説明

水耕栽培用定植板

【課題】株間を広くする作業を容易にすることができ、根を傷めることもない水耕栽培用定植板を提供する。
【解決手段】水耕栽培用定植板1は、複数の植え穴2…が、水平二次元方向に分散状態に備えられ、該植え穴2…間の板部に切込み5が入れられ、該植え穴2…間の板部を、V字状に屈折させて重ね合わせ状にすると共に切込み5を通じて重なり状にすることにより、水平二次元方向において、植え穴2…間の間隔寸法を小さく変更することができるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培用定植板に関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培においても、スペースを効率良く利用するため、種から苗に育てる段階では株間を狭くし、苗から大きくしていく段階では株間を広くしていくことが行われるが、その作業は、従来より、植え穴間の間隔寸法の異なる複数種類の定植板を用い、植え穴間の間隔寸法の小さい定植板で育てた植物を、人の手で、植え穴間の間隔寸法の大きい定植板に植え替えるというようにして行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−262208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような方法では、植替えそのものの作業が非常に厄介であると共に、植替えの際に根を痛めてしまいやすく、また、植え穴間の間隔寸法の異なる複数種類の定植板をわざわざ用意しておなければならず、嵩張るという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、株間を広くする作業を容易にすることができると共に、根を傷めることもなく、また、株間を広くする目的で植え穴間の間隔寸法の異なる複数種類の定植板を用意する必要もない水耕栽培用定植板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、植物定植用の貫通の植え穴が複数、設けられた水耕栽培用定植板であって、
前記植え穴間の間隔寸法を大きく、又は、小さく、変更することができるようになされていることを特徴とする水耕栽培用定植板によって解決される(第1発明)。
【0007】
この水耕栽培用定植板では、植え穴間の間隔寸法を大きく、又は、小さく、変更することができるようになされているので、植物が植えられた状態のまま、植え穴間の間隔寸法を小さい状態から大きく変更することによって、株間は広められ、よって、そのようにして株間を広くすることによって、株間を広くする作業を容易にすることができると共に、根を傷めることもなく、また、株間を広くする目的で植え穴間の間隔寸法の異なる複数種類の定植板を用意する必要もない。
【0008】
第1発明において、前記植え穴が、水平二次元方向に分散状態に備えられ、
該植え穴間の板部に切込みが入れられ、
該植え穴間の板部を、V字状に屈折させて重ね合わせ状にすると共に前記切込みを通じて重なり状にすることにより、水平二次元方向において、植え穴間の間隔寸法を小さく変更することができるようになされているとよい(第2発明)。
【0009】
この水耕栽培用定植板では特に、切込みが備えられ、該切込みを通じて板部を重なり状にすることができるようになされているので、植え穴が二次元方向に分散状態に備えられているものでありながら、植え穴間の間隔寸法の変更を水平二次元方向において確実に実現することができるのみならず、植え穴間の板部に入れられているのが、このように、切込みであることにより、植え穴間の間隔寸法を小さくした状態では、植え穴間の板部は、切込みを通じて重なり状になっているので、切込みはしっかりと閉じられており、また、植え穴間の間隔寸法を大きくした状態では、植え穴間の板部は切込み部分において切込みであるが故に突き合わせ状になっていて、切込みは依然として閉じられた状態を維持することができ、それにより、水耕栽培において、切込みを通じて下の養液中に差し込む光は、わずかであるか、あるいは、なく、そのため、養液中での苔などの繁殖を防いで、掃除の手間を軽くする、あるいは、なくすことができ、また、養液中の栄養が苔などに奪われるのを防ぐことができる。
【0010】
第2発明において、V字状中間屈折線を挟む一方の辺ともう一方の辺の長さ寸法が異ならされており、それにより、前記切込みを通じて重ね合わされる板部同士が上下に位置をずらせているとよい(第3発明)。
【0011】
この水耕栽培用定植板では特に、切込みを通じて重なり状となる板部間の動きをスムーズにすることができて、植え穴間の間隔寸法を大きくする、あるいは、小さくする操作をスムーズにすることができる。
【0012】
第1発明において、前記植え穴が、水平二次元方向に分散状態に備えられ、
該植え穴間の板部に切欠き部が設けられると共に、該切欠き部は柔軟な膜材にて塞がれており、
植え穴間の板部をV字状に屈折させて重ね合わせ状にすると共に、前記膜材を変形させて切欠き部を縮小することにより、水平二次元方向において、植え穴間の間隔寸法を小さく変更することができるようになされているのもよい(第4発明)。
【0013】
