水耕栽培システム
【課題】培養液中の溶存酸素量を水耕栽培に適した値まで効率よく増加させることができる水耕栽培システムを提供する。
【解決手段】空気を透過させる際に窒素の透過を抑えることで空気中の酸素濃度を高める酸素富化膜11に、空気を吸引する真空ポンプ12を接続する。この真空ポンプ12に空気供給ノズル13を介し渦流ポンプ14を接続し、この渦流ポンプ14により、真空ポンプ12からの酸素富化空気と、培養液とを混合して培養液中に酸素を溶解させる。この渦流ポンプ14に配管15を介してタンク16を接続し、このタンク16から循環ポンプ17および配管18により複数の栽培槽19に培養液を供給する。各栽培槽19は、配管18により培養液を供給する一端から、培養液を排出する他端にわたって下降傾斜させ、配管22によりタンク16に循環させる。タンク16内の培養液は、配管23により渦流ポンプ14の液吸込口に導く。
【解決手段】空気を透過させる際に窒素の透過を抑えることで空気中の酸素濃度を高める酸素富化膜11に、空気を吸引する真空ポンプ12を接続する。この真空ポンプ12に空気供給ノズル13を介し渦流ポンプ14を接続し、この渦流ポンプ14により、真空ポンプ12からの酸素富化空気と、培養液とを混合して培養液中に酸素を溶解させる。この渦流ポンプ14に配管15を介してタンク16を接続し、このタンク16から循環ポンプ17および配管18により複数の栽培槽19に培養液を供給する。各栽培槽19は、配管18により培養液を供給する一端から、培養液を排出する他端にわたって下降傾斜させ、配管22によりタンク16に循環させる。タンク16内の培養液は、配管23により渦流ポンプ14の液吸込口に導く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素富化膜を備えた水耕栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培においては、その培養液に微細気泡を混入させて、培養液中の溶存酸素量を増加させることで、栽培期間の短縮、収穫量の増加を図ろうとするものがある(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
【特許文献1】特開平7−132029号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平7−313005号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】特開2000−236762号公報(第3頁、図3)
【特許文献4】特開2002−142582号公報(第4頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、単に培養液に微細気泡を混入させるのみでは、培養液中の溶存酸素量を水耕栽培に適した値まで効率よく増加させることが難しく、この点に改善の余地がある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、培養液中の溶存酸素量を水耕栽培に適した値まで効率よく増加させることができる水耕栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、空気を透過させる際に窒素よりも酸素の透過性を上げることで空気中の酸素濃度を高める酸素富化膜と、この酸素富化膜を通して空気を吸引する真空ポンプと、この真空ポンプから供給された酸素富化空気と培養液とを混合して培養液中に酸素を溶解させる渦流ポンプと、この渦流ポンプにより循環された高酸素濃度の培養液を貯えるタンクと、このタンクから供給された培養液を水耕栽培に用いてタンクに循環させる栽培槽とを具備した水耕栽培システムである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の水耕栽培システムにおける渦流ポンプが、ポンプ本体と、ポンプ本体内に回転可能に嵌合された羽根車と、羽根車の周囲に形成された環状の昇圧通路と、昇圧通路の入口部に挿入され真空ポンプからの酸素富化空気を入口部に供給する空気供給ノズルとを具備したものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の水耕栽培システムにおける栽培槽が、長尺に形成され培養液が供給される一端から培養液が排出される他端にわたって下降傾斜された槽本体と、槽本体の上面