説明

水蒸気をはじく連続気泡フォーム及びその製造方法

本発明は、疎水性/疎油性にされ、そして連続気泡を有し、任意に他の置換基を含んでいても良いポリビニリデンハライド(共)重合体と、必要により、更にフッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂と、から本質的に構成される含浸を施されているフォームマトリックスを含むフォームに関する。更に本発明は、かかるフォームの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続気泡を本質的に有するフォームマトリックスを含み、疎水性/疎油性にされ、そして当該フォームのフォームマトリックスは、更に、水蒸気に対して不透過性の被膜が設けられているフォームに関する。更に本発明は、かかるフォームの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
種々の材料を含む連続気泡フォームは、例えば、建築物及び乗物の断熱材又は防音材に用いられている。更に、連続気泡フォームは、機械工学におけるプラント及び装置の防音材及び断熱材に使用されている。
【0003】
フォームが水又は油で完全に浸漬されるのを防止するために、特許文献1(DE−A10011388)は、フォームの骨格に、疎水性及び疎油性の成分、例えばフルオロアルキルエステル及びシリコーン樹脂を被覆することによってメラミン樹脂フォームを疎水性/疎油性にする方法を開示している。
【0004】
メラミン樹脂フォームを含浸可能である方法は、例えば、特許文献2(EP−A0451535)により知られている。この場合、メラミン樹脂フォームの表面に対してバインダーを最初に塗布し、次に、フォームをバインダーと一緒に、2個の二重反転ローラーの間の間隙に通過させるが、その際、ローラー間の間隙は、メラミン樹脂フォームの影響を受けない厚さより小さくなるように設定される。疎油性及び/又は疎水性の作用を形成するのに用いられる添加剤をバインダーに対して添加することが可能である
【特許文献1】DE−A10011388
【特許文献2】EP−A0451535
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、疎水性/疎油性を有し、更に、低減された水蒸気の吸収を示す連続気泡フォームを提供することにある。
【0006】
上記の目的は、連続気泡を本質的に有し、任意に他の置換基を含んでいても良いポリビニリデンハライド(共)重合体と、必要により、更にフッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂と、から本質的に構成される含浸を施されているフォームマトリックスを含むフォームによって達成される。
【0007】
本発明に好適なフォームは、例えば、フォームマトリックスがメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物から構成されるフォームである。更に好適なフォームは、フォームマトリックスが尿素−ホルムアルデヒド重縮合物であるフォーム及びフォームマトリックスが連続気泡ポリウレタンフォームであるフォームである。フォームマトリックスは、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物から構成されるのが好ましい。
【0008】
特に好ましいメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物において、フォームマトリックスを製造する場合のホルムアルデヒドに対するメラミンの割合は、1:1.2〜1:4である。
【0009】
かかるメラミン−ホルムアルデヒドフォームは、例えば、EP−B0071672から知られている。これにより、フォームは、メラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物の水溶液を、乳化剤、酸性の硬化剤及び発泡剤、好ましくはC5〜C7炭化水素を含む溶液で泡立たせることによって製造される。次に、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物を、高温条件下で硬化する。
【0010】
連続気泡を本質的に有するフォームマトリックスを含むフォームに、必要により他の置換基を含んでいても良いポリビニリデンハライド(共)重合体を含浸させることにより、フォームにおける水蒸気吸収が低減する。このように低減された水蒸気の吸収により、高い大気湿度を有する環境か、又は水蒸気が、フォームの特性に対する著しい劣化無しに含まれる環境において、フォームを使用することが可能となる。更に、水蒸気の吸収から得られるフォームの質量増大を低減する。
【0011】
ポリビニリデンハライド又はポリビニリデンハライド共重合体の好適なハライドは、例えば、塩化物又はフッ化物である。塩化物が好ましい。
【0012】
ポリビニリデンハライド又はポリビニリデンハライド共重合体を必要により置換しても良い他の置換基は、例えば、アルキル、アリール又は官能基、例えばエステル又はニトリルである。他の置換基を含まないポリビニリデンハライド(共)重合体が好ましい。
【0013】
本発明の場合、ポリビニリデンハライド(共)重合体なる用語は、非共重合のポリビニリデンハライド及び共重合されたポリビニリデンハライドの両方を包含する。共重合は、例えば、ハロゲン化ビニル又はアクリロニトリルを用いて行われても良い。ポリビニリデンハライド共重合体は、ハロゲン化ビニルを用いて共重合されるのが好ましい。好ましいハロゲン化ビニルは、塩化ビニルである。
【0014】
低減される水蒸気吸収に加えて、液体の水及び/又は油の取り込みを回避するようにフォームを疎水性及び/又は疎油性とするために、好ましい実施形態において、含浸は、フッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含む市販の含浸剤を更に含む。
【0015】
含浸剤において、フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂は、水又は揮発性の有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、アセトン、ペンタンにおいて乳化された液滴の形で存在するのが好ましい。不燃性であることから、水が好ましい。
