説明

水素吸蔵合金とその製造方法ならびにニッケル水素二次電池

【課題】 高い放電容量を確保しつつ、Co含有量を低下した場合でも、微粉化を抑制して電池の長寿命化を達成すると共に、高率放電特性にも優れる水素吸蔵合金とその製造方法、ならびに、上記水素吸蔵合金を用いたニッケル水素二次電池を提供する。
【解決手段】 CaCu5型の結晶構造を有する主相とMgが濃化した第2相とからなる水素吸蔵合金であって、該主相のCaサイトを構成するLaを1.5mass%以上24mass%未満、合金中にMgを0.01mass%以上1mass%未満含有し、好ましくはさらに、上記主相のCuサイトを構成するCoを5mass%未満含有することを特徴とする水素吸蔵合金。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵合金に関し、特に、二次電池の負極等に用いられる水素吸蔵合金とその製造方法、ならびにそれを用いたニッケル水素二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素による地球温暖化や排気ガスによる環境汚染などの環境問題とともに、石油資源の枯渇などのエネルギー問題が、人類が解決すべき課題として大きくクローズアップされてきている。この問題に対処するため、エネルギーを水素というエネルギー媒体に変換して貯蔵し、輸送し、利用するエネルギーシステムの開発が行われている。
【0003】
しかし、水素は、単位重量当たりのエネルギー密度が高い反面、軽量な気体であるため、輸送や貯蔵が容易ではなく、また、安全上も問題が多い。そこで、自分の体積の約1000倍もの水素を金属間化合物として、常温、常圧で安全に貯蔵できる水素吸蔵合金の開発が進められており、その一部は、携帯用電子機器やハイブリッド車、電気自動車等の電源(二次電池)用として実用化されている。
【0004】
ところで、ニッケル水素電池等の二次電池の負極に用いられる水素吸蔵合金としては、従来から、CaCu5型(AB5型)の結晶構造を有するLaNi5をベースとしたものが知られている。中でも、該結晶構造のCaサイトを、La,Ce,Pr,Nd等の希土類元素の混合物である安価なミッシュメタル(Mm)で構成し、該結晶構造のCuサイトを構成するNiの一部を、Co,Mn,Al等で置換したニッケル基の多元系合金(Mm(Ni,Co,Mn,Al)5)からなる水素吸蔵合金が広く用いられている。上記水素吸蔵合金を構成する各元素には、耐食性の向上や微粉化の抑制、電子伝導性の向上、解離圧の調整、表面層の拡大など多面的な役割があり、要求特性によって、それぞれの成分の量が好適範囲に調整されている。
【0005】
例えば、上記Mm(Ni,Co,Mn,Al)5からなる水素吸蔵合金において、Coは、水素吸蔵量を増加させて電池の容量を高めると共に、水素を吸蔵・放出する際の体積変化に起因する微粉化を抑制したり、合金表面の腐食や溶出を抑制したりして、電池の寿命を向上する効果を有することが知られており、通常、10mass%程度が添加されている。しかし、高率放電特性の面からは、Coが少ない方が、微粉化が促進されて表面積が増大するため好ましい。また、Coは高価であるため、製造コストの面からも少ない方が好ましい。
【0006】
そこで、特許文献1には、合金中にMgまたはCaを0.1〜1.0wt%の範囲で含有させて、微粉化を抑制しながら高率放電特性を改善すると共に、La量を24〜33wt%と比較的高めとして水素吸蔵量を増加し、高容量化を図ることによって、合金中のCo含有量を9wt%以下に低減しても、高容量で微粉化が抑制され、しかも高率放電特性にも優れる水素吸蔵合金が得られることが開示されている。
【特許文献1】特許第3603013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の水素吸蔵合金は、水素吸蔵量を高めて高容量化を図ってはいるものの、Laの含有量を高めると、水素の吸蔵、放出に伴う膨張、収縮が大きくなり、合金粉末の微細化が促進されるほか、純Laは、分離精製を必要とするため高価であり、原料コストが上昇するという問題がある。また、Coは、上述したように、高価でありまた高率放電特性を害することから、さらに低減することが好ましい。