説明

水素含有率取得装置および水素含有率取得方法

【課題】シリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率を精度よく求める。
【解決手段】水素含有率取得装置1では、所定のパラメータ群の値と、SiHの含有率およびSiHの含有率とを関連付ける参照情報が予め生成されて記憶される。ガラス基板9上のシリコン膜に対して、分光エリプソメータ3にて測定を行うことにより測定スペクトルが取得され、コンピュータ6において当該測定スペクトルから当該パラメータ群の値が求められる。そして、パラメータ群の値および参照情報に基づいて、SiHの含有率およびSiHの含有率の値が精度よく求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上に形成されたシリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題への注目の高まりにより、クリーンな太陽光を利用する太陽電池の開発が行われており、特に、大面積化および低コスト化が可能な薄膜シリコン太陽電池が次世代の太陽電池として注目されている。薄膜シリコン太陽電池の製造では、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によりガラス基板上にアモルファスシリコン膜(以下、単に「シリコン膜」という。)が形成される。
【0003】
なお、特許文献1および2には、基板上の薄膜多層構造において、有効媒質近似論を用いて均質膜としての光学定数を求める手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−302334号公報
【特許文献2】特開2004−93436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、CVD法にて形成されるシリコン膜中にはSiHやSiHが含まれるとともに、SiHは光劣化を引き起こすことが知られており、シリコン膜中に含まれるSiHの含有率は、薄膜シリコン太陽電池の変換効率に大きな影響を及ぼす。したがって、シリコン膜中の水素含有率(特に、SiHの含有率)を測定することが、薄膜シリコン太陽電池の品質管理において極めて重要となる。
【0006】
赤外分光装置において、シリコン基板上に形成されるシリコン膜に対して赤外線吸収スペクトルを取得し、当該スペクトルからSiH結合およびSiH結合に起因するピークを検出することにより、SiHの含有率およびSiHの含有率を測定することが可能であるが、シリコン膜がガラス基板上に形成される場合には、ガラス基板における赤外線の反射により当該含有率を精度よく測定することが困難となる。したがって、ガラス基板上のシリコン膜であっても、SiHの含有率およびSiHの含有率を精度よく求めることが可能な新規な手法が求められている。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、シリコン膜中のSiHの含有率およびSiHの含有率を精度よく求めることが可能な新規な手法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、対象物上に形成されたシリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率を取得する水素含有率取得装置であって、分光エリプソメータと、所定のパラメータ群の値と、SiHの含有率およびSiHの含有率とを関連付ける参照情報を記憶する記憶部と、前記分光エリプソメータにて対象物上のシリコン膜に対して測定を行うことにより取得された測定スペクトルから前記パラメータ群の値を求め、前記パラメータ群の値および前記参照情報に基づいて、SiHの含有率およびSiHの含有率を求める含有率演算部とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水素含有率取得装置であって、前記パラメータ群の1つが、基準となるシリコン膜の誘電関数における虚部のピーク値である参照ピーク値と、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数における虚部のピーク値との差である第1シフト量であり、前記パラメータ群の他の1つが、前記参照ピーク値に対応する振動数と、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数の虚部のピークにおける振動数との差である第2シフト量であり、前記参照情報が、前記第1シフト量および前記第2シフト量を変数として、SiHの含有率およびSiHの含有率のそれぞれを表す関数を含む。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水素含有率取得装置であって、前記含有率演算部が、SiHおよびSiHのそれぞれの存在に起因してシリコン膜中に生じるボイドの体積分率をパラメータとして含む有効媒質理論を用いつつ、前記対象物上のシリコン膜における前記第1シフト量および前記第2シフト量の値を求める。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の水素含有率取得装置であって、前記パラメータ群の値が、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数における虚部のピーク値およびピークにおける振動数を含む。