水素製造装置および水素製造方法
【課題】設置場所を有効に利用することができる水素製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の水素製造装置は、第1形態から第2形態に変形可能な水素製造装置であって、少なくとも1つの水素製造モジュールを備え、前記水素製造モジュールは、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1形態は、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、第2形態は、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する形態であることを特徴とする。
【解決手段】本発明の水素製造装置は、第1形態から第2形態に変形可能な水素製造装置であって、少なくとも1つの水素製造モジュールを備え、前記水素製造モジュールは、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1形態は、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、第2形態は、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する形態であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置および水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
これまでに、光電変換と水素発生を一体化した水素製造装置が開示されている(例えば、特許文献1)。このような水素製造装置を用いることにより、太陽光エネルギーを効率よく水素として貯蔵することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4594438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の太陽光エネルギーを利用した水素製造装置では、できるだけ多くの太陽光エネルギー利用しようとするため、広い設置面積を必要とする。また、従来の水素製造装置は、一般的に固定設置されるために、太陽光を受光できない夜間や、設置場所を他の用途に一時的に利用したい場合でも、設置場所は他の用途に利用できない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、設置場所を有効に利用することができる水素製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能な水素製造装置であって、変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュールを備え、前記水素製造モジュールは、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、第1形態は、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、第2形態は、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する形態であることを特徴とする水素製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。また、第1気体および第2気体のうち一方は水素であるため、水素を製造することができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面側に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面側に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射する光量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0010】
本発明によれば、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態から、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する第2形態へ水素製造装置を変形させることが可能であり、第2形態から第1形態へ水素製造装置を変形させることが可能であるため、日射がある時に水素製造装置を第1形態とすることにより、光電変換部の受光面に入射する光量が多くなり水素を効率よく製造することができ、日射がない時や水素製造装置の設置場所を他の用途に利用したい時などに水素製造装置を第2形態とすることにより、水素製造装置がコンパクト化され設置面積を狭くすることができる。水素製造装置をコンパクト化することができるにより、空いたスペースを他の用途に用いることができ、水素製造装置の設置場所を有効に活用することができる。また、水素製造装置をコンパクト化することができることにより、水素製造装置の収納が容易になり、また、水素製造装置の設置場所の変更が容易になる。また、寒冷地に水素製造装置を設置する場合、電解液が凍ることにより水素製造装置が破損する場合があると考えられるが、水素製造装置を第2形態としコンパクト化することにより、容易に水素製造装置を寒気から保護することが可能となる。また、同様に高温時や強風時など水素製造装置が破損するおそれがある場合に水素製造装置を容易に保護することもできる。さらに本発明の水素製造装置を外部電力を利用した水電解装置として利用するとき、コンパクト化された第2形態とすることにより発生させた水素を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略平面図であり、(b)はその概略側面図である。
【図3】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略平面図である。
【図4】図3の点線A−Aにおける水素製造モジュールの概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略裏面図である。
【図6】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図である。
【図7】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略上面図である。
【図8】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図である。
【図9】(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略平面図であり、(b)はその概略側面図である。
【図10】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図である。
【図11】(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略側面図であり、(b)はその概略上面図である。
【図12】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略裏面図である。
【図13】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図18】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図19】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図20】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図21】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図22】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図23】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図24】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水素製造装置は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能な水素製造装置であって、変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュールを備え、前記水素製造モジュールは、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、第1形態は、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、第2形態は、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する形態であることを特徴とする。
【0013】
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは複数であり、第1形態は、各水素製造モジュールの前記光電変換部の受光面に太陽光が入射できるように各水素製造モジュールが並んだ形態であり、第2形態は、各水素製造モジュールが積重した形態であることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置を第1形態としたとき、各水素製造モジュールの光電変換部に入射する光量を多くすることができ、水素製造装置を第2形態としたとき、水素製造装置をコンパクト化することができ、設置面積を狭くすることができる。
本発明の水素製造装置において、複数の水素製造モジュールを連結する連結部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、複数の水素製造モジュールを連結部により連結することができ、複数の水素製造モジュールの配置を変えることにより水素製造装置の形態を変化させることができる。
【0014】
本発明の水素製造装置において、前記連結部は、回転軸を含む構造を有することが好ましい。
このような構成によれば、連結部が回転軸により回転自在になり、各水素製造モジュールを可動とすることができる。このことにより、水素製造装置を、第1形態から第2形態へまたは第2形態から第1形態へ変形させることができる。
本発明の水素製造装置において、前記連結部は、案内溝を有し、少なくとも1つの水素製造モジュールは、前記案内溝に沿って摺動することが好ましい。
このような構成によれば、水素製造モジュールを案内溝に沿って摺動させることにより、水素製造装置を、第1形態から第2形態へまたは第2形態から第1形態へ変形させることができる。
【0015】
本発明の水素製造装置において、各水素製造モジュールは、それぞれ分離可能であり、かつ、第1形態において第1連結部により連結され、第2形態において第2連結部により連結されることが好ましい。
このような構成によれば、各水素製造モジュールを第1連結部で連結することにより水素製造装置を第1形態とすることができ、各水素製造モジュールを第2連結部で連結することにより水素製造装置を第2形態とすることができる。
本発明の水素製造装置において、第1および第2連結部は、各水素製造モジュールから分離可能であることが好ましい。
このような構成によれば、第1連結部と第2連結部とを第1形態と第2形態とで取り替えることができ、その形態に適した連結部を用いることができる。
【0016】
本発明の水素製造装置において、前記連結部は、磁石を含むことが好ましい。
このような構成によれば、磁石の引力により各水素製造モジュールを連結することができる。また、このことにより各水素製造モジュールを容易に分離することができる。
本発明の水素製造装置において、前記連結部は、各水素製造モジュールに電解液を供給する給水管、各水素製造モジュールから第1気体を排出する第1気体排出管、または各水素製造モジュールから第2気体を排出する第2気体排出管であることが好ましい。
このような構成によれば、連結部を給水管、第1気体排出管または第2気体排出管とすることができ、部品数を低減することができる。
【0017】
本発明の水素製造装置において、各水素製造モジュールは、電解液を水素製造モジュール内に供給する給水口と、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口とを備え、前記給水口、第1気体排出口または第2気体排出口に液漏れ防止機構を備えることが好ましい。
このような構成によれば、給水管、第1気体排出管または第2気体排出管を水素製造モジュールから取り外した場合、電解液が流出することを防止することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、柔軟性を有し巻き上げ可能なシート状であり、第1形態は、シート状の前記水素製造モジュールを広げた形態であり、第2形態は、シート状の前記水素製造モジュールを巻き上げた形態であることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置を第1形態とすることにより、水素製造モジュールの光電変換部に入射する光量を多くすることができ、水素製造装置を第2形態とすることにより、水素製造装置の設置面積を狭くすることができる。また、水素製造装置の設置場所を容易に変更することができる。
【0018】
本発明の水素製造装置において、第1外部回路と電気的に接続できる切換部をさらに備え、前記切換部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力させる回路とを切り換えることができることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の起電力を必要に応じて第1外部回路、または第1または第2電解用電極へ出力することができ、光電変換部の起電力を有効に活用することができる。
本発明の水素製造装置において、前記切換部は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができることが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極を有効に活用することができる。また、水素製造装置を第2形態としたとき、水素製造装置をコンパクトな水電解装置として利用することができる。
【0019】
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に絶縁部を備えることが好ましい。
このような構成によれば、第2電解用電極と光電変換部の裏面とを電気的に分離することができる。
【0020】
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極を備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を効率よく出力することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部を備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0021】
本発明の水素製造装置において、第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができる。
本発明の水素製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第1導電部とを容易に電気的に接続することができる。
【0022】
本発明の水素製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第1導電部とを容易に電気的に接続することができる。
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより起電力を生じさせることができる。
【0023】
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を容易に第1電解用電極と第2電解用電極とに出力することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に絶縁部を備え、前記絶縁部は、第1区域上および第2区域上に開口を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる電子および正孔を効率よく分離することができる。
【0024】
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる電子および正孔を効率よく分離することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、透光性基板を備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、容易に光電変換部を形成することができる。
【0025】
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力の電圧を大きくすることができる。
本発明の水素製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から効率よく水素および酸素を製造することができる。
【0026】
本発明の水素製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、電解液から効率よく水素および酸素を製造することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、触媒の表面積を大きくすることができる。
【0027】
本発明の水素製造装置において、前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素を効率よく製造することができる。
本発明の水素製造装置において、前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、酸素を効率よく製造することができる。
【0028】
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、透光性基板と、電解液室と、第1電解用電極および第2電解用電極の上に設けられた背面基板とを備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、電解液室に電解液を導入することができ、第1および第2電解用電極に電解液を接触させることができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁を備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体と第2気体を隔壁により分離することができる。
【0029】
本発明の水素製造装置において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液室のプロトン濃度の偏りを解消することができる。
また、本発明は、本発明の水素製造装置を第1形態で前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、前記水素製造モジュールの下部から前記水素製造モジュールに電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記水素製造モジュールの上部から第1気体および第2気体を排出する水素製造方法も提供する。
本発明の水素製造方法によれば、光電変換部に太陽光を入射させることにより水素を製造することができる。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0030】
水素製造装置の構成
図1は本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図であり、図2(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略平面図であり、(b)はその概略側面図である。図3は、本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略平面図であり、図4は、図3の点線A−Aにおける水素製造モジュールの概略断面図である。図5、12は、本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略裏面図である。
