説明

水素化法

【課題】効率の高い水素化法を提供する。
【解決手段】(i)少なくとも1個の不飽和炭素−炭素結合を含有する化合物の不均一系水素化法、及び(ii)少なくとも1個のC−Cl、C−Br又はC−I結合を含有する化合物の不均一系水添脱ハロゲン化法であって、本方法は、該化合物をイオン性液体の存在下に水素化剤及び不均一系水素化触媒と反応させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化法、及びそれらの生成物に関する。本明細書中で用いられる場合、用語「水素化」は、水添脱ハロゲン化も包含する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素化反応は、プロパン−2−オールなどの有機溶媒中で行われてきた。しかし、こうした溶媒は、多くの場合、選択的である助触媒を必要とし、溶媒から反応生成物(複数を含む)を抽出することが、なお必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、これらの不利点を克服することを目的とし、且つ、さらに、水素化反応を従来良好な選択性をもって遂行することができる新規の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの側面に従って、少なくとも1個の不飽和炭素−炭素結合を含有する化合物の接触水素法において、該化合物をイオン性液体の存在下に水素化剤及び不均一系水素化触媒と反応させることを特徴とする接触水素化法を提供する。
【0005】
さらに、本発明は、少なくとも1個のC−Cl、C−Br又はC−I結合を含有する化合物の水添脱ハロゲン化法において、該化合物をイオン性液体の存在下に水素化剤及び不均一系水素化触媒と反応させることを特徴とする水添脱ハロゲン化法を提供する。従って、本発明は、化合物が、少なくとも一つのC−Cl結合を含有し、且つ、水素化剤が、イオン性液体の存在下に混合されることを特徴とする化合物の不均一系水添脱ハロゲン化法を包含する。
【0006】
従って、本発明の第一の側面において、本発明は、化合物中の不飽和脂肪族炭素の不均一系水素化法において、該化合物と水素化剤をイオン性液体の存在下に混合することを特徴とする不均一系水素化法と定義することができる。
【0007】
一つ以上のイオン性液体又はイオン性液体のあらゆる組合せを本発明に用いることができる。
【0008】
用語「イオン性液体」は、固体を溶融することによって生成することができ、そのように生成された時のイオンからのみ成る液体を指す。イオン性液体は、有機塩、特に、複素環式窒素含有化合物の塩から誘導することができ、そうしたイオン性液体は、本発明の方法での使用に特に好ましい。
【0009】
イオン性液体は、一つの化学種のカチオン及び一つの化学種のアニオンを含む均一系物質から形成されていてもよいし、又は一つ以上の化学種のカチオン及び/又はカチオンから成ることもできる。従って、イオン性液体は、一つ以上の化学種のカチオンと一つの化学種のアニオンから成っていてもよい。さらに、イオン性液体は、一つの化学種のカチオンと一つ以上の化学種のアニオンから成っていてもよい。
【0010】
従って、要約すると、本明細書中で用いられる場合、用語「イオン性液体」は、単一の塩(一つのカチオン性化学種及び一つのアニオン性化学種)から成る均一組成物を指すこともあり、又は一つ以上の化学種のカチオン及び/又は一つ以上の化学種のアニオンを含有する不均一組成物を指すこともある。
【0011】
用語「イオン性液体」には、高融点を有する化合物と低融点、例えば、室温以下(すなわち、15〜30℃)の融点を有する化合物の両方が含まれる。後者は、多くの場合、「室温イオン性液体」と呼ばれ、ピリジニウム及びイミダゾリニウムをベースにしたカチオンを有する有機塩から通常は誘導される。
【0012】
イオン性液体の特徴は、著しく低い(本質的にゼロ)蒸気圧を有することである。多くの有機イオン性液体は、低融点(例えば、100℃未満、特に、100℃未満、及び室温周辺、例えば、15〜30℃)を有する。0℃より充分に低い融点を有するものもある。
【0013】
イオン性液体は、正電荷のカチオンと負電荷のアニオンという二つの成分から成ると考えることができる。一般に、塩(アニオン及びカチオンから成る)である基準に見合い、且つ、反応温度もしくはその付近で液体であるか、又はどの反応段階の間も液状で存在する一切の液体は、本発明の方法での使用にとりわけ適するイオン性液体と定義することができる。
【0014】
例えば、本発明での使用に適するイオン性液体には、アルキル化ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール及びトリアゾールの塩などのアルキル化又はポリアルキル化ヘテロアリール化合物の塩が挙げられる。従って、適するイオン性液体の例には、下記の式:
【0015】
【化1】

(式中、
は、C〜Cアルコキシ、C〜C10アリール、CN、OH、NO、C〜C30アラルキル及びC〜C30アルカリールから選択された1から3個の基により置換されていることもある、C〜C40(好ましくは、C〜C20、及びさらに好ましくは、C〜C20)直鎖もしくは分枝鎖アルキル基又はC〜Cシクロアルキル基であり;
、R、R、R及びRは、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、且つ、H又は上で定義したようなRのいずれかから各々独自に選択され;ならびに
Aは、電荷nを有するアニオンを表し;
nは、1〜3でありうる)
を有するものが挙げられる。好ましくは、上記化合物において、nは、1である。
【0016】
好ましくは、Rは、上で定義したような非置換アルキル又はシクロアルキル基である。R、R、R、R及びRは、好ましくは水素である。
【0017】
本発明の方法での使用に好ましいイオン性液体におけるカチオンは、好ましくは、1,3−ジアルキルイミダゾリウムである。本方法のための他のカチオンには、他の置換ピリジニウムカチオン又はアルキルもしくはポリアルキルピリジニウムカチオン、アルキルイミダゾリウムカチオン、イミダゾールカチオン、アルキルもしくはポリアルキルイミダゾリウムカチオン、アルキルもしくはポリアルキルピラゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、アルキルもしくはポリアルキルアンモニウムカチオン、アルキルもしくはポリアルキルホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0018】
本方法のためのアニオンは、好ましくは、リン酸塩又はアミドである。他のアニオンには、硫酸塩もしくは亜硫酸塩などの硫黄含有アニオン;硝酸塩、亜硝酸塩などの窒素含有アニオン;アルキルスルホン酸塩;又は、塩化物、臭化物もしくは他のハロゲン化物;硫酸水素塩;金属のオキソアニオン;セレニウム、テルル、リン、砒素、アンチモン、ビスマスをベースにしたアニオン;及びテトラフルオロホウ酸塩、[BF]などのハロゲン化ホウ素アニオンが挙げられる。
【0019】
特に好ましいイオン性液体は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩又はピラゾリウム塩である。従って、本発明の方法に有用なイオン性液体には、下記式:
【0020】
【化2】

(式中、
− 各Rは、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、及び各々が、C〜Cアルコキシ、C〜C10アリール、CN、OH、NO、C〜C30アラルキル及びC〜C30アルカリールから選択された1から3個の基により置換されていることもある、C〜C40直鎖又は分枝鎖アルキルから独自に選択され;
Aは、電荷nを有する、一つ以上の化学種のアニオンを表し;ならびに
nは、1〜3でありうる)
を有するイミダゾリウムカチオンベースのものが挙げられる。
【0021】
下記式:
【0022】
【化3】

