説明

水素吸蔵合金、該水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵合金電極及びニッケル水素二次電池

【課題】耐アルカリ性及び水素吸蔵量を維持しながら、水素平衡圧が高い希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金及び当該水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵合金電極を提供し、これにより、高容量で、サイクル寿命が長く、且つ、作動電圧が高いニッケル水素二次電池を提供する。
【解決手段】ニッケル水素二次電池は、負極(26)に水素吸蔵合金の粒子(36)を含み、この水素吸蔵合金は、一般式:(NdDyA)1−wMgNiAlTにて示される組成を有する。式中、A及びTは、La,Pr等よりなる群及びV,Nb等よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をそれぞれ表し、添字a,b,cはそれぞれ、a>0,b>0,c≧0,a+b+c=1で示される関係を満たし、添字w,x,y,zはそれぞれ、0<w<1,0.05≦y≦0.35,0≦z≦0.5,3.2≦x+y+z≦3.8で示される範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵合金、該水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵合金電極及びニッケル水素二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金は、安全且つ容易に水素を吸蔵できることから、エネルギー変換材料及びエネルギー貯蔵材料として注目されている。また、水素吸蔵合金を負極に使用したアルカリ蓄電池、特にニッケル水素二次電池は、高容量であることやクリーンであるなどの特徴を有することから民生用電池として大きな需要がある。
ニッケル水素二次電池の負極用の水素吸蔵合金としては、従来、LaNi等のCaCu型合金(希土類-Ni系水素吸蔵合金)が用いられているが、電池の高容量化のため、希土類-Ni系水素吸蔵合金における希土類元素の一部をMg元素で置換した希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金が開発されている。
【0003】
希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金は、希土類-Ni系水素吸蔵合金に比べ、常温付近で水素ガスを多量に吸蔵できるという特徴を有する。しかしながら、開発初期の希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金には、吸蔵した水素を放出し難いという問題があった。
そこで、特許文献1は、特定の組成を有する希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を開示しており、当該希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を用いることによって、高容量で、充放電サイクル寿命に優れたニッケル水素二次電池が提供されるとされている。
【特許文献1】特開平11-323469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ニッケル水素二次電池の新しい用途として、乾電池を代替するような使い方に注目が集まっている。乾電池は一次電池であり、使い捨てであるのに対して、ニッケル水素二次電池は繰り返し使用可能であるため、乾電池の代わりにニッケル水素二次電池を使うと、環境負荷が低減される。
そして、このような乾電池を代替する用途でも、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を使用したニッケル水素二次電池によれば、その容量の高さから、機器の駆動時間を延ばすことができると期待されている。
【0005】
しかしながら、乾電池の使用を前提としている機器には、乾電池の作動電圧を1.5Vとして設計されている機器があり、作動電圧が1.2V前後のニッケル水素二次電池では上手く動作しないものがある。例えば、利便性を高めるための液晶表示部を有するリモコンにニッケル水素二次電池を用いた場合、液晶表示が薄くなってしまう。
かかる問題の解決のため、ニッケル水素二次電池の作動電圧を高めることは、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を用いた場合には困難であった。これは、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金では、従来の希土類-Ni系水素吸蔵合金に比べ、希土類元素等のAサイトの元素に対するNi等のBサイトの元素の比が低く、固有の性質として水素平衡圧が低いためである。
【0006】
本発明は上述の事情に基づいてなされたものであって、その目的とするところは、耐アルカリ性及び水素吸蔵量を維持しながら、水素平衡圧が高い希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金及び当該水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵合金電極を提供し、これにより、高容量で、サイクル寿命が長く、且つ、作動電圧が高いニッケル水素二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成すべく、本発明者等は、種々検討を重ねた結果、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金であっても、所定の組成においてDyを含有することによって、耐アルカリ性及び水素吸蔵量を維持しながら、水素平衡圧が高くなることを見出して、本発明に想到した。
すなわち、本発明によれば、一般式:(NdDyA)1−wMgNiAlT(ただし、式中、Aは、La,Ce,Pr,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc,Zr,Hf,Ca及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Tは、V,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、添字a,b,cはそれぞれ、a>0,b>0,c≧0,a+b+c=1で示される関係を満たし、添字w,x,y,zはそれぞれ、0<w<1,0.05≦y≦0.35,0≦z≦0.5,3.2≦x+y+z≦3.8で示される範囲にある。)にて表される組成を有する水素吸蔵合金が提供される(請求項1)。
