説明

水素水製造装置及び水素水製造方法

【課題】電解水生成装置に比べて構造が簡単であり、しかもセラミックケースにマグネシウムを封入してなる従来の水素水生成器に比べてより効率的に水素水を製造することができる水素水製造装置を提供する。
【解決手段】貯留した水に水素を溶解させるための圧力容器1と、水素化マグネシウム24の加水分解により水素を発生させる水素発生部2と、水素発生部2で発生した水素を圧力容器1に供給する水素供給管6と、水素供給管6の途中に介装されており、水素発生部2で発生した水素を脱臭する脱臭部3と、水素供給管6を開閉する開閉弁と、圧力容器1に貯留された水に加圧された水素が溶解してなる水素水を外部へ供給する水素水供給管7と、水素水供給管7の途中に介装されており、水素水を減圧させるレギュレータ4と、レギュレータ4で減圧した水素水を取り出す水素水取出部5とを水素水製造装置に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化マグネシウムの加水分解によって発生した水素を用いて水素水を製造する水素水製造装置及び水素水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水を電気分解することによって、還元性電解水を生成する電解水生成装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、電気分解装置を用いることなく、飲料用の水素水を生成する水素水生成方法が開示されている。具体的には、浸水性の多孔質のセラミックケースに、飲料水と反応して水素ガスを発生するマグネシウム粒と銀粒を充填して水素水生成器を構成する。この水素水生成器を飲料水とともに容器に入れ、容器内で飲料水とマグネシウム粒とセラミックと銀粒を反応させ水素ガスを発生させ、容器内の飲料水を銀粒の作用で浄化するとともに水素を豊富に含み且つ抗菌作用を有する水素水に変える。
【0004】
一方、水素の貯蔵方法として水素吸蔵合金、例えば水素化マグネシウムを用いる方法が知られている。水素化マグネシウムは、加水分解によって水素を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3349710号公報
【特許文献2】特開2005−161209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る電解水生成装置は、電気分解用の電源が必要で、構造が複雑であるため、コスト高になるという問題があった。
特許文献2に係る水素水生成器においては、マグネシウムを封入したセラミックケースに水が効率的に侵入しないため、十分な水素が発生せず、水素が豊富に溶解した水素水を短時間で生成することが困難であるという問題があった。
また、セラミックケースの浸水性を向上させた場合、水素生成反応の生成物である水酸化マグネシウムがセラミック容器から飲料水中に漏れ出す虞があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電解水生成装置に比べて構造が簡単であり、しかもセラミックケースにマグネシウムを封入してなる従来の水素水生成器に比べてより効率的に水素水を製造することができる水素水製造装置及び水素水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水素水製造装置は、貯留した水に水素を溶解させるための容器と、水素化マグネシウムの加水分解により水素を発生させる水素発生部と、該水素発生部で発生した水素を前記容器に供給する水素供給管と、前記容器に貯留された水に加圧された水素が溶解してなる水素水を外部へ供給する水素水供給管とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る水素水製造装置は、前記容器に水を注入するための注水管と、該注水管を開閉する注水弁とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る水素水製造装置は、前記水素供給管の途中に介装されており、前記水素発生部で発生した水素を脱臭する脱臭部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る水素水製造装置は、前記水素発生部及び前記脱臭部に残留する空気をパージするためのパージ弁を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