説明

水膨張性シーラント

【課題】低温地域での使用等、環境を配慮して配合された場合においても、保存安定性が良好である上、従来以上に硬化後の機械的強度及び止水性等の性能が優れた水膨張性シーラントを提供すること。
【解決手段】(A)水膨張性ウレタンプレポリマー、(B)非水膨張性ウレタンプレポリマー、(C)イソシアネート化合物、(D)ウレタン湿気硬化触媒、(E)充填剤を必須成分とすることを特徴とする水膨張性シーラント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水膨張性シーラントに関し、詳しくは、水膨張性ウレタンプレポリマー、非水膨張性ウレタンプレポリマー、イソシアネート化合物及びウレタン湿気硬化触媒を必須成分として含有してなり、使用した際の湿気硬化速度が速く、触媒未使用時の状態を長期間確保することが可能な、保存安定性に優れた水膨張性シーラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性ポリウレタンシーラントは、土木建築用として、止水材、接着剤、コーキング材等に広く使用されている。また、近年、目地やヒューム管、継手シール部の漏水の止水効果を向上させる目的で、水膨張性物質を使用する方法が普及しつつある。このような理由から、特に土木建築分野においては、十分な止水効果を得るために水膨張性を有すると共に、作業の容易性の点から、一液性のシーラントの出現が強く望まれていた。
【0003】
従来技術としては、水膨張性を有する一液性シーラントとして、ポリウレタンシーラントが開示されている(特許文献1)。このポリウレタンシーラントは種々の優れた特長を持ってはいるものの、実際の使用場面に適応させるために充填材を混合した場合、十分な保存安定性が得られないという欠点を有している。この原因としては、充填材中に含まれる水分が、ウレタンプレポリマーと反応し、系が増粘又は半硬化状になるためと推察される。
【0004】
保存安定性が改良されたポリウレタンシーラントとして、充填材、水膨張性ウレタンプレポリマー及び非水膨張性ウレタンプレポリマーを混合して獲られるポリウレタンシーラントが開示されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、この技術は従来要求されていた性能レベルでは十分であるものの、近年要求される従来以上の高度な性能、特に、低温地域での使用等、環境を配慮した配合物とした場合においても高度な性能が求められているが、必ずしもこのような要求を満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭49−30269号公報
【特許文献2】特公平4−71433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、上述した問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、水膨張性ウレタンプレポリマー、非水膨張性ウレタンプレポリマー、イソシアネート化合物、ウレタン湿気硬化触媒及び充填剤を併用することによって、10℃を下回る低温環境下でも常温環境下同等の硬化速度を確保し、特に、これらの原料をゲージ圧−500〜−760mmHgの減圧下において反応させて得られる水膨張性ウレタンシーラントが、触媒無添加配合と同等の貯蔵安定性を確保することができることを見出し、本発明に到達した。
従って、本発明の目的は、特に低温地域での使用等、環境を考慮して配合された場合においても、保存安定性が良好である上、近年の高度な性能要求に応え得るため、従来以上に、硬化後の機械的強度及び止水性等の性能が優れた水膨張性シーラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明は、(A)水膨張性ウレタンプレポリマー、(B)非水膨張性ウレタンプレポリマー、(C)イソシアネート化合物、(D)ウレタン湿気硬化触媒、(E)充填剤を必須成分とすることを特徴とする水膨張性シーラントである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水膨張性シーラントは、厳冬等の低温下での工事や作業の速度を常温下並みに確保することが可能であり、冬季低温地域での止水目的工事や、海外の乾燥地域における止水目的工事等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水膨張性ウレタンプレポリマーは、(A)水膨張性ウレタンプレポリマー、(B)非水膨張性ウレタンプレポリマー、(C)イソシアネート化合物、(D)ウレタン湿気硬化促進触媒、(E)充填剤を必須成分として含有する。
【0011】
前記(A)水膨張性ウレタンプレポリマーとして、下記一般式(I)で表わされる少なくとも1種のポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる、末端NCO基の含量が1.5〜10質量%の水膨張性ウレタンプレポリマーを使用することが好ましい。