図6は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図であり、図7は、図6に示した水素製造装置の概略上面図である。また、図8は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図であり、図9(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略平面図であり、図9(b)はその概略側面図である。また、図10は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図であり、図11(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略側面図であり、図11(b)はその概略上面図である。
【0031】
本実施形態の水素製造装置21は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能な水素製造装置21であって、変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュール6を備え、水素製造モジュール6は、受光面および裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面側に設けられた第1電解用電極8および第2電解用電極7とを備え、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、第1形態は、水素製造装置21に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、第2形態は、1つの水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2が位置する形態であることを特徴とする。
以下、本実施形態の水素製造装置について説明する。
【0032】
1.水素製造装置の形態
本実施形態の水素製造装置21は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能である。
第1形態とは、水素製造装置21がとり得る形態であり、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態である。また、第1形態は、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の60、70、80、90、95または99%以上が太陽光を直接受光可能な形態であってもよく、この直接受光可能な範囲は上記数値のうち2つの数値の間であってもよい。
第1形態は、第2形態に比べ、水素製造モジュール6が横向きに広がった形態であってもよく、水素製造モジュール6が縦向きに広がった形態であってもよく、斜めやランダムに広がった形態であってもよい。
第2形態とは、水素製造装置21がとり得る形態であり、1つの水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる前記光電変換部が位置する形態である。
また、第2形態は、1つの水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面の一部と、同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面の一部とが重なる形態であってもよい。第2形態は、水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面のうち50、60、70、80、90または99%以上が同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面と重なった形態であってもよく、この重なる範囲は、上記数値のうち2つの数値の間であってもよい。また、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面のうち50、60、70、80、90または99%以上が同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面と重なった形態であってもよく、この重なる範囲は、上記数値のうち2つの数値の間であってもよい。
また、水素製造装置21は、モーターなどの動力部により自動的に第1形態と第2形態との間の変形をできるように設けてもよく、手動で第1形態と第2形態との間の変形をできるように設けてもよい。また、水素製造装置21を自動的に変形できるように設ける場合、時間帯や天気、季節などに応じて自動的に変形するように制御部により制御されてもよい。
本実施形態の水素製造装置21は、1つの水素製造モジュール6からなってもよく、複数の水素製造モジュール6からなってもよい。例えば、図1、2、6〜9のように複数の水素製造モジュール6からなってもよく、図10、11のように1つの水素製造モジュール6からなってもよい。なお、変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュールとは、1つの水素製造モジュール6が変形するようなものであってもよく、複数の水素製造モジュール6がその位置関係を変化させることにより変形するようなものであってもよい。
【0033】
まず、本実施形態の水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6からなる場合について説明する。この場合、各水素製造モジュール6は、連結部12により連結することができる。連結部12は、本実施形態の水素製造装置21が第1形態と第2形態の両方の形態をとることを可能とする部材である。
連結部12は、例えば、図1、2に示したヒンジ部材26のような回転軸を含む構造を有するものであってもよく、例えば、図6、7に示した案内溝55とレール部54のような少なくとも1つの水素製造モジュール6が案内溝に沿って摺動する構造を有するものであってもよく、例えば、図8、9に示した磁石部57のような磁石を有するものであってもよい。また、連結部12は、例えば、図1、2、6、8、9に示した第1気体排出管22、第2気体排出管23または給水管24のような各水素製造モジュールを連結する配管であってもよい。
【0034】
連結部12が図1、2に示したヒンジ部材26のように回転軸を有する構造を有する場合、ヒンジ部材26(連結部12)を隣接する2つの水素製造モジュール6間に設け、複数の水素製造モジュール6を一列に連結することができる。このように連結した場合、ヒンジ部材26を回転軸として、隣接する2つの水素製造モジュール6が開閉するように変形させることができる。また、ヒンジ部材26の折れ曲がる向きが交互に変わるようにヒンジ部材26を設けることにより、水素製造装置21を蛇腹折りに折りたたむことができる。例えば、図1のようにヒンジ部材26により連結された各水素製造モジュール6a〜dが広がるようにヒンジ部材26を変形させることにより、水素製造装置21を水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態とすることができる。このことにより、水素製造モジュール6a〜dの光電変換部2の受光面に入射する光量を多くすることができ、水素生成量を多くすることができる。
【0035】
また、図1に示したような第1形態の水素製造装置21を変形させ、図2に示したような第1水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の受光面と、第2水素製造モジュール6bに含まれる光電変換部2の受光面とが重なった形態とすることができる。また、このことにより、水素製造装置21を、水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の裏面側に、水素製造モジュール6b、6c、6dに含まれる光電変換部2が位置する第2形態とすることができる。具体的には、図1に示したヒンジ部26により連結された水素製造モジュール6a〜dを蛇腹折りに折りたたむことにより、図2に示したような第2形態に変形させることができる。このことにより、水素製造装置21をコンパクト化することができ、水素製造装置21の設置面積を狭くすることができる。なお、図1に示した第1形態において各水素製造モジュール6を連結していた第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24は、各水素製造モジュール6と分離可能に設けることができる。このことにより、第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24を各水素製造モジュール6から分離して、水素製造装置21を第1形態から第2形態に変形させることができる。なお、この場合、水素製造モジュール6の第1気体排出口20、第2気体排出口19、給水口18または給水管24に液漏れ防止機構25を設けることができる。このことにより、第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24を水素製造モジュール6から分離しても電解液が液漏れすることを防止することができる。液漏れ防止機構25は、例えば、スプリングと弁体を含む逆流防止弁からなってもよく、ビー玉逆止弁からなってもよい。
【0036】
また、第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24は、水素製造装置21が第1形態の場合と第2形態の場合とで異なる形態の部材からなってもよい。このことにより、例えば、図1に示した第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24と、図2に示した第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24のように、各水素製造モジュール6と連結する部分の幅が第1形態と第2形態とで異なる部材を用いることができる。このことにより、第2形態において、水素を回収するための配管距離を短くすることができ、第2形態の水素製造装置21で外部電力を用いて電解液を電気分解し水素を発生させる場合、効率よく水素を回収することができる。
また、第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24は、伸縮性や柔軟性を有する管からなってもよい。これらの管が伸縮性または柔軟性を有することにより、これらの管を水素製造モジュール6から取り外すことなく水素製造装置21を第1形態から第2形態へまたは第2形態から第1形態へ変形させることができる。また、これらの管が伸縮性を有することにより、水素製造装置21を第2形態としたとき、配管距離を短くすることができる。伸縮性および柔軟性を有する管は、例えば、蛇腹管を用いることができ、柔軟性を有する管は、例えば、ゴム製のチューブを用いることができる。
なお、以上の第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24についての説明は、矛盾が生じない限り後述する他の例についても当てはまる。
【0037】
連結部12が案内溝55を有し、少なくとも1つの水素製造モジュール6が案内溝55に沿って摺動する場合、より具体的には、図6、7に示したように水素製造装置21の裏面側に案内溝55が設けられ、水素製造装置21の受光面側にレール部54が設けられている場合、水素製造モジュール6b、c、dが案内溝55に沿って摺動するように連結部12を設けることができ、連結部12により各水素製造モジュールを一列に連結することができる。このように各水素製造モジュールを連結した場合、水素製造モジュール6b、c、dが隣接する水素製造モジュール6の裏面に設けられた案内溝55に沿って摺動することにより水素製造装置21は、第1形態から第2形態に変形することができ、第2形態から第1形態に変形することができる。
【0038】
例えば、図6、7のように、水素製造装置21を、水素製造モジュール6aに設けられた案内溝55の端と水素製造モジュール6bに設けられたレール部54の端部とが嵌合し、水素製造モジュール6bの案内溝55の端と水素製造モジュール6cのレール部54の端部とが嵌合し、水素製造モジュール6cの案内溝55の端と水素製造モジュール6dのレール部54の端部とが嵌合する形態とすることにより、水素製造装置21を、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態にすることができる。このことにより、水素製造モジュール6a〜dの光電変換部2の受光面に入射する光量を多くすることができ、水素生成量を多くすることができる。
【0039】
図6、7に示したような第1形態の水素製造装置21に含まれる水素製造モジュール6b、c、dを隣接する水素製造モジュールの裏面に設けられた案内溝に沿うように摺動させることにより、水素製造モジュール6a〜dが積重させることができ、水素製造装置21を、水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の裏面側に、水素製造モジュール6b、6c、6dに含まれる光電変換部2が位置する第2形態とすることができる。また、水素製造装置21を、水素製造モジュール6bの光電変換部2の受光面と、水素製造モジュール6aの光電変換部2の受光面とが重なる形態に変形させることができる。このことにより、水素製造装置21をコンパクト化することができ、水素製造装置21の設置面積を狭くすることができる。
【0040】
図6、7に示した例では、案内溝を水素製造モジュール6の裏面に設けたが、案内溝は、水素製造モジュール6の受光面に設けられてもよく、上部に設けられてもよく、下部に設けられてもよい。また、案内溝は、水素製造モジュール6と別部材の連結部6に設けられてもよく、例えば、戸や障子を立てる溝のような形態であってもよい。
【0041】
連結部12は、各水素製造モジュールを分離可能となるようなものであってもよい。このような連結部12としては、例えば、磁石の磁力により各水素製造装置モジュールを連結するものであってもよく、はめ込み式構造により各水素製造モジュールを連結するものであってもよく、おねじ構造とめねじ構造の組み合わせにより各水素製造モジュールを連結するものであってもよい。また、第1気体排出管22、第2気体排出管19または給水管24が水素製造モジュール6から分離可能な場合、連結部12は、第1気体排出管22、第2気体排出管19または給水管24であってもよい。
また、この場合、水素製造装置21が第1形態をとる場合と、第2形態をとる場合とで、異なる連結部12により各水素製造モジュール6が連結されてもよい。
以下に、各水素製造モジュール6が磁石を含む連結部により連結された例について説明するが、連結部12がはめ込み式構造を有する場合、ねじ構造を有する場合、配管からなる場合などについても、連結部12を置き換えた説明が矛盾のない限り当てはまる。
【0042】
図8のように、連結部12が磁石部57からなり、各水素製造モジュール6がその側面に磁石部57(第1連結部12)を有する場合、各水素製造モジュール6の側面間を磁石部57で連結することができる。このことにより、水素製造装置21を、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態にすることができる。このことにより、水素製造モジュール6a〜dの光電変換部2の受光面に入射する光量を多くすることができ、水素生成量を多くすることができる。
図8のような水素製造装置21は、例えば、第1気体排出管22、第2気体排出管19および給水管24を各水素製造モジュール6から取り外し、各磁石部57により連結した各水素製造モジュール6を分離することにより、各水素製造モジュール6を分離することができる。
【0043】
図9のように、連結部12が磁石部57からなり、各水素製造モジュール6がその受光面側および裏面側に磁石部57(第2連結部12)を有する場合、隣接する2つの水素製造モジュール6の受光面と裏面とを連結することができる。このことにより、水素製造装置21を、水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の裏面側に、水素製造モジュール6b、6c、6dに含まれる光電変換部2が位置する第2形態とすることができる。また、水素製造装置21を、水素製造モジュール6bに含まれる光電変換部2の受光面と、水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の受光面とが重なる形態とすることができる。
このことにより、水素製造装置21をコンパクト化することができ、水素製造装置21の設置面積を狭くすることができる。
なお、以上に挙げた、水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6からなる場合の例は、それぞれ組み合わせることもできる。また、第2形態は、複数の水素製造装置21を連結部により組み合わせた形態であってもよい。このことにより、水素製造装置21の設置場所をより有効に利用することができる。
【0044】
次に、本実施形態の水素製造装置21が1つの水素製造モジュール6からなる場合について説明する。この場合、例えば、水素製造モジュール6は、柔軟性を有するシート状とすることができる。このような水素製造モジュール6は、例えば、柔軟性を有するシートの上に光電変換部2ならびに第1および第2電解用電極を形成することにより製造することができる。
水素製造装置21に含まれる水素製造モジュール6が柔軟性を有するシート状であるとき、水素製造モジュール6が変形することにより、水素製造装置21は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形することができる。また、柔軟性を有するシート状の水素製造モジュール6は、巻き上げ可能であってもよい。
例えば、柔軟性を有し巻き上げ可能なシート状の水素製造モジュール6を広げた形態とすることにより、水素製造装置21を、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態とすることができる。
例えば、図10のように水素製造モジュール6を広げることにより、水素製造装置21を第1形態とすることができる。このことにより、水素製造モジュール6の光電変換部2の受光面に入射する光量を多くすることができ、水素生成量を多くすることができる。
【0045】
また、例えば、柔軟性を有し巻き上げ可能なシート状の水素製造モジュール6を巻き上げた形態とすることにより、水素製造装置21を、水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の一部の受光面側又は裏面側に、同じ水素製造モジュール6に含まれる他の一部の光電変換部2が位置する第2形態とすることができる。また、このことにより、水素製造装置21を、水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面の一部と、同じ水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面の他の一部とが重なる形態とすることができる。
例えば、図11のように水素製造モジュール6を巻き上げた形態とすることにより、水素製造装置21を第2形態とすることができる。このことにより、水素製造装置21をコンパクト化することができ、水素製造装置21の設置面積を狭くすることができる。なお、第2形態における水素製造装置の形態は、水素製造モジュール6を巻き上げた形態に限定されず、例えば、水素製造モジュール6を蛇腹折りにしたような形態であってもよく、他の形状に折りたたんだような形態であってもよい。
なお、この水素製造装置21が1つの水素製造モジュール6からなる場合の例は、前述の水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6からなる場合の例と組み合わせることもできる。また、第2形態は、複数の水素製造装置21を連結部により組み合わせた形態であってもよい。このことにより、水素製造装置21の設置場所をより有効に利用することができる。
【0046】
2.水素製造モジュール
水素製造モジュール6は、受光面およびその裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面側に設けられた第1電解用電極8および第2電解用電極7とを備え、光電変換部2の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられる。
