媒組成物中へのこれらの対イオンの望ましくない蓄積をもたらすかもしれない。しかし、対イオンの性質および目論まれた再生段階の数に依っては、これは問題ではないかもしれない。有機酸は、当該不利な点を持たないので、好まれる。
【0030】
本明細書の文脈では、有機酸は、少なくとも1のカルボキシル基(COOH)を含む化合物として定義される。有機酸は一般に、少なくとも1のカルボキシル基と(カルボキシル基中の炭素原子を含めて)1〜20の炭素原子とを含むカルボン酸である。好適な酸は、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ギ酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシブチル酸、ヒドロキシヘキサン酸、酒石酸、グリセリン酸、グルコン酸、シュウ酸、マロン酸、ポリアクリル酸、アスコルビン酸、並びにEDTAおよび環状DTA(1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸)のようなN含有酸等を包含する。この群の中で、少なくとも2のカルボキシル基を含む化合物が好まれる。コストと活性との組み合わせから、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、および酒石酸が好まれる。クエン酸が特に好まれる。
【0031】
本発明に従う方法に酸と一緒に使用される有機添加剤は、有機化合物、すなわち80〜500℃の範囲の沸点および室温(20℃)(大気圧)においてリットル当たり少なくとも5グラムの水中溶解度を持つ、少なくとも1の炭素原子および少なくとも1の水素原子を含む化合物である。好ましくは、添加剤は酸素または窒素を含有する化合物である。
【0032】
添加剤の沸点は、好ましくは100〜400℃、より好ましくは150〜350℃の範囲にある。添加剤の沸点は、一方では添加剤が乾燥段階を含めて調製工程の間、触媒上に残留しているという願望と、他方において添加剤は触媒の使用または硫化の間に触媒から除かれるべきという必要性との間の均衡で決まる。有機添加剤が沸点を持たないで、代わりに特定の温度範囲で分解する場合には、沸点の語はcomposition温度と同意語であることを意味する。
【0033】
添加剤の溶解度は、室温でリットル当たり少なくとも5グラム、好ましくは少なくとも10グラムである。添加剤についての溶解度の要件は、二重の根拠を持つことが注記される。まず第一に、この溶解度要件を満たす化合物は、含浸溶液で適用するのに都合がよい。これに加えて、これらの溶解度要件を満たす化合物は触媒中に存在する金属成分となんらかの相互作用をして、最終生成物の活性の増加をもたらすことが明らかにされた。
【0034】
この定義の範囲内で、添加剤の各種の群が区別されることができる。最初の、現時点で好まれる添加剤の群は、少なくとも2の酸素原子および2〜20の炭素原子、好ましくは2〜10の炭素原子を含む有機化合物並びにこれらの化合物から構成される化合物の群である。少なくとも2の酸素含有部分、たとえばカルボキシル、カルボニルまたはヒドロキシル部分、および2〜10の炭素原子を含む化合物並びにこれらの化合物から構成される化合物の群から選ばれた有機化合物が好まれる。好適な化合物の例は、ブタンジオール、ピルビンアルデヒド、グリコールアルデヒド、およびアセトアルドールを包含する。現時点において、この群の中で、分子当たり少なくとも2のヒドロキシル基および2〜10の炭素原子を含む化合物、並びにこれらの化合物の(ポリ)エーテルの群から選ばれた添加剤が優先される。この群からの好適な化合物は、脂肪族アルコール、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を包含する。これらの化合物のエーテルは、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラペンチレングリコールを包含する。この範囲は、ポリエーテル、たとえばポリエチレングリコールを包含するように外挿されることができる。本発明への使用に適した他のエーテルは、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルを包含する。これらのうちで、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、および200〜600の分子量を持つポリエチレングリコールが好まれる。分子当たり少なくとも2のヒドロキシル基および2〜10の炭素原子を含む化合物のもう1つの群は、糖類である。好まれる糖類は単糖類、たとえばブドウ糖および果糖を包含する。これらのエーテルは二糖類、たとえば乳糖、麦芽糖、およびショ糖を包含する。これらの化合物のポリエーテルは、多糖類を包含する。60未満、好ましくは20未満のヨウ素価によって証明されるように、この群の有機化合物は好ましくは実質的に飽和している
