説明

水素生成

燃料を酸素と水蒸気の両方を含むガスと結合させ、生じた混合物を、対置された電極間でマイクロ波プラズマ発生器によって生成されたプラズマを通すことによって、炭化水素燃料から水素を生成する方法および装置が提供される。電極のうちの少なくとも一方は、プラズマ近傍からガス物質を流出させるためのダクトを画定し、流出ダクトから流出するガス混合物は水素を含有する。燃料は部分酸化と水蒸気改質を受け、触媒によってではなくプラズマによって反応が開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素、特に、これに限定されないが、ディーゼル燃料などの長鎖炭化水素から水素を生成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素および酸素(空気中からの)を消費する燃料電池は、クリーンで効率的な電力源を提供するのに有望視されている。しかし、これは結果的に、水素を生成するための効率的な、およびそれに対応してクリーンな方法を必要とすることになる。例えば、内燃機関用のディーゼル燃料に対する既存の流通ネットワークを介して、現在広く入手可能な炭化水素から、水素を生成することができれば好都合である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の点から、本発明は、炭化水素燃料から水素を生成する方法を提供するものであり、この方法は、
燃料を、酸素および/または水蒸気を含むガスと結合させることと、
燃料とガスの混合物を、反応器内の対置された電極間でマイクロ波プラズマ発生器によって生成されたプラズマを通過させることを含み、
電極のうちの少なくとも一方は、プラズマ近傍から物質を流出させるためのダクトを画定し、
その結果、流出ダクトから流出するガス混合物は水素を含有し、
燃料と、酸素および/または水蒸気を含むガスとが反応器に入って、電極周辺で燃料とガスの混合物の渦を生成する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
好ましくは、燃料は、酸素と水蒸気の両方を含むガスと結合される。
【0005】
典型的には、反応器への1つまたは複数のガス/燃料入口がある。ガスおよび燃料は反応器に入り、電極周辺で燃料とガスの混合物の渦を生成する。渦巻き状態の燃料とガスの混合物によって、燃料とガスの混合物が、2つの電極間の電池の中心で渦を生成し、それによって、燃料が、酸素および/または水蒸気を含むガスと良好に混合されるようになる。本発明の一実施形態においては、燃料/ガス入口は、燃料とガスの混合物が電極周辺で渦を巻くときの燃料とガスの混合物の運動方向に対して接線方向にある。したがって、燃料/ガス入口は電極の長手軸上に中心を有する円に対して接線成分を有する。すなわち、入口は、入口と電極の長手軸とを結ぶ線に対して、非ゼロの角度成分を有する方向にある。電極のうちの一方を通してガス混合物の流出ダクトを設けることによって、反応器内の渦の生成が支援される。さらに、電極のうちの一方を通してガス混合物を除去することによって、電極が最も接近している場所のガス圧力が低下する。ガス圧力が低下することによって、反応器が大気圧またはそれよりも高い圧力(好ましくは後者であり、例えば、最大7気圧の圧力)で作動する場合、プラズマは衝突を維持し(放電を開始し)、持続されることができる。流出するガス混合物を固体酸化物燃料電池に供給するときは、最大2.3気圧の圧力が特に望ましい。電極のうちの一方を通してガス混合物を除去することによって、流出ダクトへの入口がプラズマ内に位置するので、ガスがプラズマを通過する可能性もまた高まる。このことは、本発明の利点である。
【0006】
ガス混合物が流出ダクトに入ると、典型的には水素改質が発生し、その結果、典型的には、流出ダクト内にプラズマの尾が存在する。このプラズマの尾で反応が続き、それによって水素の産出量が増える。必要ならば、テールパイプ内に適切な改質触媒を配置することによって、この産出量をさらに増やすことができる。
【0007】
流出ダクトから流出するガス混合物もまた、一酸化炭素、および可能であれば二酸化炭素などの他のガスを含有し、この流出するガス混合物を後続の方法ステップで処理する必要がある可能性もあることは理解されよう。明らかに、これは、水素が利用される用途に依存している。ガス混合物が高分子電解質膜(PEM)燃料電池に供給される場合には、実質的に一酸化炭素を含まない混合物が必要である。一方、固体酸化物燃料電池(SOFC)は、水素と一酸化炭素との混合物を直接使用することもできる。流出するガス混合物は、主として、水素と一酸化炭素からなり、これが、「水性ガスシフト反応」(すなわち、一酸化炭素を水蒸気と反応させ、さらに水素(および二酸化炭素)を生成する)を受ける。必要に応じて、残っている一酸化炭素を、選択的酸化プロセスによって、酸素と反応させてもよい。代替的な方法では、パラジウム合金膜などの膜を用いて、一酸化炭素から水素を分離する。
