説明

水素生成装置

熱的に分解可能な水素生成材料用の複数の厚紙受け器を含んだ圧力容器とそれに関連付けられた点火システムとを備える熱分解水素生成装置。また、水素生成装置内で使用するモジュール式ペレットトレイアセンブリが複数のトレイを備えるが、複数のトレイはペレットホルダおよびそれに関連付けられた点火装置を有し、トレイに電気的接続ももたらす支持棒によってスタック内に保持される。ペレットトレイアセンブリは複数のペレットホルダを備え、より外方に配設されたペレットホルダの一部は外方に向いた通気孔のみを含み、最初に点火される。また、生成装置は、並べて配置された、側方に退出するガスが外方に通気することのみを可能にする方向性のある通気が設けられた仕切りによって、セルに互いに分離された水素生成要素のアレイを有する。代替え方法として、要素は、熱伝導性であってもよいガス閉込要素とガス通気要素を備える阻流システムによってセルに離隔されることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素生成装置の改良に関する。より詳しくは、本発明は、水素を生成するように材料が熱的に分解されることが可能である熱分解水素生成装置に関する。本発明は、携帯機器の用途を含む軽量用途、特に燃料電池システムの一部として特に適切である。しかしながら、水素生成装置は、大型燃料電池、水素エンジン、またはガスクロマトグラフなどのオンデマンドで水素が必要な他のシステムで使用されることも可能である。
【背景技術】
【0002】
水素生成システムは大まかな2つの分類に分かれる。即ち、通常は変成と呼ばれる、液化炭化水素またはガス状炭化水素からの水素の生成と、水素含有複合物の分解による水素の生成とである。水素含有複合物の分解はさらに、第1に加水分解と呼ばれる水の存在下での分解、第2に熱分解または放熱と呼ばれる熱による分解とに分類されることが可能である。
【0003】
アミンボラン類およびホウ化水素金属などの化学水素化合物の熱的分解が、一般に水素を生成する手段として使用されている。初期の特許が、高エネルギー化学レーザで使用する「ワンショット」の非制御型反応器における水素製造のためのこれらの複合物の分解について述べている。本出願人の国際公開第02/18267号パンフレットが、水素生成要素での点火が点火制御システムによって制御されて、例えば制御可能な負荷応答式の方法で個々のペレットを連続的または同時に点火することを可能にしている熱分解水素生成装置について述べている。
【0004】
米国特許出願公開第2005/0142404号明細書が、熱発生要素が様々なアレイ内で支持される様々な熱分解ガス生成システムについて詳述している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、第1の態様において、熱的に分解可能な水素生成材料を受け取る複数の受け器を備えるトレイアセンブリを備える圧力容器を備える熱分解水素生成装置であって、トレイアセンブリは厚紙構成要素を備える、熱分解水素生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
厚紙構成要素は通常、障壁および/または絶縁体および/または支持体および/または保持器および/または離隔器あるいは類似目的の働きをする構成要素を形成する1つ以上の層の厚紙を備える。好ましい配置構成では、受け器(または水素生成ユニット)は厚紙受け器(またはハウジング)を備える。
【0007】
熱分解に基づいた水素生成装置は、極めて異なる動作条件および構成要素によって、加水分解に基づいた水素生成装置とは即座に区別可能である。(例えば加水分解に基づいた水素生成装置は、水の侵入を制御するための防水シールなどのデバイスを必ず含んでいる)。熱分解水素生成装置では、水素出力の重大な汚染を起こさずに、伝統的な従来技術のセラミックペレットホルダを厚紙ハウジングに置き換えることが可能であることが判明しているが、これは、高温であっても厚紙ハウジングが水素雰囲気内で実質的に分解または劣化しないことが判明していることによる。したがって、このような環境内でそれらが不活性であることによって、それらを使用して、水素生成装置が可能な限り軽量であることが極めて重要な意味である携帯パワーシステム内でエネルギー密度を最適化することが可能になる。これまでに確立された認識とは対照的に、他の支持構造物または保持構造物、あるいは絶縁構造物または離隔構造物も同様に厚紙構造物と置き換えることができる。このような構造物には、例えば、水素生成ペレットを定位置内に保持する厚紙保持輪または厚紙保持ディスク、ガスまたは他の化学的汚染を防止する厚紙障壁または厚紙離隔器、電気構成要素またはペレットホルダ(厚紙またはセラミックの)を支持または位置決めまたは離隔するための厚紙支持体、あるいは電気構成要素を絶縁する、または熱絶縁用の厚紙絶縁体が含まれてもよい。
【0008】
「厚紙」という用語は、無漂白のクラフト紙から製作された紙製品と「ロケットペーパー」として知られる製品とを含む硬く、適度に厚い任意の紙製品を含むものとして広く解釈される。生成装置は負荷状態(即ち水素生成材料を含んだ状態)または無負荷状態にあることができる。
【0009】
代替的な第1の態様では、熱分解可能な水素生成材料を受け取る複数の水素生成要素を備えるペレットトレイアセンブリを備える圧力容器を備える熱分解水素生成装置であって、ペレットトレイアセンブリは厚紙構成要素である熱分解水素生成装置が提供される。
【0010】
さらなる代替的な第1の態様では、熱的に分解可能な水素生成材料を受け取る複数の受け器を備える圧力容器と、受け器に関連付けられた、分解を始動する点火システムとを備える熱分解水素生成装置であって、受け器は厚紙受け器である熱分解水素生成装置が提供される。
【0011】
以下、このシステムを形成する「点火システム」および「点火装置」への言及は、水素生成材料の熱的な分解を始動するシステムと、これを始動するデバイス/始動装置自体とを指す。したがって、点火装置は、加熱コイルまたは熱を強力に供給することが可能な任意の他のデバイスを備えてもよい。
【0012】
厚紙受け器は、それぞれ個別の受け器またはハウジングを備えてもよく、無作為にまたは規則的配列で、好ましくは最密配置構成で配置されてもよい。個別のハウジングは、特に分解材料からの大きな熱出力が問題となるシステムで、クロス点火(cross−ignition)の問題を回避する助けとなる。しかしながら、格子または網目の配置構成あるいは厚紙セルの類似の連結されたネットワーク(即ちハウジングが共通の壁を共有する一体的な配置構成)が、個別のハウジングの代わりに、または実際にそれに加えて使用されてもよい。
【0013】
動作の前に、受け器にはそれぞれ一定量の熱的に分解可能な水素生成材料が装填されることができる。これは1つ以上のペレットの形態であってもよく、ペレットは任意の形状または寸法であってもよい。各ハウジングの中に任意選択による一定量の熱生成材料も装填されてもよく、この材料は点火システムによって始動される能力があり、続いて水素生成材料を分解する能力がある。ペレットの構成は、点火(始動)システムの点火装置(始動装置)によって点火される能力がある、それに隣接して配置された熱生成混合物の第1層と、水素生成混合物を備える第2層とを備えることができる。代替え方法として、第1層は熱および水素を生成する混合物を備えてもよく、第2層または第2部分は主要な水素含有複合物である。適切な熱生成および/または水素生成混合物について国際公開第02/18267号パンフレットで述べられており、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、アンモニアボランが特にエネルギー密度の高い水素源となる。
【0014】
厚紙受け器は、圧力容器の内側の支持トレイまたはプリント基板に固定的または取り外し可能に取り付けられてもよい。1つ以上の支持トレイ上に、複数の個別のハウジングまたは連結されたハウジングが設けられてもよい。各ハウジングは、ガス生成材料を保持する、任意の適切な形状の管または凹形ホルダを備えてもよい。各ハウジングは、片側に開放端部、両側に開放端部、あるいは両側に閉鎖端部を有してもよいが、コップまたはボックス形状で、点火手段付近の閉鎖端部と開放蒸留端部とを備えるものが通常は使用される。しかしながら、蒸留端部は蓋を有してもよく、蓋を、分解物が膨張しやすい定位置に固定する締付具を有してもよい。
【0015】
厚紙ハウジングは厚紙管を備えてもよい。厚紙ハウジングは、任意選択の第1および/または第2厚紙端壁を有してもよい。管は、任意の適切な断面を有してもよいが、通常は円形または正方形の断面を有する。管は開放または閉鎖されていてもよい。一方端部または両端部の厚紙端壁は、存在するならば一体的に形成されてもよいが、好ましくは個別に形成され、端部全体を覆うように、あるいは僅かに小さな直径を有する場合は、いずれかの端部で、またはその付近で管の内側にディスクまたは環状ワッシャとして配設されるようにして、管の一方端部または両端部に固定的にまたは取り外し可能に取り付けられることができる。好ましくは僅かに小さな直径の極めて短い管を備える管の内側には、例えばペレットをその下の定位置内に保持するために、厚紙保持輪が伸縮自在に挿入されてもよい。これは、効率的な熱伝達に必要な密接な接触を実現し、分解中のペレットの移動を防止しながらも分解物の膨張を可能にする。
【0016】
各厚紙ハウジングは、それぞれに関連付けられた点火装置を有してもよく、点火装置は、その内容物をそれが中に装填された後に個々のベースで、連続的または他の点火装置と同時に点火するように配置されている。通常、水素生成装置は、それぞれのハウジングの点火レートを制御して、例えばシステム負荷を応答性にするように配置された点火制御システムを備える。各点火装置は通常厚紙ハウジングの内部に位置付けられている。