【0035】
本発明への使用に適した有機添加剤の第2の群は、少なくとも1の共役結合した窒素原子および少なくとも1のカルボニル部分を含む化合物群である。この種類の有機化合物は、好ましくは少なくとも2のカルボニル部分を含む。少なくとも1のカルボニル部分がカルボキシル基中に存在することが好まれる。少なくとも1の窒素原子が、少なくとも2の炭素原子に共役結合していることがさらに好まれる。好まれる有機化合物は、式(I)または(II)を満たす。


ここで、R1、R2、R1’およびR2’は、10までの炭素原子を持ち、任意的にカルボニル、カルボキシル、エステル、エーテル、アミノ、またはアミドから選ばれた1以上の基で置換されたアルキル、アルケニル、およびアリルから独立に選ばれる。R3は、−O−または−NR4−によって中断されていてもよい10までの炭素原子を持つアルキレン基である。R4は、R1について上に示されたのと同じ群から選ばれる。R3のアルキレン基は、カルボニル、カルボキシル、エステル、エーテル、アミノ、またはアミドから選ばれた1以上の基で置換されていてもよい。上述したように、式(I)または(II)の有機化合物は、少なくとも1のカルボニル部分を含むことが必須である。
【0036】
好ましくは、R1、R2、R1’およびR2’(式(I))のうち少なくとも2並びにR1、R2およびR1’(式(II))のうち少なくとも2が、式−R5−COOXを持ち、ここでR5は1〜4の炭素原子を持つアルキレン基であり、かつXは水素または他のカチオン、たとえばアンモニウム、ナトリウム、カリウムおよび/またはリチウムのカチオンである。Xが多価カチオンであれば、1のXは2以上の−R5−COO基に結合することができる。式(I)の化合物の典型的な例は、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸、およびジエチレントリアミン5酢酸である。式(II)の化合物の典型的な例は、ニトリロ3酢酸(NTA)である。溶解性の理由から、これらの化合物の塩が好まれることができる。
【0037】
有機添加剤の上述の記載は、各種の酸性成分を包含することが注記される。本発明の文脈の中で酸と有機添加剤との組み合わせが議論されているところでは、(少なくとも)2の異なった化合物が使用され、その場合に一方は酸でありかつ他方は有機添加剤に課された溶解度および沸点に関する要件を満たすことを、これは意味する。後者の化合物もまた酸性であってもよく、なくてもよい。
【0038】
環境的な観点から、本質的に硫黄を含まない添加剤を使用することが好まれる。さらに、硫黄含有添加剤は一般に酸素に対して安定ではない。したがって、硫黄含有添加剤が使用されるならば、すべての後続のプロセス段階は、不活性な環境下に実施されなければならないだろう。この理由からもまた、硫黄を含まない添加剤を使用することが好まれる。このことは、酸についておよび有機添加剤についての両者に当てはまる。
【0039】
単一の化合物並びに化合物の組み合わせが、添加剤として使用されることができる。
【0040】
本発明に従う方法に使用される酸および添加剤の全量、並びに本発明に従う触媒中に存在する酸および添加剤の全量は、第VIB族および第VIII族の金属の合計のモル当たり、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.05、より好ましくは少なくとも0.1モルの酸および添加剤の合計である。一般に、モル比は最大でも3、好ましくは最大でも2であろう。
【0041】
無機酸が使用されるならば、酸の量は、一般に第VIB族および第VIII族の金属の合計のモル当たり0.01〜1モル、好ましくは第VIB族および第VIII族の金属の合計のモル当たり0.05〜0.5モルである。有機酸が使用されるならば、酸の量は、一般に第VIB族および第VIII族の金属の合計のモル当たり0.01〜1モル、好ましくは第VIB族および第VIII族の金属の合計のモル当たり0.05〜0.5モルである。
