説明

水耕栽培用つる性植物の育苗方法

【課題】水耕栽培されるつる性植物の生産量を向上させる。
【解決手段】
本発明のつる性植物の育苗方法は、育苗工程(S1)において、つる性植物から採取されたつるの一部を挿し穂とし、バーミキュライト培地又は日向土小粒培地に挿し木をして発根させる発根工程(S11)と、発根した挿し穂をゼオライト培地が充填された鉢に鉢上げして生育させる生育工程(S12)とを行うことを特徴とする。また、生育工程で生育された挿し穂を水耕栽培でさらに生育させる水耕栽培工程(S13)を行う。そして、育苗工程で生育されたつる性植物の苗は、定植工程(S2)にて屋根緑化装置に定植される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培されるつる性植物の生産量を向上させる育苗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根緑化装置や壁面緑化装置等の緑化装置では、多年生のつる性植物が好適に用いられている。建物に加わる重量が低減でき、メンテナンス性の向上が図れることから、この緑化装置には、つる性植物を水耕栽培するようにしたものがある(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
一般に、この種の緑化装置では広い範囲の緑化対象範囲を覆う必要があるため、多くのつる性植物が必要になる。ここで、特許文献2には、樹木苗や挿し木用採穂母樹を安定的に健全かつ大量に生産すべく、樹木から得られる挿し穂を固定培地に植え付け、発根させた後、根部が水に漬かるようにして水耕栽培することを特徴とする植林用苗木の作成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−183280号公報
【特許文献2】特開2007−319047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の方法で得られる苗木は、最終的には土壌に植えられるものである。このため、発根を水耕栽培で行う目的は、発根前の比較的弱い状態の挿し穂を土壌細菌などから保護し、土壌細菌などによる病虫害を抑制するためと考えられる。また、土壌に移植することが前提のため、特許文献2の方法では、水耕栽培期間における培地はバーミキュライトのみになっている。
【0006】
このように、特許文献2の方法は土壌に植えられる苗木の生産に適したものであり、特許文献1に記載された水耕栽培に用いられる苗木の生産に適しているとは必ずしもいえない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、水耕栽培されるつる性植物の生産量を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の育苗方法は、つる性植物から採取されたつるの一部を挿し穂とし、バーミキュライト培地又は日向土小粒培地に挿し木をして発根させる発根工程と、発根した前記挿し穂をゼオライト培地が充填された鉢に鉢上げして生育させる生育工程とを行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、発根時にバーミキュライト培地を用いている。バーミキュライトは焼成されているため、ほぼ無菌もしくは菌が極めて少ない状態にある。そして、バーミキュライトは排水性や保水性が高いという特性を有している。また、日向土は、弱酸性の性質を持っており、雑菌の繁殖を抑えて根腐れを予防する効果がある。そして、日向土は、多孔質の硬質軽石であり、やはり排水性や保水性が高いという特性を有している。一方、発根後の生育時にはゼオライト培地を用いている。ゼオライトは多孔質であるため、液肥中の肥料分を吸着して追肥時以外の期間において肥料分を供給することができる。このように、発根時には菌が少なく排水性や保水性が高いバーミキュライト培地を用い、生育時には補肥力の高いゼオライト培地を用いているので、挿し穂の成長状態に適した環境にすることができる。さらに、ゼオライトは水耕栽培時における培地にもなるので、挿し穂に対する負担を軽減しつつ水耕栽培に移行できる。
【0010】
前述の育苗方法において、前記生育工程で生育させた前記挿し穂を、水耕栽培によってさらに生育させる水耕栽培工程を行うことが好ましい。このように、使用環境に近い状態で水耕栽培工程が行われるので、実際の使用時において、苗木(生育された挿し穂)を使用環境に対して速やかに馴染ませることができる。
【0011】