R〔(OROH〕(I)
但し、式中のRは多価アルコール残基であり、(OR1nは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン鎖であって、該ポリオキシアルキレン鎖の50〜90質量%がオキシエチレン基であり、nはオキシアルキレン鎖の重合度を示す数であり、水酸基1個当りの分子量(以下「水酸基当量」という。)が500〜4000となる数である。pは2〜8の整数である。
【0012】
上記一般式(I)中のRは多価アルコールの残基であり、2〜6価のアルコール残基であることが好ましい。
脂肪族2価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3価アルコールの例としては、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールプロパン等、4価アルコールの例としては、エリトリット、ペンタエリトリット、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,3,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール等、5価アルコールの例としては、アドニット、アラビット、キシリット等、6価アルコールの例としては、ソルビット、マンニット、イジット等が挙げられる。
更に、前記一般式(I)中のRは、2〜4価のアルコールの残基であることが好ましく、特にプロピレングリコール、グリセリンの残基であることが好ましい。
【0013】
前記一般式(I)で表わされるポリエーテルポリオールは、公知の方法により前記多価アルコールに、炭素数3〜4のアルキレンオキシドとエチレンオキシドとを、所望の分子量となり、且つオキシエチレン基が所望の含有量となるように付加反応させることによって製造することができる。
炭素数3〜4のアルキレンオキシドとしては、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられるが、特にプロピレンオキシドを使用することが好ましい。
【0014】
前記一般式(I)のポリエーテルポリオールにおいて、オキシエチレン基の量がポリオキシアルキレン鎖の90質量%を超えると、水膨潤性プレポリマー(A)が、常温で結晶化するため作業性が悪くなり、50質量%未満であると、得られる水膨潤性シーラントの保存安定性が低下する。
前記ポリオキシアルキレン鎖は、ランダム状でもブロック状でもよいが、ブロック状である場合はオキシエチレン基の量が70〜90質量%であることが好ましい。本発明においては、前記ポリオキシアルキレン鎖がランダム状のポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0015】
前記一般式(I)で表わされるポリエーテルポリオールは、分子量が1000〜10000であることが好ましく、特に3官能以上の多価アルコールをベースとして得られる、3官能以上のポリエーテルである場合は、分子量が2000〜10000であることが好ましい。
【0016】
前記一般式(I)で表わされるポリエーテルポリオールとしては、下記一般式下記一般式(I−1)で表わされる2官能ポリエーテルポリオール又は(I−2)で表わされる3官能ポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0017】
〔(OR1anOH〕2 (I−1)
但し、式中のRは2価アルコールの残基であり、(OR1aはオキシプロピレン基とオキシエチレン基とを有するポリオキシアルキレン鎖である。
前記ポリオキシアルキレン鎖に含有されるオキシエチレンの量、及び、前記ポリオキシアルキレン鎖の重合度nは、前述した通りである。
【0018】
前記2官能ポリエーテルポリオールの好ましい例としては、例えば、プロピレングリコールに常法によりエチレンオキシドとプロピレンオキシドとをランダム又はブロック状に付加させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0019】
〔(OR1bOH〕 (I−2)
但し、式中のRは3価アルコール残基であり、(OR1bnはオキシプロピレン基及びオキシエチレン基を有するポリオキシアルキレン鎖であって、前記ポリオキシアルキレン鎖に含有されるオキシエチレンの量、及び、前記ポリオキシアルキレン鎖の重合度nは、前述した通りである。
【0020】
前記3官能ポリエーテルポリオールの好ましい例としては、常法によりグリセリンにエチレンオキシドとプロピレンオキシドとをランダム又はブロック状に付加させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0021】
本発明に使用する(A)水膨張性ウレタンプレポリマーとしては、プロピレングリコール等の二価アルコールをベースとして得られる、前記一般式(I−1)で表わされる2官能ポリエーテルポリオールと、グリセリン等の三価アルコールをベースとして得られる、前記一般式(I−2)で表わされる3官能ポリエーテルポリオールとの混合物を、ポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアネート基含有プレポリマーを使用することが好ましい。
