説明

水自給式タービンシステム

【課題】水自給式タービンシステムおよびそのシステムを運転する方法を提供する。
【解決手段】上流圧縮機14と下流タービン部分16との間に配設されている燃焼室12を含む燃焼タービン10と、第1の液体乾燥剤22を燃焼タービン10により生成される水分に富んだ排気流18と接触させ、水分に富んだ液体乾燥剤24および水分が枯渇した排気流19を生成する水回収ユニット20と、水分に富んだ液体乾燥剤24を高温圧縮空気32と接触させ、水分に富んだ液体乾燥剤24から水分を分離し、水分に富んだ圧縮空気34をもたらし、第1の液体乾燥剤22を再生する乾燥剤再生ユニット30とを含み、燃焼タービン10は、高温圧縮空気32を乾燥剤再生ユニット30に供給しかつ乾燥剤再生ユニット30から水分に富んだ圧縮空気34を受け入れるように構成されており、乾燥剤再生ユニット30は、第1の液体乾燥剤22を水回収ユニット20に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、水自給式(water self−sufficient)タービンシステムおよびそのようなシステムを運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼タービンを使用して燃料を機械エネルギーに変換する発電システムでは、タービンの出力を高めるために、1つまたは複数の位置で水蒸気を燃焼タービン内に同時注入することが有利であると、何度も証明されてきた。このように、水蒸気は、燃焼タービン内で使用される周囲空気に加えられることが多いか、または1つもしくは複数の圧縮機段内に注入されるか、または燃焼室内に直接注入されるか、またはいくらかはそのような燃焼タービン構成要素の2つ以上の中に注入される。そのような状況下、燃焼タービンは、使用される水のいくらかを回収するために措置が講じられない限り、相当量の水を消費する可能性がある。例えば、公称出力定格が100メガワットの発電所が、出力増大およびNOx制御のために燃焼タービンに供給される蒸気の状態で、毎分100ガロン(378.5リットル)より多くの水を消費すると推定される。
【0003】
プロセス水を回収し再利用する産業プロセスおよび都市プロセスに、関心が高まっている。例えば、高温タービン排気から水を回収する構想を開示している米国特許第6804964号を参照されたい。水が不足している地域では、そのようなプロセスの利点が際立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7096659(B1)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでに成された素晴らしい技術成果にも関わらず、限られた水源がますます増加する人的活動に使用されているので、さらなる向上の必要がある。本発明は、産業プロセス水の回収および再利用に有用な、さらなる向上および洞察をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は、(a)上流圧縮機と下流タービン部分との間に配設されている燃焼室を含む燃焼タービンと、(b)第1の液体乾燥剤を燃焼タービンにより生成される水分に富んだ排気流と接触させ、かつ水分に富んだ液体乾燥剤および水分が枯渇した排気流を生成するように構成されている水回収ユニットと、(c)水分に富んだ液体乾燥剤を高温圧縮空気と接触させて、水分に富んだ液体乾燥剤から水分を分離し、水分に富んだ圧縮空気をもたらし、第1の液体乾燥剤を再生するように構成されている乾燥剤再生ユニットとを含み、燃焼タービンは、高温圧縮空気を乾燥剤再生ユニットに供給しかつ乾燥剤再生ユニットから水分に富んだ圧縮空気を受け入れるように構成されており、乾燥剤再生ユニットは、第1の液体乾燥剤を水回収ユニットに供給するように構成されている、水自給式タービンシステムを提供する。
【0007】
代替の実施形態では、本発明は、(a)上流圧縮機、燃焼室および下流タービン部分を含む燃焼タービン内に空気および燃料を導入して、水分に富んだ排気流および高温圧縮空気スリップストリームを生成するステップと、(b)水回収ユニット内の水分に富んだ排気流を第1の液体乾燥剤と接触させて、水分が枯渇した排気流および水分に富んだ液体乾燥剤を生成するステップと、(c)乾燥剤再生ユニット内の水分に富んだ液体乾燥剤を高温圧縮空気スリップストリームと接触させて、第1の液体乾燥剤および水分に富んだ圧縮空気流を再生するステップと、(d)水分に富んだ圧縮空気の少なくとも一部を燃焼タービン内に導入するステップとを含む、水自給式タービンシステムを運転する方法を提供する。