【0008】
好ましくは、前記添字bは0<b<0.15の範囲にある(請求項2)。
好ましくは、前記添字cは0.1以下である(請求項3)。
好ましくは、前記添字wは0.10≦w≦0.25の範囲にある(請求項4)。
また本発明によれば、請求項1乃至4の何れか1項に記載の水素吸蔵合金からなる粒子と、前記粒子を保持した導電性を有する芯体とを備えることを特徴とする水素吸蔵合金電極が提供される(請求項5)。
【0009】
更に本発明によれば、請求項5に記載の水素吸蔵合金電極を負極として具備したことを特徴とするニッケル水素二次電池が提供される(請求項6)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1の水素吸蔵合金は、所定の組成にてDyを含むことによって、耐アルカリ性及び水素吸蔵量を維持しながら、水素平衡圧が高い。このため、当該水素吸蔵合金をニッケル水素二次電池等に適用したときに、高容量化、サイクル寿命の向上及び高作動電圧化が図られる。
請求項2の水素吸蔵合金では添字bが0<b<0.15の範囲にある。これにより、当該水素吸蔵合金をニッケル水素二次電池等に適用したときに、サイクル寿命の向上が一層図られる。
【0011】
請求項3の水素吸蔵合金では添字cが0.1以下である。これにより、当該水素吸蔵合金をニッケル水素二次電池等に適用したときに、サイクル寿命の向上及び高作動電圧化が一層図られる。
請求項4の水素吸蔵合金では、添字wが0.10≦w≦0.25の範囲にある。これにより、当該水素吸蔵合金をニッケル水素二次電池等に適用したときに、サイクル寿命の向上及び高作動電圧化が一層図られる。
【0012】
請求項5の水素吸蔵合金電極は、上述した水素吸蔵合金の粒子を備える。これによって当該水素吸蔵合金電極をニッケル水素二次電池等に適用したときに、高容量化、サイクル寿命の向上及び高作動電圧化が図られる。
請求項6のニッケル水素二次電池は、上述した水素吸蔵合金電極を具備したことによって、高容量であり、サイクル寿命が長く、且つ、作動電圧が高い。このため、当該ニッケル水素二次電池は、例えば乾電池を代替することが可能であり、工業的価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るニッケル水素二次電池を詳細に説明する。
このニッケル水素二次電池は例えばAAサイズの円筒型電池であり、図1に示したように、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10の底壁は導電性を有し、負極端子として機能する。外装缶10の開口内には、リング状の絶縁パッキン12を介して導電性を有する円板形状の蓋板14が配置され、これら蓋板14及び絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁に固定されている。
【0014】
蓋板14は中央にガス抜き孔16を有し、蓋板14の外面上にはガス抜き孔16を塞いでゴム製の弁体18が配置されている。更に、蓋板14の外面上には、弁体18を覆うフランジ付き円筒形状の正極端子20が固定され、正極端子20は弁体18を蓋板14に押圧している。従って、通常時、外装缶10は絶縁パッキン12及び弁体18を介して蓋板14により気密に閉塞されている。一方、外装缶10内でガスが発生し、その内圧が高まった場合には弁体18が圧縮され、ガス抜き孔16を通して外装缶10からガスが放出される。つまり、蓋板14、弁体18及び正極端子20は、安全弁を形成している。
【0015】
外装缶10には、電極群22が収容されている。電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28からなり、渦巻状に巻回された正極24と負極26の間にセパレータが挟まれている。即ち、セパレータ28を介して正極24及び負極26が互い重ね合わされている。電極群22の最外周は負極26の一部(最外周部)により形成され、負極26の最外周部が外装缶10の内周壁と接触することで、負極26と外装缶10とは互いに電気的に接続されている。なお、正極24、負極26及びセパレータ28については後述する。
【0016】
そして、外装缶10内には、電極群22の一端と蓋板14との間に、正極リード30が配置され、正極リード30の両端は正極24及び蓋板14にそれぞれ接続されている。従って、正極端子20と正極24との間は、正極リード30及び蓋板14を介して電気的に接続されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の絶縁部材32が配置され、正極リード30は絶縁部材32に設けられたスリットを通して延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の絶縁部材34が配置されている。
【0017】
更に、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注液され、セパレータ28に含まれたアルカリ電解液を介して正極24と負極26との間で充放電反応が進行する。なお、アルカリ電解液の種類としては、特に限定されないけれども、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びこれらのうち2つ以上を混合した水溶液等をあげることができ、またアルカリ電解液の濃度についても特には限定されず、例えば8Nのものを用いることができる。
【0018】
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。
正極24は、多孔質構造を有する導電性の正極基板と、正極基板の空孔内に保持された正極合剤とからなり、正極合剤は、正極活物質粒子と、必要に応じて正極24の特性を改善するための種々の添加剤粒子と、これら正極活物質粒子及び添加剤粒子の混合粒子を正極基板に結着するための結着剤とからなる。
【0019】
