説明

水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法及び水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の製造方法

【課題】高純度の水素化芳香族ポリカルボン酸を、高収率で、かつ工業的に有利に製造する方法を提供する。
【解決手段】所定量の特定の貴金属触媒の存在下に、水素分圧がある値以上の条件で、芳香族ポリカルボン酸を回分式にて水素化することにより、あるいは、特定の貴金属触媒の充填層に芳香族ポリカルボン酸を所定の重量時空間速度(WHSV)で供給し、水素分圧がある値以上の条件で流通連続式にて水素化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリカルボン酸の芳香環が水素化された水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法及び水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、透明性、溶剤可溶性などの性質をもつ機能性ポリイミドなどの原料や、透明性をもつ機能性エポキシ樹脂の硬化剤などとして用いられる高純度の水素化芳香族ポリカルボン酸及びその酸無水物それぞれを、収率よく、かつ工業的に有利に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素化芳香族ポリカルボン酸を製造する方法としては芳香族ポリカルボン酸、そのアルカリ金属塩またはそのエステル誘導体を核水素化する方法が知られている。例えば、ピロメリット酸又はピロメリット酸テトラエチルエステルを、ラネーニッケル触媒を用いて水素圧力200atm、温度150℃、反応時間3日間という条件で水素化する方法(非特許文献1参照。)、ピロメリット酸水溶液をロジウム触媒存在下に水素圧力2.7atm、温度60℃、反応時間1.5時間という条件で水素化する方法(非特許文献2参照。)がある。また、ピロメリット酸二無水物を1−プロパノールでエステル化し、そのエステル誘導体をルテニウム触媒存在下に水素圧力100kg/cmG、温度130℃、反応時間2.5時間で水素化する方法も知られている(特許文献1あるいは特許文献2参照。)。更にはトリメリット酸をテトロヒドロフラン−水の混合溶媒に溶解し、940m/g以上の表面積を持つカーボンに担持された5重量%ロジウム触媒存在下に水素圧力1400psig、温度60℃、反応時間4時間で水素化する方法も知られている(特許文献3参照。)。
【0003】
ところで、水素化芳香族ポリカルボン酸を原料として用いる機能性ポリイミドや機能性エポキシ樹脂硬化剤の分野では、不純物の少ない原料が求められている。未反応の芳香族ポリカルボン酸は水素化芳香族ポリカルボン酸と晶析などの方法で分離することが困難であるため、高純度の水素化芳香族ポリカルボン酸を得るには水素化反応における転化率を99.8%以上にする必要がある。また、アルカリ金属、ハロゲン、灰分などはできるだけ少ないことが要求されている。
【0004】
ところが、例えば前記非特許文献1に述べられている方法では、原料を溶解する際に使用するアルカリ由来のアルカリ金属及び反応液から1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を回収する際に使用する酸に由来する塩素等の無機物のコンタミが避けられない。
【0005】
また、前記非特許文献2に述べられている方法では水素化反応の転化率、選択率が十分でなく、未反応のピロメリット酸が残存してしまう。未反応のピロメリット酸は核水素化された1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸と晶析などの方法で分離することが困難であるため、高純度の1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を得るには水素化反応における転化率を99.8%以上にする必要がある。
【0006】
さらに、特許文献1あるいは特許文献2に開示されているエステル誘導体を経由する方法は、反応工程が長く、反応装置が複雑であり、製造コストの面で有利とは言いがたい。その他には、反応装置より溶出する鉄、クロム、ニッケル、モリブデン等の金属が不純物として考えられるが、これらは反応装置を耐酸性の強い材質にすることで回避することができる。
【0007】
一方、芳香族ポリカルボン酸を核水素化して水素化芳香族ポリカルボン酸を製造する際に触媒を繰り返し使用すると数回で触媒の活性が低下して水素化反応の転化率が大幅に悪化する現象が見られた。水素化反応に使用した触媒の賦活に関しては、前記特許文献3にエーテル、エステル、脂肪族カルボン酸、ケトン等の極性溶媒やベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物で触媒を洗浄すると不純物が除去されて触媒の繰り返し使用ができることが記されているが、反応溶媒と異なる溶剤で触媒を洗浄するのは工業プロセスとして有利とはいいがたい。また、芳香族化合物の部分核水素化反応に使用されて活性が低下したルテニウム水素化触媒を液相、例えば適当な液体中に触媒を分散させた状態や触媒に液を含浸した状態、少なくとも触媒の表面が液で覆われている状態において酸素と接触させることによって再生することが記されている(特許文献4参照。)。
【0008】
他方、水素化芳香族ポリカルボン酸を脱水反応させることにより、酸無水物が得られることが知られている。例えば1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物は、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を脱水閉環させて製造する。芳香族ないし非芳香族(脂環式)の6員環に隣り合って結合したカルボキシル基を脱水、閉環して環状酸無水物を合成するには、加熱処理する方法あるいは脱水剤を用いる方法が一般的である。脱水剤として無水酢酸、無水プロピオン酸などの酸無水物の共存下、加熱還流させる方法が知られている。この時、沸点50℃以上の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族酸等を溶媒として加えても構わない。1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を脱水閉環させる方法としては、無水酢酸を用いて加熱還流させる方法が知られている(特許文献5あるいは特許文献1参照。)。
【0009】
このような水素化芳香族ポリカルボン酸の環状酸無水物を原料として用いる機能性ポリイミドの分野では、不純物の少ない高純度の原料が求められている。ところが、例えば1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を単に加熱処理すると結晶が着色してしまう。また、特許文献1に記載されているように、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸に対して10倍量(重量比)の無水酢酸を用いて脱水閉環させると、無水化反応は問題なく進行するが、目的物である1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の無水酢酸に対する溶解度が高いため、該無水物の結晶を簡便に回収することができない。
【0010】
これを解決するために、反応液を濃縮する、結晶分離後の母液を濃縮する等の方法で1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物結晶の回収率を上げることも考えられるが、工業的な製造法としては機器数が増え、かつ工程が長くなる点で不利であり、また1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の結晶が着色したり、不純物が酸無水物の結晶に取り込まれて結晶純度の低下を起こしてしまう。