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の水素含有率取得装置であって、前記対象物が、太陽電池用の基板である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、対象物上に形成されたシリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率を取得する水素含有率取得方法であって、a)所定のパラメータ群の値と、SiHの含有率およびSiHの含有率とを関連付ける参照情報を準備する工程と、b)分光エリプソメータにて対象物上のシリコン膜に対して測定を行うことにより測定スペクトルを取得し、前記測定スペクトルから前記パラメータ群の値を求める工程と、c)前記パラメータ群の前記値および前記参照情報に基づいて、SiHの含有率およびSiHの含有率を求める工程とを備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の水素含有率取得方法であって、前記パラメータ群の1つが、基準となるシリコン膜の誘電関数における虚部のピーク値である参照ピーク値と、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数における虚部のピーク値との差である第1シフト量であり、前記パラメータ群の他の1つが、前記参照ピーク値に対応する振動数と、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数の虚部のピークにおける振動数との差である第2シフト量であり、前記参照情報が、前記第1シフト量および前記第2シフト量を変数として、SiHの含有率およびSiHの含有率のそれぞれを表す関数を含む。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の水素含有率取得方法であって、前記b)工程において、SiHおよびSiHのそれぞれの存在に起因してシリコン膜中に生じるボイドの体積分率をパラメータとして含む有効媒質理論を用いつつ、前記対象物上のシリコン膜における前記第1シフト量および前記第2シフト量の値が求められる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の水素含有率取得方法であって、前記a)工程が、a1)SiHの含有率およびSiHの含有率が既知であり、前記基準となる基準シリコン膜と、SiHの含有率およびSiHの含有率が既知である他の複数のサンプルシリコン膜を準備する工程と、a2)前記基準シリコン膜および前記複数のサンプルシリコン膜のそれぞれに対して前記分光エリプソメータにて測定を行って誘電関数を取得する工程と、a3)前記複数のサンプルシリコン膜のそれぞれに関して、前記第1シフト量および前記第2シフト量をパラメータとして含む前記有効媒質理論を用いて表される誘電関数と、前記a2)工程において取得された誘電関数とを比較することにより、前記複数のサンプルシリコン膜における前記第1シフト量および前記第2シフト量の値を決定する工程と、a4)前記複数のサンプルシリコン膜における前記第1シフト量および前記第2シフト量の値から、前記第1シフト量および前記第2シフト量を変数として、SiHの含有率およびSiHの含有率のそれぞれを表す前記関数を生成する工程とを備える。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項6に記載の水素含有率取得方法であって、前記パラメータ群の値が、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数における虚部のピーク値およびピークにおける振動数を含む。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項6ないし10のいずれかに記載の水素含有率取得方法であって、前記対象物が、太陽電池用の基板である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、分光エリプソメータを用いてシリコン膜中のSiHの含有率およびSiHの含有率を精度よく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】水素含有率取得装置を示す斜視図である。
【図2】コンピュータの構成を示す図である。
【図3】コンピュータが実現する機能構成を示すブロック図である。
【図4】複数のシリコン膜の誘電関数を示す図である。
【図5】参照情報を生成する処理の流れを示す図である。
【図6】シリコン膜中に含まれる水素含有率を取得する処理の流れを示す図である。
【図7】シリコン膜の誘電関数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る水素含有率取得装置1を示す斜視図である。水素含有率取得装置1は、薄膜シリコン太陽電池用のガラス基板9上に形成されたアモルファスシリコン膜(以下、単に「シリコン膜」という。)中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率(以下、「水素含有率」とも総称する。)を取得するものである。ガラス基板9のサイズは、例えば1〜2メートル(m)角である。
【0022】