(式中、
は、C〜Cアルコキシ、C〜C10アリール、CN、OH、NO、C〜C30アラルキル及びC〜C30アルカリールから選択された1から3個の基により置換されていることもある、C〜C40直鎖又は分枝鎖アルキルから独自に選択され;
Aは、電荷nを有する、一つ以上の化学種のアニオンを表し;及び
nは、1〜3でありうる)
を有するピリジニウムカチオンベースのイオン性液体も本発明の方法に適する。
【0023】
好ましくは、上記イオン性液体において、Rは、C〜C40、好ましくはC〜C20、及びさらにいっそう好ましくはC〜C12直鎖又は分枝鎖アルキルから独自に選択される。
【0024】
好ましいイオン性液体には、Aが、電荷nを有する単一化学種のアニオンを表す上記の式のものが挙げられ、1の電荷を有するアニオンは、特に好ましい。
【0025】
本方法において有用なイオン性液体には、Aが、フッ化ホウ素又はフッ化リン、NO、SO、HSO、HCO、[(CFSON]、[AsF]、アルキルスルホン酸塩、一又は二フッ素化アルキルスルホン酸塩(過フッ素化アルキルスルホン酸塩を含む)、カルボン酸アニオン、フッ素化カルボン酸アニオン及び金属ハロゲン化物から選択されたアニオンを表すものが挙げられる。
【0026】
Aが、[PF]、[BF]、[OSOCF]、[OSO(CFCF]、[OCOCF]、[OCO(CFCF]、[OCOCH]、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸水素塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、[(CFSON]、[B(アルキル)](この式中、各アルキルは、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、且つ、あらゆる直鎖もしくは分枝鎖C〜C10アルキル(好ましくは、C〜Cアルキル)基であることができる)、[SbF及び[AsF]から選択されたアニオンを表す上記の式を有するイオン性液体は、特に好ましい。
【0027】
Aが、[PF]、[BF]、[OSOCF]、[OSO(CFCF]、[OCOCF]、[OCO(CFCF]、[OCOCH]、[(CFSON]、[B(アルキル)](この式中、各アルキルは、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、且つ、あらゆる直鎖もしくは分枝鎖C〜C10アルキル(好ましくは、C〜Cアルキル)基であることができる)、[SbF及び[AsF]から選択されたアニオンを表す上記の式のイオン性液体は、さらにいっそう好ましい。
【0028】
他の好ましいイオン性液体には、アニオンが、リン酸塩又はアミドであるものがあげられる。
【0029】
[PF](ヘキサフルオロリン酸塩)のアニオン、[BF](テトラフルオロホウ酸塩)のアニオン及び[(CFSON]{ビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミド又はビストリフルイミド)のアニオンは、特に好ましく、イミダゾリウムカチオンをベースにしたカチオン性液体及びピリジニウムカチオンをベースにしたイオン性液体は、とりわけ好ましい。
【0030】
第一の実施形態において、本発明は、広範な他の官能基を含有することもある、アルケン(ジエン、共役ジエン、及びトリエンを含む)及びアルキンなどの広範な不飽和脂肪族炭素の水素化法を提供する。例えば、本発明の方法を用いて、基質中に存在することもある例えばカルボニル基の有意な還元をともなわずに、不飽和炭素−炭素結合の選択的水素化を達成することができる。従って、本方法におけるイオン性液体の使用は、そうした反応に高い、時として非常に高い選択性をもたらす。
【0031】
少なくとも1個の不飽和炭素−炭素結合を含有する広範な化合物を本発明の方法に従って水素化することができる。水素化することができる適切な化合物には、少なくとも1個のC=C結合を含有する化合物が挙げられる。本発明の方法は、複数のC=C結合、例えば、1から4個のC=C結合、好ましくは1から3個のC=C結合を含有する化合物の水素化にも容易に適用することができる。
【0032】
本発明の方法を用いて、少なくとも1個のC≡C結合を含有する化合物、ならびに複数のC≡C結合(例えば、2個以下のC≡C結合)を含有する化合物を水素化することもできる。
【0033】
本発明の方法は、広い分子量範囲を有する基質の水素化に容易に適用することができる。例えば、適する基質には、2から50個の炭素原子、好ましくは4から25個の炭素原子、及びさらに好ましくは6から20個の炭素原子を含有する化合物が挙げられる。
【0034】
本発明の第一の側面の水素化法を用いて、C=C官能基もしくはC≡C官能基のみを含有する化合物、又は水素化される不飽和炭素−炭素結合に加えて広範な他の官能基を有する化合物を両方とも水素化することができる。後者のケースでは、本方法は、非常に化学選択的でありうり、すなわち、他の官能基の水素化をともなわずに、例えば、C=C又はC≡C結合のみの選択的水素化を達成できることがわかった。
【0035】
アルキレン基質については、該触媒及びイオン性液体を変化させることによって、例えば、C=C結合を生成するためにC≡C結合の、部分水素化を達成することができる。さらに、該触媒及び反応条件を変化させることによって、アルカンへの完全水素化を達成することができる。
【0036】
本発明の水素化法は、少なくとも1個の不飽和炭素−炭素結合を含有する広範な化合物に適用することができ、そうした化合物には、アルケン、アルキン、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン、アミド、アルコール、脂肪酸及びそれらのエステル、ステロイド、プロスタグランジン、ニトリル、アルデヒド、ケトン、イソプレノイド、フラボノイド、イコサノイド、ならびにへテロ原子(複数を含む)が窒素又は酸素であることができる複素環部分を含有する化合物、ならびにアリール含有(例えば、フェニル含有)化合物などの芳香族部分を含有する化合物が挙げられる。
【0037】
好ましい基質には、アルケン、アルキン、アルデヒド、脂肪酸及びそれらのエステル(α,β−不飽和カルボニル基を含有するものを含む)が挙げられる。
【0038】
本発明の水素化法に適する基質である得に好ましいカルボニル含有化合物には、下記式:
【0039】
【化4】

(式中、
は、
水素;又は
〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル、F、CF、=O、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cジアルキルアミノ、−CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;又は
〜C10アルキル、ヒドロキシル、F、CF、CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキルから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
から選択され;及び
は、
〜C20アルキル、C〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル、F、CF、=O、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cジアルキルアミノ、−CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルケニル又はC〜Cシクロアルケニル;又は
〜C10アルキル、ヒドロキシル、F、CF、CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキルから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
を表す)
を有するものが挙げられる。
【0040】
好ましくは、上記化合物において、
は、
水素;
〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル、F、CF、=O又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;又は
〜C10アリール
から選択され;ならびに
は、
〜C20アルキル、C〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、ヒドロキシル、F、CF、又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルケニル又はC〜Cシクロアルケニル;又は
〜C10アリール
を表す。
【0041】
が、水素;C〜C10直鎖又は分枝鎖アルキルから選択され;及び
が、C〜C20アルキル又はC〜C10アリールから独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルケニル又はC〜Cシクロアルケニルを表す
上記の式の化合物も好ましい。
【0042】
が、水素;C〜C10直鎖又は分枝鎖アルキルから選択され;及び
が、C〜C10アルキル又はフェニルで置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルケニル又はC〜Cシクロアルケニルを表す
化合物は、特に好ましい。
【0043】
本発明の水素化法は、α,β−不飽和カルボニル基が存在する上で定義したような化合物に特に適する。そうした化合物において、炭素−炭素二重結合を選択的に水素化できる、すなわち、C=O結合に優先してC=C結合を水素化することができることがわかった。
【0044】
適する化合物の特定の例には、シンナムアルデヒド、2−オクテナール、シトラール、メチルビニルケトン、3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド及びベンジリジンアセトンが挙げられる。
【0045】
本発明を用いて水素化することができるアルケンには、下記式:
【0046】
【化5】

(式中、
、R、R及びRは、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、ならびに各々が、
− 水素;
− C〜C10アルケニル、C〜Cシクロアルケニル、C〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル、F、CF、=O、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cジアルキルアミノ、−CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;
− C〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニル;
− C〜Cシクロアルケニル;又は
− C〜C10アルキル、ヒドロキシル、F、CF、CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H及びC〜C20アルキルから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
から独自に選択される)
を有するものが挙げられる。
【0047】
好ましくは、R、R、R及びRが、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、ならびに各々が、
− 水素;
− C〜C10アルケニル、C〜Cシクロアルケニル、C〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル、F、CF又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;及び
− C〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニル
から独自に選択される。
【0048】
、R、R及びRが、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、ならびに各々が、
− 水素;
− C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;及び
− C〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニル
から独自に選択される化合物も好ましい。
【0049】
、R、R及びRが、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、ならびに各々が、水素;C〜C20直鎖又は分枝鎖アルキル;及びC〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニルから独自に選択される化合物は、特に好ましい。
【0050】
及びRが、各々、水素を表す上記の式のアルケンは、特に好ましい。
【0051】
及びRが、C〜C20直鎖又は分枝鎖アルキル、C〜Cシクロアルキル及びC〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニルから各々独自に選択される上記の式のアルケンも好ましい。
【0052】
好ましいアルケン基質は、R、R及びRが、各々、水素を表し、ならびにRが、前記経過いずれかにおいて定義したとおりであるものである。
【0053】
従って、本発明の水素化法は、下記式:
【0054】
【化6】

(式中、R、R及びRは、前記経過いずれかにおいて定義したとおりである)
を有するものを含む広範なアルケンに適用することができる。
【0055】
特に好ましいアルケン基質には、R、R、R又はRが、C〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニルを表す、上で定義したようなものが挙げられる。
【0056】
本発明の方法は、下記式:
【0057】
【化7】