【0017】
厚紙ハウジングは直接回路基板上に取り付けられてもよく、これによって追加の支持トレイをなくし、空間および重量を節約することができる。好ましくはペレットホルダは、点火装置から下方に延在するフランジ対によって回路基板上に取り付けられる。
【0018】
厚紙は少量の水素がハウジングの壁を通ってゆっくりと拡散することを可能にする。このハウジングは、例えばアンモニアボラン分解の場合に分解物の膨張を軽減する助けとなる場合がある。しかしながら、熱管理の理由から、厚紙ハウジングは、発生された水素の大きな流れを迅速にハウジングから圧力容器の壁に向ける通気孔を有してもよい。例えば、このような通気孔には、穿孔、スリット、スロット、あるいは明確に通気を目的とした任意の他の適切な穴、切込み、または隙間を備えることができる。それらの要件は、水素生成装置は、生成装置が極めて大型であり、クロス点火を防止するために水素生成要素の冷却が必要とされる高パワーの用途のためのものであるか、あるいは、生成装置が小型であり、水素生成要素の近傍で熱が保持される必要がある、低パワーの用途のためのものであるかに依存して、異なる場合がある。ハウジングの一部を同様に形成している管および/またはワッシャおよび/または保持輪などの任意の隣接した構造物内にも、穴、穿孔、スリット、切込みなどの一致した通気孔または位置合わせされた通気孔が、それに対応して設けられてもよい。
【0019】
好ましくは通気孔は、出力ガスの流れを、装置の中心、例えば各トレイの中心から外方に離して向けるように最終組み立て装置内に配置される。その場合、生成装置は、使用中に最も外側の(輪の)ペレットが、内方に配設された(輪の)ペレットの前に点火させるプログラム化された点火シーケンスを備える制御点火システムを有してもよい。ペレットホルダの連続した外側領域(例えば輪)が存在する場合、使用中、最も外側の領域から始まり最も内側の領域で終わる連続的順序で、各領域が実質的に全て点火されてもよい。
【0020】
水素生成要素からの熱の移動、したがってクロス点火を軽減するために、圧力容器の中に熱絶縁が設けられてもよい。しかしながら、厚紙ハウジングの絶縁特性によって圧力容器内の他の熱絶縁の必要がなくなる場合がある。したがって、装填された動作可能な水素生成装置(装填されるエネルギー密度と点火シーケンスとが規定されている)の場合、厚紙ハウジングは、圧力容器内に他の絶縁が存在しない状態で、動作中のクロス点火を防止するように選択および配置されてもよい。
【0021】
水素生成装置は携帯可能であってもよい。
【0022】
上述の水素生成装置を備える携帯可能な機器がさらに提供される。このような機器は燃料電池システムの形態であることができる。
【0023】
代替的な第1の態様で、本発明は、熱的に分解可能な水素生成材料の、規則的または不規則的形状、中実または中空に関わらない任意の形状のペレット(棒、管、輪、ドーナッツ形状の塊、粉、顆粒、セグメントなど)を支持するペレットホルダのアレイを含んだ圧力容器と、ホルダに連結された点火システムとを備える熱分解水素生成装置であって、各ホルダは厚紙から形成されている、熱分解水素生成装置を提供する。ハウジングは軽量であり、低コストで製造でき、その壁からの水素拡散を可能にし、クロス点火を防止するように絶縁を行い、発生した水素の流れを方向付けるように穿孔されることが可能であり、汚染物質を作り出さない。ハウジングは直接回路基板に取り付けられてもよく、異なる点火デバイスを受け取るように即座に適合されることができる。
【0024】
本発明の第2の態様では、スタックを形成するように複数の支持棒によって互いに重なるように取り付けられた複数のペレットホルダトレイを備える熱分解水素生成装置内で使用するモジュール式ペレットトレイアセンブリであって、各トレイは複数のペレットホルダと、これに関連付けられた、使用中それぞれのペレットホルダの中に装填されたペレットを点火するための点火装置とを備え、支持棒はスタックの中の電気的接続性も実現する、モジュール式ペレットトレイアセンブリが提供される。
【0025】
このような配置構成は、軽量であり、迅速に組み立てられ、最も重要なこととして小型であって、大きなエネルギー密度が達成されることを可能にする。特にこれは直接各トレイに、またはスタックに沿って外部線が取り付けられる必要性を回避する。
【0026】
トレイが「互いに重なるように」取り付けられているという言及は、字義にとらわれずに解釈されるべきであり、必ずしもスタックが直立であることを必要としない。これは、トレイがスタックを形成するように互いに隣接していれば、それらが任意の配向に位置することが可能であることが意図されているからである。
【0027】
有利には、電気的接続性は点火装置を作動させることを目的としている。
【0028】
支持棒は、スタックの長さ全体にわたって延在する支持棒の個々のカラムを形成してもよい。このような配置構成は構造物内に強度および剛性をもたらす。支持棒はスタックの長さ分延在する単一(1本)の棒、即ち1つの棒/カラムであってもよく、その場合、アセンブリを構築するようにペレットホルダのトレイが棒上に落とされてもよい。この配置構成は高強度であり、充分な電気的接続性を有し、迅速に組み立てることができる。しかしながら、特定のトレイが注意を必要とする場合、問題のトレイのある高さまでスタックを解体することが必要である。代替え方法として、支持棒は1つのトレイの高さ分、または2つまたは3つのトレイ(即ち複数のトレイ)の高さ分延在してもよい。この場合、棒同士の相互連結が行われる必要があるが、そうするとスタックが様々な長さとなることが可能であるという利点がある。棒が互いに直接連結することも可能であり、あるいは電気的接続性をもたらすために導電性接続器が使用されることも可能であるが、後者が好ましくはトレイ自体の中に設けられる。支持棒は、スタックの長さ全体にわたって延在する支持棒の個々のカラムを形成するように位置合わせされることも依然可能である(一体型棒の場合のように)。
【0029】
アセンブリは、エネルギー密度を最大限にするように可能な限り小型であることが必要であり、通常、1セットのペレットホルダと、死空間が無いようにペレットホルダにほぼ同じ長さの1セットの支持棒とを含んだ完成トレイから形成されることになる。次いで各完成トレイを上下に重ねることによってスタックが組み立てられる。この極めて好ましい構成では、スタックは、補助的な支持棒またはコネクタの必要なく、単に各完成トレイを上下に重ねることによって組み立てられることが可能である。
【0030】
支持棒は通常、各トレイ内に位置付けられた導電性の穴または溝の中に受け取られる。溝または穴は、例えば回路基板(トレイまたはその上層を形成する)の一部として一体的に形成されてもよく、あるいはトレイ内に個々に取り付けられる別個のコネクタを備えてもよく、いずれも点火装置に連結される。支持棒を受け取り、把持するように、各ペレットトレイを通って延在する複数の環状ピングリップが適合されてもよい。
【0031】
それぞれのトレイのペレットホルダは、ペレットホルダのカラムを形成するように互いに重ねられたスタックの全てにわたって位置合わせされてもよい。これはトレイの配線が簡略化されることを可能にする。
【0032】
多数の配線構成が可能である。しかしながら、特定のトレイに動力を供給するためだけに支持棒のカラム(1つの棒または1セットの棒から製作されている)が使用されてもよく、その際、x個のカラムがx個のそれぞれのトレイに動力供給を行う。同様に、位置合わせされたペレットホルダの1個のカラムを接地接続するためだけに支持棒カラムが使用されてもよく、その際、y個のカラムがペレットホルダのy個のそれぞれのカラムを連結する。両方のタイプが設けられる場合には、トレイ上のいずれのペレットホルダも離隔され、その点火は、スイッチによって同じトレイまたは同じカラム内の他のペレットホルダとは独立して個々に制御されることができる。
【0033】
好ましくはペレットホルダは円形であり、その場合好ましくは各トレイも円形である。好ましい実施形態では、各トレイは、6つのペレットホルダを中心の7番目のペレットホルダのまわりで対称に配置して有している。トレイの周囲部に位置付けられたペレットホルダは外方に向いた通気穿孔を有してもよい。しかしながら、さらに外側輪が設けられて良く(例えば19個ペレットホルダ/トレイ)、その場合、外側輪内の全てのペレットホルダは、外方に向いた通気穿孔、即ち穴またはスリットを、いずれの内方に配設されたペレットホルダからも離して方向づけられた面にのみ設けて有してもよい。その場合、点火制御システムは、内方に配設されたペレットホルダの点火装置よりも前に、外方に配設されたペレットホルダがそれらの点火装置に始動させるように構成してもよい。
【0034】
有利には、ペレットホルダはそれぞれ厚紙ハウジングを備えるが、それらはセラミックであってもよい。厚紙ハウジングは上述の形態であってもよい。死空間を無くすために、ペレットホルダの上端部と下端部が、通常それらの上と下のペレットトレイに当接する。上述の他の厚紙構造物もペレットトレイアセンブリ内に設けられてもよい。
【0035】
本発明の第3の態様では、複数のペレットホルダを備える少なくとも1つのペレットホルダトレイを備える、熱分解水素生成装置内で使用するペレットトレイアセンブリであって、より外方に配設されたペレットホルダのうちの少なくとも一部は外方に向いた通気孔のみを含んでいる、ペレットトレイアセンブリが提供される。このような配置構成は、使用中に内側ペレットホルダの内容物のクロス点火のリスクを冒さずにまず外側ペレットホルダが点火されることを可能にする。
【0036】