【0008】
典型的には、マイクロ波反応器は外側の金属ブロックを含み、この金属ブロックは、マイクロ波に対して高い透過性を有し、成形、機械加工または形成しやすく、改質温度(典型的には、600℃超)で使用可能な材料でできた、内側の交換可能な挿入体と共に格納容器として作用する。適切なマイクロ波透過性材料は、反応器が作動する温度に応じて選択される。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が低い改質温度に適し、マイカ、アルミナおよび石英は高い改質温度に適する。挿入体の内側部分は、円筒形チャンバの形状に機械加工される。円筒形チャンバには、1つまたは複数の接線方向のガス入口を通って燃料とガスの混合物が入り、燃料とガスの混合物内で渦が発生して、挿入体の中心に向かって位置する電極ペアのうちの一方を通ってガスが出るときに、渦を生成する。マイクロ波反応器はまた、マイクロ波透過性挿入体なしに、チャンバとして作動してもよく、チャンバは通常は内部で挿入体が嵌合し、渦を発生し、この効果を高めるような形状にすることができる。
【0009】
マイクロ波プラズマ発生器は、マイクロ波電力を連続的に、またはパルス的に提供してもよい。パルス状のマイクロ波を用いることによって、電源は、プロセスによって使用される全エネルギーを低減できる利点を有する。
【0010】
プラズマの効果は、遊離基を生成し、ガスを加熱し、これにより、化学反応をより高速に進行させることである。水蒸気改質および部分酸化を生成する2つの主反応が生じる。水蒸気改質は吸熱反応であり、典型的には、約650℃超の温度を必要とし、炭化水素内の炭素原子の数が増えるに伴って吸熱性の度合いが増加する。さらに、水蒸気改質は、ディーゼル燃料が使用される通常の場合のように(効率を低下させることになるため、水蒸気/炭素の割合が2よりも大きくない限り)、多核またはオレフィン成分が存在する炭素を生成する傾向がある。一方、部分酸化は発熱反応である。部分酸化の生成物は、燃料と酸素の比率に依存する。すなわち、酸素の割合が低い場合は、部分酸化は、水素と一酸化炭素を生成し、酸素の割合がより高い場合は、水と一酸化炭素と二酸化炭素とを生成する。これらの反応を実施するためにプラズマを使用することによって、触媒を供給する必要がなくなり、熱慣性がかなり小さいために、反応器はより高速の応答時間を有することができる。
【0011】
部分酸化の条件については、好ましくは、燃料とガスの混合物中の炭素に対する酸素のモル比は、0.5から0.7の範囲内であり、炭素に対する水蒸気のモル比は、1.5と2.0との間である。
【0012】
燃料は、ケロシン、ガソリンまたはディーゼル燃料といった液体燃料であってもよく、エタノールなどの酸素化合物を含んでもよい。この目的のために、ディーゼル燃料はほぼC15であると仮定することが適切である。実際には、ディーゼル燃料は、数百の種々の成分を含有し得る複合混合物である。例えば、ディーゼル燃料の1つの種類は、その主成分として、約14%の2−メチルトリデカン、14%のn−ヘキサデカン、10%のn−トリデカン、並びに、それぞれ6%から7%のテトラメチルペンタデカン、トリメチルドデカン、ブチルナフタレン、プロピルナフタレンおよびn−オクチルベンゼン(これらはモル比である)を有することが判明している。ディーゼル燃料は、好ましくは蒸気の状態でマイクロ波プラズマ発生器に供給される。
【0013】
マイクロ波プラズマ発生器は、極めて高い周波数(典型的には1GHz超、例えば2.45GHz)で作動し、このような高周波では、印加される電場の振動は極めて高速であるため、電子だけが即時に応答できる。結果として、生成されるプラズマは局所的熱力学的平衡状態からは程遠く、したがって、広範囲の圧力において作動することができる。特に、プラズマは、ほぼ大気圧で、またはそれよりも高圧(例えば、3気圧または7気圧)であっても作動することができる。
【0014】