【0008】
さらに別の実施形態では、本発明は、(a)上流圧縮機、燃焼室および下流タービン部分を含む燃焼タービン内に空気および天然ガスを導入して、水分に富んだ排気流および高温圧縮空気スリップストリームを生成するステップと、(b)水回収ユニット内の、初期温度が約70から約110℃の範囲内である水分に富んだ排気流を、初期温度が約50から約90℃の範囲内である第1の液体乾燥剤と接触させて、水分が枯渇した排気流および水分に富んだ無機液体乾燥剤を生成するステップと、(c)乾燥剤再生ユニット内の、初期温度が約70から約180℃の範囲内である水分に富んだ無機液体乾燥剤を、初期温度が約350から約500℃の範囲内である高温圧縮空気スリップストリームと接触させて、第1の無機液体乾燥剤および水分に富んだ圧縮空気流を再生するステップと、(d)水分に富んだ圧縮空気の少なくとも一部を燃焼タービン内に導入するステップとを含む、水自給式タービンシステムを運転する方法を提供する。
【0009】
本発明の他の実施形態、態様、特徴および利点が、以下の詳細な説明、添付図面および添付の特許請求の範囲から、当業者に明らかになるであろう。
【0010】
図面を通じて同様の文字が同様の部分を示す添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、本発明のこれらのかつ他の特徴、態様および利点が、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の1つまたは複数の実施形態によるタービンシステムの概略図である。
【図2】本発明の1つまたは複数の実施形態によるタービンシステムの概略図である。
【図3】本発明の1つまたは複数の実施形態によるタービンシステムの概略図である。
【図4】本発明の1つまたは複数の実施形態によるタービンシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の明細書および後続する特許請求の範囲では、次の意味を有すると定義されるものとする複数の用語に言及するであろう。
【0013】
単数形の「a」、「an」および「the」は、他に明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0014】
「適宜の」または「適宜(に)」は、後に記載される事象または状況が起こる可能性があるかまたは起こる可能性がないこと、該記載は、その事象が起こる場合およびその事象が起こらない場合を含むこと、を意味する。
【0015】
本明細書に用いられている用語「溶媒」は、単一の溶媒または溶媒の混合物を指す可能性がある。
【0016】
明細書および特許請求の範囲を通じて、本明細書に用いられている概略を表す言語(approximating language)は、関連する基本的な機能に変化をもたらすことなく自由に変えることができると考えられる任意の量的表現を修飾するために用いられている可能性がある。したがって、「約」などのある単数または複数の用語により修飾される値は、特定の厳密な値に限定されるということではない。場合によっては、概略を表す言語は、値を測定する機器の精度に相応する可能性がある。
【0017】
以下に詳細に検討されている通り、本発明は、水自給式タービンシステムを提供する。そのような水自給式タービンシステムは、システムに動力を供給するのに使用される燃料から生成される水が回収され再利用されるという点で、「自給式」と考えられる。当業者には当然のことながら、この場合は熱と燃焼生成物の水と二酸化炭素とを生成する燃料燃焼反応である化学反応の、生成物の回収および再利用に関する全ての構想は、損失を生じ易く、そのようなシステムは、通常、特定の生成物の回収に対して、100パーセント未満の効率性で動作する。本発明は、システムに動力を供給するのに使用される燃料の燃焼から生成される水の少なくとも一部を同システム内で回収し再利用する水自給式タービンシステムを提供する。一実施形態では、水自給式タービンシステムは、システムに動力を供給するのに使用される燃料の燃焼から生成される水の少なくとも45パーセントを回収し再利用する。代替の実施形態では、水自給式タービンシステムは、システムに動力を供給するのに使用される燃料の燃焼から生成される水の少なくとも70パーセントを回収し再利用する。さらに別の実施形態では、水自給式タービンシステムは、システムに動力を供給するのに使用される燃料の燃焼から生成される水の少なくとも90パーセントを回収し再利用する。そのような自給性能は、タービンシステムが水源不足の地域に配置されている場合に、特に妥当性がある可能性がある。上記の通り、燃焼タービンの効率性を高めるために、燃焼タービン内の様々な位置で水を導入することが有利であると分かっている。