(式中、
及びR10は、
− 水素;
− C〜C10アルケニル、C〜Cシクロアルケニル、C〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル、F、CF、=O、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cジアルキルアミノ、−CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;ならびに
− C〜C10アルキル、ヒドロキシル、F、CF、CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキルから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
から各々独自に選択される)
を有するものを含むアルキンの水素化にも適する。
【0058】
特に適するアルキン基質は、R及びR10が、
− 水素;
− C〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;及び
− C〜C10アルキル、ヒドロキシル、F又はOR(ここで、Rは、H及びC〜C20アルキルから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
から各々独自に選択されるものである。
【0059】
及びR10が、
− 水素;
− C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;及び
− C〜C10アルキル、ヒドロキシル、F又はOR(ここで、Rは、H及びC〜C20アルキルから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
から各々独自に選択される化合物は、特に好ましい。
【0060】
及びR10が、
− 水素;
− C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;及び
− C〜C10アルキル、ヒドロキシル、又はOR(ここで、Rは、H及びC〜C10アルキルから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
から各々独自に選択される化合物も好ましい。
【0061】
及びR10が、水素;ヒドロキシルにより置換されていることもあるC〜C10アルキル;又はフェニルから各々選択される、上記の式のアルキンは、特に好ましい。
【0062】
上記の式の特に好ましいアルキンは、R又はR10の少なくとも一方が水素であるものである。
【0063】
本発明の水添脱ハロゲン化法のための基質は、少なくとも1個のC−Cl、C−Br又はC−I結合を有するあらゆる化合物であることができる。適する基質には、化合物が、下記式:
【0064】
【化8】

(式中、
Pは、
− C〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル、F、CF、=O、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cジアルキルアミノ、−CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;又は
− C〜C10アルキル、ヒドロキシル、F、CF、CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H及びC〜C20アルキルから選択される)から独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
− ヘテロアリール;又は
− ヘテロシクロアルキル
から選択された基を表し;ならびに
Xは、Cl、Br又はIを表す)
を有するものが挙げられる。
【0065】
これらの化合物の中で、
Pが、
− C〜C10アリール、C〜C20アラルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシルから独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;
− C〜C10アルキル又はヒドロキシルから独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
− ヘテロアリール;又は
− ヘテロシクロアルキル
を表すものは、好ましい。
【0066】
Pが、
− C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;又は
− C〜C10アルキル又はヒドロキシルから独自に選択された1から3個の置換基で置換されていることもある、C〜C10アリール
− プリン又はピリミジンであるヘテロアリール;又は
− ヘテロシクロアルキル
を表す化合物も好ましい。
【0067】
本発明の水添脱ハロゲン化法は、少なくとも1個のC−Cl結合を含有する化合物に特に適する。
【0068】
本発明は、本明細書中に記載されている方法によって得ることができるあらゆる生成物に及ぶ。
【0069】
本発明の方法では、あらゆる適する不均一系水素化触媒を用いることができる。ニッケル(例えば、ラネーニッケル)、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及び白金(ゼロの酸化状態を有する)を含む不均一系水素化触媒は、特に好ましい。
【0070】
特に好ましい不均一系水素化触媒は、パラジウム又は白金を含むものである。
【0071】
該不均一系触媒は、好ましくは、微粒子状金属の形態である。
【0072】
典型的には、該触媒は、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム及び硫酸バリウムなどの不活性担体上に担持されている。
【0073】
好ましい不活性担体材料は、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、アルミナ又はシリカから選択される。
【0074】
本発明において使用するための水素化触媒は、不均一系であり、すなわち、イオン性液体に溶解するのではなく、代わりにイオン性液体中に懸濁物として残る。しかし、該触媒は、好ましくは非コロイド状であり、すなわち、担体(存在する場合)を含む触媒の粒径は、20μmより大きい、好ましくは50μmより大きい、及び好ましくは100μmより大きい。
【0075】
好ましくは、本発明の方法は、白金又はパラジウムグループの金属、詳細には例えば炭素、グラファイト又はアルミナに担持されている状態の白金又はパラジウムグループの金属を触媒として用いる。
【0076】
本方法において使用される水素化剤は、典型的には分子水素又は有機もしくは無機水素移動剤である。水素移動剤[例えば、Johnstoneら,Chem.Rev.(1985),85,129及びBriegerら,Chem.Rev.(1974),74,567−580参照]は、水素を遊離することができ、それら自体は酸化される化合物である。そうした水素移動剤の一例は、シクロヘキサンであり、これを、例えば、パラジウム触媒及びアルケン基質の存在下に次の反応:
【0077】
【化9】

に付す。こうした方法では、アルケンは、水素化され、一方、シクロヘキセンは、ベンゼンに酸化される。
【0078】
他の適する水素化剤には、分子ジュウテリウム、HD、分子トリチウム、HT、DT、又は有機もしくは無機の水素、ジュウテリウムもしくはトリチウム移動剤が挙げられる。
【0079】
しかし、好ましくは、水素化剤は、分子水素又は有機もしくは無機の水素移動剤である。分子水素は、水素化剤として特に好ましい。
【0080】
好ましくは、本発明の水素化法は、15℃から200℃、好ましくは15℃から140℃、及びさらに好ましくは20℃から100℃の温度で行われる。良好な結果は、40℃から60℃の温度で得られる。
【0081】
気体でない水素化剤を用いる場合には、大気圧で反応を行うことができる。
【0082】
分子水素などの気体の水素化剤を用いる場合、101kPa(すなわち、大気圧)〜8MPaの圧力で反応を行うことができる。典型的には、こうした反応は、150kPa(好ましくは、1MPa)〜5MPa、及びさらに好ましくは2.5MPa〜4.5MPaの圧力で行われる。良好な結果は、3MPa〜4.2MPaの反応圧を用いて、得ることができる。
【0083】
水素化反応は、化学工業において不均一系触媒の使用が最も多いもののうちの一つの代表である。反応の範囲は、脱ハロゲン化からアルケンの単純な還元、そしてα,β−不飽和カルボニル含有分子の選択的還元まで可能である。イオン性液体は、かつて、どの不均一系触媒反応にも用いられたことがない。また、選択性が劣っていることもある及び/又は生成物の分離及び触媒/溶媒系の再利用に伴う問題がある多くの通常の有機溶媒及び水性溶媒を超える明確な利点をもたらす。
【0084】
本発明者らは、水素化反応にイオン性液体中の不均一系触媒を適用することを最初に見出したのは本発明者らであると考えている。水素化反応後、水素化触媒は、イオン性液体中に懸濁したままであり、従って、該触媒を空気又はフィルタにさらす必要なく、反応混合物から容易に再利用することができる。これは、特に触媒の再利用が必要な場合、水素化法の安全性を増大させる。イオン性液体は、通常の有機溶媒以上に所定の触媒のために選択性をチューニングすることができる媒質も提供する。
【0085】
本明細書中で論ぜられている特定のイオン性液体には、
ヘキサフルオロリン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(bmimPF)、
ヘキサフルオロリン酸1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム(CmimPF)、
ヘキサフルオロリン酸1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム(CmimPF)、
ヘキサフルオロリン酸1−デシル−3−メチルイミダゾリウム(C10mimPF)、
ヘキサフルオロリン酸1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム(C12mimPF)、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス((トリフルオロメチル)スルホニル)アミド(emimNTf)、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス((トリフルオロメチル)スルホニル)アミド(CmimNTf)、
テトラフルオロホウ酸1−ヘキシルピリジニウム(Cpy BF)、
テトラフルオロホウ酸1−オクチルピリジニウム(Cpy BF)、
テトラフルオロホウ酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(bmimBF
が挙げられる。
【0086】
別様に示されていない限り、本明細書中で用いられる用語は、下に示す意味を有する:
「アルキル」(アルキルオキシ、アルカリール、アラルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノのアルキル部分を含む)は、1〜40個の炭素原子、好ましくは1〜40個の炭素原子、及びさらに好ましくは4〜12個の炭素原子を含有する直線状及び分枝状の炭素鎖を表す。
【0087】
「シクロアルキル」は、3〜20個の炭素原子、好ましくは3〜8個の炭素原子を含有する分枝状又は非分枝状の飽和炭素環を表す。こうしたシクロアルキル基には、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0088】
「ヘテロシクロアルキル」は、−O−、又は−N(C〜Cアルキル)、又はNHから選択された1から3個のへテロ原子部分が割り込んでいることを特徴とする、3から12個の炭素原子、好ましくは4から6個の炭素原子を含有する分枝状又は非分枝状の飽和炭素環を表す。こうしたヘテロシクロアルキル基には、2−又は3−テトラヒドロフラニル、2−、3−又は4−ピペリジニル、2−、3−又は4−ピペリジニル、モルホリニル、2−又は3−ピロリジニル及び2−又は4−ジオキサニルが挙げられる。
【0089】
「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有し、且つ、2から40個の炭素原子、好ましくは2から20個の炭素原子、及びさらに好ましくは2から12個の炭素原子を含有する直線状及び分枝状の炭素鎖を表す。従って、本明細書中で用いられる場合、用語「アルケニル」は、ジエン(共役ジエンを含む)、トリエン及びテトラエンを包含する。
【0090】
「シクロアルケニル」は、少なくとも1個のC=C結合を含有することを特徴とする、3から20個の炭素原子、好ましくは3から8個の炭素原子を含有する分枝状又は非分枝状の飽和炭素環を表す。シクロヘキセニル及びシクロペンテニルは、特に好ましいシクロアルケニル基である。
【0091】
「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有し、且つ、2から20個の炭素原子、好ましくは2から20個の炭素原子、及びさらに好ましくは2から12個の炭素原子を含有する直線状及び分枝状の炭素鎖を表す。
【0092】
「アリール」(例えば、アラルキル中のアリール部分を包含する)は、6から15個の炭素原子(好ましくは、6から10個の炭素原子)を含有し、且つ、少なくとも1個の芳香族環を有する炭素環基を表し、該炭素環のすべての利用可能、置換可能な炭素原子が、可能な結合点と考えられる。好ましいアリール基には、フェニル及びナフチルが挙げられる。別様に示されていない限り、この用語「アリール」には、1から3個の下記の置換基:C〜Cアルキル、OH、O(C〜Cアルキル)、フェノキシ、CF、(C〜Cアルキル)アミノ、ジ(C〜Cアルキル)アミノ、−COO(C〜Cアルキル)又はNO、で場合によっては置換されているような炭素環基が含まれる。
【0093】
「ヘテロアリール」は、環状炭素構造に割り込む−O−又は−N−から選択された少なくとも一つのヘテロ原子を有し、且つ芳香族性をもたらすために充分な数の非局在化π電子を有する環状の基を表し、この芳香族複素環は、好ましくは2から14個の炭素原子を含有する。適するヘテロアリール基には、ピリジン、インドール、イミダゾール、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、トリアゾール、ピラゾール、ならびにプリン及びピリミジンが挙げられる。
【0094】
本発明を以下の実施例及び図によって詳細に論じよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
実施例
以後の実施例におけるすべての反応は、バスカーヴィル・ミニ・オートクレーブ(Baskerville mini autoclave)内で行った。すべての結果についての選択率は、次のとおり定義する:
%選択率n = %n/生成された生成物の%の合計 × 100
(式中、%nは、nの収率である)。
【0096】
以下の実施例において用いられているものを含む、本発明において使用するためのイオン性液体は、国際公開公報第01/40156号に開示されているものなどの方法により製造することができる。
【実施例1】
【0097】
1.0 白金ベースの触媒を用いるシンナムアルデヒドの水素化
水素ガスを用い、不均一系触媒を用いて、シンナムアルデヒド、1を還元に付して、シンナミルアルコール、2、ヒドロシンアムアルデヒド、3、及び3−フェニルプロパノール、4の3つの生成物を生成することができる。この反応は、下に示すように、1→2→4又は1→3→4の二つの異なる経路で進行しうる。この反応は、選択性の制御、ならびに3−フェニルプロパノールへのさらなる還元を伴わないシンナムアルコール及びヒドロシンナムアルデヒドの生成の促進を目的として、多数の研究者により、広範囲にわたって研究されてきた。これらの調査は、スズのドーピング又はゼオライトベースの触媒の使用など、触媒に対する助触媒の作用に集中していた。本研究の目的は、不均一系触媒反応のためのイオン性液体を開発すること、及び特に本件では、特に、高価な触媒を必要とせずに溶媒が助触媒として作用するかどうかを調査することであった。
【0098】
【化10】