本発明はまた、マイクロ波プラズマ反応器と燃料電池とを含むシステムであって、マイクロ波プラズマ反応器は、マイクロ波プラズマ発生器に結合された反応チャンバと、反応チャンバ内の、反応チャンバを通るマイクロ波放射の伝搬方向に垂直な少なくとも1組の対置された電極と、チャンバ内の燃料と酸素および/または水蒸気を含むガス用の1つまたは複数の入口とを含むシステムを提供し、この1つまたは複数の入口は電極を通過するガスが電極周辺で渦を形成するように位置付けられ、電極のうちの少なくとも一方はプラズマ近傍から物質を流出させるダクトを画定している。好ましい実施形態では、ガス入口は、電極に対して接線方向にあるか、または反応器内の燃料とガスの混合物の運動方向に対して接線方向にある。
【0015】
次に、本発明の方法およびプラントまたは装置を、単に例示目的で、添付図面を参照しつつ、詳細に、より具体的に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1を参照すると、マイクロ波プラズマ反応器10は、マイクロ波導波管12を含む。マイクロ波導波管12の一端には、サーキュレータ14と同調器15とを介して導波管12に結合されたマイクロ波発生器13(概略的に図示)があり、他端には、化学反応用のチャンバ16がある。代替的には、マイクロ波は、導波管ではなく同軸ケーブル接続を用いて結合することができる。この例では、チャンバ16は、導波管12と実質的に同一断面形状の矩形の鋼鉄製ボックス16aからなり、導波管12と連通するマイクロ波透過性のアパーチャ16bを有する。ボックス16aの反対側は閉じられ、その結果、チャンバ16は、マイクロ波に対する伝送経路の終端となる。これと反対側のボックス16aの端部(閉鎖端)は、プラズマの同調を支援するために、プレートまたはスライディングショートの形態にできる。ボックス16a内には、接線方向のガス入口ダクト18が設けられた円筒形キャビティ17を画定する、マイクロ波の透過性材料(例えば、PTFEまたはシリカ)でできた挿入体16cがある。反応チャンバの概略形状および配置は、英国特許第2273027号明細書で記載されたものと同様である。ボックス16aの上面壁および底面壁は、円筒形キャビティ17の長手軸上で、互いに対置された円錐形のテーパ状の端部を有する、1組の電極20、22を支持している。電極の一方22は、その長手軸に沿って出口ダクト24を画定している。この電極22(したがって流出ダクト24)は、反応チャンバ16の外側へ延び、形成される水素含有ガスの出口ダクト26と連通する。電極20、22は、マイクロ波エネルギーが、キャビティ17の中心において電極間で最大になるように、マイクロ波場の電気成分を集中させるように作用する。電極は、ブロック16と良好に接触するように設計されている。出口ダクト26は、熱交換器28、29、30を連続して貫通する(実際には、単一ユニットに一体化されてもよい)。
【0017】
マイクロ波プラズマ反応器10は水素生成装置32の一部を形成している。ディーゼル燃料が、ポンプ33によって熱交換器29を通して供給され、約400℃の温度に達し、その結果、ディーゼル燃料が蒸発し、蒸気が混合ユニット36に供給される。水と空気がそれぞれ、各ポンプ34によって各チャネルを介して熱交換器30を通して混合ユニット36に供給され、それぞれが約400℃の温度に達し、その結果、水は水蒸気の状態になる。次に、結果として得られるガス/蒸気の混合物が、熱交換器28を通過することによってさらに加熱され、その後、反応チャンバ16の入口ダクト18に供給される(例えば、400℃で)。あるいは、ディーゼル燃料は、約550℃に加熱されてもよい。PTFEが挿入体またはアパーチャ材料として用いられる場合は、反応器に入る燃料とガスの混合物は、200℃を超えてはならない。高温の投入温度では、ディーゼル、空気および/または水蒸気は、自然発火または制御不能燃焼を回避するために、他の組み合わせで混合されてもよい。
【0018】
作動中、出口ダクト26を通って流れる高温ガス混合物は、主に、水素、一酸化炭素および過剰な水蒸気(後述するような)、並びに空気中からの窒素からなる。高温ガス混合物は、水性ガスシフトユニット(図示せず)に送ることができ、そこで、過剰水蒸気が一酸化炭素と反応して、より多くの水素を生成する。
【0019】
マイクロ波プラズマ反応器10の使用において、マイクロ波発生器13が2.45GHzのマイクロ波を発生する状態では、電極20、22がまず十分に近づけられて、マイクロ波によって電極間に発生する電圧が十分高くて放出物に衝突し、プラズマを形成する。次に、電極20、22は少し距離を離すように移動され、熱腐食を最小限にすると同時に、電極20、22の端部間のプラズマボール40を維持するようにされる。ダクト18を通して導入されるガス混合物は、キャビティ17の内側周辺で渦を巻き、次にプラズマボール40を通り抜けて、出口ダクト26を通って流れ出る。典型的には、マイクロ波発生器13は、少なくとも300Wのマイクロ波電力を発生し、同調器15を用いて電極20、22間のマイクロ波電力を最大にすると同時に、導波管12内の反射電力を最小限にする。