【0018】
水自給式タービンシステムは、燃料(通常は天然ガス)および高温圧縮酸化剤ガス(通常は高温圧縮空気)が点火されかつ熱と主に水および二酸化炭素である燃焼生成物とに変換される燃焼室を含む燃焼タービンを含む。燃焼室は、通常、高温圧縮酸化剤ガスを生成するのに使用される上流圧縮機と、高温燃焼生成物の運動エネルギーの少なくとも一部を機械エネルギーに変換する下流タービン部分との間に配設されている。たった今記載したタイプの燃焼タービンは商品であり、発電に広く使用されている。
【0019】
燃焼タービンは、本明細書に開示されている通り、再利用のために水がそこから回収され得る、比較的高温の水分に富んだ排気流を生成する。水分に富んだ排気流は、直接にまたは間接的にどちらかで水回収ユニットに送られ、該ユニット内では、水分に富んだ排気流が、第1の液体乾燥剤に接触する。一実施形態では、この接触は、水分に富んだ排気流と第1の液体乾燥剤との向流を特徴とする。水回収ユニット内での水分に富んだ排気流と第1の液体乾燥剤との間の接触は、第1の液体乾燥剤によって水分に富んだ排気流から水分が吸収されるので、水分に富んだ液体乾燥剤および水分が枯渇した排気流の形成をもたらす。本明細書に開示されている通り、水分に富んだ液体乾燥剤は保持され、燃焼タービンの動作のための水源としての機能を果たす。水分が枯渇した排気流は、所望に応じて、環境中に放出されてもよいか、または貯蔵されてもよい。
【0020】
通常、水分に富んだ排気流は、水分に富んだ排気流から第1の液体乾燥剤への水分の効率的な移動を達成するには高過ぎる温度で、燃焼タービンから出現する。例えば、いくつかの例では、水分に富んだ排気流の温度は、一般的な条件下で、第1の液体乾燥剤の沸点より高い可能性があり、したがって、水分に富んだ排気流に含まれている熱の少なくともいくらかが、その水回収ユニット内への導入前に除去される。例えば、燃焼タービンから出現する水分に富んだ排気流は、水分に富んだ排気流から熱を除去しかつ除去された熱を使用して、例えばターボ機械を駆動するなど様々な目的に使用されてもよい蒸気を生成する熱回収蒸気生成ユニットを通過させられてもよい。
【0021】
一実施形態では、第1の液体乾燥剤は、無機液体乾燥剤、例えば水中の1つまたは複数の無機塩の水溶液、であり、本明細書において第1の無機液体乾燥剤と呼ばれることがある。代替の実施形態では、第1の液体乾燥剤は、1つまたは複数の無機塩、水および1つまたは複数の有機化合物の溶液を含む無機−有機液体混合乾燥剤(hybrid inorganic−organic liquid desiccant)である。あるいは、第1の液体乾燥剤は、有機乾燥剤、例えば、適宜1つまたは複数の吸湿性有機化合物を含有する、親水性有機溶媒または溶媒の混合物、であってもよい。
【0022】
適切な無機液体乾燥剤には、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ金属亜硝酸塩、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩、アルカリ土類金属亜硝酸塩、および遷移金属ハロゲン化物の比較的濃厚な溶液が含まれる。したがって、一実施形態では、本発明の方法に従って使用される第1の液体乾燥剤は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ金属亜硝酸塩、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩、アルカリ土類金属亜硝酸塩、および遷移金属ハロゲン化物からなる群から選択される1つまたは複数の塩を含む第1の無機液体乾燥剤である。一実施形態では、第1の無機液体乾燥剤には、水中の臭化リチウムと塩化リチウムとの混合物が含まれる。代替の実施形態では、第1の無機液体乾燥剤には塩化カルシウムが含まれる。種々の実施形態では、第1の無機液体乾燥剤は、結晶化抑制剤の添加により、1つまたは複数の化合物の結晶化に対して安定化される。そのような抑制剤を使用する、本明細書において使用されている無機液体乾燥剤などの、システムにおける結晶化抑制の主要物および技術は、当業者には既知である。