水素含有率取得装置1は、ガラス基板9上を撮像する撮像部2、後述の測定スペクトルを取得するための分光エリプソメータ3、図1中のY方向に移動可能なY方向移動部4、図1中のX方向に移動可能なX方向移動部5、並びに、各種演算処理を行うCPUや各種情報を記憶するメモリ等により構成されたコンピュータ6を備え、コンピュータ6は水素含有率取得装置1の各構成を制御する制御部としての役割を果たす。X方向移動部5はY方向移動部4上に設けられ、X方向移動部5には、撮像部2および分光エリプソメータ3が固定される。水素含有率取得装置1では、分光エリプソメータ3による光の照射位置をガラス基板9上の各位置に自在に配置することが可能となっている。
【0023】
分光エリプソメータ3は、ガラス基板9の上方(図1中の(+Z)側)に配置される照明部31および受光部32を備え、照明部31からガラス基板9に向けて偏光した白色光が照射され、受光部32にてガラス基板9からの反射光が受光される。受光部32は、反射光が入射する検光子および反射光の分光強度を取得する分光器を有し、検光子の回転位置、および、分光器により取得された反射光の分光強度がコンピュータ6へと出力される。コンピュータ6では、複数の振動数(または、波長)の光のそれぞれの偏光状態として、p偏光成分とs偏光成分との位相差および反射振幅比角が求められる。すなわち、位相差および反射振幅比角の振動数スペクトル(以下、「測定スペクトル」と総称する。)が取得される。
【0024】
図2は、コンピュータ6の構成を示す図である。コンピュータ6は、各種演算処理を行うCPU61、基本プログラムを記憶するROM62および各種情報を記憶するRAM63をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行う固定ディスク65、各種情報の表示を行うディスプレイ66、操作者からの入力を受け付けるキーボード67aおよびマウス67b、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体81から情報の読み取りを行ったり記録媒体81に情報の書き込みを行う読取/書込装置68、並びに、外部との通信を行う通信部69が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
【0025】
コンピュータ6には、事前に読取/書込装置68を介して記録媒体81からプログラム810が読み出され、固定ディスク65に記憶される。そして、プログラム810がRAM63にコピーされるとともにCPU61がRAM63内のプログラムに従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ6が、後述の演算部としての処理を行う。
【0026】
図3は、CPU61がプログラム810に従って動作することにより、CPU61、ROM62、RAM63、固定ディスク65等が実現する機能構成を示すブロック図である。図3において、演算部7の含有率演算部71および参照情報生成部73がCPU61等により実現される機能であり、記憶部72が固定ディスク65等により実現される機能である。なお、演算部7の機能は専用の電気的回路により実現されてもよく、部分的に電気的回路が用いられてもよい。
【0027】
次に、水素含有率取得装置1における水素含有率の測定原理について述べる。ここでは、CVD工程におけるシリコン基板の加熱温度を310℃、280℃、230℃、180℃、130℃、80℃に設定して、複数のシリコン基板上にシリコン膜を順次形成することにより、SiHの含有率およびSiHの含有率の少なくとも一方が互いに相違する複数のシリコン膜が準備されているものとする。表1は、シリコン基板上のシリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率を示しており、最上段に「基板温度」と記す列に、シリコン膜の形成時におけるシリコン基板の加熱温度を示している。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すように、加熱温度が最も低いシリコン膜(基板温度80℃)にてSiHの含有率(表1では、原子パーセント)およびSiHの含有率が最大となり、加熱温度が最も高いシリコン膜(基板温度310℃)にてSiHの含有率およびSiHの含有率が最小となる。
【0030】
図4は、上記の複数のシリコン膜の誘電関数を示す図である。誘電関数εは、実部であるεと虚部であるεとを含む複素関数にて表現され(すなわち、虚数単位をiとして(ε=ε+iε))、図4の縦軸は誘電関数の虚部εを示し、横軸は振動数に対応する光子エネルギーを示している。図4では、各シリコン膜の誘電関数(の虚部ε)を示す線に当該シリコン膜の形成時における加熱温度を付している。なお、図4の誘電関数は、分光エリプソメータ3にて取得された測定スペクトルから抽出されたものであり、後述のTauc−Lorentzモデルを用いることなく求めたものである。以下、単に誘電関数という場合は、実部および虚部を含む複素誘電関数(複素誘電率)を意味するものとする。
【0031】
図4に示すように、上記の複数のシリコン膜の誘電関数は互いに相違しており、虚部εがピークとなる振動数近傍にて、虚部εの値の相違が顕著となっている。この相違は、SiHの含有率およびSiHの含有率の相違に依存すると考えられ、本実施の形態では、複数のシリコン膜における虚部εのピーク値の相違、および、ピークにおける光子エネルギー(または、振動数)の相違に着目する。
【0032】