る水素水製造装置は、前記脱臭部の入口側に設けられた入側開閉弁と、前記脱臭部の出口側に設けられた出側開閉弁とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る水素水製造装置は、前記水素水供給管の途中に介装されており、水素水を減圧させるレギュレータを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る水素水製造装置は、前記レギュレータで減圧した水素水を取り出す水素水取出部を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る水素水製造装置は、前記水素水取出部は、前記レギュレータで減圧した水素水を更に減圧して出力する水銃であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る水素水製造装置は、前記容器内に貯留されている水素水の残量を示す残量計を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る水素水製造装置は、前記水素供給管の途中に介装された逆止弁を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る水素水製造装置は、前記水素発生部及び容器の内圧をそれぞれ計測する圧力計を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る水素水製造装置は、前記水素水供給管に設けられた水素水供給弁を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る水素水製造方法は、上述のいずれか一つの水素水製造装置を用いて水素水を製造する水素水製造方法であって、略満水になるまで前記容器に水を供給する工程と、前記水素発生部に水素化マグネシウムと、水又は酸性溶液とを投入する工程と、前記容器から所定量の水を排出させる工程とを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る水素水製造方法は、水素水が取り出され、水素が残留している前記容器に更に水を注入する工程を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明にあっては、水素水を製造するための水素を水素発生部にて生成する。水素発生部では、水素化マグネシウムの加水分解によって水素を発生させる。水素発生部で発生した水素は容器に供給される。容器に供給された水素は、水素発生部で発生した水素自身によって加圧された状態、例えば、水素の圧力が0.3MPaになる。加圧された水素は該容器に予め貯留しておいた水に溶解し、水素水が製造される。この水素水は、加圧された水素が貯留された水に溶解してなるものであるため、大気圧下での飽和水素濃度、例えば、1,500μg/Lよりも高い。従って、大気圧下での飽和水素濃度よりも高い水素水、例えば水素濃度が1,900μg/Lの水素水を外部へ供給することが可能である。
【0023】
本発明にあっては、注水弁を開放することによって、容器に水を注入することが可能である。容器に貯留可能な水に溶解する水素量よりも多量の水素を容器に供給する場合、容器に追加的に注水することで、水素水を補充的に製造することが可能である。本発明では、水素化マグネシウムに水を接触させることによって水素を発生させる構成であるため、水素の発生量を精密に制御、即ち水素の生成及び中断することは困難である。従って、一度に一定量の水素を発生させて容器に供給しておき、追加的に注水しながら水素水を必要に応じて適宜、製造する方法を考案した事により、水素の発生量を制御したり、発生した水素を別のタンクに貯蔵する必要も無く、効率的に水素水を製造することが可能である。
【0024】
本発明にあっては、水素発生部で発生した水素は脱臭部を経由して容器に供給される。脱臭部によって、水素化マグネシウムの加水分解によって発生した水素に含まれる臭気を除去することが可能である。
【0025】
本発明にあっては、水素発生部で水素の発生を開始する際にパージ弁を開放することで、水素発生部及び脱臭部に残留する空気を水素で置換することができ、水素水の製造に使用されない空気が容器に供給されることを防止することが可能である。従って、より効率的に水素水を製造することが可能である。ここで、パージ弁が設けられる位置は特に限定されない。例えば、脱臭槽の上部、下部、中部の何れにパージ弁を設けても良い。