【0016】
含浸により、フォームの密度が増大する。このような密度の増大は、フォームのストラットを覆い、これによりストラットの断面積を増大させるようにフォームに含浸される材料から結果として得られる。結果として、細孔容積が僅かに減少する。一般に、ポリビニリデンハライド(共)重合体での含浸により、5〜20%の密度の増大に至る。
【0017】
水及び水蒸気をはじく物質を含浸することに加え、好ましい実施形態において、フォームに難燃剤を含浸させる。好適な難燃剤は、例えば、ハロゲン化合物(臭素及び塩素の化合物)、リン化合物、窒素化合物、膨張組成物、鉱物の材料(アルミニウム及びマグネシウムを基礎とする)、更にはホウ砂、Sb23及びナノ複合材料である。プラスチックの難燃性を改善するために、例えば、アルミニウムトリヒドロキシド、臭素化化合物、塩素化リン化合物、非ハロゲン化リン化合物、クロロパラフィン、マグネシウムジヒドロキシド、メラミン及びボレートを使用することが可能である。当該分野で知られている好適な難燃剤は、例えば、ヨーロッパ難燃剤協会のパンフレットの“Flammschutzmittel, haeufig gestellte Fragen”(2004年1月)に記載されている。
【0018】
本発明のフォームは、以下の工程:
(a)ポリビニリデンハライド(共)重合体を含む分散液をフォームに塗布するか、又はフォームを分散液で浸漬する工程と、
(b)フォームを分散液と一緒にプレスして、分散液をフォームの細孔に導入する工程と、
(c)40〜100℃の範囲の温度条件下でフォームを分散液と一緒に乾燥する工程と、
を含み、且つ
工程(a)及び(b)は、最初に工程(a)、その後に工程(b)で連続的に行われる方法によって製造されるのが好ましい。
【0019】
フォームに対して分散液を塗布し、そしてフォームをプレスするのは、例えば、EP−A0451535に記載のように行われても良い。この場合、フォームは、同一方向に回転する2個のローラーの間に通過されるが、ローラー間の間隙は、フォームを圧縮するように選択される。フォームに含浸させる分散液は、相互に水平に隣接するローラに供給され、これによりフォームがローラーの間に通過する位置に液体の溜まりを形成する。ローラの回転運動及びフォームのプレスによって、液体の溜まりに含まれる分散液は、フォームに押し込まれる。分散液は、フォームのストラットを覆うことから、硬化後に閉曲面を形成する。
【0020】
分散液を塗布し、そしてフォームをプレスした後、このようにして含浸されたフォームを、40〜100℃の範囲の温度条件下で乾燥炉において乾燥するのが好ましい。かかる処理中、分散液は薄膜を形成し、これにより、セルのストラットにおいて水蒸気に対するバリアとして作用する層を形成する。
【0021】
処理を通じて単一の通過後の含浸でフォームのストラットが未だに完全に覆われないか、又は含浸の層厚が依然として余りに低い場合、かかる第1の段階で含浸されたフォームを、同一の含浸処理に何回も通過させることが可能である。このようにして、ストラットを覆う層の厚さを、各段階にて増大させる。
【0022】
フォームに含浸される物質を塗布し、次に、プレスすることの他に、含浸させる物質をフォームに浸漬し、次に、プレスすることも可能である。浸漬の場合、フォームは、例えば、フォームに含浸される少なくとも1種の物質を含む溶液に引き込まれる。しかしながら、当該分野で知られており、フォームを浸漬可能である他の方法についても考えられる。
【0023】
含浸に使用されるポリビニリデンハライドは、溶剤中の分散液として存在するのが好ましい。好適な溶剤は、例えば、短鎖アルコール、例えばメタノール又はエタノールか、又は水である。溶剤として、水が特に好ましい。
【0024】
フォームに含浸される分散液は、5〜60質量%のポリビニリデンハライド(共)重合体を含むのが一般的である。分散液は、10〜30質量%のポリビニリデンハライド(共)重合体を含むのが好ましい。
【0025】
水蒸気の吸収の低減に加え、フォームを撥水にするために、分散液は、更に、フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂を含んでいても良い。第1の変法において、ポリビニリデンハライド(共)重合体並びにフッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂の両方を、一工程でフォームに対して混合物として塗布するか、又はかかる混合物にフォームを浸漬させる。
【0026】
他の変法において、最初に、ポリビニリデンハライド(共)重合体を含む分散液をフォームに含浸し、次に、第2の含浸工程において、フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂を含む分散液でフォームを浸漬することも可能である。このようにして、水蒸気をはじくセルストラットを有する特定の疎水性/疎油性フォームを形成する。次に、フォームを乾燥する。最初の乾燥は、ポリビニリデンハライド(共)重合体を含む分散液での含浸の直後に行われても良い。その後、第2の乾燥工程は、かかる変法において、フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂を含む分散液での含浸の後に行われる必要がある。
【0027】
全ての変法において、プレスは、EP−A0451535に記載のように、2個の二重反転で、平行のローラーの間における所定の間隙にフォームを通過させることによって行われるのが好ましい。
【0028】
2個の二重反転ローラーの間における間隙にフォームを通過させることの他に、分散液で含浸されたフォームを搬送ベルトに移動させ、そしてフォームがフォーム上を移動される速度に等しい周速度にて回転するローラーをプレスすることによる含浸に必要な圧力を施すことも可能である。更に、圧力は、例えば、パンチをフォームにプレスする圧縮機にフォームを配置することによってフォームに施され得る。しかしながら、この場合には、連続プレスは不可能である。
【0029】
プレスは、当該分野で知られている他の装置を用いて行われても良い。
【0030】
フォームに含浸させる樹脂は、両方の実施形態において、揮発性溶剤中における分散液として存在するのが好ましい。好適な溶剤は、例えば、水又は揮発性アルコール、例えばメタノール又はエタノールである。樹脂は、水性分散液中において存在するのが特に好ましい。