なお、正極活物質粒子は、この電池がニッケル水素二次電池なので水酸化ニッケル粒子であるけれども、水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム等を固溶していてもよく、あるいは表面がアルカリ熱処理されたコバルト化合物で被覆されていてもよい。また、いずれも特に限定されることはないが、添加剤としては、酸化イットリウムの他に、酸化コバルト、金属コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物、酸化エルビウム等の希土類化合物等を、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等を用いることができる。
【0020】
負極26は、帯状をなす導電性の負極基板(芯体)を有し、この負極基板に負極合剤が保持されている。負極基板は、貫通孔が分布されたシート状の金属材からなり、例えば、パンチングメタルや、金属粉末を成型してから焼結した金属粉末焼結体基板を用いることができる。従って、負極合剤は、負極基板の貫通孔内に充填されるとともに、負極基板の両面上に層状にして保持される。
【0021】
負極合剤は、図1中円内に概略的に示したけれども、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子36と、必要に応じて例えばカーボン等の導電助剤(図示せず)と、これら水素吸蔵合金及び導電助剤を負極基板に結着する結着剤38とからなる。結着剤38としては親水性若しくは疎水性のポリマー等を用いることができ、導電助剤としては、カーボンブラックや黒鉛を用いることができる。なお、活物質が水素の場合、負極容量は水素吸蔵合金量により規定されるので、本発明では、水素吸蔵合金のことを負極活物質ともいう。また、負極24のことを水素吸蔵合金電極ともいう。
【0022】
この電池の水素吸蔵合金粒子36における水素吸蔵合金は、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金であって、主たる結晶構造がCaCu型ではなく、AB型構造とAB型構造とを合わせたような超格子構造であり、その組成が一般式:
(NdDyA)1−wMgNiAlT…(1)
で示される。
【0023】
ただし、式(1)中、Aは、La,Ce,Pr,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc,Zr,Hf,Ca及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Tは、V,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、添字a,b,cはそれぞれ、a>0,b>0,c≧0,a+b+c=1で示される関係を満たし、添字w,x,y,zはそれぞれ、0<w<1,0.05≦y≦0.35,0≦z≦0.5,3.2≦x+y+z≦3.8で示される範囲にある。
【0024】
水素吸蔵合金粒子36は、例えば以下のようにして得ることできる。
まず、上述の組成となるよう金属原料を秤量して混合し、この混合物を例えば高周波溶解炉で溶解してインゴットにする。得られたインゴットに、900〜1200℃の温度の不活性ガス雰囲気下にて5〜24時間加熱する熱処理を施し、インゴットの金属組織をAB型構造とAB型構造とを合わせたような超格子構造にする。この後、インゴットを粉砕し、篩分けにより所望粒径に分級して、水素吸蔵合金粒子36を得ることができる。
【0025】
上述したニッケル水素二次電池においては、水素吸蔵合金粒子36が希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を主成分とするため、高容量である。
また、このニッケル水素二次電池では、水素吸蔵合金粒子36を構成する希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金が、上記した式(1)で示される組成を有し、Dyを含有することによって、耐アルカリ性及び水素吸蔵量を維持しながら、水素平衡圧が高い。このため、このニッケル水素二次電池は、高容量で、サイクル寿命が長く、且つ、作動電圧が高い。
【実施例】
【0026】
1.電池の組立て
実施例1
(1)負極の作製
希土類成分の内訳が、原子数比で、20%のPr、40%のNd、及び40%のDyになるように希土類成分の原材料を用意し、そして、希土類成分の原材料、Mg、Ni及びAlを原子数比で0.85:0.15:3.3:0.20:0.10の割合で含有する水素吸蔵合金の塊を誘導溶解炉を用いて調製した。この合金をアルゴン雰囲気中で1000℃、10時間の熱処理を行い、組成が(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1で表わされる超格子構造の希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金のインゴットを得た。
【0027】
この希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金のインゴットを不活性ガス雰囲気中で機械的に粉砕し、篩分けにより400〜200メッシュの範囲の粒径を有する合金粒子を選別した。この合金粒子に対してレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を使用して粒度分布を測定したところ、重量積分50%に相当する平均粒径は30μmであり、最大粒径は45μmであった。
この合金粒子100質量部に対してポリアクリル酸ナトリウム0.4質量部、カルボキシメチルセルロース0.1質量部、および、ポリテトラフルオロエチレン分散液(分散媒:水、固形分60質量部)2.5質量部を加えた後、混練して負極合剤のスラリーを得た。
【0028】
このスラリーを、Niめっきを施した厚さ60μmのFe製パンチングメタルの両面の全面に均等に、かつ厚さが一定になるように塗着した。スラリーの乾燥を経て、このパンチングメタルをプレスして裁断し、AAサイズのニッケル水素二次電池用の負極を作製した。
(2)正極の作製
金属Niに対して、Znが3質量%、Coが1質量%の比率となるように、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛および硫酸コバルトの混合水溶液を調製し、この混合水溶液に攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加した。この際、反応中のpHを13〜14に保持して水酸化ニッケル粒子を析出させ、この水酸化ニッケル粒子を10倍量の純水にて3回洗浄したのち、脱水、乾燥した。