【0026】
本発明にあっては、脱臭部を保管する際、入側開閉弁及び出側開閉弁を閉鎖することによって、該脱臭部内に雑菌などが侵入することを防止することが可能である。
【0027】
本発明にあっては、容器の水素水は、レギュレータによって減圧され、取り出される。
【0028】
本発明にあっては、容器の水素水は、レギュレータによって減圧され、更に水素水取出部で減圧され、取り出される。二段階以上の減圧で水素水を取り出すように構成してあるため、急な減圧によって水素水中の水素が空気中への放出を抑制することが可能である。なお、水素水取出部は単一であっても良いし、複数設けても良い。水素水取出部は、容器から水素水を取り出すことが可能な装置であれば、その形態は特に限定されず、蛇口、後述する水銃、その他の公知の技術を適用することができる。
【0029】
本発明にあっては、レギュレータで減圧した水素水を水銃によって更に減圧し、外部へ出力する。
【0030】
本発明にあっては、容器内に残留する水素水の量を確認することが可能である。
【0031】
本発明にあっては、容器から水素発生部へ水素が逆流することを防止することが可能である。
【0032】
本発明にあっては、水素発生部及び容器の内圧を確認することが可能である。
【0033】
本発明にあっては、水素水供給弁を閉じることによって、水素を水に溶解させている最中に水素が容器から取り出されることを防止することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、電解水生成装置に比べて構造が簡単であり、しかもセラミックケースにマグネシウムを封入してなる従来の水素水生成器に比べてより効率的に水素水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態に係る水素水製造装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。
【図2】水素水製造方法の手順を示したフローチャートである。
【図3】水素水製造方法を概念的に示した説明図である。
【図4】水素水製造方法を概念的に示した説明図である。
【図5】変形例に係る制御装置の一構成例を示したブロック図である。
【図6】変形例に係る制御装置の処理手順を示したフローチャートである。
【図7】変形例に係る制御装置の処理手順を示したフローチャートである。
【図8】変形例に係る制御装置の処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本実施の形態に係る水素水製造装置の一構成例を模式的に示した側断面図である。本発明の実施の形態に係る水素水製造装置は、水素化マグネシウム24の加水分解により水素を発生させる水素発生部2と、貯留した水に水素を溶解させるための圧力容器(容器)1とを備え、水素発生部2及び圧力容器1は、フッ素樹脂製の水素供給管6で接続されている。水素供給管6の途中には、水素発生部2で発生した水素を脱臭する脱臭部3が介装されている。なお、脱臭部3は必須の構成は無く、水素水の匂いを問題としない場合は脱臭部3を設ける必要は無い。
【0037】
水素発生部2は、底部が丸い有底円筒状の耐圧容器を有する。耐圧容器は、例えば、ステンレス等の金属、又は樹脂で形成され、耐圧容器の上部の開口は蓋部で密閉されるように構成されている。耐圧容器の容量は、例えば500mLである。前記蓋部の略中央部には水素の出口が形成され、該出口に水素供給弁21が設けられている。該水素供給弁21には第1水素供給管61の一端が接続されている。また、該蓋部には、耐圧容器の内圧を計測して表示する圧力計22、安全弁23が設けられている。安全弁23は、例えば0.5MPaで動作し、耐圧容器の内圧が0.5MPa以下になるように構成されている。このように構成された耐圧容器に水素化マグネシウム24及びクエン酸水溶液25を投入することによって、水素化マグネシウム24を加水分解し、水素を発生させることができる。
【0038】