【0011】
このように従来の技術では高純度の水素化芳香族ポリカルボン酸無水物を工業的に有利に得ることは困難であった。
【非特許文献1】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、1963年、第28巻、1770頁
【非特許文献2】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、1966年、第31巻、3438頁
【特許文献1】特開平8−325196号公報
【特許文献2】特開平8−325201号公報
【特許文献3】米国特許第5412108号明細書
【特許文献4】特開平1−159059号公報
【特許文献5】特公平7−23339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の第1の目的は、高純度の水素化芳香族ポリカルボン酸を、高収率で、かつ工業的に有利に製造する方法を提供することにあり、また、第2の目的は、高純度の水素化芳香族ポリカルボン酸無水物を、簡単なプロセスで、効率よく、かつ低コストで製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定量の特定の貴金属触媒の存在下に、水素分圧がある値以上の条件で、芳香族ポリカルボン酸を回分式にて水素化することにより、あるいは、特定の貴金属触媒の充填層に芳香族ポリカルボン酸を所定の重量時空間速度(WHSV)で供給し、水素分圧がある値以上の条件で流通連続式にて水素化することにより、第1の目的を達成し得ることを見出した。また、これらの方法において、水素化に使用した触媒を賦活処理することにとり、水素化反応に繰り返し使用しても高い反応転化率を維持し得ることも見出した。さらに、本発明者は、水素化芳香族ポリカルボン酸として、上記方法で水素化されたものを用い、かつこの水素化芳香族ポリカルボン酸と無水酢酸の使用割合を最適化すると共に、好ましくは反応溶媒として氷酢酸を用いることにより、第2の目的を達成し得ることを見出した。
【0014】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)芳香族ポリカルボン酸を回分式により水素化するに際し、芳香族ポリカルボン酸100重量部に対し、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を0.5〜10重量部の割合で含む触媒の存在下、水素分圧1MPa以上で芳香族ポリカルボン酸を水素化することを特徴とする水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法、
(2)芳香族ポリカルボン酸を流通連続式により水素化するに際し、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を含む触媒の充填層に、上記貴金属1重量部当たり、芳香族ポリカルボン酸を1〜100重量部/hrの速度で供給し、水素分圧1MPa以上で水素化することを特徴とする水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法、
(3)水素化芳香族ポリカルボン酸の脱水反応により酸無水物を製造するに際し、該水素化芳香族ポリカルボン酸として、芳香族ポリカルボン酸を、その100重量部に対し、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を0.5〜10重量部の割合で含む触媒の存在下、水素分圧1MPa以上で回分式により水素化したものを用い、かつ該水素化芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基に対し、0.64〜5.7倍モルの無水酢酸を用いて脱水反応させることを特徴とする水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の製造方法、及び
(4)水素化芳香族ポリカルボン酸の脱水反応により酸無水物を製造するに際し、該水素化芳香族ポリカルボン酸として、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を含む触媒の充填層に、上記貴金属1重量部当たり、芳香族ポリカルボン酸を1〜100重量部/hrの速度で供給し、水素分圧1MPa以上で流通連続式により水素化したものを用い、かつ該水素化芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基に対し、0.64〜5.7倍モルの無水酢酸を用いて脱水反応させることを特徴とする水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の製造方法、
である。
【0015】
本発明の第1の目的は、前記(1)あるいは(2)の製造方法により達成される。また、前記(1)及び(2)の製造方法においては、触媒として、水素化に使用した触媒の賦活処理物を再使用することができる。本発明の第2の目的は、前記(3)あるいは(4)の製造方法により達成される。また、前記(3)及び(4)の製造方法においては、氷酢酸溶媒中において脱水反応を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、透明性、溶剤可溶性などの性質をもつ機能性ポリイミドなどの原料や、透明性をもつ機能性エポキシ樹脂の硬化剤などとして用いられる、高純度の水素化芳香族ポリカルボン酸及びその酸無水物それぞれを、収率よく、かつ工業的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法について説明する。なお、本発明において水素化芳香族ポリカルボン酸とは芳香族ポリカルボン酸の芳香環が水素化されたものを云い、芳香環が完全に水素化されてシクロヘキサン環構造の骨格を有する化合物や、芳香環が部分的に水素化されてシクロヘキセンやシクロヘキサジエン骨格を有する化合物などがある。
【0018】
本発明の水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法において、原料として用いられる芳香族ポリカルボン酸としては、芳香環上に2つ以上のカルボキシル基が導入された化合物であればよく、特に制限されず、様々な化合物の中から、使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
この芳香族ポリカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4´−ビナフチルジカルボン酸などのジカルボン酸類;トリメリット酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸などのトリカルボン酸類;ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、ジフェニルメタンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、アントラセンテトラカルボン酸、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸などのテトラカルボン酸類;ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸などのポリカルボン酸等を挙げることができる。
【0020】
これらの中で、得られる水素化物の工業的な利用価値などの点から、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸が好適である。これらの芳香族ポリカルボン酸の品質は、通常市販されているグレードで構わない。