【0029】
得られた水酸化ニッケル粒子に、40質量%のHPCディスパージョン液を混合して、正極合剤のスラリーを調製した。このスラリーを多孔質構造のニッケル基板に充填して乾燥させてから、この基板を圧延、裁断してAAサイズのニッケル水素二次電池用の正極を作製した。
(3)ニッケル水素二次電池の組立て
上記のようにして得られた負極及び正極を、ポリプロピレンまたはナイロン製の不織布よりなるセパレータを介して渦巻状に巻回して電極群を形成し、この電極群を外装缶に収容したのち、この外装缶内に、リチウム、ナトリウムを含有した濃度30質量%の水酸化カリウム水溶液を注入して、図1に示した構成を有し、公称容量が2500mAhであるAAサイズのニッケル水素二次電池を組立てた。
【0030】
実施例2
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.35Nd0.50Dy0.15)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
実施例3
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
【0031】
実施例4
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni2.9Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
実施例5
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni3.5Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
【0032】
実施例6
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.10Nd0.80Dy0.10)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
実施例7
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.75Mg0.25Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
【0033】
実施例8
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.90Mg0.10Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
比較例1
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.70)0.85Mg0.15Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
【0034】
比較例2
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.85Mg0.15Ni3.5Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
比較例3
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.85Mg0.15Ni3.1Al0.4Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
【0035】
比較例4
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni3.6Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
比較例5
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.30Nd0.60Dy0.10)0.85Mg0.15Ni2.8Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
【0036】
比較例6
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.70Mg0.30Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
比較例7
水素吸蔵合金の組成を(Pr0.20Nd0.40Dy0.40)0.95Mg0.05Ni3.3Al0.2Zn0.1にしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ニッケル水素二次電池を組立てた。
【0037】
なお、実施例1〜8及び比較例1〜7においては、水素吸蔵合金作製の際、Pr及びNdの原材料としてジジム(PrとNdとの混合金属)をベースに、不足分としてPrの単金属を添加してもよい。一般に、ジジムはPr及びNdの単金属より安価であるため、より安価に水素吸蔵合金を作製できる。
2.電池評価
(1)作動電圧
実施例1〜8及び比較例1〜7の各電池について、0.1Cの電流で16時間充電してから、0.2Cの電流で放電させたときの中間作動電圧を測定した。これらの結果を比較例1の中間作動電圧との差(単位:mV)として表1に示す。
【0038】
なお、表1には、添字a,b,c,w,x,y,zを示すとともに、Aサイトの元素数に対するBサイトの元素数の比(B/A比)も示してある。
(2)サイクル寿命
実施例1〜8及び比較例1〜7の各電池について、1.0Cの電流で1時間充電してから1.0Cの電流で終止電圧0.8Vまで放電する電池容量測定を繰り返し、電池が放電できなくなるまでのサイクル数(サイクル寿命)を数えた。これらの結果を、比較例1の結果を100とした相対値にして表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
(3)評価結果
表1からは以下のことが明らかである。
(i)Dyを含有しない比較例1(b=0)に比べ、Dyを含有する実施例1(b=0.4)では、作動電圧が大きく向上している。また、実施例1ではサイクル寿命も向上しており、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金において、Dyを含有させることは、高作動電圧化とサイクル寿命の向上を両立させる要素技術であることがわかる。