「ペレットホルダ」という語句は、ペレットホルダを取り囲むジャケットまたはラップを含むように広範囲に解釈されるべきである。これは、どのような外側境界部が個々のペレットホルダからのガスの退出を最終的に制御するにしても、選択的な通気を実現することによって外方への制御された通気が達成されることが必要であることによる。通気孔は、発生された水素の大きな流れを迅速にハウジングから外に圧力容器の壁に向けるが、通気孔には、穿孔、スリット、スロット、あるいは明確に通気を目的とした任意の他の適切な穴、切込み、または隙間が含まれてもよい。例えば、ペレットホルダは外方に位置決めされた切込みのみをその頂縁部内に有してもよく、それらの切込みは、ホルダの頂部上の隣接した蓋との組み合わせで、選択的な外方への通気を実現する。
【0037】
好ましくは中心ではない所に位置付けられたペレットホルダ内には穴または隙間が存在しない。そうした穴または隙間は大きくなって、内方に配設された、近接し合ったペレットホルダに水素を急速に逃散させてしまうからである。通常、通気孔は、ペレットホルダの1つの角度区分にしか位置付けられず、外方向(即ち、その特定のペレットホルダの、その高さまたはトレイ上に位置決めされたペレットホルダの中心点に対する位置に対応する方向)のまわりに小さな角度範囲しか定めない。
【0038】
水素生成装置は、前記ペレットトレイアセンブリとこれに関連付けられた、圧力容器の内側に取り付けられた点火制御システム(個々のそれぞれのペレットホルダの点火時間を制御する能力ある)とを備えてもよく、ペレットトレイアセンブリは、個別のペレットホルダをそれぞれに有した複数のペレットトレイを備えてもよい。ホルダは連続した外側輪内に配置されてもよく、それらの輪は任意の形状(正方形、円形、六角形など)であってもよい。しかしながら、連続した各外側領域内のホルダのほとんどまたは全てが外側通気孔を有していれば、また使用中に、それらが最も外側の領域から始まって内方向に順番に連続的に点火されるのであれば、任意の配置構成で、それが任意の数の連続した外側領域を含むホルダの秩序アレイまたは無作為アレイであろうと、選択的通気が使用されることが可能である。
【0039】
好ましくは、このようなペレットトレイアセンブリでは、少なくとも1つのペレットホルダトレイが、各ペレットホルダに関連付けられた、点火制御システムによって制御される点火装置を備えており、点火制御システムは、最も外側のペレットホルダに関連付けられた点火装置を、より内側に配設されたペレットホルダよりも前に始動するように適合されている。少なくとも2つの外側輪(または領域)のペレットホルダがある場合、最も外側の輪(のほとんどまたは全て)が、最初に次の内側輪よりも前に始動されるように適合されてもよく、これが各々の次の内側輪へと順番に連続してもよく、その後に中央のペレットホルダ(複数可)が始動される。
【0040】
このようなペレットトレイアセンブリを、前記部分的に穿孔されたペレットホルダと点火システムとを備える水素生成装置内で作動させる方法であって、これによって最も外側のペレットホルダに関連付けられた点火装置が、より内方に配設されたペレットホルダの前に始動される方法がさらに提供される。燃料電池の形態でよい上述の水素生成装置を備える携帯可能な機器もさらに提供される。
【0041】
様々な技術的利点を実現するために、水素生成ユニットのまわりに仕切り(または離隔器)を設けることに関する、本発明のいくつかの代替的な第4の態様がさらに提供される。以下に述べられる特色が上述の特色と組み合わされてもよいが、明らかにそれらが対立する場合はその限りではない。したがって、例えば、水素生成要素およびアレイは既述のようでもよく、アレイは既述のようにそれぞれのトレイ上に位置付けられ、それが既述のアセンブリの一部を形成してもよい。
【0042】
したがって、第4の態様では、並べて配置、ガスがアレイの中心に対して側方に外方向のみに退出することを可能にするように設計された方向性のある通気が設けられた仕切りによってセルに互いに離隔された水素生成要素のアレイを備える熱分解水素生成装置が提供される。
【0043】
その結果、いずれのアレイ内のガス側路の通気も、円形、矩形、六角形、または生成装置の形状に依存した任意の他の適切な形状に関わらず、クロス活動化(cross−activation)を防止するように制御されることが可能である。クロス活動化は通常、このような要素のこのような並んだアレイの中心で問題となる。一部または全ての要素が互いにセルへと離隔されてもよく、通常セル毎に要素を1つだけ含む。
【0044】
通常、各要素は制御システムに動作可能に連結され、通常、各要素はそれぞれの点火装置に連結され、そのシステムは選択されたシーケンスで要素の点火を制御する。水素生成要素の熱分解の始動は、制御システムによって、水素生成要素が外方に、点火されていない隣接した水素生成要素へと通気を行うことを最小化または回避するシーケンスで制御されてもよい。シーケンスは、ほとんどまたは全ての要素が点火されたとき、それらの要素それぞれからほぼ外向きに配設された要素は既に点火されているようになるものである。通常、最も外側の水素生成要素が最初に点火される。通常、これに続いて連続的に徐々に内方に配設された水素生成要素が点火されて(しかし、1つまたは2つの異なる例外があってもよい)、内方に配設された水素生成要素が、既に点火された外側の水素生成要素の全体的方向にのみ点火し、通気を行うようにしている。
【0045】
好ましくは方向性のある通気は、退出する(側方に)ガスおよび退出する排出物を隣接した、外方に配設された空所に向ける。(隙間からガスを上方に逃がすこともできるが、クロス活動化を防止するために最小化されることが必要なのはガスの側方の移動である)。アレイ内の内方に配設された水素生成要素の場合では、好ましくは退出するガスおよび退出する排出物を外方に配設された近隣の水素生成要素の間の隙間に向ける。
【0046】
水素生成要素は水素生成材料のペレットを備えてもよく、要素を(主要な)セルに離隔する仕切りは、ペレットを取り囲む個々のハウジングを備えてもよく、ハウジングは外方に向いた通気孔のみを有する。通気孔は特定の角度、プラスまたはマイナス5°などに位置付けられてもよく、あるいは所望の小さな角度区分、プラスまたはマイナス30°などの範囲を定めてもよい。
【0047】
ハウジングは、それらの間に延在する、それらをさらなる1セットの個々のセルに仕切る阻流板のシステムによってさらに取り囲まれることが理想である。入れ子状セル(即ちセル内セル)は、通気をより柔軟に制御すること、阻流板/ハウジング材料(絶縁体/導電体)をより多様に選択することを可能にし、阻流板が熱伝導性である場合、より大きな熱放散を実現することができる。さらなるセットの個々のセル(即ち副セル)が、外方に配設されハウジングに隣接した指定の空所を含んでもよく、好ましくは、ハウジング内の外方を向いた通気孔は退出するガスおよび退出する排出物を指定された空所に向ける。
【0048】
阻流板はそれらの表面のほとんどがガスを自由に通気させるように実質的に多孔性であってもよい。網目または他の高度に多孔性の構造物も、熱伝導性であれば、冷却の向上を実現する。
【0049】
阻流板は一体型格子の配置構成として形成されてもよい。
【0050】
代替的な第4の態様では、並べて配置された水素生成要素のアレイと、隣接した水素生成要素同士を個々のセルに仕切るようにそれらの間に延在した阻流板のシステムとを備える熱分解水素生成装置であって、前記システムはガス閉込阻流要素とガス通気阻流要素とを備え、それらの要素はアレイの中のガスの通気の横方向を制御する、熱分解水素生成装置が提供される。
【0051】
ガス通気阻流要素は、ガスから熱の一部を迅速に除去するように熱伝導性材料で製作されてもよく、必要な場合、ガス閉込阻流要素とガス通気阻流要素との両方が熱伝導性材料で製作されてもよい。しかしながら、ある種の場合には、特に以下に述べられる方法で使用される際、特定領域の中での横方向の移動を防止するために、ガス閉込阻流要素が断熱材料で製作されることが好ましい。
【0052】
阻流板のシステムは、水素生成要素を、アレイの中心に対して連続して内方に配設された2つ以上の隣接するセル領域に仕切ってもよい。前記領域のうちの1つ内のセルは、前記領域内の隣接したセルの間を高温ガスが循環することを防止するガス閉込阻流要素を備えてもよい。前記領域のうちの1つ内のセルは、高温ガスが前記セル領域からアレイの中心に対して外方に通気することを可能にするガス通気阻流要素を備えてもよい。ガス通気阻流要素は好ましくは実質的に多孔性である。
【0053】
生成装置は通常、円筒圧力容器であることから、生成装置は、阻流板のシステムによってセルに仕切られた水素生成要素の円形アレイを有してもよく、1つ以上のセルの中央領域と、セルの連続して外方に配設された1つ以上の環状領域または輪とが存在する。
【0054】
阻流板のシステムは、セルを形成するように、半径方向に延在するガス閉込阻流要素によって交差された、円周方向に延在するガス通気阻流要素の2つ以上の同心輪を備えてもよい。最も外側の円周方向に延在する阻流要素は水素生成要素のアレイの外側周囲部を取り囲んでもよく、それらは突出部分を、周囲部を超えて延在する死空間の各セル上に含んでもよい。これは、熱放散のためのより大きな表面積を呈示することができ、水素生成要素の熱分解から周囲部の中に排出物を収容することができる。
【0055】
阻流システムは、ガス通気要素を形成する1つ以上の連続した輪、ならびにガス閉込要素を形成する、輪の内部の定位置に落とされることが可能な短い区分化阻流板を備えてもよい。セルは、区分化されたガス閉込阻流要素を重ねて形成される二重壁で形成されてもよい。半径方向に延在する阻流要素は真っ直ぐであってもよく、外方に単一の半径方向に延在してもよいが(かつ円周方向に延在する阻流要素の同心輪に加わってもよい)、有利には、部分的多角形として延在する区分からも形成され、これらが死容積の境界を画し、または死容積を捕捉する場合は特にそうである。