この水耕栽培用定植板では特に、切欠き部が設けられていると共に、該切欠き部が柔軟な膜材にて塞がれているので、植え穴が二次元方向に分散状態に備えられているものでありながら、植え穴間の間隔寸法の変更を水平二次元方向において確実に実現することができるのみならず、植え穴間の間隔寸法を小さくした状態においても、大きくした状態においても、切欠き部は柔軟な膜材によって塞がれた状態を維持しており、それにより、水耕栽培において、切欠き部を通じて下の養液中に差し込む光は、わずかであるか、あるいは、なく、そのため、養液中での苔などの繁殖を防いで、掃除の手間を軽くする、あるいは、なくすことができ、また、養液中の栄養が苔などに奪われるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
第1〜第4発明の水耕栽培用定植板では、株間を広くする作業を容易にすることができると共に、根を傷めることもなく、また、株間を広くする目的で植え穴間の間隔寸法の異なる複数種類の定植板を用意する必要もない。
【0015】
また、第2〜第4発明の水耕栽培用定植板では、養液中での苔などの繁殖を防いで、掃除の手間を軽くする、あるいは、なくすことができ、また、養液中の栄養が苔などに奪われるのを防ぐことができる。
【0016】
第3発明の水耕栽培用定植板では、植え穴間の間隔寸法を大きくする、あるいは、小さくする操作をスムーズにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の水耕栽培用定植板を示すもので、図(イ)は植え穴間の間隔寸法を大きくした状態の平面図、図(ロ)は植え穴間の間隔寸法を小さくした状態の平面図、図(ハ)は同定植板の斜視図である。
【図2】図(イ)は第2実施形態の水耕栽培用定植板を示す平面図、図(ロ)は第3実施形態の水耕栽培用定植板を示す平面図である。
【図3】第4実施形態の水耕栽培用定植板を示すもので、図(イ)は植え穴間の間隔寸法を大きくした状態の平面図、図(ロ)は植え穴間の間隔寸法を小さくした状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示す第1実施形態の水耕栽培用定植板1は、樹脂板や金属板などで制作された非透光性の板からなっていて、該定植板1において、2は貫通の植え穴であり、該植え穴2は、複数備えられ、水平二次元方向に、格子の目状に分散状態に設けられている。
【0020】
そして、本実施形態では、
・ 横方向に延びる植え穴2…の列間の板部全体をV字状に屈折させて重ね合わせ状にすることができるようにする屈折線としての折目線3…が設けられる一方、
・ 縦方向に延びる植え穴2…の列間の板部は、
・ 横方向において隣り合う植え穴間において、V字状に屈折させて重ね合わせ状にすることができるようにする屈折線としての丁番型回動軸部4…が設けられると共に、
・ それらの間には、H字状の切込み5が入れられ、
それにより、植え穴2…間の間隔寸法がAのように大きい図1(イ)に示す状態から、植え穴2…間の板部を、図1(ハ)に示すように、V字状に屈折させて重ね合わせ状にすると共に、切込み5…を通じて重なり状にすることにより、図1(ロ)に示すように、水平二次元方向において、植え穴2…間の間隔寸法をaのように小さく変更することができるようになされており、逆にすれば、植え穴2…間の間隔寸法を図1(イ)に示すようにAのように大きく変更することができるようになされている。
【0021】
更に、本実施形態では、図1(イ)に示すように、縦方向に延びる植え穴2…の列間の板部のうちの、横方向において隣り合う植え穴2間の板部において、中間の丁番型回動軸部4…を挟む一方の辺の長さ寸法mともう一方の辺の長さ寸法nとが異ならされていて、それにより、図1(ハ)に示すように、切込み5を通じて重ね合わされる板部同士が上下に位置をずらされて、切込み5を通じて重なり状となる板部間の動きをスムーズにすることができて、植え穴間の間隔寸法を大きくする、あるいは、小さくする操作をスムーズにすることができるようになされている。
【0022】
また、本実施形態では、図1(ハ)に示すように、定植板1の周囲板部1aは、V字状屈折重ね合わせ部よりも外方に突出し、該突出板部1aにC字状の係合保持部6が設けられ、V字状屈折重ね合わせ部を挟む複数の係合保持部6…に線状骨材7を取外し可能に係合保持させることで、植え穴2…間の間隔寸法の小さい状態でその形態を保持させたり、植え穴2…間の間隔寸法の大きい状態でその形態を保持させたりすることができるようになされている。
【0023】
上記の水耕栽培用定植板1では、このように、植え穴2…間の間隔寸法をAのように大きく、又は、aのように小さく、変更することができるようになされているので、植物が植えられた状態のまま、植え穴2…間の間隔寸法を小さい状態から大きく変更することによって、株間は広められ、よって、そのようにして株間を広くすることによって、株間を広くする作業を容易にすることができると共に、根を傷めることもなく、また、株間を広くする目的で植え穴間の間隔寸法の異なる複数種類の定植板を用意する必要もない。
【0024】
特に、本実施形態では、切込み5…が備えられ、該切込み5を通じて板部を重なり状にすることができるようになされているので、植え穴が二次元方向に分散状態に備えられているものでありながら、植え穴2…間の間隔寸法の変更を水平二次元方向において確実に実現することができる。
【0025】
のみならず、植え穴2…間の板部に入れられているのが、このように、切込み5であることにより、植え穴2…間の間隔寸法を小さくした状態では、植え穴2…間の板部は、切込み5を通じて重なり状になっているので、切込み5はしっかりと閉じられており、また、植え穴2…間の間隔寸法を大きくした状態では、植え穴2間の板部は切込み部分において切込み5であるが故に突き合わせ状になっていて、切込み5は依然として閉じられた状態を維持することができ、それにより、水耕栽培において、切込み5を通じて下の養液中に差し込む光は、わずかであるか、あるいは、なく、そのため、養液中での苔などの繁殖を防いで、掃除の手間を軽くする、あるいは、なくすことができ、また、養液中の栄養が苔などに奪われるのを防ぐことができる。
