説明

水蒸気プラズマを用いたアフラトキシン除去方法

【課題】アフラトキシンを含有する農作物や食品に対し、アフラトキシンを無毒化することができる新たな方法を提供する。
【解決手段】処理室20に被処理物を投入口22より投入し、水蒸気プラズマ生成装置10により生成した水蒸気プラズマを照射開口部24より被処理物に照射することにより、アフラトキシンを除去することができる。水蒸気プラズマ生成装置10は、流入した水蒸気を水蒸気プラズマとして流出させるとともに導電性を有する被加熱体11と、前記被加熱体に巻回されるとともに、高周波が供給され前記被加熱体を電磁誘導加熱するコイル12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水蒸気プラズマを用いたアフラトキシンの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カビが生産する天然毒アフラトキシンは発がん性毒素として知られ、ピーナッツ、ピーナッツバター等の加工品、とうもろこし、ハト麦、そば粉などの穀類及びその加工品、ナツメグ、白胡椒、唐辛子等の香辛料、コーヒー豆、カカオ豆、アーモンド、ピスタチオナッツ等多くの食品から検出の可能性がある。アフラトキシンは、Aspergillus flavus、Aspergillus parasiticus 等の糸状菌が産生する2次代謝産物で、B1、B2、G1、G2およびその代謝物でアフラトキシンを摂取したウシの乳から見つかった水溶性のM1等の類縁体が知られており、それぞれ単離されている。中でもアフラトキシンB1は、経口的に摂取された場合極めて高い発癌性を示すことが広く知られている。
【0003】
アフラトキシンB1以外のタイプのB2、G1、G2およびM1等の構造類似体アフラトキシンについても、動物種により多少の相違があり、B1ほど毒性は高くないとはいえ、種々の動物に発がん性および急性毒性が認められている。
【0004】
わが国では、食品衛生法により食品中のアフラトキシンB1濃度は10ppb以下に規制されているとともに、アフラトキシンB1が高頻度で検出される落花生、ピーナッツ、トウモロコシ、アーモンド、コーヒー豆、カカオ豆、香辛料、くるみ、乾燥いちじく、雑穀、穀物類等で、汚染地域と考えられる国から輸入されるものについては、特に厳重な検査がなされている。そして、厚生労働省が発表している食品衛生法違反事例によれば、アフラトキシン陽性のため、廃棄される食品が多数存在する。
【0005】
カビ毒に対しては、プラズマ状態にある原子、特に酸素プラズマを作用させることにより、カビ毒を不活性化する技術が開示されている(特許文献1)。しかしながら特許文献1に開示された技術では、カビ毒の不活性化率が80%程度であり、食品衛生法による10ppb以下という極めて厳しい基準をクリアするための技術としては、不十分であった。また、高温のプラズマガスを噴射できるプラズマ噴射装置を用いる場合には、処理対象物を損傷させるおそれがあることから噴射時間を1秒以下とする必要があることが開示されており、十分な効果を得られていない。
【0006】
一方、本発明者らは、独自に水蒸気プラズマ生成装置を開発し、該水蒸気プラズマにより大腸菌、芽胞菌などの菌類を殺菌する技術、および油性成分含有物質を抗酸化処理する技術を生み出している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−296814号公報
【特許文献2】WO2010/016347国際公開パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたものであり、落花生、ピーナッツ、トウモロコシ、アーモンド、コーヒー豆、カカオ豆、香辛料、くるみ、乾燥いちじく、雑穀、穀物類等に含まれるカビ毒アフラトキシンを、効率良く除去する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、アフラトキシン含有物質に対し、水蒸気プラズマを照射することで、アフラトキシンが除去されることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下に示す通りである。
(1)水蒸気プラズマをアフラトキシン含有物質に照射する工程を含む、アフラトキシン除去方法。