前述の育苗方法において、前記水耕栽培工程では、前記ゼオライト培地が充填された鉢に対する灌水量を増やすことで行うことが好ましい。このような方法を採ることで、生育工程から水耕栽培工程への移行が容易に行える。
【0012】
前述の育苗方法において、前記生育工程では、前記ゼオライト培地が充填された鉢に対する灌水量を段階的に増やすことが好ましい。このような方法を採ることで、発根後の挿し穂に対する負担を軽減しつつ、挿し穂を生育させることができる。
【0013】
前述の育苗方法において、前記発根工程は日陰で行うことが好ましい。このような方法を採ることで、挿し木から発根までの吸水力の比較的弱い期間における水分の蒸散を抑制することができ、この期間における挿し穂への負担を軽減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水耕栽培されるつる性植物の生産量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】育苗方法を模式的に説明する図である。
【図2】挿し木時の状態を説明する図である。
【図3】(a)は、鉢上げ時における鉢植えの状態を説明する図である。(b)は、鉢上げ時における挿し穂の状態を説明する図である。(c)は、鉢上げ時における根の生育状態を説明する図である。
【図4】鉢上げ後における茎の生育状態を説明する図である。
【図5】(a)は、溶液循環式装置による育苗を説明する図である。(b)は、かけ流し式装置による育苗を説明する図である。
【図6】屋根緑化装置の外観を説明する斜視図である。
【図7】育苗後の苗を鉢ごと栽培槽に定植した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態では、育苗工程(S1)と定植工程(S2)とを行う。育苗工程は、つる性植物の挿し穂を、屋根緑化装置に定植できる程度まで育てる工程である。この育苗工程は、さらに発根工程(S11)と、生育工程(S12)と、水耕栽培工程(S13)とからなる。また定植工程は、育苗工程で得られたつる性植物の苗を屋根緑化装置に定植する工程である。以下、各工程について説明する。
【0018】
まず、発根工程(S11)について説明する。この発根工程では、つる性植物から採取されたつるの一部を挿し穂とし、バーミキュライト培地に挿し木して発根させる。つる性植物としては多年生のものが用いられる。耐寒性及び耐暑性に優れ、また垂下性を有するという観点からウコギ科のつる性植物が好適に用いられる。ウコギ科のつる性植物としては、ヘデラ・ヘリックス、ヘデラ・アルジェニシス、ヘデラ・コルシカ、ヘデラ・ハイバニカ等が挙げられる。本実施形態では、つる性植物としてヘデラ(ヘデラ・ヘリックス)を用いた。
【0019】
挿し穂に関し、2つの節を有する長さにつるを切り揃え、葉を全て摘み取ったものを用いた。挿し穂の切り口には、粉体状の植物成長調整剤をまぶした。植物成長調整剤としては、バイエルクロップサイエンス株式会社製のオキシベロン(登録商標)を用いた。この植物成長調整剤はインドール酪酸を主成分とする粉体状の薬剤である。
【0020】
発根工程で用いる培地の選定に際し、前述したバーミキュライトの他、3種類の培地を用いて発根状態を比較した。比較した培地は、日向土小粒、天然ゼオライト、及び、ボラ土細粒とした。そして、図2に示すように、発根工程では、セルトレイ1にこれらの培地2を充填し、植物成長調整剤をまぶした挿し穂3を植え付けた。
【0021】
ここで、セルトレイ1とは、底面に排水孔が開設され、培地が充填される複数の凹部(セル)を有し、これらの凹部が平面方向に隣接した状態で設けられた部材である。図2のセルトレイ1は、平面視長方形状をしており、逆四角錐台の外観をした複数の凹部が、長方形の長辺側と短辺側に沿ってマトリクス状に配列されている。具体的には、長辺側に16個の凹部が、短辺側に8個の凹部がそれぞれ並んでおり、合計128個の凹部が備えられている。
【0022】
バーミキュライト、日向土小粒、天然ゼオライト、及び、ボラ土細粒の充填数は同じ数とした。すなわち、それぞれの培地2を32個の凹部に充填した。そいて、各凹部の培地2に挿し穂3を挿し木した。
【0023】
挿し木をした後は、ミスト状の液肥によって灌水を行った。灌水の回数は1日あたり2回とした。一般に、ヘデラは、挿し木から30日〜40日で発根及び萌芽することが知られている。このため、発根工程の期間を60日とした。すなわち、挿し木から60日目に鉢上げし、生育工程に移行させた。
【0024】
鉢上げ時においても、前述した4種類の培地2を用いた。すなわち、6cmのビニールポット(鉢)に、バーミキュライト、日向土小粒、天然ゼオライト、及び、ボラ土細粒を充填し、発根した挿し穂3を移植した。移植後における挿し穂3の状態を図3(a)に示す。