水素製造装置21は、1つの水素製造モジュール6を備えてもよく、複数の水素製造モジュール6を備えてもよい。
図13〜20は、本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュール6の概略断面図であり、図3の点線A−Aにおける水素製造モジュールの概略断面図に対応する。
【0047】
3.透光性基板
透光性基板1は、本実施形態の水素製造モジュール6が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。光電変換部2を柔軟性を有する材料の上に形成した場合、水素製造モジュール6を柔軟性を有するシート状に形成することが可能となり、水素製造モジュール6を変形させることにより、水素製造装置21を第1形態から第2形態へまたは第2形態から第1形態へ変形させることが可能となる。
【0048】
また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するため、透光性基板1は、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0049】
4.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図19、20のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図4、14、17のように第1導電部9を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図16のように第2電解用電極7と接触してもよい。また、第1電極4は、図13、15、18のような場合、切換部10および配線52を介して第2電解用電極7と電気的に接続することができる。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0050】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いることができる。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0051】
5.光電変換部
光電変換部2は、受光面およびその裏面を有し、光電変換部2の裏面側に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。なお、水素製造装置21の受光面とは、光電変換部2の受光面と同じ側の水素製造装置21の面であり、水素製造装置21の裏面とは、光電変換部2の裏面と同じ側の水素製造装置21の面である。
また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図4、13〜18のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図19、20のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図19、20のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0052】
第1気体および第2気体のうちどちらか一方が水素であり、他方が酸素の場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図17、20のように並べて設けられた光電変換層を第3導電部33により直列接続した構造を有することができる。
【0053】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0054】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0055】
5−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0056】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0057】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0058】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0059】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0060】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体部37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体部36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0061】
n型半導体部37およびp型半導体部36は、図19、20のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、また、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図20のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第3導電部33により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体部37およびp型半導体部36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0062】
5−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0063】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0064】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0065】
5−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0066】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0067】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0068】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0069】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0070】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0071】
5−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0072】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0073】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0074】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0075】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0076】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0077】
6.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面上に設けることができる。また、第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間および光電変換部2の裏面と絶縁部11との間に設けることもできる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第2電極5は、切換部10および配線52を介して第1電解用電極8と電気的に接続してもよい。
また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0078】
7.第1導電部
第1導電部9は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第1導電部9を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
また、第1導電部9は、図4、14のように光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1導電部9が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第1導電部9は、図17のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0079】
第1導電部9の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0080】
8.絶縁部
絶縁部11は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図4、14のように第1導電部9を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部11を設けることができる。
また、絶縁部11は、例えば、図4、13〜17のように第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。このことにより、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間でリーク電流が生じるのを防止することができる。また、光電変換部2が図19、20のように受光することにより光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に電位差を生じるものである場合、絶縁部11は、第1電解用電極8と光電変換部2の裏面との間、および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けられ、絶縁部11は、第1区域上および第2区域上に開口を有してもよい。このことにより、光電変換部2が受光することにより形成される電子およびホールを効率よく分離することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、絶縁部11は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、リーク電流の発生を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
【0081】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0082】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0083】
9.第2導電部、第3導電部
第2導電部29は、絶縁部11と第2電解用電極7との間、または、絶縁部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。第2導電部29を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じた起電力を効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7に出力することができ、オーミックロスを低減することができる。第2導電部29は、例えば、図17、19、20に示すように設けることができる。
第2導電部29は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、オーミック抵抗の上昇を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第3導電部33は、図17、20のように光電変換層を直列接続するように設けることができる。
【0084】
第2導電部29または第3導電部33は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0085】
10.第1電解用電極、第2電解用電極
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側にそれぞれ設けられる。図4のように、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2の裏面上に設けられてもよい。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側の面とその裏面であり電解液に接触可能な面とをそれぞれ有することができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられる。例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、図4、16、17のように、第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図19、20のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することができる。
【0086】
図14、15のように第1電解用電極8が光電変換部2の裏面または第2電極5と接触していない場合、第1電解用電極8は、切換部10を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。また、図13、15、18のような場合、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と切換部10を介して電気的に接続することができる。
【0087】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であってもよく、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有してもよく、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、図12のように設けることができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、安定して第1気体および第2気体を発生させることができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7に電解液に対する耐食性を有する金属板または金属膜を用いることができる。
【0088】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部2と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、この場合、第1電解用電極8または第2電解用電極7を電解液に対する遮液性を有する部分と多孔質からなる部分の二層構造とすることもできる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素である。
【0089】
11.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒を含んでよく、水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より速い反応速度で水素を発生させることができる。
【0090】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0091】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0092】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0093】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0094】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0095】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0096】
12.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒を含んでもよく、酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部で生じる起電力により、より速い反応速度で酸素を発生させることができる。
【0097】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0098】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「11.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0099】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0100】
13.背面基板
背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。
また、背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と背面基板14との間に空間が設けられるように設けることができる。この空間を電解液室15とすることができ、電解液室15に電解液を導入することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7を電解液に接触させることができる。また、背面基板14に箱状のものを用いる場合、背面基板14は箱体の底の部分であってもよい。
【0101】
また、背面基板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な背面基板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0102】
14.隔壁
隔壁13は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。また、隔壁13は、図18のように第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に設けることもできる。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方を複数設ける場合、隔壁13は、図12のように並列に並ぶように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と背面基板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0103】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0104】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0105】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0106】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0107】
15.シール材
シール材16は、透光性基板1と背面基板14を接着し、水素製造モジュール6内の電解液および水素製造モジュール6内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。背面基板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と透光性基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0108】
ここではシール材16と記しているが、透光性基板1と背面基板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0109】