(2)前記水蒸気プラズマが、250℃以上850℃以下であることを特徴とする、(1)に記載の除去方法。
(3)前記水蒸気プラズマの照射時間が3秒以上120秒以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の除去方法。
(4)前記水蒸気プラズマは、
流入した水蒸気を水蒸気プラズマとして流出させるとともに導電性を有する被加熱体と、前記被加熱体に巻回されるとともに、高周波が供給され前記被加熱体を電磁誘導加熱するコイルとを備えた水蒸気プラズマ生成装置であって、
前記被加熱体は、水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側へ向かって一体に連設された複数の被加熱部材により構成され、
前記複数の被加熱部材には、配置位置が水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側に向かうにつれて徐々に数が減らされた貫通孔と、それぞれが対向する面の少なくとも一方に前記貫通孔とともに水蒸気の通過域を構成する凹部とが形成され、
前記コイルは、その線体の中心に中空管を有し、前記中空管は冷却液が流される流路である、水蒸気プラズマ発生装置、
により発生した水蒸気プラズマであることを特徴とする、(1)から(3)のいずれか1項に記載の除去方法。
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載の除去方法によりアフラトキシンを除去する工程を含む農作物または食品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の除去方法により、日本においては農作物および食品の輸入時に問題となるアフラトキシンを、非常に簡易な方法により高い確率で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に用いるプラズマ水蒸気発生装置の例である。
【図2】(A)は蒸気ボイラから水蒸気が流入する側の一番端に位置する被加熱円盤部材の一例の側面図であり、(B)は図2(A)に示した被加熱円盤部材の正面図である。
【図3】(A)は水蒸気プラズマを流出させる側の一番端に位置する被加熱円盤部材の一例の側面図であり、(B)は図3(A)に示した被加熱円盤部材の正面図である。
【図4】(A)は、本発明の水蒸気プラズマを照射する処理室の一構成を表す断面図、(B)は(A)に示した処理室のB−B線における矢視断面図である。
【図5】(A)は、本発明の水蒸気プラズマを照射する処理室の一構成を表す断面図、(B)は(A)に示した処理室のB−B線における矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアフラトキシン除去方法は、水蒸気プラズマをアフラトキシン含有物質に照射する工程を含む。本発明においてアフラトキシンとはアフラトキシンB1、B2、G1、G2、およびM1のいずれか1種を表すかまたは2以上のすべてを総称する。
アフラトキシンB1は、以下の式(1)で表される化合物である。
【化1】

【0014】
アフラトキシンB2は、以下の式(2)で表される化合物である。
【化2】

【0015】
アフラトキシンG1は、以下の式(3)で表される化合物である。
【化3】

【0016】
アフラトキシンG2は、以下の式(4)で表される化合物である。
【化4】

【0017】
アフラトキシンM1は、以下の式(5)で表される化合物である。
【化5】

【0018】
アフラトキシン含有物質とは、上記アフラトキシンB1、B2、G1、G2、およびM1のいずれか1種または2種以上を含有する物質であれば、特段限定されない。具体的には、輸入された農作物および食品などがあげられる。
輸入された農作物および食品としては、落花生、ピーナッツ、トウモロコシ、アーモンド、コーヒー豆、カカオ豆、香辛料(唐辛子、ターメリックなど)、くるみ、乾燥いちじく、雑穀、穀物類等が例示される。
【0019】
プラズマとは気体が電離した状態をいい、本発明の水蒸気プラズマ中では正と負の荷電粒子が高速で飛び回っており、且つ荷電粒子の間に大きなクーロン力が働くために加熱水蒸気のような中性気体よりも粒子の持つ運動エネルギーは大きくなる。このため、高エネルギーの粒子によって結合を切られた原子や分子の存在により、プラズマ化した水蒸気は非常に強い酸化力や還元力を有する。