開口部を栽培植物を除いて覆う樹脂シートとを具備したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、酸素富化膜と、真空ポンプと、渦流ポンプとの組合せにより、タンク内の培養液中の溶存酸素量を水耕栽培に適した値まで効率よく増加させて、収穫を上げることができる高濃度の溶存酸素含有培養液を栽培槽に供給できる水耕栽培システムを提供できるとともに、その水耕栽培システムを安価に構成できる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、渦流ポンプの羽根車の周囲に形成された昇圧通路の入口部に、真空ポンプからの酸素富化空気を供給する空気供給ノズルを挿入したので、真空ポンプから供給された酸素富化空気を、渦流ポンプの羽根車によって培養液が渦巻状に撹拌されながら移動する昇圧通路に効率良く吸込ませることができ、培養液中の溶存酸素濃度を効率良く上げることができる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、長尺で下降傾斜された栽培槽の槽本体により緩やかで確実な培養液の流れを得ることができ、さらに、槽本体の上面開口部を覆う樹脂シートにより、培養液の蒸散を防止でき、雑草の繁殖を防止できるとともに、苺の実などが培養液中に浸漬して、その品質が劣化することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図1乃至図3に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、水耕栽培システムの概要を示し、11は、酸素富化膜であり、この酸素富化膜11は、窒素よりも酸素の透過性が高い有機高分子膜である酸素富化膜を用いて、空気を透過させる際に窒素の透過を抑えることで空気中の酸素濃度20%を30%程度まで高めた酸素富化空気が得られるようにしたものである。
【0013】
この酸素富化膜11に、酸素富化膜11を通して空気を吸引する真空ポンプ12が接続されている。この真空ポンプ12には、真空ポンプ12から空気供給ノズル13を経て供給された酸素富化空気と、培養液とを混合して培養液中に酸素を溶解させる渦流ポンプ14が接続されている。この渦流ポンプ14に配管15を介してタンク16が接続され、このタンク16内に渦流ポンプ14により循環される高酸素濃度の培養液を貯えるようにする。
【0014】
このタンク16から循環ポンプ17および配管18により培養液の供給を受ける複数の栽培槽19が、ハウス1内に設置されている。これらの栽培槽19は、苺などの水耕栽培に用いられるもので、長尺に形成され、配管18により培養液が供給される一端から、培養液が排出される他端にわたって下降傾斜され、配管22によりタンク16に循環接続されている。タンク16内の培養液は、配管23により渦流ポンプ14の液吸込口に導かれる。
【0015】
図2に示されるように、前記渦流ポンプ14は、液吸込口30および液吐出口31を有するポンプ本体32内に環状の昇圧通路33が形成され、この昇圧通路33の入口部34に液吸込口30が連通形成されているとともに、昇圧通路33の出口部35に液吐出口31が連通形成され、昇圧通路33の入口部34と出口部35との間には隔離部36が形成されている。
【0016】
ポンプ本体32内に羽根車37が回転可能に嵌合されており、この羽根車37の外周部には、所定ピッチで形成された径方向の小羽根38と、これらの小羽根38間の羽根溝39が設けられており、羽根車37の中心に嵌着された回転軸40を外部のモータなどで回動することにより、これらの小羽根38および羽根溝39は、羽根車37と同心円の昇圧通路33内を回転する。
【0017】
渦流ポンプ14の液吸込口30には、前記空気供給ノズル13が挿入されて固定されており、この空気供給ノズル13から昇圧通路33の入口部34に酸素富化空気が直接吸込まれるように構成されている。
【0018】
このように、渦流ポンプ14は、ポンプ本体32内に回転可能に嵌合された羽根車37の周囲に環状の昇圧通路33が形成され、この昇圧通路33の入口部34に対して、真空ポンプ12からの酸素富化空気を供給する空気供給ノズル13が挿入されたものである。
【0019】
図3に示されるように、栽培槽19は、架台フレーム41に、一端から他端にわたって長尺に形成された発泡スチロール製の槽本体42が下降傾斜の勾配で設置され、この槽本体42の上面開口部は、栽培植物44を除いてビニールシートなどの樹脂シート45により覆われている。
