説明

水素製造装置及び水素製造方法

【課題】太陽光の利用効率を向上して、水素の十分な収量を得ることを可能とする、水素の製造装置及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の水素製造装置は、集光器及び集光器の焦点に外管及び内管を備えた水素発生リアクターを有し、外管が光透過性材料で構成され、外管の内側面及び内管の外側面の少なくとも一部に光触媒が配置され、(i)内管内部を、水素原子含有物質及び金属反応媒体を含む水素発生媒体が流通し、水素発生媒体が蒸気化され、水素原子含有物質と金属反応媒体とが反応して、金属反応媒体が酸化され水素原子含有物質が還元されて水素が発生し、(ii)外管内部の光触媒によって、酸化された水素発生媒体が還元され、且つ未反応の水素原子含有物質が分解されて水素が発生し、(iii)還元された金属反応媒体を含む水素発生媒体が、内管内部を流通し、(i)〜(iii)を連続的に繰り返して水素を発生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を利用して水素を製造する装置及び太陽光を利用して水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化等の環境問題や、石油資源の枯渇等のエネルギー問題から、化石燃料に代わるクリーンな代替エネルギー源として、水素が注目されている。水素は燃焼しても水しか放出せず、地球温暖化の原因となる二酸化炭素や有害な窒素酸化物などが排出されないので、クリーンエネルギーとして期待されている。そして、来るべき水素社会では大量の水素が必要であり、高効率に水素を製造できる方法及び装置が求められている。
【0003】
水素を得るための方法の一つに、光触媒による水の分解反応を利用する方法が知られている。この光触媒を利用した例として、例えば、特許文献1及び特許文献2に示すものがある。これらの文献には、光触媒を担持した多孔質体を池等の水面に浮揚させておき、この多孔質体に光が照射されることで光触媒反応を生じさせ、これによって水を浄化することが開示されている。
【0004】
ところで、このような水の光分解反応に太陽光を利用することができれば、生成した水素を蓄えておき、必要な特に、熱や電気を得ることができる。すなわち、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵することができるようになれば、太陽エネルギーの極めて有効な利用手段となり得る。ただし、太陽光は、紫外領域から赤外領域までの広い範囲のエネルギー分布を有するが、従来、光触媒による水の分解反応に利用されるのは、その多くが紫外〜可視光領域のみであり、赤外領域にある太陽熱エネルギーはほとんど利用されていなかった。これを解決するため、例えば特許文献3には、太陽エネルギーを有効利用して水の光分解を促進することを目的とした水の光分解装置及び水の光分解方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−188269号公報
【特許文献2】特開2000−126761号公報
【特許文献3】国際公開WO2004/085306号
【0006】
特許文献3には、外部からの光が入射可能なケーシングと、前記ケーシング内に収容される光分解層とを備え、前記光分解層は、光透過性のある多孔体と、この多孔体に担持される光触媒とを有し、前記光分解層の下方には、第1の空間を介して液体状の水を含む水層が配置され、前記ケーシング内において前記光分解層の上方には密閉された第2の空間が形成されており、前記水層から発生した水蒸気が前記第1の空間を介して前記光分解層に導入され、前記光によって励起された前記光触媒により前記水蒸気が水素と酸素とに分解され、前記水素及び酸素は前記第2の空間に拡散する、水の光分解装置が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、光透過性のある多孔体とこの多孔体に担持される光触媒とを備えた光分解層を、液体状の水を含む水層上に、所定間隔をおいて配置するステップと、前記光分解層に光を照射するステップと、前記水層から発生した水蒸気が前記所定間隔を介して前記光分解層に導入されると、前記光によって励起された前記光触媒により前記水蒸気を水素と酸素とに分解するステップとを備えている水の光分解方法であって、前記光分解層は、光が入射可能なケーシング内に配置され、前記ケーシング内において前記光分解層の上方には密閉された第2の空間が形成されており、当該第2の空間に前記水素及び酸素が捕集される、水の光分解方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の装置及び方法は、太陽光を利用して水を蒸発させ、光触媒を励起し、水素を発生させるものであるが、エネルギーとして装置上部からの自然光のみを利用しているため、太陽光から大きなエネルギーを集めにくく、また、水素を発生させる反応として、前記の自然光のみを利用して、蒸発させた水と、励起した光触媒とを反応させるものであるため、水素の十分な収量を得ることが難しかった。
【0009】
したがって、本発明は、上記課題を解決するものであり、従来技術よりも、太陽光の利用効率を向上して、水素の十分な収量を得ることを可能とする、水素の製造装置及び水素の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、太陽光エネルギーの変換効率が高い、水素の製造装置及び水素の製造方法について鋭意研究を行った。その結果、太陽光を集光することにより太陽光のエネルギーを効率良く集め、その集めた太陽光の短波長領域から長波長領域までのエネルギーを効率よく利用して、金属反応媒体による水素原子含有物質との酸化還元反応と、水素原子含有物質の光触媒による分解反応とを同時に発生させて、その両方の反応から水素を製造できる装置及び方法を見出した。
【0011】
本発明は、水素発生リアクター及び太陽光を反射する材料を表面に有する集光器を備えた水素製造装置であって、
集光器の焦点に水素発生リアクターが配置され、
水素発生リアクターが、外管及び内管を備えた二重管構造を有し、
外管の少なくとも一部が、光透過性の材料で構成されてなり、
外管の内側面及び内管の外側面の少なくとも一部に光触媒が配置されており、