【0020】
このような水蒸気プラズマは、その発生手法や発生装置などにより限定されるものではないが、高周波誘導加熱により生じた水蒸気プラズマであることが好ましく、上記高周波の出力が30kW以上1000kW以下であることが、安定した水蒸気プラズマの供給には好ましい。また、周波数は5kHz以上40kHz以下とすることが好ましい。
【0021】
また、上記水蒸気プラズマの温度は、下限値で250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることが更に好ましい。一方下限値は、850℃以下であることが好ましく、700℃以下であることがより好ましく、600℃以下であることが更に好ましい。
【0022】
本発明で用いる水蒸気プラズマは、特許文献1で開示されている酸素プラズマとは異なり、水蒸気を用いているため、最低でも100℃以上の温度となる。特許文献1の技術では、高温プラズマ(200℃〜600℃)の場合には、処理対象物を損傷させるため、暴露時間を1秒以下とする必要があるが、本発明の水蒸気プラズマを用いた処理方法では、処理対象物への損傷が非常に小さいため、通常3秒以上120秒以下の時間、照射を行うことができる。好ましくは、10秒以上、より好ましくは200秒以上、さらに好ましくは30秒以上照射することが好ましい。また、100秒以下であることが好ましく、90秒以下であることがより好ましく、80秒以下であることがさらに好ましく、75秒以下であることが特に好ましい。
【0023】
本発明においてアフラトキシンの除去とは、アフラトキシンの含有を物理的に除去することに加え、アフラトキシンの構造を変化させ無毒化することも含まれる概念である。アフラトキシンが除去されたとの効果は、例えば市販のキットによる分析、特開2008−143888に開示による抗体を用いた方法、クロマトグラフィーによる分析方法などにより判断することができる。
【0024】
上記の水蒸気プラズマの照射を行うためには、例えば以下のような水蒸気プラズマ処理装置を用いることができる。以下図に基づき説明する。
【0025】
図1に示す水蒸気プラズマ処理装置1は、水蒸気プラズマ生成装置10と、処理室20と、インバータ30と、蒸気ボイラ40と、冷却水タンク50とを備えている。
【0026】
水蒸気プラズマ生成装置10は、被処理体に照射する水蒸気プラズマを生成する装置である。水蒸気プラズマ生成装置10は、被加熱体11と、被加熱体11を電磁誘導加熱するためのコイル12と、被加熱体11を覆って保温する断熱材13と、被加熱体11に蒸気ボイラ40で生成した水蒸気を流入するための水蒸気流入部71と、被加熱体11から生成した水蒸気プラズマを流出するための水蒸気プラズマ流出部72と、水蒸気プラズマを処理室20へと噴射するための噴射ノズル73とを備えている。なお、水蒸気プラズマ生成装置10は、図示しないプラスチック製の絶縁カバーで保護されている。
【0027】
被加熱体11は、インバータ30からの高周波電流が供給されたコイル12により電磁誘導加熱される。被加熱体11は、導電性を有する複数の被加熱円盤部材11aにより構成されることが好ましい。被加熱体は必ずしも円盤部材である必要は無いが、被加熱体をコイルにより電磁誘導加熱する効率性を考えると、円盤状であることが好ましい。被加熱円盤部材11aには、導電性材料が用いられ、例えば鉄、ステンレス鋼、ニッケル、チタン等の金属やカーボンセラミック等の導電性セラミック材料等が用いられる。
【0028】
複数の被加熱円盤部材11aは、図1に示すように、蒸気ボイラ40から水蒸気が流入される側から水蒸気プラズマを流出させる側に向かって、一体に連設される。また、被加熱円盤部材11aには、図2及び図3に示すように、複数の貫通孔111aが形成され、被加熱円盤部材11aの表面、裏面にはそれぞれ複数の溝112aが形成されている。図2は蒸気ボイラ40から水蒸気を流入させる側の一番端に位置する被加熱円盤部材11aを示し、図3は水蒸気プラズマを流出させる側の一番端に位置する被加熱円盤部材11aを示す。
【0029】
