水素製造装置および水素製造方法
【課題】光電変換する入射光の量を多くすることができ、かつ、水素生成効率が低下しない水素製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の水素製造装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極と、前記光電変換部を支持する係合部とを備え、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、前記係合部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする。
【解決手段】本発明の水素製造装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極と、前記光電変換部を支持する係合部とを備え、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、前記係合部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置および水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
これまでに、光電変換と水素発生を一体化した水素製造装置が開示されている(例えば、特許文献1)。このような水素製造装置を用いることにより、太陽光エネルギーを効率よく水素として貯蔵することができる。
【0006】
また、太陽は、日の出から日の入りまで方位および仰角が変化する。また季節により、この方位および仰角は、変化する。このため、太陽電池を固定設置した場合、太陽電池の受光面に効率よく太陽光を入射させることができない。このため、太陽電池の受光面に効率よく入射するように太陽電池を太陽の動きを追尾する追尾型太陽光発電装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4594438号公報
【特許文献2】特開2010−205764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、光電変換と水素発生を一体化した水素製造装置を、光電変換する入射光の量が多くなるように太陽の動きを追尾させると、水素製造装置の傾斜角によっては、水素製造装置から水素が排出できず水素生成効率が低下する場合が生じる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光電変換する入射光の量を多くすることができ、かつ、水素生成効率が低下しない水素製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極と、前記光電変換部を支持する係合部とを備え、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、前記係合部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする水素製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。また、第1気体および第2気体のうち一方は水素であるため、水素を製造することができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面側に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面側に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射する光量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0011】
本発明によれば、光電変換部を支持する係合部が光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられるため、光電変換部の受光面の向きを太陽の動きに合わせて調整することができ、光電変換部へ入射する光量を多くすることができる。
本発明によれば、光電変換部の受光面の向きを調整することができるように係合部を設けることにより、光電変換部へ入射する光量を多くすることと、第1気体および第2気体を水素製造装置内に滞留せず排出できることとを、バランスするように光電変換部の受光面の向きを最適化することができるため、水電解効率を低下させずに水素を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の水素製造装置の受光面側から見た概略図である。
【図2】図1の点線A−Aにおける水素製造装置の概略断面図である。
【図3】図1の点線B−Bにおける水素製造装置の概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる制御部などの概念図である。
【図14】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図15】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図16】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図17】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図18】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる制御部の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の水素製造装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極と、前記光電変換部を支持する係合部とを備え、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、前記係合部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする。
【0014】
本実施形態の水素製造装置において、傾斜角制限手段、第1気体排出口および第2気体排出口をさらに備え、第1および第2気体排出口は、第1電解用電極の端部および第2電解用電極の端部にそれぞれ近接して設けられ、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記傾斜角制限手段は、第1気体および第2気体が電解液中を浮力により第1気体排出口および第2気体排出口にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限することが好ましい。
このような構成によれば、傾斜角制限手段が、第1気体および第2気体が電解液中を浮力により第1気体排出口および第2気体排出口にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限するため、水素製造装置から第1気体または第2気体が排出されずに装置内に滞留することを防止することができ、水素生成効率の低下を防止することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記係合部は、回転自在または変形可能であることが好ましい。
このような構成によれば、係合部が回転または変形することにより光電変換部の受光面の向きを調整することができる。
【0015】
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向き、または第1および第2電解用電極の動きを制御する制御部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置の動きを自動制御することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを太陽の仰角と方位に基づき制御することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部への入射光量を多くすることができる。
【0016】
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、第1および第2電解用電極が振動するように第1および第2電解用電極の動きを制御することが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の表面の第1気体および第2電解用電極の表面の第2気体の装置外への排出を促進することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、情報を入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記光電変換部の受光面の向きまたは第1および第2電解用電極の動きを設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を出力するための出力手段と、前記出力手段により出力された情報に基づき少なくとも前記光電変換部を動かす動力部とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、制御部が水素製造装置の動きを制御することができる。
【0017】
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、第1および第2電解用電極の傾斜角を制限する傾斜角制限手段を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極の傾斜角を物理的な手段を用いずに制限することができるため、傾斜角制限手段による制限を容易に解除することができる。
本実施形態の水素製造装置において、第1外部回路と電気的に接続できる切換部をさらに備え、前記切換部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力させる回路とを切り換えることができることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の起電力を必要に応じて第1外部回路または第1または第2電解用電極へ出力することができ、光電変換部の起電力を有効に活用することができる。
【0018】
本実施形態の水素製造装置において、前記切換部は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができることが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極を有効に活用することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記切換部が切り換える回路を設定し、設定した情報を前記切換部に出力する制御部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、切換部が切り換える回路を制御部により自動制御することができる。
【0019】
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、情報を入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記切換部が切り換える回路を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記切換部に出力するための出力手段とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、制御部が入力情報に基づき切換部が切り換える回路を制御することができる。
本実施形態の水素製造装置において、傾斜センサ、方位センサ、位置センサ、照度センサまたは時計をさらに備え、前記入力手段は、前記傾斜センサ、前記方位センサ、前記位置センサ、前記照度センサまたは前記時計から情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置の状態に関する情報、および太陽の位置、動きに関する情報、日射に関する情報を検出することができる。
【0020】
本実施形態の水素製造装置において、前記入力手段は、電力会社からの情報、売電情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、電力需要情報などに基づき水素製造装置を制御することができる。
本実施形態の水素製造装置において、基部をさらに備え、前記係合部は、前記基部に対して前記光電変換部、第1電解用電極および第2電解用電極が相対的に動くように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、基部を固定し、基部に対して光電変換部などを動かすことができる。
【0021】
本実施形態の水素製造装置において、前記係合部は、前記光電変換部の受光面の傾斜角を調整する第1係合部と、前記光電変換部の受光面が向く方位を調整する第2係合部とを含むことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面が向く方向を容易に太陽に合わせることができる。
本実施形態の水素製造装置において、第2係合部は、第1電解用電極および第2電解用電極に対して前記光電変換部が相対的に動くように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極の傾斜角を変化させずに、光電変換部の受光面の向きを動かすことができ、安定して第1気体および第2気体を排出することができる。
【0022】
本実施形態の水素製造装置において、前記係合部は、第1電解用電極および第2電解用電極に対して前記光電変換部が相対的に動くように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極の傾斜角を変化させずに、光電変換部の受光面の向きを動かすことができ、安定して第1気体および第2気体を排出することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力することができる。
【0023】
本実施形態の水素製造装置において、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備えたことが好ましい。
このような構成によれば、第2電解用電極と光電変換部の裏面とを電気的に分離することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を効率よく出力することができる。
【0024】
本実施形態の水素製造装置において、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本実施形態の水素製造装置において、第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができる。
【0025】
本実施形態の水素製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第1導電部とを容易に電気的に接続することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第1導電部とを容易に電気的に接続することができる。
【0026】
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより起電力を生じさせることができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を容易に第1電解用電極と第2電解用電極とに出力することができる。
【0027】
本実施形態の水素製造装置において、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる電子および正孔を効率よく分離することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる電子および正孔を効率よく分離することができる。
【0028】
本実施形態の水素製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、容易に光電変換部を形成することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力の電圧を大きくすることができる。
【0029】
本実施形態の水素製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から効率よく水素および酸素を製造することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、電解液から効率よく水素および酸素を製造することができる。
【0030】
本実施形態の水素製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、触媒の表面積を大きくすることができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素を効率よく製造することができる。
【0031】
本実施形態の水素製造装置において、前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、酸素を効率よく製造することができる。
本実施形態の水素製造装置において、透光性基板と電解液室とをさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、第1電解用電極および第2電解用電極の上に背面基板をさらに備え、前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、電解液室に電解液を導入することができ、第1および第2電解用電極に電解液を接触させることができる。
【0032】