【0025】
この移植時において、発根及び萌芽した状態の挿し穂3を洗浄して写真撮影した。また、根の本数と根の長さを確認した。挿し穂3の写真を図3(b)に、根の本数と長さの確認結果を図3(c)にそれぞれ示す。
【0026】
図3(b)において挿し穂3は、5本ずつの4グループに分けられている。同図における左端のグループ3Aは、ボラ土細粒培地を用いて発根させたものである。そして、左から2番目のグループ3Bは、天然ゼオライト培地を用いて発根させたものであり、左から3番目のグループ3Cは、バーミキュライト培地を用いて発根させたものである。また、右端のグループ3Dは、日向土小粒培地を用いて発根させたものである。
【0027】
図3(c)に示すように、バーミキュライト培地を用いて発根させたグループ3Cでは、根の本数が平均14.4本、根の長さが平均4.2cmという結果が得られた。天然ゼオライト培地を用いて発根させたグループ3Bでは、根の本数が平均11.2本、根の長さが平均1.7cmであった。また、ボラ土細粒培地を用いて発根させたグループ3Aでは、根の本数が平均10.4本、根の長さが平均4.6cmであり、日向土小粒培地を用いて発根させたグループ3Dでは、根の本数が平均15.4本、根の長さが平均4.1cmであった。
【0028】
以上の結果より、根の本数と根の長さの観点からすれば、発根工程で用いる培地2としては、バーミキュライト培地或いは日向土培地が好ましいといえる。
【0029】
ところで、本実施形態で用いたヘデラは、挿木での繁殖が容易な植物ではあるが、挿木から発根までの期間は吸水力が弱い。この観点からすれば、発根工程は直射日光を避けて日陰で行い、ヘデラにおける蒸散を抑えた方が好ましいといえる。また、ヘデラは、挿し木後において適温を維持すすることで速やかに発根する。このため、低温時においては、暖房を行うことで育苗期間を短縮できると考えられる。
【0030】
なお、本実施形態では発根工程において、小面積であっても多量の育苗が行えるセルトレイ1を用いているため、遮光等の栽培管理が容易であり、空調も効率的に行うことができる。
【0031】
ここで、バーミキュライト培地や日向土培地で良好な結果を得られた理由について検討する。
【0032】
バーミキュライトは、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムを主成分とする鉱物である。本実施形態では、バーミキュライト原石を焼成したものを培地2に用いている。バーミキュライト原石を高温(800〜1000℃)で焼成すると、結晶層内に含まれる水分が瞬間的に水蒸気となって原石の層間剥離を起こし、急膨張して容積が10数倍にもなる。このようにして焼成することで層の隙間が大きくなり、水が入ると保水機能及び排水機能を発揮する。さらに、焼成してあるため、ほぼ無菌である。このように、バーミキュライトは、保水性及び排水性が高く無菌に近いことから、有害な細菌の増殖を抑制しつつ、必要な量の水を供給できると考えられる。その結果、挿し穂3の発根を促すことができたと考えられる。
【0033】
日向土は、宮崎県都城市付近から産出される霧島山の火山砂礫である。多孔質の硬質軽石で、排水性、通気性、保水性に富んでいる。弱酸性の性質を持っており、雑菌の繁殖を抑えて、根腐れを予防する効果がある。このように、日向土も、有害な細菌の増殖を抑制しつつ、必要な量の水を供給できる特性を有している。その結果、挿し穂3の発根を促すことができたと考えられる。
【0034】
次に生育工程について説明する。この生育工程では、発根した挿し穂3をゼオライト培地が充填されたポット(鉢)に鉢上げして生育させる。前述したように、生育工程においても、発根工程と同じ4種類の培地2を比較した。そして、鉢上げ後における液肥の灌水管理は1日5回ミストで行った。また、鉢上げから3ヶ月経過時点、4ヶ月経過時点、5ヶ月経過時点における挿し穂3の茎部分の長さ(茎長)を測定した。測定結果を図4に示す。
【0035】
同図に示すように、バーミキュライト培地で生育させた挿し穂3は、鉢上げ後3ヶ月の時点の茎長が6.8cmであり、同4ヶ月の時点の茎長が16.0cmであり、同5ヶ月の時点の茎長が36.7cmであった。これに対し、天然ゼオライト培地で生育させた挿し穂3は、鉢上げ後3ヶ月の時点の茎長が11.1cmであり、同4ヶ月の時点の茎長が28.6cmであり、同5ヶ月の時点の茎長が64.7cmであった。また、ボラ土細粒培地で生育させた挿し穂3は、鉢上げ後3ヶ月の時点の茎長が6.0cmであり、同4ヶ月の時点の茎長が15.2cmであり、同5ヶ月の時点の茎長が27.3cmであった。また、日向土小粒培地で生育させた挿し穂3は、鉢上げ後3ヶ月の時点の茎長が5.7cmであり、同4ヶ月の時点の茎長が13.7cmであり、同5ヶ月の時点の茎長が26.3cmであった。