【0020】
キャビティ17内の圧力は、典型的には、1気圧から3または4気圧(絶対値)の間であり、このような圧力のプラズマは、比較的高い電子温度と、中程度に高い粒子温度とを有する。プラズマ40内のバルク温度は、1000Kから4000Kの間の範囲内にあると予想できる。マイクロ波の効果は、加熱装置として作用することと、電子、イオンおよび遊離基を生成することとの両方である。プラズマボール40の効果は、実際には、供給されるマイクロ波電力と、反応物空気、ディーゼル燃料および水の割合と、それらの温度および流量とに依存する。
【0021】
図1に示される水素生成装置32について実験が実施された。この実験は、混合ユニット36の後、ガス/蒸気混合物は加熱されず、代わりに、約200℃でマイクロ波プラズマ反応器10に供給される点だけが異なる。空気を一切供給しない(すなわち、純粋な水蒸気改質)ため、過剰な水蒸気が凝縮した後に流出するガスは、67%(容積で)の水素と約25容積%の一酸化炭素とを含み、流出するガスの温度と、改質されるディーゼル燃料の割合とは両方とも、供給されるマイクロ波電力と共に増加することがわかった。水蒸気/炭素の割合が3である場合、ディーゼル燃料は、2000Wのマイクロ波電力を用いて89%変換された。一方、マイクロ波電力が700Wまで低減される場合は、ディーゼル燃料の変換は、40から50%まで低下した。ディーゼル燃料の不完全な変換は、部分酸化反応によって追加の熱を供給するために、酸素源をさらに提供するのが望ましいことを示唆している。酸素源として空気を用いる場合は、不活性の窒素によって希釈されるために、プラズマ反応器10を通るガスの流量を増すことも必要である。
【0022】
空気と水蒸気の両方を含むガス混合物についてさらなる実験が実施された。これらの実験は、炭素に対する酸素の比率(O:C)のうちの2つの値、すなわち水素の生産性を向上する0.5と、マイクロ波電力必要量を最小限にし、またエチレン、他のオレフィンおよびアセチレンの生成を最小限にする0.7とに焦点を当てた。さらなる研究によって、0.55のO:Cが特に好ましいことが実証された。圧力の絶対値は、全体としては、2気圧を僅かに上回った。通常は水蒸気を加えて、水蒸気/炭素の比率を2にし、炭素の生成を防止した。全体流量は、いずれの場合も、80リットル/分であった。酸素/炭素の比率の値が0.5を上回る場合は、全ての燃料が変換されることがわかった。
【0023】
エチレンはまた、流出するガスの少量成分(<1%)であり、予測されるように、これは、0.5という、炭素に対する酸素の比率が低い場合にはより多いことがわかった。これは、少量の従来の改質触媒または特定のエチレン除去触媒を、出口ダクト24の外側端部で供給することによって除去することができる。従来の改質触媒の存在下では、その体積が、触媒を通るガスの空間速度が約95,000/時であるとしても、エチレンは極めて効果的に除去され、また、水素の生産性が増大することがわかった。より大量の酸化ガス混合物に関連する高い熱エネルギーのために水素の生産性がすでに高く、および、エチレンのレベルがより低い場合には、0.7という高い酸素/炭素の比率では、このような触媒の必要性はあまり重要ではない。任意のこのような改質触媒の終了段階では、改質物流から未反応の流れを利用するために、水性ガスシフト触媒(例えば、酸化クロム/鉄)が供給されてもよい。あるいは、水性ガスシフト反応が、別個の触媒ユニット(図示せず)を用いて実施されてもよい。
【0024】
流出するガスの組成を示す結果と、このような実験実施の実験条件を以下の表に示す。
【表1】

【0025】
プラズマボール40内の反応物の滞留時間は極めて短く、典型的には、この80slpmの流量では約0.1msである。高温発光ゾーンであるプラズマの尾が、プラズマボール40から出口ダクト24の下方に延びており、この高温発光ゾーンでは、化学反応が発生していることが予測され得る。上述のような、酸素源を用いずに(水蒸気およびディーゼル燃料のみを用いて)実施した実験では、わずか約25mm長さの短いプラズマの尾を得ることが判明した。一方、酸素も存在する実験では、最大230mm長さの尾を得た。水蒸気の充填が多くなるにつれて、尾は短くなり、酸素の充填が多くなるにつれて、尾は長くなった。表で要約された実験条件では、高温のプラズマの尾内の滞留時間は約4から5msであった。
【0026】
本発明は、燃料とガスの混合物を装置に1回通すことによって、完全な燃料変換を達成できるという利点を有する。