【0023】
当業者には当然のことながら、用語「比較的濃厚な」は、第1の液体乾燥剤が水回収ユニット内に導入される直前の、一般的な条件下での溶媒中の溶質の飽和限界の約50パーセントの範囲内の、溶媒(一実施形態では、水)中の溶質(一実施形態では、無機塩)の濃度を指す。したがって、一実施形態では、第1の液体乾燥剤は、溶媒中に溶解されている溶質を含み、溶媒中の溶質の濃度は、溶媒中の溶質の飽和限界の約50パーセントである。代替の実施形態では、第1の液体乾燥剤は、溶媒中に溶解されている溶質を含み、溶媒中の溶質の濃度は、溶媒中の溶質の飽和限界の約70パーセントである。さらに別の実施形態では、第1の液体乾燥剤は、溶媒中に溶解されている溶質を含み、溶媒中の溶質の濃度は、溶媒中の溶質の飽和限界の約90パーセントである。さらに別の実施形態では、第1の液体乾燥剤は、溶媒中に溶解されている溶質を含み、溶媒中の溶質の濃度は、溶媒中の溶質の飽和限界の約98パーセントである。
【0024】
適切な有機液体乾燥剤には、エチレングリコール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、およびそれらの混合物などの吸湿性有機液体が含まれる。一実施形態では、第1の液体乾燥剤は、C1〜C5アルコールを含む有機乾燥剤である。C1〜C5アルコールは、メタノール(C1)、エタノール(C2)、プロパノール(C3)、イソプロパノール(C3)、ブタノール(C4)、イソブタノール(C4)、ペンタノール(C5)およびイソペンタノール(C5)を例とする。一実施形態では、第1の液体乾燥剤は、ジメチルスルホキシドなどの吸湿性溶媒中の1つまたは複数の吸湿性有機アンモニウム塩を含む有機乾燥剤である。代替の実施形態では、第1の液体乾燥剤は、メタキシレンなどの非吸湿性溶媒中の1つまたは複数の吸湿性有機アンモニウム塩を含む有機乾燥剤である。適切な有機アンモニウム塩には、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化ブチルトリメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム等が含まれる。
【0025】
上述の通り、第1の液体乾燥剤は、1つまたは複数の無機塩、水および1つまたは複数の有機化合物の溶液を含む無機−有機液体混合乾燥剤であってもよい。適切な無機−有機液体混合乾燥剤は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ金属亜硝酸塩、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩、アルカリ土類金属亜硝酸塩、および遷移金属ハロゲン化物からなる群から選択される1つまたは複数の塩と、水と、例えばジメチルスルホキシドなどの吸湿性有機化合物とを含有する溶液を例とする。
【0026】
水回収ユニット内で生成される水分に富んだ液体乾燥剤は、通常、各々が含有する水分量の点でのみ、第1の液体乾燥剤と組成が異なっている。第1の液体乾燥剤が水分を含有する(すなわち、第1の液体乾燥剤は「水分がない」状態ではない)実施形態では、水分に富んだ液体乾燥剤は、通常、第1の液体乾燥剤より約0.1から約20パーセント多い水分を含む。一実施形態では、水分に富んだ液体乾燥剤は、第1の液体乾燥剤より約0.1から約10パーセント多い水分を含む。さらに別の実施形態では、水分に富んだ液体乾燥剤は、第1の液体乾燥剤より約0.1から約5パーセント多い水分を含む。第1の液体乾燥剤が水分を含有していないか、または非常に限られた量の水分しか含有していない実施形態では、水分含有量の百分率の増大の概念は誤解を招く恐れがあり、水分に富んだ液体乾燥剤中に存在する重量パーセントの水分で、水分に富んだ液体乾燥剤の水分含有量の増大を記載することが都合がよい。したがって、一実施形態では、第1の液体乾燥剤は、0.1重量パーセントから約2重量パーセントの水分を含む有機乾燥剤であり、対応する水分に富んだ液体乾燥剤は、約0.5から約20重量パーセントの水分を含む。