(i)内管の内部にて、水素原子含有物質及び金属反応媒体を含む水素発生媒体が流通し、水素発生媒体が蒸気化され、水素原子含有物質と金属反応媒体とが反応して、金属反応媒体の少なくとも一部が酸化され水素原子含有物質の少なくとも一部が還元されて水素が発生し、
(ii)水素発生媒体が、内管から排出され、外管と内管との間を流通し、光触媒によって、酸化された金属反応媒体の少なくとも一部が還元され、且つ未反応の水素原子含有物質の少なくとも一部が分解されて水素が発生し、
(iii)還元された金属反応媒体を含む水素発生媒体が、内管の内部を流通する、
(i)〜(iii)を連続的に繰り返して水素を発生させることができる、
水素製造装置に関する。
【0012】
本発明はまた、太陽光を利用して水素を製造する方法であって、
(i)光触媒及び集光器を準備する工程、
(ii)水素原子含有物質及び金属反応媒体を含む水素発生媒体を準備する工程、
(iii)太陽光から得られる長波長側のエネルギーを利用することにより、水素発生媒体を蒸気化し、水素原子含有物質と金属反応媒体とを反応させて、金属反応媒体の少なくとも一部が酸化され水素原子含有物質の少なくとも一部が還元されて水素を発生させる工程、及び
(iv)太陽光から得られる短波長側の光を利用することにより、光触媒を活性化して、酸化された金属反応媒体の少なくとも一部を還元し、且つ未反応の水素原子含有物質の少なくとも一部を分解して水素を発生する工程、
を含み、(ii)〜(iv)の工程を連続的に繰り返して水素を製造する、水素の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水素を発生する装置及び方法によれば、太陽光を集光し、集光した太陽光の長波長側のエネルギー及び短波長側のエネルギーを利用して、酸化還元反応及び分解反応の2種類の反応を同時に発生させて連続的に水素を生成することが可能となり、従来技術よりも、高効率で水素を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態に係る、水素発生リアクター及び集光器を含む水素製造装置の模式図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る、水素発生リアクター及び集光器を含む水素製造装置の断面の模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る、水素発生リアクターの横断面の模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、他の水素発生リアクターの縦断面の模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る、他の水素発生リアクターの横断面の模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る、他の水素発生リアクターの横断面の模式図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る、水素発生リアクター、還元リアクター、及び集光器を含む水素製造装置の模式図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る、水素発生リアクター、還元リアクター、及び集光器を含む水素製造装置の断面の模式図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係る、還元リアクターの横断面の模式図である。
【図10】本発明の第二実施形態に係る、還元リアクターの縦断面の模式図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係る、他の水素発生リアクターの横断面の模式図である。
【図12】本発明の第二実施形態に係る、他の水素発生リアクターの横断面の模式図である。
【図13】本発明の第二実施形態に係る、水素発生リアクター、還元リアクター、及び一部が分離されている集光器の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第一実施形態に係る水素製造装置について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、第一実施形態に係る水素製造装置の全体の模式図であり、図2は、その断面の模式図である。図1に示すように、水素製造装置10は、水素発生リアクター100と集光器150を備えている。図2に示すように、太陽光Lは、水素発生リアクター100に直接照射されるだけでなく、太陽光Lが、集光器150の表面で反射し、集光器の焦点に配置された水素発生リアクター100に集光される。
【0017】
図3及び4は、水素発生リアクター100の横断面及び縦断面の模式図である。この水素発生リアクター100は、外管101及び内管102を有する二重管構造である。外管101は、少なくとも一部が、ホウケイ酸ガラスなどの透光性材料で構成されており、この外管101を介して太陽光Lが水素発生リアクター100の内部へと入射するようになっている。外管101の内側面及び内管102の外側面の少なくとも一部には、光触媒103が配置されている。内管102の端部の一方には、ポンプによって水素発生媒体を圧送するための内管導入口104が設けられ、内管102の他方の端部には、水素発生媒体、発生した水素などを内管102の外部に排出するための排出細孔部105が配置されている。外管101の端部の一方には、内管102から排出した水素発生媒体などを導入するための外管導入口106が設けられ、外管101の端部の他方には、発生した水素及び水素発生媒体を排出するための外管排出口107が設けられている。内管導入口104、排出細孔部105、外管導入口106、及び外管排出口107以外の、内管及び外管の端部は、封止端部111にて封止されている。なお、図示を省略するが、排出細孔部105と外管導入口106との間及び/または外管排出口107と内管導入口104との間には発生した水素を分離回収するための水素分離膜を配置することができる。また、外管排出口107と内管導入口104との間には水素発生媒体を液体として貯めるタンク及び内管導入口104に水素発生媒体を送り出すポンプを配置することができる。排出細孔部105自体が水素分離膜の機能を有することもできる。
【0018】
水素発生媒体とは、水素原子含有物質及び金属反応媒体を含む流体である。水素発生媒体は、内管内部108にて、太陽光Lの集光による加熱によって蒸気化され、水素原子含有物質と金属反応媒体との間で酸化還元反応が起こり、水素を発生することができる。
【0019】
水素原子含有物質とは、水素原子を含み、金属反応媒体との酸化還元反応によって水素を発生することができる物質である。より具体的には、集光による加熱によって水素発生媒体が蒸気化され、水素原子含有物質が金属反応媒体と反応し、金属反応媒体は酸化されながら水素原子含有物質は還元されて、水素を発生することができる物質である。
【0020】
水素原子含有物質としては、水(H2O)、アルコールなどが挙げられる。水が、分解したときに水素と酸素のみを発生させ、他の副次生成ガスを発生させない点で好ましい。
【0021】
金属反応媒体とは、金属を含み、熱と光を与えられることで、前記の蒸気化した水素原子含有物質と反応して、金属反応媒体自体は酸化されながら水素原子含有物質を還元して、水素を発生させることができる材料である。また、酸化した金属反応媒体自体は、光触媒によって還元され、再び、水素原子含有物質と反応することができ、このような連続的な酸化還元反応による水素の生成が可能である。
【0022】
好ましくは、金属反応媒体は、Fe23、FeS、Fe(NO33、CH3COOAg、ZnS、SiC、GaN、C34、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上の材料であり、さらに好ましくは、金属反応媒体の材料は、安価で副次生成ガスの影響が少ないFe23である。
【0023】
水素発生媒体は、金属反応媒体を、水などの水素原子含有物質の溶媒中に分散させ、所望により添加剤を添加することにより調製され得る。金属反応媒体は、水素発生媒体中で、キレートまたはコロイドとして存在することが好ましい。
【0024】
また、水素発生媒体は、オイルなどの高沸点の有機溶剤を含んでもよい。この場合、水素発生媒体の温度を高くすることができ、金属反応媒体と水素原子含有物質との反応の促進、及び内管と外管との間を流通する水素発生媒体の分解による水素発生の促進を行うことができる。この場合の水素発生媒体は、水:オイル=70〜95:5〜30の混合溶液に、0.1〜10wt%のFe23などの金属反応媒体を添加した懸濁液とすることができる。
【0025】
水素発生媒体の実施態様として、例えば、水、例えば純水に対して、0.1〜0.4wt%の硝酸鉄を溶解させ、亜硫酸ナトリウム1.2〜2.3%を添加して溶解させ、3.2〜4.6%のチオ硫酸ナトリウムを添加して、鉄錯体溶液の水素発生媒体を調製することができる。
【0026】
以下に、水素発生媒体において、金属反応媒体としてFe23、及び水素原子含有物質として水を使用したときの、Fe23と水との酸化還元反応による水素を発生させる反応シーケンスを示す。Feが2価の状態で、鉄錯体溶液である水素発生媒体中に存在して、以下の反応が生じる。
Fe2+→Fe+Fe23
Fe+H2O→Fe23+H2
Fe23+Hv→2FeO(II)
【0027】
水素発生リアクター100の内管102の内部にて、水中にイオン化したFe2+が、太陽光Lの集光によって加熱され蒸気化することで酸化され、Fe及びFe23が、水蒸気中に分散して得られる。得られたFeが、加熱水蒸気の水分(H2O)と反応し、FeはFe23に酸化されながらH2Oが還元されて水素及び酸素を発生する。生成したFe23は、光触媒によって、FeO(II)に還元される。この反応サイクルを繰り返して、酸化還元反応による水素の発生を、継続して行うことができる。
【0028】
外管101は、少なくとも一部が透光性材料で構成され、外管101を介して、太陽光Lが水素発生リアクター100の内部へと入射することができる構成を有する。外管101は、透光性であれば、有色透明および無色透明のいずれでも構わないが、光を良く通すという点から、好ましくは無色透明であり、例えば、ホウケイ酸ガラス、アルミナ珪酸ガラス、石英ガラス、合成石英ガラスなどを用いることができる。好ましくは、外管101は、ホウケイ酸ガラスで構成される。また、外管は中空であれば、任意の形状であることができ、例えば、外管の断面が、矩形、円筒形等であることができ、好適には円筒形であることがでる。外管の直径は特に制限されないが、38〜62mm程度が好適であり、外管の厚みも特に制限されないが、2〜4mm程度が好適である。
【0029】
内管102は、その内部に水素発生媒体を流通させることが可能な管であり、端部及び/または側面に細孔が設けられている管である。集光による加熱により、水素発生媒体が蒸気化して、内管102の内部の圧力が高まると、端部及び/または側面の細孔を通じて、発生した水素などのガス及び水素発生媒体が内管102の外側に放出される。
【0030】
内管102は、太陽光Lの赤外領域のエネルギーの少なくとも一部を透過可能な材料及び/または内管102自体が太陽光Lの赤外領域のエネルギーによって加熱され得る材料で構成される。
【0031】
図3及び4に示すように、内管102の材料として、例えば、ホウケイ酸ガラス、アルミナ珪酸ガラス、石英ガラス、または合成石英ガラスなどのガラスを用いることができる。あるいは、図5に示すように、内管110の材料として、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、窒化珪素、ニッケル若しくはアルミニウムなどの発泡金属、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上の材料で構成される多孔体を用いることができる。内管の材料として、ホウケイ酸ガラス、または多孔体のジルコニア、アルミナ、若しくはニッケル製発泡金属が好ましい。内管が多孔体で構成される場合は、その多孔体が、水素分離膜の機能を有することもできる。また、内管は中空であれば、任意の形状であることができ、例えば、内管の断面が、矩形、円筒形等であることができ、好適には円筒形であることができる。内管の直径は特に制限されないが、8〜12mm程度が好適であり、内管の厚みも特に制限されないが、1〜2mm程度が好適である。
【0032】
図3に示すように、内管102がガラスで構成される場合は、内管102の端部に排出細孔部105が設けられる。この排出細孔部105の材料として、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、窒化珪素、ニッケル若しくはアルミニウムなどの発泡金属、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上の材料で構成される多孔体が挙げられ、内管102の端部を塞ぐように配置され得る。この排出細孔部105が、水素分離膜の機能を有することもできる。
【0033】
封止端部111は、例えば、ホウケイ酸ガラスなどの、水素発生媒体を封止できる材料で構成される。
【0034】
図5に示すように、内管が多孔体110の場合は、内管の側面から水素発生媒体を排出することができる。内管の内管導入口104を有する側の反対側の端部は、封止することが好ましいが、必要に応じて排出細孔部を設けてもよい。また、外管排出口107は、必要に応じて、内管導入口104と同じ側の端部または反対側の端部に設けることができるが、図5に示すように、内管の側面から水素発生媒体を排出する場合、水素発生媒体を光触媒103により多く接触させるために、外管排出口107は、内管導入口104の反対側の端部に設けることが好ましい。
【0035】
図6に示すように、内管102の内部には、熱吸収体112を配置してもよい。熱吸収体112は、入射される太陽光Lの熱エネルギーを吸収して温まりやすい性質を有する材料である。熱吸収体112を内管102の内部に配置することにより、内管102の内部及び外部の温度を高めることができ、水素発生媒体からの水素生成、及び酸化された金属反応媒体の還元反応を促進することができる。したがって、熱吸収体112は、内管102の内部に充填するように配置されることが好ましく、熱吸収体112の構造は、熱吸収体112の内部に水素発生媒体の流体を流通させることができる多孔質材料、または内管102の長軸方向に方向性のある隙間を有する材料で構成されることが好ましい。熱吸収体112の材料として、炭素質材料が好ましく、特に、活性炭またはカーボンファイバーが好ましい。また、熱吸収体は、図5に示すような多孔質の内管110の内部に配置してもよい。
【0036】
図3〜6に示すように、外管101の内側面及び内管102の外側面の少なくとも一部に、光触媒103を配置することができる。外管101の内側面及び内管102の外側面のそれぞれに異なる光触媒を配置してもよく、あるいは同じ面に異なる光触媒を配置してもよい。この光触媒103は、光によって励起されて、酸化された金属反応媒体を還元し、且つ水素原子含有物質を分解して水素を発生することができる。
【0037】
光触媒103の材料としては、上述の光触媒反応を示すものであれば、任意に選んで使用することができる。光触媒103としては、例えば、TiO2、WO3、タンタルオキシナイトライド(TaON)、窒化タンタル(Ta35)、BaTi49、Na2Ti613、CdS、ZrO2、α−Fe23、K4Nb617、Rb4Nb617、K2Rb2Nb617、Pb1-x2xNbO6などの半導体を用いることができる。光触媒103としては、特に、TiO2またはWO3が好ましい。TiO2及びWO3、特にWO3は、比較的耐熱性が高いため、高温になり得る水素発生リアクター内に配置する触媒として好適である。
【0038】
光触媒103の担持方法としては、当技術分野で公知の方法を用いることができ、例えば、金属アルコキシドをアルコール系等の適当な溶媒に溶解し、この溶液を加水分解縮重合して、コロイド分散液を調製し、このコロイド分散液に担持面をディップまたは担持面上にコロイド分散液を塗布した後、乾燥し、熱処理して結晶化するゾル−ゲル法、ターゲットを用いるスパッタ法、光触媒の微粒子を有機または無機のバインダにより固定する方法、有機金属溶液を塗布乾燥して、酸化物微粉体の集合を作り、次に酸素を供給しながら熱処理して−M−O−M−構造を形成させる有機金属分解(MOD)法などを用いることができる。
【0039】
光触媒103の担持量は、0.1〜1.0g/m3が好ましく、0.3〜0.7g/m3がさらに好ましい。
【0040】
光触媒の助触媒として、例えば、白金、銀、バナジウムなどの貴金属、及び/または鉄、銅などの非金属を、光触媒の生成後に、光電極反応を用いて担持することができる。
【0041】
図1及び2に示すように、集光器150は、太陽光Lを反射して、集光器150の焦点位置に配置した水素発生リアクター100に、太陽光Lを集光することができるものである。例えば、集光器150を用いることで、太陽光Lの10〜100倍程度の光強度及び200〜400℃の熱を、水素発生リアクター100に集めることができる。集光器150は、パラボラトラフ型集光器が好ましい。パラボラトラフ型集光器は、樋状に伸びた放物面の反射体を表面に有し、集光器の焦点位置に配置した樋の長さとほぼ同じ長さの水素発生リアクターに、効率良く太陽光Lを集光することができる。
【0042】
集光器150は、構造体151及び反射板152を含み、構造体151の材料としてはアルミ、ジュラルミンなどの軽量金属が好ましい。また、反射板152は太陽光を反射する鏡として用いるため、薄板ガラス、金属フィルム、及びフッ素系樹脂シートの表面にスパッタリングなどによって金属を形成した鏡面フィルムなどの適当な反射材を使用することができる。特に、フッ素系樹脂シートの表面に金属を形成した鏡面フィルムが軽量かつ交換が容易であるため、好ましい。
【0043】
集光器150は、太陽の動きに合わせて、自動または手動で、太陽光Lの反射角度を変更可能であり、太陽光の入射角度が変化しても、水素発生リアクター100に集光することができる。また、水素発生リアクター100の内部に設置した熱電対(図示せず)によって温度を測定し、集光器150による太陽光Lの反射角度を調整して、水素発生リアクター100内部の温度を制御してもよい。
【0044】
図1、2及び3を用いて、上記のように構成された水素製造装置10の動作を説明する。まず、太陽光Lが、集光器150によって集光されて、水素発生リアクター100に照射されると、照射された太陽エネルギーのうち、少なくとも一部のエネルギーは外管101を通過し、少なくとも一部のエネルギーは内管102及び/または内管102の内部を流通する水素発生媒体に吸収される。こうして、内管102及び水素発生媒体に吸収されたエネルギーが、内管102及び水素発生媒体の温度を上昇させ、水素発生媒体からの水素生成及び金属反応媒体の還元反応を起こすことができる。
【0045】
蒸気化した水素発生媒体の中で、水素原子含有物質の少なくとも一部と金属反応媒体の少なくとも一部とが反応して、金属反応媒体の少なくとも一部が酸化されながら水素原子含有物質の少なくとも一部が還元され、水素を発生する。内管内部108で発生した水素及び水素発生媒体は、内管内部108の圧力の上昇によって、内管102の端部に設けられた排出細孔部105を通して排出され、水素は水素分離膜(図示せず)によって分離回収され、水素発生媒体は、外管導入口106から、外管と内管との間、すなわち外管内部109に導入される。
【0046】
外管導入口106から外管内部109に導入された水素発生媒体中の酸化された金属反応媒体の少なくとも一部は、光触媒103によって還元される。また未反応の水素原子含有物質、すなわち、内管内部108で反応しなかった水素原子含有物質の少なくとも一部が光触媒103によって分解され水素を発生する。還元された金属反応媒体を含む水素発生媒体及び発生した水素は、外管排出口107から排出され、水素は水素分離膜(図示せず)によって分離回収され、水素発生媒体は、タンクに入れられた後、再び、ポンプによって、内管導入口104に送り出される。
【0047】
また、図5に示すように、多孔体の内管110の端部を封止した場合は、内管内部108で発生した水素及び水素発生媒体は、多孔体の内管110の側面の細孔を通して内管内部108から外管内部109に押し出される。水素発生媒体中の酸化された金属反応媒体の少なくとも一部は、光触媒103によって還元される。また未反応の水素原子含有物質の少なくとも一部が光触媒103によって分解され水素を発生する。内管内部108で発生した水素とともに、還元された金属反応媒体を含む水素発生媒体及び発生した水素は、外管排出口107から排出され、水素は水素分離膜(図示せず)によって分離回収される。水素発生媒体は蒸気化されており、生成した水素は、気相に拡散するため、水素と酸素との反応から水に戻る逆反応が抑制され、効率的に水素を収集することができる。次いで、水素発生媒体は、水素発生媒体を液体として貯めるタンクに入れられた後、再び、ポンプによって、内管導入口104に送り出される。
【0048】
次に、本発明の第二実施形態に係る水素製造装置20について、図面を参照しながら説明する。
【0049】
図7は、第二実施形態に係る水素製造装置の全体の模式図であり、図8は、その断面の模式図である。本実施形態が、第一実施形態と相違するのは、主に還元リアクター220を配置したことであり、その他の第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0050】
図7に示すように、水素製造装置20は、水素発生リアクター200、水素発生リアクター200に環状に接続された還元リアクター220、及び集光器150を備えている。
【0051】
図8に示すように、太陽光Lは、水素発生リアクター200に直接照射されるだけでなく、太陽光Lが、集光器150の表面で反射し、集光器150の焦点に配置された水素発生リアクター200に集光される。
【0052】
図9及び10に示すように、還元リアクター220は、その管221の内壁面に光触媒222を有する。還元リアクター220は、集光器150の焦点から外れた位置であって、水素発生リアクター200が配置される場所よりも比較的低温の場所に配置され、好ましくは60〜80℃の場所に配置される。
【0053】
還元リアクター220には、環状に接続された水素発生リアクター200から、酸化された金属反応媒体を含む水素発生媒体が送られてくる。還元リアクター220内で、酸化された金属反応媒体を還元すること、及び未反応の水素原子含有物質、すなわち水素発生リアクター200の内部にて反応しなかった水素原子含有物質を分解して水素を発生させることができる。
【0054】
水素発生リアクター200は高温となるため、水素発生リアクター200内の光触媒の機能低下の影響を抑えたい場合または補完したい場合に還元リアクター220は有益である。したがって、水素発生リアクター200は、その内部に、光触媒を配置した構成、または配置しない構成とすることができる。水素発生リアクター200内の光触媒に加えてまたは代えて、還元リアクター220内の光触媒222によって、酸化された金属反応媒体の還元及び未反応の水素原子含有物質の分解による水素発生を行うことができる。
【0055】
水素発生リアクター200は、図5に示すように、多孔体の内管110を用いて、外管101の内側面及び内管110の外側面の少なくとも一部に光触媒を配置した構成が好ましい。あるいは、水素発生リアクター200は、図11に示すように、多孔体の内管110を用いて光触媒を配置しない構成としてもよい。あるいは、図12に示すように、外管101のみの単管として、光触媒を配置しない構成としてもよい。この場合、単管101の内部にて、図3などに示すような二重管の内管の内部と同様の、水素発生媒体の蒸気化及び酸化還元反応を発生させることができる。さらには、図3に示すような二重管を用いて、排出細孔部105から排出した水素発生媒体を、外管内部109及び還元リアクター220に分岐させてもよい。
【0056】
図9及び10に示すように、還元リアクター220は円柱形の管であることができるが、特に制限されるものではなく、還元リアクターは中空であれば、任意の形状であることができ、例えば、還元リアクターの断面が、矩形、円筒形等であることができ、好適には円筒形であることがでる。還元リアクターの直径は特に制限されないが、20〜40mm程度が好適であり、還元リアクターの厚みも特に制限されないが、1〜2mm程度が好適である。
【0057】
図9及び10に示すように、還元リアクターの管221の内壁面の少なくとも一部に光触媒222を配置することができる。管221は、ホウケイ酸ガラス、アルミナ珪酸ガラス、石英ガラス、または合成石英ガラスなどのガラスで構成され、ホウケイ酸ガラスが好ましい。
【0058】
還元リアクター220に配置される光触媒222としては、TiO2、WO3、タンタルオキシナイトライド(TaON)、窒化タンタル(Ta35)、BaTi49、Na2Ti613、CdS、ZrO2、α−Fe23、K4Nb617、Rb4Nb617、K2Rb2Nb617、Pb1-x2xNbO6などの半導体を用いることができる。光触媒222としては、特に、タンタルオキシナイトライド(TaON)または窒化タンタル(Ta35)が好ましい。タンタルオキシナイトライド(TaON)及び窒化タンタル(Ta35)は、TiO2及びWO3よりも、耐熱性は低いが、光触媒効果が高いため、比較的低温に配置される還元リアクター220の触媒として特に好適である。
【0059】
光触媒222の担持方法として、当技術分野で公知の方法を用いることができ、例えば、ゾル−ゲル法、スパッタ法などの、上述の光触媒103と同様の担持方法を用いることができる。
【0060】
光触媒222の担持量は、0.01〜1g/m2が好ましく、0.1〜0.5g/m2がさらに好ましい。
【0061】
光触媒の助触媒として、例えば、白金、銀、バナジウムなどの貴金属、及び/または鉄、銅などの非金属を、光触媒の生成後に、光電極反応を用いて担持することができる。
【0062】
還元リアクター220は、水素発生リアクター200よりも比較的低温の場所に配置することができ、例えば、図8に示すように、集光器150の焦点位置から集光器150の表面に垂線を降ろした位置に配置することができる。この位置は、太陽に対して水素発生リアクター200の裏側にあたり、水素発生リアクター200が配置される温度よりも比較的低温であり、還元リアクターの光触媒への影響を低減することができる。
【0063】
還元リアクター220を、集光器の焦点位置から集光器の表面に垂線を降ろした位置に配置する場合、図13に示すように、還元リアクター220を配置する箇所にて、集光器が分離されていることが好ましい。このような分離型集光器250を用いることで、水素発生リアクター200への集光のロスを最低限に抑えながら、還元リアクター220の過熱を低減することが可能となる。
【0064】
なお、図示を省略するが、水素発生リアクター200と還元リアクター220との間に、水素分離膜及びポンプを配置することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の水素製造装置の具体的な実施例を示す。
【0066】
(実施例1)
50gのチタンテトライソプロポキシド(チタンアルコキシド)を、1000mlのアルコールに溶解させ、この溶液を加水分解して、水酸化チタンをコロイド状に懸濁させた液を調製し、これに硝酸を加えてオートクレーブで圧力と共に熱化学的に酸化して、二酸化チタンコロイド分散液を調製した。
【0067】
調製した二酸化チタンコロイド分散液に、ホウケイ酸ガラスで構成された円筒形の、長さ1000mm、内径50mm、厚み2mmの外管、及び長さ1000mm、外径30mm、厚み3mmの内管を浸漬させ、外管の外側面及び内管の内側面の付着液を除去した後、乾燥させて、550℃で熱処理した。以上の工程により、二酸化チタン光触媒を外管の内側面及び内管の外側面に担持した水素発生リアクターの二重管を得た。このときの、外管の内側面及び内管の外側面の光触媒の担持量は、0.5g/m2であった。また、内管の端部の一方の排出細孔部には、アルミナ多孔体(ノリタケカンパニー製、セラミックガス分離膜)を配置した。
【0068】
準備した外管及び内管で構成される二重管を用いて、図3に示すような水素発生リアクターを作製した。内管の排出細孔部105と外管導入口106との間をSUSの管で接続して、外管排出口107と内管導入口104との間もSUSの管で接続し、水素発生媒体を循環させる流路を形成した。外管排出口107と内管導入口104との間には、水素発生媒体を液体として一時的に溜め、純水などの水素原子含有物質を添加して水素発生媒体の成分を調製するためのタンク、及び水素発生媒体を循環させるポンプを配置した。また、排出細孔部105と外管導入口106との間、及び外管排出口107と内管導入口104との間に、水素分離膜(ノリタケカンパニー製、ゼオライト膜)を配置した。
【0069】
図1に示すように、パラボラトラフ型の集光器150の焦点に、構成した水素発生リアクター100を配置した。このようにして、本発明の水素製造装置10を作製し、水素発生リアクター100に、太陽光を集光させた。
【0070】
水素発生媒体として、純水950gに対して、硝酸鉄(II)3.0gを添加し、60分間攪拌しながら溶解させ、これに亜硫酸ナトリウム22gを添加して10分間静置させて溶解させ、これにチオ硫酸ナトリウム44gを添加し、30分間攪拌して、鉄錯体の溶液を得た。
【0071】
調製した鉄錯体溶液の水素発生媒体を、100ml/分で、図3に示す水素発生リアクター100の内管導入口104から、内管内部108にポンプで圧送し、排出細孔部105から外管導入口106を介して外管内部109に流通させ、外管排出口107から排出させ、タンクに入れ、内管導入口104に圧送する循環を行った。内管内部108の温度は250℃であり、外管内部109の温度は150℃であった。
【0072】
内管内部108及び外管内部109で生成した水素を、排出細孔部105と外管導入口106との間及び外管排出口107と内管導入口104との間に配置した水素分離膜によって分離して、ガスクロマトグラフィーで測定した。その結果、水素の発生量は、50ml/分であった。
【0073】
(実施例2)
還元リアクター220の光触媒222を形成するために、40mgのCo担持タンタルオキシナイトライド(TaON)を、50mlのアルコールに溶解させ、この溶液を加水分解し、超音波攪拌してコロイド状に懸濁させた液を調製し、これにヨウ素酸を加えて、タンタルオキシナイトライドコロイド分散液を調製した。このタンタルオキシナイトライドコロイド分散液に、ホウケイ酸ガラスで構成された円筒形の、長さ1000mm、外径60mm、厚み2mmの管221を浸漬させ、管221の外側面の付着液を除去した後、電気泳動法にて処理した。以上の工程により、図9及び10に示すような、タンタルオキシナイトライド光触媒を管221の内側面に担持した還元リアクター220を得た。このときの、光触媒222の担持量は、10g/m3であった。
【0074】
ホウケイ酸ガラスで構成された円筒形の長さ1000mm、内径50mm、厚み2mmの外管、及びニッケル製の発泡金属で構成された長さ1000mm、外径30mm、厚み3mmの内管で構成される二重管を用いて、図11に示すような水素発生リアクターを作製した。外管排出口107と還元リアクター220との間をSUSの管で接続して、還元リアクター220と内管導入口104との間もSUSの管で接続し、水素発生媒体を循環させる流路を形成した。還元リアクター220と内管導入口104との間には、水素発生媒体を液体として一時的に溜め、純水などの水素原子含有物質を添加して水素発生媒体の成分を調製するためのタンク、及び水素発生媒体を循環させるポンプを配置した。また、外管排出口107と還元リアクター220との間、及び還元リアクター220と内管導入口104との間に、水素分離膜(クラレ製、エバール)を配置した。
【0075】
図7に示すように、パラボラトラフ型の集光器150の焦点に、構成した水素発生リアクター200と、水素発生リアクター200に環状に接続された還元リアクター220を配置した。このようにして、本発明の水素製造装置20を作製し、作製した水素製造装置の水素発生リアクター200に、太陽光を集光させた。
【0076】
実施例1と同様に調製した鉄錯体溶液の水素発生媒体を、100ml/分で、図11に示す水素発生リアクター200の内管導入口104から、内管内部108にポンプで圧送した。圧送した水素発生媒体は、多孔体の内管110の側面から外管内部109に押し出され、外管排出口107から排出させ、還元リアクター220内部を流通させ、排出し、タンクに入れ、内管導入口104に圧送する循環を行った。内管内部108の温度は250℃、外管内部109の温度は150℃であり、還元リアクター220の内部の温度は80℃であった。
【0077】
生成した水素は、水素発生リアクター200と還元リアクター220との間に配置した水素分離膜によって、分離回収し、ガスクロマトグラフィーで測定した。その結果、水素の発生量は、80ml/分であった。
【0078】
(実施例3)
水素発生媒体として、純水900gに、酢酸銀を10g溶解させ、亜硫酸ナトリウム150gを添加し、チオ硫酸ナトリウム200gを添加し、銀の錯体溶液を得た。このように、水素発生媒体の金属反応媒体を変更して水素発生媒体を変更したこと以外は、実施例1と同じ条件とした。内管内部108の温度は250℃であり、外管内部109の温度は150℃であった。水素の発生量は、20ml/分であった。
【0079】
(実施例4)
水素発生媒体として、純水400gに、オイル(松村石油製、バーレルサーム400)600gを添加し、硝酸鉄20gを溶解させ、亜硫酸ナトリウム100gを添加し、チオ硫酸ナトリウム200gを添加し、鉄錯体の溶液を得た。このように、水素発生媒体にオイルを加えて水素発生媒体を変更したこと以外は、実施例1と同じ条件とした。内管内部108の温度は350℃であり、外管内部109の温度は250℃であった。水素の発生量は、40ml/分であった。
【0080】
(実施例5)
多孔質体の内管として、ニッケル製の発泡金属を使用した。内管の材質を変更したこと以外は、実施例2と同じ条件とした。内管内部108の温度は250℃であり、外管内部109の温度は150℃であった。水素の発生量は、80ml/分であった。
【0081】
(実施例6)
熱吸収体112を内管の内部に充填したこと以外は、実施例1と同じ条件とした。熱吸収体として、カーボンファイバー(東レ製、トレカ)を使用した。熱吸収体112の内部の温度は350℃であり、外管内部109の温度は200℃であった。水素の発生量は、90ml/分であった。
【0082】
(比較例1)
集光器を使用しなかったこと以外は、実施例1と同じ条件とした。内管内部108の温度は60℃であり、外管内部109の温度は45℃であった。水素の発生量は、1ml/分であった。
【0083】
(比較例2)
単に、100ml/分の水を内管に流通させ、水素発生媒体を使用しなかったこと以外は、実施例1と同じ条件とした。内管内部108の温度は250℃であり、外管内部109の温度は150℃であった。水素の発生量は、0.1ml/分であった。
【符号の説明】
【0084】
10 水素製造装置
20 水素製造装置
100 水素発生リアクター
101 外管
102 内管
103 光触媒
104 内管導入口
105 排出細孔部
106 外管導入口
107 外管排出口
108 内管内部
109 外管内部
110 多孔体の内管
111 封止端部
112 熱吸収体
150 集光器
151 構造体
152 反射板
200 水素発生リアクター
220 還元リアクター
221 還元リアクターの管
222 還元リアクターの光触媒
250 分離型集光器
251 構造体
252 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素製造装置であって、
水素発生リアクター及び太陽光を反射する材料を表面に有する集光器を備え、
該集光器の焦点に該水素発生リアクターが配置され、
該水素発生リアクターが、外管及び内管を備えた二重管構造を有し、
該外管の少なくとも一部が、光透過性の材料で構成されてなり、
該外管の内側面及び該内管の外側面の少なくとも一部に光触媒が配置されており、
(i)該内管の内部にて、水素原子含有物質及び金属反応媒体を含む水素発生媒体が流通し、該水素発生媒体が蒸気化され、該水素原子含有物質と該金属反応媒体とが反応して、該金属反応媒体の少なくとも一部が酸化され該水素原子含有物質の少なくとも一部が還元されて水素が発生し、
(ii)該水素発生媒体が、該内管から排出され、該外管と該内管との間を流通し、該光触媒によって、該酸化された金属反応媒体の少なくとも一部が還元され、且つ未反応の該水素原子含有物質の少なくとも一部が分解されて水素が発生し、
(iii)該還元された金属反応媒体を含む水素発生媒体が、該内管の内部を流通し、
(i)〜(iii)を連続的に繰り返して水素を発生させることができる、
水素製造装置。
【請求項2】
水素製造装置であって、
水素発生リアクター、太陽光を反射する材料を表面に有する集光器、及び該水素発生リアクターと環状に接続された還元リアクターを備え、
該集光器の焦点に該水素発生リアクターが配置され、
該水素発生リアクターは、外管のみの単管構造、または外管及び内管を備えた二重管構造を有し、
該外管の少なくとも一部が、光透過性の材料で構成されてなり、
該還元リアクターを構成する管の少なくとも一部が、光透過性の材料で構成されてなり、
該還元リアクターを構成する管の内壁面の少なくとも一部に光触媒が配置されており、
(i)該単管の内部または該二重管の内管の内部にて、水素原子含有物質及び金属反応媒体を含む水素発生媒体が流通し、該水素発生媒体が蒸気化され、該水素原子含有物質と該金属反応媒体とが反応して、該金属反応媒体の少なくとも一部が酸化され該水素原子含有物質の少なくとも一部が還元されて水素が発生し、