【0020】
次に、図1乃至図3に示された実施の形態の作用を説明する。
【0021】
真空ポンプ12の吸引力により酸素富化膜11を通して空気を吸引すると、窒素よりも酸素の透過性がよい酸素富化膜の機能により、酸素濃度を高めた酸素富化空気が、空気供給ノズル13から渦流ポンプ14内に供給され、この渦流ポンプ14内で酸素富化空気と培養液とが混合撹拌されて培養液中に酸素が溶解される。
【0022】
すなわち、配管23より渦流ポンプ14の液吸込口30に吸込まれた培養液は、羽根車37と共に昇圧通路33をほぼ一周する間に、羽根車37の各羽根溝39内と昇圧通路33との間で渦流となり、昇圧通路33を進むにつれて昇圧されて液吐出口31から配管15に吐出されるが、昇圧通路33の入口部34は負圧になり、この入口部34に培養液が吸込まれるとともに、空気供給ノズル13から供給された酸素富化空気も直接吸込まれ、培養液と酸素富化空気とが一緒に羽根車37と昇圧通路33との間で生じる渦流によって混合攪拌されながら昇圧通路33を移動するので、この段階で培養液中に多量の酸素富化空気が溶解される。
【0023】
この渦流ポンプ14で昇圧された高酸素濃度の培養液は、液吐出口31から配管15に吐出されてタンク16に供給され、このタンク16からさらに循環ポンプ17により配管18を経て栽培槽19の一端に供給され、槽本体42内を下降勾配の落差により自然流下しながら、栽培植物44の根に養分とともに十分な酸素を供給し、そして、栽培槽19の他端より配管22を経てタンク16に戻される。
【0024】
このように、タンク16から供給された溶存酸素濃度の高い培養液は、栽培槽19での水耕栽培に用いられた後にタンク16に循環され、さらに、配管23を経て渦流ポンプ14の液吸込口30に循環される。
【0025】
次に、図示された実施の形態の効果を説明する。
【0026】
酸素富化膜11と、真空ポンプ12と、渦流ポンプ14との組合せにより、タンク16内の培養液中の溶存酸素量を水耕栽培に適した値まで効率よく増加させて、収穫を上げることができる高濃度の溶存酸素含有培養液を栽培槽19に供給できる水耕栽培システムを提供できるとともに、その水耕栽培システムを安価に構成できる。
【0027】
渦流ポンプ14の羽根車37の周囲に形成された昇圧通路33の入口部34に、真空ポンプ12からの酸素富化空気を供給する空気供給ノズル13を挿入したので、真空ポンプ12から供給された酸素富化空気を、渦流ポンプ14の羽根車37によって培養液が渦巻状に撹拌されながら移動する昇圧通路33に効率良く吸込ませることができ、培養液中の溶存酸素濃度を効率良く上げることができる。
【0028】
長尺で下降傾斜された栽培槽19の槽本体42により緩やかで確実な培養液の流れを得ることができ、さらに、槽本体42の上面開口部を覆う樹脂シート45により、培養液の蒸散を防止でき、雑草の繁殖を防止できるとともに、苺の実などが培養液中に浸漬して、その品質が劣化することを防止できる。
【0029】
次に、この水耕栽培システムに関して行なった苺の栽培実験の結果を以下の表1、表2、表3および表4に示す。
【0030】
表1は、酸素富化膜11、真空ポンプ12および渦流ポンプ14を備えたタンク16から培養液の供給を受けるハウス1において、複数の栽培槽19の入口Ain、Bin、Cin、Dinおよび出口Aout、Bout、Cout、Doutにおける水温および酸素量を測定した結果であり、表2は、酸素富化膜、真空ポンプおよび渦流ポンプを備えていないタンク(図示せず)から培養液の供給を受けるハウス2(図示せず)において、複数の栽培槽の入口Ain、Bin、Cin、Dinおよび出口Aout、Bout、Cout、Doutにおける水温および酸素量を測定した結果であり、表3は、ハウス1とハウス2とで苺の収穫量(重量、パック数)を比較したものであり、表4は、ハウス1とハウス2とで苺株の生育状況を比較したものである。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
表1と表2とを比較すると、酸素富化空気の供給を受ける培養液が循環されるハウス1内の栽培槽19は、酸素富化空気の供給を受けない培養液が循環されるハウス2内の栽培槽よりも、培養液中の酸素濃度(酸素量)が高く、しかも、その傾向は、培養液の温度(水温)が低いほど顕著になることが分かる。
【0036】
表3により、酸素富化空気の供給を受ける培養液が循環されるハウス1での苺の収穫量と、酸素富化空気の供給を受けない培養液が循環されるハウス2での苺の収穫量とを比較すると、100:75の収穫比率となり、ハウス1では25%程度の増量を確認できる。
【0037】
表4により、酸素富化空気の供給を受ける培養液が循環されるハウス1での苺株の生育状況と、酸素富化空気の供給を受けない培養液が循環されるハウス2での苺株の生育状況とを比較すると、ハウス1では全体的な生育のバラツキが少なくなり、実の商品価値が向上していることを確認できる。
【0038】
本発明は、苺だけでなく、レタスなどの葉物などの水耕栽培にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る水耕栽培システムの一実施の形態を示す配管図である。
【図2】同上システムに用いられている渦流ポンプの断面図である。
【図3】同上システムに用いられている栽培槽の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
11 酸素富化膜
12 真空ポンプ
13 空気供給ノズル
14 渦流ポンプ
16 タンク
19 栽培槽
32 ポンプ本体
33 昇圧通路
34 入口部
37 羽根車
42 槽本体
44 栽培植物
45 樹脂シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素富化膜を備えた水耕栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培においては、その培養液に微細気泡を混入させて、培養液中の溶存酸素量を増加させることで、栽培期間の短縮、収穫量の増加を図ろうとするものがある(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
【特許文献1】特開平7−132029号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平7−313005号公報(第3頁、図1)
【特許文献3】特開2000−236762号公報(第3頁、図3)
【特許文献4】特開2002−142582号公報(第4頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、単に培養液に微細気泡を混入させるのみでは、培養液中の溶存酸素量を水耕栽培に適した値まで効率よく増加させることが難しく、この点に改善の余地がある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、培養液中の溶存酸素量を水耕栽培に適した値まで効率よく増加させることができる水耕栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、空気を透過させる際に窒素よりも酸素の透過性を上げることで空気中の酸素濃度を高める酸素富化膜と、この酸素富化膜を通して空気を吸引する真空ポンプと、この真空ポンプから供給された酸素富化空気と培養液とを混合して培養液中に酸素を溶解させる渦流ポンプと、この渦流ポンプにより循環された高酸素濃度の培養液を貯えるタンクと、このタンクから供給された培養液を水耕栽培に用いてタンクに循環させる栽培槽とを具備した水耕栽培システムである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の水耕栽培システムにおける渦流ポンプが、ポンプ本体と、ポンプ本体内に回転可能に嵌合された羽根車と、羽根車の周囲に形成された環状の昇圧通路と、昇圧通路の入口部に挿入され真空ポンプからの酸素富化空気を入口部に供給する空気供給ノズルとを具備したものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の水耕栽培システムにおける栽培槽が、長尺に形成され培養液が供給される一端から培養液が排出される他端にわたって下降傾斜された槽本体と、槽本体の上面開口部を栽培植物を除いて覆う樹脂シートとを具備したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、酸素富化膜と、真空ポンプと、渦流ポンプとの組合せにより、タンク内の培養液中の溶存酸素量を水耕栽培に適した値まで効率よく増加させて、収穫を上げることができる高濃度の溶存酸素