説明

水素製造用触媒及び該触媒を用いた水素製造方法

【課題】本発明は、植物油脂など炭素鎖が長い炭化水素や炭素鎖が長い酸素を含有する炭化水素を水素源とする場合でも、優れた改質活性及び耐久性を示す水素製造用触媒を提供すること、及び該水素製造用触媒を用いて、植物油脂など炭素鎖が長い炭化水素や炭素鎖が長い酸素を含有する炭化水素を水素源とする場合でも、効率的に水素を製造する方法を提供すること。
【解決手段】多孔質担体に活性金属を担持した触媒であって、当該多孔質担体が、ジルコニウムを含み、かつ細孔直径が2〜10nmの細孔と20〜200nmの細孔を有するバイモーダル構造を有することを特徴とする水素製造用触媒、及び該触媒を用いた水素製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造用触媒及び水素製造方法に関し、さらに詳しくは、特定の細孔を有する水素製造用触媒であって、植物油脂の改質にも有効な水素製造用触媒及び該触媒を用いた水素製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新エネルギーである燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換させるものであって、エネルギーの利用効率が高いという特徴を有しており、民生用、産業用あるいは自動車用などとして、実用化研究が積極的になされている。
燃料電池に用いる水素は、通常、炭化水素などの水素源を水蒸気改質処理、自己熱改質処理、部分酸化改質処理などの改質処理を行って製造されている。したがって、改質処理に用いる改質触媒の性能が重要である。
炭化水素などの改質触媒としては、従来、ルテニウムや、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ニッケルなどをベースにした触媒の研究もなされていて、より活性の高い触媒の開発が進められている。
例えば、特許文献1には、マイクロメートル領域の細孔径を有するマクロ細孔と、ナノメートル領域の細孔径を有するメソ細孔との二種類のタイプの細孔を有する二元細孔シリカに、Niを担持したNi/Si2触媒が開示されており、メタンのCO2改質反応に効果が高いことが記載されている。
また、特許文献2には、Ni、MgおよびAlを含むと共にPt、Pd、Ir、RhおよびRuの中から選ばれる少なくとも一種の貴金属元素を含む触媒が、灯油のような炭素数5以上で、かつ、常温常圧で液状の炭化水素または酸素を含む炭化水素を改質処理する水素含有ガスの製造方法が記載されている。
【0003】
ところで、燃料電池システムに利用する水素源としては、これまでメタノールや、液化天然ガス、都市ガス、石油系LPG、ナフサ及び灯油などの石油系炭化水素を用いる研究がなされている。
一方、近年地球温暖化対策やエネルギーの安定供給の確保、地域分散型電源の確保といった観点から生物由来の有機性資源であるバイオマスがクリーンなエネルギー源として注目されている。このバイオマスとは、エネルギー源又は工業原料として利用することのできる生物体(例えば農業生産物又は副生成物、植物、油脂等)をいい、太陽エネルギー、空気、水、土壌等の作用により生成されるので無限に再生可能な資源である。また、現在バイオマスの中の油脂類などが廃棄されるなど、廃棄物処理問題が顕在化しつつあることに伴い、資源を有効利用し循環型社会を構築することにより環境保全及び省資源化を図ることが推奨されており、バイオマスを、エネルギー源や工業原料として総合的に利活用する技術が要望されている。
したがって、このバイオマスを将来需要が拡大することが予測される燃料電池システムの水素源として使用することは望まれるところである。
しかしながら、油脂類などのバイオマスは、炭素鎖が長い炭化水素類であることから、それを水素源とする改質反応が困難であり、従来の改質触媒では、触媒の活性や寿命(耐久性)などの点で不充分であった。
このようなことから、触媒性能のさらなる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−254091号公報
【特許文献2】特開2008−94665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況下で、本発明は、植物油脂など炭素鎖が長い炭化水素や炭素鎖が長い酸素を含有する炭化水素を水素源とする場合でも、優れた改質活性及び耐久性を示す水素製造用触媒を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、上記水素製造用触媒を用いて、植物油脂など炭素鎖が長い炭化水素や炭素鎖が長い酸素を含有する炭化水素を水素源とする場合でも、効率的に水素を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の好ましい水素製造用触媒を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、多孔質担体にジルコニウムが含まれるとともに、多孔質担体を特定の細孔直径の細孔を有するバイモーダル構造である触媒が、前記目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)多孔質担体に活性金属を担持した触媒であって、当該多孔質担体が、ジルコニウムを含み、かつ細孔直径が2〜10nmの細孔と20〜200nmの細孔を有するバイモーダル構造を有することを特徴とする水素製造用触媒、