具体的には、水素含有率取得装置1における水素含有率の測定では、SiHの含有率およびSiHの含有率が最小となるシリコン膜、すなわち、表1中の基板温度310℃のシリコン膜を基準となる基準シリコン膜とする。そして、基準シリコン膜の誘電関数における虚部εのピーク値(以下、「参照ピーク値」という。)と、他の各シリコン膜(以下、「サンプルシリコン膜」という。)の誘電関数における虚部εのピーク値との差を、注目すべきパラメータの1つとして捉える(以下、当該差を「第1シフト量」という。)。図4では成膜時の加熱温度が80℃のサンプルシリコン膜における第1シフト量の値を符号A1を付す矢印の長さにて示している。また、基準シリコン膜の参照ピーク値に対応する振動数(または、光子エネルギー)と、各サンプルシリコン膜の誘電関数の虚部εのピークにおける振動数との差も注目すべきパラメータの他の1つとして捉える(以下、当該差を「第2シフト量」という。)。図4では成膜時の加熱温度が80℃のサンプルシリコン膜における第2シフト量に相当する値を符号B1を付す矢印の長さにて示している。
【0033】
一方で、シリコン膜中にSiHおよびSiHが含まれる場合、SiHおよびSiHのそれぞれの存在に起因して(すなわち、SiHおよびSiHのそれぞれに伴って)ボイドがシリコン膜中に生じる。したがって、SiHの存在に起因してサンプルシリコン膜中に生じるボイドの体積分率をf、SiHの存在に起因してサンプルシリコン膜中に生じるボイドの体積分率をfHH、SiHの含有率およびSiHの含有率が最小となる基準シリコン膜の誘電関数をε310、真空の誘電関数をεとして、ボイドが生じるサンプルシリコン膜の誘電関数εは、有効媒質近似により数1を満たすとものと考える。
【0034】
【数1】

【0035】
なお、数1においてSiHの体積分率および誘電関数、並びに、SiHの体積分率および誘電関数も考慮されてよいが、数1では、これらのパラメータを省略して、演算の簡素化を図っている。数1中のfは、基準シリコン膜におけるSiHの存在に起因するボイドの体積分率と、サンプルシリコン膜におけるSiHの存在に起因するボイドの体積分率との差と捉えられてもよい(fHHにおいて同様)。
【0036】
水素含有率取得装置1では、事前処理として、数1を用いつつSiHの含有率およびSiHの含有率と第1シフト量および第2シフト量の値との関係(すなわち、図3の参照情報721)を導き、ガラス基板9上のシリコン膜の測定の際に、数1を用いつつ当該シリコン膜における第1シフト量および第2シフト量の値を特定することにより、当該シリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率を精度よく取得することが可能となる。以下、参照情報721の生成、および、ガラス基板9上のシリコン膜に対する測定について順に詳述する。
【0037】
なお、各サンプルシリコン膜における第1シフト量は、SiHおよびSiHに依存するボイドの存在(または、基準シリコン膜と比較した場合におけるボイドの体積分率の増大)によって生じる、基準シリコン膜の誘電関数からの誘電率の変化であると考えられる。また、水素含有率が相違することによりシリコン膜のバンドギャップは変化するため(すなわち、水素含有率の増加により光子エネルギーが変化するため)、第2シフト量は、SiHおよびSiH自体に起因すると考えられる。
【0038】
図5は、事前処理である参照情報721を生成する処理の流れを示す図である。参照情報721を生成する際には、まず、成膜条件を変更しつつCVD法にて複数のシリコン基板上にシリコン膜が形成される(ステップS11)。本実施の形態では、上記説明のように、CVD工程におけるシリコン基板の加熱温度を310℃、280℃、230℃、180℃、130℃、80℃に設定して、複数のシリコン基板上にシリコン膜が順次形成される。CVD法にて形成されるシリコン膜は非晶質となっている。なお、シリコン膜には、微細な結晶シリコンが含まれていてもよい。
【0039】
続いて、各シリコン基板上のシリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率が、既述の表1に示すように赤外分光装置により取得され、図3の参照情報生成部73に入力される(ステップS12)。CVD工程におけるシリコン基板の加熱温度を複数通りに変更して作製される複数のシリコン膜では、SiHの含有率およびSiHの含有率が互いに相違している。本処理においても、表1中の基板温度310℃のシリコン膜を基準シリコン膜と呼び、他のシリコン膜をサンプルシリコン膜と呼ぶ。上記ステップS11,S12の処理により、SiHの含有率およびSiHの含有率が既知であり、基準となる基準シリコン膜と、SiHの含有率およびSiHの含有率が既知である他の複数のサンプルシリコン膜とが準備される。なお、SiHの含有率およびSiHの含有率が互いに相違する複数のシリコン膜は、シリコン基板の加熱温度以外の条件を変更することにより作製されてもよい。
【0040】
複数のシリコン膜が準備されると、図1の分光エリプソメータ3では、各シリコン膜の所定位置(例えば、中央)に対して偏光した白色光が照射されるとともに当該シリコン膜からの反射光が受光されて測定が行われ、演算部7において測定スペクトルが取得される。本実施の形態では、Tauc−Lorentzモデルを用いた理論上の位相差および反射振幅比角の振動数スペクトルが、測定スペクトルに最も近くなるように、Tauc−Lorentzモデルにおける誘電関数および膜厚が所定の数値範囲内にてフィッティングされる。これにより、各シリコン膜の誘電関数および膜厚が決定される(ステップS13)。もちろん、Tauc−Lorentzモデル以外のモデルが用いられてもよい。
【0041】