本実施形態の水素製造装置において、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体と第2気体を隔壁により分離することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液室のプロトン濃度の偏りを解消することができる。
【0033】
また、本発明は、本実施形態の水素製造装置を前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、前記水素製造装置の下部から前記水素製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記水素製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する水素製造方法も提供する。
本発明の水素製造方法によれば、光電変換部に太陽光を入射させることにより水素を製造することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0034】
水素製造装置の構成
図1は本実施形態の水素製造装置の受光面側から見た概略図であり、図2、3は、それぞれ点線A−A、点線B−Bにおける水素製造装置の概略断面図である。また、図4〜12は、本実施形態の水素製造装置の概略断面図であり、図4は、図3に対応する水素製造装置の概略断面図であり、図5〜12は、図2に対応する水素製造装置の概略断面図である。
本実施形態の水素製造装置45は、受光面およびその裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面側に設けられた第1電解用電極8および第2電解用電極7と、光電変換部2を支持する係合部22,23とを備え、光電変換部2の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極8,7が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極8,7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液46を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、係合部22,23は、光電変換部2の受光面の向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする。
以下、本実施形態の水素製造装置について説明する。
【0035】
1.透光性基板
透光性基板1は、本実施形態の水素製造装置45が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。
【0036】
また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するため、透光性基板1は、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0037】
2.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図11、12のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図2、6、9のように第1導電部9を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図8のように第2電解用電極7と接触してもよい。また、第1電極4は、図5、7、10のような場合、切換部10および配線52を介して第2電解用電極7と電気的に接続することができる。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0038】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いていることができる。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0039】
3.光電変換部
光電変換部2は、受光面およびその裏面を有し、光電変換部2の裏面側に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図2、5〜10のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図11、12のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図11、12のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0040】
第1気体および第2気体のうちどちらか一方が水素であり、他方が酸素の場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図9、12のように並べて設けられた光電変換層を第3導電部33により直列接続した構造を有することができる。
【0041】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0042】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0043】
3−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0044】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0045】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0046】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0047】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0048】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体部37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体部36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0049】
n型半導体部37およびp型半導体部36は、図11、12のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、また、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図12のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第3導電部33により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体部37およびp型半導体部36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0050】
3−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0051】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0052】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0053】
3−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0054】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0055】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0056】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0057】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0058】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0059】
3−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0060】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0061】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0062】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0063】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0064】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0065】
4.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面上に設けることができる。また、第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間および光電変換部2の裏面と絶縁部11との間に設けることもできる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第2電極5は、切換部10および配線52を介して第1電解用電極8と電気的に接続してもよい。
また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0066】
5.係合部、基部、動力部
係合部22、23は、光電変換部2を支持し、光電変換部2の受光面の向きを調整することができるように設けられる。係合部22、23は、回転自在であってもよく、変形可能であってもよい。係合部22、23が回転または変形することにより、光電変換部2の受光面の向きを調整することができる。係合部22、23は、例えば、図3のように背面基板14と基部27、26との間に設けることができ、また、図4のように光電変換部2と第1および第2電解用電極8、7との間に設けることができる。
係合部22、23は、例えば回転軸を有してもよく、歯車を有してもよく、また、ベアリングを有してもよい。このことにより、係合部22、23を回転自在にすることができる。また、係合部22、23は、ボールジョイントを有してもよい。このことにより、係合部22、23を回転自在にすることができる。
また、係合部22、23は、例えば、ゴムやバネなどのように変形可能な材料からなってもよい。このことにより、係合部22、23を変形可能にすることができる。
【0067】
係合部22、23は、光電変換部2の受光面の傾斜角を調整する第1係合部22と、光電変換部2の受光面が向く方位を調整する第2係合部23を有することができる。このことにより、季節や時間により変化する太陽の位置に合わせて光電変換部2の受光面の向きを変化させることができる。
第1係合部22は、例えば、図3のように第1基部26と第2基部27とを回転軸により係合することにより形成することができる。このことにより、光電変換部2と繋がった第2基部27が第1基部26に対して回転することにより、光電変換部2の受光面の向く方位を変化させることができる。
【0068】
第2係合部23は、例えば、図3のように第2基部27と背面基板14との間に回転軸を設けることにより形成することができる。このことにより、第2基部27に対して光電変換部2の受光面の向く方向の仰角を変化させることができる。
また、第2係合部23は、例えば、図4のように第1および第2電解用電極8、7に対して光電変換部2が相対的に動くように蝶番状に設けることができる。この場合、水素製造装置45は、光電変換部2の裏面上に設けられた基板51a、第1および第2電解用電極8、7の光電変換部2側に設けられた基板51bを備えることができ、この基板51aと基板51bを開き戸のように動かすことができる。
【0069】
係合部22、23により可動となった光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7は、手動により動かすことができるように設けられてもよい。この場合、季節や時間帯に応じて光電変換部2の受光面の向きを手動で変化させることにより、光電変換部2の受光面に入射する光量を大きくすることができる。また、手動とすることにより、製造コスト、設置コスト、維持コストなどを低減することができる。
また、係合部22、23により可動となった光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7は、動力部24、25により動くように設けられてもよい。
動力部24、25は、係合部22、23により可動となった光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7を動かすことができるように設けることができる。動力部24、25は、例えば、係合部22、23に含まれる回転軸と連結したモーターである。例えば、図3のように、第1基部26と第2基部27との間に設けられた第1係合部22に含まれる回転軸に第1動力部24であるモーターを連結することにより、モーターの動力により光電変換部2の受光面の向く方位を変化させることができる。このことにより、光電変換部2の受光面に入射する光量をより多くすることができる。
図3のように背面基板14と第2基部27との間に設けられた第2係合部23に含まれる回転軸に第2動力部25であるモーターを連結させることにより、モーターの動力により光電変換部2の受光面の向く方向の仰角を変化させることができる。また、図4のように基板51aと基板51bとを蝶番状に繋ぐように設けられた第2係合部23に含まれる回転軸に第2動力部25であるモーターを連結させることによっても、光電変換部2の受光面の向く方向の仰角を変化させることができる。
【0070】
動力部24、25は、制御部12によりその出力を制御されることができる。このことにより、光電変換部2の受光面の向く方向を制御部12で制御することができ、また、第1および第2電解用電極8、7を振動するように制御することができる。例えば、動力部24、25がモーターである場合、モーターに流れる電流の向き、大きさ、電流を流す時間を制御部12で制御することにより、光電変換部2または第1および第2電解用電極の動きを制御することができる。
【0071】
6.第1気体排出口、第2気体排出口、傾斜角制限手段
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、第1電解用電極8の端部および第2電解用電極7の端部にそれぞれ近接して設けられる。このことにより、第1気体排出口20から第1気体を回収することができ、第2気体排出口19から第2気体を回収することができる。
【0072】
また、第1気体排出口20は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように水素製造装置45を設置したとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように水素製造装置45を設置したとき、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。このことにより、水素製造装置45を光電変換部2の受光面が水平面に対して傾斜するように設置し、前記受光面に太陽光を入射させた場合に、第1電解用電極8で発生させた第1気体を気泡として電解液中を上昇させ第1気体排出口20から回収することができ、第2電解用電極7で発生させた第2気体を気泡として電解液中を上昇させ第2気体排出口19から回収することができる。
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、例えば、シール材16に開口を設けることにより形成することができる。また、第1気体排出口20、第2気体排出口19に電解液が流入しないように流入防止弁を設けることもできる。
【0073】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出路48と導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出路と導通することができる。また、第1気体排出路48は、複数の第1気体排出口20と導通することができ、第2気体排出路は、複数の第2気体排出口19と導通することができる。このことにより、水素製造装置45で発生させた第1気体および第2気体を回収することができる。また、第1気体排出路48または第2気体排出路は、水素貯蔵装置45と接続することができる。このことにより水素製造装置45で発生させた水素を水素貯蔵装置で貯蔵することができる。
【0074】
しかし、係合部22、23により、光電変換部2の受光面の向きを太陽の位置を追尾するように変化させた場合、第1および第2電解用電極8、7の傾斜角が小さくなってしまい、第1気体および第2気体が電解液中を気泡として浮上することにより第1気体排出口20および第2気体排出口19にそれぞれ移動できなくなる場合がある。第1気体および第2気体が、排出されず、第1および第2電解用電極8、7の表面にそれぞれ滞留すると、第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触する面積が減少し、電解液の電気分解効率が低下し、水素製造効率が低下する。このような水素製造効率の低下を防止するために、傾斜角制限手段21を設けることができる。
【0075】
傾斜角制限手段21は、第1気体および第2気体が電解液中を浮力により第1気体排出口20および第2気体排出口19にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限する。このことにより、第1気体および第2気体が第1および第2電解用電極8、7の表面で滞留することを防止することができ、水素製造効率の低下を防止することができる。また、傾斜角制限手段21は、第1気体および第2気体が電解液中を気泡として浮上し第1気体排出口20および第2気体排出口19にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限することができる。
傾斜角制限手段21は、例えば、図3のように第2係合部23により生じる可動範囲を物理的に制限する手段であってもよく、図4のように第1および第2電解用電極8、7の傾斜角を固定する手段であってもよく、制御部12に含まれ、第2係合部23により生じる可動範囲を制限するプログラムであってもよい。
物理的に制限する手段としては、他にも、水素製造装置が一定の傾きを超えた際に気体が生成しない、もしくは電解液が流出しないよう気体排出口付近に逆止弁構造など気体もしくは液体の流れを制限する公知の手段であってもよい。
【0076】
7.第1導電部
第1導電部9は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第1導電部9を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
また、第1導電部9は、図2、6のように光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1導電部9が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第1導電部9は、図9のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0077】
第1導電部9の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0078】
8.絶縁部
絶縁部11は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図2、6のように第1導電部9を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部11を設けることができる。
また、絶縁部11は、例えば、図2、5〜9のように第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。このことにより、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間でリーク電流が生じるのを防止することができる。また、光電変換部2が図11、12のように受光することにより光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に電位差を生じるものである場合、絶縁部11は、第1電解用電極8と光電変換部2の裏面との間、および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けられ、絶縁部11は、第1区域上および第2区域上に開口を有してもよい。このことにより、光電変換部2が受光することにより形成される電子およびホールを効率よく分離することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、絶縁部11は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、リーク電流の発生を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
【0079】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0080】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0081】
9.第2導電部、第3導電部
第2導電部29は、絶縁部11と第2電解用電極7との間、または、絶縁部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。第2導電部29を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じた起電力を効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7に出力することができ、オーミックロスを低減することができる。第2導電部29は、例えば、図9、11、12に示すように設けることができる。
第2導電部29は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、オーミック抵抗の上昇を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第3導電部33は、図9、12のように光電変換層を直列接続するように設けることができる。
【0082】
第2導電部29または第3導電部33は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0083】
10.第1電解用電極、第2電解用電極
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側にそれぞれ設けられる。図2のように、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2の裏面上に設けられてもよく、図4のように光電変換部の裏面との間に基板や空間を挟んで設けられてもよい。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側の面とその裏面であり電解液に接触可能な面とをそれぞれ有することができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられる。例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、図2、9のように、第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図11、12のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することができる。
【0084】
図4、6、7のように第1電解用電極8が光電変換部2の裏面または第2電極5と接触していない場合、第1電解用電極8は、切換部10を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。また、図4、5、7、10のような場合、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と切換部10を介して電気的に接続することができる。
【0085】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であってもよく、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有してもよく、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、安定して第1気体および第2気体を発生させることができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7に電解液に対する耐食性を有する金属板または金属膜を用いることができる。
【0086】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部2と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、この場合、第1電解用電極8または第2電解用電極7を電解液に対する遮液性を有する部分と多孔質からなる部分の二層構造とすることもできる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素である。
【0087】
第1および第2電解用電極8、7は、係合部22により生じる可動範囲内で制御部12により振動するように制御されてもよい。このことにより、第1電解用電極8の表面で生じた第1気体、または第2電解用電極7の表面で生じた第2気体を容易に電解液中の気泡とすることができ、第1気体を第1気体排出口20から回収することができ、第2気体を第2気体排出口19から回収することができる。
【0088】
11.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒を含んでよく、水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より速い反応速度で水素を発生させることができる。
【0089】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0090】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0091】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0092】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0093】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0094】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0095】
12.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒を含んでもよく、酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部で生じる起電力により、より速い反応速度で酸素を発生させることができる。
【0096】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0097】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「8.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0098】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0099】
13.背面基板
背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。また、図4のように、光電変換部2と第1および第2電解用電極8、7とが分離されている場合、背面基板14は、第1および第2電解用電極8、7と対向するように設けることができる。
また、背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と背面基板14との間に空間が設けられるように設けることができる。この空間を電解液室15とすることができ、電解液室15に電解液を導入することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7を電解液に接触させることができる。また、背面基板14に箱状のものを用いる場合、背面基板14は箱体の底の部分であってもよい。
【0100】
また、背面基板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な背面基板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0101】
14.隔壁
隔壁13は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。また、隔壁13は、図10のように第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に設けることもできる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と背面基板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0102】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0103】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0104】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0105】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0106】
15.シール材
シール材16は、透光性基板1と背面基板14を接着し、水素製造装置45内の電解液および水素製造装置45内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。背面基板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と透光性基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0107】
ここではシール材16と記しているが、透光性基板1と背面基板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0108】
16.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
【0109】
17.給水口
給水口18は、水素製造装置45に含まれるシール材16の一部、もしくは背面基板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく水素製造装置45へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0110】
18.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素および酸素を製造することができる。
【0111】
19.センサ部
水素製造装置45は、センサ部17を備えてもよい。図13は、本実施形態の水素製造装置に含まれる制御部、センサ部などの概念図である。
センサ部17は、例えば、傾斜センサ、方位センサ、位置センサ、照度センサ、時計などを備えることができる。また、これらのセンサは、センサが得た情報を制御部12に出力することができる。なお、センサ部17に含まれる複数のセンサ、時計は、水素製造装置45の異なる箇所に設置されてもよい。
センサ部17が、傾斜センサ、方位センサを備えることにより、光電変換部2の受光面が向く方向の方位、仰角などを検出することができ、また、第1電解用電極8、第2電解用電極7の傾斜角を検出することができる。これらの情報を制御部12が入力することにより、制御部12が光電変換部2の受光面の向きや第1および第2電解用電極7の動きを正確に制御することができる。
【0112】
センサ部17が位置センサ、時計を備えることにより、太陽の位置や動きを算出することができる。これらの情報を制御部12が入力することにより、制御部12が光電変換部2の受光面の向きを太陽を追尾するように制御することができる。位置センサは、例えば、GPSである。
センサ部17が照度センサを備えることにより、日照条件を検出することができる。この情報を制御部12が入力することにより、日射量を検出することができ、日射があるか否かを検出することができる。この情報を制御部12が入力することにより、日射がある場合、光電変換部2の受光面を太陽を追尾するように制御し、日射がない場合、光電変換部2の受光面を固定するように制御することができる。日射がない場合、光電変換部2の受光面を太陽を追尾するように制御しても、光電変換部2に入射する光量は大きく変わらないため、光電変換部2を固定することにより、光電変換部2を動かすことに要するエネルギーを節約することができる。
【0113】
20.切換部
切換部10は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路とを切り換えることができる。このことにより、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ電力として供給でき、また、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部10が第1外部回路と電気的に接続する方法は、特に限定されないが、例えば、切換部10が出力端子を備え、出力端子を介して第1外部回路と電気的に接続してもよい。
【0114】
また、切換部10は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる。このことにより、第2外部回路から入力される起電力を利用して、電解液から第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部10が第2外部回路と電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、切換部10が入力端子を備え、入力端子を介して第2外部回路と電気的に接続してもよい。
【0115】
図面を用いて具体的に説明する。図14〜17は、本実施形態の水素製造装置の概略回路図である。例えば、本実施形態の水素製造装置45が図4、7のような断面を有し、図14のような電気回路を有する場合、例えば、SW(スイッチ)1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW5、SW6がOFF状態であり、SW3、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW3、SW4がOFF状態であり、SW5、SW6がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5、SW6がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0116】
例えば、本実施形態の水素製造装置45が図5、10のような断面を有し、図15のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0117】
例えば、本実施形態の水素製造装置45が図6のような断面を有し、図16のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0118】
例えば、本実施形態の水素製造装置45が図2、8、9、11、12のような断面を有し、図17のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達しない場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達する場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7へ出力することができる。従って、図17のような電気回路を有する場合でも、切換部10により、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力させる回路とを切り換えることができる。
また、SW3、SW4がON状態であり、SW1,SW2がOFF状態の場合、第2外部回路から入力される起電力、または第2外部回路から入力される起電力と光電変換部2が受光することにより生じる起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0119】
また、切換部10は、制御部12からの情報を入力することができ、入力した情報に基づき回路の切換を行うことができる。このことにより、切換部10は、制御部12が選択した回路に切り換えることができる。
また、切換部10は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じている場合、第1外部回路に光電変換部2で生じた起電力を出力することができ、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じていない場合、第1電解用電極8および第2電解用電極7に光電変換部2で生じた起電力を出力することができる。
さらに切換部10は、第2外部回路の起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第2外部回路が供給する電力が電気需要より大きくなっている場合、第2外部回路が供給する電力を利用して第1気体および第2気体を製造することができる。
【0120】
21.制御部
制御部12は、光電変換部2の受光面の向きを制御することができる。このことにより、光電変換部2の受光面を太陽を追尾するように動かすことができ、光電変換部2の入射光量を多くすることができる。その結果、光電変換部2の発電量が多くすることができる。
また、制御部12は、第1および第2電解用電極8、7を振動するように制御することができる。このことにより、第1および第2電解用電極8、7を振動させることができ、第1気体または第2気体の排出を促進することができる。
さらに、制御部12は、切換部10が切り換える回路を設定し、設定した情報を切換部10に出力することができる。このことにより、切換部10が切り換える回路を制御することができ、光電変換部2が発電するエネルギーを有効に活用することができる。また、第1および第2電解用電極8、7を有効に利用することができる。
【0121】
制御部12は、例えば、半導体装置とプログラムから構成できる。
制御部12は、情報を入力するための入力手段と、入力手段から入力された情報に基づき光電変換部2の受光面の向きまたは第1および第2電解用電極8、7の動きを設定する設定手段と、設定手段により設定された情報を出力するための出力手段と、出力手段により出力された情報に基づき少なくとも光電変換部2を動かす動力部24、25とを備えることができる。このことにより、制御部12は、光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7の動きを制御することができる。
また、制御部12は、情報を入力するための入力手段と、入力手段から入力された情報に基づき切換部10が切り換える回路を設定する設定手段と、設定手段により設定された情報を切換部10に出力するための出力手段とを備えることができる。このことにより、制御部12は、切換部10が切り換える回路を制御することができる。
【0122】
制御部12は、例えば、図13のように切換部10、動力部24、25、センサ部17、情報配線と接続することができる。
また、制御部12に含まれる入力手段は、情報配線または無線から情報を入力することができる。例えば、制御部12に含まれる入力手段は、情報配線または無線を介して、電力会社からの情報、売電情報、Web情報、ソリューションサーバー情報などを入力することができる。この情報に基づき、制御部12は、光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7の動きを制御することができる。また、この情報に基づき、制御部12は、切換部10が切り換える回路を制御することができる。
また、制御部12は、傾斜角制限手段21となるプログラムを含むことができる。
【0123】
図18は、制御部12の制御フローチャートの一例である。このフローチャートのように水素製造装置45を制御することにより、光電変換部2への入射光量を増やすことができ、また、光電変換部2が発電する電力を有効に利用することができる。
【0124】
水素製造方法
本実施形態の水素製造方法は、水素製造装置45を光電変換部2の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、電解液室15に電解液を導入し、太陽光を光電変換部2の受光面に入射させることにより第1電解用電極8および第2電解用電極7からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口20および第2気体排出口19からそれぞれ第1気体および第2気体を排出させることができる。
このことにより第1気体および第2気体を製造することができ、水素を製造することができる。
【符号の説明】
【0125】
1: 透光性基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:切換部 11:絶縁部 12:制御部 13:隔壁 14:背面基板 15:電解液室 16:シール材 17:センサ部 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:傾斜角制限手段 22:第1係合部 23:第2係合部 24:第1動力部 25:第2動力部 26:第1基部 27:第2基部 28:光電変換層 29:第2導電部 30:透光性電極 31:裏面電極 33:第3導電部 35:半導体部 36:p型半導体部 37:n型半導体部 40:アイソレーション 45:水素製造装置 46:電解液 47:水素貯蔵装置 48:配管(第1気体排出路) 49:入力端子 51a、51b:基板 52:配線
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置および水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
これまでに、光電変換と水素発生を一体化した水素製造装置が開示されている(例えば、特許文献1)。このような水素製造装置を用いることにより、太陽光エネルギーを効率よく水素として貯蔵することができる。
【0006】
また、太陽は、日の出から日の入りまで方位および仰角が変化する。また季節により、この方位および仰角は、変化する。このため、太陽電池を固定設置した場合、太陽電池の受光面に効率よく太陽光を入射させることができない。このため、太陽電池の受光面に効率よく入射するように太陽電池を太陽の動きを追尾する追尾型太陽光発電装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4594438号公報
【特許文献2】特開2010−205764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、光電変換と水素発生を一体化した水素製造装置を、光電変換する入射光の量が多くなるように太陽の動きを追尾させると、水素製造装置の傾斜角によっては、水素製造装置から水素が排出できず水素生成効率が低下する場合が生じる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光電変換する入射光の量を多くすることができ、かつ、水素生成効率が低下しない水素製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極と、前記光電変換部を支持する係合部とを備え、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、前記係合部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする水素製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。また、第1気体および第2気体のうち一方は水素であるため、水素を製造することができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面側に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
本発明によれば、光電変換部の裏面側に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射する光量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0011】
本発明によれば、光電変換部を支持する係合部が光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられるため、光電変換部の受光面の向きを太陽の動きに合わせて調整することができ、光電変換部へ入射する光量を多くすることができる。
本発明によれば、光電変換部の受光面の向きを調整することができるように係合部を設けることにより、光電変換部へ入射する光量を多くすることと、第1気体および第2気体を水素製造装置内に滞留せず排出できることとを、バランスするように光電変換部の受光面の向きを最適化することができるため、水電解効率を低下させずに水素を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の水素製造装置の受光面側から見た概略図である。
【図2】図1の点線A−Aにおける水素製造装置の概略断面図である。
【図3】図1の点線B−Bにおける水素製造装置の概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる制御部などの概念図である。
【図14】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図15】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図16】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図17】本発明の一実施形態の水素製造装置の概略回路図である。
【図18】本発明の一実施形態の水素製造装置に含まれる制御部の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の水素製造装置は、受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極と、前記光電変換部を支持する係合部とを備え、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、前記係合部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする。
【0014】
本実施形態の水素製造装置において、傾斜角制限手段、第1気体排出口および第2気体排出口をさらに備え、第1および第2気体排出口は、第1電解用電極の端部および第2電解用電極の端部にそれぞれ近接して設けられ、前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記傾斜角制限手段は、第1気体および第2気体が電解液中を浮力により第1気体排出口および第2気体排出口にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限することが好ましい。
このような構成によれば、傾斜角制限手段が、第1気体および第2気体が電解液中を浮力により第1気体排出口および第2気体排出口にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限するため、水素製造装置から第1気体または第2気体が排出されずに装置内に滞留することを防止することができ、水素生成効率の低下を防止することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記係合部は、回転自在または変形可能であることが好ましい。
このような構成によれば、係合部が回転または変形することにより光電変換部の受光面の向きを調整することができる。
【0015】
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向き、または第1および第2電解用電極の動きを制御する制御部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置の動きを自動制御することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを太陽の仰角と方位に基づき制御することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部への入射光量を多くすることができる。
【0016】
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、第1および第2電解用電極が振動するように第1および第2電解用電極の動きを制御することが好ましい。
このような構成によれば、第1電解用電極の表面の第1気体および第2電解用電極の表面の第2気体の装置外への排出を促進することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、情報を入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記光電変換部の受光面の向きまたは第1および第2電解用電極の動きを設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を出力するための出力手段と、前記出力手段により出力された情報に基づき少なくとも前記光電変換部を動かす動力部とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、制御部が水素製造装置の動きを制御することができる。
【0017】
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、第1および第2電解用電極の傾斜角を制限する傾斜角制限手段を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極の傾斜角を物理的な手段を用いずに制限することができるため、傾斜角制限手段による制限を容易に解除することができる。
本実施形態の水素製造装置において、第1外部回路と電気的に接続できる切換部をさらに備え、前記切換部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力させる回路とを切り換えることができることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の起電力を必要に応じて第1外部回路または第1または第2電解用電極へ出力することができ、光電変換部の起電力を有効に活用することができる。
【0018】
本実施形態の水素製造装置において、前記切換部は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができることが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極を有効に活用することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記切換部が切り換える回路を設定し、設定した情報を前記切換部に出力する制御部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、切換部が切り換える回路を制御部により自動制御することができる。
【0019】
本実施形態の水素製造装置において、前記制御部は、情報を入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記切換部が切り換える回路を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記切換部に出力するための出力手段とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、制御部が入力情報に基づき切換部が切り換える回路を制御することができる。
本実施形態の水素製造装置において、傾斜センサ、方位センサ、位置センサ、照度センサまたは時計をさらに備え、前記入力手段は、前記傾斜センサ、前記方位センサ、前記位置センサ、前記照度センサまたは前記時計から情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、水素製造装置の状態に関する情報、および太陽の位置、動きに関する情報、日射に関する情報を検出することができる。
【0020】
本実施形態の水素製造装置において、前記入力手段は、電力会社からの情報、売電情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力することが好ましい。
このような構成によれば、電力需要情報などに基づき水素製造装置を制御することができる。
本実施形態の水素製造装置において、基部をさらに備え、前記係合部は、前記基部に対して前記光電変換部、第1電解用電極および第2電解用電極が相対的に動くように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、基部を固定し、基部に対して光電変換部などを動かすことができる。
【0021】
本実施形態の水素製造装置において、前記係合部は、前記光電変換部の受光面の傾斜角を調整する第1係合部と、前記光電変換部の受光面が向く方位を調整する第2係合部とを含むことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面が向く方向を容易に太陽に合わせることができる。
本実施形態の水素製造装置において、第2係合部は、第1電解用電極および第2電解用電極に対して前記光電変換部が相対的に動くように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極の傾斜角を変化させずに、光電変換部の受光面の向きを動かすことができ、安定して第1気体および第2気体を排出することができる。
【0022】
本実施形態の水素製造装置において、前記係合部は、第1電解用電極および第2電解用電極に対して前記光電変換部が相対的に動くように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極の傾斜角を変化させずに、光電変換部の受光面の向きを動かすことができ、安定して第1気体および第2気体を排出することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力することができる。
【0023】
本実施形態の水素製造装置において、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備えたことが好ましい。
このような構成によれば、第2電解用電極と光電変換部の裏面とを電気的に分離することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を効率よく出力することができる。
【0024】
本実施形態の水素製造装置において、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本実施形態の水素製造装置において、第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができる。
【0025】
本実施形態の水素製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第1導電部とを容易に電気的に接続することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第1導電部とを容易に電気的に接続することができる。
【0026】
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより起電力を生じさせることができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を容易に第1電解用電極と第2電解用電極とに出力することができる。
【0027】
本実施形態の水素製造装置において、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる電子および正孔を効率よく分離することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる電子および正孔を効率よく分離することができる。
【0028】
本実施形態の水素製造装置において、透光性基板をさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、容易に光電変換部を形成することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力の電圧を大きくすることができる。
【0029】
本実施形態の水素製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から効率よく水素および酸素を製造することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。
このような構成によれば、電解液から効率よく水素および酸素を製造することができる。
【0030】
本実施形態の水素製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、触媒の表面積を大きくすることができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、水素を効率よく製造することができる。
【0031】
本実施形態の水素製造装置において、前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、酸素を効率よく製造することができる。
本実施形態の水素製造装置において、透光性基板と電解液室とをさらに備え、前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、第1電解用電極および第2電解用電極の上に背面基板をさらに備え、前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、電解液室に電解液を導入することができ、第1および第2電解用電極に電解液を接触させることができる。
【0032】
本実施形態の水素製造装置において、第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1気体と第2気体を隔壁により分離することができる。
本実施形態の水素製造装置において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液室のプロトン濃度の偏りを解消することができる。
【0033】
また、本発明は、本実施形態の水素製造装置を前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、前記水素製造装置の下部から前記水素製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記水素製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する水素製造方法も提供する。
本発明の水素製造方法によれば、光電変換部に太陽光を入射させることにより水素を製造することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0034】
水素製造装置の構成
図1は本実施形態の水素製造装置の受光面側から見た概略図であり、図2、3は、それぞれ点線A−A、点線B−Bにおける水素製造装置の概略断面図である。また、図4〜12は、本実施形態の水素製造装置の概略断面図であり、図4は、図3に対応する水素製造装置の概略断面図であり、図5〜12は、図2に対応する水素製造装置の概略断面図である。
本実施形態の水素製造装置45は、受光面およびその裏面を有する光電変換部2と、光電変換部2の裏面側に設けられた第1電解用電極8および第2電解用電極7と、光電変換部2を支持する係合部22,23とを備え、光電変換部2の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極8,7が電解液と接触するとき、第1および第2電解用電極8,7は、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液46を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、係合部22,23は、光電変換部2の受光面の向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする。
以下、本実施形態の水素製造装置について説明する。
【0035】
1.透光性基板
透光性基板1は、本実施形態の水素製造装置45が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が透光性基板1側となるように透光性基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、透光性基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、透光性基板1は省略することができる。
【0036】
また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するため、透光性基板1は、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
透光性基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0037】
2.第1電極
第1電極4は、透光性基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、透光性基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図11、12のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図2、6、9のように第1導電部9を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図8のように第2電解用電極7と接触してもよい。また、第1電極4は、図5、7、10のような場合、切換部10および配線52を介して第2電解用電極7と電気的に接続することができる。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0038】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いていることができる。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0039】
3.光電変換部
光電変換部2は、受光面およびその裏面を有し、光電変換部2の裏面側に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた透光性基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図2、5〜10のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図11、12のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図11、12のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0040】
第1気体および第2気体のうちどちらか一方が水素であり、他方が酸素の場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図9、12のように並べて設けられた光電変換層を第3導電部33により直列接続した構造を有することができる。
【0041】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0042】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0043】
3−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、透光性基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0044】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
透光性基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0045】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0046】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0047】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0048】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体部37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体部36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0049】
n型半導体部37およびp型半導体部36は、図11、12のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、また、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図12のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第3導電部33により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体部37およびp型半導体部36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0050】
3−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0051】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0052】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0053】
3−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0054】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0055】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0056】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0057】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0058】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0059】
3−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0060】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0061】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0062】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0063】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0064】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0065】
4.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面上に設けることができる。また、第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間および光電変換部2の裏面と絶縁部11との間に設けることもできる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第2電極5は、切換部10および配線52を介して第1電解用電極8と電気的に接続してもよい。
また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0066】
5.係合部、基部、動力部
係合部22、23は、光電変換部2を支持し、光電変換部2の受光面の向きを調整することができるように設けられる。係合部22、23は、回転自在であってもよく、変形可能であってもよい。係合部22、23が回転または変形することにより、光電変換部2の受光面の向きを調整することができる。係合部22、23は、例えば、図3のように背面基板14と基部27、26との間に設けることができ、また、図4のように光電変換部2と第1および第2電解用電極8、7との間に設けることができる。
係合部22、23は、例えば回転軸を有してもよく、歯車を有してもよく、また、ベアリングを有してもよい。このことにより、係合部22、23を回転自在にすることができる。また、係合部22、23は、ボールジョイントを有してもよい。このことにより、係合部22、23を回転自在にすることができる。
また、係合部22、23は、例えば、ゴムやバネなどのように変形可能な材料からなってもよい。このことにより、係合部22、23を変形可能にすることができる。
【0067】
