説明

水素含有氷の製造方法

【課題】水素が含まれた水素含有氷の製造方法を提供する。
【解決手段】まず水素化マグネシウムを生成する。この際水素化マグネシウム粒子の平均粒径が望ましくは0.1μm以上20μm、さらに望ましくは0.1μm以上5μm以下となるように粉砕する。生成された粒状の水素化マグネシウムを2℃程度に冷却された水に投入し、攪拌機によって撹拌し、懸濁させる。さらに水素化マグネシウム懸濁液を製氷装置によって急速製氷する。製氷の際に水素化マグネシウムの加水分解反応が進行するので、氷の中には、水酸化マグネシウム及び水素が存在しており、水素は溶存水素及び気泡として氷の中に存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素が含まれた氷の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素水(電解還元水)中に含まれる水素は体内で生成された活性酸素のうち有害なヒドロキシルラジカルにのみ作用して無害化することにより、老化を抑止し人体の健康を維持する効果を奏する。水素水の製造方法については例えば特許文献1に記載されているように、常温常圧の水を電気分解することにより生成する方法がある。
【0003】
しかし水素の水に対する溶解度は常温常圧下では最大で1.6ppmであり、特許文献1に記載の方法では飽和量より多量の水素が含まれた水を製造することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3349710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は飽和量よりも多量の水素が含まれた氷を製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水素含有氷の製造方法は、粒状の水素化マグネシウムを水に混合して生成された液体を製氷することを特徴とする。
【0007】
水素化マグネシウムは(1)式で示される加水分解反応により、水素が発生する。発生した水素は水素化マグネシウム懸濁液中に飽和量が溶存されるほか、気泡となって氷中に存在する。これにより水素の水に対する飽和量よりも多くの量が含まれた水素が含まれた氷を製氷することができる。
【0008】
【化1】

【0009】
本発明に係る水素含有氷の製造方法は、前記粒状の水素化マグネシウムの平均粒径は0.1μm以上20μm以下であることを特徴とする。
【0010】
水素化マグネシウム粒子の平均粒径とは、水素化マグネシウムの粒度分布を測定して得られた50wt%径である。50wt%径とは、50%累積度数の粒径である。つまり、粒径が小さい水素化マグネシウム粒子から順に累積し、その累積値が50%に達したときの粒径である。平均粒径が50μmを超える場合には加水分解反応が十分に行われない場合がある。一方、平均粒径があまりに小さすぎる場合は製氷する前に殆ど加水分解反応が終了して水素気泡となり、大気中に放出されるため、多量の水素を含んだ氷の製氷が困難になる。従って水素化マグネシウムの平均粒径は0.1μm以上20μm以下程度であることが望ましい。
【0011】
本発明に係る水素含有氷の製造方法は、前記粒状の水素化マグネシウムの平均粒径は0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする。
【0012】
加水分解反応が十分に行われるためには、水素化マグネシウムの平均粒径は0.1μm以上5μm以下であることがさらに望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粒状の水素化マグネシウムを水に添加・撹拌して水と混合させた水素化マグネシウム懸濁液を急速に冷却することにより、製氷された氷中には加水分解反応により発生した水素が溶存し、かつ発生した水素の気泡が含まれる。従って飽和量よりも多量の水素が含まれた氷を製氷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】水素化マグネシウム粒子製造装置を示すブロック図である。
【図2】本発明における製氷装置を示す模式図である。