被加熱円盤部材11aに形成される貫通孔111aは、蒸気ボイラ40から水蒸気が流入される側から水蒸気プラズマを流出させる側に向かうにつれて、その数が徐々に減るように形成されている。一例をあげると、蒸気ボイラ40から水蒸気が流入される側の一番端に配置された被加熱円盤部材11aに形成された貫通孔111aの数は例えば100個、水蒸気プラズマを流出させる側の一番端に配置された被加熱円盤部材11aに形成された貫通孔111aの数は例えば10個である。なお、一体に連設される非加熱部材の数に特段の制限はなく、高周波の出力、周波数や被処理物の種類、量などに応じて決定される。
【0030】
被加熱円盤部材11aの溝112aは不規則に形成されているので、複数の被加熱円盤部材11aには空間113aが形成される。被加熱体11に流入した水蒸気は、空間113aおよび貫通孔111a内のみに通過可能な範囲が制限され、また、水蒸気プラズマとして流入する側に向かうにつれて貫通孔111aの数が減っていくため通過可能な範囲は徐々に制限される。
【0031】
被加熱体11に流入した水蒸気は、電磁誘導加熱された被加熱体11により250℃以上の温度になるとともに、流出側に向かって徐々に数が減っていく貫通孔111a、および、空間113a内のみを通過し、流出側に向かって通過域が徐々に制限される。このため水蒸気は、被加熱円盤部材11aにぶつかりながら徐々に膨張するとともに貫通孔111aを通り抜ける力が徐々に増していき、その結果、電離した状態になり、水蒸気プラズマとして流出される。なお、通過域が流出側に向かって徐々に制限されるにもかかわらず、流入した水蒸気が逆流することはない。また、被加熱体11に流入した水蒸気は電磁誘導加熱されるが、加熱された水蒸気が250℃よりも低い場合には、水蒸気プラズマが安定して生成されない傾向にある。
【0032】
流出された水蒸気プラズマ中には、正と負の荷電粒子が高速で飛びまわっており、荷電粒子の間に大きなクーロン力が働くために、過熱蒸気のような電気的中性気体よりも粒子のもつ運動エネルギーがはるかに大きくなる。この高エネルギーの粒子によって結合を切られた水蒸気中の水素原子、酸素原子、OHラジカルなどの活性の高い中性の原子や分子がプラズマ中に存在していること等のため、水蒸気プラズマがアフラトキシンを無毒化する作用を有すると考えられる。
【0033】
コイル12は、その線体の中心に中空管を有し、流入ホース51から中空管に冷却液を流すことにより、コイル12自体の発熱を防止するとともに、被加熱体11を通過する流体の温度を安定させることができる。コイル12に冷却液を流さないと、被加熱体11を通過する流体の温度が不安定になり、水蒸気プラズマを生成することができない。
【0034】
インバータ30は、コイル12を介して被加熱体11に高周波誘導加熱を施す装置である。インバータ30は、高周波インバータが用いられ、高周波の出力は30〜1000kW程度であることが好ましく、周波数は5〜40kHzであることが好ましい。なお、インバータ30は、導電線31によりコイル12に電気的に接続されている。
高周波の出力が30kW以上であることにより、水蒸気プラズマ生成装置10により水蒸気プラズマを安定して生成することができる。なお、インバータ30内にも冷却水タンク50からの冷却液の流入ホース51が通っており、内部に配置された半導体素子等を除熱する。
【0035】
蒸気ボイラ40は、導管60により水蒸気流入部71を介して水蒸気プラズマ生成装置10に接続されている。なお、導管60には、蒸気ボイラ40により発生させた水蒸気の開閉弁61と逆止弁62が設けられている。蒸気ボイラ40から水蒸気プラズマ生成装置10に流入する水蒸気量は、装置の大きさにより適宜設定することができるが、通常10kg/h〜800kg/hであり、20kg/h〜200kg/hであることが好ましく、30kg/h〜100kg/hであることがより好ましい。
【0036】
冷却液タンク50は、冷却液をコイル12の線体の一端に流入させるとともにインバータ30内部を除熱するための流入ホース51と、冷却液をコイル12の線体の他端から流出させるための流出ホース52とを有する。
【0037】
処理室20は、円筒状の本体21と、本体の上方に配置された被処理物投入口22と、被処理物投入調整部23と、本体21の側壁に形成された水蒸気プラズマ照射開口部24と、本体21を支持する設置台25とを備えている。水蒸気プラズマ照射開口部24には、水蒸気プラズマ導入管74が接続されている。