各系を、基準溶媒としてのプロパン−2−オールと比較した。最良のケースでは、触媒の再利用を試みた。この調査は、イオン性液体が不均一系触媒反応において選択性を助長する可能性とともに、再活性化する必要なく、触媒を再利用する能力を示している。幾つかの機械作用の詳細も研究したが、それらは、第二の還元プロセスよりむしろ、2と3の間の異性化が、還元の全体的な選択性を支配していることを示している。
【0099】
別様に述べていない限り、反応は、4MPaの水素圧及び60℃の温度のもとで行った。白金触媒は、1時間、350℃の水素流の中で予備還元した。イオン性液体(2mL)、17.5mg(5重量%Pt触媒)及びシンナムアルデヒド0.5mL(基質/金属 〜800/1)をオートクレーブに導入し、アルゴンで3回バージした。4MPaで水素を導入し、オートクレーブを必要な温度に加熱した。反応を放置して6時間攪拌し、反応が冷却した時点で圧力を開放した。
【0100】
ジエチルエーテル(2×10mL)を用いて反応生成物を抽出した。これによって、イオン性液体中に触媒を保持しながら、すべての有機生成物が除去される。生成物の選択率及び転化率は、GC−FIDを用いて判定した。
【0101】
表1 一定範囲のイオン性液体中、5%Pt/グラファイトを用いるシンナムアルデヒドの水素化についての結果及び最初のスクリーニングの結果の要約
【0102】
【表1】

