水素貯蔵用複合水素化物

水素貯蔵材料とその材料の製造プロセスが提供される。該プロセスでは、複合水素化物が、高温および/または高温高圧の状態の下で、チタンブトキシドのようなチタン金属と化合する。得られる溶融生成物は、常圧かつ、50℃と90℃の間の温度に、第1水素放出点(a first hydrogen release point)を有するという水素脱着動態を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年11月1日に出願された米国特許出願第60/423172号の利益を主張し、前記特許は参考として本明細書に組み込まれる。
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発においてなされた発明の権利に関する記載)
本発明は、米国エネルギー省により授与された契約(No.DE−AC09−96−SR18500)の下に政府の援助でなされた。該政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、一般に、可逆的な水素貯蔵材料の分野に関する。より詳細には、本発明は金属水素化物に関する。特に、本発明は、複合金属水素化物材料及びそれらの製造プロセスに関し、該材料は、独特の水素貯蔵材料が得られるように、温度と圧力を組み合わせて、材料の融点近くで融解あるいは加熱されるものである。
【背景技術】
【0003】
水素は、その環境に優しい性質のみならず、その豊富さのゆえに、輸送ニーズのために最適な燃料であると、長い間言われてきた。今日まで、燃料源としての水素の使用は、適切な水素貯蔵能力をもたせることが、特に車両での使用で困難であることにより、限定的であった。今日まで、水素貯蔵の主な方法には、加圧タンクに圧縮ガスとして貯蔵すること、あるいは液体水素として低温貯蔵を利用することが含まれる。このような貯蔵方式は、水素燃料を乗物で使用しようとする上での障害である。というのは、高圧および極低温貯蔵方式は、乗物で使用するには実用的でないからである。結果として、高密度の水素の貯蔵能力および有利な水素解離動態(hydrogen dissociation kinetics)を併有する材料を用いるとともに、商業的な輸送手段への応用を実現可能にするのに十分な低コストの材料と方法を用いる水素貯蔵システムを開発しようと、大きな努力が払われてきた。
【0004】
例えば、当技術分野では、水素化アルミニウムナトリウムのような水素化アルミニウム塩(alanate)を遷移金属でドーピングすると、いくつかの水素化アルミニウム塩からの水素脱着動態(the kinetics of hydrogen desorption)を向上させ得ることが知られている。水素化アルミニウムナトリウムは、水素貯蔵動態(hydrogen storage kinetics)に乏しく、温度および/または圧力変化の過酷な条件下でのみ可逆的である。最近、NaAlHをチタンでドーピングすることにより、水素脱着動態を改善し、またより緩やかな水素放出条件を与えることができる技術が確立した。特許文献1に記載されるように、BodanovicおよびSchwickardiの研究により、チタンテトラ−n−ブトキシド[Ti(OBu)]の2モルパーセントのエーテル懸濁液を用いたNaAlHへのチタンの湿式ドーピング法が提供されている(参考として本明細書に組み込まれる特許文献1を参照)。しかし、ドープされた材料の水素吸着および脱着の温度と動態(kinetics)は、依然として輸送手段への応用には実用的でないレベルにとどまっている。
【0005】
本明細書に組み込まれる特許文献2には、高温高圧下でのガス噴霧によってほぼ球状の粉末粒子が形成される、水素貯蔵粉末の製造方法が開示されている。この粉末は小さな粒径を示し、水素の吸着/脱着のサイクルの間、微小亀裂に対して耐性があると記載されている。しかし、特許文献2では、LaNiおよび他の類似のAB型材料のような水素貯蔵材料が利用されており、これらは輸送ニーズにおいて広く使用されるには高価すぎる。さらに、得られた特許文献2記載の水素貯蔵粉末では、有用な吸着および脱着のサイクルを実施するためには、かなりの温度と圧力の変化が必要とされる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6106801号明細書(BodanovicおよびSchwickardi)
【特許文献2】米国特許第6074453号明細書[アイオワ州立大学研究振興財団(Research Foundation,Inc.)に譲渡]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、有用な水素貯蔵容量と、それほど過酷でない放出動態とを併せもつ水素貯蔵材料が求められている。このように、水素貯蔵材料の技術分野には、変化と改良の余地が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
貯蔵水素を約80〜90℃の温度で放出することができ、実用的な動態(kinetics)を示す水素貯蔵材料を提供することが、本発明の一実施形態における一態様である。
【0009】
また、水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH)と、約0.5から約5.0重量パーセントのような僅かなパーセンテージのチタンまたは他の遷移金属との混合物を提供することが、本発明の少なくとも1つの実施形態におけるもう一つの態様である。この水素化アルミニウムナトリウムとチタンの形態は、加熱加圧条件の下で実質的に均一な材料となり、その材料は、約5.2重量パーセントの水素を吸収する能力をもち、貯蔵水素の一部を約50℃から約90℃の温度で放出できる。
【0010】
遷移金属と複合水素化物との加熱加圧による溶融により、より低温で水素脱着速度を示す均一な融解材料を生成することによって得られる水素貯蔵材料を提供することが、本発明の少なくとも1つの実施形態におけるさらにもう一つの態様である。
【0011】
遷移金属を複合水素化物の融点近くで化合し、ついで冷却することにより得られる、低温での、水素脱着速度を含む水素貯蔵特性をもった水素貯蔵材料を提供することが、本発明の少なくとも1つの実施形態におけるさらにもう一つの態様である。
【0012】
アルカリ金属水素化物、複合金属水素化物、およびこれらの組合せからなる群から選択される水素化アルミニウム塩と、IIIないしV族の遷移金属、ランタン金属錯体、鉄、ニッケル、希土類金属、およびこれらの組合せからなる群から選択される金属ドーパントとの高圧溶融融解物を含む、水素貯蔵材料を提供することが、本発明の少なくとも1つの実施形態におけるさらにもう一つの態様である。該金属ドーパントには、参照された金属ドーパントの、アルコラート、アルコキシド、ハロゲン化物、水素化物、ならびに有機金属化合物及び金属間化合物を含めることができる。
【0013】
加圧融解により生成する水素貯蔵合金を提供することが、本発明の少なくとも1つの実施形態におけるさらにもう一つの態様である。得られる融解生成物は50℃または約50℃で起こる有用な熱脱着特性をもち、水素吸着(sorption)特性の動態的改善(kinetic enhancement)を示す。異なる水素化アルミニウム塩同士、水素化アルミニウム塩および水素化ホウ素塩、ならびに水素化アルミニウム塩および異なる元素の混合物を、混合物の融点または混合物中の1元素の融点の近傍または融点において溶融させることができる。混合により、前駆体試薬の間で元素の置換が可能となるか、あるいは、新しい(複数の)組成物の生成が起こる。
【0014】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、ならびに利点は、以下の説明と添付の請求範囲を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【0015】
当業者に対する、本発明の十分で実施可能な程度の開示は、その最良の実施態様を含めて、添付図の参照を含めた本明細書の残りの部分において、より詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
これから、本発明の実施形態(それらの1つまたは複数の実施例は下に記載される)について詳細に述べる。各実施例は、本発明を限定するためではなく、本発明の説明として提供される。事実、当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更をなし得ることが明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として例示または記載される特徴を別の実施形態で使用して、さらに別の実施形態を生み出すことができる。このように、本発明は、添付の請求範囲とそれらの均等物の範囲内にあるものとして、このような修正と変形を包含することが想定されている。本発明の他の目的、特徴、および態様は、以下の詳細な説明に開示されている。本明細書の記載は、単に例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範な態様を限定しようとするものでないこと、そして本発明のより広範囲の態様が例示的な構成に具体化されていることが当業者に理解されるべきである。
【0017】
本明細書の様々な図の説明において、同じ材料またはプロセス経路を記述するために、明細書全体を通して、同じ参照番号が使用される。余計な反復を避けるために、ある図または実施形態に関連して一度記載された材料またはプロセスの多くの詳細な説明は、後の図または実施形態の説明では繰り返されない。もっとも、このような材料またはプロセスは、同じ参照番号により確認できる。
【0018】
本発明は、熱と圧力の組合せにより生じる融解条件の下で生成する新規な材料の形態での生成物、ならびに、そのような生成物の製造方法を提供する。遷移金属と組み合わせた金属複合水素化物、他の複合水素化物および/または他の元素の混合物が融解条件に置かれる。得られる冷却された材料(以後、「溶融(fused)」または「ハイブリッド(hybrid)」生成物と呼ぶ)は、物理的なボールミル法および/または化学処理法により調製された従来技術の水素貯蔵材料に比べて、水素貯蔵容量と水素放出動態(hydrogen release kinetics)に関する特性が改善された水素貯蔵材料である。さらに、溶融生成物は、水素の吸着と脱着の繰返しサイクルに関して優れた性能を示す。
【0019】
別法として、少なくとも1種の混合物成分の融点より数度低い温度と圧力の下に反応物を置くことにより、溶融またはハイブリッド生成物を生成することができる。これらの条件の下では、有益な水素貯蔵容量と放出動態をもつ新規な溶融またはハイブリッド生成物を生成するように、混合物成分の様々な元素が互いに置き換わると考えられる。
【0020】
理論に拘泥するつもりはないが、得られる溶融生成物では、材料の分布と均一性が向上していると考えられる。得られる溶融生成物は優れた物理的安定性を示し、望ましい水素の吸着放出動態をもつ。
【0021】
溶融生成物の熱力学的性質が向上する結果として、貯蔵水素の放出を引き起こすのに、より低温での変化を用いることができる。観察された動態改善は、水素化アルミニウム塩系水素貯蔵材料の能力の基本的な向上を表している。さらに、溶融生成物を生成できることにより、水素貯蔵速度がさらに一層向上すると考えられる、ドーパント量を高めた材料が可能になる。遷移金属のようなドーパント金属を複合水素化物と溶融すると、水素貯蔵特性が改善された溶融生成物が得られると考えられる。この改善は、複合水素化物の融点で、あるいは融点近くで生じる原子の大きな動き易さ、及びそれにより、より均一な生成物を生じることに起因すると考えられる。
【実施例1】
【0022】
水素貯蔵溶融生成物の一例は、テトラヒドロフラン(THF)中100mMのチタンブトキシドの1〜2ミルリットル(チタンブトキシドの容積は1重量パーセントのチタンの目標量を達成するように調節される)と混合された1グラムの水素化アルミニウムナトリウムの反応生成物により提供される。グローブボックスの不活性雰囲気の下で、瑪瑙の乳鉢と乳房を用いて、試料が乾くまで、2つの成分を混合し攪拌した。
【0023】
グローブボックスから取り出す前に、乾燥した試料を圧力室(pressure bomb)の中に入れて密封する。グローブボックスの外で、圧力室を水素供給ラインと別の真空ラインとに「T」型の形で結合する。ラインを通して水素を循環させて、圧力室を加圧する前に空気をパージする。パージの後、水素ガスで約3700psi(260気圧)の圧力まで加圧するために圧力室を開く。次に、圧力ボンベを高圧で密封し、水素供給ラインから切り離す。
【0024】
圧力容器(pressure vessel)を加熱用マントルの内側に置き、少なくとも3時間、約190℃から約220℃の温度にした。加熱により、圧力室の内圧は約5000psi(353気圧)に達する。加熱に続いて、加圧容器を室温まで冷却し、次いで圧抜きする。圧抜きを不活性雰囲気のグローブボックス中で行い、そこで得られた融解材料を取り出す。熱重量法を用いて分析するために20mgの試料を取り出し、その結果を図2に記載する。
【0025】
図2に見られるように、水素貯蔵溶融材料には3つの特徴的な水素放出温度がある。第1の温度は約50℃で始まる温度で起こり、約80〜90℃の間により好ましい放出がある。図2にさらに見られるように、第2の水素放出は、約140℃から約150℃の間の温度で、第3の放出は約190℃から約200℃の温度で起こる。図2を参照して分かるように、最も低い温度の放出ピークでの水素の重量減少は、約3.2パーセントの水素の重量減少である。
【実施例2】
【0026】
4%のTiClでドープされたNaAlHの1グラムの試料を、2時間、高強度のボールミルにかけた。ボールミルにかけた後、約4時間、210℃の温度と3800psiの圧力(水素ガスを使用)に曝すことにより、金属水素化物を溶融させた。4時間後、平衡を保ったまま温度と圧力を徐々に標準条件に移した(equilibrate to standard conditions)。
【0027】
比較試料(ボールミルだけ)と、水素の圧力と高温の組合せの下にさらに置かれた溶融試料につき、熱重量分析(TGA、thermogravimetric analysis)を実施した。図3Aを参照して分かるように、溶融(融解)物は、ボールミルにより得られた試料とは対照的に、溶融された試料の改善された低温での動態を示している。図3Aの第2の曲線は、溶融生成物について、24時間後に繰り返された、第2回目の温度プログラムによる脱着の測定である。24時間後、測定の動態(kinetics)と容量は、一夜を通して吸収された水素による水素脱着を示している。
【0028】
図3Aと3Bに示される溶融生成物の評価は、低温での動態の違いを示すように工夫された条件の下でなされたことに注意すべきである。容積を増やすことにより、また、金属水素化物、ドーパント、および触媒材料の様々な比率を、水素の吸着/脱着の容量を向上させるように調節することにより、溶融材料の全体としての水素容量を増大させることができる。
【0029】
図4Bは、別の日に行われた、前記の材料と方法の再現である。図4Aに見られるように、溶融生成物について類似の動態が存在し、約75℃から100℃、より好ましくは約90℃で、脱着動態(desorption kinetics)が改善されることを示している。
【実施例3】
【0030】
NaHとLiHとNaAlHの1:1:1(モル)の1グラムの混合物を、約210℃の温度と3800psiの水素圧力の下で4時間かけて、融解調製法により調製した。融解プロセスの前に、乳鉢と乳棒を用いて試料をドライ混合した。乳鉢と乳棒のみで処理された混合物試料を比較試料として用いた。
【0031】
融解調製法に続いて、比較試料と溶融/融解試料についてX線回折パターンを得た。図4Aに記載されるのは、乳鉢と乳棒だけで混合された比較試料のX線回折パターンである。図4Aに見られるように、最初の構成成分が、ステンレススチールホールダ「S」と、ホールダ上に置かれた透明テープ被覆材「T」と共に、同定される。
【0032】
図4Bには、溶融生成物のX線回折パターンが記載されている。図4Bに示されるように、かなりの濃度のNaLiAlHおよびNaAlHが生成していた。データはまた、NaHとLiHとNaAlHの一部分が未反応のまま残されたことを示している。同定された反応生成物は、以下を含む2つの競争的全体反応(competing overall reactions)によると考えられる:
2NaH+NaAlH=NaAlH (1)
LiH+NaH+NaAlH=NaLiAlH (2)
【0033】
水素の吸着と放出の繰返しを観察することにより、融解生成物は、繰返し効率の点で優れた性質を示すことが示される。これらの観察は、融解反応生成物が、水素による加圧とその放出の繰返しサイクルの間に構造的な完全性が損なわれることに対する耐性があることを示唆している。
【0034】
新規な水素吸着溶融材料を生み出すことができるため、融解反応生成物を生成するために使用されるチタンおよび他の材料の量を増やすことができる。この可能添加量の増大は、従来のボールミル法または化学処理法を用いて達成される従来技術による添加量を大幅に超える。結果として、本発明のプロセスは、貯蔵能力が強化され、熱力学的性質が向上した全く新しい種類の材料を可能にする。
【0035】
本発明のプロセスは、少なくとも、M(AlH4+Z(Mは、アルカリ、アルカリ土類金属または遷移金属、例えば、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、ジルコニウム、もしくは鉄であり;Xは1との4の間の値をもち;Yは1と6の間の値をもち;Zは、0または2の値をもつ)の式をもつ全ての複合水素化物を含めて、様々な水素貯蔵材料のために有用である。本発明で有用な他の複合水素化物は、一般式、M(BH4+Z(Mは上と同じ遷移金属であり、Bはホウ素であり、X、YおよびZは上の値と同じである)で参照されるものに見られる。
【0036】
複合水素化物を様々な触媒またはドーパントと共に用いて水素貯蔵特性が向上する限り、融解により、任意の複合水素化物及び通常使用される触媒から、水素貯蔵能力と放出動態の改善した前記溶融反応生成物が生成することができると考えられる。加圧融解、または融解に近い状態の実現により、他の方法によるよりも、より効果的な材料分布を可能にできると考えられる。結果として、従来の比率の複合水素化物と触媒を使用して、材料を融解させることにより性質を向上させることができる。さらに、前記の参考文献の中に認められるように、チタン、ジルコニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、ランタン、およびこれらの混合体のような様々な種類のドーパントを組み合わせることを含めて、強化したレベルの触媒またはドーパントを利用することができると考えられる。これまで、金属水素化物に組み入れられる特定の触媒金属は、特殊な溶剤中に存在することが必要とされた。本発明のプロセスは、触媒状ドーパントと複合水素化物を化合する方法を提供し、該プロセスにより、溶剤の必要性を可能な限り減らし、また、ドーパントの添加量を上げることができる。
【0037】
前記の複合水素化物に加えて、NaBHのような様々な複合水素化ホウ素塩(borohydride complex)もまた、様々な触媒およびドーパントと組み合わせて使用することができ、その融解生成物により、向上した動態と向上した水素貯蔵/放出特性を有する水素貯蔵材料が得られると考えられる。さらに、本明細書で調べられた融解材料は、融解物を徐々に冷却することにより生成することが指摘される。急速冷却を含めるように冷却プロセスを変更することで、異なる水素貯蔵放出特性をもち得る高非晶性構造を生じ得ることが想定されている。
【0038】
本明細書に記載される水素貯蔵溶融材料の生成は、溶融複合水素化物を生成するように、様々な塩を素早く組み合わせるのに、特に有用であると考えられる。さらに、複合水素化物の塩または複合水素化物生成塩と有機金属化合物とを、水素吸収性有機塩が得られるように組み合わせることが有益であると考えられる。有機金属化合物の非限定的な例には、チタン(IV)tert−ブトキシドとビシクロ化合物が含まれる。
【0039】
さらに、融点条件を用いることにより、得られる水素貯蔵溶融生成物を様々な形に成形できる。例として、これまでは様々な水素貯蔵材料の粒子を充填していたと思われるアルミニウム床(aluminum bed)を、今や、アルミニウム床に合う、成形、融解した輪郭(profile)で充填することができる。こうすると、より有効に該床を充填でき、したがって、該床の大きさに対する、水素貯蔵のための装填能力を高めることができる。
【0040】
さらに、本明細書に記載される水素貯蔵溶融生成物は、従来のボールミル法または化学沈澱法により調製される材料に比べて、触媒の分布がより均一になっていると考えられる。結果として、触媒またはドーパントの充填レベルを高めることにより、水素の放出吸着動態(release and adsorption kinetics)のみならず、全体的な水素貯蔵能力に関する特性が向上した独特の反応生成物を生成し得る。
【0041】
本発明の好ましい実施形態を具体的な条件、装置、および方法を用いて説明したが、このような説明は例示のためであるにすぎない。使用された用語は、限定でなく説明の用語である。請求項に記載される本発明の精神と範囲から逸脱することなく、当業者により変更と変形がなされ得ることが理解するべきである。さらに、様々な実施形態の態様は、全体として、あるいは部分的に、互に交換され得ることが理解されるべきである。したがって、添付の請求項の精神と範囲は、本明細書に含まれる好ましい形態の記述に限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来技術による水素貯蔵材料である1パーセントチタン含有NaAlHの水素脱着動態を示すグラフである。該材料は、水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH)とチタンブトキシドのようなチタン金属とを用いて従来のボールミル法により調製された。
【図2】本発明による、NaAlHと1パーセントのチタンブトキシドとの溶融混合物の水素脱着を示すグラフである。
【図3A】ボールミル法だけを用いて調製された4%TiClドープNaAlHの比較試料(3A)の熱重量分析データを示すグラフである。本発明品(3A)との比較のため試料である。
【図3B】本発明の溶融法により調製された、4%TiClドープNaAlHの試料(3B)の熱重量分析データを示すグラフである。
【図3C】図3Aおよび図3Bに関して記載された材料を用いての定温脱着分析によるデータを示すグラフである。
【図4A】乳鉢と乳棒でドライ混合された、NaHLiHとNaAlHとの等モル混合物試料のX線回折パターンである。
【図4B】図4Aに表れる材料を、加熱加圧下に溶融させた後のX線回折パターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式、M(BH4+Z(Mは遷移金属またはホウ素であり、Bはアルミニウムまたはホウ素であり、Xは1と4の間の値をもち、Yは1と6の間の値をもち、Zは0または2の値をもつ)を有する水素化物からなる群から選択される複合水素化物、および
チタン、ジルコニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、ランタン、およびこれらの混合物を含む金属からなる群から選択されるドーパント
を含み、
前記複合水素化物および前記ドーパントが、加熱加圧下で化合し、常圧で約50℃と約90℃の間の水素放出点(hydrogen release point)を有する溶融生成物を生成することを特徴とする水素貯蔵材料。
【請求項2】
前記ドーパントがチタンブトキシドをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵材料。
【請求項3】
式、M(BH4+Z(Mは遷移金属またはホウ素であり、Xは1と4の間の値をもち、Yは1と6の間の値をもち、Zは0または2の値をもつ)を有する水素化物からなる群から選択される複合水素化物を供給する工程、
チタン、ジルコニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、ランタン、およびこれらの混合物を含む金属からなる群から選択されるドーパントと前記複合水素化物とを混合する工程、
前記複合水素化物と前記ドーパントとを、水素ガスの存在下に加圧する工程、
前記複合水素化物、前記ドーパントおよび前記水素ガスの温度を前記複合水素化物の融点まで上げる工程、および
前記の熱と圧力を、溶融生成物を生成するのに十分な時間保つ工程であって、
前記溶融生成物が可逆的に水素を貯蔵し放出する能力を有するものである工程、
を含むことを特徴とする水素貯蔵材料の製造プロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化アルミニウムナトリウムを供給する工程、
前記水素化アルミニウムナトリウムに1重量%のチタンを混合する工程、および
前記の水素化アルミニウムナトリウムとチタンの混合物を融解させるのに十分な熱と圧力との組合せを供給することにより、常圧で、約50℃と約90℃の間の水素放出点を有する溶融水素貯蔵材料を得る工程
を含むことを特徴とする水素貯蔵材料の製造プロセス。
【請求項2】
少なくとも1種の複合水素化物を供給する工程、
チタン、ジルコニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、ランタン、およびこれらの混合物を含む金属からなる群から選択されるドーパントと前記複合水素化物とを混合する工程、
前記複合水素化物と前記ドーパントとの混合物を、水素ガスの存在下に加圧する工程、
前記複合水素化物と前記ドーパントと前記水素ガスとの混合物の温度を、前記複合水素化物の融点まで上げる工程、および
前記の熱と圧力を、溶融生成物を生成するのに十分な時間保つ工程であって、
前記溶融生成物が可逆的に水素を貯蔵し放出する能力を有するものである工程、
を含むことを特徴とする水素貯蔵材料の製造プロセス。
【請求項3】
前記の少なくとも1種の複合水素化物が、水素化アルミニウムナトリウムであることを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記の少なくとも1種の複合水素化物が、水素化リチウムを含むことを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記の少なくとも1種の複合水素化物が、水素化ナトリウムを含むことを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記の少なくとも1種の複合水素化物が、水素化アルミニウムナトリウム、水素化リチウム、および水素化ナトリウムの混合物を含むことを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記水素化アルミニウムナトリウム、前記水素化リチウムおよび前記水素化ナトリウムが、実質的にほぼ等モル量で存在することを特徴とする請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項1に記載のプロセスによる生成物。
【請求項9】
請求項2に記載のプロセスによる生成物。
【請求項10】
請求項6に記載のプロセスによる生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2006−504616(P2006−504616A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550428(P2004−550428)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/034980
【国際公開番号】WO2004/041717
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(502072282)ウェスティングハウス サバンナ リバー カンパニー エルエルシー (4)