脱臭部3は、水素発生部2で発生した水素を脱臭し、湿分を取り除く脱臭部材、例えば活性炭を収容する中空円柱状の脱臭槽を有する。脱臭槽の下部には、第1水素供給管61の他端が接続され、脱臭槽の上部には、第2水素供給管62の一端が接続されている。脱臭部3は、水素発生部2の上部に配されており、第1水素供給管61は鉛直上方へ所定長伸びた配管部分を有している。水素発生部2における水素化マグネシウム24の加水分解反応は発熱反応であるため、水素発生部2で発生した水素には水蒸気が付随するところ、前記配管部分を備えることにより、配管内で前記水蒸気が凝縮した水を水素発生部2へ戻すことができる。前記配管部分の長さは、脱臭部3の働きを阻害する程の水蒸気が流れ込まないように設定される。例えば、本実施の形態においては、前記配管部分は脱臭槽の上部まで伸びている。或いは、配管を何らかの方法で冷却して、水蒸気の凝縮を図っても良い。
第2水素供給管62の他端は圧力容器1に接続されている。水素発生部2で発生した水素が脱臭槽の下部から流入し、脱臭部材を通流する過程で脱臭され、脱臭された水素は脱臭槽の上部から圧力容器1へ流出する。また、脱臭槽の入口側及び出口側にそれぞれ脱臭槽入側開閉弁31及び脱臭槽出側開閉弁32が設けられている。脱臭槽入側開閉弁31及び脱臭槽出側開閉弁32を閉鎖することによって、脱臭部3を保管する場合に脱臭槽を密閉状態にして雑菌などが侵入することを防止することができる。また、脱臭槽の適宜箇所には、水素発生部2及び脱臭部3に残留する空気をパージするための配管が接続され、該配管にはパージ弁33が設けられている。
【0039】
圧力容器1は、上部が窄んだ略有底円筒状をなし、例えばステンレス等の金属、又は樹脂で形成されている。圧力容器1の上部の開口は蓋部によって密閉されている。圧力容器1の容量は、例えば13.5mLであり、0.5MPaの内圧に耐え得るように形成されている。圧力容器1の蓋部の略中央部には水素の入口が形成され、該入口に第2水素供給管62の他端が逆止弁18及び圧力容器開閉弁11を介して接続されている。逆止弁18は、圧力容器1中の気体などが脱臭部3及び水素発生部2へ逆流することを防止している。圧力容器開閉弁11にて第2水素供給管62を開閉することにより、水素発生部2で発生した水素の通流を制御することができる。また、蓋部の略中央部に形成された入口には水素を圧力容器1に貯留した水にバブリングするため管が接続されている。また、圧力容器1の蓋部には、耐圧容器の内圧を計測して表示する圧力計15、作動圧力が0.5MPaの安全弁16が設けられている。更に、蓋部の適宜箇所には、水素ガス排気用の配管が接続され、該配管には排気弁13が設けられている。更にまた、蓋部の適宜箇所には、圧力容器1に注水するための注水管8が接続されている。注水管8には上流側から切替弁9及び注水弁12が設けられている。
圧力容器1の下部には、圧力容器1に貯留された水に水素が溶解してなる水素水を外部へ供給するための出口が形成されており、該出口には水素水供給弁14が設けられている。水素水供給弁14には、フッ素樹脂製の水素水供給管7の一端が接続され、水素水供給管7の他端には水素水取出部5が設けられている。また、水素水供給管7の途中には、水素水を減圧させるレギュレータ4が介装されている。水素水取出部5は、例えば、レギュレータ4で減圧した水素水を更に減圧して出力する水銃である。水銃は、水素水の取り出し量を調整することができるレバーを有する。
圧力容器1の外側に残量計17が設けられている。残量計17は、圧力容器1内部と連通する透明の管である。該管の内部に流入した水又は水素水の水面を目視することで、圧力容器1に貯留されている水素水の残量を確認することができる。
【0040】
図2は、水素水製造方法の手順を示したフローチャート、図3及び図4は、水素水製造方法を概念的に示した説明図である。まず、本実施の形態に係る水素水製造装置、及び10gの水素化マグネシウム24を用意する。水素化マグネシウム24は、例えば17×17×35mmのタブレット、又は透水性の袋に入れた粉末などの形態で用意する。そして、下準備として、240gの水道水に60gの無水クエン酸を入れ、300gに調整したクエン酸水溶液25を作成する。以下、水素水の製造手順を説明する。なお、以下の手順を人が行う例として説明するが、一部の工程を制御回路からの制御指示によって実現するように構成しても良い。
まず水素水製造装置の各弁が閉じる(ステップS1)。そして、排気弁13及び注水弁12を開き、満水になるまで圧力容器1に注水を行う(ステップS2)。なお、圧力容器1の蓋部を取り外して、圧力容器1の開口から注水を行っても良い。
【0041】
次いで、水素供給弁21、脱臭槽入側開閉弁31、及びパージ弁33を開く(ステップS3)。そして、水素発生部2に、クエン酸水溶液25及び水素化マグネシウム24を投入し、蓋部を取り付けて密閉する(ステップS4)。ステップS4の工程後、一定時間待機することにより、水素発生部2及び脱臭部3中の空気を、水素発生部2で発生した水素によってパージする(ステップS5)。