これらの結果は、シンナムアルデヒドの水素化が、[BFイオン性液体中で抑制されること、及び[NTF]ベースの系が、[BFを含有するものより活性であることを示唆している。イオン性液体系についての転化率は、プロパン−2−オールと比較して低いが、より高い選択率を高い転化率で保持した。すべてのイオン性液体の反応において、4の収率はごくわずかであるが、プロパノール−2−オールの反応では、これが転化率100%での生成物の大部分を占めることに、ご注意いただきたい。試験した他のアニオンには、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸水素塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩及び(S)−乳酸塩が挙げられる。これらは、結果として、殆ど又は全く転化しなかった。Pt/グラファイトをPt/アルミナと交換したところ、結果として、一般に、選択率及び転化率が低下した。
【0103】
微量の硝酸の添加によって、選択率に有意な影響を及ぼすことなく、収率が47%から60%に増加した。この酸が、触媒表面の性質を変化させるかどうか、又は反応の酸化還元化学に影響を及ぼすかどうかは、また明確ではない。しかし、酸の添加は、本処理に有害ではある。通常の有機溶媒へのイオン性液体の溶解度を上昇させる結果として、抽出の間に触媒とイオン性液体の両方が有機溶媒に抽出されることとなるからである。
【0104】
ピリジニウム及びアンモニウムイオン性液体中でも多数の還元を行ったが、殆ど成功しなかった。ピリジニウム及びアンモニウムBF及びビストリフルイミド液は、ピロリジニウム及びピペリジニウムビストリフルイミドのケースと同様に、反応を示さなかった。用いた「固体」溶媒(例えば、ピリジニウムPF系)のすべてが、60℃の反応温度より下で溶融したにもかかわらず、反応を示さなかったことも、注目する価値がある。
【0105】
最初のスクリーニングによると、イミダゾリウムイオン性液体は、最高収率及び選択率を、[NTf>[PF>[PFの傾向で達成している。最良の系、emimNTfは、疎水性であり、単に水での洗浄により、有効に塩化物を除去することができる。非常に低い粘度を有し、そのため、処理が容易であり、触媒の分散が可能となる。
【0106】
1.1 シンナムアルデヒドの水素化の動力学的研究
二つの動力学的研究を行って、触媒担体の効果を比較した。図1a、1b、2a及び2bは、bmimPF中、Pt/グラファイト又はPt/アルミナを用いるシンナムアルデヒドの水素化を示す。両方のケースにおいて、反応は、5〜7時間後に停止し、転化速度は、3〜5時間後には有意に遅速する。最初のうち、シンナムアルデヒドに向かう選択率が高いが、反応時間が増すにつれ、多少、ヒドロシンナムアルデヒド3の形態、及び3−フェニルプロパノール4の形態に向かう。本発明者らは、イオン性液体中で担持触媒により触媒される2と3の間の異性化のために、3の生成が発生すると考える。これは、Pt/Alのケースではさらに顕著であり、このケースでは、選択率の最大値がはっきりと観察される。両方の反応において、全飽和生成物4は、微量(<2%)しか生成されない。60℃、不活性雰囲気のもと、一定範囲のイオン性液体中、Pt触媒存在下にてシンナムアルコールの異性化を研究する別の実験は、4時間後、ヒドロシンナムアルデヒドへの60%までの異性化をもたらした(ブランク反応及びプロパン−2−オール中で行った反応が、ごくわずかな転化しかもたらさなかったことにご留意いただきたい)。この水素化実験によると、異性化については、Pt/アルミナのほうがPt/グラファイトより有効である。
【0107】
これらの動力学的実験を、図3a及び3bに示す60℃で行ったプロパン−2−オール中でPt/グラファイトを用いる類似の実験と、比較することができる。プロパン−2−オール中でのほうが大きな転化率が認められるが、75%より高い転化率では、2に向かう選択率が劣る。
【0108】
触媒の失活は、転化率が制限されることに起因する可能性が高い。基質又はイオン性液体が、失活の原因となったかどうかを評価するために、いかなる基質も一切用いず、6時間、通常の実験条件下に水素化を行い、冷却して、基質を添加し、反応をもう一度行うブランク試験を行った。これらの条件下にて反応は全く察されず、このことは、イオン性液体は、触媒の被毒に責任を負うが、基質/生成物は、触媒の被毒に責任を負わないことを示していた。
【0109】
イオン性液体による被毒は、多数の可変要因(例えば、細孔の閉塞、イオン性液体の製造からの強吸着性化学種又はハロゲン化物汚染による該閉塞部位)の結果でありうる。HCl及びNaClからの微量ハロゲン化物の存在下に実験を行って、ハロゲン化物の失活への寄与を評価した。これらの反応では転化が全く観察されず、そのことは、これらの反応を進行させる場合、第一に、実質的にハロゲン化物を含まないイオン性液体を用いること、第二に、ハロゲン化物の不純物が不在であることが重要であることを示している。この評価の主要な帰結は、使用前に電気分解を行わない限り、これらの反応は疎水性のイオン性液体に制限されるということであり、それを水で洗浄して少量の塩化物を除去することができる。
【0110】
強吸着性化学種による失活は、触媒/基質に対するイオン性液体の比率を変化させることによって調査した。この研究の結果を図4に示す。用いたイオン性液体の量を変化させても、選択率には殆ど変化を生じなかったが、転化率には強い変化が見出された。有意なことに、転化率における最大値が観察される。これは、以前に用いられていた量より少量のイオン性液体で発生する。
【0111】
1.2 再利用
最初のスクリーニングの結果(表1)は、イオン性液体を再利用することが可能であることを示しているが、しかし、一般に、イオン性液体/パラジウム触媒の再利用は、反応を殆ど生じない。図4から見出した最適条件を用いると、触媒及びイオン性液体の再利用が可能であった。触媒を除去せず、イオン性液体を単に抽出した結果、出発原料の99%を得、生成物を除去して、新しいシンナムアルデヒドを添加した。新しい触媒系についての転化率85%及び選択率81%と比較して、この系を用いることにより、6時間後、転化率42%及び選択率80%を達成した。抽出により抽出相への触媒の移行が殆ど生じないこと、及び再利用時にその触媒を水素中で予備活性化しなかったことに、ご留意いただきたい。実験手順において説明したように、白金触媒を用いる反応のための通常の手順は、水素流中、反応前の温度で触媒を活性化することである。この手順なしで反応は殆ど発生しない。さらなる活性化を伴わずに再利用が可能であるということは、通常の有機溶媒ゼロ系にまさる、イオン性液体を溶媒として用いることの有意な利点を示している。
【0112】
1.3 転化率/選択率の効果に関する温度の研究
温度に関する最適化も行った。結果を図5に示す。
【0113】
選択率及び転化率は、両方とも60℃で最大値を有する図を互いに作っている。最大選択率は、吸着と異性化の間の均衡をおそらく示している。低温では吸着が低く、従って、二次反応が発生するのに対し、高温では2から3への異性化が有利である。二つの競合作用に起因して、転化率、反応速度及び水素溶解度における最大値も生じうる。前者は、温度とともに上昇するのに対し、後者は低下する。90℃より高温では、有意な重合が発生した。
【0114】
1.4 C−メチルイミダゾリウムイオン性液体中でのシンナムアルデヒドの水素化
イミダゾリウム系中のアルキル鎖長(C〜C12)の増加の影響についての研究を表2にまとめる。これは、選択率は一定のままであるが、収率は鎖長の増加につれて着実に低下するので、より長い鎖長のイオン性液体の使用は、有利ではないということを明示している。鎖長が増すことにより、イオン性液体への水素の溶解度が上昇することとなり、このことが、側鎖を長くするので、転化速度を上昇させる可能性もあると予想される方もおられるだろう。しかし、側鎖が長くなるにつれ、イオン性液体がより粘稠になり、物質移動作用が反応を支配して、速度を低下させる。
【0115】
【表2】

1.5 5重量%Pt/GでのCmim NTf中の異なる基質の水素化
様々な異なる不飽和アルデヒドを還元して、イオン性液体中での水素化が、これまでに還元された化合物を制限しないことを実証した。
【0116】
mim NTfイオン性液体中、5重量%Pt/Gでの4つの異なる化合物の還元についての結果を表3に示す。
【0117】
【表3】

表3に示した結果は、基質trans−2−オクテナール及びメチルビニルケトンのケースでは、完全飽和アルコールが100%生成したことを明示している。3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒドについては、生成物の20%が飽和アルデヒドであり、ベンジリデンアセトンの還元については、アルコール生成物に向かう90%より大きな選択率が見出された。これらの反応は、最適化されておらず、従って、この又は他のいずれかのイオン性液体中での選択性又は活性の最適化をいずれも代表しないことに注目する価値がある。
【実施例2】
【0118】
2.0 10%Pd/活性炭を用いるイオン性液体中でのシンナムアルデヒドの水素化
金属パラジウムは、カルボニル基に優先して二重結合を還元することが知られているが、α,β−不飽和系において、通常の有機溶媒中では殆ど又は全く選択性がない。Pd/活性炭を用い、プロパン−2−オール中で行ったシンナムアルデヒドの水素化によって、完全飽和化合物、3−フェニルプロパノール、4を生じた。
【0119】
別様に述べない限り、反応は、4MPaの水素圧及び60℃の温度のもとで行った。パラジウム触媒は、一般に認知されているとおりに用いた。イオン性液体(2mL)、5.5mg(10重量%Pd触媒)、及びシンナムアルデヒド0.5mL(基質/金属〜800/1)をオートクレーブに導入し、アルゴンで3回パージした。40×10Paで水素を導入し、オートクレーブを必要な温度に加熱した。反応を放置して6時間攪拌し、反応が冷却した時点で圧力を開放した。
【0120】
ジエチルエーテル(2×10mL)を用いて反応生成物を抽出した。これによって、イオン性液体中に触媒を保持しながら、すべての有機生成物が除去される。生成物の選択率及び転化率は、GC−FIDを用いて判定した。
【0121】
表4 一定範囲のイオン性液体中、Pd/Cを用いるシンナムアルデヒドの還元からの結果の要約。
【0122】
【表4】

イオン性液体が、ヒドロシンナムアルデヒド、3に向かう選択率を調整できることは、上記の表から明らかである。パラジウム触媒のケースとは異なり、すべてのイオン性液体系に活性が見出され、一般に、[PF系及び[BF系は、3に向かう高い選択率をもたらしたのに対し、[NTfは、生成物の混合物をもたらした。どの条件下でも、Pd/Cを用いてシンナミルアルコールは生成されなかった。
【0123】
2.1 再利用
パラジウム触媒/イオン性液体の再利用は、可能であったが、白金のケースでのように、再利用時に転化率の低下が観察された。例えば、bmimBF中でのPd/Cの再利用は、17%の転化率で100%の選択率を示した。類似の選択率及び転化率が、2回目、3回目、4回目、5回目及び6回目の再利用で観察された。本発明者らは、少なくとも活性炭触媒のケースでは、細孔閉塞が失活の原因となりうると考える。最初のランの後、再利用の前のアセトニトリルでの触媒の洗浄は、達成される転化率に殆ど影響を及ぼさなかった。800/1から100/1に触媒の使用量を増加させると、初期速度が上昇し、すべての再利用(行った再利用5回まで)は、4時間後、ヒドロシンナムアルデヒド3への100%の転化率及び選択率を示した。
【0124】
2.2 反応速度に対する圧力の影響
図6は、水素圧を用いた4時間後の転化率の変化を示す。この圧力研究は、5×10Paのような低い圧力においてでさえ、4時間の反応の後に有意な転化があったことを示した。24時間後、5×10Paでヒドロシンナムアルデヒド3への93%の転化が観察された。すべての圧力で、ヒドロシンナムアルデヒドのみが見出された。
【0125】
2.3 転化率/選択率の効果に関する温度の研究
シンナムアルデヒドの転化率は、60℃まではヒドロシンナムアルデヒドへの選択率100%を維持しながら温度の上昇とともに増大した。60℃より高温ではカルボニル基の水素化に起因して選択率が低下し、その結果、完全飽和アルコール4が生成される。実験手順に記載されているような標準的な条件下にてこれらの反応を実施すると、反応時間延長(24時間)後でさえ、4が生成した形跡はなかった。
【0126】
【表5】