【0056】
さらなる第4の態様では、並べて配置された水素生成要素のアレイを備え、隣接した水素生成要素を個々のセルに仕切るようにそれらの間に延在する阻流板のシステムを有する、熱分解水素生成装置であって、前記システムは、アレイを覆うように配設された、折り畳み可能なハチの巣構造物から形成された一体型格子の配置構成を備える、熱分解水素生成装置が提供される。
【0057】
構造物は熱伝導性であってもよく、折り畳み可能な蛇腹型の押出成型またはエキスパンディング金属製ハチの巣構造から形成されてもよく、あるいは押出成型プラスチック、厚紙、または他の絶縁材料から形成されてもよい。システムはアレイの一部(例えば中心部分)または全体を覆うように使用されてもよい。好ましくは水素生成要素は均一に寸法決めされ、規則的な、好ましくは六角形のアレイ内で互いに均一に離隔される。
【0058】
当然のことながら、上述の第4の態様のいずれの1つによる装置も、他の態様の1つ以上の特徴の一部または全てを含んでもよく、最初の3つの態様の全てまたは4つの態様の全てを具体化する装置が特に優れた性能を実現する。
【0059】
次に、添付図面を参照して、本発明の様々な態様が単に実施例として述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の態様による水素生成装置で使用する組み立てられたペレットホルダの斜視図である。
【図2】本発明の第2の態様によるペレットトレイアセンブリの上から見た斜視図である。
【図3】図2のアセンブリの1つのペレットトレイの斜視図である。
【図4】図3のトレイの1つのペレットホルダの分解図である。
【図5a】図2のトレイの回路基板の上から見た斜視図である。
【図5b】図2のトレイの回路基板の下から見た斜視図である。
【図6】図2のペレットトレイアセンブリの下から見た斜視図である。
【図7a】第1の態様によるペレットホルダの代替的配置構成の概略平面図である。
【図7b】第1の態様によるペレットホルダの代替的配置構成の概略平面図である。
【図8a】第2の態様による支持棒の代替的配置構成の概略断面図である。
【図8b】第2の態様による支持棒の代替的配置構成の概略断面図である。
【図8c】第2の態様による支持棒の代替的配置構成の概略断面図である。
【図9】本発明の第3の態様によるペレットトレイアセンブリの上から見た斜視図である。
【図10a】7個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図である。
【図10b】7個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図である。
【図11a】19個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図である。
【図11b】19個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図である。
【図11c】19個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図である。
【図11d】19個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図である。
【図11e】19個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図である。
【図11f】19個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図である。
【図12a】19個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図であり、ガス流れの方向を示している。
【図12b】19個ペレットホルダトレイ用の代替的な熱阻流システムを示した図であり、ガス流れの方向を示している。
【図13】図12bの熱阻流システムの構成要素の概略斜視図である。
【図14a】19個ペレットホルダトレイ用の一体型ハチの巣状阻流システムの概略斜視図である。
【図14b】ハチの巣状の一部の概略図である。
【図15】酸化条件下と非酸化条件下との水素生成装置内で使用される厚紙ペレットホルダの熱出力を比較したDSCの記録線である。
【図16】酸化条件下と非酸化条件下の水素生成装置内で使用した後の厚紙ペレットホルダの写真である。
【図17a】ガス閉込要素とガス通気要素を備える代替的阻流システムの斜視写真である。
【図17b】ガス閉込要素とガス通気要素を備える代替的阻流システムの平面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1を参照すると、本発明の第1の態様による水素源で使用する円形の厚紙ペレットホルダが示されている。単一のペレットホルダ15は開放コップの設計であり、厚紙管16および厚紙ワッシャ17から形成されている。厚紙ワッシャ17は、厚紙管16の一方端部で内部に嵌められて取り外し可能な基部を形成している。厚紙ワッシャ17は、不要な熱または水素が隣接したコップ下に拡散することを防止するために締まり嵌めとなっている。(便利に、切削プロセスによる削り目が、ワッシャ17が滑り出るのを防止することが可能である)。コップの高さは2cm、内径は1.6cm、壁の厚みは1mmである。高温Hガスの通気が必要な場合、任意選択で、頂縁部付近の管16の1つの角度区分のみに丸穴の形態の通気孔18が設けられる。以下の図9で示されているように、ホルダ15は通常、実質的にその方向だけで通気を可能にするように、通気孔がアレイの中心から外方に配置された状態でアレイ内に配置される。
【0062】
任意の適切な厚紙使用されてもよいが、厚紙が充分に剛性であり、乾燥した環境で保管されており、望ましくない化学製品で汚染されていない(即ち処理または塗装されていない)ことが条件である。無漂白かつ非印刷の厚紙が適切であり、厚紙の積層または構成要素の製作には任意の接着剤(glue)が使用される。例えば管の形成は、生成装置の環境内で加熱される際不活性である接着剤、例えばでん粉またはポリビニルアルコールに基づいた接着剤を使用するべきである。(分解して出力水素ガス内に汚染物質を放出する可能性のある接着剤、例えば下流で使用されているPEM燃料電池に対して有害な製品、例えばシアノアクリレートなどは使用されるべきでない)。例えば、特に230から270g/mの範囲の軽量厚紙またはロケットペーパーが使用されてもよい。
【0063】
熱分解水素生成装置内の高温にも関わらず、発明者らは、厚紙は炭化せず、またHガス出力内で汚染物質も放出しないことを見出している。事実、厚紙は、非酸化水素雰囲気内で目視可能な劣化を示さないが、生成装置に空気が充填されると、これはホルダのほとんどを焼き尽くしてしまう。このことは以下の試験で確認された。
【0064】
ペレットホルダ(酸化雰囲気)
支持厚紙コップ内のアンモニアボランの3g(16mm直径)のペレット1つをPCB上で中心に位置決めし、密閉された試験生成装置の中に移転した。ペレットを、アンモニアボランを直接的に電気加熱することよって酸素の存在下で熱的に分解した。実験の事後分析から、厚紙ホルダが相当程度の目視可能な炭化を有することが判明した。
【0065】
ペレットホルダ(非酸化雰囲気)
実験は本質的に上記を繰り返したものであった。即ちアンモニアボランの3g、16mm直径のペレット1つを従来の手段によって密閉された試験生成装置内で熱的に分解したが、生成装置は最初に、アルゴンで浄化して空気の痕跡を全て除去し、水素でさらに洗い流して還元性雰囲気を確立した。実験の事後分析の後、ペレットホルダはその構造的完全性を保持していることが判明し、厚紙の目視可能な炭化は観察されなかった。図16は、使用後の厚紙ペレットホルダを示した写真である。(右側に示されたペレットが酸化雰囲気内のものである)。
【0066】
厚紙の分解に通常関連付けられる分解物(一酸化炭素、二酸化炭素、またはセルロースこう着剤など)は、通常動作中には発生されない。出力ガスがGC−MSおよびFTIR(フーリエ変換赤外放射計)によって特徴付けされた際に、そのような分解物に関連付けられるピークは見受けられなかった。例えば、FTIRを使用した詳しい分析はCOピークを示しておらず、その濃度は<0.1ppmであった(機器の検出限度)。
【0067】
酸化条件と非酸化条件で使用される厚紙材料の安定性を、さらなる実験によって、示差走査熱量測定(DSC)を使用することによって比較した。図15の通り再現された記録線は、記録された熱出力を示している。厚紙が酸化雰囲気内で使用される場合で、顕著な発熱現象のみが記録されている。
【0068】
携帯可能な燃料電池などの携帯機器用途に対して、厚紙ペレットホルダの軽量媒体と追加の絶縁性(他の絶縁体の必要が無くなる)とが、タフノル(tufnol)/セラミックのコップホルダ(重量が30%分大きい可能性がある)を使用した装置と比較して、最終装置において著しく大きなエネルギー密度が達成されることを可能にする。また、ここに示されているように、ホルダは通気または他の機能を可能にするように即座に適合されることができる。
【0069】
クロス点火が問題ではない場合は、例えば図7bで示されているように、ペレットホルダは、一体的な(一体型)厚紙網目または厚紙格子32の形態で連結されてもよい。厚紙が障壁または支持体33としても使用されてもよい。障壁または支持体33は任意の適切な材料の(個別のまたは連結された)ペレットホルダを取り囲んでもよい。図7aでは、正方形の支持体33が個々の厚紙ペレットホルダに追加の剛性をもたらしている。