この場合、2官能ポリエーテルポリオールと3官能ポリエーテルポリオールとは、質量比を9:1〜5:5として混合することが特に好ましい。
【0022】
(A)水膨張性ウレタンプレポリマーの合成に使用されるポリイソシアネートとしては、下記一般式で表わされるジイソシアネートが挙げられる。
【0023】

但し、式中の○はベンゼン環又はナフタレン環、−NCOは核置換のイソシアネート基、Zは核置換のハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル基又はアルコキシル基であり、nは0、1又は2である。
上記ジイソシアネートの例としては、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−イソプロピルベンゾール−2,4−ジイソシアネートが挙げられる。
【0024】

但し、式中の○はベンゼン環又はナフタレン環、−(CH2mNCOは核置換のアルキレンイソシアネート基、Zは核置換のハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル又はアルコキシル基、mは1又は2であり、nは1又は2である。
上記ジイソシアネートの例としては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,2−ジメチルベンゾール、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゾールが挙げられる。
【0025】

但し、式中のAは−CH2−又は−C(CH3)2−等の炭素数3以上のアルキレン基、Oはベンゼン環又はナフタレン環、Zは核置換のハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル又はアルコキシ基であり、nは0、1又は2である。
上記ジイソシアネートの例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジクロルジフェニルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネートが挙げられる。
【0026】

但し、式中のZは核置換のハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル基若しくはアルコキシ基、mは0又は1であり、nは0、1又は2である。
上記ジイソシアネートの例としては、ビフェニル−2,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネートが挙げられる。
【0027】
(A)水膨張性ウレタンプレポリマーの合成に使用される、その他のポリイソシアネートとしては、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート;上記イソシアネートに含まれる芳香環を水添して得られるジイソシアネート(例:ジシクロヘキサン−4,4’−ジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,2−ジメチルシクロヘキサン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルシクロヘキサン);2モルのジイソシアネートと1モルの水の反応によって得られる置換尿素基を含むジイソシアネート(例:1モルの水と2モルの2,4−トルイレンジイソシアネートとの反応によって得られる尿素ジイソシアネート)、芳香族ジイソシアネートを公知の方法で2分子重合して得られるウレトジオンジイソシアネート;脂肪族ジイソシアネート(例:プロパン−1,2−ジイソシアネート、2,3−ジメチルブタン−2,3−ジイソシアネート、2−メチルペンタン−2,4−ジイソシアネート、オクタン−3,6−ジイソシアネート、3,3−ジニトロペンタン−1,5−ジイソシアネート、オクタン−1,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート)等が挙げられる。
【0028】
前記(B)非水膨張性ウレタンプレポリマーとしては、下記一般式(II)で表わされるポリエーテルポリオールの少なくとも一種をポリイソシアネートと反応させて得られる、末端のNCO基の含量が1.0〜5質量%の非水膨張性ウレタンプレポリマーであることが好ましい。
2〔(OROH〕 (II)
但し、式中のR2は多価アルコール残基、(ORは炭素数3〜4のアルキレン基R3を有するポリオキシアルキレン鎖、オキシアルキレン鎖の重合度mは、水酸基当量が500〜4000となる数であり、qは2〜8の整数である。
【0029】
上記一般式(II)中の多価アルコールの残基R2は、前記一般式(I)の説明の中で述べた、多価アルコールの残基R及と同様である。
【0030】