【実施例3】
【0127】
3.0 パラジウムを触媒とするオレイン酸メチルの水素化
パラジウム触媒は、一般に認知されているとおりに用いた。イオン性液体(2mL)、5.5mg(10重量%Pd触媒)、及びオレイン酸メチル0.5mL(基質/金属〜800/1)をオートクレーブに導入し、アルゴンで3回パージした。1MPaで水素を導入し、オートクレーブを必要な温度に加熱した。反応を放置して4時間攪拌し、反応が冷却した時点で圧力を開放した。
【0128】
ジエチルエーテル(2×10mL)を用いて反応生成物を抽出した。これによって、イオン性液体中に触媒を保持しながら、すべての有機生成物が除去される。生成物の選択率及び転化率は、GC−FIDを用いて判定した。
【0129】
【化11】

pyBF、bmimPF及びemimNTfイオン性液体中、60℃で、4時間の反応の後、100%の転化率及び選択率で、オレイン酸メチル9をステアリン酸メチル10に水素化した。抽出後、反応物を再利用して、同じ転化率よび選択率を達成した。エステル基の分解は観察されず、抽出溶媒相への触媒の損失も無かった。
【0130】
そのようにして生成した生成物、10、は反応混合物の上相、すなわち、イオン性液体相の上に残る。その結果、生成物は、デカンテーションによって容易に分離することができ、従って、抽出手順の必要性を回避することができる。従って、脂肪酸エステルの水素化におけるイオン性液体の使用は、連続工程による大規模な操作を可能ならしめる。加えて、この水素化反応は、比較的少量のイオン性液体中でも行える。
【実施例4】
【0131】
4.0 パラジウムを触媒とするシトラールの水素化
パラジウム触媒は、一般に認知されているとおりに用いた。イオン性液体(2mL)、5.5mg(10重量%Pd触媒)、及びシトラール0.5mL(基質/金属〜800/1)をオートクレーブに導入し、アルゴンで3回パージした。4MPaで水素を導入し、オートクレーブを必要な温度に加熱した。反応を放置して6時間攪拌し、反応が冷却した時点で圧力を開放した。
【0132】
ジエチルエーテル(2×10mL)を用いて反応生成物を抽出した。これによって、イオン性液体中に触媒を保持しながら、すべての有機生成物が除去される。生成物の選択率及び転化率は、GC−FIDを用いて判定した。
【0133】
シトラールは、3つの水素化部位(共役二重結合、カルボニル基及び孤立二重結合)を有する。「メチルブロッキング基」を有する化合物、シトラール11の水素化は、二重結合の選択的水素化をもって進行して、シトロネラール13を生成した。文献報告は、伝統的な溶媒中での選択率は、温度に支配されると提言していた。
【0134】
【化12】

【0135】
【表6】

表6からの結果は、一般に、[PF及び[BFイオン性液体は、[NTfより選択的であるが、試験したすべてのイオン性液体が、プロパン−2−オールよりずっと選択的であることを示唆している。
【0136】
温度の研究は、シンナムアミド1を基質として用いて得られたものに類似した転化率及び選択率を示した。30℃から60℃までは、高い選択率を維持しながら、転化率が上昇する。60℃より高温では、アルコール(シトロネロール14)の生成が、選択率の低下を招く。この実験で用いたシトラールは、〜65%の(E)異性体、35%の(Z)異性体を含有する。しかし、これらの実験において、未反応のシトラールのE/Z異性体比が、なお65/35であったという観察は興味深く、これは、触媒系が、共役二重結合の還元に対してのみ選択的であったとしても、異性体を区別しなかったということを示している。高温高圧でさえシトネロール14は生成されたが、完全水素化生成物3,7−ジメチルオクテン−1−オール15又はゲラニオール/ネロール12が生成された形跡はなかった。
【0137】
【表7】

4.1 アミノ酸での不均一系触媒の改質
アルカロイドシンコニジン(cinc)に加えて(S)−プロリン(pro)、(S)−フェニルアラニン(phal)及び(S)−2−アミノ酪酸(aba)を用いて改質した、活性炭、アルミナ及びチアニアに装填された一連のパラジウム触媒を、シトラールの水素化において研究した。
【0138】
最初の研究(表8)は、下記の手順に従ってプロリンで改質したパラジウム触媒を用い、30℃及び1MPaで行った。パラジウム触媒を含有するイオン性液体2mLの懸濁液に、キラル改質剤(0.01mmol)を添加した。その混合物を1MPaの水素のもとに30℃で1時間攪拌して、触媒表面を改質し、その後、基質分子(0.52mLのシトラール)を添加した。その後、反応を1MPaのHに再び加圧し、放置して5時間攪拌した。この時点で圧力を開放する。
【0139】
有機溶媒又は蒸留を用いて、反応生成物を抽出した。これによって、イオン性液体中に触媒を保持しながら、すべての有機生成物が除去される。生成物の選択率及び転化率は、GC−FIDを用いて判定した。
【0140】
【表8】

これらの結果は、シトラールが、イオン性液体中で卓越した化学選択性をもって水素化されることを示した(表8)。さらに、すべての触媒は、プロパン−2−オール及びシクロヘキサンと比べ、イオン性液体中で用いた時に、ずっと高い化学選択性をもたらす。
【0141】
10重量%Pd/C/bmimBF系の再利用の試みは、非常に劣った転化率(4%)もたらすとともに、化学選択率を88%から80%に低下させた。bmimBF中、5重量%Pd/Al及び5重量%Pd/TiOの類似の再利用は、最初のランと類似した化学選択率をもたらしたが、転化率は、低下した。bmimBF中、5重量%Pd/TiOとともにフェニルアラニン、2−アミノ酪酸及びシンコニジンなどの他のキラル改質剤を用いても、プロリンベースの系を超える利点を示さなかった。
【0142】
10%Pd/C改質触媒(プロリン)対未改質触媒の転化率及び化学選択率の動力学的研究は、反応は、改質系のほうが速いが、化学選択率は、時間に伴い低下することを示す(図7)。未改質触媒は、反応を通して化学選択率100%を維持する。改質触媒で観察される化学選択率の低下は、シトロネロールへの過剰な水素化に起因する。
【0143】
表9は、反応に対する改質剤としてのプロリンの使用を強調するものである。非天然エナンチオマー、(R)−プロリンは、キラル改質剤として、天然(S)−エナンチオマーと類似した転化率及び化学選択率をまた生じる。再利用時の助触媒/改質剤としてのシトネラールの使用により、化学選択率又は転化率の増加は、観察されなかった。新たな量のプロリンの添加ならびにプロリン飽和系の使用は、再利用時に卓越した化学選択率及び転化率を示す。
【0144】
【表9】

表10は、10%Pd/C触媒の再利用に対するプロリン飽和イオン性液体の影響を示している。改質触媒は、最初のランの時、及び継続的な再利用時に、100%の選択率をなお維持しながら、転化率を大きく上昇させる。未改質触媒も実施した再利用3回の間、100%の選択率を示すが、再利用時の転化率は、改質触媒よりずっと低い。
【0145】
【表10】

プロリンの塩を用いる場合、そうした塩は、イオン性液体中に懸濁したままでありうる。従って、生成物の分離は、抽出手順により容易に行うことができる。
【実施例5】
【0146】
不均一系触媒による6−クロロプリンの脱ハロゲン化
炭素担持パラジウム触媒は、一般に認知されているとおりに用い、これに対して白金触媒及びアルミナ担持パラジウムは、350℃の水素流中で1時間、予備還元した。イオン性液体(2mL)、5.5mg(10重量%Pd/炭素)、11mg(5重量%パラジウム/アルミナ)、19.5mg(5重量%白金/アルミナ)、19.5(5重量%白金/グラファイト)、及び基質(基質/金属〜200/1)をオートクレーブに導入し、アルゴンで3回パージした。望ましい圧力で水素を導入し、オートクレーブを必要な温度に加熱した。反応を放置して、望ましい時間攪拌し、反応が冷却した時点で、圧力を開放する。反応生成物は、水を用いて抽出することができる。
【0147】
反応転化率及び選択率をHPLCによって分析した。
【0148】
【化13】

表11は、17を超える16についての転化率及び選択率を示す。
【0149】
【表11】

圧力は、白金又はパラジウム系についての選択率に対して殆ど影響を及ぼさなかったが、圧力が低いと、結果的に転化率が低くなるように思われた。用いたすべての触媒が、研究したイオン性液体中で良好な転化率及び良好な選択率を示した。
【0150】
【表12】

Pd/Al及びPd/CaCO系の再利用を、60℃、4MPaの水素、S/C 200/1で行った。触媒の失活は、XHによる被毒、焼結又はコーキングによる一般的な問題であると考えられる。触媒の焼結は、気相反応で発生するという報告しかないので、議論すべき問題であるとは考えられない。表12は、イオン性液体中での触媒の失活が、ハロゲン化水素の生成に起因する可能性があり、それは、塩基性担体の使用により排除されることを示している。複数の再利用を通して活性がわずかに低下するのは、コーコングに起因しうる。
【0151】
一定範囲の一置換ベンゼン及び置換ハロフルオロベンゼンの脱ハロゲン化を表13に示す。表13によると、一定範囲の置換フルオロベンゼンの選択的脱ハロゲン化が非常に円滑に進行して、フルオロベンゼンのみを生じる。ベンゼンへの脱フッ素化又はアレーンの水素化についてのスペクトルの証拠はない。クロロベンゼンが、ブロモベンゼンより脱ハロゲン化が困難であると判ったが、CaCOを担体として用いた時、24時間後には完了した。二量化及び水添異性化などの副反応が、クロロベンゼンの脱ハロゲン化中に発生しうることはよく文献報告されているが、本発明者らの系ではそれが観察されなかった。
【0152】
【表13】

【実施例6】
【0153】
アルキンの不均一系触媒による還元
パラジウム触媒は、一般に認知されているとおりに用いた。イオン性液体(2mL)、5.5mg(10重量%Pd/炭酸カルシウム、10重量%Pd/活性炭、鉛被毒5重量%Pd/CaCO)、及び基質(基質/金属〜800/1)をオートクレーブに導入し、アルゴンで3回パージした。望ましい圧力で水素を導入し、オートクレーブを必要な温度に加熱した。反応を放置して望ましい時間攪拌し、反応が冷却した時点で、圧力を開放する。
【0154】
有機溶媒又は蒸留を用いて、反応生成物を抽出した。これによって、イオン性液体中に触媒を保持しながら、すべての有機生成物が除去される。生成物の選択率及び転化率は、GC−FIDを用いて判定した。
【0155】
表14は、一連の異なるアルキル鎖長の[ピリジニウム][BFイオン性液体中で10%Pd/C及び5%Pd/CaCOを用いる1−ノニンの還元についての転化率及び選択率を示す。
【0156】
【表14】

表14は、10重量%Pd/Cが、4時間後にアルカンへの完全還元をもたらすことを示している。図8における動力学グラフは、10重量%Pd/Cが、低転化率でのみだが、100%選択的であることを示している。5重量%Pd/CaCO/CPyBF系は、少なくとも転化率55%まではアルケンに向かう選択率100%を示すが、CピリジニウムBFは、これらの条件下にて4時間後、より低い選択率を示す。表15は、5重量%Pd/CaCO/CPyBF系を用いる3つの異なる基質の還元についての転化率及び選択率を示している。
【0157】
【表15】

表15は、アルケンに向かう高い選択率が、3つ基質すべてについて達成可能であることを示している。反応圧、温度及び反応時間長を変化させる一連の実験についてのスチレンに向かうフェニルアセチレンの転化率及び選択率を図9a、9b及び9cに示す。
【0158】
図9a及び9bに示されている温度及び圧力のグラフは、温度又は圧力のいずれかにおける上昇が、転化率を上昇させるが選択率を低下させる効果を有することを示している。
【0159】
図9cは、3時間より長時間、反応を進行させると、エチルベンゼンへのさらなる水素化に起因して選択性が劇的に低下することを示しており、これは、最大の選択性を達成する唯一の方法が、反応時間を保ち、その結果、低い転化レベルを保つことであることを示している。転化率に対する選択率の逆の挙動が、転化率100%及び選択率100%を達成することができる条件が、現在、まだ見出されていない理由を説明している。
【0160】
表16は、鉛で被毒させた5重量%Pd/CaCO(リンドラー触媒)を用いる一定範囲のイオン性液体中でのフェニルアセチレンの還元を示している。
【0161】
【表16】

スチレンへのフェニルアセチレンの還元のために、リンドラー触媒を一定範囲のイオン性液体とともに用いて、少なくとも97%の転化率及び100%の選択性を達成することができる。
【0162】
結論
イオン性液体は、不均一系触媒による水素化のための媒質を提供するものであり、これは、従来の溶媒と充分競合する。炭素又は酸化物をベースにした白金グループの金属の未改質触媒を用いると、個々のイオン性液体を単に選択することによって、一定範囲の生成物への良好な選択率を達成することができる。これらの系では、イオン性液体によってその表面が改質され、且つ、高い選択率を達成することができると考えられる。高い選択率のほかに、水素化反応のためのイオン性液体の使用は、濾過及び触媒の再活性化の必要を伴わないイオン性液体からの生成物分子の容易な抽出など、従来の溶媒を超える他の利点をもたらす。この手順は、工業的に触媒の損失を招き、且つ、大規模で用いられる時には重大な事故の原因となる。不均一系触媒系をベースにしたイオン性液体は、有機溶媒系と比較して、反応の間に有意に失活する。これらの反応では、イオン性液体を一般的な溶媒と同様に取り扱うことはできない。それは、異なるイオン性液体が、異なる選択性を助長し、それによって、触媒を交換する必要なく生成物を良好に制御できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】bmimPF中、5重量%Pt/グラファイト触媒を用いるシンナムアルデヒド1の還元を追跡する時間に伴うグラフで、aは生成物分布における変化、bは転化率及び2に向かう選択率における変化を示す。
【図2】bmimPF中、5重量%Pt/Al触媒を用いるシンナムアルデヒド1の還元を追跡する時間に伴うグラフで、aは生成物分布における変化、bは転化率及び2に向かう選択率における変化を示す。
【図3】プロパン−2−オール中、5重量%Pt/グラファイト触媒を用いるシンナムアルデヒド1の還元を追跡する時間に伴うグラフで、aは生成物分布における変化、bは転化率及び2に向かう選択率における変化を示す。
【図4】emimNTf中、5重量%Pt/グラファイト触媒を用いるシンナムアルデヒドの還元を追跡するイオン性液体量に伴う転化率及び2に向かう選択率における変化を示すグラフ。
【図5】emimNTf中、5重量%Pt/グラファイト触媒を用いるシンナムアルデヒドの還元を追跡する温度に伴う転化率及び2に向かう選択率における変化を示すグラフ。
【図6】bmimPF中、10重量%Pt/C触媒を用いるシンナムアルデヒドの還元を追跡する圧力に伴う1から3への転化率における変化を示すグラフ。
【図7】bmimPF中、10重量%Pt/C及び10重量%Pt/C改質触媒でのシトラールからシトロネラールへの水素化における転化率(conv)及び化学選択率(cs)についての動力学的研究を示すグラフ。
【図8】30℃及び3×10Paで、CPyBF中、10重量%Pd/Cを用いる1−ノニンの還元を追跡する時間に伴う1−ノニンの転化率及び1−ノネンに向かう選択率における変化を示すグラフ。
【図9】4時間後、30℃で、5重量%Pd/CaCOを用いるフェニルアセチレンの還元を追跡する圧力に伴うグラフで、aは転化率及びスチレンに向かう選択率における変化、bは転化率及びスチレンに向かう選択率における変化、cは転化率及びスチレンに向かう選択率における変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式:
【化14】

(式中、
、R、R、R、R及びR10は、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、そして各々が、
水素;
〜C10アルケニル、C〜Cシクロアルケニル、C〜C10アリール、C〜C20アルアルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル、F、CF、=O、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cジアルキルアミノ、−CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;
〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニル;
〜Cシクロアルケニル;又は
〜C10アルキル、ヒドロキシル、F、CF、CN、COOR、CONR又はOR(ここで、Rは、H及びC〜C20アルキルから選択される)から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、C〜C10アリール
から独立に選択される)
を有する化合物の接触選択的水素化法であって、該化合物を下記の式:
【化15】