【0070】
図2を参照すると、これは、本発明の第1の態様、第2の態様、および第3の態様による水素源で用いるペレットホルダを含んだペレットトレイアセンブリを示している。アセンブリは、円筒カートリッジ(図示せず)内に取り付けられて、水素生成装置を形成することを目的としている。水素生成装置は、例えば燃料セルに、携帯可能な電源として用いるために接続されることが可能である。
【0071】
通常、円筒圧力容器が好まれ、したがってペレットトレイ/アセンブリは円対称に基づいている。ペレットトレイアセンブリ1は、互いに重なるように取り付けられた円形ペレットトレイ2の細長い円筒スタック1を備える(しかし任意の配向で作動されることが可能である)。アセンブリは、異なる負荷要件を満たすように適合されることが可能なモジュール配置であるが、この配置構成では6個のトレイを備える。ペレットトレイ2毎に回路基板3を備え、回路基板3上には7個のペレットホルダ4が取り付けられている。各ペレットトレイのレイアウトが図3に示されている。ペレットホルダ4は六角形の配置に配置され(支持管5の間で)、7番目のペレットホルダが中心に置かれている。隣接したトレイ内のペレットホルダ4は、それらがスタック1を通して同じ位置を占めるように垂直方向に位置合わせされている。
【0072】
隣接したトレイ2の間に真ちゅう棒または支持棒5が延在し、それらはまた支持管5の上昇カラムを形成するようにスタック1を通して垂直方向に位置合わせされている。棒は好ましくは重量を軽減するために中空である。これらの支持管はスタックを一緒に連結し、かつそれぞれのトレイのペレットホルダに電気的接続をもたらすという二重の機能を果たす。一部の支持棒は、スタック1の内側に位置付けられた他のセンサまたはデバイス、例えばサーミスタ(図示せず)に電気的接続をもたらすと同時に剛性をもたらすためにも設けられてもよい。
【0073】
この実施形態では、各トレイの高さに関連付けられた1セットの棒があり、棒はほぼペレットホルダと同じ長さである。管5の上端部と下端部は、隣接したそれぞれのトレイ上に取り付けられた環状の伝導性ピングリップ6内にしっかりと保持され、上端部は好ましくはピングリップ6の中にはんだ付けされている。図5aおよび図5bを参照すると、ピングリップ6は各トレイの両面を超えて延在するが、それらは主に上面7から上方に突き出ている。
【0074】
回路基板の下表面9に円形ダストフィルタ/シール8が取り付けられている。ここで分かるように、一方向に流れることを保証するためにそれぞれのペレットホルダ4の下にダイオード10が位置付けられ、ダイオードおよびピングリップ6はシール8を通って突き出る。スタック1の頂端部は端部キャッピング回路基板11で密閉され、底端部はコネクタ13が設けられた追加のスタック接続回路基板12を有している。
【0075】
図4は、装填され、使える状態にある単一のペレットホルダ4の構成要素の分解図を示している。実際のペレットホルダ4は、それ自体に厚紙支持ディスク20と、円筒厚紙ハウジングまたは管30と、ハウジングの内側に差し込まれた厚紙保持輪26とを備える。
【0076】
厚紙支持ディスク20の頂部上には、雲母ディスク21と、ポリイミド裏地層22と、加熱コイルの形態の点火装置/始動装置23とが置かれている。次いで、ハウジング30に再生可能な化学構成要素、即ち熱混合ペレット24と、水素生成ペレット、この場合には加圧されたアンモニアボランのペレット25とが装填される。後者は、管30の内部にぴったりと嵌る厚紙保持輪26によって定位置内に保持される。絶縁のため、また上のトレイへのHガスの著しい上方への流れを防止するように、アルミニウムの紙蓋27、アルミニウム箔蓋28、およびグラスウール栓29が順にペレットの上に置かれる。
【0077】
各ペレットホルダ4は、加熱コイルの両端部を形成する下方に延在する一対の導電性フランジ14によって回路基板3にピン固定される(図3で示されている)。6つの外側ペレットホルダ4はそれぞれ、クロス点火を防止するように、管30の外方に向いた部分上に部分的に穿孔され(第3の態様によって)、穿孔31は、高温の生成Hガスを他のペレットホルダ4から離すように向ける。管30の内部に配設された保持輪26は、対応して位置合わせされた一致する穿孔を有している。中央のペレットホルダ4は他のホルダによって取り囲まれ、最後に点火される。中央のペレットホルダ4は穿孔を有さず、したがって横方向のガス流れから保護される。
【0078】
スタック1は最初にスタック連結回路基板12を、次いで個々のペレットトレイ4を組み立てることによって組み立てられる。後者に関しては、厚紙ハウジング30内の穿孔31は、外方に向くことが必要であり、内側の構成要素は充分な接触を保証するように小型化されている。特に、熱混合ペレット24は点火コイル23および水素生成ペレット25と密に当接する関係であることが必要である。
【0079】
最も低いペレットトレイ4が、短い長さの1セットの支持棒5を使用してスタック接続回路基板12の上に置かれる。次いでそれぞれの個々の「完全な」トレイモジュール4が加えられる。この特定の配置構成において、標準長さの(長い)支持棒5が、特定のトレイから下方に延在するようにピングリップ6の下側に恒久的にはんだ付けされ(図8b参照)、直ぐ下のペレットトレイ4上に取り外し可能に取り付けられ、そのトレイから1セットのペレットホルダが上方に延在する(鍾乳石および石筍と似ている)。「完全な」トレイモジュールが図2にブラケットAによって示されている。その後、必要な数の「完全な」ペレットトレイモジュールが連続的にスタックに加えられ、圧縮されて堅固なスタックを保証する。次いで端部キャッピング回路基板11が頂端部の定位置内に固定される。
【0080】
スタック1は、ペレットが装填されると、まず上端部から任意の適切なカートリッジの水素生成圧力容器の中に挿入されることが可能である。適切なカートリッジには、例えば当業者に知られている(また例えば国際公開第02/18267号パンフレットで述べられている)通りのカートリッジなどがある。スタック接続回路基板12は、圧力容器を密封する適切な界面/端部キャップに接続される。
【0081】
この配置では、円形トレイの直径は5.6cmであり、円形ペレットホルダの直径は1.6cm以下であり、高さは2cm以下である。各ペレットホルダは1gのアンモニアボランを保持することが可能であって、7個ペレットトレイは42gのアンモニアボランを保持し、74リットルのHガスを生成する能力がある。例えばこの寸法のスタックであれば、50Wの燃料電池を2時間電力供給するのに適しており、したがって50Wのデバイス、例えば携帯用TVカメラまたはラジオ機器などに電力供給するのに適している。
【0082】
好ましい点火シーケンスであれば、各トレイ内の中央ペレットの点火が最後にされて、各トレイ内の外側ペレットが最初に点火される。同じトレイ上の隣接したペレット、あるいは上または下のトレイ内で密接して位置付けられた隣接したペレットの点火を回避するために、ホットスポットの発生を回避するために、スタックのまわりのペレットの点火をずらす(例えば片側ずつ交互に)ことも好ましい。
【0083】
必要な場合、大型トレイ上で6個ペレットホルダの外側にペレットホルダの追加の大きな輪が配置されることが可能であるが、ペレットホルダがここでも外方に向いた穿孔のみを有することを前提とする。このような19個ペレットトレイ19が図9に示されている。点火シーケンスは、ペレットの最も外側の輪が、ペレットの次に最も内側の輪が始動される前に、完全またはほぼ完全に点火されることを保証する限り、より中心に位置付けられた未点火のペレットのクロス点火を回避することが可能である。このような配置および方法は本発明の第3の態様によるものである。
【0084】
実施例
実証試験で、スタックに1gペレットのアンモニアボラン(AB)を42個装填し、目的に合うように設計された界面制御システムによって密閉された実験用カートリッジの中に挿入して、試験用水素生成装置を形成した。これを100WPEM燃料セルに連結した。カートリッジをアルゴンで洗い流し、次いでHで加圧した。AB燃料、カートリッジ、および燃料電池の総システム重量は3.47kgであった。
【0085】
試験は51分間続き、制御システムは、47個のペレットのうちの32個だけが活動化されるように42分後に早期に引き外した。測定された平均電圧は13V以下であり、測定された平均電流は3.5A以下であり、計算された平均電力は46W以下であった。これらが合わされると設定に対して58Whの総エネルギーとなる。平均電力密度(3.47Kgシステムに対して)は13W/Kgであった。
【0086】
さらなる試験で、同じ水素生成装置に再装填した。装填は7.5A以下、11V以下に増大されて、ピーク時電力出力80W以下を達成した。これを容易に数分間維持することができた。ソリッドステートシステムとしての熱分解水素生成装置は本来頑丈であるが、このスタックの配置構成は特に頑丈かつ信頼が置けることが判明している。さらなる試験で、システムは上方に、下方に、および両方に(即ち360°にわたる4つの配向で)うまく作動され、ダイナミックな配向への非依存性を呈示することが判明した。
【0087】
当業者には明らかなように、現配置構成に対して、本発明の上述の様々な態様に尚も従って多数の修正形態をなすことが可能である。例えば、近隣のトレイから棒5(およびピングリップ6)の間に直接接続がなされることが可能であるように、また構造的剛性が最適化されることが可能であるように、支持棒5がスタック1全体を通して同じ位置を占めることが極めて好ましいが、例えば、トレイ上の回路基板を介して、近隣のトレイの位置合わせされていない支持棒に電気的接続がもたらされなければならない場合には、他の配置構成を使用することも可能である。これは、隣接したトレイが異なる配置構成を有すること、例えば2つのタイプのトレイを交互に配置する中に2つの異なるタイプの回路基板を置くことを意味し、これには、本配置構成の両タイプの接続ではなく、むしろ上方への電気的接続または下方への電気的接続のいずれかのみをもたらす追加のピングリップを設けることが必要である場合がある。