【0027】
観察された結果では、上述のように作動すると、水素生成装置32は、ディーゼル燃料から水素を生成するのに極めて効果的であり、滞留時間が短いにもかかわらず高い変換が得られることを示している。これは、より高速のスループットが可能であることを示唆している。より大きなスループットが必要な場合は、より大きなスループットは、ガス流が並列に通過するような複数のマイクロ波プラズマ反応器10を用いて、達成できることが理解されよう。あるいは、反応器に入るマイクロ波放射の導波管と波長の適切な変更を備えた、より高速のスループットを備えた大型の個々の反応器を使用することもできる。
【0028】
上述のとおり、最適なプロセス率は、酸素/炭素が0.4から0.8、より好ましくは0.5から0.7の範囲内にあり、水蒸気/炭素が1から4、より好ましくは1.5から2.0の範囲内にあると特定されている。上述の実験測定は、熱交換器28が使用されていないために、反応物を最適に予熱せずに実施されたことが理解されよう。予熱すると熱効率がより高くなるが、これは、ディーゼル燃料が熱分解を受けることが予測される約550℃を超えるべきではなく、キャビティ17を画定している材料が熱によって損傷する温度を超えてはならない。予熱により反応物により多くの熱エネルギーを供給することによって、マイクロ波エネルギーが、反応物を加熱するために必要とされるのではなく、主に遊離基を生成するために、したがって化学反応を開始するために用いられることを保証する。400℃または550℃まで予熱すると、同じく全体変換のためのマイクロ波電力必要量はより少なくなることが予測される。
【0029】
上述の方法、プラントおよび装置は、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な方法で変更されてもよいこともまた理解されるであろう。例えば、装置は、水、空気およびディーゼル燃料を適切な温度まで加熱するために、バーナーまたは電気ヒータ(図示せず)を含んでもよい。このようなヒータは、例えば、起動時に用いられてもよい。反応物の別の予熱方法は、ディーゼル燃料をマイクロ波反応器10に供給する前に、燃料の一部を不完全燃焼することによって(場合によっては、触媒反応器を用いて)達成されてもよい。1つの代替方法では、起動時に空気だけを反応器10に供給して、プラズマボール40を起動させ、熱ガスを供給してもよい。熱交換器28、29、30が加熱されると、上述のように、次に水とディーゼル燃料もまた供給できる。マイクロ波反応器10は様々な方法で変更されてもよいことも理解されよう。特に、反応ガスが供給される挿入体16c内に設けられた他の入口ポートが存在してもよい。または、電極20を通る入口ポートが存在してもよい。または、さらに、出口ダクト24または下流の出口パイプ26内のプラズマの尾へ反応物を注入するための手段が存在してもよい。
【0030】
図2は、ガラス強化ポリテトラフルオロエチレンから作られたブロック41と、2つのエンドピース43、44とからなるチャンバ40からなるマイクロ波プラズマ発生器を示している。ブロック41は、円筒形の内面42と、一端でガス用入口と連通し、他端でブロック41の内面42に対して接線方向の通路53とを有する。したがって、ブロック41とエンドピース43、44とによって形成されたチャンバ40に入るガスは、このように接線方向になり、電極60、62との間の隙間61に入る前に、電極60、62の周囲で渦を巻く。この渦巻流のパターンによって、電極60、62間の放電の安定性が高まり、それによってより大きな直径の電極チップを用いることができ、結果的に活性ガスのスループットを高める。例えば、電極60内の通路54の先端部とオリフィス56の直径を8mmにし、隙間61を0.2mmにすると、100shpmのガスを活性化することができる。電極62の先端部上の中心突起部55によって、放電の安定性がさらに高まる。さらに、オリフィス56の内面58をトランペット形状にすることによって、電極60内の通路54のオリフィス56へのガスの流れが促進される。電極60には、交換可能な先端部57が取り付けられている。あるいは、電極60は、単一片(図示せず)であってもよい。
【0031】
図3は、ガラス強化ポリテトラフルオロエチレンから作られたブロック71と、先端にあるエンドピース75と、底部にある第2のエンドピース(図示せず)とからなるチャンバ74を含むマイクロ波プラズマ発生器を示している。ガス入口は、チャンバ74内のガスの渦が、電極72、73の周辺で生成されるような角度で、先端のエンドピース75を貫通する。ガス入口は、直線状または湾曲していてもよい。