【0026】
図2(イ)に示す第2実施形態の水耕栽培用定植板1は、切込み5がコ字状をしているものであり、また、図2(ロ)に示す第3実施形態の水耕栽培用定植板1は、切込み5がS字状をしているものであり、その他は、第1実施形態と同様であり、同様の作用効果が奏される。
【0027】
図3に示す第4実施形態の水耕栽培用定植板1は、
・ 横方向に延びる植え穴2…の列間の板部は、
・ 縦方向において隣り合う植え穴間において、V字状に屈折させて重ね合わせ状にすることができるようにする屈折線としての丁番型回動軸部4…が設けられ、
・ それらの間には切欠き部8が設けられると共に、該切欠き部8は、非透光性の柔軟な膜材9にて塞がれており、
・ 縦方向に延びる植え穴2…の列間の板部は、
・ 横方向において隣り合う植え穴間において、V字状に屈折させて重ね合わせ状にすることができるようにする屈折線としての丁番型回動軸部4…が設けられ、
・ それらの間には、上記の、膜材9にて塞がれた切欠き部8が存在しており、
それにより、植え穴2…間の間隔寸法がAのように大きい図3(イ)に示す状態から、植え穴2…間の板部を、V字状に屈折させて重ね合わせ状にすると共に、前記膜材9…を変形させて切欠き部8を縮小することにより、図3(ロ)に示すように、水平二次元方向において、植え穴2…間の間隔寸法をaのように小さく変更することができるようになされており、逆にすれば、植え穴2…間の間隔寸法を図3(イ)に示すようにAのように大きく変更することができるようになされている。なお、膜材9は、例えば、シリコンなどからなっている。また、中間の丁番型回動軸部4…を挟む一方の辺の長さ寸法ともう一方の辺の長さ寸法とは同じに設計されている。その他は、第1実施形態とほぼ同様である。
【0028】
この水耕栽培用定植板1では、切欠き部8が設けられていると共に、該切欠き部8が柔軟な膜材9にて塞がれているので、植え穴が二次元方向に分散状態に備えられているものでありながら、植え穴2…間の間隔寸法の変更を水平二次元方向において確実に実現することができるのみならず、
植え穴2…間の間隔寸法を小さくした状態においても、大きくした状態においても、切欠き部8は柔軟な膜材9によって塞がれた状態を維持しており、それにより、水耕栽培において、切欠き部8を通じて下の養液中に差し込む光は、わずかであるか、あるいは、なく、そのため、養液中での苔などの繁殖を防いで、掃除の手間を軽くする、あるいは、なくすことができ、また、養液中の栄養が苔などに奪われるのを防ぐことができる。
【0029】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、水平二次元方向に分散状態に備えられた植え穴間の間隔寸法を、水平二次元方向において大きくしたり、小さくしたりすることができるようにする手段のいくつかを示しているが、本発明は、それに限らず、その他の手段によって、植え穴間の間隔寸法を大小変更することができるようになされていてもよい。また、第1発明における水耕栽培用定植板は、水平一次元方向に分散状態に備えられた植え穴間の間隔寸法を同方向において大きくしたり小さくしたりすることができるように構成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…水耕栽培用定植板
2…植え穴
3…折目線(屈折線)
4…丁番型回動軸部(屈折線)
5…切込み
8…切欠き部
9…膜材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物定植用の貫通の植え穴が複数、設けられた水耕栽培用定植板であって、
前記植え穴間の間隔寸法を大きく、又は、小さく、変更することができるようになされていることを特徴とする水耕栽培用定植板。
【請求項2】
前記植え穴が、水平二次元方向に分散状態に備えられ、
該植え穴間の板部に切込みが入れられ、
該植え穴間の板部を、V字状に屈折させて重ね合わせ状にすると共に前記切込みを通じて重なり状にすることにより、水平二次元方向において、植え穴間の間隔寸法を小さく変更することができるようになされている請求項1に記載の水耕栽培用定植板。
【請求項3】
V字状中間屈折線を挟む一方の辺ともう一方の辺の長さ寸法が異ならされており、それにより、前記切込みを通じて重ね合わされる板部同士が上下に位置をずらせている請求項2に記載の水耕栽培用定植板。
【請求項4】
前記植え穴が、水平二次元方向に分散状態に備えられ、
該植え穴間の板部に切欠き部が設けられると共に、該切欠き部は柔軟な膜材にて塞がれており、
植え穴間の板部をV字状に屈折させて重ね合わせ状にすると共に、前記膜材を変形させて切欠き部を縮小することにより、水平二次元方向において、植え穴間の間隔寸法を小さく変更することができるようになされている請求項1に記載の水耕栽培用定植板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−223120(P2012−223120A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92526(P2011−92526)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】