説明

水耕栽培装置

【課題】植物の生育状態等を観賞できると共に、コストの低減および小型化を図り、更に、養液の溢れ出しなどが生じない水耕栽培装置を提供する。
【解決手段】ショーケース2内の栽培室2cには、水耕栽培用の養液27をそれぞれ貯留する複数の栽培トレイ3が、上下方向に複数段に設置され、各栽培トレイ3は、養液27を他の栽培トレイ3との間で流通させることなく、個別に貯留するものであり、各栽培トレイ3の養液27に、エアポンプ10からの空気を、エアホース12を介してエア噴出ホース16に供給し、養液27内で噴出させて気泡を発生させる水耕栽培装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を水耕栽培する水耕栽培装置に関し、更に詳しくは、植物の生育状態などを外部から観賞できる水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の健康志向の高まりから無農薬野菜の栽培ができる水耕栽培に関心が集まっている。
【0003】
この種の水耕栽培装置では、栽培室内に、植物を水耕栽培するための複数の栽培トレイが上下方向に多段に設置されている。各栽培トレイには、水耕栽培用の養液が貯留されており、各栽培トレイの上方には、植物に光を照射する光源が設置されている。
【0004】
各栽培トレイは、養液を循環させるための循環パイプで上下に順次連結されており、下方に設置された養液タンクからの養液を、循環ポンプによって汲み上げて最上段の栽培トレイに供給し、最上段の栽培トレイから順次下段の栽培トレイに供給し、最下段の栽培トレイへ供給した後、養液タンクに戻す、という循環を繰り返しており、養液は各栽培トレイを循環して供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−34064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、店舗やオフィス等において、水耕栽培を行ってその生育の様子を観賞できるようにした水耕栽培装置の要求が高まっているが、かかる水耕栽培装置では、設置スペースに限りがあるため、小型化が要求される。
【0007】
しかしながら、養液を循環させる循環方式の水耕栽培装置では、循環ポンプ及び養液タンクを設置するスペースを確保せざるを得ず、そのことが装置の小型化の妨げになっている。なお、循環ポンプの設置スペースを省略するために、循環ポンプとして、養液タンク内に投げ入れる簡易タイプのポンプを用いた装置もあるが、投げ入れ式の簡易タイプのポンプは故障しやすく、寿命が短いという別の課題がある。
【0008】
また、養液は、植物吸収や蒸発等により目減りするので、目減りした分、補給する必要があるが、養液を循環させているときには、循環流路を流れる全体の養液量を把握するのが難しく、熟練した作業者でないと、養液タンクへの養液の補給量が多目になりがちである。このため、栽培トレイの清掃、植物の収穫や新たな植え付けを行う場合などに、装置を停止させて循環ポンプを止めて作業を行っていると、循環流路の養液が、重力によって下方へ流れて養液タンクに戻り、養液タンクから養液が溢れ出して周囲を汚してしまううえ、溢れ出した養液は、装置の故障の原因にもなる。
【0009】
更に、複数の各栽培トレイには、養液タンクからの養液が循環するので、栽培トレイ毎に、異なる成分や濃度の養液とすることができず、このため、栽培トレイ毎に、種類や生育段階などの異なる植物を栽培することができない。
【0010】
また、各栽培トレイが配置されている栽培室は、室温調整されているが、養液タンクは、通常、前記栽培室と断熱壁によって隔離された機械室に設置されるために、養液タンクの養液の液温は、外気温の影響を受けて変動する。このような温度変動のある養液の循環は、栽培室の室温調整に悪影響を及ぼし、室温調整が不安定になる場合がある。
【0011】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、植物の生育状況などを観賞できると共に、小型化及び低コスト化を図り、更に、養液が溢れ出すといったことのない作業性が良好な水耕栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、植物を水耕栽培する水耕栽培装置であって、内部の栽培室を外部から目視可能なショーケースを備え、前記栽培室には、水耕栽培用の養液をそれぞれ貯留する複数の栽培トレイが、上下方向に複数段に設置され、前記各栽培トレイは、前記養液を他の栽培トレイとの間で流通させることなく、個別に貯留するものであり、前記各栽培トレイの養液に、空気を供給して気泡を発生させる空気供給手段を設ける。
【0013】