また、特許文献1の水素吸蔵合金の製造方法では、合金溶解時にMgやCaの多くが蒸発して揮散するため、歩留まりが低下するという問題のほか、作業性や安全性を害するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、高い放電容量を確保しつつ、Co含有量を低下した場合でも、微粉化を抑制して電池の長寿命化を達成すると共に、高率放電特性にも優れる水素吸蔵合金とその製造方法、ならびに、上記水素吸蔵合金を用いたニッケル水素二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、従来技術が抱える上記問題点を解決するために、水素吸蔵合金の成分組成と組織に着目し、鋭意検討を重ねた。その結果、CaCu5型の結晶構造を有する主相とその主相の粒界に沿って形成される第2相からなる水素吸蔵合金において、該主相の結晶構造のCaサイトを構成するLaの含有量を24mass%未満に低減するとともに、第2相に濃化する適量のMgを添加することによって、Co含有量を低下させた場合でも、高い放電容量を確保しながら、微粉化を抑制して電池の長寿命化を達成し、かつ高率放電特性にも優れる水素吸蔵合金を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、CaCu5型の結晶構造を有する主相とMgが濃化した第2相とからなる水素吸蔵合金であって、該主相のCaサイトを構成するLaを1.5mass%以上24mass%未満、合金中にMgを0.01mass%以上1mass%未満含有することを特徴とする水素吸蔵合金である。
【0011】
本発明の水素吸蔵合金は、上記主相のCuサイトを構成するCoを5mass%未満含有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の水素吸蔵合金は、上記主相の合金全体に占める体積分率が95%以上であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、合金原料を溶解し、鋳造して、Laを1.5mass%以上24mass%未満、Mgを0.01mass%以上1mass%未満含有する水素吸蔵合金を製造するに当たり、上記溶解、鋳造作業を、ヘリウムガスを10vol%以上含む不活性雰囲気中で行うことを特徴とする水素吸蔵合金の製造方法である。
【0014】
本発明の製造方法は、上記溶解作業におけるMgの添加は、Mgより高融点の合金原料を予め溶解してから行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記のいずれかに記載の水素吸蔵合金を負極に用いることを特徴とするニッケル水素二次電池である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、Laを24mass%未満、Coを5mass%未満に低減しても、高い放電容量を維持しながら、微粉化を抑制しつつ高率放電特性にも優れる水素吸蔵合金を安価に提供することができる。したがって、本発明の水素吸蔵合金を負極に用いることによって、高い放電容量と優れた高率放電特性を有すると共に、耐久性にも優れたニッケル水素二次電池を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る水素吸蔵合金について説明する。
本発明の水素吸蔵合金は、CaCu5型の結晶構造を有する主相とMgが濃化した第2相とからなる。
ここで、上記主相のCaCu5型の結晶構造におけるCaサイトは、La,Ce,Pr,Nd等の希土類元素の混合物であるミッシュメタル(Mm)で構成されているが、本発明の水素吸蔵合金では、上記Laの含有量が全合金の24mass%未満であることが必要である。Laが24mass%以上では、水素の吸蔵、放出に伴う膨張、収縮が大きくなり、合金の微細化を促進されるため、電池寿命にとって好ましくない。また、Laは、高価であるため、コスト低減のためには少ないほうが好ましいからである。
【0018】
なお、Laの下限は、1.5mass%まで許容できる。しかし、ニッケル水素二次電池に使用した時の電池の内圧上昇を抑制する観点からは、15mass%以上が好ましく、さらに、高い放電容量を維持する観点からは、20mass%以上が好ましい。La以外のCaサイトを構成する成分組成については、特に制限されないが、上記の電池内圧に影響を与える水素吸蔵合金の平衡水素圧力を適正化する観点から、Ce:5〜15mass%、Pr:0.6〜3mass%、Nd:2〜8mass%の範囲が好ましい。