【0021】
本発明における水素化反応には反応溶媒が好適に用いられ、特に水が好ましい。原料の芳香族ポリカルボン酸は溶媒中に溶解させても懸濁させてもよい。この時の芳香族ポリカルボン酸濃度としては5〜50重量%が好ましく、更に好適には10〜40重量%である。
【0022】
水素化反応後に冷却もしくは濃縮などにより水素化芳香族ポリカルボン酸を結晶化させ、その結晶を分離して得られた母液を循環使用しても構わない。母液を反応器に戻す割合は、不純物の系内蓄積度合いに応じて適宜決めることができる。
【0023】
本発明においては、水素化反応触媒として、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を含む触媒が用いられ、特に上記貴金属が担体に担持されてなる触媒が好ましい。担体としてはカーボン、アルミナが好ましい。触媒の形状は特に限定はなく、水素化反応に応じて粉末や固定床用の破砕状、ペレット状などが選択される。担体への担持量は、触媒全量に基づき0.5〜30重量%が好ましく、更に好適には0.5〜10重量%である。
【0024】
本発明の製造方法においては、反応様式として、回分式(半連続式を含む)及び流通連続式の二つの態様がある。
【0025】
まず、回分式においては、芳香族ポリカルボン酸100重量部に対し、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を0.5〜10重量部の割合で含む触媒の存在下、水素分圧1MPa以上で芳香族ポリカルボン酸を水素化する。上記貴金属の量が芳香族ポリカルボン酸100重量部に対して0.5重量部未満では水素化反応が十分に進行せず、また上限は10重量部で十分であり、それを超えると経済的にむしろ不利となる。該貴金属の好ましい使用量は芳香族ポリカルボン酸100重量部に対して0.5〜5.0重量部の範囲である。
【0026】
一方、水素分圧が1MPa未満では所望の反応転化率が得られず、本発明の目的が達せられない。好ましい水素分圧は1〜15MPaの範囲である。反応温度は40〜120℃の範囲が好ましい。また、反応時間は、反応温度やその他条件により左右され、一概に決めることはできないが、通常30〜360分間程度で十分である。
【0027】
次に、流通連続式においては、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を含む触媒の充填層に、上記貴金属1重量部当たり、芳香族ポリカルボン酸を1〜100重量部/hrの速度、すなわち重量時空間速度(WHSV)1〜100hr−1で供給し、水素分圧1MPa以上で水素化する。上記WHSVが1hr−1未満では生産効率が低く実用的でないし、100hr−1を超えると所望の反応転化率が得られず、本発明の目的が達せられない。好ましいWHSVは3〜50hr−1の範囲である。
【0028】
また、水素分圧及び反応温度については、前記回分式において説明したとおりである。なお、連続式反応としては、満液型、かん液型などが考えられるが、かん液型がより好ましい。
【0029】
このような回分式及び流通連続式においては、水素化に使用した触媒は、賦活処理することにより繰り返し使用することができる。触媒の賦活処理の方法としては空気と接触させる、酸化剤で処理する、窒素ガスと接触させる、スチームで処理する、アルカリ水溶液で処理する等を挙げることができる。空気と接触させる方法は、分離した触媒をガラス等の容器に入れて数時間以上、空気の存在下に放置するだけでも良いし、強制的に加圧濾過、減圧濾過などの方法で空気を触媒層に通気してもよい。酸化剤としては過酸化水素が例示される。アルカリとしては水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水を例示することができる。触媒のアルカリ洗浄をした場合には残存アルカリをできるだけ低減するために、アルカリ洗浄の後に触媒を酢酸等の低級脂肪族カルボン酸で洗浄し、最後に水で洗浄することが好ましい。
【0030】
これらの賦活処理方法の中で、空気と接触させる方法、酸化剤で処理する方法及びそれらを併用する方法が、賦活効果の点などから好適である。
【0031】
水素化反応装置に用いる耐酸性の材質としては耐食ニッケル合金とその成形体、スーパーステンレス鋼とその成形体、セラミック、ホウロウ、ガラス等のガラス質やその成形体が挙げられる。耐食ニッケル合金の具体例としてはMAT21(三菱マテリアル株式会社製)、ハステロイC−2000、ハステロイC、ハステロイC−276、ハステロイC−22、ハステロイB、ハステロイB−2等のハステロイ鋼(Haynes International、Inc.製)、インコネル686等のインコネル鋼(The International Nikel Company,Inc.製)等をあげることができる。スーパーステンレス鋼の具体例としてはNAS254N、NAS354N(日本冶金工業株式会社製)、Avesta254SMO(AVESTA製)、HR8N、HR254(住友金属工業株式会社製)等をあげることができる。また、通常の耐圧容器に使用される鉄やステンレス鋼に前記の耐酸性の材質を内張りした容器も好適に使用することができる。
【0032】
水を反応溶媒にした場合、生成物の水素化芳香族ポリカルボン酸は溶媒である水へ溶解しているので、必要により貴金属触媒を分離した後、その濾過液を冷却乃至は濃縮することにより、水素化芳香族ポリカルボン酸の結晶を析出させ、これを固液分離することにより目的とする水素化芳香族ポリカルボン酸を得ることができる。
【0033】
このようにして得られた水素化芳香族ポリカルボン酸は、原料の芳香族ポリカルボン酸の完全水素化物であってもよいし、部分水素化物であってもよい。部分水素化物としては、例えば原料がナフタレン骨格を有するポリカルボン酸の場合、テトラリン骨格を有する化合物などを挙げることができる。また、原料がビフェニル骨格や、各種連結基を介して2個のベンゼン環が結合した構造の骨格を有するポリカルボン酸の場合、一方がベンゼン環で、他方がシクロヘキサン環構造の骨格を有する化合物などを挙げることができる。
【0034】
本発明の方法で得られる水素化芳香族ポリカルボン酸は、更に脱水反応させて水素化芳香族ポリカルボン酸無水物とすることができる。脱水反応は、無水酢酸等の脱水剤の共存下に加熱還流させるか、減圧下に加熱することにより行うことができる。次に、水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の製造方法について説明する。
【0035】
本発明の水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の製造方法においては、原料の水素化芳香族ポリカルボン酸として、前述の本発明の方法(回分式、流通連続式)で得られた高純度の水素化芳香族ポリカルボン酸が用いられる。すなわち、(1)芳香族ポリカルボン酸を、その100重量部に対し、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を0.5〜10重量部の割合で含む触媒の存在下、水素分圧1MPa以上で回分式により水素化したもの、又は(2)ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を含む触媒の充填層に、上記貴金属1重量部当たり、芳香族ポリカルボン酸を1〜100重量部/hrの速度で供給し、水素分圧1MPa以上で流通連続式により水素化したものが用いられる。
【0036】
本発明の方法において使用する原料の種類については特に制限はなく、得られる酸無水物の用途に応じて、前述の水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法についての説明で、原料として例示した各種芳香族ポリカルボン酸の完全水素化物又は部分水素化物の中から、適宜選択することができる。