【0027】
上述の通り、水分に富んだ液体乾燥剤は保持され、燃焼タービンの動作のための水源としての機能を果たす。したがって、水分に富んだ液体乾燥剤は、乾燥剤再生ユニット内に導入され、そこで、水分に富んだ液体乾燥剤は、燃焼タービンにより供給される高温圧縮ガス(通常は高温圧縮空気)と接触し、水分に富んだ液体乾燥剤からの水分を同伴することができる。一実施形態では、この接触は、水分に富んだ液体乾燥剤と高温圧縮ガスとの向流を特徴とする。水分に富んだ液体乾燥剤と高温圧縮ガスとの間の接触は、第1の液体乾燥剤および水分に富んだ圧縮ガスの再生をもたらす。乾燥剤再生ユニットは、再生された第1の液体乾燥剤を水回収ユニットに供給するように構成されている。高温圧縮ガスは、燃焼タービンの上流圧縮機部分から除去されかつ乾燥剤再生ユニットに送られるスリップストリームとして生成されてもよい。水分に富んだ圧縮ガスは、乾燥剤再生ユニットから送られ、燃焼タービンの1つまたは複数の位置で導入されて、燃焼タービンの全体的な性能を向上させる。当業者には当然のことながら、通常は水分に富んだ圧縮空気である水分に富んだ圧縮ガスは、乾燥剤再生ユニットに渡される高温圧縮ガス中に存在する水分量を最小化するために、燃焼タービンの上流圧縮機部分から高温圧縮ガスが除去される単数または複数の点の下流に誘導されてもよい。そのような状況下で、燃焼タービンは、乾燥剤再生ユニットに高温圧縮ガスを供給するように構成されていると言われ、乾燥剤再生ユニットから水分に富んだ圧縮ガスを受け入れるように構成されていると言われる。水分および液体乾燥剤成分のいくらかの損失は避けられないが、本発明により提供されるタービンシステムは、システムの運転中に追加される水分および第1の液体乾燥剤の量が最小化されるように設計されている。
【0028】
一実施形態では、本発明により提供される水自給式タービンシステムは、複数の水回収ユニットを含む。一実施形態では、本発明により提供される水自給式タービンシステムは、複数の乾燥剤再生ユニットを含む。一実施形態では、本発明により提供される水自給式タービンシステムは、少なくとも1つの専用水回収ユニットと少なくとも1つの専用乾燥剤再生ユニットとを含む。代替の実施形態では、本発明により提供される水自給式タービンシステムは、水回収ユニットおよび乾燥剤再生ユニットとしての機能を交互に果たす単一の回収再生ユニットを含む。
【0029】
本明細書は、概略図の形の例を用いて、最良の形態を含めて本発明を開示しており、また、任意のデバイスまたはシステムを作製することおよび任意の援用された方法を実施することを含めて、当業者が本発明を実践することを可能にしている。したがって、図1を参照すると、図は、本発明により提供されかつ定常状態条件下で動作する水自給式タービンシステム100を示している。したがって、周囲空気および燃料が、周囲空気が中に導入される上流圧縮機14と、燃料が中に導入される燃焼室12と、下流タービン部分16とを含む燃焼タービン10内に導入される。燃料は、上流圧縮機により圧縮された空気の存在下で燃焼室内で燃やされ、水回収ユニット20に搬送される水分に富んだ排気流18を生成する。水回収ユニット内で、水分に富んだ排気流18は、第1の液体乾燥剤22と接触する。図に示されている通り、第1の液体乾燥剤22は、液体、例えば噴霧された液体として、(本明細書において第1の液体乾燥剤のための入口と呼ばれることがある)入口21を通って水回収ユニット20内に導入され、そこで、水分に富んだ排気流18の向流に接触する。水分は、水分に富んだ排気流18から第1の液体乾燥剤22に移動する。水分に富んだ排気流から回収される水分量は、温度などの他の動作パラメータと共に、水回収ユニット内に導入される、第1の液体乾燥剤と水分に富んだ排気流との相対量を制御することにより、最適化され得る。一般に、水分に富んだ排気流に対する第1の液体乾燥剤の重量比が比較的大きい場合、より大きな水分量が、水分に富んだ排気流から除去される可能性がある。例えば、一実施形態では、水回収ユニット内に導入される、水分に富んだ排気流に対する第1の液体乾燥剤の重量比は、約1から約500の範囲内である。代替の実施形態では、水回収ユニット内に導入される、水分に富んだ排気流に対する第1の液体乾燥剤の重量比は、約1から約100の範囲内である。さらに別の実施形態では、水回収ユニット内に導入される、水分に富んだ排気流に対する第1の液体乾燥剤の重量比は、約1から約25の範囲内である。