【0041】
(ii)実施例1〜3を比較して、Dyの含有量について検討する。Dyの添字bが0.15である実施例2では、添字bが0.4である実施例1に比べて作動電圧が低下したが、サイクル寿命は同程度であった。Dyの添字bが0.10の実施例3では、作動電圧が更に低下したが、サイクル寿命が向上している。これより、サイクル寿命を向上させる観点からは、添字bは0.15未満(b<0.15)に設定されるのが望ましい。
ただし、Dyの含有量を削減すると作動電圧が低下するため、サイクル寿命と作動電圧のバランスを考えると、添字bは、0.10≦b<0.15の範囲にあるのがより望ましい。
【0042】
(iii)実施例1、比較例2及び3を比較して、Alの含有量について検討する。比較例2(y=0)から、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金がAlを含まずDyを含む場合には、実施例1(y=0.2)と比べ、作動電圧が向上するが、サイクル寿命の低下が激しい。一方、Alの含有量が多い比較例3(y=0.4)では、実施例1(y=0.2)と比べ、サイクル寿命が向上したものの、作動電圧が大幅に低下している。従って、Alの添字yは、0.05≦y≦0.35の範囲に設定される。好ましくは、添字yは、0.10≦y≦0.20の範囲に設定される。
【0043】
(iv)実施例3〜5、比較例4及び5を比較して、B/A比について検討する。実施例4及び比較例4から、B/A比を上げると作動電圧が向上するが、B/A比が3.8を超えると、サイクル寿命が低下することがわかる。
一方、実施例5及び比較例5から、B/A比を3.2より下げると作動電圧が急激に低下することがわかる。これよりB/A比、すなわちx+y+zは、3.2≦x+y+z≦3.8の範囲に設定される。好ましくは、x+y+zは、3.3≦x+y+z≦3.5の範囲に設定される。
【0044】
(v)実施例1、7、8、比較例6及び7を比較して、Mgの含有量について検討する。実施例7及び比較例6から、添字wが0.25を超えるとサイクル寿命が低下することがわかる。一方、実施例8及び比較例7から、添字wが0.1より小さくなると作動電圧が急激に低下することがわかる。これより、添字wは、0.10≦w≦0.25の範囲にあるのが望ましいことがわかる。添字wは、0.10≦w≦0.20の範囲にあるのがより望ましい。
【0045】
(vi)実施例3及び6を比較して、Prの含有量について検討する。添字cが0.10の実施例6では、添字cが0.3の実施例3に比べて、作動電圧及びサイクル寿命が顕著に向上している。これより、添字cは0.10以下であるのが望ましいことがわかる。
(vii)実施例1〜8において、添字zは0.1であったが、添字zは、0≦z≦0.5の範囲に設定される。添字zを0.5以下に設定するのは、Niを別の元素で置換すると、合金容量が低下し、Alを別の元素で置換すると、耐食性が低下するためである。
(viii)実施例1〜8では、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金がNdを含んでいたけれども、Ndの添字aを0よりも大に設定するのは、比較的入手しやすい希土類元素でありながら、平衡圧を上げる効果が高く、また、耐酸化性が高いためである。
【0046】
本発明は上記した一実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々変形が可能であり、例えばニッケル水素二次電池は、角形電池であってもよく、機械的な構造は格別限定されることはない。
最後に本発明の水素吸蔵合金及び水素吸蔵合金電極は、ニッケル水素二次電池以外の他の物品にも適用可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るニッケル水素二次電池を示す部分切欠斜視図であり、円内に負極の一部を拡大して概略的に示した。
【符号の説明】
【0048】
26 負極
36 水素吸蔵合金粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:(NdDyA)1−wMgNiAlT
(ただし、式中、Aは、La,Ce,Pr,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Sc,Zr,Hf,Ca及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Tは、V,Nb,Ta,Cr,Mo,Mn,Fe,Co,Ga,Zn,Sn,In,Cu,Si,P及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、添字a,b,cはそれぞれ、a>0,b>0,c≧0,a+b+c=1で示される関係を満たし、添字w,x,y,zはそれぞれ、0<w<1,0.05≦y≦0.35,0≦z≦0.5,3.2≦x+y+z≦3.8で示される範囲にある。)
にて表される組成を有する水素吸蔵合金。
【請求項2】
前記添字bは0<b<0.15の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金。
【請求項3】
前記添字cは0.1以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素吸蔵合金。
【請求項4】
前記添字wは0.10≦w≦0.25の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の水素吸蔵合金。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の水素吸蔵合金からなる粒子と、前記粒子を保持した導電性を有する芯体とを備えることを特徴とする水素吸蔵合金電極。
【請求項6】
請求項5に記載の水素吸蔵合金電極を負極として具備したことを特徴とするニッケル水素二次電池。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−81040(P2009−81040A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249199(P2007−249199)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】