【0038】
処理室20は、被処理物の種類に応じて適宜設計変更することが可能である。例えば、処理室本体と、被処理物が収容される横型円筒状であって処理室に収容される網部と、前記網部に固定され前記被処理物を攪拌するスクリュー羽根とを有するとともに前記処理室内に収容される回転体と、前記回転体を回転駆動するモータと、水蒸気プラズマを前記処理室内に供給する水蒸気プラズマ供給部、とを備える処理室であってもよい。
【0039】
図4を用いて説明すると、処理室211は、処理室内に収容されるとともに、食品等の被処理物が収容される網状の回転体212と、処理室内に水蒸気プラズマを供給する水蒸気プラズマ供給部213と、網状の回転体212を回転駆動するモータ214と、網状の回転体212が固定されるとともにモータ214の駆動力を網状の回転体212に伝達するギヤ部215(215a、215b)と、網状の回転体212に被処理物を投入するための投入部216と、投入部216の反対側に配置されているとともに処理済みの被処理物を取り出すための案内板219とを備えている。
【0040】
回転体212は、収容した被処理物を無毒化処理する際に攪拌等するためのものである。回転体212は網部212aとスクリュー羽根212bと、攪拌平板212cと、固定部212dとにより構成されている。網部212aは、横型円筒状の網により構成されている。網部212aは、収容される被処理物の細かさに応じて網目の大きさが変更される。網部212aの一端は、被処理物が投入される投入開口部212eを有し、網部212aの他端は被処理物が取り出される取出開口部212fを有している。
【0041】
スクリュー羽根212bは、網部212a内に収容された被処理物を攪拌する。スクリュー羽根212bは、螺旋状に連続して形成され、網部212aの中心軸を回転軸として回転可能である。そしてスクリュー羽根212bは、被処理物の種類に応じてその厚さが変更される。よって回転体212には、被処理物の種類に応じてその厚さが変更される。よって回転体212には、被処理物の種類に応じて、網部212aの網目の大きさやスクリュー羽根212bの厚さ等の調整が可能である。
【0042】
攪拌平板212cは、スクリュー羽根212bとともに網部212a内に収容され被処理物を攪拌する。なお、攪拌平板212cは、被処理物が例えば麺類等であって、回転体12の回転数が遅い場合等に用いられる。攪拌平板212cは、網部212aの延伸方向に沿って網部212aの内周面に等間隔に固定される。
【0043】
一対の固定部212dは、回転体212を、ギヤ部215を介して処理室212内に着脱自在に収納、固定するためのものである。固定部212dは、園林上に形成されている。一対の固定部212dは、網部212aの両端に取り付けられており、ボルト217が螺合するネジ穴(図示ぜず)が形成されている。固定部212dは、処理室211内に配置された一対のギヤ部212に、ボルト217をネジ穴に螺合することによりそれぞれ固定される。
【0044】
水蒸気プラズマ供給部213は、水蒸気プラズマ生成装置に接続され、二股に分かれた管により構成されている。水蒸気プラズマ供給部213は、処理室211内において回転体212の上方に配置される。水蒸気プラズマ供給部213には、水蒸気プラズマを放出する複数の孔213a(図4(B))が形成されている。
【0045】
モータ214の回転軸214aには、処理室211内において歯車218aが固定されている。この歯車218aは、投入部216側のギヤ部215aと歯合する。よって、モータ214の駆動力は、歯車218a及びギヤ部215aを介して回転体212に伝達される。処理室211内の下方において歯車218aと平行する位置に歯車218bが配置されている。歯車218bも投入部216側のギヤ部215aと歯合して、ギヤ部215aの回転を補助するとともに支持する。また、ベアリング220が、回転体212が浮くことを防止するために、ギヤ部215aの内周面を案内すべく処理室211内に配置されている。
【0046】
また、案内板219側のギヤ部215bにも、並行して処理室211内に設けられた歯車218c、218dが歯合されている。歯車218c、218dにより、ギヤ部215bは支持されるとともに円滑に回転する。