【0030】
図1をさらに参照すると、水回収ユニット20は、水分が枯渇した排気流19と水分に富んだ液体乾燥剤24とを生成する。図示の実施形態では、水分が枯渇した排気流は、出口23を通って雰囲気へ放出される。代替の実施形態では、水分が枯渇した排気流は、1つまたは複数の付加的な水回収ユニット20へ方向付けられる。代替の実施形態では、水分が枯渇した排気流は、二酸化炭素利用または隔離システムへ方向付けられる。水分に富んだ液体乾燥剤24は、乾燥剤再生ユニット30に送られ、そこで、燃焼タービン10の上流圧縮機14により生成された高温圧縮空気32と接触する。図1で取り上げられている実施形態では、水分に富んだ液体乾燥剤24は、入口31経由で液体噴霧として導入され、出口33経由で乾燥剤再生ユニットを出る向流ガス流としての高温圧縮空気に接触する。水分は、水分に富んだ液体乾燥剤から高温圧縮空気32へ移動し、該高温圧縮空気は、水分に富んだ圧縮空気流34として、乾燥剤再生ユニットを出る。水回収ユニット内の場合と同様に、水分に富んだ液体乾燥剤から回収される水分量は、乾燥剤再生ユニット内に導入される、高温圧縮空気と水分に富んだ液体乾燥剤との相対量を制御することにより、最適化され得る。通常、乾燥剤再生ユニット内に導入される高温圧縮空気流に対する水分に富んだ液体乾燥剤の重量比は、約1から約500の範囲内である。
【0031】
乾燥剤再生ユニットから出現する水分に富んだ圧縮空気流34は、燃焼タービン10に戻るように方向付けられ、そこで、燃焼タービン内部の1つまたは複数の位置で注入され、それにより、燃焼タービンの全体的な効率性を向上させる。水分が水分に富んだ液体乾燥剤24から高温圧縮空気流32へ移動するので、乾燥剤再生ユニットは、第1の液体乾燥剤22を再生し、該第1の液体乾燥剤は、水回収ユニット20に戻される。
【0032】
図2を参照すると、図は、本発明により提供されかつ定常状態条件下で動作する水自給式タービンシステム200を示している。周囲空気が、燃焼タービン10内に導入され、該燃焼タービンは、上流圧縮機14内で空気を圧縮し加熱して、高温圧縮空気32をもたらし、該高温圧縮空気は、完全に燃焼室12に方向付けられてもよいか、完全に乾燥剤再生ユニット30に方向付けられてもよいか、または上流圧縮機14により生成された高温圧縮空気32の一部が燃焼室に方向付けられかつ上流圧縮機14により生成された高温圧縮空気32の一部が乾燥剤再生ユニット30に方向付けられるように、分割されてもよい。本発明の種々の実施形態では、高温圧縮空気32は比較的高温であり、図2に示されている実施形態では、400℃を超える温度で上流圧縮機14から出現し、乾燥剤再生ユニット30に方向付けられる。図2に取り上げられている実施形態では、高温圧縮空気32は上流圧縮機14から出現しかつ乾燥剤再生ユニット30と燃焼室12との間で分割されているように示されているが、温度(T)、質量流量(M)、水分質量流量(Mw)、質量分率(X)および圧力(P)に関する図2に付記されている値は、上流圧縮機14の全出力が乾燥剤再生ユニット30に送られた実施形態について計算されている。本明細書における図1の検討で上述されている通り、乾燥剤再生ユニットは、水分に富んだ圧縮空気流34を生成し、該水分に富んだ圧縮空気流は、図2に示されている実施形態では、その燃焼室内への導入の前に、燃焼タービン内で生成された熱を水分に富んだ圧縮空気34に移動させる熱交換器42経由で、本明細書においてガスタービンと呼ばれることがある燃焼タービン10の燃焼室12に送られる。
【0033】
図1を参照して検討された通り、燃料および高温の水分に富んだ圧縮空気34は、燃焼室12内に導入され、燃やされ、主に二酸化炭素および水蒸気である高温燃焼生成物ガスは、水分に富んだ排気流18として燃焼タービンを出る。図2に示されている実施形態では、水分に富んだ排気流18は、それが含む熱の少なくとも一部を、隣接する熱交換器42内の水分に富んだ圧縮空気34に移動させる。さらなる熱が、熱回収蒸気生成ユニット46内で水分に富んだ排気流18から除去されることにより、プロセス蒸気が生成され、該プロセス蒸気は、様々な目的に使用され得る。水分に富んだ排気流18は、熱回収蒸気生成ユニットから出現し、水回収ユニット20に送られ、そこで、第1の液体乾燥剤22と接触して、水分に富んだ液体乾燥剤24と水分が枯渇した排気流19とを生成する。水分に富んだ液体乾燥剤24は、ポンプ54により乾燥剤再生ユニット30に送られ、そこで変換されて第1の液体乾燥剤22に戻され、該第1の液体乾燥剤は、水回収ユニット20に戻される。