【0088】
円形ペレットホルダおよび円形トレイを備えるこのペレットトレイの配置構成が好ましいが、他のホルダ/トレイの配置構成も可能である。
【0089】
この個々の支持棒セットは、即座にスタックを解体し、トレイを追加/除去することを可能にする。図8bで示されているように、各支持棒5(短い)は、ピングリップ6の基部の中へのはんだ接合部34によってPCB3の下側に固定されて、下のトレイのピングリップ6へ下へ延在している。しかしながら、各トレイモジュールを組み立てることは時間がかかり、はんだ接合部34が壊れる場合もある。したがって、スタックの最終的な寸法が変わる可能性が低い場合、個々の短い支持棒セット5は、スタックの最終的な寸法と同じ長さの支持棒5の単一セット5’と置き換えられてもよい。図8aおよび図8cにこのような棒が示されている。図8a、図8b、および図8cにおいて、ピングリップ6はPCB3の上側および下側(下側は示されていない)の両方を通過し、それらから突き出て、それらの中の長い棒5’または短い棒5のいずれかを使用することを可能にする。図8aでは、手で個々に全スタック長の棒5’(150mm)をピングリップ6のラインを通して自由に挿入することによって、それぞれのトレイ3が一緒に連結され、その後全ての棒5’が挿入されてから各端部に固定される。図8cでは、全スタック長の棒5’が一方端部で頂部板PCB35にはんだ付けされ、次いで各トレイ3が開放端部からスタック1上に滑動され、その近隣部にしっかりと押し上げられ、20極機器用コネクタ37を支承するコネクタPCB36が取り付けられる。
【0090】
次に図10から図17を参照して、本発明の第4の態様による、水素生成要素のクロス活動化を軽減する助けとなることを目的とした様々な熱阻流システムが述べられる。これらのシステムは全て、例えば本発明の他の態様のうちのいずれかの1つ以上による、水素生成材料が使用中装填される上述のような熱分解水素生成装置内で使用されることができる。しかしながら、システムは、アンモニアボランの熱分解に基づいた水素生成装置、特に熱管理の必要があるもの、例えば生産量が大きくかつ/または保管容量が大きいものに特に適している。例えば、15W以上の電力要件を有した燃料電池の用途で、あるいは平均で0.1から0.2slpm(標準毎分リットル)以上の水素生産量が必要な非燃料電池用途で、余剰熱の管理が必要となる可能性が高い。
【0091】
最初に図10aおよび図10bを参照すると、これらは、これらは2つの代替的熱阻流システム40、42を示しており、両方とも、例えば上述の図3で示されているような、トレイ(図示せず)上の7個厚紙ペレットホルダ44のアレイにぴったり合うように設計された、アンモニアボランのペレットを含んだ、7つのセルを備える一体型格子配置構成である。いずれの場合であっても、外方に向いた穴またはスリットのみを有した厚紙ペレットホルダ44を用いて使用されることになる。これらは、上述の図2内に表わされた7個ペレットトレイ内に示されているように小さな角度(50°未満など)にわたって広がることが可能となり、あるいは以下の図11bおよび図11cに関連して説明されるように、垂直方向に互いに重なるように配置され、特定角度に位置付けられることも可能となる。入れ子状セルの構成(阻流要素によって画定されたセルの中にハウジングによって画定されたセル)は、ガス流れの制御方法に対して可撓性をもたらす。
【0092】
各一体型阻流システムでは、中央ペレットホルダを中央ハブ46が取り囲み、中央ペレットホルダの備える翼48が半径方向かつ対称形に外方に延在して、外部輪50に連結する。各システムで、ハブおよび翼の壁は無孔性(即ち貫通開口を有していない)であるが、外側輪の壁は多孔性である(即ち、好ましくは少なくとも1mm幅の貫通開口を有している)。「多孔性」には、穿孔、スリット、スロット、網目、または任意の他の適切な穴、切込みなどが含まれる。最も外側のペレットが中央ペレットよりも前に点火されることになる。無孔性壁は、高温ガスまたは粒子が、側方(横向き)に1つのセルから外側輪内の隣接したセルに、あるいは内方に中央ペレットホルダに移動することを実質的に防止する。これはクロス活動化が起こる可能性を軽減する。クロス活動化は、消失効果、または実際に近隣のペレットの熱暴走(runaway)をもたらす可能性がある。多孔性の外側輪壁は、外方通気ペレットホルダと組み合わせて、例えば穿孔、スロット、スリットが施され、網目で製作され、または同様な多孔性であってもよく、ペレットそれ自体から高温ガスが外方に通気することを可能にする。
【0093】
図10aでは、円形の外側輪阻流要素50にスポークが連結しているが、図10bではこれが星形状の周囲阻流要素50’によって置き換えられている。後者の方が、大きな表面積を有し、セルの中に残留物を収容することが可能な死容積52を有しているという点で好ましい。(アンモニアボランの場合には、分解されたペレットからの発泡性残留物が問題を引き起こす可能性がある)。
【0094】
阻流システムは、水素生成装置雰囲気内では非反応性である、通常は金属性の(好ましくは軽量の)導電性材料から形成されるが、その例にはアルミニウム、銅、またはチタン、あるいはそれらの合金が含まれる。この場合には、アルミニウム箔のハブおよび翼とアルミニウム網目の外側輪が使用された。金属スポーク、ハブ、および外側阻流要素は全て、点火しているペレットから熱を奪い、その熱を極めて広い区域にわたって放散させ、そのようにしてホットスポットを最小化する働きをする。網目の外側輪を使用することが特に好まれるが、これは、網目の大きな表面積が、その開口部を通過するガスを冷却すること、ならびにガスを外方に向けることに特に効果的であることによる。
【0095】
両システムは、ペレットホルダと同じ高さまたはそれよりも高くてもよく、スタック内のペレットの層を支持するのに充分に剛性であることができ、圧縮下にある際に層間の正確な離隔をもたらしてもよい。阻流要素は、ホルダのそれらの相対的位置での横への移動も防止する。これは、ホルダがそれ以外の方法でトレイに固定されていない場合に特に有利である。
【0096】
図17aおよび図17bは、ガス閉込阻流要素とガス通気阻流要素を備える代替的阻流システムの斜視図および平面図それぞれを示す写真である。図10の阻流システムは熱伝導性のガス閉込阻流要素とガス通気阻流要素から形成されていたが、この阻流システムでは、ガス閉込阻流要素は厚紙から形成され、図10aの実施形態で使用されているように、円形網目外側ガス通気阻流要素40の内側に設置されている。
【0097】
図11aから図11fは、19個ペレットホルダトレイ用の様々な代替的熱阻流システムを示している。19個ペレットホルダトレイ上では、中央のペレットホルダが同じ寸法の6個ペレットホルダ54の外側輪によって取り囲まれており、この輪は12個ペレットホルダ56の連続したより大きな外側輪によって取り囲まれている。図11bおよび11cは、それぞれ図10aおよび図10bと同じ阻流システムを表しているが、ここでは19個ペレットの配置構成で設置されている。
【0098】
徐々に大きなペレットを多数輪アレイの連続した外側輪内で使用することが有利であることが判明している。例えば、2つの同心輪を備える19個ペレットトレイでは、阻流システムに関わらず、全体に同じ寸法のペレットが使用され、中央部のペレットが大きすぎる場合、熱出力がクロス活動化を引き起こす。しかしながら、このようなペレットのより大きな寸法は、ペレットがさらに離隔された外側輪内では許容されることが可能であって、クロス活動化を起こさずに充填密度が最大限にされることを可能にする。このように、この場合では、トレイ全体に19mmのペレットを使用すると中央部内でクロス活動化が引き起こされるが、トレイ全体に16mmのペレットを使用することは容認可能であった。しかしながら、中央の16mmのペレットに沿って外側輪内に18mmのペレットを使用することも容認可能であり、充填密度を最大限にすることが判明している。
【0099】
ペレットホルダには全て、特定角度72のみで方向性のある通気をもたらす通気孔70の垂直カラム(図14aで示されているものと類似)が設けられており、通気孔は常に外方に配設された死空間(空所)74の方に向けられている。さらに、内方に配設されたペレットホルダ内の通気孔は常に、次の外側輪内の隣接したペレットホルダ対の間の隙間76に位置付けられている。
【0100】
各図では、全てのペレットホルダの通気方向が印72によって示されている。全ての配置構成において、阻流システムは一体型格子の配置構成である。システム内の阻流要素は全て無孔性であることができ(以上で規定されているように)、そのようにして側方への通気を防止し、ガスを垂直方向に通気させ、あるいは全てが実質的に多孔性であることができるが、その場合には、通気はペレットホルダ内で構築された方向性に従う傾向があるが、ガスは他の横方向にも移動する。しかしながら、好ましくは半径方向外方に延在する全ての阻流要素は無孔性、即ち貫通開口を備えない中実壁が付けられ、外側輪形状の阻流要素は全て実質的に多孔性である。
【0101】
ペレットの内側輪はより密に充填されており、クロス活動化を起こし易いことから、ペレットの内側輪のまわりに阻流システムを使用することが極めて必要であり、望ましい(重量の理由から)場合がある。しかしながら、図11eおよび11fの配置構成は、阻流システムに、最大の熱質量、したがって熱を非局在化および放散させてクロス活動化を防止するよう能力を与える。