(2)多孔質担体が細孔直径2〜8nmの細孔および20〜100nmの細孔を有することを特徴とする(1)に記載の水素製造用触媒、
(3)多孔質担体が細孔直径2〜7nmの細孔および20〜50nmの細孔を有することを特徴とする(1)に記載の水素製造用触媒、
(4)多孔質担体が、ジルコニウム以外に、シリカ、アルミナ、及びチタニアから選ばれる少なくとも一種を含むものである(1)〜(3)のいずれかに記載の水素製造用触媒、
(5)活性金属が、Ni、Co、Ru、Rh、Ir、Pt、及びPdから選ばれる少なくとも一種である(1)〜(4)のいずれかに記載の水素製造用触媒、
(6)活性金属がNiである(5)に記載の水素製造用触媒、
(7)さらに希土類金属を含む(1)〜(6)のいずれかに記載の水素製造用触媒、
(8)希土類金属がセリウムである(7)の水素製造用触媒、
(9)炭化水素もしくは酸素を含有する炭化水素と(1)〜(8)いずれかに記載の水素製造用触媒を接触させる工程を含む、水素製造方法、
(10)(9)における炭化水素もしくは酸素を含有する炭化水素と水素製造用触媒を接触させる工程において、水蒸気改質反応、自己熱改質反応、部分酸化改質反応又は炭酸ガス改質反応のいずれかの改質反応が行われることを特徴とする(9)に記載の炭化水素改質による水素製造方法、
(11)(10)において、酸素を含有する炭化水素が植物油脂である水素製造方法、
(12)(11)において、植物油脂が菜種油、ごま油、ひまわり油から選ばれる少なくとも一種である水素製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物油脂など炭素鎖が長い炭化水素や炭素鎖が長い酸素を含有する炭化水素を水素源とする場合でも、優れた改質活性及び耐久性を示す水素製造用触媒を提供することができる。
また、本発明は、上記水素製造用触媒を用いて、植物油脂など炭素鎖が長い炭化水素や炭素鎖が長い酸素を含有する炭化水素を水素源とする場合でも、効率的に水素を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1の水素製造用触媒(触媒1)のNi未含浸の担体の細孔分布を示す図である。
【図2】本発明の実施例2の水素製造用触媒(触媒2)のNi未含浸の担体の細孔分布を示す図である。
【図3】本発明の実施例3の水素製造用触媒(触媒3)のNi未含浸の担体の細孔分布を示す図である。
【図4】本発明の比較例1の水素製造用触媒(比較触媒1)のNi未含浸の担体の細孔分布を示す図である。
【図5】本発明の比較例2の水素製造用触媒(比較触媒2)のNi未含浸の担体の細孔分布を示す図である。
【図6】本発明の実施例及び比較例の水素製造実験における水素生成量の経時変化を示す図(グラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の水素製造用触媒及び水素製造方法を詳細に述べる。
[水素製造用触媒]
本発明の水素製造用触媒は、多孔質担体に活性金属を担持した触媒であって、当該多孔質担体が、ジルコニウムを含み、かつ細孔直径が2〜10nmの細孔と20〜200nmの細孔を有するバイモーダル構造を有することを特徴とする水素製造用触媒である。
前記多孔質担体が有するバイモーダル構造とは、細孔直径が相対的に大きいメソポア又はマクロポアと相対的に小さなメソポアとを併せて有する二元細孔構造を有する多孔質担体のことである。
本発明のバイモーダル構造を有する多孔質体は、通常第1の多孔質体、及び該第1の多孔質体の表面に形成される第2の成分からなる多孔質部位(第2の多孔質体)を有する。すなわち、本発明のバイモーダル多孔質体は、第1の多孔質体を第2の成分により修飾して得られたバイモーダル多孔質体であることが好ましい。
【0011】
まず、前記第1の多孔質体について説明する。
第1の多孔質体は、第1の成分を有している。
第1の成分としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアなどが挙げられる。中でも、耐熱性や触媒強度の観点から、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアが好ましい。第1の成分としては、これらの中の一種を用いてもよいし、二種以上を併用して用いてもよい。
このような第1の成分から成る第1の多孔質体は、細孔直径が20〜200nm、好ましくは20〜100nm、特に好ましくは20〜50nmであり、このような細孔が、バイモーダル多孔質体において相対的に大きなメソポア又はマクロポアに相当する。
【0012】
一方、第2の多孔質体である多孔質部位は、第1の多孔質体の表面に形成される。第1の多孔質体の表面とは、第1の多孔質体を構成する粒子の外表面と細孔表面を併せたものである。
当該多孔質部位は、第2の成分を有している。本発明においては、該第2の成分としては、ジルコニアを含む成分を用いる。ジルコニアを用いることによって、前記バイモーダル構造を有する担体を形成することができ、目的とする改質効果を有する触媒を得ることができる。