【0037】
この水素化芳香族ポリカルボン酸の好ましいものとしては、例えばイソフタル酸、フタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、トリメリット酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、ジフェニルメタンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、アントラセンテトラカルボン酸、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸などの芳香族ポリカルボン酸の完全水素化物又は部分水素化物を挙げることができる。
【0038】
また、原料の水素化芳香族ポリカルボン酸は水素化反応後に固液分離した含水状態(ウェットケーキ)のままでも、一旦乾燥機等により乾燥させた結晶状態でも使用することができる。
【0039】
本発明の方法においては、前記の水素化芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基に対し、0.64〜5.7倍モルの無水酢酸を用いて脱水反応させることにより、水素化芳香族ポリカルボン酸無水物を製造する。この際、無水酢酸は市販されているグレードがそのまま使用できる。無水酢酸量がこの範囲より少ないと反応速度が充分でなく、一方、この範囲より多いと生成した水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の回収が困難であり好ましくない。
【0040】
脱水反応を有利に実施する反応温度は80〜150℃が好ましい。水素化芳香族ポリカルボン酸と無水酢酸の懸濁液を加熱するだけでもよいし、無水酢酸を加熱還流させても構わない。無水化反応は、無水酢酸に懸濁された水素化芳香族ポリカルボン酸のスラリーを攪拌しながら加温し、無水化温度に達したら1分〜60分間程度その状態を保持することにより脱水反応が完結する。
【0041】
この無水化反応は窒素ガス等のイナートガス雰囲気で行うのが好ましい。
【0042】
本発明では溶媒として氷酢酸を使用するとより好ましい。使用する氷酢酸の量は、無水酢酸に対して0.5〜10.0倍(重量比)が好ましい。氷酢酸の使用量が増えた場合は、水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の氷酢酸への溶解度が小さいために、スラリー状態での無水化反応になるが、この場合でも脱水反応は完結するので構わない。
【0043】
更に第二の溶媒として沸点50℃以上の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族酸等を加えても構わない。
【0044】
無水化反応後、反応液を室温まで冷却して酸無水物の結晶を析出させ、これを固液分離することにより水素化芳香族ポリカルボン酸無水物を得ることができる。無水酢酸と氷酢酸の混合溶媒を用いた場合は結晶の析出量が増えるのでプロセス的に有利である。
【0045】
結晶を分離した母液は循環使用しても構わない。母液を無水化反応器に戻す割合は不純物の系内蓄積度合いに応じて適宜決めることができる。
【0046】
このようにして得られた水素化芳香族ポリカルボン酸無水物は、分子間酸無水物であってもよく、分子内に環状酸無水物基を有する酸無水物であってもよいが、ポリイミド原料やエポキシ樹脂硬化剤などとして用いる場合には、分子内に環状酸無水物基を有する酸無水物が好適である。このような分子内に環状酸無水物基を有する酸無水物を製造するには、原料の水素化芳香族ポリカルボン酸として、芳香族環に隣接して結合した一対のカルボキシル基を少なくとも一つ有する芳香族ポリカルボン酸の完全水素化物又は部分水素化物が用いられる。例えば、原料の水素化芳香族ポリカルボン酸として、ピロメリット酸を水素化して得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を用い、これを脱水閉環させて、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を得る方法を代表例として挙げることができる。
【0047】
以上のように本発明を実施することにより、簡単なプロセスで、かつ工業的に有利な方法で高純度の水素化芳香族ポリカルボン酸無水物を製造することができる。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0049】
なお、以下の実施例において貴金属触媒量(重量%)は芳香族ポリカルボン酸100重量部に対する貴金属の重量部、WHSV(hr−1)は貴金属1重量部当たりの芳香族ポリカルボン酸重量部/hrを示す。
【0050】
実施例1
5リットルのハステロイC−22製のオートクレーブ(攪拌機付き)にピロメリット酸276g、水1656g及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、水分含有率50.5重量%)100gを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで2回、次いで水素ガスで3回置換した。水素圧を4.9MPaに保ちながら昇温し、反応温度60℃で60分間水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率99.92%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率98.3%であった(Rh触媒量0.90重量%、反応収率=98.2%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、263gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の純度は99.0%であった。
【0051】
実施例2
実施例1と同様のオートクレーブにピロメリット酸414g、水1656g及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(前出)150gを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで2回、次いで水素ガスで3回置換した。水素圧を5.1MPaに保ちながら昇温し、反応温度70℃で120分間水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率99.90%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率98.6%であった(Rh触媒量0.90重量%、反応収率=98.5%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、385gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の純度は98.7%であった。
【0052】
実施例3
実施例1と同様のオートクレーブにピロメリット酸828g、水1656g及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(前出)200gを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで2回、次いで水素ガスで3回置換した。水素圧を5.0MPaに保ちながら昇温し、反応温度80℃で120分間水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率99.89%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率97.7%であった(Rh触媒量0.60重量%、反応収率=97.6%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、781gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の純度は98.5%であった。