含有培養液を栽培槽に供給できる水耕栽培システムを提供できるとともに、その水耕栽培システムを安価に構成できる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、渦流ポンプの羽根車の周囲に形成された昇圧通路の入口部に、真空ポンプからの酸素富化空気を供給する空気供給ノズルを挿入したので、真空ポンプから供給された酸素富化空気を、渦流ポンプの羽根車によって培養液が渦巻状に撹拌されながら移動する昇圧通路に効率良く吸込ませることができ、培養液中の溶存酸素濃度を効率良く上げることができる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、長尺で下降傾斜された栽培槽の槽本体により緩やかで確実な培養液の流れを得ることができ、さらに、槽本体の上面開口部を覆う樹脂シートにより、培養液の蒸散を防止でき、雑草の繁殖を防止できるとともに、苺の実などが培養液中に浸漬して、その品質が劣化することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図1乃至図3に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、水耕栽培システムの概要を示し、11は、酸素富化膜であり、この酸素富化膜11は、窒素よりも酸素の透過性が高い有機高分子膜である酸素富化膜を用いて、空気を透過させる際に窒素の透過を抑えることで空気中の酸素濃度20%を30%程度まで高めた酸素富化空気が得られるようにしたものである。
【0013】
この酸素富化膜11に、酸素富化膜11を通して空気を吸引する真空ポンプ12が接続されている。この真空ポンプ12には、真空ポンプ12から空気供給ノズル13を経て供給された酸素富化空気と、培養液とを混合して培養液中に酸素を溶解させる渦流ポンプ14が接続されている。この渦流ポンプ14に配管15を介してタンク16が接続され、このタンク16内に渦流ポンプ14により循環される高酸素濃度の培養液を貯えるようにする。
【0014】
このタンク16から循環ポンプ17および配管18により培養液の供給を受ける複数の栽培槽19が、ハウス1内に設置されている。これらの栽培槽19は、苺などの水耕栽培に用いられるもので、長尺に形成され、配管18により培養液が供給される一端から、培養液が排出される他端にわたって下降傾斜され、配管22によりタンク16に循環接続されている。タンク16内の培養液は、配管23により渦流ポンプ14の液吸込口に導かれる。
【0015】
図2に示されるように、前記渦流ポンプ14は、液吸込口30および液吐出口31を有するポンプ本体32内に環状の昇圧通路33が形成され、この昇圧通路33の入口部34に液吸込口30が連通形成されているとともに、昇圧通路33の出口部35に液吐出口31が連通形成され、昇圧通路33の入口部34と出口部35との間には隔離部36が形成されている。
【0016】
ポンプ本体32内に羽根車37が回転可能に嵌合されており、この羽根車37の外周部には、所定ピッチで形成された径方向の小羽根38と、これらの小羽根38間の羽根溝39が設けられており、羽根車37の中心に嵌着された回転軸40を外部のモータなどで回動することにより、これらの小羽根38および羽根溝39は、羽根車37と同心円の昇圧通路33内を回転する。
【0017】
渦流ポンプ14の液吸込口30には、前記空気供給ノズル13が挿入されて固定されており、この空気供給ノズル13から昇圧通路33の入口部34に酸素富化空気が直接吸込まれるように構成されている。
【0018】
このように、渦流ポンプ14は、ポンプ本体32内に回転可能に嵌合された羽根車37の周囲に環状の昇圧通路33が形成され、この昇圧通路33の入口部34に対して、真空ポンプ12からの酸素富化空気を供給する空気供給ノズル13が挿入されたものである。
【0019】
図3に示されるように、栽培槽19は、架台フレーム41に、一端から他端にわたって長尺に形成された発泡スチロール製の槽本体42が下降傾斜の勾配で設置され、この槽本体42の上面開口部は、栽培植物44を除いてビニールシートなどの樹脂シート45により覆われている。
【0020】
次に、図1乃至図3に示された実施の形態の作用を説明する。
【0021】