前記ジルコニアを含む成分は、ジルコニアを主成分とするものが好ましい。すなわち、ジルコニア単独にとどまらず、ジルコニアとともにジルコニア以外の成分を用いてもよい。ここで、主成分とは、第2の成分全量規準で50質量%以上、好ましく70質量%以上、特に90質量%以上であることを意味する。
前記ジルコニアとともに用いてもよいジルコニア以外の成分としては、特に制限はないが、シリカ、アルミナ、チタニアの中から選ばれる一種又は二種以上のものを用いることが好ましい。
このような第2の成分からなる多孔質部位は、細孔直径が2〜10nm、好ましくは2〜8nm、特に好ましくは2〜7nmであり、この細孔が、バイモーダル多孔質体において、相対的に小さなメソポアに相当する。
【0013】
以上のような第1の多孔質体及び第2の多孔質体(多孔質部位)を有する本発明のバイモーダル多孔質体は、例えば以下の方法によって得ることができる。
すなわち、上述した第1の多孔質体を用意し、これとは別に第2の成分、すなわちジルコニアを含有する液体を準備する。この液体は、ゾルであることが好ましい。
ジルコニアを含有する液体の具体例としては、例えば、以下に示すジルコニウム原料をエタノールや水に溶解したエタノール溶液や水溶液が挙げられる。
ここで、ジルコニウム原料としては、例えば、ジルコニアゾル、ZrO(OH)Cl、ZrOCl2・nH2O、Zr23Cl2、ZrCl4、ZrCl3、ZrCl2、ZrBr4、ZrBr3、ZrBr2、ZrI4、ZrI3、ZrI2、ZrF4、ZrF3、ZrF2等のハロゲン化物塩類、Zr(NO34・nH2O、ZrO(NO32・nH2O、Zr(SO42、Zr(SO42・nH2O、ZrO(SO4)、Zr(H2PO42、ZrP27、ZrSiO4、ZrO(CO32・nH2O、ZrO(OH)2・nH2O等のオキソ酸塩類、酢酸ジルコニウム、乳酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル等の有機酸塩類等が挙げられる。ジルコニウム原料としては、これらの中から選ばれる一種を用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0014】
次いで得られた第2成分を含む液体を第1の多孔質体に含浸する。具体的には、ジルコニウム原料のゾルの水溶液を第1の多孔質体の担体であるシリカやアルミナ等に含浸する。
ここで、第2の成分として、ジルコニアとともに、シリカ、アルミナ、チタニア中から選ばれる一種又は二種以上を併用して用いる場合は、例えば、前述のジルコニウムゾルに、併用するシリカ、アルミ、チタンなどを含むゾルを混合した混合溶液を用いればよい。
前記の含浸方法は、とくに制限はなく、公知の方法で行えばよい。例えば、担持操作については、加熱含浸法,常温含浸法,真空含浸法,常圧含浸法,含浸乾固法,ポアファイリング法等の各種含浸法、浸漬法、軽度浸潤法、湿式吸着法、スプレー法、塗布法などを用いることができる。
ここで、担持操作の条件については、大気圧下または減圧下で行うことができる。その際の操作温度としては特に制限はないが、例えば室温〜150℃程度の温度で行うことが好ましい。また、接触時間は、通常1分間〜10時間である。
【0015】
その後、第2の成分である液状物が含浸された第1の多孔質体を乾燥、焼成してバイモーダル多孔質体を得ることができる。
乾燥の具体的方法としては、例えば、自然乾燥、ロータリーエバポレーター、アスピレーターもしくは送風乾燥機による乾燥が挙げられる。また、乾燥後行う焼成の具体的方法は、通常、空気中または不活性ガス(窒素、アルガン等)中で200〜900℃、好ましくは250〜800℃の温度で、0.5〜6時間、好ましくは1〜4時間行う。
【0016】
このようにして得られたバイモーダル多孔質体は、ジルコニウムを含み、かつ細孔直径が2〜10nmの細孔と20〜200nmの細孔を有するバイモーダル構造を有するものである。
【0017】
本発明の水素製造用触媒は、バイモーダル多孔質体を担体とし、これに活性金属を担持した触媒である。
本発明に用いる活性金属は、特に制限はないが、好ましい活性金属としては、Ni、Co、Ru、Rh、Ir、Pt、Pdなど挙げられる。中でも性能の観点から、Niが好ましい。これらの活性金属の中から選ばれる一種を用いてもよいし、二種以上を併用して用いてもよい。この活性金属の含有量は、触媒(水素製造用触媒)全量基準で、酸化物として0.05〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。活性金属の含有量が0.05質量%以上であれば、水素化改質効果が認められ、20質量%以下であれば、改質性能が低下する恐れがなく、担持量に見合った活性の向上効果が期待できる。
これらの活性金属の担持方法は、特に制限はなく、公知の方法で行えばよい。
【0018】
上記触媒を構成する各活性金属の原料化合物としては、以下に示す化合物を挙げることができる。すなわち、
Niの原料化合物としては、例えばNi(NO32・6H2O、NiO、Ni(OH)2、NiSO4・6H2O、NiCO3、NiCO3・2Ni(OH)2・nH2O、NiCl2・6H2O、(HCOO)2Ni・2H2O、(CH3COO)2Ni・4H2Oなどを挙げることができる。