【0019】
一方、上記主相のCaCu5型の結晶構造におけるCuサイトは、主にNiで構成されており、その一部は、Co,Mn,Al等で置換されているものであるが、本発明の水素吸蔵合金においては、上記Coの含有量は、5mass%未満であることが必要である。というのは、Coは、従来、合金の微細化を抑制するために10mass%程度添加しているが、後述するように、本発明ではMgの添加によっても微細化を抑制できること、Coは電池の高率放電特性の向上に対して好ましくないこと、また、本発明の水素吸蔵合金を構成する元素の中で最も高価な金属であることなどから少ないほど好ましいからである。なお、Coの下限は、特に規定しないが、CaCu5型の結晶構造を維持する観点からは、1mass%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の水素吸蔵合金は、上記成分以外に、Mgを0.01mass%以上1mass%未満含有することが必要である。Mgは、0.01mass%含有することによって、合金の微細化を抑制するほか、高率放電特性をも改善する特異な元素である。しかし、1mass%を超えて添加すると、放電容量の低下を招くようになるほか、溶解時にMgが多量に蒸発するので好ましくない。なお、高い放電容量を確保する観点からは、Mgの添加量は0.1〜0.5mass%の範囲が好ましい。
【0021】
Mgの添加により上記のような効果が得られる原因については、まだ明確とはなっていないが、Mgは、主相のCaCu5型の結晶構造におけるCaサイトを構成する元素であると考えられているが、むしろ、上記主相と主相の間の粒界に沿って形成される第2相に濃化する傾向があり、このMgの濃化によって、水素の吸蔵、放出に伴う体積変化による微細化を抑制すると共に、高率放電特性の向上に寄与しているものと考えられる。
【0022】
なお、本発明の水素吸蔵合金は、電池の充放電特性の向上を図るため、主相のCaサイトに、La,Ce,Pr,Ndの外に、Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,LuおよびYのうち少なくとも一つの元素を3mass%以下の範囲で含ませてもよい。
【0023】
本発明の水素吸蔵合金は、上述したように、CaCu5型の結晶構造を有する主相と、該主相と主相の間の粒界に沿って形成される第2相からなるものであるが、上記主相が全合金中に占める割合は、体積分率にして95%以上99.9%以下であることが好ましい。95%未満では、高い放電容量を維持することが困難であり、また、99.9%を超えると、微細化を抑制する効果が得られないからである。なお、主相および第2相は、合金の断面を研摩し、SEM等で観察することにより容易に判別することができる。
【0024】
次に、本発明の水素吸蔵合金の製造方法について説明する。
本発明の水素吸蔵合金は、合金の成分組成が上記範囲となるよう、各合金成分の原料を準備し、これを高周波溶解炉、アーク溶解炉等で溶解し、その後、鋳型に鋳込んで鋳塊(インゴット)とする鋳型鋳込み法、ターンテーブル上あるいはロール上に溶湯を注いで凝固させるテーブル鋳込み法やロール急冷法、あるいは、アトマイズ法など、公知の方法で鋳造、凝固させて製造することができる。
【0025】
この際、本発明の製造方法では、上記合金の溶解、鋳造作業を、ヘリウムガスを10vol%以上混合した不活性雰囲気下で行うことが必要である。というのは、従来、活性な水素吸蔵合金の溶解、鋳造作業は、アルゴンガスなどの不活性雰囲気下で行われてきた。しかし、Mgは、低融点で蒸気圧が高い元素である。そのため、アルゴンガスなどの不活性雰囲気下で溶解した場合には、溶解中に多量のMgが蒸発、揮散するため、組成の制御が難しくなったり、蒸発したMgが溶解炉の看視窓や炉壁等に付着して、炉内の看視を妨げたり、大気に触れた時に発火や爆発を起こすおそれがある。
【0026】