真空ポンプ12の吸引力により酸素富化膜11を通して空気を吸引すると、窒素よりも酸素の透過性がよい酸素富化膜の機能により、酸素濃度を高めた酸素富化空気が、空気供給ノズル13から渦流ポンプ14内に供給され、この渦流ポンプ14内で酸素富化空気と培養液とが混合撹拌されて培養液中に酸素が溶解される。
【0022】
すなわち、配管23より渦流ポンプ14の液吸込口30に吸込まれた培養液は、羽根車37と共に昇圧通路33をほぼ一周する間に、羽根車37の各羽根溝39内と昇圧通路33との間で渦流となり、昇圧通路33を進むにつれて昇圧されて液吐出口31から配管15に吐出されるが、昇圧通路33の入口部34は負圧になり、この入口部34に培養液が吸込まれるとともに、空気供給ノズル13から供給された酸素富化空気も直接吸込まれ、培養液と酸素富化空気とが一緒に羽根車37と昇圧通路33との間で生じる渦流によって混合攪拌されながら昇圧通路33を移動するので、この段階で培養液中に多量の酸素富化空気が溶解される。
【0023】
この渦流ポンプ14で昇圧された高酸素濃度の培養液は、液吐出口31から配管15に吐出されてタンク16に供給され、このタンク16からさらに循環ポンプ17により配管18を経て栽培槽19の一端に供給され、槽本体42内を下降勾配の落差により自然流下しながら、栽培植物44の根に養分とともに十分な酸素を供給し、そして、栽培槽19の他端より配管22を経てタンク16に戻される。
【0024】
このように、タンク16から供給された溶存酸素濃度の高い培養液は、栽培槽19での水耕栽培に用いられた後にタンク16に循環され、さらに、配管23を経て渦流ポンプ14の液吸込口30に循環される。
【0025】
次に、図示された実施の形態の効果を説明する。
【0026】
酸素富化膜11と、真空ポンプ12と、渦流ポンプ14との組合せにより、タンク16内の培養液中の溶存酸素量を水耕栽培に適した値まで効率よく増加させて、収穫を上げることができる高濃度の溶存酸素含有培養液を栽培槽19に供給できる水耕栽培システムを提供できるとともに、その水耕栽培システムを安価に構成できる。
【0027】
渦流ポンプ14の羽根車37の周囲に形成された昇圧通路33の入口部34に、真空ポンプ12からの酸素富化空気を供給する空気供給ノズル13を挿入したので、真空ポンプ12から供給された酸素富化空気を、渦流ポンプ14の羽根車37によって培養液が渦巻状に撹拌されながら移動する昇圧通路33に効率良く吸込ませることができ、培養液中の溶存酸素濃度を効率良く上げることができる。
【0028】
長尺で下降傾斜された栽培槽19の槽本体42により緩やかで確実な培養液の流れを得ることができ、さらに、槽本体42の上面開口部を覆う樹脂シート45により、培養液の蒸散を防止でき、雑草の繁殖を防止できるとともに、苺の実などが培養液中に浸漬して、その品質が劣化することを防止できる。
【0029】
次に、この水耕栽培システムに関して行なった苺の栽培実験の結果を以下の表1、表2、表3および表4に示す。
【0030】
表1は、酸素富化膜11、真空ポンプ12および渦流ポンプ14を備えたタンク16から培養液の供給を受けるハウス1において、複数の栽培槽19の入口Ain、Bin、Cin、Dinおよび出口Aout、Bout、Cout、Doutにおける水温および酸素量を測定した結果であり、表2は、酸素富化膜、真空ポンプおよび渦流ポンプを備えていないタンク(図示せず)から培養液の供給を受けるハウス2(図示せず)において、複数の栽培槽の入口Ain、Bin、Cin、Dinおよび出口Aout、Bout、Cout、Doutにおける水温および酸素量を測定した結果であり、表3は、ハウス1とハウス2とで苺の収穫量(重量、パック数)を比較したものであり、表4は、ハウス1とハウス2とで苺株の生育状況を比較したものである。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
表1と表2とを比較すると、酸素富化空気の供給を受ける培養液が循環されるハウス1内の栽培槽19は、酸素富化空気の供給を受けない培養液が循環されるハウス2内の栽培槽よりも、培養液中の酸素濃度(酸素量)が高く、しかも、その傾向は、培養液の温度(水温)が低いほど顕著になることが分かる。
【0036】
表3により、酸素富化空気の供給を受ける培養液が循環されるハウス1での苺の収穫量と、酸素富化空気の供給を受けない培養液が循環されるハウス2での苺の収穫量とを比較すると、100:75の収穫比率となり、ハウス1では25%程度の増量を確認できる。
【0037】