Coの原料化合物としては、Co(NO32、Co(OH)2、CoCl2、CoSO4、Co2(SO43、CoF3などを挙げることができる。
Ruの原料化合物としては、例えばRuCl3・nH2O、Ru(NO33、Ru2(OH)2Cl4・7NH3・3H2O、K2(RuCl5(H2O))、(NH42(RuCl5(H2O))、K(RuCl5(NO))、RuBr3・nH2O、Na2RuO4、Ru(NO)(NO33、(Ru3O(OAc)6(H2O)3)OAc・nH2O、K4(Ru(CN)6)・nH2O、K2(Ru(NO24(OH)(NO))、(Ru(NH36)Cl3、(Ru(NH36)Br3、(Ru(NH36)Cl2、(Ru(NH36)Br2、(Ru32(NH314)Cl6・H2O、(Ru(NO)(NH35)Cl3、(Ru(OH)(NO)(NH34)(NO32、RuCl2(PPh33、RuCl2(PPh34、RuClH(PPh33・C78、RuH2(PPh34、RuClH(CO)(PPh33、RuH2(CO)(PPh33、(RuCl2(cod))n、Ru(CO)12、Ru(acac)3、(Ru(HCOO)(CO)2n、Ru24(p−cymene)2、[Ru(NO)(edta)]-等のルテニウム塩を挙げることができる。中でも、取扱い上の観点からRuCl3・nH2O、Ru(NO33、Ru2(OH)2Cl4・7NH3・3H2Oが好ましく用いられる。
Rhの原料化合物としては、例えば、Na3RhCl6、(NH42RhCl6、Rh(NH35Cl3、Rh(NO33、RhCl3等を挙げることができる。
【0019】
貴金属元素(Pt)源である白金化合物としては、例えば、PtCl4、H2PtCl6、Pt(NH34Cl2、(MH42PtCl2、H2PtBr6、NH4[Pt(C24)Cl3]、Pt(NH34(OH)2、Pt(NH32(NO22等を挙げることができる。
Pdの原料化合物としては、例えば、(NH42PdCl6、(NH42PdCl4、Pd(NH34Cl2、PdCl2、Pd(NO32等を挙げることができる。
貴金属元素(Ir)源であるイリジウム化合物としては、例えば、(NH42IrCl6、IrCl3、H2IrCl6等を挙げることができる。
【0020】
本発明の水素製造用触媒は、上記活性金属とともに、希土類金属を担持することが好ましい。これによって水素の製造効率(水素収率)がさらに向上する。
希土類金属としては、イットリウム,ランタン,セリウムなどが挙げられる。中でも効果の点でセリウムが好ましい。
希土類金属を担持する際に用いられる希土類の原料化合物としては、Y2(SO4)3、YCl3、Y(OH)3、Y2(CO33、Y(NO33、La2(SO4)3、La(NO33、LaCl3、La(OH)3、La2(CO33、La(CH3COO)3、Ce(OH)3、CeCl3、Ce2(SO43、Ce2(CO33、Ce(NO33等を挙げることができる。
本発明の水素製造用触媒における希土類金属の含有量は、特に制限されないが、水素の製造効率と経済性のバランスから、通常、触媒(水素製造用触媒)全量基準で、酸化物として1〜20質量%、さらには、2〜15質量%の範囲が好ましい。
【0021】
上記希土類金属を担持する工程は、バイモーダル多孔質体を製造した後であれば、担持手順は限定されるものではない。したがって、例えば、ニッケルなどの前記活性金属と共含浸(同時に含浸)により担持しても良いし、先に希土類金属を担持した後にニッケルなどの活性金属を含浸担持しても良い。
【0022】
このようにして得られた本発明の水素製造用触媒は、以下に示すような触媒である。すなわち、
多孔質担体に活性金属を担持した触媒であって、当該多孔質担体が、ジルコニウムを含み、かつ細孔直径が2〜10nmの細孔(第2の細孔)と20〜200nmの細孔(第1の細孔)を有するバイモーダル構造を有することを特徴とする水素製造用触媒である。
前記触媒は、通常、細孔分布に関し、第1の細孔を有する第1の多孔質体と、これを修飾して得られ、前記第1の細孔又は該第1の細孔近傍に該第1の細孔径よりも小さな第2の細孔径を有する多孔質部位を有する触媒である。
【0023】
[水素製造方法]
本発明の水素製造方法は、上記水素製造用触媒を水素源である炭化水素もしくは酸素を含有する炭化水素などの炭化水素類と接触させる工程を含む、水素製造方法である。
具体的には、上記の方法で得られた水素製造用触媒を好ましくは前処理し、該水素製造用触媒を炭化水素もしくは酸素を含有する炭化水素と接触させて改質反応を行う。具体的方法には以下に示す方法が好ましい。
【0024】
上記調製された触媒は還元を行わずに使用することもできるが、触媒活性の面では還元処理を行う方が好ましい。この還元処理には、通常水素を含む気流中で処理する気相還元法、又は還元剤で処理する湿式還元法が用いられる。
前者の気相還元処理は、通常、水素を含む気流下、250〜800℃、好ましくは300〜700℃の温度で、1〜24時間、好ましくは3〜12時間行うものである。また後者の湿式還元法は、液体アンモニア/アルコール/Na,液体アンモニア/アルコール/Liを用いるBirch還元、メチルアミン/Li等を用いるBenkeser還元、Zn/HCl,Al/NaOH/H2O,NaH,LiAlH4及びその置換体、ヒドロシラン類、水素化ホウ素ナトリウム及びその置換体、ジボラン、蟻酸、ホルマリン、ヒドラジン等の還元剤で処理する方法がある。還元処理条件は、通常、室温〜100℃で、10分〜24時間、好ましくは、30分〜10時間行うものである。