係合部22、23は、光電変換部2の受光面の傾斜角を調整する第1係合部22と、光電変換部2の受光面が向く方位を調整する第2係合部23を有することができる。このことにより、季節や時間により変化する太陽の位置に合わせて光電変換部2の受光面の向きを変化させることができる。
第1係合部22は、例えば、図3のように第1基部26と第2基部27とを回転軸により係合することにより形成することができる。このことにより、光電変換部2と繋がった第2基部27が第1基部26に対して回転することにより、光電変換部2の受光面の向く方位を変化させることができる。
【0068】
第2係合部23は、例えば、図3のように第2基部27と背面基板14との間に回転軸を設けることにより形成することができる。このことにより、第2基部27に対して光電変換部2の受光面の向く方向の仰角を変化させることができる。
また、第2係合部23は、例えば、図4のように第1および第2電解用電極8、7に対して光電変換部2が相対的に動くように蝶番状に設けることができる。この場合、水素製造装置45は、光電変換部2の裏面上に設けられた基板51a、第1および第2電解用電極8、7の光電変換部2側に設けられた基板51bを備えることができ、この基板51aと基板51bを開き戸のように動かすことができる。
【0069】
係合部22、23により可動となった光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7は、手動により動かすことができるように設けられてもよい。この場合、季節や時間帯に応じて光電変換部2の受光面の向きを手動で変化させることにより、光電変換部2の受光面に入射する光量を大きくすることができる。また、手動とすることにより、製造コスト、設置コスト、維持コストなどを低減することができる。
また、係合部22、23により可動となった光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7は、動力部24、25により動くように設けられてもよい。
動力部24、25は、係合部22、23により可動となった光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7を動かすことができるように設けることができる。動力部24、25は、例えば、係合部22、23に含まれる回転軸と連結したモーターである。例えば、図3のように、第1基部26と第2基部27との間に設けられた第1係合部22に含まれる回転軸に第1動力部24であるモーターを連結することにより、モーターの動力により光電変換部2の受光面の向く方位を変化させることができる。このことにより、光電変換部2の受光面に入射する光量をより多くすることができる。
図3のように背面基板14と第2基部27との間に設けられた第2係合部23に含まれる回転軸に第2動力部25であるモーターを連結させることにより、モーターの動力により光電変換部2の受光面の向く方向の仰角を変化させることができる。また、図4のように基板51aと基板51bとを蝶番状に繋ぐように設けられた第2係合部23に含まれる回転軸に第2動力部25であるモーターを連結させることによっても、光電変換部2の受光面の向く方向の仰角を変化させることができる。
【0070】
動力部24、25は、制御部12によりその出力を制御されることができる。このことにより、光電変換部2の受光面の向く方向を制御部12で制御することができ、また、第1および第2電解用電極8、7を振動するように制御することができる。例えば、動力部24、25がモーターである場合、モーターに流れる電流の向き、大きさ、電流を流す時間を制御部12で制御することにより、光電変換部2または第1および第2電解用電極の動きを制御することができる。
【0071】
6.第1気体排出口、第2気体排出口、傾斜角制限手段
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、第1電解用電極8の端部および第2電解用電極7の端部にそれぞれ近接して設けられる。このことにより、第1気体排出口20から第1気体を回収することができ、第2気体排出口19から第2気体を回収することができる。
【0072】
また、第1気体排出口20は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように水素製造装置45を設置したとき、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、光電変換部2の受光面を水平面に対して傾斜するように水素製造装置45を設置したとき、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。このことにより、水素製造装置45を光電変換部2の受光面が水平面に対して傾斜するように設置し、前記受光面に太陽光を入射させた場合に、第1電解用電極8で発生させた第1気体を気泡として電解液中を上昇させ第1気体排出口20から回収することができ、第2電解用電極7で発生させた第2気体を気泡として電解液中を上昇させ第2気体排出口19から回収することができる。
第1気体排出口20、第2気体排出口19は、例えば、シール材16に開口を設けることにより形成することができる。また、第1気体排出口20、第2気体排出口19に電解液が流入しないように流入防止弁を設けることもできる。
【0073】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出路48と導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出路と導通することができる。また、第1気体排出路48は、複数の第1気体排出口20と導通することができ、第2気体排出路は、複数の第2気体排出口19と導通することができる。このことにより、水素製造装置45で発生させた第1気体および第2気体を回収することができる。また、第1気体排出路48または第2気体排出路は、水素貯蔵装置45と接続することができる。このことにより水素製造装置45で発生させた水素を水素貯蔵装置で貯蔵することができる。
【0074】
しかし、係合部22、23により、光電変換部2の受光面の向きを太陽の位置を追尾するように変化させた場合、第1および第2電解用電極8、7の傾斜角が小さくなってしまい、第1気体および第2気体が電解液中を気泡として浮上することにより第1気体排出口20および第2気体排出口19にそれぞれ移動できなくなる場合がある。第1気体および第2気体が、排出されず、第1および第2電解用電極8、7の表面にそれぞれ滞留すると、第1および第2電解用電極8、7が電解液と接触する面積が減少し、電解液の電気分解効率が低下し、水素製造効率が低下する。このような水素製造効率の低下を防止するために、傾斜角制限手段21を設けることができる。
【0075】
傾斜角制限手段21は、第1気体および第2気体が電解液中を浮力により第1気体排出口20および第2気体排出口19にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限する。このことにより、第1気体および第2気体が第1および第2電解用電極8、7の表面で滞留することを防止することができ、水素製造効率の低下を防止することができる。また、傾斜角制限手段21は、第1気体および第2気体が電解液中を気泡として浮上し第1気体排出口20および第2気体排出口19にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限することができる。
傾斜角制限手段21は、例えば、図3のように第2係合部23により生じる可動範囲を物理的に制限する手段であってもよく、図4のように第1および第2電解用電極8、7の傾斜角を固定する手段であってもよく、制御部12に含まれ、第2係合部23により生じる可動範囲を制限するプログラムであってもよい。
物理的に制限する手段としては、他にも、水素製造装置が一定の傾きを超えた際に気体が生成しない、もしくは電解液が流出しないよう気体排出口付近に逆止弁構造など気体もしくは液体の流れを制限する公知の手段であってもよい。
【0076】
7.第1導電部
第1導電部9は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第1導電部9を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
また、第1導電部9は、図2、6のように光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1導電部9が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第1導電部9は、図9のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0077】
第1導電部9の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0078】
8.絶縁部
絶縁部11は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図2、6のように第1導電部9を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部11を設けることができる。
また、絶縁部11は、例えば、図2、5〜9のように第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。このことにより、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間でリーク電流が生じるのを防止することができる。また、光電変換部2が図11、12のように受光することにより光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に電位差を生じるものである場合、絶縁部11は、第1電解用電極8と光電変換部2の裏面との間、および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けられ、絶縁部11は、第1区域上および第2区域上に開口を有してもよい。このことにより、光電変換部2が受光することにより形成される電子およびホールを効率よく分離することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、絶縁部11は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、リーク電流の発生を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
【0079】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0080】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0081】
9.第2導電部、第3導電部
第2導電部29は、絶縁部11と第2電解用電極7との間、または、絶縁部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。第2導電部29を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じた起電力を効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7に出力することができ、オーミックロスを低減することができる。第2導電部29は、例えば、図9、11、12に示すように設けることができる。
第2導電部29は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、オーミック抵抗の上昇を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第3導電部33は、図9、12のように光電変換層を直列接続するように設けることができる。
【0082】
第2導電部29または第3導電部33は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0083】
10.第1電解用電極、第2電解用電極
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側にそれぞれ設けられる。図2のように、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2の裏面上に設けられてもよく、図4のように光電変換部の裏面との間に基板や空間を挟んで設けられてもよい。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面側の面とその裏面であり電解液に接触可能な面とをそれぞれ有することができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7は光電変換部2に入射する光を遮ることはない。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液と接触するとき、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられる。例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、図2、9のように、第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図11、12のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することができる。
【0084】
図4、6、7のように第1電解用電極8が光電変換部2の裏面または第2電極5と接触していない場合、第1電解用電極8は、切換部10を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。また、図4、5、7、10のような場合、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と切換部10を介して電気的に接続することができる。
【0085】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であってもよく、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有してもよく、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、安定して第1気体および第2気体を発生させることができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7に電解液に対する耐食性を有する金属板または金属膜を用いることができる。
【0086】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、光電変換部2と触媒との間の電流が流れることによる電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、この場合、第1電解用電極8または第2電解用電極7を電解液に対する遮液性を有する部分と多孔質からなる部分の二層構造とすることもできる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素である。
【0087】
第1および第2電解用電極8、7は、係合部22により生じる可動範囲内で制御部12により振動するように制御されてもよい。このことにより、第1電解用電極8の表面で生じた第1気体、または第2電解用電極7の表面で生じた第2気体を容易に電解液中の気泡とすることができ、第1気体を第1気体排出口20から回収することができ、第2気体を第2気体排出口19から回収することができる。
【0088】
11.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と水素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、水素発生部は、水素発生触媒を含んでよく、水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より速い反応速度で水素を発生させることができる。
【0089】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0090】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0091】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0092】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0093】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0094】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0095】
12.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方である。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有してもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応をより速い反応速度とすることができる。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。また、光電変換部2の受光面または裏面と酸素発生部に含まれる触媒との間に電流が流れることによる電位の変化を抑制することができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒を含んでもよく、酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、光電変換部で生じる起電力により、より速い反応速度で酸素を発生させることができる。