【0042】
次いで、脱臭槽出側開閉弁32及び圧力容器開閉弁11を開き(ステップS6)、パージ弁33を閉じ(ステップS7)、水素水供給弁14を開く(ステップS8)。そして、水素水取出部5から所定量、例えば3.5Lの水を排水する(ステップS9)。排水量は、残量計17で確認することができる。ステップS9の工程を終えると、図3Aに示すように、圧力容器1には10Lの水が貯留され、上部の空間に3.5Lの水素が存在する状態になる。10gの水素化マグネシウム24を加水分解した場合、1400.4mgの水素が発生する。3.5Lの空間に1400.4mgの水素が充満した場合、気相の圧力は0.3822MPaになる。水素発生部2及び脱臭部3中の空気を水素でパージした上、圧力容器1を満水にした状態から水素の供給を開始しているため、前記上部の空間には、空気が混じっていない水素ガスで満たされている。排水後、水素水供給弁14を閉じて、所定時間、例えば約2時間放置する(ステップS10)。ステップS10の工程を終えると、図3Bに示すように、圧力容器1に貯留された水に水素が溶解する。水中に溶存する水素の量は、72.82mg/10Lである。圧力容器1内で約0.3MPaの水素が水に溶解するため、大気圧下での飽和水素濃度よりも高い水素濃度の水素水が製造される。以上の工程で、水に水素が溶解した水素水が製造される。
【0043】
水素水の取り出し方法について説明する。まず、水素水供給弁14を開ける。そして、水素水取出部5である水銃のレバーを握ることによって、水素水を取り出すことができる。図3Cに示すように、圧力容器1内の水素水の量が1Lになると、上部の空間の容量は12.5Lとなり、水に溶解せずに残った水素は約1327.6mg、気相の圧力は0.099MPaになる。
【0044】
次に、水素水を補充的に製造する方法について説明する。上述したように圧力容器1内には、水に溶解せずに残った水素が約1327.6mg存在するため、圧力容器1に更に注水することによって、水素水を補充的に製造することができる。具体的には、水素水供給弁14を閉じ、注水弁12を開くことによって、圧力容器1に注水する。注水は、図4Dに示すように、例えば圧力容器1内の水が10Lになるまで行う。そして、所定時間、例えば約2時間放置することによって、圧力容器1内の水に水素を溶解させる。追加した9Lの水には約62.13mg/9Lの水素が溶解し、圧力容器1の上部には、1265.5mgの水素が残留する。
補充的に製造した水素水の取り出し方法は、上述の通りである。補充的に製造した水素水を9L使用して圧力容器1内の水素水の量が1Lになると、図4Eに示すように、上部の空間の容量は12.5Lとなり、水に溶解せずに残った水素は約1265.5mg、気相の圧力は0.093MPaになる。
以下、同様にして注水を繰り返すことによって、水素水を製造及び使用することができる。
【0045】
本実施の形態にあっては、電解水生成装置に比べて構造が簡単であり、しかもセラミックケースにマグネシウムを封入してなる従来の水素水生成器に比べてより効率的に水素水を製造することができる。
【0046】
また、水素化マグネシウム24の加水分解によって一度に一定量の水素を発生させ、圧力容器1に供給しておき、追加的に注水しながら水素水を補充的に製造することができる。従って、水素の発生量を制御する特別な機構や、発生した水素を別のタンクに貯蔵する必要も無く、効率的に水素水を製造することができる。
更に、脱臭部3を備え、水素供給管6及び水素水供給管7をフッ素樹脂で形成しているため、臭気の認められない水素水を製造することができる。
【0047】
更にまた、圧力容器1の水素水は、レギュレータ4及び水素水取出部5における二段階の減圧で水素水を取り出すように構成してあるため、急な減圧によって水素水中の水素が空気中に散逸することを抑制している。
【0048】
更にまた、水素発生部2で水素の発生を開始する際にパージ弁33を開放することで、水素発生部2及び脱臭部3に残留する空気を水素で置換することができるため、水素水の製造に使用されない空気が圧力容器1に供給されることを防止し、より効率的に水素水を製造することができる。
【0049】
更にまた、脱臭部3を保管する際、入側開閉弁及び出側開閉弁を閉鎖することによって、該脱臭部3内に雑菌などが侵入することを防止することが可能である。
【0050】
(変形例)