【0025】
まず、本発明の水素製造用触媒を用いた炭化水素や酸素を含有する炭化水素などの炭化水素類の水蒸気改質反応について説明する。
この反応に用いられる水素源である原料炭化水素としては、例えば、メタン,エタン,プロパン,ブタン,ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタン,ノナン,デカン等の炭素数が1〜20程度の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン,シクロオクタン等の脂環式飽和炭化水素、単環及び多環芳香族炭化水素、都市ガス,LPG,ナフサ,灯油等の各種の炭化水素を挙げることができる。
一般に、これらの原料炭化水素中に硫黄分が存在する場合には、事前に脱硫工程を通して、通常、硫黄分が0.1ppm以下になるまで脱硫を行うことが好ましい。原料炭化水素中の硫黄分が0.1ppm程度より多いと、水蒸気改質触媒が失活する原因になることがある。この場合の脱硫方法は特に限定されないが、水添脱硫、吸着脱硫などを適宜採用することができる。なお、水蒸気改質反応に使用する水蒸気としては特に制限はない。
また、この反応に用いられる原料の酸素を含有する炭化水素としては、メタノールなどのアルコールの他、油脂類、例えば、菜種油、ごま油、ひまわり油、大豆油、ツバキ油、オリーブ油、ヒマシ油、などの植物油脂が挙げられる。中でも、菜種油、ごま油、ひまわり油が好適である。
本発明においては、灯油あるいはそれ以上の沸点を有する、炭素鎖が長い炭化水素や酸素を含有する炭化水素であっても良好な水素化改質を行うことができる。
【0026】
水蒸気改質の反応条件としては、通常、スチーム/カーボン(モル比)が1.5〜10、好ましくは1.5〜5、より好ましくは2〜4となるように炭化水素量と水蒸気量を決定すればよい。このようにスチーム/カーボン(モル比)を調整することにより、水素含有量の多い生成ガスを効率よく得ることができる。
反応温度は、通常、200〜900℃、好ましくは250〜850℃、さらに好ましくは300〜800℃である。反応圧力は、通常0〜3MPa・G 、好ましくは0〜1MPa・G である。
【0027】
灯油あるいはそれ以上の沸点を有する炭化水素や酸素を含有する炭化水素を原料とする場合、水蒸気改質触媒層の入口温度を630℃以下、好ましくは600℃以下に保って水蒸気改質を行うことが好ましい。入口温度が630℃以下であれば、炭化水素類の熱分解が促進され、触媒あるいは反応管壁に炭素が析出して、運転が困難になる恐れがない。また、触媒層出口温度は特に制限はないが、650〜800℃の範囲が好ましい。650℃以上であれば水素の生成量が充分保たれ、800℃以下であれば、反応装置は耐熱材料であることを必要とせず、経済的に好ましい。
なお、水素製造の場合と合成ガス製造とでは反応条件が若干異なる。水素製造の場合は、水蒸気は多めに入れ、反応温度は低めで、反応圧力は低めであることが好ましい。逆に、合成ガス製造の場合は、水蒸気は少なめ、反応温度は高め、反応圧力は高めにして行うことが好ましい。
【0028】
次に、本発明の改質触媒を用いた炭化水素類の自己熱改質反応、部分酸化改質反応、炭酸ガス改質反応について説明する。
自己熱改質反応は、炭化水素類の酸化反応と炭化水素類と水蒸気の反応が同一リアクター内又は連続したリアクター内で起こる。この反応における水素製造と合成ガス製造では反応条件は若干異なるが、通常反応温度は200〜1,300℃が好ましく、さらには400〜1,200℃、特に500〜900℃が好ましい。スチーム/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜10、さらには0.4〜4であることが好ましい。酸素/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜1、さらには0.2〜0.8であることが好ましい。反応圧力について、通常、0〜10MPa・G、さらには0〜5MPa・G、特に0〜3MPa・Gであることが好ましい。
【0029】
部分酸化改質反応は、炭化水素類の部分酸化反応が起こり、水素製造と合成ガス製造では反応条件は若干異なるが、通常、反応温度は350〜1,200℃、さらには450〜900℃が好ましい。酸素/カーボン(モル比)は、通常、0.4〜0.8、さらには0.45〜0.65が好ましい。反応圧力は、通常、0〜30MPa・G、さらには0〜5MPa・G、特に0〜3MPa・Gであることが好ましい。
炭酸ガス改質反応は、炭化水素類と炭酸ガスの反応が起こり、水素製造と合成ガス製造では反応条件は若干異なるが、通常、反応温度は200〜1,300℃、さらには400〜1,200℃、特に500〜900℃であることが好ましい。炭酸ガス/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜5、さらには0.1〜3であることが好ましい。水蒸気を入れる場合には、スチーム/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜10、さらには0.4〜4が好ましい。酸素を入れる場合には、酸素/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜1、さらには0.2〜0.8が好ましい。反応圧力は、通常、0〜10MPa・G、さらには0〜5MPa・G、特に0〜3MPa・Gであることが好ましい。