上記のような現象を抑制するには、溶解雰囲気中にヘリウムガスを混合することが有効である。ヘリウムガスの混合によりMgの蒸発が抑制される理由は、ヘリウムガスは、他の不活性ガスと比較して、熱伝導率が高く、密度が低く、平均自由工程が長いことに起因したものと考えられる。なお、ヘリウムガスの混合量は、少なくとも10vol%混合する必要があり、より好ましくは30vol%以上、さらに好ましくは50vol%以上である。また、溶解、鋳造作業におけるヘリウムガス混合雰囲気の圧力は、0.01〜1MPaであることが好ましい。0.01MPa未満では、Mgの蒸発温度が低下して蒸発が促進されるため、また、1MPaを超えると、融点が上昇するため溶解が難しくなるためである。
【0027】
ヘリウムガスと混合する他の気体(不活性ガス)としては、アルゴンガスが最も好ましい。アルゴンガスは、ヘリウムガスと比較して安価であり、高温においても、MgやMm,Niなどと反応することがないからである。
【0028】
また、本発明の製造方法では、上記水素吸蔵合金の溶解作業におけるMgの添加は、金属Mgより高融点の合金原料を予め溶解し、その後、投入することが好ましい。というのは、上述したように、Mgは低融点で蒸気圧が高い元素であるため、他の合金原料と一緒に溶解した場合には、Mgが先に溶解して蒸発することとなり、上述した雰囲気制御だけでは、Mgの蒸発を完全に防止することはできないからである。したがって、Mgの添加は、できる限り溶解作業の後期に投入し、蒸発を抑制することが好ましい。なお、Mgの原料としては、金属Mgに限られるものではなく、他の合金構成元素と合金化して高融点化した、例えば、Mg−Ni合金などを用いてもよいことは勿論である。
【0029】
上記のようにして得た合金は、その後、必要に応じてアルゴンガス等の不活性雰囲気下(真空〜1MPa)で、600〜1200℃で0.5〜50時間の熱処理を施してから、ハンマーミル、ロールミル、ジョークラッシャー、ボールミル等通常公知の方法で粉砕して、平均粒径が10〜150μmの範囲の粒径を有する合金粉末とする。
【0030】
上記のようにして得た本発明の水素吸蔵合金は、通常公知の方法でニッケル水素二次電池の負極に用いることができる。例えば、上記合金の粉末に、PVA,PTFE,CMC,SBRなどのバインダーを適量混合し、さらに必要に応じてカーボングラファイト、NiやCu粉末等を添加し、混練して合金ペーストとし、この合金ペーストをニッケル発泡体、ニッケル繊維体等の三次元導電支持体に充填したり、パンチングプレート等の二次元導電支持体に塗布、乾燥し、ロールで加圧したりすることにより負極板とすることができる。
本発明の水素吸蔵合金を負極に用いたニッケル水素二次電池は、低Coかつ低Laであっても、放電容量が高くて高率放電特性に優れ、しかも長寿命であるという優れた特性を有する。
【実施例1】
【0031】
以下、本発明について、発明例と比較例とを対比しながら説明する。
CaCu5型結晶構造を有する水素吸蔵合金のCaサイトを構成する元素であるLa,Ce,Pr,Ndと、Cuサイトを占める元素であるNi,Co,Mn,Al、および合金中に添加するMgのそれぞれの原料(純度99.9mass%以上)を用意し、製品としての成分組成が表1に示したものとなるよう歩留まり等を考慮しながら各原料を秤量し、それらの原料を、高周波溶解炉を用いて、ヘリウムガスを70vol%混合したアルゴンガス雰囲気下で溶解し、鉄製の鋳型に鋳込んでインゴットとし、その後、それらのインゴットを、Arガス雰囲気下で、約1000℃の温度で20時間の熱処理を施してから、ハンマーミル粉砕機を用いて粒径D50が35〜37μmの粉末状の水素吸蔵合金とした。ここで、上記粒径D50とは、粉体の粒度分布を測定した場合において、ある粒径より小さい粒子の累積質量が、全粉体質量の50%を占めるときの粒径を意味する。なお、本発明では、水素吸蔵合金の粒度分布の測定は、レーザー回折型粒度分布測定装置を用いて行った。
【0032】
上記のようにして得た水素吸蔵合金粉末に、バインダーとしてCMC,PTFEなどを加えた水溶液を混合し、さらに、導電剤としてカーボン粉を混合し、混練して合金ペーストとし、この合金ペーストをパンチングプレートに塗布し、乾燥し、ロールで加圧して、厚さが0.6〜0.8mmの負極板を作製した。また、正極板として、水酸化ニッケルを塗布したものを準備し、それぞれの極板にリード線を溶接し、6NのKOH電解液に浸漬して評価用ニッケル水素二次電池を作製した。
【0033】
上記評価用電池を用いて、各水素吸蔵合金についての標準容量、高率放電容量、微粉化特性および電池寿命を下記の要領で評価した。