また、上記一般式(II)で表わされるポリエーテルポリオールは、多価アルコールに、常法により炭素数3〜4のアルキレンオキシドを所望の分子量となるように付加反応させることにより製造することができる。炭素数3〜4のアルキレンオキシドとしては、例えば、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられるが、特にプロピレンオキシドを使用することが好ましい。
【0031】
本発明においては、前記一般式(II)で表わされるポリエーテルポリオールは、分子量が1000〜9000のものを使用することが好ましく、特に、3官能以上のポリエーテルポリオールを使用する場合、分子量が2000〜9000のものを使用することが好ましい。
【0032】
本発明に使用する(B)非水膨張性ウレタンプレポリマーとしては、2官能ポリエーテルポリオール及び3官能ポリエーテルポリオールの混合物をポリイソシアネートと反応させて得られる、末端のNCO基の含量が1.0〜5質量%のウレタンプレポリマーを使用することが好ましい。
この場合における、2官能ポリエーテルポリオールに対する3官能ポリエーテルポリオールの混合割合(質量比)は、9:1〜1:9とすることが好ましい。
前記2官能ポリエーテルポリオールとしては、例えば、プロピレングリコール等の2価アルコールをベースとして得られるポリエーテルポリオールが挙げられ、3官能ポリエーテルポリオールとしては、例えば、グリセリン等の3価アルコールをベースとして得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0033】
また、本発明に使用する(B)非水膨張性ウレタンプレポリマーを製造するのに用いられるポリイソシアネートとしては、前記水膨潤性ウレタンプレポリマー(A)の説明で述べたポリイソシアネートをすべて使用することができる。それらの中で特に好ましいものは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びこれらの混合物である。
【0034】
本発明に使用する(B)非水膨張性ウレタンプレポリマーは、通常のポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応と同様にして、例えば90℃で3時間加熱反応させて得ることができる。
【0035】
本発明におけるイソシアネート(C)としては、例えば、下記一般式(III)で示表わされるイソシアネート化合物を使用することが好ましい。

但し、式中のtは1〜5の整数、Rは各々独立して炭素数1〜8の炭化水素基であって、全Rの炭素数の合計は1〜8であり、kは0又は1、Gは−SO−、−CO−、−OCO−及び−COO−からなる群から選択される基である。
本発明におけるイソシアネート(C)としては、k=0、Gは−SO2−であるイソシアネートを使用することが好ましく、特に、4−メチルベンゼンスルホニルイソシアネートを使用することが好ましい。
【0036】
本発明に使用する(D)ウレタン湿気硬化触媒としては、例えば、トリメチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジモルフォリノジエチルエーテルなどのアミン系触媒;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジヘキシル錫ジアセテート、ジ−2−エチルヘキシル錫酸化物、ジオクチル錫二酸化物、第一錫オクトエート、第一錫オレート、カリウムアセテート、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどの金属触媒等が挙げられる。
これらの中でも、優れた促進作用を有するため、ジモルフォリノジエチルエーテルを使用することが特に好ましい。
【0037】
更に、製造時の分散性向上や局部的な反応によるダマ化を防止することができるという観点から、ジモルフォリノジエチルエーテルを予めイソパラフィン系炭化水素やエーテルエステル系溶剤等に溶解してから使用することが好ましい。
【0038】
本発明で使用される(E)充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、バーライト、酸化ケイソ、滑石、ひる石、けい灰石、ガラス、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化カルシウム等が挙げられる。
これらの充填剤を配合する事によって、適度な粘度設定やチクソ性の確保、シーラントの着色をすることが可能である。
【0039】
本発明の水膨張性シーラントは上記の必須成分の構成により使用できるが、これに必要に応じて各種の可塑剤、溶剤、揺変剤、歴青質物等の添加物を配合して使用することもできる。
【0040】
可塑剤としては、ジオクチルフタレート等が挙げられ、揺変剤の例としては、ベントナイト、金属石ケン、水添ひまし油、アスベスト粉末等が挙げられる。更に歴青質物の例としては、例えば、コールタール、木タール、オイルガスタール、石油アスファルト、ピッチ類等が挙げられる。
【0041】
溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;イソ−ブタノール、n−ブタノール、イソ−プロパノール、n−プロパノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0042】
本発明の水膨張性シーラントにおける各成分の配合量は、非水膨張性ウレタンプレポリマー(B)100部に対し、充填材(E)が10〜300部、好ましくは50〜200部であり、水膨張性ウレタンプレポリマー(A)が20〜300部、好ましくは30〜200部である。
イソシアネート化合物(C)の配合量は、充填材100質量部に対して0.5〜15質量部、好ましくは1〜7質量部である。ウレタン湿気硬化触媒(D)の配合量は、水膨張性ウレタンプレポリマー(A)及び非水膨張性ウレタンプレポリマー(B)の合計量100質量部に対して0.01〜1質量部であり、更に保存安定性を向上させるためには、0.05〜0.3質量部とすることが好ましい。
【0043】
本発明の水膨張性シーラントの製造は、前記成分(A)〜(E)及び必要に応じて各種の充填材、可塑剤、揺変剤、歴青質物を混合し、常法により反応させて得ることができるが、少なくとも、前記成分(A)〜(E)を、ゲージ圧−500〜−760mmHgの減圧下で反応させる工程を含む製造方法によって製造することが好ましい。こうすることによって、保存安定性が向上し、触媒未使用時の状態を更に長期間確保することが可能となる。
【0044】
更に、特願2011−035404に記載された水膨張性シーラントの製造方法のように、前記反応が、開始から終了まで全てゲージ圧−500〜−760mmHgの減圧下で行われることが好ましい。こうすることによって、保存安定性が更に向上する。
また、反応器内の減圧は、原料を投入する前に予め行なってもよいが、原料を反応器内に投入しながら、又は原料を反応器内に投入した直後に行なってもよい。
【0045】
本発明の水膨張性シーラントの製造において、前記成分(A)〜(E)を混合する手順は特に制限されるものではないが、工程数がより少ないことが好ましい。
また、前記原料の反応を撹拌下で行なってもよい。撹拌の方法及び撹拌する時間は、特に限定されるものでないが、撹拌時間は1〜120分であることが好ましい。
【0046】
本発明の水膨張性シーラントは、例えば波板、スレート、プラスチック板、アルミニウム板、トタン等の各種建築或は構造物の各接合部、コンクリート、陶管、ガラス等の継目、道路や床被覆の継目、自動車、船舶、航空機等の乗物の接合部や継目、パイプやプレハブ建築物の各接合部等の目地材、接着剤、コーキング材等として使用することができる。
【0047】
また、本発明の水膨張性シーラントの使用方法としては、例えば目的とする材料の間隔、接合部に上記シーラントを押し出しガンにより注入して硬化させる注入法、材料に本シーラントを刷毛塗りして硬化させる刷毛塗法、或いは予め硬化させたシーラントをそのまま又は加工したものを取り付けて間隔を充填する取り付け法等がある。
【0048】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、例中の部は質量部である。
【0049】
[水膨張性ウレタンプレポリマーの調製]
[調製例A−1]
グリセリンにプロピレンキシドとエチレンオキシドとをランダムに付加して得られた分子量7000、ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン基の含有量が80質量%の3官能ポリエーテルポリオール20部と、プロピレングリコールにプロピレンオキシドとエチレンオキシドをランダムに付加させて得られた、分子量5000、ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン基の含有量が70質量%の2官能ポリエーテルポリオール80部とを混合し、この混合物にトリレンジイソシアネート8.5部を加えて常法により90℃で3時間反応させ、末端NCOの含量が1.8質量%の水膨張性ウレタンプレポリマー(A−1)を得た。
【0050】
[調製例A−2]
グリセリンにプロピレンキシドとエチレンオキシドとをランダムに付加して得られた分子量5000、ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン基の含有量が70質量%の3官能ポリエーテルポリオール20部と、プロピレングリコールにプロピレンオキシドとエチレンオキシドをランダムに付加させて得られた、分子量5000、ポリオキシアルキレン鎖中のオキシエチレン基の含有量が70質量%の2官能ポリエーテルポリオール80部とを混合し、この混合物にトリレンジイソシアネート8.5部を加えて常法により90℃で3時間反応させ、末端NCOの含量が2.0質量%の水膨張性ウレタンプレポリマー(A−2)を得た。
【0051】
[非水膨張性ウレタンプレポリマーの調製例]
[調製例B−1]