【0031】
本発明のフォームが、30℃の条件下であり、90%の相対大気湿度を有する環境において使用される場合、水蒸気の吸収に関して20〜90%の低減が得られる。
【0032】
本発明のフォームを使用する場合に好ましい分野は、航空輸送である。水蒸気吸収の低減の結果、水蒸気の吸収に起因するフォームの質量増大が低減される。質量増大により航空輸送における灯油の消費が増大することから、水蒸気の吸収に起因する上記の質量の増大は、可能な限り回避されるべきである。これは、本発明のフォームの使用によって達成され得る。
【実施例】
【0033】
1.比較実施例
未含浸メラミン−ホルムアルデヒドフォームを、最初に100℃にて24時間乾燥し、次に、30℃の条件下、90%の相対湿度に20時間に亘って曝した。フォームは、18〜20質量%の水蒸気を吸収した。
【0034】
2.比較実施例
疎水性/疎油性にするためにフッ素樹脂エマルジョンで含浸されたメラミン樹脂フォームを、最初に100℃にて24時間乾燥し、次に、30℃の条件下、90%の相対湿度に20時間に亘って曝した。フォームは、17〜19質量%の水蒸気を吸収した。
【0035】
[実施例]
連続気泡メラミン−ホルムアルデヒドフォームに、20質量%のポリビニリデンクロリドを含む水性分散液を含浸し、次に、100℃で24時間乾燥した。乾燥されたフォームを、30℃の条件下、90%の相対湿度に20時間に亘って曝した。フォームは、5〜6質量%の水蒸気を吸収した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡を本質的に有し、任意に他の置換基を含んでいても良いポリビニリデンハライド(共)重合体と、必要により、更にフッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂と、から本質的に構成される含浸を施されているフォームマトリックスを含むフォーム。
【請求項2】
前記ハライドが、塩化物又はフッ化物である請求項1に記載のフォーム。
【請求項3】
前記フォームマトリックスが、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物から構成される請求項1又は2に記載のフォーム。
【請求項4】
前記フォームマトリックスを製造する場合のホルムアルデヒドに対するメラミンの割合が、1:1.2〜1:4である請求項3に記載のフォーム。
【請求項5】
前記フォームマトリックスが、尿素−ホルムアルデヒド重縮合物である請求項1又は2に記載のフォーム。
【請求項6】
前記フォームマトリックスが、連続気泡ポリウレタンフォームである請求項1又は2に記載のフォーム。
【請求項7】
前記含浸が、前記ポリビニリデンハライド(共)重合体と前記フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂の混合物から本質的になる請求項1〜6のいずれか1項に記載のフォーム。
【請求項8】
前記含浸が、独立した2層から構成され、それぞれ、フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂又はポリビニリデンハライド(共)重合体を本質的に含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のフォーム。
【請求項9】
前記ポリビニリデンハライド共重合体が、ハロゲン化ビニルを用いて共重合される請求項1〜8のいずれか1項に記載のフォーム。
【請求項10】
以下の工程:
(a)ポリビニリデンハライド(共)重合体を含む分散液を前記フォームに塗布するか、又は前記フォームを前記分散液で浸漬する工程と、
(b)前記フォームを前記分散液と一緒にプレスして、前記分散液を前記フォームの細孔に導入する工程と、
(c)40〜100℃の範囲の温度条件下で前記フォームを前記分散液と一緒に乾燥する工程と、
を含み、且つ
前記工程(a)及び(b)は、最初に工程(a)、その後に工程(b)で連続的に行われる請求項1〜9のいずれか1項に記載のフォームの製造方法。
【請求項11】
前記分散液が、更にフッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
更なる工程において、フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂を前記フォームに塗布するか、又は前記フォームを、フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂で含浸させ、且つ前記更なる工程は、工程(c)の後に行われる請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記フォームを前記フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂と一緒にプレスして、前記樹脂を前記フォームの細孔に導入し、且つ、前記樹脂を用いた前記フォームの塗布及び浸漬並びに前記プレスは連続的に行われ、その後、必要により、前記フォームを前記フッ素樹脂及び/又はシリコーン樹脂と一緒に40〜100℃の範囲の温度条件下で乾燥する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
分散液の溶剤として水を使用する請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記分散液が、5〜60質量%のポリビニリデンハライド(共)重合体を含む請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2009−504894(P2009−504894A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527461(P2008−527461)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065551
【国際公開番号】WO2007/023160
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】