(式中、
は、C〜C40直鎖もしくは分枝鎖アルキル基又はC〜Cシクロアルキル基であり、該アルキル又はシクロアルキルは、C〜Cアルコキシ、C〜C10アリール、CN、OH、NO、C〜C30アルアルキル及びC〜C30アルカリールから選択される1〜3個の基により置換されていてもよく;R、R、R、R及びRは、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、且つ、H又は上で定義したようなRのいずれかから各々独立に選択され;
Aは、電荷nを有するアニオンを表し;nは、1〜3である)
を有するイオン性液体の存在下に水素化剤及びニッケル、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及び白金から選択される不均一系水素化触媒と反応させることを特徴とする、接触選択的水素化法。
【請求項2】
該化合物が1〜4個のC=C結合を含有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
該化合物が1〜3個のC=C結合を含有する請求項2記載の方法。
【請求項4】
該化合物が少なくとも1個のC≡C結合を含有する請求項1〜3のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項5】
該化合物が2個以下のC≡C結合を含有する請求項4記載の方法。
【請求項6】
該化合物が2〜50個の炭素原子を含有する請求項1〜5のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項7】
該化合物が4〜25個の炭素原子を含有する請求項6記載の方法。
【請求項8】
該化合物が6〜20個の炭素原子を含有する請求項6記載の方法。
【請求項9】
、R、R及びRが、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、そして各々が、
水素;
〜C10アルケニル、C〜Cシクロアルケニル、C〜C10アリール、C〜C20アルアルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル、F、CF又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクアルキル;及び
〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニル
から独立に選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
、R、R及びRが、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、そして各々が、
水素;
〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;及び
〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニル
から独立に選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
、R、R及びRが、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、そして各々が、水素;C〜C20直鎖又は分枝鎖アルキル;及びC〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニルから独立に選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
及びRが各々、水素を表す、請求項9〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
及びRが、C〜C20直鎖又は分枝鎖アルキル、C〜Cシクロアルキル及びC〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニルから各々独立に選択される、請求項9〜12のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項14】
、R及びRが、各々、水素を表し、そしてRが、請求項10〜13において定義されている通りである、請求項9〜13のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項15】
該化合物が、下記の式:
【化16】

(式中、R、R及びRは、請求項1及び9〜11のいずれか1つの項において定義されている通りである)
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
、R、R又はRが、C〜C20直鎖又は分枝鎖アルケニルを表す、請求項1及び9〜15いずれか1つの項記載の方法。
【請求項17】
及びR10が、
水素;
〜C10アリール、C〜C20アルアルキル、C〜C20アルカリール、C〜Cシクロアルキル、ヒドロキシル又はOR(ここで、Rは、H、C〜C20アルキル及びC〜C10アリールから選択される)から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、C〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;及び
〜C10アルキル、ヒドロキシル、F又はOR(ここで、Rは、H及びC〜C20アルキルから選択される)から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、C〜C10アリール
から各々独立に選択される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
及びR10が、
水素;
〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;及び
〜C10アルキル、ヒドロキシル、F又はOR(ここで、Rは、H及びC〜C20アルキルから選択される)から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、C〜C10アリール
から各々独立に選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
及びR10が、
水素;
〜C20直鎖もしくは分枝鎖アルキル又はC〜Cシクロアルキル;及び
〜C10アルキル、ヒドロキシル、又はOR(ここで、Rは、H及びC〜C10アルキルから選択される)から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい、C〜C10アリール
から各々独立に選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
及びR10が、水素;ヒドロキシル又はフェニルにより置換されていてもよいC〜C10アルキル;又はフェニルから各々選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
又はR10の少なくとも一方が水素である、請求項1及び17〜20のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項22】
がC〜C12直鎖又は分枝鎖アルキルを表す、請求項1記載の方法。
【請求項23】
、R、R、R及びRが水素である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
nが1である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
該イオン性液体が、下記の式:
【化17】

(式中、
各Rは、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、及び各々が、C〜Cアルコキシ、C〜C10アリール、CN、OH、NO、C〜C30アルアルキル及びC〜C30アルカリールから選択される1〜3個の基により置換されていてもよい、C〜C40直鎖又は分枝鎖アルキルから独立に選択され;
Aは価nを有する一つ以上の化学種のアニオンを表し;及び
nは1〜3を表す)
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
該イオン性液体が、下記の式:
【化18】

(式中、
は、C〜Cアルコキシ、C〜C10アリール、CN、OH、NO、C〜C30アルアルキル及びC〜C30アルカリールから選択される1〜3個の基により置換されていてもよい、C〜C40直鎖又は分枝鎖アルキルから独立に選択され;
Aは価nを有する、一つ以上の化学種のアニオンを表し;及び
nは1〜3を表す)
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
がC〜C40直鎖又は分枝鎖アルキルから独立に選択される、請求項1及び請求項22〜26のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項28】
がC〜C20直鎖又は分枝鎖アルキルから独立に選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
及びRがC〜C12直鎖又は分枝鎖アルキルから各々独立に選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
Aが、価nを有する、単一の化学種のアニオンを表す、請求項29記載の方法。
【請求項31】
nが1である、請求項1及び請求項22〜30のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項32】
Aが、フッ化ホウ素又はフッ化リン、NO、SO、HSO、HCO、[(CFSON]、[AsF]、アルキルスルホン酸塩、一又は二フッ素化アルキルスルホン酸塩(過フッ素化アルキルスルホン酸塩を含む)、カルボン酸アニオン、フッ素化カルボン酸アニオン及び金属ハロゲン化物から選択されたアニオンを表す、請求項1記載の方法。
【請求項33】
Aが、[PF]、[BF]、[OSOCF]、[OSO(CFCF]、[OCOCF]、[OCO(CFCF]、[OCOCH]、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸水素塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、[(CFSON]、[B(アルキル)](この式中、各アルキルは、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、且つ、あらゆる直鎖もしくは分枝鎖C〜C10アルキル基であることができる)、[SbF及び[AsF]から選択されるアニオンを表す、請求項32記載の方法。
【請求項34】
Aが[PF]、[BF]、[OSOCF]、[OSO(CFCF]、[OCOCF]、[OCO(CFCF]、[OCOCH]、[(CFSON]、[B(アルキル)](この式中、各アルキルは、同じであってもよいし、又は異なっていてもよく、且つ、あらゆる直鎖もしくは分枝鎖C〜C10アルキル基であることができる)、[SbF及び[AsF]から選択されるアニオンを表す、請求項33記載の方法。
【請求項35】
Aが[PF]、[BF]及び[(CFSON]から選択されるアニオンを表す、請求項34記載の方法。
【請求項36】
Aがリン酸塩又はアミドを表す、請求項1及び請求項22〜35いずれか1つの項記載の方法。
【請求項37】
該不均一系水素化触媒が、パラジウム又は白金を含む、請求項1記載の方法。
【請求項38】
該触媒が不活性担体上に担持されている、請求項1又は請求項37記載の方法。
【請求項39】
該不活性担体が、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム及び硫酸バリウムを含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
該不活性担体が活性炭、カーボンブラック、グラファイト、アルミナ又はシリカから選択される、請求項38又は39記載の方法。
【請求項41】
該不均一系水素化触媒の粒径が200Å以下である、請求項1〜40のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項42】
該不均一系水素化触媒の粒径が20Å〜200Åである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
担体を含む該触媒の粒径が、20μmより大きい、好ましくは50μmより大きい、及び好ましくは100μmより大きい、請求項1〜42のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項44】
該水素化剤が分子水素、分子ジュウテリウム、HD、分子トリチウム、HT、DT、又は有機もしくは無機の水素、ジュウテリウムもしくはトリチウム移動剤である、請求項1〜43のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項45】
該水素化剤が分子水素又は有機もしくは無機の水素移動剤である、請求項1〜44のいずれか1つの項記載の方法。
【請求項46】
該水素化剤が分子水素である、請求項45に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−6842(P2010−6842A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236832(P2009−236832)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【分割の表示】特願2002−591415(P2002−591415)の分割
【原出願日】平成14年5月17日(2002.5.17)
【出願人】(502194159)ザ クイーンズ ユニバーシティ オブ ベルファスト (7)
【Fターム(参考)】