【0034】
図2に示されている実施形態における様々な位置で、温度(T、摂氏(℃))、総質量流量(M、キログラム毎秒(kg/s))、水分質量流量(Mw、キログラム毎秒(kg/s))、質量分率(X)および圧力(P、キロパスカル(kPa))に関する値が与えられている。これらは、基本的に、(モデルシステムの公称能力および基準点)100メガワットの燃焼タービン10と、第1の液体乾燥剤22としての水中50%の臭化リチウムと、約45%の水回収効率での動作とを含む、図2に示されている通りに構成されている仮想水自給式タービンシステム200のための市販のコンピュータモデリングプログラムを使用して得られる、定常状態条件を表す。このように、定常状態条件下でかつ45パーセント水回収率で、100メガワットの燃焼タービンにより生成される水分に富んだ排気流18が、温度93.7℃、総質量流量212kg/s、および水分質量流量32.5kg/sで、水回収ユニット20内に(熱除去に続いて)導入されてもよい。定常状態条件下で、第1の液体乾燥剤22(水中50%のLiBr、XLiBr=XH2O=0.5)は、温度57℃、総質量流量714.4kg/sで、水回収ユニット20に供給される。第1の液体乾燥剤22中の臭化リチウムの質量分率Xは、本モデルシステムでは0.5であった。本モデルシステムでは、水分が枯渇した排気流19は、水回収ユニットから継続的に除去され、定常状態で、温度85℃、総質量流量197.4kg/s、および水分質量流量17.9kg/sを特徴とした。このことは、約45%の水回収ユニット内での水回収率に相応する。本モデルは、定常状態条件下で、水分に富んだ液体乾燥剤24は、水分が枯渇した排気流19と同じ温度(85℃)で、水回収ユニットから出現することを予測する。図2に示されている実施形態では、水分に富んだ液体乾燥剤24は、定常状態で水分に富んだ液体乾燥剤24が、温度152.2℃、総質量流量729kg/sで、入口31経由で乾燥剤再生ユニット内に導入されるように、ポンプ54により乾燥剤再生ユニット30に、かつ熱交換器42に送られる。水分に富んだ液体乾燥剤24中の臭化リチウムの質量分率Xは、0.49である。したがって、水分に富んだ液体乾燥剤24中の水分の質量分率は、0.51である。本モデリング研究により提供されるさらなる詳細が、図2において与えられており、本発明により提供される水自給式タービンシステム構造の全般的な魅力を支持している。
【0035】
図3を参照すると、図は、本発明により提供される水自給式タービンシステム300を示している。周囲空気が、燃焼タービン10の上流圧縮機14内に導入され、そこで圧縮されて、高温圧縮空気32を形成する。図3に示されている実施形態では、圧縮空気32の少なくとも一部が、タービン中間冷却器ユニット40に方向付けられる。タービン中間冷却器ユニット40は、圧縮空気から冷却された流体50へ熱を移動させる熱交換器42を含む。冷却された流体50に移動した熱60が、冷却ユニット44により除去される。タービン中間冷却器ユニットからの圧縮空気32は、次いで、上流圧縮機14の1つまたは複数の圧縮段内に導入し戻され、該1つまたは複数の圧縮段は、その空気をさらに圧縮して比較的高温かつ比較的高圧の圧縮空気を生成し、該圧縮空気は、乾燥剤再生ユニット30に送られ、その中で使用される。図3で取り上げられている実施形態では、上流圧縮機14の高温圧縮空気32の出力が、乾燥剤再生ユニット30に送られる、本明細書においてスリップストリームと呼ばれることがある高温圧縮空気32の第1の流れと、燃焼室12に直接送られる、高温圧縮空気32の第2の流れとに分割される。
【0036】
図4を参照すると、図は、本発明により提供される水自給式タービンシステム400を示している。図4に示されている実施形態では、周囲空気が、冷却コイル52に導入され、該冷却コイルは、上流圧縮機14内での圧縮の前に、ガスタービン10に供給されている空気を冷却する。冷却コイル52は、例示の実施形態ではヒートシンクの機能を果たす吸収冷却装置56に連結されている。