ショーケースは、内部の栽培室を目視可能であればよく、該ショーケースを構成する面の少なくとも一部を、内部が目視できるように透明ガラスやアクリル樹脂などの透明材料から構成するのが好ましく、例えば、扉や窓などを透明材料で構成してもよい。
【0014】
本発明によると、ショーケース内の栽培室を外部から目視できるので、植物の生育状況等を観賞でき、しかも、栽培トレイは、他の栽培トレイとの間で養液を流通させることなく、個別に貯留する、いわゆる、養液を循環させない非循環方式としているので、養液を循環させるための循環ポンプや養液タンク等が不要となり、その分、部品点数が減ってコストダウンと小型化を図ることができる。また、各栽培トレイの養液には、空気を供給して気泡を発生させるので、養液中の溶存酸素量を高めることができる。
【0015】
また、養液を循環させる循環方式の従来例では、多段に設置された栽培トレイの最上段まで養液を汲み上げて循環させるために比較的大きな電力で駆動する循環ポンプが必要であったが、本発明では、電力消費の多い循環ポンプが不要になる分、ランニングコストの削減が図れる。また、省スペースを図るために養液タンクに投げ入れるタイプの循環ポンプは防水性能の経年劣化により故障を起こし易いが、本発明はそのような循環ポンプも不要となるので、装置を長期間安定に動作させることができる。
【0016】
また、養液タンクの養液を各栽培トレイに循環させる循環方式ではないので、栽培トレイの清掃、植物の収穫や新たな植え付けを行う際に、装置を停止させても、養液タンクから養液が溢れ出すことはない。
【0017】
更に、各栽培トレイは、個別に養液を貯留しているので、養液の成分や濃度をトレイ毎に個別に調整することが可能となるので、栽培トレイ毎に種類や生育段階などの異なる植物を栽培することができる。
【0018】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記空気供給手段は、空気を圧送するエアポンプと、前記エアポンプからの前記空気を前記栽培トレイに供給する供給管路と、前記供給管路からの空気を前記栽培トレイの前記養液内に噴出させて気泡を発生させる噴出部とを備える。
【0019】
この実施態様によると、エアポンプからの圧縮された空気を、供給管路を介して噴出部から養液内に噴出して気泡を生じさせるので、養液内の溶存酸素の量を高めることができる。
【0020】
また、エアポンプは一般に、養液を循環させる循環ポンプ(ウォーターポンプ)に比して電力消費が少ないので、従来に比してランニングコストを低減することができる。
【0021】
(3)本発明の他の実施態様では、前記供給管路が、弾力性を有する配管であり、前記噴出部が、弾力性を有する配管に形成した噴出孔である。
【0022】
この実施態様によると、供給管路を、弾力性を有する配管、例えば、ゴム製や樹脂製のホースなどで構成することができると共に、噴出部を前記ホース等に形成した噴出孔で構成することができ、コストの低減に有効であると共に、取扱いや設置作業が容易である。
【0023】
(4)本発明の更に他の実施態様では、前記栽培トレイは、貯留されている前記養液の液位を確認するための液位確認窓を有する。
【0024】
この実施態様によると、各栽培トレイの養液減少量や養液継ぎ足し時における継ぎ足し量を把握するのが容易となる。また、栽培トレイにおいて、直接水に肥料を溶かし込んで養液を調製する場合もあるが、かかる場合にその調製作業が容易となる。
【0025】
(5)本発明の他の実施態様では、前記栽培室と仕切られて、該栽培室の空気が流通する空調通路と、前記空調通路に設置されて空気を加熱する加熱器と、前記空調通路に設置されて空気を冷却する冷却器と、前記栽培室からの空気を吸込んで前記空調通路を通して前記栽培室に吹き出す送風手段と、前記栽培室内の温度が設定温度になるように、前記加熱器及び冷却器を制御する制御部とを備える。
【0026】
養液タンクの養液を、各栽培トレイに循環させる循環方式の従来例では、通常、養液タンクが栽培室外に設置されるので、外気温の影響を受けて養液の温度が変動するが、この実施態様によると、各栽培トレイに貯留されている養液は、室温が調整された栽培室内にあるので、液温が安定する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、植物の生育状態等を観賞できると共に、養液を循環させるための循環ポンプ及び養液タンクが不要となるので、コストダウンと装置の小型化を図ることができる。更に養液の循環を行わないので、装置を停止させた際に、養液が養液タンクから溢れる等の不具合が生じることもない。各栽培トレイの養液には、空気を供給して気泡を発生させるので、養液中の溶存酸素の量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態の水耕栽培装置の正面図である。
【図2】図1の縦断側面図である。
【図3】栽培室内の空気の流れおよび栽培トレイの養液への空気の流れを示す縦断側面図である。