変形例に係る水素水製造装置は、各弁を電磁弁などで構成し、各弁の動作を制御する制御回路を更に備える。他の構成は、実施の形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
図5は、変形例に係る制御装置の一構成例を示したブロック図である。制御装置の各構成部の動作を制御する制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備えたコンピュータである。制御部101には、バスを介してROM102と、RAM103と、その他の記憶部104と、計時部105と、クエン酸水溶液供給部106と、水素化マグネシウム投入部127と、水位検出部108と、インタフェース部109とが接続されている。
【0051】
ROM102は、コンピュータの動作に必要な制御プログラムを記憶したマスクROM、EEPROM等の不揮発性メモリである。
RAM103は、制御部101の演算処理を実行する際に生ずる各種データやコンピュータの動作に必要な制御プログラムを一時記憶するDRAM、SRAM等の揮発性メモリである。
記憶部104は、水素水製造装置を動作させるために必要なコンピュータプログラムを記憶したハードディスク、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である
計時部105は、水素水を製造する際に各弁を開閉するタイミングを計時するための回路部品である。
クエン酸水溶液供給部106は、例えば、クエン酸水溶液25を収容する収容部を備える。該収容部と、水素発生部2の容器とは配管で接続されており、該配管には図示しない開閉弁が介装されている。該開閉弁は、制御部101からの制御命令に従って開閉し、収容部内のクエン酸水溶液25が水素発生部2へ供給されるように構成されている。
水素化マグネシウム投入部107は、例えば、水素化マグネシウム24のタブレットを収容するタブレット収容部を備える。該タブレット収容部と、水素発生部2の容器とはゲートを介して連通している。ゲートは、制御部101からの制御命令に従ってゲートを開閉させ、必要量の水素化マグネシウム24を水素発生部2へ投入できるように構成されている。
水位検出部108は、例えば、圧力容器1内の水位を検出するためのフロートを備え、該フロートの位置を検出することによって水位を検出し、検出結果を制御部101へ出力するように構成してある。
インタフェース部109には、水素供給弁21、脱臭槽入側開閉弁31、脱臭槽出側開閉弁32、パージ弁33、圧力容器開閉弁11、注水弁12、排気弁13、及び水素水供給弁14が接続されている。制御部101は、インタフェース部109を介して制御信号を出力することによって、各弁の開閉を制御する。
【0052】
図6乃至図8は、変形例に係る制御装置の処理手順を示したフローチャートである。制御部101は、インタフェース部109に接続されている各弁に制御信号を出力することで、全ての弁を閉じる(ステップS101)。以下、各弁を開閉させる処理を説明する際、各弁へ制御信号を出力している点を省略して説明する。ステップS101の処理を終えた制御部101は、排気弁13を開き(ステップS102)、注水弁12を開く(ステップS103)。ステップS102,103の処理で、圧力容器1への注水が開始される。
【0053】
次いで、制御部101は、水位検出部108にて圧力容器1が満水になったか否かを判定する(ステップS104)。圧力容器1が満水では無いと判定した場合(ステップS104:NO)、制御部101は、満水になるまで、ステップS104の処理を繰り返し実行する。圧力容器1が満水になったと判定した場合(ステップS104:YES)、制御部101は、注水弁12を閉じる(ステップS105)。次いで、制御部101は、水素供給弁21、脱臭槽入側開閉弁31及びパージ弁33を開く(ステップS106)。そして、制御部101は、水素化マグネシウム投入部107の動作を制御することで、水素化マグネシウム24を水素発生部2へ投入する(ステップS107)。また、制御部101は、クエン酸水溶液供給部106の動作を制御することで、クエン酸水溶液25を水素発生部2へ供給する(ステップS108)。ステップS106〜ステップS108の処理で、水素発生部2及び脱臭部3中の空気を水素でパージする処理が開始される。
【0054】
次いで、制御部101は、水素水の製造回数を計数するための変数Nに1を代入し(ステップS109)、計時部105に計時を開始させる(ステップS110)。そして、制御部101は、パージを開始してから所定パージ時間が経過したか否かを判定する(ステップS111)。つまり、計時部105による計時時間が所定パージ時間を超過したか否かを判定する。なお、所定パージ時間は、予め記憶部104が記憶している。所定パージ時間が経過していないと判定した場合(ステップS111:NO)、制御部101は、所定パージ時間が経過するまで、ステップS111の処理を繰り返し実行する。所定パージ時間を経過したと判定した場合(ステップS111:YES)、制御部101は、脱臭槽出側開閉弁32及び圧力容器開閉弁11を開き(ステップS112)、パージ弁33を閉じ(ステップS113)、水素水供給弁14を開く(ステップS114)。次いで、制御部101は、水位検出部108による検出結果に基づいて、圧力容器1から所定量の水が排水されたか否かを判定する(ステップS115)。なお、ここで制御部101は、圧力容器1の容量から前記所定量を減算した量の水が圧力容器1に残留しているか否かを判定することで、間接的に排出量を判定している。所定量の水が未だ排出されていないと判定した場合(ステップS115:NO)、制御部101は、所定量の排水を終えるまで、ステップS115の処理を繰り返し実行する。所定量の水を排水したと判定した場合(ステップS115:YES)、制御部101は、水素水供給弁14を閉じ(ステップS116)、計時部105に計時を開始させる(ステップS117)。
【0055】
そして、制御部101は、計時を開始してから所定放置時間が経過したか否かを判定する(ステップS118)。つまり、計時部105による計時時間が所定放置時間を超過したか否かを判定する。なお、所定放置時間は、予め記憶部104が記憶している。所定放置時間が経過していないと判定した場合(ステップS118:NO)、制御部101は、所定放置時間が経過するまで、ステップS118の処理を繰り返し実行する。所定放置時間を経過したと判定した場合(ステップS118:YES)、制御部101は、水素水供給弁14を開く(ステップS119)。以上のステップS114〜ステップS119の処理で、水素水が製造され、水素水を取り出し可能な状態になる。使用者は、水素水取出部5を操作することによって、圧力容器1内の水素水を取り出して使用することができる。
【0056】
ステップS119の処理を終えた制御部101は、水位検出部108の検出結果に基づいて、圧力容器1に貯留されている水素水が第1所定残量未満、例えば1L未満であるか否かを判定する(ステップS120)。つまり、水素水の残量が少なくなっているかどうかを判定する。圧力容器1に貯留されている水素水が第1所定残量以上であると判定した場合(ステップS120:NO)、制御部101は、ステップS120の処理を繰り返し実行する。なお、現実的には、圧力容器1の水量が第1所定残量未満になった場合、割り込み信号を制御部101に与えるように構成し、該割り込み信号をトリガにして以下の処理を実行するように構成すると良い。圧力容器1に貯留されている水素水が第1所定残量未満であると判定した場合(ステップS120:YES)、制御部101は、変数Nが所定交換回数であるか否かを判定する(ステップS121)。所定交換回数は、圧力容器1に残留する水素の量が少なくなり、圧力容器1に水を補充しても水素水を追加的に製造できない状態になるような、注水回数である。該所定交換回数は、記憶部104が記憶している。変数Nが所定交換回数であると判定した場合(ステップS121:YES)、制御部101は、水素化マグネシウム24及びクエン酸水溶液25の補充を報知し(ステップS122)、処理を終える。
【0057】
変数Nが所定交換回数では無いと判定した場合(ステップS121:NO)、制御部101は、水素水供給弁14を閉じ(ステップS123)、注水弁12を開く(ステップS124)。そして、制御部101は、水位検出部108の検出結果に基づいて、圧力容器1に貯留されている水素水が第2所定残量以上、例えば10L以上であるか否かを判定する(ステップS125)。圧力容器1に貯留されている水素水が第2所定残量未満であると判定した場合(ステップS125:NO)、制御部101は、ステップS125の処理を繰り返し実行する。圧力容器1に貯留されている水素水が第2所定残量以上であると判定した場合(ステップS125:YES)、制御部101は変数Nに1を加算し、処理をステップS117へ戻す。ステップS123〜126の処理で、圧力容器1に水が補充される。
【0058】
変形例に係る水素水製造装置によれば、自動的に水素水の製造、水を補充することによる水素水の追加的な製造を行うことができる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 圧力容器
2 水素発生部
3 脱臭部
4 レギュレータ
5 水素水取出部
6 水素供給管
7 水素水供給管
8 注水管
9 切替弁
11 圧力容器開閉弁
12 注水弁
13 排気弁
14 水素水供給弁
15 圧力計
16 安全弁
17 残量計
18 逆止弁
21 水素供給弁
22 圧力計
23 安全弁
24 水素化マグネシウム
25 クエン酸水溶液
31 脱臭槽入側開閉弁
32 脱臭槽出側開閉弁
33 パージ弁
61 第1水素供給管
62 第2水素供給管
101 制御部
104 記憶部
105 計時部
106 クエン酸水溶液供給部
107 水素化マグネシウム投入部
108 水位検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留した水に水素を溶解させるための容器と、
水素化マグネシウムの加水分解により水素を発生させる水素発生部と、
該水素発生部で発生した水素を前記容器に供給する水素供給管と、
前記容器に貯留された水に加圧された水素が溶解してなる水素水を外部へ供給する水素水供給管と
を備える水素水製造装置。
【請求項2】
前記容器に水を注入するための注水管と、
該注水管を開閉する注水弁と
を備える請求項1に記載の水素水製造装置。
【請求項3】
前記水素供給管の途中に介装されており、前記水素発生部で発生した水素を脱臭する脱臭部を備える
請求項1又は請求項2に記載の水素水製造装置。
【請求項4】
前記水素発生部及び前記脱臭部に残留する空気をパージするためのパージ弁を備える
請求項3に記載の水素水製造装置。
【請求項5】
前記脱臭部の入口側に設けられた入側開閉弁と、
前記脱臭部の出口側に設けられた出側開閉弁と
を備える請求項3又は請求項4に記載の水素水製造装置。
【請求項6】
前記水素水供給管の途中に介装されており、水素水を減圧させるレギュレータを備える
請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の水素水製造装置。
【請求項7】
前記レギュレータで減圧した水素水を取り出す水素水取出部を備える
請求項6に記載の水素水製造装置。
【請求項8】
前記水素水取出部は、
前記レギュレータで減圧した水素水を更に減圧して出力する水銃である
請求項7に記載の水素水製造装置。
【請求項9】
前記容器内に貯留されている水素水の残量を示す残量計を備える
請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載の水素水製造装置。
【請求項10】
前記水素供給管の途中に介装された逆止弁を備える
請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載の水素水製造装置。
【請求項11】
前記水素発生部及び容器の内圧をそれぞれ計測する圧力計を備える
請求項1乃至請求項10のいずれか一つに記載の水素水製造装置。
【請求項12】
前記水素水供給管に設けられた水素水供給弁を備える
請求項1乃至請求項11のいずれか一つに記載の水素水製造装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一つに記載の水素水製造装置を用いて水素水を製造する水素水製造方法であって、
略満水になるまで前記容器に水を供給する工程と、
前記水素発生部に水素化マグネシウムと、水又は酸性溶液とを投入する工程と、
前記容器から所定量の水を排出させる工程と
を備える水素水製造方法。
【請求項14】
水素水が取り出され、水素が残留している前記容器に更に水を注入する工程を備える
請求項13に記載の水素水製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−22567(P2013−22567A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162521(P2011−162521)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(506074015)バイオコーク技研株式会社 (23)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】