表4により、酸素富化空気の供給を受ける培養液が循環されるハウス1での苺株の生育状況と、酸素富化空気の供給を受けない培養液が循環されるハウス2での苺株の生育状況とを比較すると、ハウス1では全体的な生育のバラツキが少なくなり、実の商品価値が向上していることを確認できる。
【0038】
本発明は、苺だけでなく、レタスなどの葉物などの水耕栽培にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る水耕栽培システムの一実施の形態を示す配管図である。
【図2】同上システムに用いられている渦流ポンプの断面図である。
【図3】同上システムに用いられている栽培槽の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
11 酸素富化膜
12 真空ポンプ
13 空気供給ノズル
14 渦流ポンプ
16 タンク
19 栽培槽
32 ポンプ本体
33 昇圧通路
34 入口部
37 羽根車
42 槽本体
44 栽培植物
45 樹脂シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を透過させる際に窒素よりも酸素の透過性を上げることで空気中の酸素濃度を高める酸素富化膜と、
この酸素富化膜を通して空気を吸引する真空ポンプと、
この真空ポンプから供給された酸素富化空気と培養液とを混合して培養液中に酸素を溶解させる渦流ポンプと、
この渦流ポンプにより循環された高酸素濃度の培養液を貯えるタンクと、
このタンクから供給された培養液を水耕栽培に用いてタンクに循環させる栽培槽と
を具備したことを特徴とする水耕栽培システム。
【請求項2】
渦流ポンプは、
ポンプ本体と、
ポンプ本体内に回転可能に嵌合された羽根車と、
羽根車の周囲に形成された環状の昇圧通路と、
昇圧通路の入口部に挿入され真空ポンプからの酸素富化空気を入口部に供給する空気供給ノズルと
を具備したことを特徴とする請求項1記載の水耕栽培システム。
【請求項3】
栽培槽は、
長尺に形成され培養液が供給される一端から培養液が排出される他端にわたって下降傾斜された槽本体と、
槽本体の上面開口部を栽培植物を除いて覆う樹脂シートと
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の水耕栽培システム。
【請求項1】
空気を透過させる際に窒素よりも酸素の透過性を上げることで空気中の酸素濃度を高める酸素富化膜と、
この酸素富化膜を通して空気を吸引する真空ポンプと、
この真空ポンプから供給された酸素富化空気と培養液とを混合して培養液中に酸素を溶解させる渦流ポンプと、
この渦流ポンプにより循環された高酸素濃度の培養液を貯えるタンクと、
このタンクから供給された培養液を水耕栽培に用いてタンクに循環させる栽培槽と
を具備したことを特徴とする水耕栽培システム。
【請求項2】
渦流ポンプは、
ポンプ本体と、
ポンプ本体内に回転可能に嵌合された羽根車と、
羽根車の周囲に形成された環状の昇圧通路と、
昇圧通路の入口部に挿入され真空ポンプからの酸素富化空気を入口部に供給する空気供給ノズルと
を具備したことを特徴とする請求項1記載の水耕栽培システム。
【請求項3】
栽培槽は、
長尺に形成され培養液が供給される一端から培養液が排出される他端にわたって下降傾斜された槽本体と、
槽本体の上面開口部を栽培植物を除いて覆う樹脂シートと
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の水耕栽培システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2007−20418(P2007−20418A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203204(P2005−203204)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000226002)株式会社ニクニ (25)
【出願人】(504103526)株式会社麻場 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000226002)株式会社ニクニ (25)
【出願人】(504103526)株式会社麻場 (6)
【Fターム(参考)】
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