続いて、参照情報生成部73では、上記ステップS13の処理にて取得された各サンプルシリコン膜の誘電関数、および、基準シリコン膜の誘電関数ε310(以下、「基準誘電関数ε310」という。)を用いて、上記の数1(以下、「有効媒質理論式」という。)におけるボイドの体積分率f,fHHの値および真空の誘電関数εが決定される。このとき、有効媒質理論式における誘電関数εの虚部が、基準誘電関数ε310の虚部を第1シフト量Aだけ誘電率の方向(図4中の縦軸方向)に移動し、第2シフト量Bだけ振動数の方向(図4中の横軸方向)に移動したものとして表される。また、クラマース・クローニッヒの関係式により誘電関数εの実部も、基準誘電関数ε310、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bを用いて表される。そして、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bを用いて表されるとともに有効媒質理論式を満たす誘電関数εが、取得されたサンプルシリコン膜の誘電関数に最も近くなるように、ボイドの体積分率f,fHH、真空の誘電関数ε、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bがフィッティングされる。
【0042】
このように、複数のサンプルシリコン膜のそれぞれに関して、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bをパラメータとして含む有効媒質理論(本実施の形態では、有効媒質近似)を用いて表される誘電関数と、Tauc−Lorentzモデルを用いて取得された誘電関数とを比較することにより、サンプルシリコン膜における体積分率f,fHH、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bの値が決定される(ステップS14)。なお、真空の誘電関数εは、全てのサンプルシリコン膜で同じとなり、全てのサンプルシリコン膜におけるフィッティングの度合いが高くなるように決定される。
【0043】
参照情報生成部73では、複数のサンプルシリコン膜における第1シフト量Aおよび第2シフト量Bの値、並びに、ステップS12の処理にて取得されるSiHの含有率およびSiHの含有率から、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bを変数としてSiHの含有率およびSiHの含有率のそれぞれを表す関数が、参照情報721として生成される(ステップS15)。例えば、SiHの含有率が(α1・A+α2・B)、SiHの含有率が(α3・A+α4・B)として表される場合、参照情報生成部73では係数α1〜α4が求められる。参照情報721は記憶部72にて記憶され、後述する未知のシリコン膜に対する測定のために準備される。事前処理では、SiHの含有率と体積分率fとの関係、および、SiHの含有率と体積分率fHHとの関係も取得され、参照情報721に含められてもよい。
【0044】
図6は、ガラス基板9上のシリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率を取得する処理の流れを示す図である。水素含有率取得装置1では、SiHの含有率およびSiHの含有率が未知のガラス基板9が搬入されると、分光エリプソメータ3にてガラス基板9上のシリコン膜の所定位置に対して測定を行うことにより測定スペクトルが取得される(ステップS21)。
【0045】
図3の含有率演算部71では、有効媒質理論式における誘電関数εの虚部が、基準誘電関数ε310の虚部を第1シフト量Aだけ誘電率の方向(図4中の縦軸方向)に移動し、第2シフト量Bだけ振動数の方向(図4中の横軸方向)に移動したものとして表される。また、クラマース・クローニッヒの関係式により誘電関数εの実部も第1シフト量Aおよび第2シフト量Bを用いて表される。そして、有効媒質理論式における誘電関数εを表す第1シフト量Aおよび第2シフト量Bの値、有効媒質理論式における体積分率f,fHHの値、並びに、シリコン膜の膜厚dの値を複数通りに変更しつつ、これらの値から得られる理論スペクトル(すなわち、位相差および反射振幅比角の理論上の振動数スペクトル)が測定スペクトルに最も近くなるようにフィッティングが行われる。これにより、フィッティングパラメータである体積分率f,fHH、第1シフト量A、第2シフト量Bおよびシリコン膜の膜厚dの値が決定される(ステップS22)。既述のように、有効媒質理論式における誘電関数εは図5の処理にて求められている。
【0046】
上記フィッティング処理は、基準誘電関数ε310の虚部を図4中の縦軸方向および横軸方向に第1シフト量Aおよび第2シフト量Bだけシフトすることにより表される誘電関数εを、測定スペクトルから導かれた誘電関数に合わせ込む処理と捉えることができる。したがって、第1シフト量Aは、基準シリコン膜の誘電関数の参照ピーク値(虚部のピーク値)と、測定スペクトルから導かれる誘電関数(すなわち、測定スペクトルから導かれることが可能な誘電関数)における虚部のピーク値との差であり、第2シフト量Bは、当該参照ピーク値に対応する振動数と、測定スペクトルから導かれる誘電関数の虚部のピークにおける振動数との差であるといえる。
【0047】