【図3】水素化マグネシウム懸濁液が製氷された様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における実施の形態について説明する。以下本実施の形態に係る氷の製造方法について説明する。まず、平均粒径が0.1μm以上5μm以下の水素化マグネシウム粒子を生成する。
【0016】
図1は水素化マグネシウム粒子製造装置を示すブロック図である。水素化マグネシウム粒子製造装置は、粒子間衝突方式のジェット粉砕機1を備える。
【0017】
ジェット粉砕機1は、円筒状のミルを備え、ミルの内周面には複数の粉砕ノズルと、一つの原料供給口とが周方向に等配されている。原料供給口には、平均粒径5μmを超える水素化マグネシウム粗粒子をジェット粉砕機1へ供給する供給機振動フィーダ2が設けられている。また、粉砕ノズルには、圧縮ガスをジェット粉砕機1へ供給する圧縮機3がエアフィルタ4を介して設けられている。粉砕ノズルによる最大吐出圧力は1.57MPaである。更に、ミルは、ジェット粉砕機1にて粉砕された平均粒径0.1μm以上5μm以下の水素化マグネシウム粒子を回収する回収器5を適宜箇所に備える。回収器5は、例えば円筒ろ布である。
【0018】
原料供給口からミル内部へ供給された水素化マグネシウム粗粒子は、粉砕ノズルから噴射された高圧ジェット気流によって旋回しながら加速し、粒子間衝突によって粉砕される。なお、水素化マグネシウム粗粒子は、円筒状のミル内部を旋回加速する構成であるため、ミルの内周壁への粒子衝突が少なく、ミル壁面が削れることによる不純物混入の虞が低い。
【0019】
これらの装置を用いて、平均粒径5μmを超える水素化マグネシウム粗粒子を生成する。水素化マグネシウム粗粒子は、(2)式に示すようにマグネシウムを主成分とする原料粒子と、水素ガスとを反応させることによって得られる。
【0020】
【化2】

【0021】
詳細な反応手順は以下の通りである。まず、マグネシウムを主成分とする原料粒子を封入容器内に封入した水素ガス雰囲気中に保持しておき、封入容器内の水素ガス雰囲気の圧力を所定圧力に維持し、封入容器内の水素ガス雰囲気の温度を室温から上昇させ、封入容器内の水素ガス雰囲気の温度を、単体のマグネシウム及び水素分子が化合して水素化マグネシウムが生成する反応と逆反応との平衡曲線上の前記所定圧力に対応する温度よりも高温で、前記温度からの温度差が100℃以内である第1温度に所定の第1期間維持する。具体的には、水素ガスの圧力は4MPa、第1温度は550℃、第1期間は1時間である。上述の処理によって、原料粒子表面の被膜が除去される。
【0022】
次いで、封入容器内の水素ガス雰囲気の温度を、室温へ戻さずに、前記平衡曲線上の前記所定圧力に対応する温度よりも低温で、前記温度からの温度差が100℃以内である温度に、所定の第2期間維持する。具体的には、第2温度は400℃、第2期間は20時間である。この処理によって、原料粒子から水素化マグネシウムを製造することができる。
【0023】
供給機振動フィーダ2を用いて、水素化マグネシウム粗粒子をジェット粉砕機1へ供給する。次いで、高圧ガスをジェット粉砕機1へ供給することによって、水素化マグネシウム粗粒子を、平均粒径0.1μm以上5μm以下の水素化マグネシウム粒子に粉砕し、粉砕した水素化マグネシウム粒子を回収して、製造工程を終える。水素化マグネシウムの粒度分布は、例えばレーザー回折式粒度分布測定器(CILAS社製、製品名CILAS1064)を用いた湿式法(媒体:IPA)にて測定される。
【0024】
なお、水素化マグネシウム粒子の平均粒径は0.1μm以上20μm以下であれば加水分解反応を進行させる望ましい効果を奏することができる。平均粒径が0.1μm以上20μm以下の水素化マグネシウム粒子も前述した平均粒径0.1μm以上5μm以下の場合と同様の工程により製造することができる。
【0025】
このようにして製造された水素化マグネシウムを水に強制撹拌して混合させ、水素化マグネシウム懸濁液を生成する。製氷を迅速に行うため水は0℃に近い水温とすることが望ましく、本実施の形態では2℃程度である。水素化マグネシウム懸濁液は加水分解反応が進行し、水素が飽和量まで溶存する。また、加水分解反応により水素が生成され水中に気泡となって存在する。なお、加水分解反応により、水素化マグネシウムの15.2wt%の水素が発生する。
【0026】