【図4】栽培トレイに組込まれるエア噴出ホースおよび定植プレート等の分解斜視図である。
【図5】栽培トレイの養液中におけるエア噴出ホースからのエアの噴出状態を示す斜視図である。
【図6】(a)定植プレートが装着された栽培トレイの斜視図であり、(b)は植物を定植した状態の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る水耕栽培装置1の正面図であり、図2は、その縦断側面図である。
【0030】
水耕栽培装置1は、箱状のショーケース2を備えており、このショーケース2の正面には、内部の栽培室2aを外部から目視できるように、無色透明のガラスからなる開閉扉2cが左右(図1の左右)方向にスライド可能に設けられている。
【0031】
栽培室2a内には、上下方向に複数段、この例では4段の栽培棚11が、左右両側に2本ずつ設置された支柱25間に架設されている。各栽培棚11には、養液27を貯留すると共に、植物26を栽培する栽培トレイ3が載置されている。
【0032】
栽培トレイ3は、上面が開口された浅い矩形の容器であって、養液27を貯留すると共に、前記開口に植物26を定植する定植プレート17が装着される。
【0033】
各栽培トレイ3は、他の栽培トレイ3との間で養液27を流通させることなく、個別に養液27を貯留する。各栽培トレイ3の上方の栽培棚11の下面には、植物26に光を照射する複数本、この例では4本の、例えば蛍光灯からなる光源7が設置されている。光源7は、蛍光灯に限らず、LED、高圧ナトリウムランプ等、あるいは、それらの組合せであってもよい。LEDの場合には、波長の異なるLEDを組合せて、植物の種類や生育状況に応じて、波長を選択できるようにしてもよい。
【0034】
栽培室2aの上部の天井から背面にかけて栽培室2aと仕切られた空調通路29が形成されおり、上部の天井には、栽培室2aと空調通路29との間で空気を循環させる送風手段としての循環ファン4が設けられている。この空調通路29には、循環ファン4からの空気を冷却する蒸発器6と、空気を加熱するヒータ5とが設置されている。
【0035】
図3は、栽培室2a及び空調通路29の空気の流れを示すと共に、後述のエアポンプ10から栽培トレイ3への空気の流れを示す図であり、白抜きの矢符Aは、栽培室2a及び空調通路29の空気の流れを、黒の矢符Bは、エアポンプ10から栽培トレイ3への空気の流れをそれぞれ示す。
【0036】
この図3において、栽培室2a及び空調通路29の空気の流れは、白抜きの矢符Aで示されるように、栽培室2a内の空気が、上部の循環ファン4によって吸込まれて蒸発器6によって冷却され、更に、ヒータ5によって加熱されて温度調整された後、背面の空調通路29を通って吹出し口から各栽培棚11の間に吹き出され、各栽培トレイ3と栽培棚11との間を通って再び上方の循環ファン4に吸込まれるという循環を繰返し、これによって、栽培室2a内の温度が設定温度に調整される。
【0037】
蒸発器6は、冷凍機の一部であって、冷凍機の他の構成要素であるコンプレッサ22及び放熱を行う凝縮器23等は、図2に示すように、栽培室2aの下方の機械室2bに設置されている。この機械室2bには、エアポンプ10及び図示しない電装ボックス等が設置されている。電装ボックスには、各部に電源を供給する電源部、各種の設定を行なう操作部、各部を制御する制御部、及び、漏電を検出して電源の供給を停止する漏電ブレーカ等が収納されている。機械室2bの正面には、図1に示すように、外装カバー8が取付けられると共に、吸気口を有する外装パネル9が取付けられている。
【0038】
この実施形態の水耕栽培装置1では、各栽培トレイ3は、他の栽培トレイ3との間で養液27を流通させることなく、養液27を個別に貯留する、いわゆる、非循環方式である。このため、各栽培トレイ3内の養液27に酸素を供給するために次のように構成している。
【0039】
すなわち、この実施形態では、各栽培トレイ3の養液27に、空気を圧送して養液27内に噴出して気泡を発生させる、いわゆる、バブリングを行うようにしている。このため、空気を圧送するエアポンプ10と、このエアポンプ10から空気を、上方の各栽培トレイ3に供給する供給管路を構成するエアホース12と、このエアホース12に接続されて養液27内にエアを噴出して気泡を発生させるエア噴出ホース16とを備えている。
【0040】
エアポンプ10は、図2及び図3に示されるように、機械室2bに設置されており、エアホース12の一端側がエアポンプ10に接続され、エアホース12の他端側は、複数に分岐されてエア噴出ホース16に接続される。エア噴出ホース16には、後述のようにエア噴出孔が形成されており、栽培トレイ3の養液27内に配置される。この実施形態では、エアポンプ10は、水耕栽培装置1の駆動に連動して連続的に駆動されるが、他の実施形態として、間欠的に駆動するようにしてもよい。
【0041】
エアポンプ10で圧縮加圧された空気は、図3の黒の矢符Bで示されるように、エアホース12を介して各栽培トレイ3に供給され、更に、栽培トレイ3の養液27内に敷設されたエア噴出ホース16の噴出孔から噴出されて気泡が発生する。
【0042】
各栽培トレイ3は、図4に示すように、上面が開口された浅い矩形の容器であり、正面側の壁面には、養液27の液位を確認するための透明の液位確認窓21が設けられている。この液位確認窓21は、矩形であって、その一辺に沿うように目盛が付されている。栽培トレイ3内の養液27の液位は、透明な液位確認窓21を通じて開閉扉2cの外側から確認することができる。また、栽培トレイ3の底面の角部には、養液を排出するための排出口30が形成されると共に、排出パイプ31が接続されている。
【0043】
エアポンプ10から空気を供給するエアホース12の分岐した両端には、エア噴出ホース16の両端がそれぞれ接続され、分岐したエアホース12とエア噴出ホース16とは、環状に連続している。エア噴出ホース16には、多数のエア噴出孔16aが形成されており、このエア噴出ホース16が、栽培トレイ3の底部に蛇行状態で敷設される。このエア噴出ホース16にエアポンプ10からの空気が圧送されることによって、図5に示されるように、蛇行状態のエア噴出ホース16の噴出孔16aから空気が噴出されて養液27内で気泡32が発生する。
【0044】
この実施形態では、エアポンプ10とエアホース12とエア噴出ホース16とによって、各栽培トレイ3の養液27に空気を供給して噴出させる空気供給手段が構成される。
【0045】
栽培トレイ3には、エア噴出ホース16が敷設され、養液27が貯留され、上面開口には、図4に示されるように、2枚の定植プレート17が装着される。定植プレート17は、多数の円形の開口17cを有する定植部17aと、該定植部17aの前後方向の両端から下方に屈曲された屈曲部17bとを有している。屈曲部17bは、定植部17aを栽培トレイ3の底面から離間して平行に装着できるように屈曲しており、この状態で定植プレート17は、図6(a)に示すように、栽培トレイ3内に装着される。
【0046】
定植部17aの開口17cに、育苗キャップ18が挿入保持される。育苗キャップ18は、図4及び図6(b)に示すように、上端及び下端が開口された段付き筒形状であり、キャップ上端には、定植部17aの開口縁と係合する鍔18aが設けられている。育苗キャップ18は、鍔18aを開口縁に係合させて定植部17aの開口17cに装着可能となっている。育苗キャップ18には、植物26の根部を保持する吸水体20が収納されている。吸水体20は、養液27が浸透可能なスポンジ体もしくは多孔質体から構成されており、育成キャップ18の内部空間と同等の形状を有している。吸水体20は育成キャップ18の中途部に設けられた段部18bに当接して育成キャップ18内に保持されている。
【0047】
栽培トレイ3には、養液27が貯留されている。養液27は、図6(b)に示すように、定植部17aの下方に位置する育苗キャップ18内の吸水体20が浸される程度の液量で栽培トレイ3に貯留されている。
【0048】
以上の構成を有する水耕栽培装置1によると、透明ガラスからなる開閉扉2cを通してショーケース2内の栽培室2aの植物26の生育状況など観賞することができ、しかも、養液を循環させる循環方式の従来例のような循環ポンプや養液タンクが不要となるので、コストを削減できると共に、小型化を図ることができる。これによって、例えば、設置スペースが制限される店舗やオフィス等における利用の促進を図ることができる。
【0049】
また、この実施形態では、比較的小型のエアポンプ10は必要となるものの、循環方式の従来例のような多段に設置された栽培トレイの最上段まで養液を汲み上げて循環させる比較的大きな電力で駆動する循環ポンプが不要となるので、ランニングコストを低減することができる。
【0050】
更に、循環方式の従来例では、熟練した作業者でないと、循環流路を流れる全体の養液量を把握するのが難しく、養液タンクへの養液の補給量が多目になって、
栽培トレイの清掃、植物の収穫や新たな植え付けを行う場合などに、装置を停止させて循環ポンプを止めると、循環流路を流れる養液が養液タンクに戻って養液タンクから養液が溢れ出してしまうといった事態が生じたけれども、本発明では、栽培トレイの養液を循環させないので、養液タンクが不要であり、養液タンクから養液が溢れ出るといった事態が生じることがない。
【0051】
また、各栽培トレイの清掃や入れ替えなどを行う場合には、循環方式の従来例では、上下の各栽培トレイが循環パイプで連結されているので、装置を停止させて養液の循環を止める必要があったけれども、本発明では、栽培トレイ毎に養液を貯留しているので、各栽培トレイの清掃や入れ替えなどを行う場合には、装置を停止させる必要がない。