16.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
【0110】
17.給水口、給水管
給水口18は、水素製造モジュール6に含まれるシール材16の一部、もしくは背面基板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく水素製造モジュール6へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0111】
また、給水口18は、給水管24と連結することができ、給水口18と給水管24とを導通させることができる。このことにより給水管24を介して水素製造モジュール6に電解液を供給することができる。また、給水管24は、給水口18から取り外すことができるように設けることができる。このことにより、水素製造モジュール6から給水管24を取り外して、水素製造装置21を第1形態から第2形態へ変形させることができる。また、水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6を有する場合、給水管24は各水素製造モジュール6の給水口と連結することができ、給水管24が複数の水素製造モジュール6を連結させることができ、給水管24を連結部12とすることもできる。
【0112】
また、給水口18、給水管24は、液漏れ防止機構を有することができる。このことにより、水素製造装置21を第1形態から第2形態へ変形させるとき、給水口18から給水管24と取り外しても、電解液の漏れを最小限とすることができる。液漏れ防止機構は、例えば、例えば、スプリングと弁体を含む逆流防止弁からなってもよく、ビー玉逆止弁からなってもよい。
【0113】
18.第1気体排出口、第2気体排出口、第1気体排出管および第2気体排出管
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、第1電解用電極8の端部および第2電解用電極7の端部にそれぞれ近接して設けることができる。このことにより、第1気体排出口20から第1気体を回収することができ、第2気体排出口19から第2気体を回収することができる。
【0114】
また、第1気体排出口20は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように第1形態の水素製造装置21を設置したとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように第1形態の水素製造装置21を設置したとき、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。このことにより、第1形態の水素製造装置21を光電変換部2の受光面が水平面に対して傾斜するように設置し、前記受光面に太陽光を入射させた場合に、第1電解用電極8で発生させた第1気体を気泡として電解液中を上昇させ第1気体排出口20から回収することができ、第2電解用電極7で発生させた第2気体を気泡として電解液中を上昇させ第2気体排出口19から回収することができる。
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、例えば、シール材16に開口を設けることにより形成することができる。また、第1気体排出口20、第2気体排出口19に電解液が流入しないように流入防止弁を設けることもできる。
【0115】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出管22と連結および導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出管23と連結および導通することができる。
また、第1気体排出管22および第2気体排出管23は、それぞれ第1気体排出口20および第2気体排出口19から取り外すことができるように設けることができる。このことにより、水素製造モジュール6から第1気体排出管22および第2気体排出管23を取り外して、水素製造装置21を第1形態から第2形態へ変形させることができる。また、水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6を有する場合、第1気体排出管22および第2気体排出管23は、それぞれ各水素製造モジュール6の第1気体排出口20および第2気体排出口19と連結することができ、第1気体排出管22および第2気体排出管23が複数の水素製造モジュール6を連結させることができ、第1気体排出管22または第2気体排出管23を連結部12とすることもできる。
【0116】
また、第1気体排出口20および第2気体排出口19は、液漏れ防止機構を有することができる。このことにより、水素製造装置21を第1形態から第2形態へ変形させるとき、第1気体排出口20および第2気体排出口19からそれぞれ第1気体排出管22および第2気体排出管23と取り外しても、電解液の漏れを防止することができる。液漏れ防止機構は、例えば、例えば、スプリングと弁体を含む逆流防止弁からなってもよく、ビー玉逆止弁からなってもよい。
【0117】
19.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素および酸素を製造することができる。
【0118】
20.切換部
水素製造装置21または水素製造モジュール6は、切換部10を有することができる。切換部10は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路とを切り換えることができる。このことにより、水素製造装置21を第1形態とし、水素製造モジュール6の光電変換部2に光を入射させたとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ電力として供給でき、また、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部10が第1外部回路と電気的に接続する方法は、特に限定されないが、例えば、切換部10が出力端子を備え、出力端子を介して第1外部回路と電気的に接続してもよい。
【0119】
また、切換部10は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる。このことにより、第2外部回路から入力される起電力を利用して、電解液から第1気体および第2気体を製造することができる。水素製造装置21が第1形態のときであっても、第2形態のときであっても第2外部回路から入力される起電力を利用して第1気体および第2気体を製造することができるが、水素製造装置21を第2形態として第2外部回路から入力される起電力を利用して第1気体および第2気体を製造することにより、第1気体および第2気体の配管距離を短くすることができ、効率的に第1気体および第2気体を回収することができる。
切換部10が第2外部回路と電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、切換部10が入力端子を備え、入力端子を介して第2外部回路と電気的に接続してもよい。
【0120】
図面を用いて具体的に説明する。図21〜24は、本実施形態の水素製造装置の概略回路図である。なお、図21〜24は、水素製造装置21が1つの水素製造モジュール6を有する場合の概略回路図であるが、水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6を有する場合、各水素製造モジュール6の第1電極4および第2電極5を並列または直列に接続してもよく、各水素製造モジュール6の第1電解用電極8および第2電解用電極7を並列に接続してもよい。
【0121】
例えば、水素製造モジュール6が図15のような断面を有し、図21のような電気回路を有する場合、例えば、SW(スイッチ)1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW5、SW6がOFF状態であり、SW3、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW3、SW4がOFF状態であり、SW5、SW6がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5、SW6がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0122】
例えば、水素製造モジュール6が図13、18のような断面を有し、図22のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0123】
例えば、本実施形態の水素製造モジュール6が図14のような断面を有し、図23のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0124】
例えば、水素製造モジュール6が図4、16、17、19、20のような断面を有し、図24のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達しない場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達する場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7へ出力することができる。従って、図24のような電気回路を有する場合でも、切換部10により、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力させる回路とを切り換えることができる。
また、SW3、SW4がON状態であり、SW1,SW2がOFF状態の場合、第2外部回路から入力される起電力、または第2外部回路から入力される起電力と光電変換部2が受光することにより生じる起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0125】
また、切換部10は、制御部からの情報を入力することができ、入力した情報に基づき回路の切換を行うことができる。このことにより、切換部10は、制御部が選択した回路に切り換えることができる。
また、切換部10は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じている場合、第1外部回路に光電変換部2で生じた起電力を出力することができ、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じていない場合、第1電解用電極8および第2電解用電極7に光電変換部2で生じた起電力を出力することができる。
さらに切換部10は、第2外部回路の起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第2外部回路が供給する電力が電気需要より大きくなっている場合、第2外部回路が供給する電力を利用して第1気体および第2気体を製造することができる。
【0126】
水素製造方法
本実施形態の水素製造方法は、第1形態の水素製造装置21を光電変換部2の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、電解液室15に電解液を導入し、太陽光を光電変換部2の受光面に入射させることにより第1電解用電極8および第2電解用電極7からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口20および第2気体排出口19からそれぞれ第1気体および第2気体を排出させることができる。
このことにより第1気体および第2気体を製造することができ、水素を製造することができる。
【符号の説明】
【0127】
1: 透光性基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 6、6a、6b、6c、6d:水素製造モジュール 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:切換部 11:絶縁部 12:連結部 13:隔壁 14:背面基板 15:電解液室 16:シール材 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:水素製造装置 22:第1気体排出管 23:第2気体排出管 24:給水管 25:液漏れ防止機構 26:ヒンジ部材 28:光電変換層 29:第2導電部 30:透光性電極 31:裏面電極 33:第3導電部 35:半導体部 36:p型半導体部 37:n型半導体部 40:アイソレーション 46:電解液 52:配線 54:レール部 55:案内溝 57:磁石部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置および水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
これまでに、光電変換と水素発生を一体化した水素製造装置が開示されている(例えば、特許文献1)。このような水素製造装置を用いることにより、太陽光エネルギーを効率よく水素として貯蔵することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4594438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の太陽光エネルギーを利用した水素製造装置では、できるだけ多くの太陽光エネルギー利用しようとするため、広い設置面積を必要とする。また、従来の水素製造装置は、一般的に固定設置されるために、太陽光を受光できない夜間や、設置場所を他の用途に一時的に利用したい場合でも、設置場所は他の用途に利用できない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、設置場所を有効に利用することができる水素製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能な水素製造装置であって、変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュールを備え、前記水素製造モジュールは、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、第1形態は、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、第2形態は、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する形態であることを特徴とする水素製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。また、第1気体および第2気体のうち一方は水素であるため、水素を製造することができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面側に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面側に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射する光量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0010】
本発明によれば、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態から、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する第2形態へ水素製造装置を変形させることが可能であり、第2形態から第1形態へ水素製造装置を変形させることが可能であるため、日射がある時に水素製造装置を第1形態とすることにより、光電変換部の受光面に入射する光量が多くなり水素を効率よく製造することができ、日射がない時や水素製造装置の設置場所を他の用途に利用したい時などに水素製造装置を第2形態とすることにより、水素製造装置がコンパクト化され設置面積を狭くすることができる。水素製造装置をコンパクト化することができるにより、空いたスペースを他の用途に用いることができ、水素製造装置の設置場所を有効に活用することができる。また、水素製造装置をコンパクト化することができることにより、水素製造装置の収納が容易になり、また、水素製造装置の設置場所の変更が容易になる。また、寒冷地に水素製造装置を設置する場合、電解液が凍ることにより水素製造装置が破損する場合があると考えられるが、水素製造装置を第2形態としコンパクト化することにより、容易に水素製造装置を寒気から保護することが可能となる。また、同様に高温時や強風時など水素製造装置が破損するおそれがある場合に水素製造装置を容易に保護することもできる。さらに本発明の水素製造装置を外部電力を利用した水電解装置として利用するとき、コンパクト化された第2形態とすることにより発生させた水素を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略平面図であり、(b)はその概略側面図である。
【図3】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略平面図である。
【図4】図3の点線A−Aにおける水素製造モジュールの概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略裏面図である。
【図6】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図である。
【図7】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略上面図である。
【図8】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図である。
【図9】(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略平面図であり、(b)はその概略側面図である。
【図10】本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図である。
【図11】(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略側面図であり、(b)はその概略上面図である。
【図12】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略裏面図である。
【図13】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図18】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図19】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図20】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略断面図である。
【図21】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図22】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図23】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図24】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水素製造装置は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能な水素製造装置であって、変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュールを備え、前記水素製造モジュールは、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、第1形態は、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、第2形態は、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する形態であることを特徴とする。
【0013】