【0042】
有機添加剤の量は、一般に第VIB族および第VIII族の金属の合計のモル当たり0.1〜2.5モル、好ましくは第VIB族および第VIII族の金属の合計のモル当たり0.15〜1モル、より好ましくは第VIB族および第VIII族の金属の合計のモル当たり0.2〜1モルである。酸と添加剤とのモル比は、一般に0.01〜10:1、好ましくは0.1〜5:1、より好ましくは0.15〜3:1である。
【0043】
一般に、加えられた酸および添加剤の全量が低過ぎると、本発明の有利な効果は得られることができないだろう。他方において、酸および添加剤の極度に多い合計量の添加は、本発明の効果を改善しないだろう。当業者には明らかであろうように、特定の状況において使用されるべき酸および添加剤の正確な量は、多様な媒介変数、たとえば触媒の金属含有量、触媒の細孔容積および細孔サイズの分布、酸および添加剤の性質、含浸溶液に使用されるべき溶媒、含浸条件等に依存するだろう。上述の変数を考慮に入れて、各々の特定の状況において使用されるべき酸および添加剤の最適量を決めることは、十分に当業者の能力範囲内である。
【0044】
本発明は、担体上に第VIII族金属酸化物および第VI族金属酸化物を含む水素化処理触媒であって、該触媒がさらに上述の酸および有機添加剤を含むものにも関する。
【0045】
添加剤を含有する乾燥された本発明の水素化処理触媒は、炭化水素供給原料の水素化処理に使用される前に硫化段階に供されることができるが、前述したようにこれは必ずしも必要ではない。使用前に触媒を硫化することが決定されれば、それは従来技術で知られた様式の1つでなされることができる。たとえば、触媒を無機若しくは有機の硫黄化合物、たとえば硫化水素、元素硫黄、若しくは有機ポリスルフィドと接触させること、または触媒を硫黄化合物が加えられている炭化水素供給原料と接触させることによって硫化することが可能である。このすべては、触媒の硫化または予備硫化として当業者には知られているだろう。
【0046】
本発明の触媒は、広い範囲の原料の水素化処理に使用されることができて、水素化脱硫、水素化脱窒素、および水素化脱芳香族の一以上を起こすことができる。好適な原料の例は、中間留分、灯油、ナフサ、減圧軽油、および重質軽油を包含する。本発明の触媒は、特に超深度水素化脱硫、すなわち200ppm未満の製品硫黄含有量まで、より特には50ppm未満の製品硫黄含有量までの水素化脱硫に使用するのに適している。慣用のプロセス条件、たとえば250〜450℃の範囲の温度、5〜250バールの範囲の圧力、0.1〜10時−1の範囲の空間速度、および50〜2000Nl/lの範囲のH2/油比が、ここでは適用されることができる。
【0047】
上述のように、本発明に従う方法で活性化されるべき触媒は、新品の水素化処理触媒であるかあるいは使用されそして再生された水素化処理触媒である。
【0048】
本発明に従う方法に出発物質として使用するのに適した新品の酸化物水素化処理触媒は、従来技術で知られている。これは、たとえば以下のように得られることができる。たとえばアルミナの場合には、アルミナヒドロゲル(ベーマイト)の形態で担体前駆体が調製される。これは、たとえばスプレー乾燥によって乾燥された後または乾燥されなくても、粒子へと、たとえば押出によって成形される。成形された粒子は、400〜850℃の範囲の温度で焼成されて、アルミナの場合には、相転移アルミナ、たとえばガンマ、シータ、またはエータアルミナを与える。それから、水素化金属の前駆体および任意的な他の成分、たとえばリンの適当な量が、たとえば水性溶液の形態で触媒上に堆積される。第VI族金属および第VIII族金属の場合には、前駆体はモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、硝酸コバルトおよび/または硝酸ニッケルであることができる。好適なリン成分前駆体は、リン酸および各種のリン酸水素アンモニウムを包含する。25°〜200℃の範囲の温度での任意的な乾燥段階の後、得られた物質は350〜750℃、より特には425〜600℃の範囲の温度で焼成されて、すべての金属成分前駆体および任意的な他の成分前駆体が転化されて、酸化物成分を形成する。