【0053】
実施例4
実施例1と同様のオートクレーブにピロメリット酸276g、水1656g及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(前出)100gを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで2回、次いで水素ガスで3回置換した。水素圧を3.1MPaに保ちながら昇温し、反応温度80℃で360分間水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率99.86%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率97.9%であった(Rh触媒量0.90重量%、反応収率=97.8%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、249gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の純度は98.2%であった。
【0054】
実施例5
実施例1と同様のオートクレーブにピロメリット酸276g、水1656g及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(前出)100gを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで2回、次いで水素ガスで3回置換した。水素圧を6.8MPaに保ちながら昇温し、反応温度50℃で60分間水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率99.94%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率98.1%であった(Rh触媒量0.90重量%、反応収率=98.0%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、262gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の純度は99.1%であった。
【0055】
比較例1
5リットルのハステロイC−22製のオートクレープ(攪拌機付き)にピロメリット酸276g、水1656g及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、水分含有率51.5重量%)12gを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで2回、次いで水素ガスで3回置換した。水素圧を5.0MPaに保ちながら昇温し、反応温度80℃で240分間水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して褐色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率18.0%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率75.6%であった(Rh触媒量0.11重量%、反応収率=13.6%)。
【0056】
比較例2
5リットルのハステロイC−22製のオートクレーブ(攪拌機付き)にピロメリット酸276g、水1656g及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、水分含有率51.5重量%)12gを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで2回、次いで水素ガスで3回置換した。水素圧を7.0MPaに保ちながら昇温し、反応温度120℃で180分間水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して褐色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率27.7%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率82.5%であった(Rh触媒量0.11重量%、反応収率=22.9%)。
【0057】
比較例3
18リットルのハステロイC−276製のオートクレーブ(攪拌機付き)にピロメリット酸2.5kg、水10kg及び5重量%Ru−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、水分含有率50.4重量%)1.2kgを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで3回置換した。水素を導入し、水素圧を4.0MPaに保ちながら昇温し、反応温度70℃で120分間水素化反応を行なった。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Ru−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して褐色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率91.0%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率56.8%であった(Ru触媒量1.2重量%、反応収率=51.7%)。
【0058】
比較例4
18リットルのハステロイC−276製のオートクレーブ(攪拌機付き)にピロメリット酸2.5kg、水10kg及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、水分含有率50.5重量%)1.2kgを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで3回置換した。水素を導入し、水素圧を0.3MPaに保ちながら昇温し、反応温度70℃で120分間水素化反応を行なった。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率69.2%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率91.3%であった(Rh触媒量1.2重量%、反応収率=63.2%)。
【0059】
実施例6
ハステロイC−22製の反応管(内径16mm×長さ320mm)に0.5重量%Rh−カーボン粒触媒(エヌ・イーケムキャット製)10gを触媒層の上下にラシッヒリングを用いて充填した。15重量%のピロメリット酸水溶液を調製し、原料調合槽に仕込んで攪拌しながら80℃に加温した。原料調合槽内は窒素雰囲気とした。このピロメリット酸水溶液を水素ガスで反応圧力12MPaに保った反応管にポンプを用いて5.0g/hrの割合で送液し、固定床で連続的に水素化反応させた。反応で消費される水素は反応管上部から反応圧を保つように供給した。また、反応管を加温して100℃で反応させた。反応管を落下してきた反応液は反応管の下部に接続した生成物受槽に溜め込み、その下部の液相部から断続的に反応液を抜き出した。この時生成物受槽の気相部よりわずかに反応ガスを抜き出した。(WHSV=15hr−1)反応開始後6〜7時間に抜き出した反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率99.85%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率95.8%であった(反応収率=95.7%)。
【0060】
実施例7
ハステロイC−22製の反応管(内径16mm×長さ320mm)に2重量%Rh−カーボン粒触媒(エヌ・イーケムキャット製)5gを触媒層の上下にラシッヒリングを用いて充填した。15重量%のピロメリット酸水溶液を調製し、原料調合槽に仕込んで攪拌しながら80℃に加温した。原料調合槽内は窒素雰囲気とした。このピロメリット酸水溶液を水素ガスで反応圧力10MPaに保った反応管にポンプを用いて7.5g/hrの割合で送液し、固定床で連続的に水素化反応させた。反応で消費される水素は反応管上部から反応圧を保つように供給した。また、反応管を加温して90℃で反応させた。反応管を落下してきた反応液は反応管の下部に接続した生成物受槽に溜め込み、その下部の液相部から断続的に反応液を抜き出した。この時生成物受槽の気相部よりわずかに反応ガスを抜き出した。(WHSV=11.3hr−1)反応開始後6〜7時間に抜き出した反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率99.88%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率95.5%であった(反応収率=95.4%)。
【0061】
実施例8
18リットルのハステロイC−276製のオートクレーブ(攪拌機付き)にピロメリット酸2.5kg、水10kg及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、水分含有率50.5重量%)1.2kgを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで3回、置換した。水素を導入し水素圧を4.0MPaに保ちながら昇温し、反応温度70℃で120分間水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率99.94%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率94.8%であった(Rh触媒量1.2重量%、反応収率=94.7%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、2.2kgの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の純度は99.0%であった。
【0062】
実施例9
実施例8で使用した5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過で分離した後、ガラス製の容器に取り出して空気中に一晩放置してから使用した他は実施例8と同様に水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率99.94%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率94.8%であった(Rh触媒量1.2重量%、反応収率=94.7%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、2.2kgの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の純度は98.7%であった。
【0063】
また、実施例8と同様の反応条件で使用した5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過で分離した後、すぐに18リットルのハステロイC−276製のオートクレーブ(攪拌機付き)にピロメリット酸2.5kg、水10kgと共に仕込み実施例8と同様に水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して褐色透明の濾過反応液を得た。該濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、ピロメリット酸転化率54.0%、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸選択率92.1%であった(反応収率=49.7%)。このように、使用した触媒を空気中に放置する賦活処理を行わずに、直ちに次の反応に使用した場合、触媒活性の低下による反応転化率の低下が著しいことが分かる。
【0064】
実施例10〜17
実施例9と同様に前の実験の触媒を空気中に放置して賦活処理して繰り返し使用するリサイクル実験を行った。その結果を表1にまとめた。触媒活性の低下は見られなかった。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例18
18リットルのハステロイC−276製のオートクレーブ(攪拌機付き)にトリメリット酸1.8kg、水10.8kg及び5重量%Rh−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、水分含有率50.5重量%)1.2kgを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで3回置換した。水素を導入し、水素圧を3.0MPaに保ちながら昇温し、反応温度70℃で60分間水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、トリメリット酸転化率99.94%、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸選択率94.7%であった(Rh触媒量1.7重量%、反応収率=94.6%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、1.2kgの1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸の純度は98.6%であった。
【0067】
実施例19
実施例18で使用した5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過で分離した後、ガラス製の容器に取り出して、空気中に一晩放置してから使用した他は実施例18と同様に水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、トリメリット酸転化率99.95%、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸選択率94.6%であった(反応収率=94.6%)。また、実施例18と同様の反応条件で使用した5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過で分離した後、すぐに18リットルのハステロイC−276製のオートクレープ(攪拌機付き)にトリメリット酸1.8kg、水10.8kgと共に仕込み実施例18と同様に水素化反応を行った。反応液をオートクレープから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して褐色透明の濾過反応液を得た。該濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、トリメリット酸転化率59.2%、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸選択率89.9%であった(Rh触媒量1.7重量%、反応収率=53.2%)。このように、使用した触媒を空気中に放置する賦活処理を行わずに、直ちに次の反応に使用した場合、触媒活性の低下による反応転化率の低下が著しいことが分かる。
【0068】
実施例20〜27
実施例19と同様に前の実験の触媒を空気中に放置して賦活処理して繰り返し使用するリサイクル実験を行った。その結果を表2にまとめた。触媒活性の低下は見られなかった。
【0069】
【表2】

【0070】
実施例28
トリメリット酸をトリメシン酸に替えた他は実施例18と同様に水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Rh−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、トリメシン酸転化率100.0%、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸選択率97.5%であった(Rh触媒量1.7重量%、反応収率=97.5%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、1.2kgの1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸の純度は98.9%であった。
【0071】
実施例29
5重量%Rh−カーボン粉末触媒1.2kgを5重量%Pd−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、水分含有率54.4重量%)1.8kgに替えた他は実施例28と同様に水素化反応を行った。反応液をオートクレーブから抜き出し、5重量%Pd−カーボン粉末触媒を減圧濾過装置(フィルターは5B濾紙)で濾過分離して無色透明の濾過反応液を得た。この濾過反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、トリメシン酸転化率99.96%、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸選択率97.1%であった(Pd触媒量2.3重量%、反応収率=97.1%)。濾過反応液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸の結晶を析出させた。この結晶を分離、乾燥したところ、1.2kgの1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸結晶が得られた。この結晶をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸の純度は98.8%であった。
【0072】
実施例30
ハステロイC−22製の反応管(内径30mm×長さ500mm)に2%Rh−カーボン粒触媒(エヌ・イー ケムキャット製)100gを触媒層の上下にラヒッシリングを用いて充填した。9.1重量%のトリメリット酸水溶液を調整し、原料調合槽に仕込んで攪拌しながら80℃に加温した。原料調合槽内は窒素雰囲気とした。このトリメリット酸水溶液を水素ガスで反応圧力8.0MPaに保った反応管にポンプを用いて200g/hrの割合で送液し、固定床で連続的に水素化反応させた。反応で消費される水素は反応管上部から反応圧を保つように供給した。また、反応管を加温して90℃で反応させた。反応管を落下してきた反応液は反応管の下部に接続した生成物受槽に溜め込み、その下部の液相部から断続的に反応液を抜き出した。この時生成物受槽の気相部よりわずかに反応ガスを抜き出した。((WHSV=9.1hr−1
反応開始後9〜10時間に抜き出した反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、トリメリット酸転化率99.95%、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸選択率94.2%であった(反応収率=94.2%)。
【0073】
実施例31
ハステロイC−22製の反応管(内径30mm×長さ500mm)に2%Rh−カーボン粒触媒(エヌ・イーケムキャット製)100gを触媒層の上下にラヒッシリングを用いて充填した。9.1重量%のトリメリット酸水溶液を調整し、原料調合槽に仕込んで攪拌しながら80℃に加温した。原料調合槽内は窒素雰囲気とした。このトリメリット酸水溶液を水素ガスで反応圧力4.0MPaに保った反応管にポンプを用いて200g/hrの割合で送液し、固定床で連続的に水素化反応させた。反応で消費される水素は反応管上部から反応圧を保つように供給した。また、反応管を加温して90℃で反応させた。反応管を落下してきた反応液は反応管の下部に接続した生成物受槽に溜め込み、その下部の液相部から断続的に反応液を抜き出した。この時生成物受槽の気相部よりわずかに反応ガスを抜き出した。(WHSV=9.1hr−1)反応開始後4〜5時間に抜き出した反応液をガスクロマトグラフィー法で分析したところ、トリメリット酸転化率99.92%、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸選択率94.4%であった(反応収率=94.3%)。
【0074】
実施例32
ジムロード冷却管と攪拌機を備えた3リットルのフラスコに、実施例1と同様にして得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸200gと無水酢酸800g(カルボキシル基に対して2.5倍モル)を仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで置換した。微量に窒素ガスを流しながら昇温し、30分間還流させた。室温まで冷却して結晶を析出させ、結晶を分離し(無水酢酸50gでリンスを行なった)、乾燥したところ、143gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が得られた。この結晶を分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の純度は99.4%であった。また、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の収率は83.0%であった。なお、生成物(結晶)の分析は、ガスクロマトグラフィー法及び液体クロマトグラフィー法で行った(以下、同様)。
【0075】
実施例33
実施例32と同様のフラスコに、実施例6と同様にして得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸200gと無水酢酸800g(カルボキシル基に対して2.5倍モル)を仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで置換した。微量に窒素ガスを流しながら昇温し、5分間還流させた。室温まで冷却して結晶を析出させ、結晶を分離し(無水酢酸50gでリンスを行った)、乾燥したところ、146gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が得られた。この結晶を分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の純度は99.3%であった。また、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の収率は84.7%であった。
【0076】
実施例34
実施例32と同様のフラスコに、実施例1と同様にして得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸200gと無水酢酸300g(カルボキシル基に対して1.0倍モル)及び氷酢酸1500gを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで置換した。微量に窒素ガスを流しながら昇温し、5分間還流させた。室温まで冷却して結晶を析出させ、結晶を分離し(無水酢酸50gでリンスを行った)、乾燥したところ、161gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が得られた。この結晶を分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の純度は99.1%であった。また、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の収率は93.4%であった。
【0077】
実施例35
実施例32と同様のフラスコに、実施例1と同様にして得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸200gと実施例32の分離母液1880gを仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで置換した。微量に窒素ガスを流しながら昇温し、5分間還流させた。室温まで冷却して結晶を析出させ、結晶を分離し(無水酢酸50gでリンスを行った)、乾燥したところ、170gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が得られた。この結晶を分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の純度は99.0%であった。また、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の収率(原料1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸基準)は92.6%であった。
【0078】
比較例5
実施例32と同様のフラスコに、実施例1と同様にして得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸200gと無水酢酸2000g(カルボキシル基に対して6.4倍モル)を仕込み、攪拌しながら系内を窒素ガスで置換した。微量に窒素ガスを流しながら昇温し、30分間還流させた。室温まで冷却して結晶を析出させ、結晶を分離し(無水酢酸50gでリンスを行った)、乾燥したところ、103gの1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が得られた。この結晶を分析した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の純度は99.5%であった。また、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の収率は59.8%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカルボン酸を回分式により水素化するに際し、芳香族ポリカルボン酸100重量部に対し、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を0.5〜10重量部の割合で含む触媒の存在下、水素分圧1MPa以上で芳香族ポリカルボン酸を水素化することを特徴とする水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法。
【請求項2】
芳香族ポリカルボン酸を流通連続式により水素化するに際し、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を含む触媒の充填層に、上記貴金属1重量部当たり、芳香族ポリカルボン酸を1〜100重量部/hrの速度で供給し、水素分圧1MPa以上で水素化することを特徴とする水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法。
【請求項3】
水素化温度が40〜120℃である請求項1又は2記載の水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法。
【請求項4】
水素分圧が1〜15MPaである請求項1又は2記載の水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法。
【請求項5】
触媒として、水素化に使用した触媒の賦活処理物を再使用する請求項1又は2記載の水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法。
【請求項6】
賦活処理物が、水素化に使用した触媒を空気又は酸化剤あるいはその両方で賦活処理したものである請求項5記載の水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法。
【請求項7】
芳香族ポリカルボン酸を溶媒に溶解又は懸濁させて用いる請求項1又は2記載の水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法。
【請求項8】
芳香族ポリカルボン酸と溶媒とからなる液中の芳香族ポリカルボン酸濃度が5〜50重量%である請求項7記載の水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法。
【請求項9】
芳香族ポリカルボン酸がピロメリット酸、トリメリット酸又はトリメシン酸である請求項1又は2記載の水素化芳香族ポリカルボン酸の製造方法。
【請求項10】
水素化芳香族ポリカルボン酸の脱水反応により酸無水物を製造するに際し、該水素化芳香族ポリカルボン酸として、芳香族ポリカルボン酸を、その100重量部に対し、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を0.5〜10重量部の割合で含む触媒の存在下、水素分圧1MPa以上で回分式により水素化したものを用い、かつ該水素化芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基に対し、0.64〜5.7倍モルの無水酢酸を用いて脱水反応させることを特徴とする水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の製造方法。
【請求項11】
水素化芳香族ポリカルボン酸の脱水反応により酸無水物を製造するに際し、該水素化芳香族ポリカルボン酸として、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を含む触媒の充填層に、上記貴金属1重量部当たり、芳香族ポリカルボン酸を1〜100重量部/hrの速度で供給し、水素分圧1MPa以上で流通連続式により水素化したものを用い、かつ該水素化芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基に対し、0.64〜5.7倍モルの無水酢酸を用いて脱水反応させることを特徴とする水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の製造方法。
【請求項12】
水素化芳香族ポリカルボン酸が1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸であり、得られる酸無水物が1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である請求項10又は11記載の水素化芳香族ポリカルボン酸無水物の製造方法。

【公開番号】特開2009−57385(P2009−57385A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236262(P2008−236262)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【分割の表示】特願2002−376052(P2002−376052)の分割
【原出願日】平成14年12月26日(2002.12.26)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】