【0030】
以上の各改質反応の反応方式としては、連続流通式、回分式のいずれの方式であってもよいが、連続流通式が好ましい。連続流通式を採用する場合、炭化水素類の液空間速度(LHSV)は、通常、0.1〜10hr-1、さらには0.25〜5hr-1であることが好ましい。また、炭化水素類としてメタンなどのガスを用いる場合は、ガス空間速度(GHSV)は、通常、200〜100,000hr-1であることが好ましい。
反応形式としては、特に制限はなく、固定床式,移動床式,流動床式いずれも採用できるが、固定床式が好ましい。反応器の形式としても特に制限はなく、例えば管型反応器等を用いることができる。
【0031】
上記のような条件で本発明の改質触媒を用いて、炭化水素類の水蒸気改質反応、自己熱改質反応、部分酸化反応、炭酸ガス改質反応を行なわせることにより水素を得ることができ、燃料電池の水素製造プロセスに好適に使用される。また、メタノール合成、オキソ合成、ジメチルエーテル合成、フィッシャー・トロプッシュ合成用の合成ガスも効率よく得ることができる。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例及び比較例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、触媒の構造分析、水素製造実験における生成ガス分析等は、以下の方法で行った。
(1)触媒の構造分析方法
下記の窒素吸着測定方法によって、触媒の細孔径分布、細孔直径[d]、指数細孔分布関数(Dv(logd))、及び細孔容積を測定した。
<窒素吸着測定方法>
・使用装置:ユアサアイオニクス株式会社「定容法化学吸着測定装置AUTOSORB−1−C」
・測定方式:定容量法ガス吸着法
・前処理条件:200℃真空排気処理
・サンプル量:50mg
・測定プログラム :吸脱着等温線測定
・比表面積の算出法:BET法
・細孔径分布の算出法:BJH法
・測定相対圧範囲 :10-7〜1.0
【0033】
(2)水素製造実験における生成ガスの分析、選択率、oil転化率の測定方法
水素製造実験により生成されたガスの分析は、オンラインでガスクロマトグラフ分析を行った。このガス分析から、H2発生速度、及び各炭素含有ガス成分(C成分)の選択率を求めた。また、oil転化率は、水素製造実験で流した油の総量と設置したアイストラップに溜まった未反応油の総量の関係より求めた。なお、各ガス成分の生成量は標準ガスと出口流速と合わせて気体の状態方程式より導いた。具体的には、以下のとおりである。
<ガスクロマトグラフ分析方法>
(i)生成した炭素含有ガスの分析
島津製ガスクロマトグラフGC−9A(FID、メタナイザー使用:5質量%、Ru/Al23 0.50g充填)を下記の条件で用い、2時間ごとに炭化水素などの分析を行った。
FID昇温プログラム:70℃10分保持→70℃〜250℃まで8℃/minで昇温→250℃で60分保持
(ii)生成した水素の分析
島津製ガスクロマトグラフGC−14B(TCD、キャリアー:Ar、プログラム:INJ 100℃ COL:70℃)にて30分ごと分析した。
<C成分の各選択率>
各C成分の選択率(%)={(各C成分流量)/(全C成分流量)}×100
<oil転化率の算出方法>
【0034】
【数1】

【0035】
上記式中のアイストラップにて回収した油量、アイストラップにて回収した油の測定方法は以下の通りである。
アイストラップにて回収した油量
=反応終了後トラップ重量−(反応前トラップ重量+トラップ内の水重量)
<アイストラップにて回収した油の定量方法>
反応前のトラップの重量を測定し、さらに反応終了後のトラップの全重量を測定した。その後、分液漏斗を用いて溶液から水層のみを取り出し、水層の重量を測定した。反応終了後のトラップの重量から反応前のトラップの重量および水層の重量を引いた値をアイストラップにて回収された量とした。
【0036】
[触媒の調製]
実施例1
〔5wt%Ni/20wt%ZrO2/SiO2の調製(1)〕
シリカ[「CARiACT Q−50」、富士シリシア化学社製、particle size:75−500μm(30−200mesh)]3gにジルコニアゾル[「セラミカ 品番:G−401」(日板研究所製、(溶媒:エタノール、ZrO2:16%)]4.688gをIncipient−Wetness(IW)法で含浸した。その後、アスピレーターを用い1時間減圧し、400℃まで1時間で昇温、2時間保持の条件で焼成し、バイモーダル担体を調製した。
次いで、上記バイモーダル担体3gにNi(NO32・6H2O(関東化学、特級)0.782gをIW法で含浸し、120℃で12時間乾燥させた後、400℃まで3時間で昇温、2時間保持して焼成することにより、5wt%Ni/20wt%/ZrO2/SiO2(触媒1)を得た。
この触媒1のNi未含浸(Ni含浸前)の担体について構造分析を窒素吸着測定法によって行った。その細孔径分布は、図1に示す。細孔直径が4.21nmと56.8nmにピークを有し、細孔容積は、0.83ml/g、表面積は305m2/gであった。