加水分解反応により水素化マグネシウム懸濁液中に発生した水素の気泡は互いに合体し、より大きな気泡となる。気泡は大きくなることにより浮力が増すので、水中を上昇し、大気中に放出される。このように大気中へ放出されることを防止するため、水素化マグネシウム懸濁液を急速冷却し、製氷する。
【0027】
従って、急速冷却により氷中には溶存状態の水素と気泡の水素が含まれるので、飽和量よりも高い濃度の水素が含まれた氷が製造される。
【0028】
氷を飲料用の液体中に入れ、水素を摂取する場合を想定すると、摂取効率の面からは、氷はできる限り多量の水素が氷の中に存在する方が望ましい。ただしあまりに多量の水素を混合させた場合、氷が溶解するとともに水素ガスの急激な生成が生じる場合がある。従って例えば1リットルの水に0.1g以上1.0g以下の水素化マグネシウムを混合させることが望ましく、さらに、0.4g以上0.6g以下の水素化マグネシウムを加えることがより望ましい。
【0029】
図2は本発明における製氷装置を示す模式図である。製氷装置は容器11の内の中央上部に下向きに開口した複数の凹部12aを有する製氷皿12と、この製氷皿12の下方に設けられ、前記製氷皿12の淵と接着及び分離させることができる平板状の給液板14を備える。この給液板14の移動は給液板14の一端付近に水平方向に設けられ、図示しないモーターによって回転する回転軸13により行う。製氷皿12における凹部12aを有する面の裏面は冷却装置15が接着されている。
【0030】
給液板14には、凹部12aの夫々に対応する位置に給液孔14aが設けられており、給液孔14aはホース16を介して給液ポンプ17と繋がっている。給液ポンプ17には前述した水素化マグネシウム懸濁液が貯蔵されている。
【0031】
回転軸13、冷却装置15及び給液ポンプ17は制御部18と接続されている。制御部18は冷却装置15及び給液ポンプ17の作動及び停止の他、給液板14の傾斜を制御するため回転軸13を回転させる。
【0032】
製氷を行うための制御部18の動作について説明する。制御部18はまず回転軸13を作動させて給液板14を製氷皿12の淵と接着する位置に移動させる。その後給液ポンプ17を作動させ、給液孔14aより、凹部12a内を満たす量の水素化マグネシウム懸濁液を給液させる。水素化マグネシウム懸濁液を給液させた後には、冷却装置15を作動させ、水素化マグネシウム懸濁液を製氷する。家庭用の冷凍庫では数cm四方の氷を10個冷却するために数kw程度の冷却能力にて行うが、冷却装置15ではより急速に冷却を行うため、例えば同量の製氷を行うために10kw以上の製氷能力を有する。水素化マグネシウム懸濁液の製氷後には、給液板14を傾斜させ、氷を落下させる。制御部18はさらに製氷を行うか否かを判定し、さらに製氷を続行する場合には再度製氷の各工程を繰り返し、製氷を続行しない場合には処理を終了する。この工程により水素化マグネシウム懸濁液の製氷を行う。
【0033】
図3は水素化マグネシウム懸濁液が製氷された様子を示す模式図であり、図3Aは製氷前、図3Bは製氷後の様子を示す。水素化マグネシウム懸濁液が製氷される際に加水分解反応が生じることにより、氷の中に水酸化マグネシウム分子、溶存水素及び水素気泡が存在する。
【符号の説明】
【0034】
1 ジェット粉砕機
2 供給機振動フィーダ
3 圧縮機
4 エアフィルタ
5 回収器
11 容器
12 製氷皿
12a 凹部
13 回転軸
14 給液板
14a 給液孔
15 冷却装置
16 ホース
17 給液ポンプ
18 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の水素化マグネシウムを水に混合して生成された液体を製氷する
ことを特徴とする水素含有氷の製造方法。
【請求項2】
前記粒状の水素化マグネシウムの平均粒径は0.1μm以上20μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の水素含有氷の製造方法。
【請求項3】
前記粒状の水素化マグネシウムの平均粒径は0.1μm以上5μm以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の水素含有氷の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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