既述のように参照情報721には、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bを変数としてSiHの含有率およびSiHの含有率のそれぞれを表す関数が含まれており、当該関数に第1シフト量Aおよび第2シフト量Bの値を代入することにより、SiHの含有率およびSiHの含有率の値が決定される。すなわち、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bの値、並びに、参照情報721に基づいてSiHの含有率およびSiHの含有率の値が求められる(ステップS23)。また、基準誘電関数ε310、並びに、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bの値から、ガラス基板9上のシリコン膜の誘電関数も求められる。
【0048】
なお、有効媒質理論式中の誘電関数εを表す第1シフト量および第2シフト量のそれぞれが、SiHの含有率およびSiHの含有率の関数として表され(すなわち、SiHの含有率およびSiHの含有率をパラメータとして用いて有効媒質理論式中の誘電関数εが表され)、ステップS22のフィッティング処理においてSiHの含有率およびSiHの含有率の値が直接的に求められてもよい。この場合も、実質的には、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bの値、並びに、参照情報721に基づいてSiHの含有率およびSiHの含有率が求められていると捉えることができる。
【0049】
表2は、水素含有率取得装置1による測定結果と、外部の赤外分光装置による測定結果とを示しており、上段に「分光エリプソメトリ」と記す列が水素含有率取得装置1による測定結果であり、「赤外分光法」と記す列が赤外分光装置による測定結果である。赤外分光装置では、ガラス基板上のシリコン膜の測定が困難であるため、表2では、シリコン基板の自然酸化膜上にCVD法(プラズマCVD法)により形成したシリコン膜に対する測定結果を示している。水素含有率取得装置1により取得されるSiHの含有率およびSiHの含有率は、赤外分光装置により取得されるSiHの含有率およびSiHの含有率とほぼ一致している。
【0050】
【表2】

【0051】
図7は、上記シリコン基板上のシリコン膜の誘電関数を示す図である。図7中の符号L1を付す実線は水素含有率取得装置1にて有効媒質理論式を用いて求められる誘電関数を示し、図7中の符号L2を付す複数の円は分光エリプソメータ3にて取得された測定スペクトルから抽出される誘電関数(有効媒質理論式を用いることなく導かれる誘電関数)を示す。また、図7中の左側の山は誘電関数の実部εを示し、右側の山は虚部εを示す。図7から、水素含有率取得装置1にて有効媒質理論式を用いて求められる誘電関数は、測定スペクトルから抽出される誘電関数とよく一致しており、適切な誘電関数が求められることが判る。
【0052】
以上に説明したように、水素含有率取得装置1では、第1シフト量および第2シフト量を含むパラメータ群の値と、SiHの含有率およびSiHの含有率とを関連付ける参照情報721が記憶される。また、分光エリプソメータ3にてガラス基板9上のシリコン膜に対して測定を行うことにより測定スペクトルが取得される。そして、当該測定スペクトルから当該パラメータ群の値が求められ、当該パラメータ群の値および参照情報721に基づいて、SiHの含有率およびSiHの含有率の値が求められる。このように、水素含有率取得装置1では分光エリプソメータ3を用いてシリコン膜中のSiHの含有率およびSiHの含有率を精度よく求めることができる。
【0053】
ところで、特開2003−302334号公報および特開2004−93436号公報(上記特許文献1および2)では、複数の材料が単に混ざり合って解析対象とする膜が構成されると仮定した有効媒質近似モデルが開示されている。これに対し、本実施の形態では、シリコン膜中のSiHおよびSiHのそれぞれの存在に起因するボイドを考慮した有効媒質理論式を構築し、さらに、有効媒質理論式における誘電関数εを、第1シフト量および第2シフト量をパラメータとして表現した特徴的な誘電関数モデルが用いられており、SiHの含有率およびSiHの含有率を容易に、かつ、精度よく求めることが実現可能となっている。
【0054】
ここで、赤外分光装置を用いてシリコン膜中の水素含有率(すなわち、SiHの含有率およびSiHの含有率)を測定する場合に、シリコン膜がガラス基板上に形成されるときには、ガラス基板における赤外線の反射により水素含有率を精度よく測定することが困難となる。また、赤外分光法では基板上に形成される膜が多層膜である場合に水素含有率の測定が困難となる。さらに、赤外分光装置は大型であるため、当該装置を移動して基板上の広範囲に亘って測定を行うことが困難であり、基板上の各部位に対して測定を行うには、当該部位を切り出して、赤外分光装置にセットする必要がある。
【0055】
これに対し、図1の水素含有率取得装置1では、分光エリプソメータ3を用いてシリコン膜中のSiHの含有率およびSiHの含有率を取得するため、シリコン膜がガラス基板上に形成される場合であっても精度よく測定を行うことができる。また、基板上に形成される膜が多層膜であっても、いずれかの層であるシリコン膜における第1シフト量および第2シフト量の値をフィッティングにて求めることにより、SiHの含有率およびSiHの含有率を取得することができる。さらに、分光エリプソメータ3は赤外分光装置に比べて小型であるため、分光エリプソメータ3を移動して(基板を切り出すことなく)基板上の広範囲に亘って測定を行うことが容易に可能となる。このように、水素含有率取得装置1における水素含有率の測定では、シリコン膜が形成される対象物の種類や大きさの制約を受けることがなく、また、シリコン膜が多層膜の一部である場合でも、水素含有率の測定が可能となる。さらに、水素含有率取得装置1では、シリコン膜の厚さや光学定数等も水素含有率と同時に取得可能である。