【0049】
この方法に基づく広範囲の数の変種がありうることは、当業者には明らかであろう。したがって、複数の含浸段階、堆積されるべき1以上の成分の前駆体またはその一部を含有する使用されるべき複数の含浸溶液を採用することが可能である。含浸手法の代わりに浸漬方法、スプレー方法等が使用されることができる。複数の含浸、浸漬等の場合には、乾燥および/または焼成がその中間に実施されることができる。あるいは、成形段階が実施される前に、1以上の成分の前駆体が担体と全体的にまたは部分的に混合されることができる。このような実施態様では、成分の前駆体物質またはその一部は、まだ成形されていない担体物質、たとえば粉体上に、たとえば含浸によって堆積されることができ、その後に成形段階が実施される。あるいは、成形段階の前でなくむしろその間に、1以上の成分の前駆体を担体物質と全体的にまたは部分的に完全に混合することが可能である。この方法に適した手法は、同時ペレット化および共押出である。この方法に使用される第VIB族金属成分前駆体は、3酸化モリブデンであることが勧められる。酸化物水素化処理触媒およびそれを調製する方法は、当業者の普通の一般的知識の一部であり、たとえば米国特許第4738767号、米国特許第4062809号、米国特許第4500424号、英国特許第1504586号、米国特許第4212729号、米国特許第4326995号、米国特許第4051021号、米国特許第4066574号、欧州特許出願公開第0469675号に記載されている。
【0050】
本発明の活性化方法は、炭化水素供給原料の水素化処理に使用されそしてその後再生された触媒にも適用可能である。
【0051】
使用された水素化処理触媒を再生しそして活性化する組み合わされた方法において、第VIB族金属酸化物および第VIII族金属酸化物を含む使用された水素化処理触媒が、最初に再生段階に供されて炭素質および硫黄質の堆積物が除かれ、引き続いてこのようにして得られた物質を酸並びに80〜500℃の範囲の沸点およびリットル当たり少なくとも5グラムの水中溶解度(20℃、大気圧)を持つ有機添加剤と接触させることによって活性化する、上記方法にも、本発明は関する。
【0052】
本発明に従う方法の再生段階は、再生後に触媒の炭素含有量が一般に3重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満であるような条件下に、添加剤に基づいた使用された触媒を酸素含有ガスと接触させることによって実施される。再生後、触媒の硫黄含有量は、一般に2重量%未満、好ましくは1重量%未満である。再生段階の前には、触媒の炭素含有量は、一般に5重量%超、典型的には5〜25重量%である。再生段階前の触媒の硫黄含有量は、一般に5重量%超、典型的には5〜20重量%である。
【0053】
再生段階の間の最大触媒温度は、再生されるべき触媒の特性によっておよびプロセスの制約によって支配され、より高い最大温度が原則として好まれるだろう。何故ならばそれは再生時間を低減することを可能にするからである。しかし、高い再生温度は、触媒を損傷する危険を伴う。より高い金属含有量を持つ触媒は一般に、より低い金属含有量を持つ触媒よりも低い最大触媒温度を要求するだろう。一般に、再生工程の間の最大触媒温度は、最大でも650℃、好ましくは最大でも575℃、より好ましくは最大でも550℃、さらにより好ましくは最大でも525℃である。
【0054】
再生工程の間の最大触媒温度は、一般に少なくとも300℃、好ましくは少なくとも350℃、より好ましくは少なくとも400℃、さらにより好ましくは少なくとも450℃である。
【0055】
この明細書において、示されたどの温度も、そうでないと明示的に示されたときを除いて触媒の温度に関係することが注記される。触媒温度は、当業者に知られた任意の様式で、たとえば適当に置かれた熱電対によって測定されることができる。
【0056】
再生段階は、酸素の存在下に2段階で、すなわち第1の、より低温の段階および第2の、より高温の段階で実施されることが好まれる。第1の、より低温の段階では、触媒は酸素含有ガスと100〜370℃、好ましくは175〜370℃の温度で接触させられる。第2の、より高温の再生段階では、触媒は酸素含有ガスと300〜650℃、好ましくは320〜550℃、さらにより好ましくは350〜525℃の温度で接触させられる。第2段階の間の温度は、上述の第1段階の温度よりも好ましくは少なくとも10℃だけ、より好ましくは少なくとも20℃だけ高い。適当な温度範囲の決定は、上の指摘を考慮に入れれば十分に当業者の能力範囲内にある。