(ii)該水素発生媒体が、該単管の内部または該二重管の内管の内部から排出され、該還元リアクターに流通し、該光触媒によって、該酸化された金属反応媒体の少なくとも一部が還元され、且つ未反応の該水素原子含有物質の少なくとも一部が分解されて水素が発生し、
(iii)該還元された金属反応媒体を含む水素発生媒体が、該単管の内部または該二重管の内部を流通し、
(i)〜(iii)を連続的に繰り返して水素を発生させることができる、
水素製造装置。
【請求項3】
該集光器が、パラボラトラフ集光器である、請求項1または2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
該外管が、ホウケイ酸ガラス、アルミナ珪酸ガラス、石英ガラス、または合成石英ガラスで構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項5】
該水素原子含有物質が水である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項6】
該金属反応媒体が、Fe23、FeS、Fe(NO33、CH3COOAg、ZnS、SiC、GaN、C34、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上の材料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項7】
該内管が、ホウケイ酸ガラス、アルミナ珪酸ガラス、石英ガラス、または合成石英ガラスで構成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項8】
該内管が、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、窒化珪素、発泡金属またはそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上の材料で構成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項9】
該外管の内側面及び該内管の外側面の少なくとも一部に配置された光触媒が、TiO2、WO3、タンタルオキシナイトライド(TaON)、または窒化タンタル(Ta35)である、請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項10】
該外管の内側面及び該内管の外側面の少なくとも一部に配置された光触媒が、TiO2またはWO3である、請求項9に記載の水素製造装置。
【請求項11】
該還元リアクターの内壁面に配置された光触媒が、TiO2、WO3、タンタルオキシナイトライド(TaON)、または窒化タンタル(Ta35)である、請求項2に記載の水素製造装置。
【請求項12】
該還元リアクターの内壁面に配置された光触媒が、タンタルオキシナイトライド(TaON)または窒化タンタル(Ta35)である、請求項11に記載の水素製造装置。
【請求項13】
該還元リアクターが、該集光器の焦点位置から該パラボラトラフ表面に垂線を降ろした位置に配置される、請求項2、11または12に記載のトラフ集光ハイブリッド水素製造装置。
【請求項14】
該還元リアクターを配置する箇所にて、該集光器が分離されている、請求項13に記載のトラフ集光ハイブリッド水素製造装置。
【請求項15】
該内管の内部に、多孔質の熱吸収体が配置される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項16】
該多孔質の熱吸収体が、活性炭またはカーボンファイバーで構成される、請求項15に記載のトラフ集光ハイブリッド水素製造装置。
【請求項17】
該集光器の太陽光を反射する材料が、ガラスである、請求項1〜16のいずれか一項に記載のトラフ集光ハイブリッド水素製造装置。
【請求項18】
該集光器が、太陽の動きに合わせて、太陽光の反射角度を変更可能である、請求項1〜17のいずれか一項に記載のトラフ集光ハイブリッド水素製造装置。
【請求項19】
太陽光を利用して水素を製造する方法であって、
(i)光触媒及び集光器を準備する工程、
(ii)水素原子含有物質及び金属反応媒体を含む水素発生媒体を準備する工程、
(iii)太陽光から得られる長波長側のエネルギーを利用することにより、該水素発生媒体を蒸気化し、該水素原子含有物質と該金属反応媒体とを反応させて、該金属反応媒体の少なくとも一部が酸化され該水素原子含有物質の少なくとも一部が還元されて水素を発生させる工程、及び
(iv)太陽光から得られる短波長側の光を利用することにより、該光触媒を活性化して、該酸化された金属反応媒体の少なくとも一部を還元し、且つ未反応の該水素原子含有物質の少なくとも一部を分解して水素を発生する工程、
を含み、(ii)〜(iv)の工程を連続的に繰り返して水素を製造する、水素の製造方法。
【請求項20】
該集光器が、パラボラトラフ型集光器である、請求項19に記載の水素の製造方法。
【請求項21】
該水素原子含有物質が水である、請求項19または20に記載の水素の製造方法。
【請求項22】
該金属反応媒体が、Fe23、FeS、Fe(NO33、CH3COOAg、ZnS、SiC、GaN、C34、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上の材料である、請求項19〜21のいずれか一項に記載の水素の製造方法。
【請求項23】
該光触媒が、TiO2、WO3、タンタルオキシナイトライド(TaON)、または窒化タンタル(Ta35)、またはこれらの組み合わせである、請求項19〜22のいずれか一項に記載の水素の製造方法。
【請求項24】
該集光器の太陽光を反射する材料が、ガラスである、請求項19〜23のいずれか一項に記載のトラフ集光ハイブリッド水素製造装置。
【請求項25】
該集光器が、太陽の動きに合わせて、太陽光の反射角度を変更可能である、請求項19〜24のいずれか一項に記載のトラフ集光ハイブリッド水素製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−101947(P2012−101947A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248822(P2010−248822)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(598094056)株式会社光触媒研究所 (4)
【Fターム(参考)】