【0056】
次に、水素含有率取得装置1における他の処理例について述べる。本処理例における事前処理では、図5のステップS13において基準シリコン膜および他の複数のサンプルシリコン膜に対してTauc−Lorentzモデルを用いて誘電関数が取得されると、基準シリコン膜の誘電関数の虚部のピーク値である参照ピーク値と、各サンプルシリコン膜の誘電関数の虚部のピーク値との差が第1シフト量の値として求められ、当該参照ピーク値に対応する振動数と、サンプルシリコン膜の誘電関数の虚部のピークにおける振動数との差が第2シフト量の値として求められる(ステップS14)。すなわち、有効媒質理論式を用いることなく、各サンプルシリコン膜における第1シフト量および第2シフト量の値が求められる。そして、上記処理例と同様にして、第1シフト量および第2シフト量の値と、SiHの含有率およびSiHの含有率とを関連付ける参照情報が生成される(ステップS15)。
【0057】
次に、ガラス基板9上のシリコン膜を測定する際には、分光エリプソメータ3にて当該シリコン膜に対して測定を行うことにより測定スペクトルが取得される(図6:ステップS21)。続いて、測定スペクトルからTauc−Lorentzモデルを用いて誘電関数(すなわち、ガラス基板9上のシリコン膜の誘電関数)が取得され、基準シリコン膜の参照ピーク値と、当該誘電関数の虚部のピーク値との差が第1シフト量の値として求められ、当該参照ピーク値に対応する振動数と、当該誘電関数の虚部のピークにおける振動数との差が第2シフト量の値として求められる(ステップS22)。そして、第1シフト量および第2シフト量の値、並びに、参照情報に基づいてSiHの含有率およびSiHの含有率が特定される(ステップS23)。このように、本処理例では、有効媒質理論式を用いることなく、シリコン膜中のSiHの含有率およびSiHの含有率が求められる。
【0058】
また、水素含有率取得装置1では、各サンプルシリコン膜の誘電関数の虚部のピーク値、および、虚部のピークにおける振動数と、SiHの含有率およびSiHの含有率とを関連付ける参照情報が準備され、水素含有率を測定する際に、ガラス基板9上のシリコン膜を分光エリプソメータ3にて測定することにより取得される誘電関数の虚部のピーク値、および、虚部のピークにおける振動数、並びに、当該参照情報に基づいてSiHの含有率およびSiHの含有率が求められてもよい。このように、水素含有率取得装置1では、水素含有率を取得する際に求められるパラメータ群の値が、測定スペクトルから導かれる誘電関数における虚部のピーク値およびピークにおける振動数を含む場合であっても、一定の精度にてSiHの含有率およびSiHの含有率を取得することが可能となる。ただし、シリコン膜中のSiHの含有率およびSiHの含有率をより精度よく求めるには、上記処理例のように、有効媒質理論式を用いつつシリコン膜における第1シフト量および第2シフト量の値が求められることが好ましい。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0060】
図5のステップS15において、基準シリコン膜とサンプルシリコン膜との間におけるSiHの含有率の差をR、SiHの含有率の差をRHHとし、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bを変数としてRおよびRHHのそれぞれを表す関数が参照情報として取得されてもよい。この場合、図6のステップS23では、ガラス基板9上のシリコン膜における第1シフト量Aおよび第2シフト量Bの値からRおよびRHHの値が求められ、Rの値およびRHHの値に、基準シリコン膜におけるSiHの含有率およびSiHの含有率をそれぞれ加算することにより、ガラス基板9上のシリコン膜のSiHの含有率およびSiHの含有率が算出される。実質的には、このような関数も、第1シフト量Aおよび第2シフト量Bを変数としてSiHの含有率およびSiHの含有率のそれぞれを示すものであるといえる。
【0061】
図5のステップS12において、シリコン膜中のSiHの含有率およびSiHの含有率が、赤外分光法以外の手法にて取得されてよい。
【0062】
水素含有率取得装置1では、ガラス基板9以外の太陽電池用の基板や、プラスチックフィルム等、様々な対象物上に形成されたシリコン膜中のSiHの含有率およびSiHの含有率を取得することが可能である。また、シリコン膜は、CVD法以外の手法にて形成されたものであってよい。
【0063】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0064】
1 水素含有率取得装置
3 分光エリプソメータ
9 ガラス基板
71 含有率演算部
72 記憶部
721 参照情報
S11〜S15,S21〜S23 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物上に形成されたシリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率を取得する水素含有率取得装置であって、
分光エリプソメータと、
所定のパラメータ群の値と、SiHの含有率およびSiHの含有率とを関連付ける参照情報を記憶する記憶部と、
前記分光エリプソメータにて対象物上のシリコン膜に対して測定を行うことにより取得された測定スペクトルから前記パラメータ群の値を求め、前記パラメータ群の値および前記参照情報に基づいて、SiHの含有率およびSiHの含有率を求める含有率演算部と、