【0057】
触媒は移動床プロセスで、好ましくは、適用可能であれば、1〜15cmの床高さで再生されることが好まれる。本明細書の文脈において、「移動床」の語は、触媒が装置に比べて運動状態にあるすべてのプロセス、たとえば沸騰床プロセス、流動化プロセス、触媒が装置内を循環しているプロセス、および触媒がその中で運動状態にあるすべての他のプロセスのことを指すことが意図される。ストリッピングを含む再生工程の持続時間は、触媒の特性および該工程が実施される厳密な様式に依存するだろうが、一般に0.25〜24時間、好ましくは2〜16時間であろう。
【0058】
再生された触媒は、上述された本発明に従う方法で酸および添加剤と接触させられるだろう。
【0059】
本発明は、以下の実施例によって例証されることになるが、これらにまたはこれらによって限定されるべく意図されてはいない。
【実施例】
【0060】
実施例1:使用された触媒をクエン酸およびポリエチレングリコールを用いて活性化すること
【0061】
軽質軽油(LGO)原料の水素化処理に12月間使用された水素化処理触媒が、以下のように再生された。触媒は23.2重量%の炭素、9重量%の硫黄、および22.4重量%の炭化水素を含有していた。最初の段階で、炭化水素がストリッピングによって触媒から除かれた。それから、触媒は、490〜500℃の温度で24時間、それを空気と接触させることによって再生された。このようにして得られた再生された出発物質は、アルミナ担体上にモリブデン、コバルト、およびリンを含有していた。
【0062】
再生された触媒は、クエン酸およびポリエチレングリコールを、それぞれ水素化金属のモル当たり0.1モルの酸および水素化金属のモル当たり0.5モルのポリエチレングリコールの量で含有する含浸溶液を用いて細孔容積含浸法によって含浸され、そしてその後120℃の温度で一晩乾燥された。
【0063】
触媒は、以下の特性を持つLGO原料について試験された。
【0064】
【表1】

【0065】
触媒は、1.5時−1の液時空間速度(LHSV)および200Nl/lの水素/油比で、温度および圧力を変えた種々の条件で試験された。各条件は2日間維持された。該触媒は、新品の触媒と並行して試験された。試験条件および該2触媒の活性が以下に示される。
【0066】
【表2】

【0067】
上表から判るように、使い尽くされそして再活性化された触媒の活性は、新品の触媒の活性と実質的に同じ高さの活性に戻されていた。比較して、使い尽くされた触媒の再生後の活性は、その初期活性と比較して70%であった。
【0068】
実施例2:使用された触媒をリン酸およびポリエチレングリコールを用いて活性化すること
【0069】
LGO原料の水素化処理に24月間使用された水素化処理触媒が、以下のように再生された。触媒は25.4重量%の炭素、8.8重量%の硫黄、および18.3重量%の炭化水素を含有していた。最初の段階で、炭化水素がストリッピングによって触媒から除かれた。それから、触媒は、450℃の温度で24時間、それを空気と接触させることによって再生された。このようにして得られた再生された出発物質は、アルミナ担体上にモリブデン、コバルト、およびリンを含有していた。
【0070】
再生された触媒は、リン酸およびポリエチレングリコールを、水素化金属のモル当たり0.2モルのポリエチレングリコールの量で含有する含浸溶液を用いて細孔容積含浸法によって含浸され、そしてその後120℃の温度で一晩乾燥された。最終触媒はPとして計算されて4.8重量%のリンを含有し、一方、元の触媒は1.6重量%を含有していた。
【0071】
触媒は、以下の特性を持つLGO原料について試験された。
【0072】
【表3】

【0073】
触媒は、3.92MPaの水素分圧、1.5時−1の液時空間速度(LHSV)、および200Nl/lの水素/油比で、温度を変えた種々の条件で試験された。各条件は2日間維持された。該触媒は、新品の触媒と並行して試験された。試験条件および該2触媒の活性が以下に示される。
【0074】
【表4】

【0075】