【0096】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0097】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「8.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0098】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0099】
13.背面基板
背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の上に透光性基板1と対向するように設けることができる。また、図4のように、光電変換部2と第1および第2電解用電極8、7とが分離されている場合、背面基板14は、第1および第2電解用電極8、7と対向するように設けることができる。
また、背面基板14は、第1電解用電極8および第2電解用電極7と背面基板14との間に空間が設けられるように設けることができる。この空間を電解液室15とすることができ、電解液室15に電解液を導入することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7を電解液に接触させることができる。また、背面基板14に箱状のものを用いる場合、背面基板14は箱体の底の部分であってもよい。
【0100】
また、背面基板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めるために構成される材料であり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な背面基板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0101】
14.隔壁
隔壁13は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。また、隔壁13は、図10のように第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に設けることもできる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と背面基板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0102】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0103】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0104】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0105】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0106】
15.シール材
シール材16は、透光性基板1と背面基板14を接着し、水素製造装置45内の電解液および水素製造装置45内で生成した第1気体および第2気体を密閉するための材料である。背面基板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と透光性基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0107】
ここではシール材16と記しているが、透光性基板1と背面基板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0108】
16.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と背面基板14との間の空間および第2電解用電極7と背面基板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
【0109】
17.給水口
給水口18は、水素製造装置45に含まれるシール材16の一部、もしくは背面基板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく水素製造装置45へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0110】
18.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素および酸素を製造することができる。
【0111】
19.センサ部
水素製造装置45は、センサ部17を備えてもよい。図13は、本実施形態の水素製造装置に含まれる制御部、センサ部などの概念図である。
センサ部17は、例えば、傾斜センサ、方位センサ、位置センサ、照度センサ、時計などを備えることができる。また、これらのセンサは、センサが得た情報を制御部12に出力することができる。なお、センサ部17に含まれる複数のセンサ、時計は、水素製造装置45の異なる箇所に設置されてもよい。
センサ部17が、傾斜センサ、方位センサを備えることにより、光電変換部2の受光面が向く方向の方位、仰角などを検出することができ、また、第1電解用電極8、第2電解用電極7の傾斜角を検出することができる。これらの情報を制御部12が入力することにより、制御部12が光電変換部2の受光面の向きや第1および第2電解用電極7の動きを正確に制御することができる。
【0112】
センサ部17が位置センサ、時計を備えることにより、太陽の位置や動きを算出することができる。これらの情報を制御部12が入力することにより、制御部12が光電変換部2の受光面の向きを太陽を追尾するように制御することができる。位置センサは、例えば、GPSである。
センサ部17が照度センサを備えることにより、日照条件を検出することができる。この情報を制御部12が入力することにより、日射量を検出することができ、日射があるか否かを検出することができる。この情報を制御部12が入力することにより、日射がある場合、光電変換部2の受光面を太陽を追尾するように制御し、日射がない場合、光電変換部2の受光面を固定するように制御することができる。日射がない場合、光電変換部2の受光面を太陽を追尾するように制御しても、光電変換部2に入射する光量は大きく変わらないため、光電変換部2を固定することにより、光電変換部2を動かすことに要するエネルギーを節約することができる。
【0113】
20.切換部
切換部10は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路とを切り換えることができる。このことにより、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ電力として供給でき、また、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部10が第1外部回路と電気的に接続する方法は、特に限定されないが、例えば、切換部10が出力端子を備え、出力端子を介して第1外部回路と電気的に接続してもよい。
【0114】
また、切換部10は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる。このことにより、第2外部回路から入力される起電力を利用して、電解液から第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部10が第2外部回路と電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、切換部10が入力端子を備え、入力端子を介して第2外部回路と電気的に接続してもよい。
【0115】
図面を用いて具体的に説明する。図14〜17は、本実施形態の水素製造装置の概略回路図である。例えば、本実施形態の水素製造装置45が図4、7のような断面を有し、図14のような電気回路を有する場合、例えば、SW(スイッチ)1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW5、SW6がOFF状態であり、SW3、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW3、SW4がOFF状態であり、SW5、SW6がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5、SW6がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0116】
例えば、本実施形態の水素製造装置45が図5、10のような断面を有し、図15のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0117】
例えば、本実施形態の水素製造装置45が図6のような断面を有し、図16のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW5がOFF状態であり、SW4がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8と第2電解用電極7に出力することができる。
また、例えば、SW1、SW2、SW4がOFF状態であり、SW3、SW5がON状態である場合、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。また、SW1、SW2がOFF状態であり、SW3、SW4、SW5がON状態である場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力および第2外部回路から入力される起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0118】
例えば、本実施形態の水素製造装置45が図2、8、9、11、12のような断面を有し、図17のような電気回路を有する場合、例えば、SW1、SW2がON状態であり、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達しない場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力することができる。また、SW1、SW2、SW3、SW4がOFF状態である場合であって、光電変換部が受光することにより生じる起電力が電解液の電解電圧に達する場合、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7へ出力することができる。従って、図17のような電気回路を有する場合でも、切換部10により、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力させる回路とを切り換えることができる。
また、SW3、SW4がON状態であり、SW1,SW2がOFF状態の場合、第2外部回路から入力される起電力、または第2外部回路から入力される起電力と光電変換部2が受光することにより生じる起電力の両方を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができる。
【0119】
また、切換部10は、制御部12からの情報を入力することができ、入力した情報に基づき回路の切換を行うことができる。このことにより、切換部10は、制御部12が選択した回路に切り換えることができる。
また、切換部10は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じている場合、第1外部回路に光電変換部2で生じた起電力を出力することができ、第1外部回路に出力する電力が光電変換部2で生じていない場合、第1電解用電極8および第2電解用電極7に光電変換部2で生じた起電力を出力することができる。
さらに切換部10は、第2外部回路の起電力の大きさに基づき回路の切換を行うこともできる。このことにより、第2外部回路が供給する電力が電気需要より大きくなっている場合、第2外部回路が供給する電力を利用して第1気体および第2気体を製造することができる。
【0120】
21.制御部
制御部12は、光電変換部2の受光面の向きを制御することができる。このことにより、光電変換部2の受光面を太陽を追尾するように動かすことができ、光電変換部2の入射光量を多くすることができる。その結果、光電変換部2の発電量が多くすることができる。
また、制御部12は、第1および第2電解用電極8、7を振動するように制御することができる。このことにより、第1および第2電解用電極8、7を振動させることができ、第1気体または第2気体の排出を促進することができる。
さらに、制御部12は、切換部10が切り換える回路を設定し、設定した情報を切換部10に出力することができる。このことにより、切換部10が切り換える回路を制御することができ、光電変換部2が発電するエネルギーを有効に活用することができる。また、第1および第2電解用電極8、7を有効に利用することができる。
【0121】
制御部12は、例えば、半導体装置とプログラムから構成できる。
制御部12は、情報を入力するための入力手段と、入力手段から入力された情報に基づき光電変換部2の受光面の向きまたは第1および第2電解用電極8、7の動きを設定する設定手段と、設定手段により設定された情報を出力するための出力手段と、出力手段により出力された情報に基づき少なくとも光電変換部2を動かす動力部24、25とを備えることができる。このことにより、制御部12は、光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7の動きを制御することができる。
また、制御部12は、情報を入力するための入力手段と、入力手段から入力された情報に基づき切換部10が切り換える回路を設定する設定手段と、設定手段により設定された情報を切換部10に出力するための出力手段とを備えることができる。このことにより、制御部12は、切換部10が切り換える回路を制御することができる。
【0122】
制御部12は、例えば、図13のように切換部10、動力部24、25、センサ部17、情報配線と接続することができる。
また、制御部12に含まれる入力手段は、情報配線または無線から情報を入力することができる。例えば、制御部12に含まれる入力手段は、情報配線または無線を介して、電力会社からの情報、売電情報、Web情報、ソリューションサーバー情報などを入力することができる。この情報に基づき、制御部12は、光電変換部2または第1および第2電解用電極8、7の動きを制御することができる。また、この情報に基づき、制御部12は、切換部10が切り換える回路を制御することができる。
また、制御部12は、傾斜角制限手段21となるプログラムを含むことができる。
【0123】
図18は、制御部12の制御フローチャートの一例である。このフローチャートのように水素製造装置45を制御することにより、光電変換部2への入射光量を増やすことができ、また、光電変換部2が発電する電力を有効に利用することができる。
【0124】
水素製造方法
本実施形態の水素製造方法は、水素製造装置45を光電変換部2の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、電解液室15に電解液を導入し、太陽光を光電変換部2の受光面に入射させることにより第1電解用電極8および第2電解用電極7からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口20および第2気体排出口19からそれぞれ第1気体および第2気体を排出させることができる。
このことにより第1気体および第2気体を製造することができ、水素を製造することができる。
【符号の説明】
【0125】
1: 透光性基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:切換部 11:絶縁部 12:制御部 13:隔壁 14:背面基板 15:電解液室 16:シール材 17:センサ部 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:傾斜角制限手段 22:第1係合部 23:第2係合部 24:第1動力部 25:第2動力部 26:第1基部 27:第2基部 28:光電変換層 29:第2導電部 30:透光性電極 31:裏面電極 33:第3導電部 35:半導体部 36:p型半導体部 37:n型半導体部 40:アイソレーション 45:水素製造装置 46:電解液 47:水素貯蔵装置 48:配管(第1気体排出路) 49:入力端子 51a、51b:基板 52:配線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極と、前記光電変換部を支持する係合部とを備え、
前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、
第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、
第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、
前記係合部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
傾斜角制限手段、第1気体排出口および第2気体排出口をさらに備え、
第1および第2気体排出口は、第1電解用電極の端部および第2電解用電極の端部にそれぞれ近接して設けられ、