【0052】
したがって、本発明の水耕栽培装置を、店舗やオフィス等に設置した場合に、熟練した作業者でなくても容易に作業を行なうことが可能となる。
【0053】
また、各栽培トレイ3は、個別に養液を貯留しているので、養液の成分や濃度を栽培トレイ3毎に個別に調製することが可能となるので、栽培トレイ3毎に種類や生育段階などが異なる植物を栽培することができ、この場合には、各栽培トレイ3の光源7を、栽培する植物の種類や生育段階に応じて調整するのが好ましい。
【0054】
更に、この実施形態では、エアポンプ10によって圧縮された空気は、エアホース12を介して上方へ圧送され、栽培トレイ3毎に分岐されて養液27内のエア噴出ホース16に至り、その噴出孔16aから空気を噴出させて気泡を発生させるので、養液27の溶存酸素の量を高めることができる。また、養液27内で空気を噴出させて気泡を発生させることによって、養液27を攪拌できるので、養液27の温度が不均一となるのを回避することができる。また、エア噴出ホース16が蛇行設置されるため、栽培トレイ3内にむらなく気泡を発生させることができる。
【0055】
また、植物26の養分を多量に含む養液27に光源7からの光が照射されると、養液27中に藻類が発生しやすい。そのため栽培トレイ3同士を循環パイプ等で接続させて養液27を循環させる循環方式の従来例では、循環パイプが藻類によって目詰まりするといった不具合が生じるが、養液27を循環させない本発明は、かかる不具合もない。
【0056】
また、養液27は栽培トレイ3に貯留されて室温調整された栽培室2a内に設置されているので、養液27の液温は安定し、循環方式の従来例のように、外気温の影響を受けて変動することがない。
【0057】
上述の実施形態では、エア噴出孔16aが形成されたエア噴出ホース16からエアを噴出させたけれども、エア噴出ホースに限らず、例えば、連通小気孔が無数に空いた、いわゆる、エアストーンなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 水耕栽培装置
2 ショーケース
2a 栽培室
2b 機械室
2c 開閉扉
3 栽培トレイ
4 循環ファン
5 ヒータ
6 蒸発器
7 光源
10 エアポンプ
11 栽培棚
12 エアホース
16 エア噴出ホース
16a エア噴出孔
17 定植プレート
18 育苗キャップ
26 植物
27 養液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を水耕栽培する水耕栽培装置であって、
内部の栽培室を外部から目視可能なショーケースを備え、
前記栽培室には、水耕栽培用の養液をそれぞれ貯留する複数の栽培トレイが、上下方向に複数段に設置され、
前記各栽培トレイは、前記養液を他の栽培トレイとの間で流通させることなく、個別に貯留するものであり、
前記各栽培トレイの養液に、空気を供給して気泡を発生させる空気供給手段を設ける、
ことを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
前記空気供給手段は、
空気を圧送するエアポンプと、
前記エアポンプからの前記空気を前記栽培トレイに供給する供給管路と、
前記供給管路からの空気を前記栽培トレイの前記養液内に噴出させて気泡を発生させる噴出部とを備える、
請求項1に記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
前記供給管路が、弾力性を有する配管であり、
前記噴出部が、弾力性を有する配管に形成した噴出孔である、
請求項2に記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
前記栽培トレイは、貯留されている前記養液の液位を確認するための液位確認窓を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
前記栽培室と仕切られて、該栽培室の空気が流通する空調通路と、
前記空調通路に設置されて空気を加熱する加熱器と、
前記空調通路に設置されて空気を冷却する冷却器と、
前記栽培室からの空気を吸込んで前記空調通路を通して前記栽培室に吹き出す送風手段と、
前記栽培室内の温度が設定温度になるように、前記加熱器及び冷却器を制御する制御部とを備える、
請求項1ないし4のいずれかに記載の水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34402(P2013−34402A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171194(P2011−171194)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】