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは複数であり、第1形態は、各水素製造モジュールの前記光電変換部の受光面に太陽光が入射できるように各水素製造モジュールが並んだ形態であり、第2形態は、各水素製造モジュールが積重した形態であることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置を第1形態としたとき、各水素製造モジュールの光電変換部に入射する光量を多くすることができ、水素製造装置を第2形態としたとき、水素製造装置をコンパクト化することができ、設置面積を狭くすることができる。
本発明の水素製造装置において、複数の水素製造モジュールを連結する連結部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、複数の水素製造モジュールを連結部により連結することができ、複数の水素製造モジュールの配置を変えることにより水素製造装置の形態を変化させることができる。
【0014】
本発明の水素製造装置において、前記連結部は、回転軸を含む構造を有することが好ましい。
このような構成によれば、連結部が回転軸により回転自在になり、各水素製造モジュールを可動とすることができる。このことにより、水素製造装置を、第1形態から第2形態へまたは第2形態から第1形態へ変形させることができる。
本発明の水素製造装置において、前記連結部は、案内溝を有し、少なくとも1つの水素製造モジュールは、前記案内溝に沿って摺動することが好ましい。
このような構成によれば、水素製造モジュールを案内溝に沿って摺動させることにより、水素製造装置を、第1形態から第2形態へまたは第2形態から第1形態へ変形させることができる。
【0015】
本発明の水素製造装置において、各水素製造モジュールは、それぞれ分離可能であり、かつ、第1形態において第1連結部により連結され、第2形態において第2連結部により連結されることが好ましい。
このような構成によれば、各水素製造モジュールを第1連結部で連結することにより水素製造装置を第1形態とすることができ、各水素製造モジュールを第2連結部で連結することにより水素製造装置を第2形態とすることができる。
本発明の水素製造装置において、第1および第2連結部は、各水素製造モジュールから分離可能であることが好ましい。
このような構成によれば、第1連結部と第2連結部とを第1形態と第2形態とで取り替えることができ、その形態に適した連結部を用いることができる。
【0016】
本発明の水素製造装置において、前記連結部は、磁石を含むことが好ましい。
このような構成によれば、磁石の引力により各水素製造モジュールを連結することができる。また、このことにより各水素製造モジュールを容易に分離することができる。
本発明の水素製造装置において、前記連結部は、各水素製造モジュールに電解液を供給する給水管、各水素製造モジュールから第1気体を排出する第1気体排出管、または各水素製造モジュールから第2気体を排出する第2気体排出管であることが好ましい。
このような構成によれば、連結部を給水管、第1気体排出管または第2気体排出管とすることができ、部品数を低減することができる。
【0017】
本発明の水素製造装置において、各水素製造モジュールは、電解液を水素製造モジュール内に供給する給水口と、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口とを備え、前記給水口、第1気体排出口または第2気体排出口に液漏れ防止機構を備えることが好ましい。
このような構成によれば、給水管、第1気体排出管または第2気体排出管を水素製造モジュールから取り外した場合、電解液が流出することを防止することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、柔軟性を有し巻き上げ可能なシート状であり、第1形態は、シート状の前記水素製造モジュールを広げた形態であり、第2形態は、シート状の前記水素製造モジュールを巻き上げた形態であることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置を第1形態とすることにより、水素製造モジュールの光電変換部に入射する光量を多くすることができ、水素製造装置を第2形態とすることにより、水素製造装置の設置面積を狭くすることができる。また、水素製造装置の設置場所を容易に変更することができる。
【0018】
本発明の水素製造装置において、第1外部回路と電気的に接続できる切換部をさらに備え、前記切換部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力させる回路とを切り換えることができることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の起電力を必要に応じて第1外部回路、または第1または第2電解用電極へ出力することができ、光電変換部の起電力を有効に活用することができる。
本発明の水素製造装置において、前記切換部は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができることが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極を有効に活用することができる。また、水素製造装置を第2形態としたとき、水素製造装置をコンパクトな水電解装置として利用することができる。
【0019】
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に絶縁部を備えることが好ましい。
このような構成によれば、第2電解用電極と光電変換部の裏面とを電気的に分離することができる。
【0020】
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極を備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を効率よく出力することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部を備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0021】
本発明の水素製造装置において、第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができる。
本発明の水素製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第1導電部とを容易に電気的に接続することができる。
【0022】
本発明の水素製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第1導電部とを容易に電気的に接続することができる。
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより起電力を生じさせることができる。
【0023】
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を容易に第1電解用電極と第2電解用電極とに出力することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に絶縁部を備え、前記絶縁部は、第1区域上および第2区域上に開口を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる電子および正孔を効率よく分離することができる。
【0024】
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる電子および正孔を効率よく分離することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、透光性基板を備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、容易に光電変換部を形成することができる。
【0025】
本発明の水素製造装置において、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力の電圧を大きくすることができる。
本発明の水素製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から効率よく水素および酸素を製造することができる。
【0026】
本発明の水素製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、電解液から効率よく水素および酸素を製造することができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、触媒の表面積を大きくすることができる。
【0027】
本発明の水素製造装置において、前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素を効率よく製造することができる。
本発明の水素製造装置において、前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、酸素を効率よく製造することができる。
【0028】
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、透光性基板と、電解液室と、第1電解用電極および第2電解用電極の上に設けられた背面基板とを備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、電解液室に電解液を導入することができ、第1および第2電解用電極に電解液を接触させることができる。
本発明の水素製造装置において、前記水素製造モジュールは、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁を備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体と第2気体を隔壁により分離することができる。
【0029】
本発明の水素製造装置において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液室のプロトン濃度の偏りを解消することができる。
また、本発明は、本発明の水素製造装置を第1形態で前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、前記水素製造モジュールの下部から前記水素製造モジュールに電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記水素製造モジュールの上部から第1気体および第2気体を排出する水素製造方法も提供する。
本発明の水素製造方法によれば、光電変換部に太陽光を入射させることにより水素を製造することができる。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0030】
水素製造装置の構成
図1は本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図であり、図2(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略平面図であり、(b)はその概略側面図である。図3は、本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略平面図であり、図4は、図3の点線A−Aにおける水素製造モジュールの概略断面図である。図5、12は、本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュールの概略裏面図である。
図6は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図であり、図7は、図6に示した水素製造装置の概略上面図である。また、図8は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図であり、図9(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略平面図であり、図9(b)はその概略側面図である。また、図10は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第1形態における概略平面図であり、図11(a)は、本発明の一実施形態の水素製造装置の第2形態における概略側面図であり、図11(b)はその概略上面図である。
【0031】
本実施形態の水素製造装置21は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能な水素製造装置21であって、変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュール6を備え、水素製造モジュール6は、受光面および裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面側に設けられた第1電解用電極8および第2電解用電極7とを備え、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、第1形態は、水素製造装置21に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、第2形態は、1つの水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2が位置する形態であることを特徴とする。
以下、本実施形態の水素製造装置について説明する。
【0032】
1.水素製造装置の形態
本実施形態の水素製造装置21は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能である。
第1形態とは、水素製造装置21がとり得る形態であり、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態である。また、第1形態は、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の60、70、80、90、95または99%以上が太陽光を直接受光可能な形態であってもよく、この直接受光可能な範囲は上記数値のうち2つの数値の間であってもよい。
第1形態は、第2形態に比べ、水素製造モジュール6が横向きに広がった形態であってもよく、水素製造モジュール6が縦向きに広がった形態であってもよく、斜めやランダムに広がった形態であってもよい。
第2形態とは、水素製造装置21がとり得る形態であり、1つの水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる前記光電変換部が位置する形態である。
また、第2形態は、1つの水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面の一部と、同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面の一部とが重なる形態であってもよい。第2形態は、水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面のうち50、60、70、80、90または99%以上が同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面と重なった形態であってもよく、この重なる範囲は、上記数値のうち2つの数値の間であってもよい。また、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面のうち50、60、70、80、90または99%以上が同じ又は異なる水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面と重なった形態であってもよく、この重なる範囲は、上記数値のうち2つの数値の間であってもよい。
また、水素製造装置21は、モーターなどの動力部により自動的に第1形態と第2形態との間の変形をできるように設けてもよく、手動で第1形態と第2形態との間の変形をできるように設けてもよい。また、水素製造装置21を自動的に変形できるように設ける場合、時間帯や天気、季節などに応じて自動的に変形するように制御部により制御されてもよい。
本実施形態の水素製造装置21は、1つの水素製造モジュール6からなってもよく、複数の水素製造モジュール6からなってもよい。例えば、図1、2、6〜9のように複数の水素製造モジュール6からなってもよく、図10、11のように1つの水素製造モジュール6からなってもよい。なお、変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュールとは、1つの水素製造モジュール6が変形するようなものであってもよく、複数の水素製造モジュール6がその位置関係を変化させることにより変形するようなものであってもよい。
【0033】
まず、本実施形態の水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6からなる場合について説明する。この場合、各水素製造モジュール6は、連結部12により連結することができる。連結部12は、本実施形態の水素製造装置21が第1形態と第2形態の両方の形態をとることを可能とする部材である。
連結部12は、例えば、図1、2に示したヒンジ部材26のような回転軸を含む構造を有するものであってもよく、例えば、図6、7に示した案内溝55とレール部54のような少なくとも1つの水素製造モジュール6が案内溝に沿って摺動する構造を有するものであってもよく、例えば、図8、9に示した磁石部57のような磁石を有するものであってもよい。また、連結部12は、例えば、図1、2、6、8、9に示した第1気体排出管22、第2気体排出管23または給水管24のような各水素製造モジュールを連結する配管であってもよい。
【0034】
連結部12が図1、2に示したヒンジ部材26のように回転軸を有する構造を有する場合、ヒンジ部材26(連結部12)を隣接する2つの水素製造モジュール6間に設け、複数の水素製造モジュール6を一列に連結することができる。このように連結した場合、ヒンジ部材26を回転軸として、隣接する2つの水素製造モジュール6が開閉するように変形させることができる。また、ヒンジ部材26の折れ曲がる向きが交互に変わるようにヒンジ部材26を設けることにより、水素製造装置21を蛇腹折りに折りたたむことができる。例えば、図1のようにヒンジ部材26により連結された各水素製造モジュール6a〜dが広がるようにヒンジ部材26を変形させることにより、水素製造装置21を水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態とすることができる。このことにより、水素製造モジュール6a〜dの光電変換部2の受光面に入射する光量を多くすることができ、水素生成量を多くすることができる。
【0035】
また、図1に示したような第1形態の水素製造装置21を変形させ、図2に示したような第1水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の受光面と、第2水素製造モジュール6bに含まれる光電変換部2の受光面とが重なった形態とすることができる。また、このことにより、水素製造装置21を、水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の裏面側に、水素製造モジュール6b、6c、6dに含まれる光電変換部2が位置する第2形態とすることができる。具体的には、図1に示したヒンジ部26により連結された水素製造モジュール6a〜dを蛇腹折りに折りたたむことにより、図2に示したような第2形態に変形させることができる。このことにより、水素製造装置21をコンパクト化することができ、水素製造装置21の設置面積を狭くすることができる。なお、図1に示した第1形態において各水素製造モジュール6を連結していた第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24は、各水素製造モジュール6と分離可能に設けることができる。このことにより、第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24を各水素製造モジュール6から分離して、水素製造装置21を第1形態から第2形態に変形させることができる。なお、この場合、水素製造モジュール6の第1気体排出口20、第2気体排出口19、給水口18または給水管24に液漏れ防止機構25を設けることができる。このことにより、第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24を水素製造モジュール6から分離しても電解液が液漏れすることを防止することができる。液漏れ防止機構25は、例えば、スプリングと弁体を含む逆流防止弁からなってもよく、ビー玉逆止弁からなってもよい。
【0036】
また、第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24は、水素製造装置21が第1形態の場合と第2形態の場合とで異なる形態の部材からなってもよい。このことにより、例えば、図1に示した第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24と、図2に示した第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24のように、各水素製造モジュール6と連結する部分の幅が第1形態と第2形態とで異なる部材を用いることができる。このことにより、第2形態において、水素を回収するための配管距離を短くすることができ、第2形態の水素製造装置21で外部電力を用いて電解液を電気分解し水素を発生させる場合、効率よく水素を回収することができる。
また、第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24は、伸縮性や柔軟性を有する管からなってもよい。これらの管が伸縮性または柔軟性を有することにより、これらの管を水素製造モジュール6から取り外すことなく水素製造装置21を第1形態から第2形態へまたは第2形態から第1形態へ変形させることができる。また、これらの管が伸縮性を有することにより、水素製造装置21を第2形態としたとき、配管距離を短くすることができる。伸縮性および柔軟性を有する管は、例えば、蛇腹管を用いることができ、柔軟性を有する管は、例えば、ゴム製のチューブを用いることができる。
なお、以上の第1気体排出管22、第2気体排出管23、または給水管24についての説明は、矛盾が生じない限り後述する他の例についても当てはまる。
【0037】
連結部12が案内溝55を有し、少なくとも1つの水素製造モジュール6が案内溝55に沿って摺動する場合、より具体的には、図6、7に示したように水素製造装置21の裏面側に案内溝55が設けられ、水素製造装置21の受光面側にレール部54が設けられている場合、水素製造モジュール6b、c、dが案内溝55に沿って摺動するように連結部12を設けることができ、連結部12により各水素製造モジュールを一列に連結することができる。このように各水素製造モジュールを連結した場合、水素製造モジュール6b、c、dが隣接する水素製造モジュール6の裏面に設けられた案内溝55に沿って摺動することにより水素製造装置21は、第1形態から第2形態に変形することができ、第2形態から第1形態に変形することができる。
【0038】
例えば、図6、7のように、水素製造装置21を、水素製造モジュール6aに設けられた案内溝55の端と水素製造モジュール6bに設けられたレール部54の端部とが嵌合し、水素製造モジュール6bの案内溝55の端と水素製造モジュール6cのレール部54の端部とが嵌合し、水素製造モジュール6cの案内溝55の端と水素製造モジュール6dのレール部54の端部とが嵌合する形態とすることにより、水素製造装置21を、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態にすることができる。このことにより、水素製造モジュール6a〜dの光電変換部2の受光面に入射する光量を多くすることができ、水素生成量を多くすることができる。
【0039】
図6、7に示したような第1形態の水素製造装置21に含まれる水素製造モジュール6b、c、dを隣接する水素製造モジュールの裏面に設けられた案内溝に沿うように摺動させることにより、水素製造モジュール6a〜dが積重させることができ、水素製造装置21を、水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の裏面側に、水素製造モジュール6b、6c、6dに含まれる光電変換部2が位置する第2形態とすることができる。また、水素製造装置21を、水素製造モジュール6bの光電変換部2の受光面と、水素製造モジュール6aの光電変換部2の受光面とが重なる形態に変形させることができる。このことにより、水素製造装置21をコンパクト化することができ、水素製造装置21の設置面積を狭くすることができる。
【0040】
図6、7に示した例では、案内溝を水素製造モジュール6の裏面に設けたが、案内溝は、水素製造モジュール6の受光面に設けられてもよく、上部に設けられてもよく、下部に設けられてもよい。また、案内溝は、水素製造モジュール6と別部材の連結部6に設けられてもよく、例えば、戸や障子を立てる溝のような形態であってもよい。
【0041】
連結部12は、各水素製造モジュールを分離可能となるようなものであってもよい。このような連結部12としては、例えば、磁石の磁力により各水素製造装置モジュールを連結するものであってもよく、はめ込み式構造により各水素製造モジュールを連結するものであってもよく、おねじ構造とめねじ構造の組み合わせにより各水素製造モジュールを連結するものであってもよい。また、第1気体排出管22、第2気体排出管19または給水管24が水素製造モジュール6から分離可能な場合、連結部12は、第1気体排出管22、第2気体排出管19または給水管24であってもよい。
また、この場合、水素製造装置21が第1形態をとる場合と、第2形態をとる場合とで、異なる連結部12により各水素製造モジュール6が連結されてもよい。
以下に、各水素製造モジュール6が磁石を含む連結部により連結された例について説明するが、連結部12がはめ込み式構造を有する場合、ねじ構造を有する場合、配管からなる場合などについても、連結部12を置き換えた説明が矛盾のない限り当てはまる。
【0042】
図8のように、連結部12が磁石部57からなり、各水素製造モジュール6がその側面に磁石部57(第1連結部12)を有する場合、各水素製造モジュール6の側面間を磁石部57で連結することができる。このことにより、水素製造装置21を、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態にすることができる。このことにより、水素製造モジュール6a〜dの光電変換部2の受光面に入射する光量を多くすることができ、水素生成量を多くすることができる。
図8のような水素製造装置21は、例えば、第1気体排出管22、第2気体排出管19および給水管24を各水素製造モジュール6から取り外し、各磁石部57により連結した各水素製造モジュール6を分離することにより、各水素製造モジュール6を分離することができる。
【0043】
図9のように、連結部12が磁石部57からなり、各水素製造モジュール6がその受光面側および裏面側に磁石部57(第2連結部12)を有する場合、隣接する2つの水素製造モジュール6の受光面と裏面とを連結することができる。このことにより、水素製造装置21を、水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の裏面側に、水素製造モジュール6b、6c、6dに含まれる光電変換部2が位置する第2形態とすることができる。また、水素製造装置21を、水素製造モジュール6bに含まれる光電変換部2の受光面と、水素製造モジュール6aに含まれる光電変換部2の受光面とが重なる形態とすることができる。
このことにより、水素製造装置21をコンパクト化することができ、水素製造装置21の設置面積を狭くすることができる。
なお、以上に挙げた、水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6からなる場合の例は、それぞれ組み合わせることもできる。また、第2形態は、複数の水素製造装置21を連結部により組み合わせた形態であってもよい。このことにより、水素製造装置21の設置場所をより有効に利用することができる。
【0044】
次に、本実施形態の水素製造装置21が1つの水素製造モジュール6からなる場合について説明する。この場合、例えば、水素製造モジュール6は、柔軟性を有するシート状とすることができる。このような水素製造モジュール6は、例えば、柔軟性を有するシートの上に光電変換部2ならびに第1および第2電解用電極を形成することにより製造することができる。
水素製造装置21に含まれる水素製造モジュール6が柔軟性を有するシート状であるとき、水素製造モジュール6が変形することにより、水素製造装置21は、第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形することができる。また、柔軟性を有するシート状の水素製造モジュール6は、巻き上げ可能であってもよい。
例えば、柔軟性を有し巻き上げ可能なシート状の水素製造モジュール6を広げた形態とすることにより、水素製造装置21を、水素製造装置21に含まれる光電変換部2の受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な第1形態とすることができる。
例えば、図10のように水素製造モジュール6を広げることにより、水素製造装置21を第1形態とすることができる。このことにより、水素製造モジュール6の光電変換部2の受光面に入射する光量を多くすることができ、水素生成量を多くすることができる。
【0045】
また、例えば、柔軟性を有し巻き上げ可能なシート状の水素製造モジュール6を巻き上げた形態とすることにより、水素製造装置21を、水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の一部の受光面側又は裏面側に、同じ水素製造モジュール6に含まれる他の一部の光電変換部2が位置する第2形態とすることができる。また、このことにより、水素製造装置21を、水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面の一部と、同じ水素製造モジュール6に含まれる光電変換部2の受光面の他の一部とが重なる形態とすることができる。
例えば、図11のように水素製造モジュール6を巻き上げた形態とすることにより、水素製造装置21を第2形態とすることができる。このことにより、水素製造装置21をコンパクト化することができ、水素製造装置21の設置面積を狭くすることができる。なお、第2形態における水素製造装置の形態は、水素製造モジュール6を巻き上げた形態に限定されず、例えば、水素製造モジュール6を蛇腹折りにしたような形態であってもよく、他の形状に折りたたんだような形態であってもよい。
なお、この水素製造装置21が1つの水素製造モジュール6からなる場合の例は、前述の水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6からなる場合の例と組み合わせることもできる。また、第2形態は、複数の水素製造装置21を連結部により組み合わせた形態であってもよい。このことにより、水素製造装置21の設置場所をより有効に利用することができる。
【0046】
2.水素製造モジュール
水素製造モジュール6は、受光面およびその裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面側に設けられた第1電解用電極8および第2電解用電極7とを備え、光電変換部2の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられる。
水素製造装置21は、1つの水素製造モジュール6を備えてもよく、複数の水素製造モジュール6を備えてもよい。
図13〜20は、本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる水素製造モジュール6の概略断面図であり、図3の点線A−Aにおける水素製造モジュールの概略断面図に対応する。
【0047】
3.透光性基板
透光性基板1は、本実施形態の水素製造モジュール6が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。光電変換部2を柔軟性を有する材料の上に形成した場合、水素製造モジュール6を柔軟性を有するシート状に形成することが可能となり、水素製造モジュール6を変形させることにより、水素製造装置21を第1形態から第2形態へまたは第2形態から第1形態へ変形させることが可能となる。
【0048】
また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するため、透光性基板1は、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0049】
4.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図19、20のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図4、14、17のように第1導電部9を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図16のように第2電解用電極7と接触してもよい。また、第1電極4は、図13、15、18のような場合、切換部10および配線52を介して第2電解用電極7と電気的に接続することができる。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0050】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いることができる。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0051】
5.光電変換部
光電変換部2は、受光面およびその裏面を有し、光電変換部2の裏面側に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。なお、水素製造装置21の受光面とは、光電変換部2の受光面と同じ側の水素製造装置21の面であり、水素製造装置21の裏面とは、光電変換部2の裏面と同じ側の水素製造装置21の面である。
また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図4、13〜18のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図19、20のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図19、20のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0052】
第1気体および第2気体のうちどちらか一方が水素であり、他方が酸素の場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図17、20のように並べて設けられた光電変換層を第3導電部33により直列接続した構造を有することができる。
【0053】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0054】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0055】
5−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0056】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0057】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0058】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0059】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0060】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体部37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体部36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0061】
n型半導体部37およびp型半導体部36は、図19、20のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、また、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図20のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第3導電部33により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体部37およびp型半導体部36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0062】
5−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0063】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0064】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0065】
5−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0066】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0067】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0068】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0069】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0070】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0071】
5−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0072】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0073】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0074】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0075】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0076】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0077】
6.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面上に設けることができる。また、第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間および光電変換部2の裏面と絶縁部11との間に設けることもできる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第2電極5は、切換部10および配線52を介して第1電解用電極8と電気的に接続してもよい。
また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0078】
7.第1導電部
第1導電部9は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第1導電部9を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
また、第1導電部9は、図4、14のように光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1導電部9が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第1導電部9は、図17のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0079】
第1導電部9の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0080】
8.絶縁部
絶縁部11は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図4、14のように第1導電部9を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部11を設けることができる。
また、絶縁部11は、例えば、図4、13〜17のように第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。このことにより、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間でリーク電流が生じるのを防止することができる。また、光電変換部2が図19、20のように受光することにより光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に電位差を生じるものである場合、絶縁部11は、第1電解用電極8と光電変換部2の裏面との間、および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けられ、絶縁部11は、第1区域上および第2区域上に開口を有してもよい。このことにより、光電変換部2が受光することにより形成される電子およびホールを効率よく分離することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、絶縁部11は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、リーク電流の発生を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
【0081】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0082】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0083】
9.第2導電部、第3導電部
第2導電部29は、絶縁部11と第2電解用電極7との間、または、絶縁部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。第2導電部29を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じた起電力を効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7に出力することができ、オーミックロスを低減することができる。第2導電部29は、例えば、図17、19、20に示すように設けることができる。
第2導電部29は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、オーミック抵抗の上昇を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第3導電部33は、図17、20のように光電変換層を直列接続するように設けることができる。
【0084】
第2導電部29または第3導電部33は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0085】
10.第1電解用電極、第2電解用電極
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側にそれぞれ設けられる。図4のように、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2の裏面上に設けられてもよい。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側の面とその裏面であり電解液に接触可能な面とをそれぞれ有することができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられる。例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、図4、16、17のように、第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図19、20のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することができる。
【0086】
図14、15のように第1電解用電極8が光電変換部2の裏面または第2電極5と接触していない場合、第1電解用電極8は、切換部10を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。また、図13、15、18のような場合、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と切換部10を介して電気的に接続することができる。
【0087】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であってもよく、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有してもよく、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、図12のように設けることができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、安定して第1気体および第2気体を発生させることができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7に電解液に対する耐食性を有する金属板または金属膜を用いることができる。
【0088】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部2と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、この場合、第1電解用電極8または第2電解用電極7を電解液に対する遮液性を有する部分と多孔質からなる部分の二層構造とすることもできる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素である。
【0089】
11.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒を含んでよく、水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より速い反応速度で水素を発生させることができる。
【0090】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0091】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0092】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0093】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0094】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0095】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0096】
12.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒を含んでもよく、酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部で生じる起電力により、より速い反応速度で酸素を発生させることができる。
【0097】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0098】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「11.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0099】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0100】
13.背面基板
背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。
また、背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と背面基板14との間に空間が設けられるように設けることができる。この空間を電解液室15とすることができ、電解液室15に電解液を導入することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7を電解液に接触させることができる。また、背面基板14に箱状のものを用いる場合、背面基板14は箱体の底の部分であってもよい。
【0101】
また、背面基板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な背面基板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0102】
14.隔壁
隔壁13は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。また、隔壁13は、図18のように第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に設けることもできる。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方を複数設ける場合、隔壁13は、図12のように並列に並ぶように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と背面基板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0103】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0104】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0105】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0106】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0107】
15.シール材
シール材16は、透光性基板1と背面基板14を接着し、水素製造モジュール6内の電解液および水素製造モジュール6内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。背面基板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と透光性基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0108】
ここではシール材16と記しているが、透光性基板1と背面基板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0109】
16.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
【0110】
17.給水口、給水管
給水口18は、水素製造モジュール6に含まれるシール材16の一部、もしくは背面基板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく水素製造モジュール6へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0111】
また、給水口18は、給水管24と連結することができ、給水口18と給水管24とを導通させることができる。このことにより給水管24を介して水素製造モジュール6に電解液を供給することができる。また、給水管24は、給水口18から取り外すことができるように設けることができる。このことにより、水素製造モジュール6から給水管24を取り外して、水素製造装置21を第1形態から第2形態へ変形させることができる。また、水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6を有する場合、給水管24は各水素製造モジュール6の給水口と連結することができ、給水管24が複数の水素製造モジュール6を連結させることができ、給水管24を連結部12とすることもできる。
【0112】
また、給水口18、給水管24は、液漏れ防止機構を有することができる。このことにより、水素製造装置21を第1形態から第2形態へ変形させるとき、給水口18から給水管24と取り外しても、電解液の漏れを最小限とすることができる。液漏れ防止機構は、例えば、例えば、スプリングと弁体を含む逆流防止弁からなってもよく、ビー玉逆止弁からなってもよい。
【0113】
18.第1気体排出口、第2気体排出口、第1気体排出管および第2気体排出管
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、第1電解用電極8の端部および第2電解用電極7の端部にそれぞれ近接して設けることができる。このことにより、第1気体排出口20から第1気体を回収することができ、第2気体排出口19から第2気体を回収することができる。
【0114】
また、第1気体排出口20は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように第1形態の水素製造装置21を設置したとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように第1形態の水素製造装置21を設置したとき、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。このことにより、第1形態の水素製造装置21を光電変換部2の受光面が水平面に対して傾斜するように設置し、前記受光面に太陽光を入射させた場合に、第1電解用電極8で発生させた第1気体を気泡として電解液中を上昇させ第1気体排出口20から回収することができ、第2電解用電極7で発生させた第2気体を気泡として電解液中を上昇させ第2気体排出口19から回収することができる。
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、例えば、シール材16に開口を設けることにより形成することができる。また、第1気体排出口20、第2気体排出口19に電解液が流入しないように流入防止弁を設けることもできる。
【0115】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出管22と連結および導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出管23と連結および導通することができる。
また、第1気体排出管22および第2気体排出管23は、それぞれ第1気体排出口20および第2気体排出口19から取り外すことができるように設けることができる。このことにより、水素製造モジュール6から第1気体排出管22および第2気体排出管23を取り外して、水素製造装置21を第1形態から第2形態へ変形させることができる。また、水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6を有する場合、第1気体排出管22および第2気体排出管23は、それぞれ各水素製造モジュール6の第1気体排出口20および第2気体排出口19と連結することができ、第1気体排出管22および第2気体排出管23が複数の水素製造モジュール6を連結させることができ、第1気体排出管22または第2気体排出管23を連結部12とすることもできる。
【0116】
また、第1気体排出口20および第2気体排出口19は、液漏れ防止機構を有することができる。このことにより、水素製造装置21を第1形態から第2形態へ変形させるとき、第1気体排出口20および第2気体排出口19からそれぞれ第1気体排出管22および第2気体排出管23と取り外しても、電解液の漏れを防止することができる。液漏れ防止機構は、例えば、例えば、スプリングと弁体を含む逆流防止弁からなってもよく、ビー玉逆止弁からなってもよい。
【0117】
19.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素および酸素を製造することができる。
【0118】
20.切換部
水素製造装置21または水素製造モジュール6は、切換部10を有することができる。切換部10は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路とを切り換えることができる。このことにより、水素製造装置21を第1形態とし、水素製造モジュール6の光電変換部2に光を入射させたとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ電力として供給でき、また、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部10が第1外部回路と電気的に接続する方法は、特に限定されないが、例えば、切換部10が出力端子を備え、出力端子を介して第1外部回路と電気的に接続してもよい。
【0119】
また、切換部10は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる。このことにより、第2外部回路から入力される起電力を利用して、電解液から第1気体および第2気体を製造することができる。水素製造装置21が第1形態のときであっても、第2形態のときであっても第2外部回路から入力される起電力を利用して第1気体および第2気体を製造することができるが、水素製造装置21を第2形態として第2外部回路から入力される起電力を利用して第1気体および第2気体を製造することにより、第1気体および第2気体の配管距離を短くすることができ、効率的に第1気体および第2気体を回収することができる。
切換部10が第2外部回路と電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、切換部10が入力端子を備え、入力端子を介して第2外部回路と電気的に接続してもよい。
【0120】
図面を用いて具体的に説明する。図21〜24は、本実施形態の水素製造装置の概略回路図である。なお、図21〜24は、水素製造装置21が1つの水素製造モジュール6を有する場合の概略回路図であるが、水素製造装置21が複数の水素製造モジュール6を有する場合、各水素製造モジュール6の第1電極4および第2電極5を並列または直列に接続してもよく、各水素製造モジュール6の第1電解用電極8および第2電解用電極7を並列に接続してもよい。
【0121】
例えば、水素製造モジュール6が図15のような断面を有し、図21のような電気回路を有する場合、例えば、SW(スイッチ)1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW5、SW6がOFF状態であり、SW3、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW3、SW4がOFF状態であり、SW5、SW6がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5、SW6がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0122】
例えば、水素製造モジュール6が図13、18のような断面を有し、図22のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0123】
例えば、本実施形態の水素製造モジュール6が図14のような断面を有し、図23のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0124】
例えば、水素製造モジュール6が図4、16、17、19、20のような断面を有し、図24のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達しない場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達する場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7へ出力することができる。従って、図24のような電気回路を有する場合でも、切換部10により、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力させる回路とを切り換えることができる。