前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記傾斜角制限手段は、第1気体および第2気体が電解液中を浮力により第1気体排出口および第2気体排出口にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記係合部は、回転自在または変形可能である請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向き、または第1および第2電解用電極の動きを制御する制御部をさらに備える請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを太陽の仰角と方位に基づき制御する請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御部は、第1および第2電解用電極が振動するように第1および第2電解用電極の動きを制御する請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記制御部は、情報を入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記光電変換部の受光面の向きまたは第1および第2電解用電極の動きを設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を出力するための出力手段と、前記出力手段により出力された情報に基づき少なくとも前記光電変換部を動かす動力部とを備える請求項4〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
前記制御部は、第1および第2電解用電極の傾斜角を制限する傾斜角制限手段を含む請求項4〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
第1外部回路と電気的に接続できる切換部をさらに備え、
前記切換部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力させる回路とを切り換えることができる請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
前記切換部は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記切換部が切り換える回路を設定し、設定した情報を前記切換部に出力する制御部をさらに備える請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記制御部は、情報を入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記切換部が切り換える回路を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記切換部に出力するための出力手段とを備える請求項11に記載の装置。
【請求項13】
傾斜センサ、方位センサ、位置センサ、照度センサまたは時計をさらに備え、
前記入力手段は、前記傾斜センサ、前記方位センサ、前記位置センサ、前記照度センサまたは前記時計から情報を入力する請求項7または12に記載の装置。
【請求項14】
前記入力手段は、電力会社からの情報、売電情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力する請求項7、12または13に記載の装置。
【請求項15】
基部をさらに備え、
前記係合部は、前記基部に対して前記光電変換部、第1電解用電極および第2電解用電極が相対的に動くように設けられた請求項1〜14のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
前記係合部は、前記光電変換部の受光面の傾斜角を調整する第1係合部と、前記光電変換部の受光面が向く方位を調整する第2係合部とを含む請求項1〜15のいずれか1つに記載の装置。
【請求項17】
第2係合部は、第1電解用電極および第2電解用電極に対して前記光電変換部が相対的に動くように設けられた請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記係合部は、第1電解用電極および第2電解用電極に対して前記光電変換部が相対的に動くように設けられた請求項1〜15のいずれか1つに記載の装置。
【請求項19】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられた請求項1〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備えた請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項22】
第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備える請求項21に記載の装置。
【請求項23】
第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項21に記載の装置。
【請求項26】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項19〜25のいずれか1つに記載の装置。
【請求項27】
前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項1〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備える請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項27または28に記載の装置。
【請求項30】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項19〜29のいずれか1つに記載の装置。
【請求項31】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられた請求項19〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含む請求項19〜31のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有する請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項32または33に記載の装置。
【請求項35】
前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項32〜34のいずれか1つに記載の装置。
【請求項36】
前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項32〜35のいずれか1つに記載の装置。
【請求項37】
透光性基板と電解液室とをさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
第1電解用電極および第2電解用電極の上に背面基板をさらに備え、
前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられた請求項19〜36のいずれか1つに記載の装置。
【請求項38】
第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備える請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項38に記載の装置。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか1つに記載の水素製造装置を前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、
前記水素製造装置の下部から前記水素製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記水素製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する水素製造方法。
【請求項1】
受光面およびその裏面を有する光電変換部と、前記光電変換部の裏面側に設けられた第1電解用電極および第2電解用電極と、前記光電変換部を支持する係合部とを備え、
前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、
第1および第2電解用電極は、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生させることができるように設けられ、
第1気体および第2気体のうち、一方は水素であり他方は酸素であり、
前記係合部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを調整することができるように設けられたことを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
傾斜角制限手段、第1気体排出口および第2気体排出口をさらに備え、
第1および第2気体排出口は、第1電解用電極の端部および第2電解用電極の端部にそれぞれ近接して設けられ、
前記光電変換部の受光面に太陽光が入射し第1および第2電解用電極が電解液と接触するとき、前記傾斜角制限手段は、第1気体および第2気体が電解液中を浮力により第1気体排出口および第2気体排出口にそれぞれ移動するように第1および第2電解用電極の傾斜角を制限する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記係合部は、回転自在または変形可能である請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向き、または第1および第2電解用電極の動きを制御する制御部をさらに備える請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記光電変換部の受光面の太陽光に対する向きを太陽の仰角と方位に基づき制御する請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御部は、第1および第2電解用電極が振動するように第1および第2電解用電極の動きを制御する請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記制御部は、情報を入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記光電変換部の受光面の向きまたは第1および第2電解用電極の動きを設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を出力するための出力手段と、前記出力手段により出力された情報に基づき少なくとも前記光電変換部を動かす動力部とを備える請求項4〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
前記制御部は、第1および第2電解用電極の傾斜角を制限する傾斜角制限手段を含む請求項4〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
第1外部回路と電気的に接続できる切換部をさらに備え、
前記切換部は、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、前記光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1および第2電解用電極に出力させる回路とを切り換えることができる請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
前記切換部は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記切換部が切り換える回路を設定し、設定した情報を前記切換部に出力する制御部をさらに備える請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記制御部は、情報を入力するための入力手段と、前記入力手段から入力された情報に基づき前記切換部が切り換える回路を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された情報を前記切換部に出力するための出力手段とを備える請求項11に記載の装置。
【請求項13】
傾斜センサ、方位センサ、位置センサ、照度センサまたは時計をさらに備え、
前記入力手段は、前記傾斜センサ、前記方位センサ、前記位置センサ、前記照度センサまたは前記時計から情報を入力する請求項7または12に記載の装置。
【請求項14】
前記入力手段は、電力会社からの情報、売電情報、Web情報、ソリューションサーバー情報を入力する請求項7、12または13に記載の装置。
【請求項15】
基部をさらに備え、
前記係合部は、前記基部に対して前記光電変換部、第1電解用電極および第2電解用電極が相対的に動くように設けられた請求項1〜14のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
前記係合部は、前記光電変換部の受光面の傾斜角を調整する第1係合部と、前記光電変換部の受光面が向く方位を調整する第2係合部とを含む請求項1〜15のいずれか1つに記載の装置。
【請求項17】
第2係合部は、第1電解用電極および第2電解用電極に対して前記光電変換部が相対的に動くように設けられた請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記係合部は、第1電解用電極および第2電解用電極に対して前記光電変換部が相対的に動くように設けられた請求項1〜15のいずれか1つに記載の装置。
【請求項19】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続することができるように設けられ、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続することができるように設けられた請求項1〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備えた請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項22】
第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備える請求項21に記載の装置。
【請求項23】
第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項21に記載の装置。
【請求項26】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項19〜25のいずれか1つに記載の装置。
【請求項27】
前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項1〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備える請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項27または28に記載の装置。
【請求項30】
透光性基板をさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられた請求項19〜29のいずれか1つに記載の装置。
【請求項31】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられた請求項19〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含む請求項19〜31のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、前記光電変換部の受光面の面積より大きい触媒表面積を有する請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項32または33に記載の装置。
【請求項35】
前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項32〜34のいずれか1つに記載の装置。
【請求項36】
前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項32〜35のいずれか1つに記載の装置。
【請求項37】
透光性基板と電解液室とをさらに備え、
前記光電変換部は、前記透光性基板の上に設けられ、
第1電解用電極および第2電解用電極の上に背面基板をさらに備え、
前記電解液室は、第1電解用電極および第2電解用電極と前記背面基板との間に設けられた請求項19〜36のいずれか1つに記載の装置。
【請求項38】
第1電解用電極と前記背面基板との間の電解液室および第2電解用電極と前記背面基板との間の電解液室とを仕切る隔壁をさらに備える請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項38に記載の装置。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか1つに記載の水素製造装置を前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、
前記水素製造装置の下部から前記水素製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記水素製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する水素製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−177160(P2012−177160A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40639(P2011−40639)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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