【0037】
実施例2
〔5wt%Ni−10wt%CeO2/20wt%ZrO2/SiO2の調製〕
実施例1と同様の方法でバイモーダル担体を調製した。次いで、該バイモーダル担体3gにNi(NO32・6H2O(関東化学社製、特級)を0.782gおよびCe(NO32・6H2O(関東化学社製、特級)を1.034g混合させた水溶液をIW法で含浸し、120℃で12時間乾燥させた後、400℃まで3時間で昇温、2時間保持することにより5wt%Ni−10wt%CeO2/20wt%ZrO2/SiO2(触媒2)を得た。
また、Niを担持しないこと以外は上記実施例2と同様にして得られた「10wt%CeO2/20wt%ZrO2/SiO2」(触媒2のNi未含浸の担体)について構造分析を窒素吸着測定法によって行った。その細孔径分布を図2に示す。細孔直径が3.6nmと61.5nmにピークを有し、細孔容積は、0.81ml/g、表面積は269m2/gであった。
【0038】
実施例3
〔5wt%Ni/20wt%ZrO2/SiO2の調製(2)〕
シリカとして「CARiACT Q−50」(富士シリシア化学社製、particle size:75−500μm(30−200mesh)に換えて「CARiACT Q−30」(富士シリシア化学社製、particle size:75〜500μm(30〜200mesh)]を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で5wt%Ni/20wt%/ZrO2/SiO2(触媒3)を得た。この触媒3のNi未含浸(Ni含浸前)の担体について構造分析を窒素吸着測定法によって行った。その細孔径分布を図3に示す。細孔直径が4.73nmと34.8nmにピークを有し、細孔容積は0.88ml/g、表面積は266m2/gであった。
比較例1
〔5wt%Ni/SiO2シングルモーダルの調製〕
実施例1で用いたシリカ3gにNi(NO32・6H2O(関東化学社製、特級)を0.782g、IW法で含浸し、120℃で12時間乾燥させた後、400℃まで3時間で昇温、2時間保持することにより5wt%Ni/SiO2(比較触媒1)を得た。この比較触媒1のNi未含浸(Ni含浸前)の担体について構造分析を窒素吸着測定法によって行った。その細孔径分布を図4に示す。細孔直径が63.8nmにピークを有し、細孔容積は1.29ml/g、表面積は84m2/gであった。
【0039】
比較例2
〔5wt%Ni/20wt%Al23/SiO2・バイモーダル(Zrを含まない)の調製〕
実施例1で用いたシリカ3gにアルミナゾル(日産化学工業製、「品番 アルミナゾル520」(Al23:21%)を4.688g、Incipient−Wetness(IW)法で含浸した。その後、アスピレーターを用い1時間減圧し、400℃まで1時間で昇温、2時間保持の条件で焼成し、バイモーダル担体を調製した。次いで、該バイモーダル担体3gにNi(NO32・6H2O(関東化学社製、特級)を0.782g、IW法で含浸し、120℃で12時間乾燥させた後、400℃まで3時間で昇温、2時間保持して焼成することにより、5wt%Ni/20wt%Al23/SiO2(比較触媒2)得た。この比較触媒2のNi未含浸(Ni含浸前)の担体について構造分析を窒素吸着測定法によって行った。その細孔径分布を、図5に示す。細孔直径が7.43nmと60nmにピークを有し、細孔容積は、0.91ml/g、表面積は112m2/gであった。
【0040】
比較例3
〔5wt%Ni−10wt%CeO2/20wt%Al23/SiO2の調製〕
比較例2と同様の方法でバイモーダル担体を調製した。次いで、該バイモーダル担体3gにNi(NO32・6H2O(関東化学社製、特級)を0.782gおよびCe(NO32・6H2O(関東化学社製、特級)を1.034g混合させた水溶液をIW法で含浸し、120℃で12時間乾燥させた後、400℃まで3時間で昇温、2時間保持することにより5wt%Ni−10wt%CeO2/20wt%Al23/SiO2(比較触媒3)を得た。
【0041】
[水素製造実験]
実施例4,5、比較例4〜6
水蒸気改質の原料として表−1に示す菜種油を用い、以下に示す触媒の還元不動化処理及び前処理をした後に、表−2の反応条件Iで水蒸気改質反応を行
った。表3に、使用した触媒、反応温度及び結果を示す。また、水素生成量の経時変化を図6に示す。
【0042】
(1)触媒還元不動化処理
まずN2ガスを40ml/minで1時間かけて流し不純物を取り除いた。その後、室温から400℃まで3時間で昇温させ、途中100℃を越えたところでH2ガスを40ml/minで流した。その後400℃を10時間保持した。還元が終わった後、室温まで冷まし、N2ガスを40ml/minで1時間かけて流しライン内のH2ガスを取り除いた。1%O2ガス(N2ガス希釈)を10ml/minで一晩かけて流し、触媒表面上の不動化処理を行った。
(2)前処理及び改質反応処理