【0102】
実施例
円形の阻流設計50を備える、またはそれを備えていない図11bのペレットトレイの配置構成で実験を行った。ボードは円周まわりの18mmのペレットと、16mmの内部ペレットの内部輪と、中心の1つのペレットとを組み込んでいる。両方の実験で、水素のバックフィル(10バール)を用いて試験用生成装置を使用し、生成装置の高い保管/作動温度を擬似するために40℃に調整した。始動シーケンンスは、円周まわりの18mmのペレットを分解し、次いで内側層のペレットを始動することからなった。
【0103】
内側のペレットのクロス活動化は、(i)外側輪から分解したペレットからの高温ガスの対流と、(ii)外側輪と比較してペレットの位置がより接近していることによる、内側輪のペレットの始動から出る熱の対流との結果として起こる。
【0104】
アルミニウムの網目の阻流板50は、外側輪からの高温ガスを消散/冷却することによって両方のクロス活動化のシナリオに対処し(阻流板を超えたところで50℃の温度落下が観察されている)、中実の離隔器(スポーク)は側方のガス流れに対して物理的な障壁として働く。阻流板を用いない場合に内部ペレットのうちの全部で28%がクロス活動化した(あるいはトレイ上の全ペレットを考慮すると全部で18%のペレットがクロス活動化した)のに対して、阻流板を使用すると内側輪のペレットは全くクロス活動化しないという結果となった。
【0105】
図12aおよび図12bは、19個ペレットホルダトレイ用のさらなる2つの熱阻流システムを示している。トレイはここでも中央のペレットホルダとペレットホルダの同心の2つの外側輪とを備えており、最も外側の輪はより大きなペレットホルダを含んでおり、阻流システムが、中央ペレットホルダと次の隣接した外方に配設された輪とのまわりにのみ位置付けられている。これらのシステムは、迅速かつ容易に組み立てられることができ、円周方向に延在する阻流板80を使用することを伴う。阻流板80は、網目の輪と、区分化された、半六角形の中実壁が付けられた、全て定位置内に落とされた阻流要素82を備える。これは図13内に示されている。図13は、図12bの熱阻流システムの構成要素の概略斜視図である。
【0106】
ペレットホルダは単に識別し易いように番号付けされており、番号付けはそれらの点火シーケンスを示すものではない。
【0107】
ここでも、ペレットホルダには全て、各ペレットホルダの中心から外に延びた半径84によって表わされている通りの特定の角度でのみ方向性のある通気をもたらす通気孔の垂直カラム(図14aで示されているものと類似)が設けられている。いずれの配置構成においても、通気孔は常に死(空所)空間86に向けられている。さらに、内方に配置されたペレットホルダ内の通気孔は常に、次の外側輪内の隣接したペレットホルダ対の間の隙間88に位置付けられている。したがって、図12aでは、内側ペレットホルダ17番は、外方に配設されたペレットホルダ10番と11番の間の空所の方に通気することが分かる。後者の最も外側のペレットホルダも同様に、外方に配設された死空間へと通気する。
【0108】
図12aでは、区分化された阻流要素が対称形に配置され、半径方向外方にリムが延在する。ここでは内側輪内の隣接したセルの間に阻流要素の2つの厚みが互いに並んで位置するという利点がある。しかしながら、発泡性残留物も直接網目阻流要素上に放出され、それが網目の遮断を引き起こす可能性がある。図12bでは、半六角形は、セルの中で非対称の死角90を作り出すように(外側ペレットホルダ内の隙間に隣接して)様々に配向され、内側輪のペレットホルダの通気は、通気が死空間に向けられるように、ずらされ(純粋に半径方向ではなく)、それによって網目の阻流要素の遮断を最小化している。このように図12bでは、ペレットホルダ17番は、外方に配設されたペレットホルダ11番と12番の間の空所88へと通気することが分かる。
【0109】
典型的な点火シーケンスでは、外側のペレットは一般的に内側のペレットの前に点火されるが、外方に配設された隣接したペレット対が点火されるが否や内側のペレットが点火されることが可能である。したがって図12aでは、ペレットホルダ10番と11番が点火された後に、ペレット17番が点火されることが可能であり、ペレット17番は既に点火されたペレット上にのみ通気する。
【0110】
図14aおよび図14bは、上述の図9のものと類似の19個ペレットホルダトレイ用の代替的熱阻流システムを示している。図14aはトレイ全体の斜視図であるが、阻流システムの一部分92のみを概略的に示し、図14bは阻流システムによって形成されることになる、それぞれ円形のペレットホルダを含んだ隣接した3つのセルを示している。このトレイでは、ペレットホルダは六角形状に密に詰められ、全て同じ寸法である。それらは、例えば押し出し(拡張)アルミニウムなどの押し出し金属から構築された六角形の、ハチの巣状の、既成の阻流システムによって離隔されている。このような金属製のハチの巣状構造物は、様々なセル寸法およびセル高さのものが入手可能である。それらは軽量で可撓性があり、それらが折り畳み式に縮小/拡大し、アレイの一部(中央部分など)または全体の上で使用されることができることから、迅速かつ容易に設置することができる。それらは、ペレットトレイのスタックに剛性および構造的支持を実現することもでき、それによって衝撃下および/または振動下のスタックの偏位を防止することができる。ハチの巣状セルの高さは、スタック内の隣接したペレットトレイ間の適正な離隔をもたらすように選択されることができる。金属阻流システムはここでもペレットから退出するガスを冷却する吸熱器となり、その熱を非局在化し、ハチの巣が中実壁を有する場合には、側方の高温ガス噴煙がペレットを順序から逸脱させてクロス活動化してしまうことを物理的に妨害する。絶縁材料で製作された折り畳み可能なハチの巣構造物も市販されており、使用されてもよい。
【0111】
ハチの巣構造物は、ガスの側方の循環を最小化するように、通常中実(無孔性)の壁が付けられるが、ハチの巣構造物に穿孔、スリット、またはスロットなどが開けられてもよい。この実施形態では、ハチの巣構造物は穿孔され、ガス流れの方向はペレットホルダ内の外方に通気する通気孔によってのみ制御された。この場合、通気孔は、ホルダの円周上の特定角度/点のみで垂直方向に互いに重なるように位置合わせされた穴のカラム70であった。内方に配設されたペレットホルダ上の通気孔は、隣接した近隣の外方に配設されたペレットホルダ対の間の隙間へと通気するように位置合わせされていることが分かる。
【0112】
当業者には、本発明の上述の様々な態様に従いながら、現配置構成に対して多数の修正がなされることが可能であることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並べて配置され、ガスがアレイの中心に対して側方に外方向のみに退出することを可能にするように設計された方向性のある通気が設けられた仕切りによってセルに互いに離隔された水素生成要素のアレイを備える、熱分解水素生成装置。
【請求項2】
水素生成装置の熱分解の始動が、制御システムによって、水素生成要素が外方に未点火の隣接した水素生成要素へと通気するのを最小化または回避するシーケンスで制御される、請求項1に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項3】
方向性のある通気が、退出するガスおよび退出する排出物を隣接した、外方に配設された空所に向ける、請求項1または2に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項4】
アレイ内の内方に配設された水素生成要素用の方向性のある通気が、退出するガスおよび退出する排出物を外方に配設された近隣の水素生成要素の間の隙間に向ける、請求項3に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項5】
水素生成要素が水素生成材料のペレット(複数可)を備え、仕切りが、ペレットを取り囲む、外方に向いた通気孔のみを有する個々のハウジングを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項6】
ハウジングが、それらの間に延在する、それらを個々のセルのさらなる1セットに仕切る阻流板のシステムによってさらに取り囲まれる、請求項5に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項7】
阻流板が、外方にハウジングに隣接するように配設された指定された空所を含むセルの境界を画する、請求項6に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項8】
ハウジング内の外方に面した通気孔が、退出するガスおよび退出する排出物を阻流板の内側の指定された空所に向ける、請求項7に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項9】
阻流板が、それらの表面積のほとんどが、ガスが表面積を自由に通過することを可能にするように実質的に多孔性である、請求項6または7に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項10】
阻流板が一体型格子の配置構成として形成されている、請求項8に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項11】
並べて配置された水素生成要素のアレイと、隣接した水素生成要素の間を、個々のセルに仕切るように延在する阻流板のシステムとを備え、前記システムがガス閉込阻流要素とガス通気阻流要素とを備え、それらの要素が通気ガスの横方向を制御する、熱分解生成装置。