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート313部と、グリセリンにプロピレンオキシドを付加して得られた分子量4500のポリエーテルポリオール1500部とを混合し、常法により90℃で3時間反応させ、末端NCOの含量が3.5質量%の非水膨張性ウレタンプレポリマー(B−1)を得た。
【0052】
[調製例B−2]
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート313部と、分子量4500のポリプロピレングリコール2250部とを混合し、常法により90℃で3時間反応させ、末端NCOの含量が2.5%の非水膨張性ウレタンプレポリマー(B−2)を得た。
【0053】
イソシアネート化合物(C)として下記C−1、ウレタン湿気効果触媒例(D)として下記D−1、充填剤(E)として下記E−1〜E−4、及び溶剤(F)として下記F−1、F−2をそれぞれ用いた。
C−1:4−メチルベンゼンスルホニルイソシアネート
D−1:ジモルフォリノジエチルエーテル
E−1:炭酸カルシウム
E−2:酸化チタン
E−3:酸化ケイ素
E−4:カーボンブラック
F−1:イソパラフィン系炭化水素溶剤
F−2:エーテルエステル系溶剤
【0054】
[実施例1〜4]
B−1又はB−2、E−3を混合槽に投入し、常圧で20分間混合した。次いで、E−1、E−2、E−4を投入し、常圧で5分間混合した後、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧して更に20分間混合した。その後A−1又はA−2、C−1を投入し、常圧で5分混した後、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧して更に20分間混合した。その後、予め調製されたD−1、F−1、F−2の混合液を投入し、常圧で5分間混合した後、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧して、更に20分間混合し、水膨張性ウレタンシーラントを得た。
【0055】
[実施例5〜16]
B−1又はB−2、E−3を混合槽に投入し、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧した後、20分間混合した。次いで、E−1、E−2、E−4を投入した後、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧し、20分間混合した。更に、A−1又はA−2、C−1を投入した後、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧し、20分間混合した。その後、予め調製されたD−1、F−1、F−2の混合液を投入し、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧して、20分間混合し、水膨張性ウレタンシーラントを得た。
【0056】
[比較例1〜4]
B−1又はB−2、E−3を混合槽に投入し、常圧で20分間混合した。次いで、E−1、E−2、E−4を投入し、常圧で5分間混合した後、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧して更に20分間混合した。その後、A−1又はA−2、C−1、E−1、E−2を投入し、常圧で5分間混合した後、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧して更に20分間混合し、水膨張性ウレタンシーラントを得た。
【0057】
[比較例5〜8)
B−1又はB−2、E−3を混合槽に投入し、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧した後、20分間混合した。次いで、E−1、E−2、E−4を投入した後、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧し、20分間混合した。更に、A−1又はA−2、C−1、F−1、F−2を投入した後、混合槽内をゲージ圧−760mmHgに減圧して20分間混合し、水膨張性ウレタンシーラントを得た。
【0058】
得られた各シーラントについて下記のようにして硬化特性、促進保存安定性、硬化10日後の物性及び止水性を測定した。得られた結果を表1〜3に示す。
【0059】
[硬化速度]
各シーラントを断面10×20mmのひも状に成型したサンプルを、5℃、湿度60%RH雰囲気、及び、23℃、湿度60%RH雰囲気の2ケース内でそれぞれ保存した。1日ごとにサンプルを切断して断面の状態を確認し、断面の中心まで硬化した日数により効果速度を評価した。
【0060】
[促進保存安定性]
各シーラントをN2 封止した後、50℃の恒温槽に投入し、粘度が初期値の1.5倍になった時点の経過日数を測定した。
【0061】
[硬化10日後の物性]
各シーラントをガラス板上に2mm厚に塗布して室温にて10日間放置し、ショア硬度、抗張力(Kgf/cm)を常法により測定した。