を備えることを特徴とする水素含有率取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素含有率取得装置であって、
前記パラメータ群の1つが、基準となるシリコン膜の誘電関数における虚部のピーク値である参照ピーク値と、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数における虚部のピーク値との差である第1シフト量であり、
前記パラメータ群の他の1つが、前記参照ピーク値に対応する振動数と、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数の虚部のピークにおける振動数との差である第2シフト量であり、
前記参照情報が、前記第1シフト量および前記第2シフト量を変数として、SiHの含有率およびSiHの含有率のそれぞれを表す関数を含むことを特徴とする水素含有率取得装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水素含有率取得装置であって、
前記含有率演算部が、SiHおよびSiHのそれぞれの存在に起因してシリコン膜中に生じるボイドの体積分率をパラメータとして含む有効媒質理論を用いつつ、前記対象物上のシリコン膜における前記第1シフト量および前記第2シフト量の値を求めることを特徴とする水素含有率取得装置。
【請求項4】
請求項1に記載の水素含有率取得装置であって、
前記パラメータ群の値が、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数における虚部のピーク値およびピークにおける振動数を含むことを特徴とする水素含有率取得装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の水素含有率取得装置であって、
前記対象物が、太陽電池用の基板であることを特徴とする水素含有率取得装置。
【請求項6】
対象物上に形成されたシリコン膜中に含まれるSiHの含有率およびSiHの含有率を取得する水素含有率取得方法であって、
a)所定のパラメータ群の値と、SiHの含有率およびSiHの含有率とを関連付ける参照情報を準備する工程と、
b)分光エリプソメータにて対象物上のシリコン膜に対して測定を行うことにより測定スペクトルを取得し、前記測定スペクトルから前記パラメータ群の値を求める工程と、
c)前記パラメータ群の前記値および前記参照情報に基づいて、SiHの含有率およびSiHの含有率を求める工程と、
を備えることを特徴とする水素含有率取得方法。
【請求項7】
請求項6に記載の水素含有率取得方法であって、
前記パラメータ群の1つが、基準となるシリコン膜の誘電関数における虚部のピーク値である参照ピーク値と、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数における虚部のピーク値との差である第1シフト量であり、
前記パラメータ群の他の1つが、前記参照ピーク値に対応する振動数と、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数の虚部のピークにおける振動数との差である第2シフト量であり、
前記参照情報が、前記第1シフト量および前記第2シフト量を変数として、SiHの含有率およびSiHの含有率のそれぞれを表す関数を含むことを特徴とする水素含有率取得方法。
【請求項8】
請求項7に記載の水素含有率取得方法であって、
前記b)工程において、SiHおよびSiHのそれぞれの存在に起因してシリコン膜中に生じるボイドの体積分率をパラメータとして含む有効媒質理論を用いつつ、前記対象物上のシリコン膜における前記第1シフト量および前記第2シフト量の値が求められることを特徴とする水素含有率取得方法。
【請求項9】
請求項8に記載の水素含有率取得方法であって、
前記a)工程が、
a1)SiHの含有率およびSiHの含有率が既知であり、前記基準となる基準シリコン膜と、SiHの含有率およびSiHの含有率が既知である他の複数のサンプルシリコン膜を準備する工程と、
a2)前記基準シリコン膜および前記複数のサンプルシリコン膜のそれぞれに対して前記分光エリプソメータにて測定を行って誘電関数を取得する工程と、
a3)前記複数のサンプルシリコン膜のそれぞれに関して、前記第1シフト量および前記第2シフト量をパラメータとして含む前記有効媒質理論を用いて表される誘電関数と、前記a2)工程において取得された誘電関数とを比較することにより、前記複数のサンプルシリコン膜における前記第1シフト量および前記第2シフト量の値を決定する工程と、
a4)前記複数のサンプルシリコン膜における前記第1シフト量および前記第2シフト量の値から、前記第1シフト量および前記第2シフト量を変数として、SiHの含有率およびSiHの含有率のそれぞれを表す前記関数を生成する工程と、
を備えることを特徴とする水素含有率取得方法。
【請求項10】
請求項6に記載の水素含有率取得方法であって、
前記パラメータ群の値が、前記測定スペクトルから導かれる誘電関数における虚部のピーク値およびピークにおける振動数を含むことを特徴とする水素含有率取得方法。
【請求項11】
請求項6ないし10のいずれかに記載の水素含有率取得方法であって、
前記対象物が、太陽電池用の基板であることを特徴とする水素含有率取得方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate