水素生成用金属カチオン置換合成ゼオライト及び該ゼオライトを使用した水素生成方法
【課題】常圧下において水素生成効率が高い特性を有する新規なゼオライトの提供を課題とした。
【解決手段】
Ni、Zn等で置換した合成ゼオライトが常圧下において水素生成効率が高い特性を有することを見出して、本発明を完成した。
【解決手段】
Ni、Zn等で置換した合成ゼオライトが常圧下において水素生成効率が高い特性を有することを見出して、本発明を完成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成用金属カチオン置換合成ゼオライト及び該ゼオライトを使用した水の分解による水素生成方法、該方法を実行するための装置、並びに水素生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、その持っている物理的性質から質の高いエネルギー源であること、さらには燃焼生成物が水のみであるためクリーンなエネルギー源であることで大変注目され、近年様々な製造法が検討されている。中でも、水を原料とした水素の製造は環境負荷が低いという観点から実用化への期待は高い。
しかしながら、安価かつ安定的、高効率に水素を生成できるシステムは未だ完成していない。
【0003】
水素を製造する方法としては、水の電気分解方法、熱化学サイクル方法、光触媒による水の分解方法が知られている。
水の電気分解方法は、電気分解に必要な電力と生成できる水素エネルギーを比較すると、有効な方法とは言えない。
また、熱化学サイクルによる方法は、以下に例示する各種の方法が提案されているが、それぞれに課題を有している。
加えて、光触媒による水の分解方法は、太陽光を利用して水を分解し、水素を生成する。しかし、光触媒の代表格であるTiO2は、太陽光の中でも紫外線しか活用することができないため、水素を製造する効率が低い。また、天候に左右されやすく、昼間しか活用できないという欠点がある。
【0004】
メタン水蒸気改質法は、メタンガスと700℃〜800℃に加熱された水蒸気とを反応させて水素を得る方法である。この方法は、反応温度が高く、二酸化炭素の放出を伴い、更に設備も大規模化するという欠点がある。
一酸化炭素の転化反応(CO+H2O → CO2+H2)は、四酸化三鉄(Fe3O4)又は酸化亜鉛―銅系の触媒を用いて行う。この反応は、前記同様に反応温度が高く二酸化炭素の放出を伴う問題がある。
四酸化三鉄(Fe3O4)による水の直接分解方法は、鉄−水蒸気系の8つのプロセスからなっている。この反応は、Fe3O4から脱酸してFeOを生成する反応温度が高く、多段の反応を組み合わせるため装置も複雑化する問題がある。
【0005】
加えて、触媒(酸化鉄、フェライト)を使用して水の分解による水素の生成方法が多数報告されている(特許文献1、2、3、4)。
しかし、いずれの方法でも、反応温度と水素生成効率において問題がある。
【0006】
ゼオライトを触媒として使用する水の分解による水素の生成方法も報告されている(特許文献5〜8)。
【0007】
特許文献5は、「天然ゼオライト粉末を反応容器に入れ、真空状態にした後に300℃〜600℃の水蒸気を接触させて水蒸気分子から水素を分離する方法」を開示している。
すなわち、特許文献5で開示されているゼオライトの構成は、本発明で使用するゼオライトの構成とは明らかに異なる。
【0008】
特許文献6は、「天然ゼオライト粉末を高圧かつ飽和蒸気圧雰囲気において反応を行うことによる水素の生成」を開示している。
すなわち、特許文献6で開示されているゼオライトの構成は、本発明で使用するゼオライトの構成とは明らかに異なる。
【0009】
特許文献7は、「金属ハロゲン化物を添加して造粒した天然ゼオライト粉末を真空下で300℃〜600℃の水蒸気と接触させることによる水素の生成」を開示している。
金属ハロゲン化物添加造粒ゼオライトは、「天然産のゼオライトを粉砕し、各金属ハロゲン化物(NaBr、NaF、LiCl、KCl、MgC12)の水溶液(5%)を使用して造粒(平均粒径:1〜3mm)し、その後乾燥させる」ことにより製造する。
すなわち、特許文献7で開示されているゼオライトの構成は、本発明で使用するゼオライトの構成とは明らかに異なる。また、段落「0027」により、金属ハロゲン化物として、LiClが最も優れていることを開示している。
【0010】
また、上記特許文献5〜7に記載の水素生成の確認を反応1時間後又は2時間後のみで行っているので、水素を継続して生成できているかに疑問がある。更に、試料に天然ゼオライトが用いられているので、それに含まれる種々の不純物による水素発生も否定できない。加えて、水素を生成させるための条件として、加圧又は減圧を行っている。
【0011】
特許文献8は、「膜化したゼオライトに連続的に水を供給することで、継続的に水素を生成することができること」を開示している。
しかし、本発明のような金属カチオン置換合成ゼオライトについて開示又は示唆がない。
【0012】
上記従来技術の結果、ゼオライトを使用して高効率で水素を生成する方法がなかった。さらに、工業化を実施するためには、反応系を減圧又は加圧することはコストの面を考慮すると好ましくはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004-231459
【特許文献2】特開2004-269296
【特許文献3】特開2006-298658
【特許文献4】特開2006-298660
【特許文献5】特開平11-171501
【特許文献6】国際公開WO98/51612
【特許文献7】国際公開WO01/87769
【特許文献8】特開2009-190963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決すべく、水素生成に使用する新規なゼオライトの構成を検討した。詳しくは、常圧下において水素生成効率が高い特性を有する新規なゼオライトの提供を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、Ni、Zn等で置換した合成ゼオライト(「本発明の金属カチオン置換合成ゼオライト」と称する場合がある)が常圧下において水素生成効率が高い特性を有することを見出して、本発明を完成した。
【0016】
つまり、本発明は、以下の通りである。
1.以下の金属カチオンを含む合成ゼオライトに、水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを接触させる工程を含む、水素の生成方法。
(1)アルカリ金属カチオン
(2)アルカリ土類金属カチオン
(3)遷移金属カチオン
2.前記金属カチオンを含む合成ゼオライトが、金属カチオンの置換によって得られることを特徴とする前項1に記載の水素の生成方法。
3.前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる前項1又は2に記載の水素の生成方法。
(1)カリウムイオン
(2)ルビジウムイオン
(3)カルシウムイオン
(4)マグネシウムイオン
(5)マンガンイオン
(6)ニッケルイオン
(7)鉄イオン
(8)亜鉛イオン
4.前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる前項3に記載の水素の生成方法。
(1)ニッケルイオン
(2)亜鉛イオン
(3)マンガンイオン
5.上記接触させる工程を常圧下で行うことを特徴とする前項1〜4のいずれか1に記載の水素の生成方法。
6.以下の工程を含む前項1〜5のいずれか1に記載の水素の生成方法:
(1)前記金属カチオンを含む合成ゼオライトを水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを接触させて、該ゼオライトに水を吸着させる工程、
(2)水を吸着させたゼオライトを加熱する工程、
(3)加熱されたゼオライトから水素を回収する工程。
7.前記ゼオライトの加熱温度が250℃〜700℃であることを特徴とする前項6に記載の水素の製造方法。
8.前記合成ゼオライトが、A型、X型、Y型、L型、P型、β型、ZSM類、モルデナイト類のいずれか1である前項1〜7のいずれか1に記載の水素の生成方法。
9.以下の金属カチオンで置換した合成ゼオライトを含む水素発生材料。
(1)カリウムイオン
(2)ルビジウムイオン
(3)カルシウムイオン
(4)マグネシウムイオン
(5)マンガンイオン
(6)ニッケルイオン
(7)鉄イオン
(8)亜鉛イオン
10.前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる前項9に記載の水素発生材料。
(1)ニッケルイオン
(2)亜鉛イオン
(3)マンガンイオン
11.水又は水蒸気を反応容器に送り込む水供給手段と、前項9又は10に記載の水素発生材料と、該水素発生材料を含有する反応容器と、該反応容器内で発生した水素を反応容器外に取り出す水素取り出し手段を少なくとも備えることを特徴とする水素生成装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金属カチオンで置換した合成ゼオライトを用いた水素生成方法では、常圧下において、高効率に水素生成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】水素生成を実施する装置の一例
【図2】合成ゼオライトと天然ゼオライトによる水素生成能の比較結果(実施例1)
【図3】アルカリ金属カチオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図4】アルカリ土類金属カチオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図5】マンガンイオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図6】鉄イオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図7】ニッケルイオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図8】亜鉛イオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図9】未置換Na-A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図10】250℃でのニッケルイオン置換A型ゼオライトと450℃での未置換Na-A型ゼオライトによる水素生成能の比較結果(実施例2)
【図11】ニッケルイオン置換X型ゼオライトと未置換Na-X型ゼオライトによる450℃での水素生成能の比較結果(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0019】
(水素(ガス)生成方法)
本発明では、250℃〜700℃の本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトに連続又は不連続に水蒸気又は水を接触させ、水蒸気分子又は水分子から水素を分離することにより水素を生成する。
また、本発明では、水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを予め本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトに接触させた後に、該ゼオライトを250℃〜700℃で加熱することにより水素を生成する。
【0020】
(反応温度)
本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトの加熱温度又は該ゼオライトと水蒸気又は水の接触温度は、約250℃〜約700℃、好ましくは約300℃〜約600℃であり、より好ましくは約330℃〜約570℃である。
なお、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライト、特にニッケルイオン又は亜鉛イオンで置換した合成ゼオライトを使用した場合では、下記実施例から明らかなように約250℃の低温で水素の生成を行うことができる。
【0021】
(圧力)
本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトを用いた水素の生成工程中の圧力は、常圧である大気圧で良い。本発明の反応では、外圧を加える又は減ずる必要がなくかつ高圧力下や減圧下で反応を行う必要がないので経済的に利点がある。
【0022】
(使用する担体ガス)
本発明で使用する担体ガス(ガス)は、希ガスであるヘリウム、ネオン、アルゴン又は窒素、並びに空気を使用することができる。
【0023】
(合成ゼオライトについて)
本発明で使用する合成ゼオライトとは、不純物が多い天然ゼオライトと区別する意味で使用される。合成ゼオライトは、下記実施例1から明らかなように、天然ゼオライトと比較して、水素生成能が高い。
合成ゼオライトとしては、各種親水性ゼオライト、疎水性ゼオライトを用いることができる。親水性ゼオライトとしては、A型(Na-A型)、X型(Na-X型)、Y型、L型、P型等、疎水性ゼオライトとしては、高シリカのZSM類、高シリカのY型、β型、モルデナイト類、シリカライト等が挙げられる。また、合成ゼオライトは、市販されているものを使用することができる。
さらに、本発明の好ましい合成ゼオライトとしては、Na-A型を使用する。
なお、ゼオライトの原料となるアルカリ成分としては、一般的に水酸化ナトリウムが用いられ、その他に水酸化カリウムや水酸化リチウム等を用いることもできる。シリカ成分としては、ケイ酸ナトリウム、水ガラス、コロイダルシリカ、アルコキシシランの加水分解物等を用いることができる。ゼオライトのアルミナ成分としては、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ベーマイト等を用いることができる。必要に応じて構造規制剤として、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、ピロリジン等の有機物が用いられる。
【0024】
(金属カチオン置換合成ゼオライトの製造方法)
ゼオライトは二酸化ケイ素からなる骨格を基本として、一部のケイ素がアルミニウムに置き換わることによって結晶格子全体が負に帯電している。電荷のバランスを取るために、ゼオライトの細孔内には、ナトリウム等のカチオンが含まれる。
本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトの製造方法は、上記の合成ゼオライトの細孔内のカチオンを目的のアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又は遷移金属カチオンに置換することができれば特に限定されない。
例えば、粉末状にした合成ゼオライトを、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又は遷移金属カチオンを含んだ水溶液中に入れ、好ましくは攪拌することにより細孔内のイオン(一般にナトリウムイオン)と水溶液中の金属カチオンとのイオン交換を促進させ、その後該ゼオライトを水洗、乾燥することにより金属カチオン置換合成ゼオライトを製造することができる。
【0025】
(金属カチオン)
本発明の金属カチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、又は遷移金属カチオンに属するいずれかのイオンを使用することができる。好ましい金属カチオンは、以下の通りである。
(1)カリウムイオン、(2)ルビジウムイオン、(3)カルシウムイオン、(4)マグネシウムイオン、(5)マンガンイオン、(6)ニッケルイオン、(7)鉄イオン、(8)亜鉛イオン。なお、上記の金属カチオンを混合して使用することもできる。
すなわち、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトは、上記記載の8つのイオン又はそれらの混合で置換したものが好ましい。
【0026】
また、本発明の金属カチオンは、下記実施例の結果により、水素生成効率を考慮すればカリウムイオン、ルビジウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオンを使用し、水素生成反応温度の低温化を考慮すればニッケルイオン、亜鉛イオンを使用する。
すなわち、ニッケルイオン及び/又は亜鉛イオンでゼオライトを置換することにより、水素生成の効率化及び水素生成反応温度の低温化を達成することができる。
【0027】
(水素の分離方法)
生成した水素は、公知の方法により、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトから発生したガスから高純度で分離することができる。例えば、膜分離装置、圧力スイング方式(PSA)分離装置を利用することができる。
【0028】
(水素生成装置について)
本発明の水素生成装置としては、水から水蒸気を生成する水蒸気発生手段と、この水蒸気発生手段で生成された水蒸気を反応容器に送り込む水蒸気供給手段と、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトと、該金属カチオン置換合成ゼオライトを充填する反応容器と、該反応容器内で発生した水素ガスを反応容器外に取り出すガス取出し手段とを備える。
なお、水蒸気を直接反応容器に送り込む場合には、上記水蒸気発生手段は不要である。
【0029】
反応容器の形態としては、縦型と横型が考えられ、縦型反応容器の場合には、水蒸気供給手段は反応容器の下部(又は上部)に接続し、ガス取出し手段は反応容器の上部(又は下部)に接続するのが効率的であり、また横型反応容器の場合には、水蒸気供給手段は反応容器の一側面から反応容器に接続し、ガス取出し手段は反応容器の他側面に接続するのが効率的である。
【0030】
本発明に係る水素生成を実施する装置の一例を図1に示す。アルゴンガスが流量計1を介して水蒸気発生装置2にキャリヤガスとして供給される。
【0031】
水蒸気発生装置2にはキャリヤガスとともに発生した水蒸気を導出する配管3が接続され、この配管3にはプレヒータ9が設けられ、配管3の先端は縦型反応容器4の上部に接続されている。
また、横型反応容器の場合には、配管3の先端は横型反応容器の一側面に接続している。
【0032】
本発明に係る水素生成を実施する装置では、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトの粉末を金属反応容器4に導入する(参照:図1)。
【0033】
反応容器4の周囲にはヒータ6が配置され、更に反応容器4の下端には配管7が接続され、この配管7には未反応の水蒸気を除去するための水蒸気トラップ8が設けられ、水蒸気トラップ8の後にガスクロマトグラフ又は水素回収装置が接続されている。
なお、試料を支えるベッドがついた反応容器4を縦方向に設置し、ガス(水蒸気)を下方向から供給し、生成ガスを反応容器上部から取り出す方法が好ましい。試料が下方からの気流によって反応容器内で舞い上がるため、水蒸気との接触面積が増加し、より反応が起こりやすくなる。
【0034】
(水素発生材料)
本発明の水素発生材料は、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトを有効成分として含有する。すなわち、本発明の水素発生材料は、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライト以外の成分も含むことが可能である。
また、本発明の水素発生材料は、自体公知の反応容器に充填し、水蒸気を供給することで容易に水素を生成することができる。また、本発明の水素発生材料は、従来の水素発生材料と比較して、低温かつ高効率に水素を生成することができる。
【0035】
(水素生成システムについて)
本発明の水素生成システムは、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトを自体公知の反応容器に導入して、水又は水蒸気を該反応容器に供給することで水素を生成できる。特に、本発明の水素生成システムでは、従来の水素生成方法とは異なり、反応継続時間中に一旦反応容器を閉める必要がなく、いわゆる開放系であるので、反応容器を加圧又は減圧する必要がない。
特に、本発明の水素生成システムの好適な条件は、本発明の水素生成装置を使用して、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトを含有する反応容器を250℃〜700℃に保持し、水又は水蒸気を該反応容器に供給することで水素を生成することである。
【0036】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0037】
(合成ゼオライトと天然ゼオライトによる水素生成能の比較)
合成ゼオライトであるNa-A型ゼオライトと天然ゼオライトを使用して水素生成能の比較を行った。詳細を以下に示す。
【0038】
天然ゼオライト粉末(東北ゼオライト工業株式会社から提供された秋田県藤里町産ゼオライト)及びNa-A型ゼオライト粉末(粒子径75μm以下、販売元:和光純薬工業株式会社)を、有機物等の付着物を除去するため、空気中で、500℃、5時間、前処理を施し、水を入れたデシケータ中に24時間保持後、実験用試料とした。次に、それぞれの試料1.0 gを反応管(容積:50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5 ml/min)で450℃に加熱し、ガスクロマトグラフ(GC-8A:島津製作所)により排出ガス中の水素濃度を測定した。
なお、水蒸気トラップ(図1の8)の容積は約1600mlであるので、水素生成システムの全体としての総容積は約1650〜1700mlになった。
【0039】
測定結果を図2に示す。図2の結果から明らかなように、合成ゼオライト(Na-A型ゼオライト)の水素生成能は、天然ゼオライトの水素生成性能と比較して、約3倍高いことがわかった。
【実施例2】
【0040】
(金属カチオン置換A型合成ゼオライトの製造及び該ゼオライトの評価)
実施例1で使用したNa-A型ゼオライト粉末2.5gを下記表1に記載の各種の金属カチオンを含む溶液に投入し、室温で約12時間攪拌することにより、該ゼオライトの細孔内のナトリウムイオンを各種の金属カチオンと交換した。金属カチオンの交換操作を所定回数繰り返した後、該ゼオライト粉末を水洗、乾燥することにより、金属カチオン置換A型ゼオライトを製造した。なお、イオン交換の条件を下記表1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
(金属カチオン置換A型ゼオライトによる水素生成量の測定)
上記で作製した各金属カチオン置換A型ゼオライトを用いて水素生成量を測定した。詳細は以下の通りである。
【0043】
(1)上記で作製した各アルカリ金属カチオン置換A型ゼオライト1.0gを反応管(50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5ml/min)で450℃に加熱し、ガスクロマトグラフ(GC-8A:島津製作所)にて排出ガス中の水素濃度を測定した。なお、コントロールとして、未置換Na-A型ゼオライトでも同様に水素濃度を測定した。
【0044】
(2)上記で作製した各アルカリ土類金属カチオン置換A型ゼオライト1.0gを反応管(50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5ml/min)で450℃に加熱し、ガスクロマトグラフ(GC-8A:島津製作所)にて排出ガス中の水素濃度を測定した。なお、コントロールとして、未置換Na-A型ゼオライトでも同様に水素濃度を測定した。
【0045】
(3)上記で作製した各遷移金属カチオン置換A型ゼオライト1.0gを反応管(50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5ml/min)で250℃から50℃ずつ段階的に昇温し、それぞれの温度での排出ガス中の水素濃度を測定した。なお、コントロールとして、未置換Na-A型ゼオライトでも同様に水素濃度を測定した。
【0046】
上記(1)の水素濃度の測定結果を図3に示す。
図3の結果より、水素生成量は、ルビジウム型>カリウム型>ナトリウム型>リチウム型となった。また、ルビジウムイオン又はカリウムイオンで置換したA型ゼオライトは、未置換のNa-A型ゼオライトと比較して、約2.5倍の水素生成量を示した。
一方、リチウムイオンで置換したA型ゼオライトの水素生成量は、未置換のNa-A型の水素生成量よりも低かった。国際公開WO01/87769の段落「0027」は、「ハロゲン化リチウムが添加されたゼオライトが最も水素生成能が優れていること」を開示している。すなわち、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトは、国際公開WO01/87769に記載のゼオライトとはまったく異なる性質を示すことがわかった。
【0047】
上記(2)の水素濃度の測定結果を図4に示す。
図4の結果より、水素生成量は、マグネシウム型>>カルシウム型≒ナトリウム型であった。また、マグネシウムイオンで置換したA型ゼオライトは、未置換のNa-A型ゼオライトと比較して、約6倍の水素生成量を示した。
【0048】
上記(3)の水素濃度の測定結果を図5〜10に示す。
図5〜10の結果より、水素生成量は、ニッケル型>亜鉛型>>マンガン型>鉄型≒ナトリウム型であった。マンガンイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオンで置換したA型ゼオライトは、未置換のNa-A型ゼオライトと比較して、高い水素生成量を示した。特に、ニッケルイオン、亜鉛イオンで置換したA型ゼオライトの水素生成開始温度は、未置換のNa-A型ゼオライトの水素生成開始温度と比較して、約100℃低い250℃付近であった。さらに、ニッケルイオン、亜鉛イオンで置換したA型ゼオライトの450℃付近での水素生成量は、未置換のNa-A型ゼオライトの450℃付近での水素生成量と比較して、約10〜15倍であった。さらに、ニッケルイオンで置換したA型ゼオライトの250℃での水素生成量は、図10に示すように、未置換のNa-A型ゼオライトの450℃での水素生成量と同程度であった。
【0049】
以上の結果により、金属カチオン置換A型ゼオライトの水素生成能は、未置換のA型ゼオライトの水素生成能と比較して、15倍までに達することができた。さらに、ニッケルイオン又は亜鉛イオンで置換したA型ゼオライトは、従来のゼオライトとは異なり、約250℃の加熱温度から水素を生成することができた。
【実施例3】
【0050】
(ニッケルイオン置換X型合成ゼオライトの製造及び該ゼオライトの評価)
Na-X型合成ゼオライト粉末(販売元:和光純薬工業株式会社)3.0 gを0.01 Mの硝酸ニッケル水溶液50 mlに投入し、室温で約12時間攪拌することにより、該ゼオライト粉末の細孔内のナトリウムイオンをニッケルイオンと交換した。カチオンの交換操作を合計2回行った後、該ゼオライト粉末を水洗、乾燥することにより、ニッケルイオン置換X型ゼオライトを製造した。
【0051】
(ニッケルイオン置換X型ゼオライトによる水素生成量の測定)
上記で作製したニッケルイオン置換X型ゼオライトを用いて水素生成量を測定した。詳細は以下の通りである。
【0052】
上記で作製したニッケルイオン置換X型ゼオライトを湿度95 %程度のデシケータ内に室温で24時間静置し、実験用試料とした。該実験用試料1.0gを反応管(50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5ml/min)で450℃に加熱し、ガスクロマトグラフ(GC-8A:島津製作所)にて排出ガス中の水素濃度を測定した。なお、コントロールとして、未置換Na- X型ゼオライトでも同様に水素濃度を測定した。
【0053】
測定結果を図11に示す。図11から明らかなように、ニッケルイオン置換X型ゼオライトの水素生成能は、未置換Na- X型ゼオライトと比較して、約3倍高いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の金属カチオンで置換した合成ゼオライトを用いた水素生成方法では、常圧下において、効率的な水素生成の提供を可能とした。
【符号の説明】
【0055】
1:流量計
2:水蒸気発生装置
3:配管
4:縦型反応容器
5:金属カチオン置換合成ゼオライト
6:ヒータ
7:配管
8:水蒸気トラップ
9:プレヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成用金属カチオン置換合成ゼオライト及び該ゼオライトを使用した水の分解による水素生成方法、該方法を実行するための装置、並びに水素生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、その持っている物理的性質から質の高いエネルギー源であること、さらには燃焼生成物が水のみであるためクリーンなエネルギー源であることで大変注目され、近年様々な製造法が検討されている。中でも、水を原料とした水素の製造は環境負荷が低いという観点から実用化への期待は高い。
しかしながら、安価かつ安定的、高効率に水素を生成できるシステムは未だ完成していない。
【0003】
水素を製造する方法としては、水の電気分解方法、熱化学サイクル方法、光触媒による水の分解方法が知られている。
水の電気分解方法は、電気分解に必要な電力と生成できる水素エネルギーを比較すると、有効な方法とは言えない。
また、熱化学サイクルによる方法は、以下に例示する各種の方法が提案されているが、それぞれに課題を有している。
加えて、光触媒による水の分解方法は、太陽光を利用して水を分解し、水素を生成する。しかし、光触媒の代表格であるTiO2は、太陽光の中でも紫外線しか活用することができないため、水素を製造する効率が低い。また、天候に左右されやすく、昼間しか活用できないという欠点がある。
【0004】
メタン水蒸気改質法は、メタンガスと700℃〜800℃に加熱された水蒸気とを反応させて水素を得る方法である。この方法は、反応温度が高く、二酸化炭素の放出を伴い、更に設備も大規模化するという欠点がある。
一酸化炭素の転化反応(CO+H2O → CO2+H2)は、四酸化三鉄(Fe3O4)又は酸化亜鉛―銅系の触媒を用いて行う。この反応は、前記同様に反応温度が高く二酸化炭素の放出を伴う問題がある。
四酸化三鉄(Fe3O4)による水の直接分解方法は、鉄−水蒸気系の8つのプロセスからなっている。この反応は、Fe3O4から脱酸してFeOを生成する反応温度が高く、多段の反応を組み合わせるため装置も複雑化する問題がある。
【0005】
加えて、触媒(酸化鉄、フェライト)を使用して水の分解による水素の生成方法が多数報告されている(特許文献1、2、3、4)。
しかし、いずれの方法でも、反応温度と水素生成効率において問題がある。
【0006】
ゼオライトを触媒として使用する水の分解による水素の生成方法も報告されている(特許文献5〜8)。
【0007】
特許文献5は、「天然ゼオライト粉末を反応容器に入れ、真空状態にした後に300℃〜600℃の水蒸気を接触させて水蒸気分子から水素を分離する方法」を開示している。
すなわち、特許文献5で開示されているゼオライトの構成は、本発明で使用するゼオライトの構成とは明らかに異なる。
【0008】
特許文献6は、「天然ゼオライト粉末を高圧かつ飽和蒸気圧雰囲気において反応を行うことによる水素の生成」を開示している。
すなわち、特許文献6で開示されているゼオライトの構成は、本発明で使用するゼオライトの構成とは明らかに異なる。
【0009】
特許文献7は、「金属ハロゲン化物を添加して造粒した天然ゼオライト粉末を真空下で300℃〜600℃の水蒸気と接触させることによる水素の生成」を開示している。
金属ハロゲン化物添加造粒ゼオライトは、「天然産のゼオライトを粉砕し、各金属ハロゲン化物(NaBr、NaF、LiCl、KCl、MgC12)の水溶液(5%)を使用して造粒(平均粒径:1〜3mm)し、その後乾燥させる」ことにより製造する。
すなわち、特許文献7で開示されているゼオライトの構成は、本発明で使用するゼオライトの構成とは明らかに異なる。また、段落「0027」により、金属ハロゲン化物として、LiClが最も優れていることを開示している。
【0010】
また、上記特許文献5〜7に記載の水素生成の確認を反応1時間後又は2時間後のみで行っているので、水素を継続して生成できているかに疑問がある。更に、試料に天然ゼオライトが用いられているので、それに含まれる種々の不純物による水素発生も否定できない。加えて、水素を生成させるための条件として、加圧又は減圧を行っている。
【0011】
特許文献8は、「膜化したゼオライトに連続的に水を供給することで、継続的に水素を生成することができること」を開示している。
しかし、本発明のような金属カチオン置換合成ゼオライトについて開示又は示唆がない。
【0012】
上記従来技術の結果、ゼオライトを使用して高効率で水素を生成する方法がなかった。さらに、工業化を実施するためには、反応系を減圧又は加圧することはコストの面を考慮すると好ましくはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004-231459
【特許文献2】特開2004-269296
【特許文献3】特開2006-298658
【特許文献4】特開2006-298660
【特許文献5】特開平11-171501
【特許文献6】国際公開WO98/51612
【特許文献7】国際公開WO01/87769
【特許文献8】特開2009-190963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決すべく、水素生成に使用する新規なゼオライトの構成を検討した。詳しくは、常圧下において水素生成効率が高い特性を有する新規なゼオライトの提供を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、Ni、Zn等で置換した合成ゼオライト(「本発明の金属カチオン置換合成ゼオライト」と称する場合がある)が常圧下において水素生成効率が高い特性を有することを見出して、本発明を完成した。
【0016】
つまり、本発明は、以下の通りである。
1.以下の金属カチオンを含む合成ゼオライトに、水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを接触させる工程を含む、水素の生成方法。
(1)アルカリ金属カチオン
(2)アルカリ土類金属カチオン
(3)遷移金属カチオン
2.前記金属カチオンを含む合成ゼオライトが、金属カチオンの置換によって得られることを特徴とする前項1に記載の水素の生成方法。
3.前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる前項1又は2に記載の水素の生成方法。
(1)カリウムイオン
(2)ルビジウムイオン
(3)カルシウムイオン
(4)マグネシウムイオン
(5)マンガンイオン
(6)ニッケルイオン
(7)鉄イオン
(8)亜鉛イオン
4.前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる前項3に記載の水素の生成方法。
(1)ニッケルイオン
(2)亜鉛イオン
(3)マンガンイオン
5.上記接触させる工程を常圧下で行うことを特徴とする前項1〜4のいずれか1に記載の水素の生成方法。
6.以下の工程を含む前項1〜5のいずれか1に記載の水素の生成方法:
(1)前記金属カチオンを含む合成ゼオライトを水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを接触させて、該ゼオライトに水を吸着させる工程、
(2)水を吸着させたゼオライトを加熱する工程、
(3)加熱されたゼオライトから水素を回収する工程。
7.前記ゼオライトの加熱温度が250℃〜700℃であることを特徴とする前項6に記載の水素の製造方法。
8.前記合成ゼオライトが、A型、X型、Y型、L型、P型、β型、ZSM類、モルデナイト類のいずれか1である前項1〜7のいずれか1に記載の水素の生成方法。
9.以下の金属カチオンで置換した合成ゼオライトを含む水素発生材料。
(1)カリウムイオン
(2)ルビジウムイオン
(3)カルシウムイオン
(4)マグネシウムイオン
(5)マンガンイオン
(6)ニッケルイオン
(7)鉄イオン
(8)亜鉛イオン
10.前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる前項9に記載の水素発生材料。
(1)ニッケルイオン
(2)亜鉛イオン
(3)マンガンイオン
11.水又は水蒸気を反応容器に送り込む水供給手段と、前項9又は10に記載の水素発生材料と、該水素発生材料を含有する反応容器と、該反応容器内で発生した水素を反応容器外に取り出す水素取り出し手段を少なくとも備えることを特徴とする水素生成装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金属カチオンで置換した合成ゼオライトを用いた水素生成方法では、常圧下において、高効率に水素生成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】水素生成を実施する装置の一例
【図2】合成ゼオライトと天然ゼオライトによる水素生成能の比較結果(実施例1)
【図3】アルカリ金属カチオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図4】アルカリ土類金属カチオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図5】マンガンイオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図6】鉄イオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図7】ニッケルイオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図8】亜鉛イオン置換A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図9】未置換Na-A型ゼオライトによる水素生成の結果(実施例2)
【図10】250℃でのニッケルイオン置換A型ゼオライトと450℃での未置換Na-A型ゼオライトによる水素生成能の比較結果(実施例2)
【図11】ニッケルイオン置換X型ゼオライトと未置換Na-X型ゼオライトによる450℃での水素生成能の比較結果(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0019】
(水素(ガス)生成方法)
本発明では、250℃〜700℃の本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトに連続又は不連続に水蒸気又は水を接触させ、水蒸気分子又は水分子から水素を分離することにより水素を生成する。
また、本発明では、水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを予め本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトに接触させた後に、該ゼオライトを250℃〜700℃で加熱することにより水素を生成する。
【0020】
(反応温度)
本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトの加熱温度又は該ゼオライトと水蒸気又は水の接触温度は、約250℃〜約700℃、好ましくは約300℃〜約600℃であり、より好ましくは約330℃〜約570℃である。
なお、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライト、特にニッケルイオン又は亜鉛イオンで置換した合成ゼオライトを使用した場合では、下記実施例から明らかなように約250℃の低温で水素の生成を行うことができる。
【0021】
(圧力)
本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトを用いた水素の生成工程中の圧力は、常圧である大気圧で良い。本発明の反応では、外圧を加える又は減ずる必要がなくかつ高圧力下や減圧下で反応を行う必要がないので経済的に利点がある。
【0022】
(使用する担体ガス)
本発明で使用する担体ガス(ガス)は、希ガスであるヘリウム、ネオン、アルゴン又は窒素、並びに空気を使用することができる。
【0023】
(合成ゼオライトについて)
本発明で使用する合成ゼオライトとは、不純物が多い天然ゼオライトと区別する意味で使用される。合成ゼオライトは、下記実施例1から明らかなように、天然ゼオライトと比較して、水素生成能が高い。
合成ゼオライトとしては、各種親水性ゼオライト、疎水性ゼオライトを用いることができる。親水性ゼオライトとしては、A型(Na-A型)、X型(Na-X型)、Y型、L型、P型等、疎水性ゼオライトとしては、高シリカのZSM類、高シリカのY型、β型、モルデナイト類、シリカライト等が挙げられる。また、合成ゼオライトは、市販されているものを使用することができる。
さらに、本発明の好ましい合成ゼオライトとしては、Na-A型を使用する。
なお、ゼオライトの原料となるアルカリ成分としては、一般的に水酸化ナトリウムが用いられ、その他に水酸化カリウムや水酸化リチウム等を用いることもできる。シリカ成分としては、ケイ酸ナトリウム、水ガラス、コロイダルシリカ、アルコキシシランの加水分解物等を用いることができる。ゼオライトのアルミナ成分としては、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ベーマイト等を用いることができる。必要に応じて構造規制剤として、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、ピロリジン等の有機物が用いられる。
【0024】
(金属カチオン置換合成ゼオライトの製造方法)
ゼオライトは二酸化ケイ素からなる骨格を基本として、一部のケイ素がアルミニウムに置き換わることによって結晶格子全体が負に帯電している。電荷のバランスを取るために、ゼオライトの細孔内には、ナトリウム等のカチオンが含まれる。
本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトの製造方法は、上記の合成ゼオライトの細孔内のカチオンを目的のアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又は遷移金属カチオンに置換することができれば特に限定されない。
例えば、粉末状にした合成ゼオライトを、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又は遷移金属カチオンを含んだ水溶液中に入れ、好ましくは攪拌することにより細孔内のイオン(一般にナトリウムイオン)と水溶液中の金属カチオンとのイオン交換を促進させ、その後該ゼオライトを水洗、乾燥することにより金属カチオン置換合成ゼオライトを製造することができる。
【0025】
(金属カチオン)
本発明の金属カチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、又は遷移金属カチオンに属するいずれかのイオンを使用することができる。好ましい金属カチオンは、以下の通りである。
(1)カリウムイオン、(2)ルビジウムイオン、(3)カルシウムイオン、(4)マグネシウムイオン、(5)マンガンイオン、(6)ニッケルイオン、(7)鉄イオン、(8)亜鉛イオン。なお、上記の金属カチオンを混合して使用することもできる。
すなわち、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトは、上記記載の8つのイオン又はそれらの混合で置換したものが好ましい。
【0026】
また、本発明の金属カチオンは、下記実施例の結果により、水素生成効率を考慮すればカリウムイオン、ルビジウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオンを使用し、水素生成反応温度の低温化を考慮すればニッケルイオン、亜鉛イオンを使用する。
すなわち、ニッケルイオン及び/又は亜鉛イオンでゼオライトを置換することにより、水素生成の効率化及び水素生成反応温度の低温化を達成することができる。
【0027】
(水素の分離方法)
生成した水素は、公知の方法により、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトから発生したガスから高純度で分離することができる。例えば、膜分離装置、圧力スイング方式(PSA)分離装置を利用することができる。
【0028】
(水素生成装置について)
本発明の水素生成装置としては、水から水蒸気を生成する水蒸気発生手段と、この水蒸気発生手段で生成された水蒸気を反応容器に送り込む水蒸気供給手段と、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトと、該金属カチオン置換合成ゼオライトを充填する反応容器と、該反応容器内で発生した水素ガスを反応容器外に取り出すガス取出し手段とを備える。
なお、水蒸気を直接反応容器に送り込む場合には、上記水蒸気発生手段は不要である。
【0029】
反応容器の形態としては、縦型と横型が考えられ、縦型反応容器の場合には、水蒸気供給手段は反応容器の下部(又は上部)に接続し、ガス取出し手段は反応容器の上部(又は下部)に接続するのが効率的であり、また横型反応容器の場合には、水蒸気供給手段は反応容器の一側面から反応容器に接続し、ガス取出し手段は反応容器の他側面に接続するのが効率的である。
【0030】
本発明に係る水素生成を実施する装置の一例を図1に示す。アルゴンガスが流量計1を介して水蒸気発生装置2にキャリヤガスとして供給される。
【0031】
水蒸気発生装置2にはキャリヤガスとともに発生した水蒸気を導出する配管3が接続され、この配管3にはプレヒータ9が設けられ、配管3の先端は縦型反応容器4の上部に接続されている。
また、横型反応容器の場合には、配管3の先端は横型反応容器の一側面に接続している。
【0032】
本発明に係る水素生成を実施する装置では、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトの粉末を金属反応容器4に導入する(参照:図1)。
【0033】
反応容器4の周囲にはヒータ6が配置され、更に反応容器4の下端には配管7が接続され、この配管7には未反応の水蒸気を除去するための水蒸気トラップ8が設けられ、水蒸気トラップ8の後にガスクロマトグラフ又は水素回収装置が接続されている。
なお、試料を支えるベッドがついた反応容器4を縦方向に設置し、ガス(水蒸気)を下方向から供給し、生成ガスを反応容器上部から取り出す方法が好ましい。試料が下方からの気流によって反応容器内で舞い上がるため、水蒸気との接触面積が増加し、より反応が起こりやすくなる。
【0034】
(水素発生材料)
本発明の水素発生材料は、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトを有効成分として含有する。すなわち、本発明の水素発生材料は、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライト以外の成分も含むことが可能である。
また、本発明の水素発生材料は、自体公知の反応容器に充填し、水蒸気を供給することで容易に水素を生成することができる。また、本発明の水素発生材料は、従来の水素発生材料と比較して、低温かつ高効率に水素を生成することができる。
【0035】
(水素生成システムについて)
本発明の水素生成システムは、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトを自体公知の反応容器に導入して、水又は水蒸気を該反応容器に供給することで水素を生成できる。特に、本発明の水素生成システムでは、従来の水素生成方法とは異なり、反応継続時間中に一旦反応容器を閉める必要がなく、いわゆる開放系であるので、反応容器を加圧又は減圧する必要がない。
特に、本発明の水素生成システムの好適な条件は、本発明の水素生成装置を使用して、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトを含有する反応容器を250℃〜700℃に保持し、水又は水蒸気を該反応容器に供給することで水素を生成することである。
【0036】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0037】
(合成ゼオライトと天然ゼオライトによる水素生成能の比較)
合成ゼオライトであるNa-A型ゼオライトと天然ゼオライトを使用して水素生成能の比較を行った。詳細を以下に示す。
【0038】
天然ゼオライト粉末(東北ゼオライト工業株式会社から提供された秋田県藤里町産ゼオライト)及びNa-A型ゼオライト粉末(粒子径75μm以下、販売元:和光純薬工業株式会社)を、有機物等の付着物を除去するため、空気中で、500℃、5時間、前処理を施し、水を入れたデシケータ中に24時間保持後、実験用試料とした。次に、それぞれの試料1.0 gを反応管(容積:50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5 ml/min)で450℃に加熱し、ガスクロマトグラフ(GC-8A:島津製作所)により排出ガス中の水素濃度を測定した。
なお、水蒸気トラップ(図1の8)の容積は約1600mlであるので、水素生成システムの全体としての総容積は約1650〜1700mlになった。
【0039】
測定結果を図2に示す。図2の結果から明らかなように、合成ゼオライト(Na-A型ゼオライト)の水素生成能は、天然ゼオライトの水素生成性能と比較して、約3倍高いことがわかった。
【実施例2】
【0040】
(金属カチオン置換A型合成ゼオライトの製造及び該ゼオライトの評価)
実施例1で使用したNa-A型ゼオライト粉末2.5gを下記表1に記載の各種の金属カチオンを含む溶液に投入し、室温で約12時間攪拌することにより、該ゼオライトの細孔内のナトリウムイオンを各種の金属カチオンと交換した。金属カチオンの交換操作を所定回数繰り返した後、該ゼオライト粉末を水洗、乾燥することにより、金属カチオン置換A型ゼオライトを製造した。なお、イオン交換の条件を下記表1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
(金属カチオン置換A型ゼオライトによる水素生成量の測定)
上記で作製した各金属カチオン置換A型ゼオライトを用いて水素生成量を測定した。詳細は以下の通りである。
【0043】
(1)上記で作製した各アルカリ金属カチオン置換A型ゼオライト1.0gを反応管(50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5ml/min)で450℃に加熱し、ガスクロマトグラフ(GC-8A:島津製作所)にて排出ガス中の水素濃度を測定した。なお、コントロールとして、未置換Na-A型ゼオライトでも同様に水素濃度を測定した。
【0044】
(2)上記で作製した各アルカリ土類金属カチオン置換A型ゼオライト1.0gを反応管(50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5ml/min)で450℃に加熱し、ガスクロマトグラフ(GC-8A:島津製作所)にて排出ガス中の水素濃度を測定した。なお、コントロールとして、未置換Na-A型ゼオライトでも同様に水素濃度を測定した。
【0045】
(3)上記で作製した各遷移金属カチオン置換A型ゼオライト1.0gを反応管(50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5ml/min)で250℃から50℃ずつ段階的に昇温し、それぞれの温度での排出ガス中の水素濃度を測定した。なお、コントロールとして、未置換Na-A型ゼオライトでも同様に水素濃度を測定した。
【0046】
上記(1)の水素濃度の測定結果を図3に示す。
図3の結果より、水素生成量は、ルビジウム型>カリウム型>ナトリウム型>リチウム型となった。また、ルビジウムイオン又はカリウムイオンで置換したA型ゼオライトは、未置換のNa-A型ゼオライトと比較して、約2.5倍の水素生成量を示した。
一方、リチウムイオンで置換したA型ゼオライトの水素生成量は、未置換のNa-A型の水素生成量よりも低かった。国際公開WO01/87769の段落「0027」は、「ハロゲン化リチウムが添加されたゼオライトが最も水素生成能が優れていること」を開示している。すなわち、本発明の金属カチオン置換合成ゼオライトは、国際公開WO01/87769に記載のゼオライトとはまったく異なる性質を示すことがわかった。
【0047】
上記(2)の水素濃度の測定結果を図4に示す。
図4の結果より、水素生成量は、マグネシウム型>>カルシウム型≒ナトリウム型であった。また、マグネシウムイオンで置換したA型ゼオライトは、未置換のNa-A型ゼオライトと比較して、約6倍の水素生成量を示した。
【0048】
上記(3)の水素濃度の測定結果を図5〜10に示す。
図5〜10の結果より、水素生成量は、ニッケル型>亜鉛型>>マンガン型>鉄型≒ナトリウム型であった。マンガンイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオンで置換したA型ゼオライトは、未置換のNa-A型ゼオライトと比較して、高い水素生成量を示した。特に、ニッケルイオン、亜鉛イオンで置換したA型ゼオライトの水素生成開始温度は、未置換のNa-A型ゼオライトの水素生成開始温度と比較して、約100℃低い250℃付近であった。さらに、ニッケルイオン、亜鉛イオンで置換したA型ゼオライトの450℃付近での水素生成量は、未置換のNa-A型ゼオライトの450℃付近での水素生成量と比較して、約10〜15倍であった。さらに、ニッケルイオンで置換したA型ゼオライトの250℃での水素生成量は、図10に示すように、未置換のNa-A型ゼオライトの450℃での水素生成量と同程度であった。
【0049】
以上の結果により、金属カチオン置換A型ゼオライトの水素生成能は、未置換のA型ゼオライトの水素生成能と比較して、15倍までに達することができた。さらに、ニッケルイオン又は亜鉛イオンで置換したA型ゼオライトは、従来のゼオライトとは異なり、約250℃の加熱温度から水素を生成することができた。
【実施例3】
【0050】
(ニッケルイオン置換X型合成ゼオライトの製造及び該ゼオライトの評価)
Na-X型合成ゼオライト粉末(販売元:和光純薬工業株式会社)3.0 gを0.01 Mの硝酸ニッケル水溶液50 mlに投入し、室温で約12時間攪拌することにより、該ゼオライト粉末の細孔内のナトリウムイオンをニッケルイオンと交換した。カチオンの交換操作を合計2回行った後、該ゼオライト粉末を水洗、乾燥することにより、ニッケルイオン置換X型ゼオライトを製造した。
【0051】
(ニッケルイオン置換X型ゼオライトによる水素生成量の測定)
上記で作製したニッケルイオン置換X型ゼオライトを用いて水素生成量を測定した。詳細は以下の通りである。
【0052】
上記で作製したニッケルイオン置換X型ゼオライトを湿度95 %程度のデシケータ内に室温で24時間静置し、実験用試料とした。該実験用試料1.0gを反応管(50 ml)内に設置し、乾燥アルゴン流通下(5ml/min)で450℃に加熱し、ガスクロマトグラフ(GC-8A:島津製作所)にて排出ガス中の水素濃度を測定した。なお、コントロールとして、未置換Na- X型ゼオライトでも同様に水素濃度を測定した。
【0053】
測定結果を図11に示す。図11から明らかなように、ニッケルイオン置換X型ゼオライトの水素生成能は、未置換Na- X型ゼオライトと比較して、約3倍高いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の金属カチオンで置換した合成ゼオライトを用いた水素生成方法では、常圧下において、効率的な水素生成の提供を可能とした。
【符号の説明】
【0055】
1:流量計
2:水蒸気発生装置
3:配管
4:縦型反応容器
5:金属カチオン置換合成ゼオライト
6:ヒータ
7:配管
8:水蒸気トラップ
9:プレヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の金属カチオンを含む合成ゼオライトに、水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを接触させる工程を含む、水素の生成方法。
(1)アルカリ金属カチオン
(2)アルカリ土類金属カチオン
(3)遷移金属カチオン
【請求項2】
前記金属カチオンを含む合成ゼオライトが、金属カチオンの置換によって得られることを特徴とする請求項1に記載の水素の生成方法。
【請求項3】
前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる請求項1又は2に記載の水素の生成方法。
(1)カリウムイオン
(2)ルビジウムイオン
(3)カルシウムイオン
(4)マグネシウムイオン
(5)マンガンイオン
(6)ニッケルイオン
(7)鉄イオン
(8)亜鉛イオン
【請求項4】
前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる請求項3に記載の水素の生成方法。
(1)ニッケルイオン
(2)亜鉛イオン
(3)マンガンイオン
【請求項5】
上記接触させる工程を常圧下で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の水素の生成方法。
【請求項6】
以下の工程を含む請求項1〜5のいずれか1に記載の水素の生成方法:
(1)前記金属カチオンを含む合成ゼオライトを水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを接触させて、該ゼオライトに水を吸着させる工程、
(2)水を吸着させたゼオライトを加熱する工程、
(3)加熱されたゼオライトから水素を回収する工程。
【請求項7】
前記ゼオライトの加熱温度が250℃〜700℃であることを特徴とする請求項6に記載の水素の製造方法。
【請求項8】
前記合成ゼオライトが、A型、X型、Y型、L型、P型、β型、ZSM類、モルデナイト類のいずれか1である請求項1〜7のいずれか1に記載の水素の生成方法。
【請求項9】
以下の金属カチオンで置換した合成ゼオライトを含む水素発生材料。
(1)カリウムイオン
(2)ルビジウムイオン
(3)カルシウムイオン
(4)マグネシウムイオン
(5)マンガンイオン
(6)ニッケルイオン
(7)鉄イオン
(8)亜鉛イオン
【請求項10】
前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる請求項9に記載の水素発生材料。
(1)ニッケルイオン
(2)亜鉛イオン
(3)マンガンイオン
【請求項11】
水又は水蒸気を反応容器に送り込む水供給手段と、請求項9又は10に記載の水素発生材料と、該水素発生材料を含有する反応容器と、該反応容器内で発生した水素を反応容器外に取り出す水素取り出し手段を少なくとも備えることを特徴とする水素生成装置。
【請求項1】
以下の金属カチオンを含む合成ゼオライトに、水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを接触させる工程を含む、水素の生成方法。
(1)アルカリ金属カチオン
(2)アルカリ土類金属カチオン
(3)遷移金属カチオン
【請求項2】
前記金属カチオンを含む合成ゼオライトが、金属カチオンの置換によって得られることを特徴とする請求項1に記載の水素の生成方法。
【請求項3】
前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる請求項1又は2に記載の水素の生成方法。
(1)カリウムイオン
(2)ルビジウムイオン
(3)カルシウムイオン
(4)マグネシウムイオン
(5)マンガンイオン
(6)ニッケルイオン
(7)鉄イオン
(8)亜鉛イオン
【請求項4】
前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる請求項3に記載の水素の生成方法。
(1)ニッケルイオン
(2)亜鉛イオン
(3)マンガンイオン
【請求項5】
上記接触させる工程を常圧下で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の水素の生成方法。
【請求項6】
以下の工程を含む請求項1〜5のいずれか1に記載の水素の生成方法:
(1)前記金属カチオンを含む合成ゼオライトを水若しくは水を含むガス又は水蒸気若しくは水蒸気を含むガスを接触させて、該ゼオライトに水を吸着させる工程、
(2)水を吸着させたゼオライトを加熱する工程、
(3)加熱されたゼオライトから水素を回収する工程。
【請求項7】
前記ゼオライトの加熱温度が250℃〜700℃であることを特徴とする請求項6に記載の水素の製造方法。
【請求項8】
前記合成ゼオライトが、A型、X型、Y型、L型、P型、β型、ZSM類、モルデナイト類のいずれか1である請求項1〜7のいずれか1に記載の水素の生成方法。
【請求項9】
以下の金属カチオンで置換した合成ゼオライトを含む水素発生材料。
(1)カリウムイオン
(2)ルビジウムイオン
(3)カルシウムイオン
(4)マグネシウムイオン
(5)マンガンイオン
(6)ニッケルイオン
(7)鉄イオン
(8)亜鉛イオン
【請求項10】
前記金属カチオンが、以下のいずれか1以上から選ばれる請求項9に記載の水素発生材料。
(1)ニッケルイオン
(2)亜鉛イオン
(3)マンガンイオン
【請求項11】
水又は水蒸気を反応容器に送り込む水供給手段と、請求項9又は10に記載の水素発生材料と、該水素発生材料を含有する反応容器と、該反応容器内で発生した水素を反応容器外に取り出す水素取り出し手段を少なくとも備えることを特徴とする水素生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−111359(P2011−111359A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268357(P2009−268357)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】
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