上表から判るように、使い尽されそして再活性化された触媒の活性は、新品の触媒の活性と実質的に同じ高さの活性に戻されていた。比較して、炭化水素油の水素化処理に24月間使用された後の使い尽された触媒の水素化脱硫(HDS)についての相対容積活性は、その初期相対容積活性と比較して53%まで減少していた。
【0076】
実施例3:使用された触媒をクエン酸およびポリエチレングリコールを用いて活性化すること
【0077】
炭化水素供給原料の水素化処理に使用された水素化処理触媒が、以下のように再生された。触媒は17.9重量%の炭素および10.7重量%の硫黄を含有していた。触媒は500〜530℃の温度で、それを空気と接触させることによって再生された。このようにして得られた再生された出発物質は、アルミナ担体上にモリブデン、ニッケル、およびリンを含有していた。
【0078】
再生された触媒は、クエン酸およびポリエチレングリコールを、それぞれ水素化金属のモル当たり0.09モルの酸および水素化金属のモル当たり0.22モルのポリエチレングリコールの量で含有する含浸溶液を用いて細孔容積含浸法によって含浸され、そしてその後24時間湿った状態で熟成されそして90℃の温度で一晩乾燥された。
【0079】
触媒は、以下の特性を持つ分解軽油(CGO)原料について試験された。
【0080】
【表5】

【0081】
触媒は、387℃の温度、100バールの圧力、2.1時−1の液時空間速度(LHSV)、および1000Nl/lの水素/油比で試験された。再生されそして再活性化された触媒の水素化脱窒素活性は、新品触媒の水素化脱窒素活性の90%であった。比較して、使い尽くされた触媒の再生後であるが再活性化前の活性は、新品触媒の活性の約60%であった。
【0082】
比較例1〜3および実施例4〜8:
比較例1〜3および実施例4〜8では、種々の触媒が後述のように調製された。触媒は、液状軽油(LGO)について340℃の温度、45バールの圧力、2.5時−1の液時空間速度(LHSV)、および200Nl/lの水素/油比で試験された。水素化脱硫活性が測定された。測定された相対容積活性価(RVA)が下表に示される。
【0083】
モリブデン酸コバルトの結晶質部分(CRYS)がX線回折を使用して測定された。(触媒重量に対する重量百分率として表現された)結晶質部分は、100パーセント結晶質のα−モリブデン酸コバルトから決定された較正曲線に対するα−モリブデン酸コバルト結晶反射のピーク面積を評価することによって、X線回折図から数値が求められる。
【0084】
すべての再活性化は、有機添加剤および/または酸を含有する溶液を用いた細孔容積含浸、それに続く60℃で2時間の熟成、それに続く120℃での乾燥によって実施された。
【0085】
比較例1(CE1)は、実施例1に記載された再生された触媒である。比較例2(CE2)では、CE1の触媒がクエン酸(CA)だけを(触媒重量に対して)5重量%の量で使用して再活性化される。比較例3(CE3)では、CE1の触媒がポリエチレングリコール(PEG)だけを(触媒重量に対して)10重量%の量で使用して活性化される。本発明に従う実施例4(Ex4)では、CE1の触媒が4重量%のCAおよび10重量%のPEGを用いて活性化される。実施例5(Ex5)では、CE1の触媒が10重量%のCAおよび10重量%のPEGを用いて活性化される。実施例6(Ex6)では、CE1の触媒が3.75重量%の酢酸(HAC)および10重量%のPEGを用いて活性化される。実施例7(Ex7)では、CE1の触媒が4重量%のCAおよび5重量%のグリセロール(GLY)を用いて活性化される。
【0086】
本発明に従う方法は、使用されそして再生された触媒の触媒活性のほとんど完全な回復を、特により高いクエン酸含有量においてもたらすと結論付けられることができる。これらの実施例は、酸と有機添加剤との相乗効果を示す。
【0087】
比較例4(CE4)は、シリカ/アルミナ担体上にコバルトおよびモリブデンを含み、500℃の温度で焼成された新品の触媒に関する。本発明に従う実施例8(Ex8)は、4重量%のCAおよび10重量%のPEGを用いて再活性化されたCE4の触媒である。実施例8は、有意の活性の改善が新品の触媒を再活性化することによって得られることもできることを示す。