【請求項12】
ガス通気阻流要素が熱伝導性の材料で製作されている、請求項11に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項13】
ガス閉込阻流要素が熱絶縁性の材料で製作されている、請求項11または12に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項14】
ガス閉込阻流要素とガス通気阻流要素が熱伝導性の材料で製作されている、請求項11または12に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項15】
阻流板のシステムが水素生成要素を、アレイの中心に対して連続して内方に配設された2つ以上の隣接するセル領域に仕切る、請求項11から14のいずれか一項に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項16】
前記領域のうちの1つの全てのセルが、高温ガスが前記領域内の隣接するセルの間を循環することを防止するガス閉込阻流要素を備える、請求項15に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項17】
前記領域のうちの1つの全てのセルが、高温ガスが、前記セルの領域からアレイの中心に対して外方に通気することを可能にするガス通気阻流要素を備える、請求項15または16に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項18】
ガス通気阻流要素が実質的に多孔性である、請求項11から17のいずれか一項に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項19】
阻流板のシステムによってセルに仕切られた水素生成要素の円形アレイを有し、1つ以上のセルの中央領域と、1つ以上の連続して外方に配設されたセルの環状領域が存在する、請求項11から18のいずれか一項に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項20】
阻流板のシステムが、セルを形成するように、半径方向に延在するガス閉込阻流要素によって交差された、円周方向に延在するガス通気阻流要素の2つ以上の同心輪を備える、請求項19に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項21】
最も外側の円周方向に延在する阻流要素が水素生成要素のアレイの外側周囲部を取り囲む、請求項20に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項22】
最も外側の円周方向に延在する阻流要素が、水素生成要素のアレイの外側周囲部を取り囲み、水素生成要素の熱分解から排出物を収容するための、周囲部を超えて延在する死空間の各セル上に突出部分を含む、請求項21に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項23】
並べて配置された水素生成要素のアレイを備え、隣接した水素生成要素を個々のセルに仕切るようにそれらの間に延在する阻流板のシステムを有し、前記システムが、アレイを覆うように配設された、折り畳み可能なハチの巣構造物から形成された一体型格子の配置構成を備える、熱分解水素生成装置。
【請求項24】
熱的に分解可能な水素生成材料を受け取る複数の受け器を備えるトレイアセンブリを備える圧力容器を備え、トレイアセンブリが厚紙の構成要素を備える、熱分解水素生成装置。
【請求項25】
熱的に分解可能な水素生成材料を受け取る複数の受け器を備える圧力容器と、受け器に関連付けられた、分解を始動する始動システムとを備え、受け器が厚紙受け器である、熱分解水素生成装置。
【請求項26】
厚紙受け器がそれぞれ個別の厚紙ハウジングである、請求項25に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項27】
各厚紙受け器が、厚紙管と任意選択の第1厚紙端壁あるいは第1厚紙端壁および第2厚紙端壁とを備える、請求項25または26に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項28】
各厚紙受け器がそれに関連付けられたそれぞれの点火装置を有している、請求項25から27のいずれか一項に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項29】
厚紙ハウジングが直接回路基板上に取り付けられている、請求項25から28のいずれか一項に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項30】
厚紙ハウジングが、ハウジングから発生された水素の流れを方向付ける通気孔を有している、請求項25から29のいずれか一項に記載の熱分解水素生成装置。
【請求項31】
スタックを形成するように複数の支持棒によって互いに重なるように取り付けられた複数のペレットホルダトレイを備える熱分解水素生成装置で使用し、各トレイが複数のペレットホルダと、それに関連付けられた、使用中にそれぞれのペレットホルダの中に装填されたペレットに点火する点火装置とを備え、支持棒がまたスタック内に電気的接続をもたらす、モジュール式ペレットトレイアセンブリ。
【請求項32】
支持棒が点火装置を作動させる電気的接続をもたらす、請求項31に記載のアセンブリ。
【請求項33】
支持棒がスタックの長さ全体に延在する支持棒のカラムを形成する、請求項31または32に記載のアセンブリ。
【請求項34】
各カラムがスタックとほぼ同じ長さの単一の支持棒から形成される、請求項33に記載のアセンブリ。
【請求項35】
1セットのペレットホルダと、ペレットホルダとほぼ同じ長さの1セットの支持棒とを含んでいる完成トレイから形成され、スタックが各完成トレイを上下に重ねることによって既に組み立てられている、請求項31から33のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項36】
支持棒が、各トレイ内に位置付けられた導通性の棒または溝の中に受け取られる、請求項31から35のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項37】
それぞれのトレイのペレットホルダが、ペレットホルダのカラムを形成するようにスタック全体を通して位置合わせされている、請求項31から36のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項38】
ペレットホルダがそれぞれ厚紙ハウジングを備える、請求項31から37のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項39】
熱分解水素生成装置で使用する、複数のペレットホルダを備える少なくとも1つのペレットホルダトレイを備え、より外方に配設されたペレットホルダの少なくとも一部が外方に向いた通気孔のみを含んでいる、ペレットトレイアセンブリ。
【請求項40】
少なくとも1つのペレットホルダトレイが、より内方に配設されたペレットホルダよりも前に最も外側のペレットホルダに関連付けられた点火装置を始動するように適合された点火制御システムによって制御される、ペレットホルダのそれぞれに関連付けられた点火装置を備える、請求項39に記載のペレットトレイアセンブリ。
【請求項41】
水素生成装置において、最も外側のペレットホルダに関連付けられた点火装置が、より内方に配設されたペレットホルダよりも前に始動される、請求項40に記載のペレットトレイアセンブリを作動させる方法。
【請求項42】
前記請求項のいずれか一項に記載のペレットトレイアセンブリを備える熱分解水素生成装置。
【請求項43】
添付図面を参照して以上に述べられたペレットトレイアセンブリまたは熱分解水素生成装置。
【請求項44】
前記請求項のいずれか一項に記載の熱分解水素生成装置を備える、携帯用機器。
【請求項45】
以上に述べられた任意の新規の特徴または新規の特徴の組み合わせ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図8c】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10a】
image rotate

【図10b】
image rotate

【図11a】
image rotate

【図11b】
image rotate

【図11c】
image rotate

【図11d】
image rotate

【図11e】
image rotate

【図11f】
image rotate

【図12a】
image rotate

【図12b】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14a】
image rotate

【図14b】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17a】
image rotate

【図17b】
image rotate


【公表番号】特表2011−500496(P2011−500496A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529441(P2010−529441)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003475
【国際公開番号】WO2009/050443
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】