上と同様、N2ガスによる1時間前処理を行った。その後400℃まで昇温し、途中100℃超えで水素に切り替えた。還元はすでに還元不動化してあるので400℃で1時間行った。その後、反応温度である600℃、又は700℃まで昇温した。安定後、まず水素を窒素(40ml/min)に切り替え、スチームを0.175ml/min流し、5分後に原料の菜種油を0.0050g/min流した。リアクター温度が安定した時点で反応開始とした(窒素はキャリアーとして油と水の安定化のため添加した)。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
表3に示されるように、本発明の水素製造用触媒を用いた水素製造実験では、転化率、H2発生速度、CO、CO2の選択率がいずれも良好である。この効果は、反応温度が600℃のより、700℃の場合の方が良好である(実施例4,5)。また、実施例4,5はメタン選択率が低く、CO、CO2の選択率が高いことから、メタンリフォーム活性にも優れることが判る。これに対し、本発明以外の水素製造用触媒を用いた場合は、これらの効果は、いずれも実施例4,5より劣っている(比較例4〜6)。
また、図6よれば、本発明の触媒である、触媒1,2を用いた場合、H2発生量が多く、かつ、それが経時変化することなく安定している(実施例4(D),5(E))。これに対し、本発明以外の比較触媒1,2,3を用いた場合は、H2発生量は実施例1,2より少なく、しかも経時変化して減少することが確認できる(比較例4(A)、5(B)、6(C))。
【0047】
実施例6,7、及び比較例7
表4に示すように触媒1,3及び比較触媒1を用いて実施例4と同様の水素製造実験を行った。但し反応条件は表2の反応条件IIで行った。結果を表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
表4より、本発明の触媒1,3を用いると比較触媒1を用いた場合に比較してH2発生速度が高いことが分る(実施例6,7比較例7)。また、触媒3を用いると6時間反応後においてもC2以上の炭化水素の発生を大幅に抑制されることから、該触媒は、高活性かつ高安定性を有することが分る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、植物油脂など炭素鎖が長い炭化水素や炭素鎖が長い酸素を含有する炭化水素を水素源とする場合でも、優れた改質活性及び耐久性を示す水素製造用触媒を提供することができる。
また、本発明は、上記水素製造用触媒を用いて、植物油脂など炭素鎖が長い炭化水素や炭素鎖が長い酸素を含有する炭化水素を水素源とする場合でも、効率的に水素を製造する方法を提供することができる。したがって、水素燃料は燃料電池用水素の製造に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
図6のA 比較例4
図6のB 比較例5
図6のC 比較例6
図6のD 実施例4
図6のE 実施例5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質担体に活性金属を担持した触媒であって、当該多孔質担体が、ジルコニウムを含み、かつ細孔直径が2〜10nmの細孔と20〜200nmの細孔を有するバイモーダル構造を有することを特徴とする水素製造用触媒。
【請求項2】
多孔質担体が細孔直径2〜8nmの細孔および20〜100nmの細孔を有することを特徴とする請求項1に記載の水素製造用触媒。
【請求項3】
多孔質担体が細孔直径2〜7nmの細孔および20〜50nmの細孔を有することを特徴とする請求項1に記載の水素製造用触媒。
【請求項4】
多孔質担体が、ジルコニウム以外に、シリカ、アルミナ、及びチタニアから選ばれる少なくとも一種を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の水素製造用触媒。
【請求項5】
活性金属が、Ni、Co、Ru、Rh、Ir、Pt、及びPdから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載の水素製造用触媒。
【請求項6】
活性金属がNiである請求項5に記載の水素製造用触媒。
【請求項7】
さらに希土類金属を含む請求項1〜6のいずれかに記載の水素製造用触媒。
【請求項8】
希土類金属がセリウムである請求項7の水素製造用触媒。
【請求項9】
炭化水素もしくは酸素を含有する炭化水素と請求項1〜8いずれかに記載の水素製造用触媒を接触させる工程を含む、水素製造方法。
【請求項10】
前記請求項9における炭化水素もしくは酸素を含有する炭化水素と水素製造用触媒を接触させる工程において、水蒸気改質反応、自己熱改質反応、部分酸化改質反応又は炭酸ガス改質反応のいずれかの改質反応が行われることを特徴とする請求項9に記載の炭化水素改質による水素製造方法。
【請求項11】
前記請求項10において、酸素を含有する炭化水素が植物油脂である水素製造方法。
【請求項12】
前記請求項11において、植物油脂が菜種油、ごま油、ひまわり油から選ばれる少なくとも一種である水素製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−188238(P2010−188238A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33156(P2009−33156)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】