【0036】
この結果から、鉢上げ後は天然ゼオライト培地を用いることで、挿し穂3の生育を促すことかできることが判った。そこで、天然ゼオライト培地で良好な結果を得られた理由について検討する。
【0037】
ゼオライトは、シリコンとアルミと酸素からなる微細な孔を持った結晶性化合物である。ゼオライト内部の空洞や細孔は非常に大きな表面積を持っているため、多量の物質を吸着できる。このような性質を有するゼオライトを生育工程の培地2に用いると、ゼオライトが液肥の肥料分を吸着するので、追肥時以外にも肥料分を供給が可能になる。その結果、生育工程でゼオライト培地を用いると、他の種類のものを用いた場合よりも挿し穂3の生育が良好になったと考えられる。
【0038】
なお、上述の例では、生育工程において液肥をミストで供給していたが、この方法に限られない。図1に補足しているように、水耕栽培工程に順応させるべく、灌水量を多めにしたり、水耕栽培で行ってもよい。特に、ゼオライト培地が充填された鉢に対して、灌水量を段階的に増やすことが好ましい。このようにすることで、挿し穂3に対する急激な環境変化を抑えつつ、水耕栽培工程へ移行できる。
【0039】
次に水耕栽培工程について説明する。この水耕栽培工程では、生育工程で生育させた挿し穂3を、水耕栽培によってさらに生育させる。この水耕栽培工程では、例えば図5(a)に示す液肥循環式の栽培装置や、図5(b)に示す液肥かけ流し式の栽培装置が用いられる。
【0040】
液肥循環式の栽培装置では、生育工程で得られた挿し穂3をビニールポット4ごと樋に移動させて並べる。そして、樋の底面から所定高さまで液肥を満たした状態で、ポット4の下側から挿し穂3に液肥を供給する。液肥は、樋の長手方向一端から供給して他端から回収し、再度樋の一端から供給する。一方、液肥かけ流し式の栽培装置では、ビニールポット4を並べた樋に培養液を湛水し、定期的に灌水を行ってオーバーフローさせることで培養液を入れ替える。
【0041】
いずれの栽培装置であっても、培地2が充填されたポット4(鉢)を樋に移動させ、灌水量を増やすことで水耕栽培を行うことが好ましい。このような方法を採ることで、生育工程から水耕栽培工程への移行が容易に行えるからである。
【0042】
この水耕栽培工程は、挿し穂3が屋根緑化装置に定植できる程度に成長するまで、例えばつるの長さが2m〜3m程度になるまで行われる。屋根緑化装置では、つる性植物を水耕栽培するため、この水耕栽培工程を行うことにより、使用環境に近い状態でつる性植物の苗を育てることででき、実際の使用時において、つる性植物の苗を屋根緑化装置の環境に対して速やかに馴染ませることができる。
【0043】
次に定植工程について説明する。定植工程の説明に先立ち、屋根緑化装置の構成について説明する。
【0044】
図6に例示した屋根緑化装置は、栽培槽110と、液肥循環ユニット120と、金属網130とを備えている。
【0045】
栽培槽110は、つる性植物を水耕栽培するためのものであり、切妻造りの屋根140における大棟部141に設置されている。水耕栽培工程で育てられたつる性植物の苗木3´は、ポットが栽培槽110に収容された状態で定植される。
【0046】
栽培槽110は、直方体状の外観形状をしており、内部に空洞を有する箱体によって構成されている。例えば図7に示すように、栽培槽110は、上面が開放された栽培槽本体111と栽培槽本体111の上面開口を上方から覆う蓋体112とを有している。これらの栽培槽本体111と蓋体112とにより、苗木3´の根元部分が植えられた複数のポット4を横並びに収容する。すなわち、栽培槽本体111の下半分に敷き詰められたゼオライト培地113にポット4ごと収容される。
【0047】
液肥循環ユニット120は、栽培槽110との間で液肥を循環させるための部分である。ここで、液肥とは、つる性植物の生育に必要な栄養素が添加された水である。図6に示すように、液肥循環ユニット120は、液肥タンク121と、給水ポンプ122と、液肥生成部123とを有している。
【0048】
液肥タンク121は、液肥を貯留する箱状容器である。この液肥タンク121には供給管124の下端部分及び回収管125の下端部分が挿入されている。供給管124は、液肥循環ユニット120から送出される液肥を栽培槽110へと導くためのパイプ材である。回収管125は、栽培槽110から排出された液肥を液肥循環ユニット120へと導くためのパイプ材である。
【0049】
給水ポンプ122は、供給管124の途中に設けられており、液肥タンク121に貯められた液肥を栽培槽110へ向けて送出する。送出された液肥は、栽培槽110の内部でポット4に灌水される。そして、ポット4から流出した液肥やポット4に灌水されずに流下した液肥が回収管125を通じて液肥タンク121に回収される。
【0050】
液肥生成部123は、つる性植物の生育に必要な栄養素が濃縮された濃縮液を水道水で希釈することにより、液肥を生成する。この液肥生成部123は、濃縮液を貯留する濃縮液タンクと、水道水と濃縮液とを適当な割合で混合する混合器(図示せず)とを有する。
【0051】
金属網130は、栽培槽110から伸長したつる性植物を支持するための支持部材であり、屋根140の表面から多少浮かせた状態で取り付けられている。金属網130の網目は、つる性植物が絡んで固定され易いような大きさに設けられている。
【0052】
図7に示すように、栽培槽110の内部に充填されたゼオライト培地113の表面には、灌水管114が栽培槽110の長手方向に沿って配置されている。この灌水管114は、栽培槽110内に定植された各ポット4に灌水するためのものであり、供給管124の上端部が接続されている。灌水管114の周面には、複数の噴射孔が灌水管114の長手方向に沿って開設されている。このため、供給管124から灌水管114に流れ込んだ液肥は各噴射孔から噴射される。そして、噴射された液肥は、栽培槽110の底部に配置された回収管125の上端部から回収される。
【0053】
そして、定植工程では、水耕栽培工程で十分に生育させたつる性植物の苗木3´を、ポット毎栽培槽110に充填されたゼオライト培地113に植え込む。そして、この苗3´のつる部分を、栽培槽110に設けられた開口から栽培槽110の外に引き出して金属網130に絡ませる。前述したように、つる性植物の苗木3´は、水耕栽培工程で十分に生育されたものであり、この屋根緑化装置でも水耕栽培が行われる。このように定植前に水耕栽培工程を行うことで、苗木3´に対する生育環境の変化を抑えることができ、負担を軽減することができる。
【0054】
なお、前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 セルトレイ
2 培地
3 挿し穂
3A ボラ土細粒培地を用いて発根させた挿し穂のグループ
3B 天然ゼオライト培地を用いて発根させた挿し穂のグループ
3C バーミキュライト培地を用いて発根させた挿し穂のグループ
3D 日向土小粒培地を用いて発根させた挿し穂のグループ
3´ つる性植物の苗木
4 ポット
110 栽培槽
111 栽培槽本体
112 蓋体
113 ゼオライト培地
114 灌水管
120 液肥循環ユニット
121 液肥タンク
122 給水ポンプ
123 液肥生成部
124 供給管
125 回収管
130 金属網
140 屋根
141 大棟部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つる性植物から採取されたつるの一部を挿し穂とし、バーミキュライト培地又は日向土小粒培地に挿し木をして発根させる発根工程と、
発根した前記挿し穂をゼオライト培地が充填された鉢に鉢上げして生育させる生育工程とを行うことを特徴とする水耕栽培用つる性植物の育苗方法。
【請求項2】
前記生育工程で生育させた前記挿し穂を、水耕栽培によってさらに生育させる水耕栽培工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培用つる性植物の育苗方法。
【請求項3】
前記水耕栽培工程は、前記ゼオライト培地が充填された鉢に対する灌水量を増やすことで行うことを特徴とする請求項2に記載の水耕栽培用つる性植物の育苗方法。
【請求項4】
前記生育工程では、前記ゼオライト培地が充填された鉢に対する灌水量を段階的に増やすことを特徴とする請求項2又は3に記載の水耕栽培用つる性植物の育苗方法。
【請求項5】
前記発根工程を日陰で行うことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の水耕栽培用つる性植物の育苗方法。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157301(P2012−157301A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19946(P2011−19946)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】