【0088】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VIB族金属酸化物および第VIII族金属酸化物を含む水素化処理触媒を活性化する方法において、該触媒を酸並びに80〜500℃の範囲の沸点およびリットル当たり少なくとも5グラムの水中溶解度(20℃、大気圧)を持つ有機添加剤と接触させ、任意的に引き続いて添加剤の少なくとも50%が触媒中に保持されるような条件下に乾燥してもよいことを含む、上記方法。
【請求項2】
活性化された水素化処理触媒が、5重量%(触媒の全重量に対する第VIB族および第VIII族の金属の結晶質化合物の重量分率として表現された)未満の結晶質部分を含む、請求項1に従う方法。
【請求項3】
活性化された水素化処理触媒が、実質的に結晶質部分を含まない、請求項1〜2のいずれか1項に従う方法。
【請求項4】
水素化処理触媒が、使用されて再生されている水素化処理触媒である、請求項1〜3のいずれか1項に従う方法。
【請求項5】
水素化処理触媒が、新品の水素化処理触媒である、請求項1〜3のいずれか1項に従う方法。
【請求項6】
新品の水素化処理触媒が、焼成されている、請求項5に従う方法。
【請求項7】
新品の水素化処理触媒が、少なくとも0.5重量%の結晶質部分を含む、請求項5〜6のいずれか1項に従う方法。
【請求項8】
酸を含有する触媒組成物が、湿った状態で熟成段階に付される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
触媒組成物が、結晶質部分を5重量%未満に低減するのに十分な時間熟成される、請求項8に従う方法。
【請求項10】
酸濃度が、(触媒の全重量に対して)少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも7重量%、もっとも好ましくは少なくとも10重量%である、請求項1〜9のいずれか1項に従う方法。
【請求項11】
酸が、無機酸、好ましくはリン含有無機酸である、請求項1〜10のいずれか1項に従う方法。
【請求項12】
酸が、少なくとも1のカルボキシル基および1〜20の炭素原子を含むカルボン酸である、請求項1〜11のいずれか1項に従う方法。
【請求項13】
酸がクエン酸である、請求項12に従う方法。
【請求項14】
添加剤が、100〜400℃の範囲の沸点および室温(20℃)(大気圧)においてリットル当たり少なくとも5グラムの水中溶解度を持つ、有機の、酸素または窒素を含有する化合物である、請求項1〜13のいずれか1項に従う方法。
【請求項15】
添加剤が、分子当たり少なくとも2のヒドロキシル基および2〜10の炭素原子を含む化合物、並びにこれらの化合物の(ポリ)エーテルの群から選ばれる、請求項14に従う方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に従う方法によって得ることができる水素化処理触媒。
【請求項17】
第VIII族金属酸化物および第VI族金属酸化物を含む水素化処理触媒であって、さらに酸並びに80〜500℃の範囲の沸点およびリットル当たり少なくとも5グラムの水中溶解度(20℃、大気圧)を持つ有機添加剤を含んでいる、上記触媒。
【請求項18】
請求項16に従う水素化処理触媒であって、該触媒が使用されて再生された触媒または新品の焼成された触媒であり、かつ該触媒が5重量%(触媒の全重量に対する第VIB族および第VIII族の金属の結晶質化合物の重量分率として表現された)未満の結晶質部分を含んでいる、上記触媒。
【請求項19】
炭化水素供給原料が水素化処理条件下に請求項10に従う触媒と接触させられ、該触媒は、炭化水素供給原料と接触させられる前に任意的に(予備)硫化されていてもよい、炭化水素供給原料を水素化処理する方法。

【公開番号】特開2012−45545(P2012−45545A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225199(P2011−225199)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【分割の表示】特願2006−530067(P2006−530067)の分割
【原出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505002495)アルベマーレ ネザーランズ ビー.ブイ. (19)
【出願人】(594169123)日本ケッチェン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】