それぞれの電池に対して、20℃において、負極容量に対して0.2Cで120%充電し、30分間休止後、0.2Cで電池電圧が0.8Vになるまで放電する工程を1サイクルとする充放電試験を15サイクル繰り返して行い、その間に得られた最大の放電容量を標準容量とした。
その後、同様にして、20℃において、0.2Cで120%充電後、2.0Cで放電する試験を5回実施し、この際に得られた最大の容量を高率放電容量(ハイレート特性)とした。
さらにその後、上記合計20サイクル試験後の電池を解体して負極板から水素吸蔵合金を取出し、バインダーや導電剤を除去したのち、その合金の粒径D50を、上述したレーザー回折型粒度分布測定装置を用いて測定し、それぞれの水素吸蔵合金の微粉化特性(微粉化のし易さ)を評価した。
また、電池の寿命は、上述した評価用ニッケル水素二次電池の放電容量が、標準容量の80%に低下するまでのサイクル数で評価した。なお、電池の寿命の評価は、Mgを含まず、Coを5.60mass%含むNo.19の水素吸蔵合金の電池寿命を100%とする寿命指数(%)で相対的に評価した。
【0034】
上記測定の結果を、表1に併記して示した。表1から、合金中に、Laを1.5mass%以上24mass%未満含有させ、Mgを0.01〜1mass%未満の範囲で添加し、さらに、主相の体積分率を95%以上とすることにより、Coの含有量を5mass%未満に低減しても、標準容量を維持しつつ、微粉化を抑制するとともに、高率放電特性にも優れた水素吸蔵合金が得られることがわかる。
【0035】
【表1】

【実施例2】
【0036】
実施例1と同様の方法によって、表2に示した成分組成を有するとともに、CaCu5型の結晶構造を有する主相の体積分率を変化させた合金No.21〜25の水素吸蔵合金を溶解し、粉砕して、それらの合金の粉末を作製した。次いで、実施例1と同様の方法で、水素吸蔵合金の電池特性(標準容量)を評価し、結果を表2に併記して示した。表2から、CaCu5型の結晶構造を有する主相が、体積分率で合金全体の95%以上99.9%以下である水素吸蔵合金において、高い放電容量が得られることがわかる。
【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の水素吸蔵合金は、ニッケル水素電池等の二次電池の負極材料としてだけでなく、燃料電池あるいは燃料電池の付属構成部材にも好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaCu5型の結晶構造を有する主相とMgが濃化した第2相とからなる水素吸蔵合金であって、該主相のCaサイトを構成するLaを1.5mass%以上24mass%未満、合金中にMgを0.01mass%以上1mass%未満含有することを特徴とする水素吸蔵合金。
【請求項2】
上記主相のCuサイトを構成するCoを5mass%未満含有することを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金。
【請求項3】
上記主相の合金全体に占める体積分率が95%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の水素吸蔵合金。
【請求項4】
合金原料を溶解し、鋳造して、Laを1.5mass%以上24mass%未満、Mgを0.01mass%以上1mass%未満含有する水素吸蔵合金を製造するに当たり、上記溶解、鋳造作業を、ヘリウムガスを10vol%以上含む不活性雰囲気中で行うことを特徴とする水素吸蔵合金の製造方法。
【請求項5】
上記溶解作業におけるMgの添加は、Mgより高融点の合金原料を予め溶解してから行うことを特徴とする請求項4に記載の水素吸蔵合金の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸蔵合金を負極に用いることを特徴とするニッケル水素二次電池。

【公開番号】特開2007−56309(P2007−56309A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242741(P2005−242741)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000231372)日本重化学工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】