【0032】
別の実施形態(図示せず)では、図3のマイクロ波プラズマ発生器は、ブロック71なしに組み立てられ得る。ガス入口の角度および外形によって、ガスの渦は電極周辺で同様に生成される。別の実施形態(図示せず)では、上部電極20、62または72は、ガス混合物用の別の流出ダクトを含有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】断面図で示されたマイクロ波プラズマ反応器を組み込んだ、本発明の水素生成装置の概略的な流れ図を示す。
【図2】マイクロ波プラズマ発生器の1つの例を示す。
【図3】マイクロ波プラズマ発生器の別の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素燃料から水素を生成する方法であって、
燃料を、酸素および/または水蒸気を含むガスと結合させることと、
燃料とガスの混合物を、反応器内の対置された電極間のマイクロ波プラズマ発生器によって生成されたプラズマに通過させることとを含み、
電極のうちの少なくとも一方が、プラズマ近傍から物質を流出させるためのダクトを画定し、
その結果、流出ダクトから流出するガス混合物が水素を含み、
燃料と酸素および/または水蒸気を含むガスとが反応器に入り、電極周辺で燃料とガスの混合物の渦を形成する、方法。
【請求項2】
燃料と酸素および/または水蒸気を含むガスとが、電極に対して接線方向に反応器に入る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃料/ガス入口が、燃料とガスの混合物の運動方向に対して接線方向にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
燃料が、酸素と水蒸気の両方を含むガスと結合する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
炭化水素燃料がディーゼル燃料である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
燃料、酸素および水蒸気の割合は、炭素に対する酸素のモル比が、0.5から0.7の範囲内にあり、一方、炭素に対する水蒸気のモル比が1.5から2.0の間にあるような割合である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
燃料が、蒸気の状態で、マイクロ波プラズマ発生器に供給される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水蒸気および/または気化燃料を生成するための熱が、流出ダクトから流出するガス混合物との熱交換によって得られる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
パルスマイクロ波電力が反応器に供給される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって、炭化水素燃料から水素を生成する装置。
【請求項11】
マイクロ波プラズマ反応器と燃料電池とを含むシステムであって、
マイクロ波プラズマ反応器が、
マイクロ波プラズマ発生器に結合された反応チャンバと、
反応チャンバ内の、反応チャンバを通るマイクロ波放射の伝搬方向と垂直な少なくとも1組の対置された電極と、
電極を通過するガスが電極周辺で渦を生成するように位置付けられたチャンバ内への、燃料と酸素および/または水蒸気を含むガス用の1つまたは複数の入口とを含み、
電極のうちの少なくとも一方が、プラズマ近傍から物質を流出させるダクトを画定している、システム。
【請求項12】
ガス入口が、電極に対して接線方向にある、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
燃料/ガス入口が、燃料とガスの混合物の運動方向に対して接線方向にある、請求項11に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−532322(P2009−532322A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503665(P2009−503665)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050132
【国際公開番号】WO2007/116225
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】