【0037】
本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲により定められ、当業者に思い付く他の例を含み得る。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文言とわずかしか異ならない等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0038】
10 燃焼タービン
12 燃焼室
14 上流圧縮機
16 下流タービン部分
18 水分に富んだ排気流
19 水分が枯渇した排気流
20 水回収ユニット
21 (第1の液体乾燥剤用の)入口
22 第1の液体乾燥剤
23 (水分が枯渇した排気流用の)出口
24 水分に富んだ液体乾燥剤
30 乾燥剤再生ユニット
31 (水分に富んだ液体乾燥剤用の)入口
32 高温圧縮空気/高温圧縮空気スリップストリーム
33 (水分に富んだ圧縮空気用の)出口
34 水分に富んだ圧縮空気流
40 タービン中間冷却器ユニット
42 熱交換器
44 冷却ユニット
46 熱回収蒸気生成ユニット
50 冷却された液体
52 冷却コイル
54 ポンプ
56 吸収冷却装置
60 熱
100、200、300、400 水自給式タービンシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水自給式タービンシステムであって、
(a)上流圧縮機と下流タービン部分との間に配設されている燃焼室を含む燃焼タービンと、
(b)第1の液体乾燥剤を前記燃焼タービンにより生成される水分に富んだ排気流と接触させ、かつ水分に富んだ液体乾燥剤および水分が枯渇した排気流を生成するように構成されている水回収ユニットと、
(c)前記水分に富んだ液体乾燥剤を高温圧縮空気と接触させて、前記水分に富んだ液体乾燥剤から水分を分離し、水分に富んだ圧縮空気をもたらし、前記第1の液体乾燥剤を再生するように構成されている乾燥剤再生ユニットと
を含み、
前記燃焼タービンは、前記高温圧縮空気を前記乾燥剤再生ユニットに供給しかつ前記乾燥剤再生ユニットから前記水分に富んだ圧縮空気を受け入れるように構成されており、
前記乾燥剤再生ユニットは、前記第1の液体乾燥剤を前記水回収ユニットに供給するように構成されている、
水自給式タービンシステム。
【請求項2】
複数の水回収ユニットを含む、請求項1記載のタービンシステム。
【請求項3】
複数の乾燥剤再生ユニットを含む、請求項1記載のタービンシステム。
【請求項4】
水自給式タービンシステムを運転する方法であって、
(a)上流圧縮機、燃焼室および下流タービン部分を含む燃焼タービン内に空気および燃料を導入して、水分に富んだ排気流および高温圧縮空気スリップストリームを生成するステップと、
(b)水回収ユニット内の前記水分に富んだ排気流を第1の液体乾燥剤と接触させて、水分が枯渇した排気流および水分に富んだ液体乾燥剤を生成するステップと、
(c)乾燥剤再生ユニット内の前記水分に富んだ液体乾燥剤を前記高温圧縮空気スリップストリームと接触させて、前記第1の液体乾燥剤および水分に富んだ圧縮空気流を再生するステップと、
(d)前記水分に富んだ圧縮空気の少なくとも一部を前記燃焼タービン内に導入するステップと
を含む、方法。
【請求項5】
定常状態で少なくとも45%の水回収率を特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
定常状態で少なくとも80%の水回収率を特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記第1の液体乾燥剤は無機液体乾燥剤である、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記無機液体乾燥剤は、臭化リチウムと塩化リチウムとの混合物を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1の液体乾燥剤は有機乾燥剤を含む、請求項4記載の方法。
【請求項10】
前記有機乾燥剤はエチレングリコールを含む、請求項4記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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