また、硬化膜を2cm×5cmの小片に切断して蒸留水に浸漬し、経時的に質量増加量を測定して、最大質量増加時を基に、下記式により水膨張率(%)を算出した。
〔(浸漬後の最大質量−浸漬前の質量)×100/浸漬前の質量〕
【0062】
[止水性]
水注入口と水圧計を備え、上下2つに分割できる鉄製容器の接合部に各実施例及び比較例で得られたシーラントを塗布し、2日間放置して硬化させた後、この容器に水を注入し、水圧3kg/cm2に保ち、僅かでも接合部から漏水するまでの期間を測定した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
表1〜3から明らかなように、本発明の水膨張性シーラントは、効果速度が速く、特に低温化における効果速度が速いことが確認された。
また、実施例5〜16の結果から、反応が開始から終了まで全て減圧下で行われることにより、保存安定性が向上することが確認され、実施例5〜12の結果から、触媒の配合量を更に限定することにより、更に保存安定性が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の水膨張性シーラントは、保存安定性に優れると共に低温下における硬化性に優れ、各種建築、構造物の各接合部、コンクリート、陶管、ガラス等の継目、道路や床被覆の継目、乗物の接合部や継目、パイプやプレハブ建築物の各接合部等に用いる目地材、接着剤、コーキング材として有用であり、特に低温地域での使用に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水膨張性ウレタンプレポリマー、(B)非水膨張性ウレタンプレポリマー、(C)イソシアネート化合物、(D)ウレタン湿気硬化促進触媒、(E)充填剤を必須成分として含有する水膨張性シーラント。
【請求項2】
前記(A)水膨張性ウレタンプレポリマーが、下記一般式(I)で表わされるポリエーテルポリオールの少なくとも1種を、ポリイソシアネートと反応させて得られる、末端のNCO基の含量が1.5〜10質量%の水膨張性ウレタンプレポリマーである、請求項1に記載された水膨張性ウレタンシーラント;
R〔(OR1nOH〕p (I)
但し、式中のRは2〜6価の脂肪族アルコール残基、(OR1nは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン鎖であって、上記ポリオキシアルキレン鎖に含有されるオキシエチレンの量が50〜90質量%であり、nは水酸基当量が500〜4000になる数であり、pは2〜8の整数である。
【請求項3】
前記(B)非水膨張性ウレタンプレポリマーが、下記一般式(II)で表わされるポリエーテルポリオールの少なくとも一種を、ポリイソシアネートと反応させて得られる、末端のNCO基の含量が1.5〜5質量%の非水膨張性ウレタンプレポリマーである、請求項1又は2に記載された水膨張性ウレタンシーラント;
〔(OROH〕 (II)
但し、式中のR2は多価アルコール残基、(ORは炭素数3〜4のアルキレン基を有するポリオキシアルキレン鎖、mは水酸基当量が500〜4000となる数であり、qは2〜8の整数である。
【請求項4】
前記(C)イソシアネート化合物が下記一般式(III)で表されるイソシアネート化合物である、請求項1〜3の何れかに記載された水膨張性ウレタンシーラント。

但し、式中のtは1〜5の整数、Rは各々独立に炭素数1〜8の炭化水素基であって、1分子中のRの炭素数の合計は1〜8であり、kは0又は1、Gは−SO2 −、−CO−、−OCO−及び−COO−からなる群から選択される基である。
【請求項5】
前記(D)ウレタン湿気硬化促進触媒がジモルフォリノジエチルエーテルである、請求項1〜4の何れかに記載された水膨張性シーラント。
【請求項6】
前記(D)ウレタン湿気硬化促進触媒の使用量が、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対し、0.1〜0.3質量部であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載された水膨張性シーラント。
【請求項7】
更に、溶剤、又は可塑剤を含有してなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載された水膨張性シーラント。
【請求項8】
少なくとも、前記成分(A)〜(E)を、ゲージ圧−500〜−760mmHgの減圧下で反応させる工程を含む製造方法によって得られる、請求項1〜7の何れかに記載された水膨張性シーラント。
【請求項9】
前記製造方法において、前記成分(A)〜(E)の反応が、開始から終了まで全てゲージ圧−500〜−760mmHgの減圧下で行なわれる、請求項8に記載された水膨張性シーラント。

【公開番号】特開2012−180446(P2012−180446A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43946(P2011−43946)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】