また、SW3、SW4がON状態であり、SW1,SW2がOFF状態の場合、第2外部回路から入力される起電力、または第2外部回路から入力される起電力と光電変換部2が受光することにより生じる起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0125】
また、切換部10は、制御部からの情報を入力することができ、入力した情報に基づき回路の切換を行うことができる。このことにより、切換部10は、制御部が選択した回路に切り換えることができる。
また、切換部10は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じている場合、第1外部回路に光電変換部2で生じた起電力を出力することができ、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じていない場合、第1電解用電極8および第2電解用電極7に光電変換部2で生じた起電力を出力することができる。
さらに切換部10は、第2外部回路の起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第2外部回路が供給する電力が電気需要より大きくなっている場合、第2外部回路が供給する電力を利用して第1気体および第2気体を製造することができる。
【0126】
水素製造方法
本実施形態の水素製造方法は、第1形態の水素製造装置21を光電変換部2の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、電解液室15に電解液を導入し、太陽光を光電変換部2の受光面に入射させることにより第1電解用電極8および第2電解用電極7からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口20および第2気体排出口19からそれぞれ第1気体および第2気体を排出させることができる。
このことにより第1気体および第2気体を製造することができ、水素を製造することができる。
【符号の説明】
【0127】
1: 透光性基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 6、6a、6b、6c、6d:水素製造モジュール 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:切換部 11:絶縁部 12:連結部 13:隔壁 14:背面基板 15:電解液室 16:シール材 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:水素製造装置 22:第1気体排出管 23:第2気体排出管 24:給水管 25:液漏れ防止機構 26:ヒンジ部材 28:光電変換層 29:第2導電部 30:透光性電極 31:裏面電極 33:第3導電部 35:半導体部 36:p型半導体部 37:n型半導体部 40:アイソレーション 46:電解液 52:配線 54:レール部 55:案内溝 57:磁石部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能な水素製造装置であって、
変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュールを備え、
前記水素製造モジュールは、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極とを備え、
第1および第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、
第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、
第1形態は、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、
第2形態は、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する形態であることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記水素製造モジュールは複数であり、
第1形態は、各水素製造モジュールの前記光電変換部の受光面に太陽光が入射できるように各水素製造モジュールが並んだ形態であり、
第2形態は、各水素製造モジュールが積重した形態である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の水素製造モジュールを連結する連結部をさらに備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記連結部は、回転軸を含む構造を有する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記連結部は、案内溝を有し、
少なくとも1つの水素製造モジュールは、前記案内溝に沿って摺動する請求項3に記載の装置。
【請求項6】
各水素製造モジュールは、それぞれ分離可能であり、かつ、第1形態において第1連結部により連結され、第2形態において第2連結部により連結される請求項3に記載の装置。
【請求項7】
第1および第2連結部は、各水素製造モジュールから分離可能である請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記連結部は、磁石を含む請求項3、6、7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記連結部は、各水素製造モジュールに電解液を供給する給水管、各水素製造モジュールから第1気体を排出する第1気体排出管、または各水素製造モジュールから第2気体を排出する第2気体排出管である請求項3、6、7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
各水素製造モジュールは、電解液を水素製造モジュール内に供給する給水口と、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口とを備え、
前記給水口、第1気体排出口または第2気体排出口に液漏れ防止機構を備える請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記水素製造モジュールは、柔軟性を有し巻き上げ可能なシート状であり、
第1形態は、シート状の前記水素製造モジュールを広げた形態であり、
第2形態は、シート状の前記水素製造モジュールを巻き上げた形態である請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第1外部回路と電気的に接続できる切換部をさらに備え、
前記切換部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力させる回路とを切り換えることができる請求項1〜11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
前記切換部は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられた請求項1〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記水素製造モジュールは、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に絶縁部を備える請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記水素製造モジュールは、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極を備える請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記水素製造モジュールは、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部を備える請求項16に記載の装置。
【請求項18】
第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項1〜20のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項1〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項23】
前記水素製造モジュールは、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に絶縁部を備え、
前記絶縁部は、第1区域上および第2区域上に開口を有する請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項22または23に記載の装置。
【請求項25】
前記水素製造モジュールは、透光性基板を備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項1〜24のいずれか1つに記載の装置。
【請求項26】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられた請求項1〜25のいずれか1つに記載の装置。
【請求項27】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含む請求項1〜26のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有する請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項27または28に記載の装置。
【請求項30】
前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項27〜29のいずれか1つに記載の装置。
【請求項31】
前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項27〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
前記水素製造モジュールは、透光性基板と、電解液室と、第1電解用電極および第2電解用電極の上に設けられた背面基板とを備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられた請求項1〜31のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
前記水素製造モジュールは、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁を備える請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項33に記載の装置。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1つに記載の水素製造装置を第1形態で前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、
前記水素製造モジュールの下部から前記水素製造モジュールに電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記水素製造モジュールの上部から第1気体および第2気体を排出する水素製造方法。
【請求項1】
第1形態から第2形態に、または第2形態から第1形態に変形可能な水素製造装置であって、
変形可能に設けられた少なくとも1つの水素製造モジュールを備え、
前記水素製造モジュールは、受光面および裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極とを備え、
第1および第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面に光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、
第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、
第1形態は、前記水素製造装置に含まれる前記受光面の略全体が太陽光を直接受光可能な形態であり、
第2形態は、1つの前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部の受光面側又は裏面側に、同じ又は異なる前記水素製造モジュールに含まれる前記光電変換部が位置する形態であることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記水素製造モジュールは複数であり、
第1形態は、各水素製造モジュールの前記光電変換部の受光面に太陽光が入射できるように各水素製造モジュールが並んだ形態であり、
第2形態は、各水素製造モジュールが積重した形態である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の水素製造モジュールを連結する連結部をさらに備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記連結部は、回転軸を含む構造を有する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記連結部は、案内溝を有し、
少なくとも1つの水素製造モジュールは、前記案内溝に沿って摺動する請求項3に記載の装置。
【請求項6】
各水素製造モジュールは、それぞれ分離可能であり、かつ、第1形態において第1連結部により連結され、第2形態において第2連結部により連結される請求項3に記載の装置。
【請求項7】
第1および第2連結部は、各水素製造モジュールから分離可能である請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記連結部は、磁石を含む請求項3、6、7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記連結部は、各水素製造モジュールに電解液を供給する給水管、各水素製造モジュールから第1気体を排出する第1気体排出管、または各水素製造モジュールから第2気体を排出する第2気体排出管である請求項3、6、7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
各水素製造モジュールは、電解液を水素製造モジュール内に供給する給水口と、第1気体を排出する第1気体排出口と、第2気体を排出する第2気体排出口とを備え、
前記給水口、第1気体排出口または第2気体排出口に液漏れ防止機構を備える請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記水素製造モジュールは、柔軟性を有し巻き上げ可能なシート状であり、
第1形態は、シート状の前記水素製造モジュールを広げた形態であり、
第2形態は、シート状の前記水素製造モジュールを巻き上げた形態である請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第1外部回路と電気的に接続できる切換部をさらに備え、
前記切換部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力させる回路とを切り換えることができる請求項1〜11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
前記切換部は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられた請求項1〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記水素製造モジュールは、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に絶縁部を備える請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記水素製造モジュールは、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極を備える請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記水素製造モジュールは、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部を備える請求項16に記載の装置。
【請求項18】
第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項1〜20のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項1〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項23】
前記水素製造モジュールは、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に絶縁部を備え、
前記絶縁部は、第1区域上および第2区域上に開口を有する請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項22または23に記載の装置。
【請求項25】
前記水素製造モジュールは、透光性基板を備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項1〜24のいずれか1つに記載の装置。
【請求項26】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられた請求項1〜25のいずれか1つに記載の装置。
【請求項27】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含む請求項1〜26のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有する請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項27または28に記載の装置。
【請求項30】
前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項27〜29のいずれか1つに記載の装置。
【請求項31】
前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項27〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
前記水素製造モジュールは、透光性基板と、電解液室と、第1電解用電極および第2電解用電極の上に設けられた背面基板とを備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられた請求項1〜31のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
前記水素製造モジュールは、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁を備える請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項33に記載の装置。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1つに記載の水素製造装置を第1形態で前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、
前記水素製造モジュールの下部から前記水素製造モジュールに電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記水素製造モジュールの上部から第1気体および第2気体を排出する水素製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−177159(P2012−177159A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40628(P2011−40628)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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