【0047】
また、処理室は図5のような形態とすることもできる。以下、図5に基づいて、図4と異なる部分についてのみ説明する。
【0048】
処理室211は、回転体212が回転軸222gを備えている。回転軸222gと、螺旋状に連続して形成されたスクリュー羽根222bとは一体的に形成されている。回転軸222gは、図示しないモータの回転軸に脱着可能に接続され、処理室211外において回転可能に軸支されている。なお、回転体212は、図4の形態における攪拌平板212cを備えていない。
【0049】
本実施の形態では、回転体212の回転軸222gをモータにより回転駆動して、回転体212を回転させる。第1の実施の形態よりも容易な構成により回転体212を回転させることができるとともに、図4の形態と同様の処理を行うことができる
【0050】
上記に説明した処理室に被処理物を投入し、水蒸気プラズマ生成装置により生成した水蒸気プラズマを被処理物に照射することにより、被処理物が含有するアフラトキシンを除去することができる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみに限定されないことは言うまでもない。
【0052】
<実施例1>
図1に示す水蒸気プラズマ処理装置の処理室を図4に示すものとし、高周波の出力を30kW、周波数を9〜35kHz、水蒸気プラズマの温度を400℃に設定し、アフラトキシンを含有する落花生を被処理物投入口から投入し、水蒸気プラズマ照射開口部からの水蒸気プラズマを60秒間照射した。
【0053】
<試験例1>
処理する前の落花生(コントロール1)と、実施例1で処理した落花生(処理済)について、高速液体クロマトグラフ法によりアフラトキシン濃度を測定した。結果を表1に示す。なお、本試験例で行った分析による測定可能な定量下限値は5ppbであり、5ppb以下の場合にはアフラトキシンは検出されない。
【0054】
【表1】

【0055】
<実施例2>
水蒸気プラズマの温度を500℃とし、水蒸気プラズマ照射時間を40秒間とした以外は実施例1と同様にして、アフラトキシン含有量の少ない落花生に対し水蒸気プラズマを照射した。
【0056】
<試験例2>
処理する前のアフラトキシン含有量の少ない落花生(コントロール2)と、実施例2で処理した落花生(処理済)について、高速液体クロマトグラフ法によりアフラトキシン濃度を測定した。結果を表1に示す。なお、本試験例で行った分析による測定可能な定量下限値は5ppbであり、5ppb以下の場合にはアフラトキシンは検出されない。
【0057】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、アフラトキシンを無毒化するための簡易な方法が提供される。本発明により、従来食品衛生法により廃棄処分となっていた農作物や食品等の廃棄を回避できるようになり、産業上の有用性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0059】
1 水蒸気プラズマ処理装置
10 水蒸気生成装置
11 被加熱体
11a 被加熱円盤部材
12 コイル
13 断熱材
20 処理室
21 処理室本体
22 被処理物投入口
23 被処理物投入量調整部
24 水蒸気プラズマ照射開口部
25 設置台
30 インバータ
31 導電線
40 蒸気ボイラ
50 冷却水タンク
51 流入ホース
52 流出ホース
60 導管
61 開閉弁
62 逆止弁
71 水蒸気流入部
72 水蒸気プラズマ排出部
73 噴射ノズル
74 水蒸気プラズマ導入管
111a 貫通孔
112a 溝
113a 空間
211 処理室
211a 処理室本体
211b 上蓋
212 回転体
212a 網部
212b スクリュー羽根
212c 攪拌平板
212d 固定部
212e 投入開口部
213 蒸気供給部
214 モータ
215 ギヤ部
216 投入部
217 ボルト
218 歯車
219 案内板
222b スクリュー羽根
222g 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気プラズマをアフラトキシン含有物質に照射する工程を含む、アフラトキシン除去方法。
【請求項2】
前記水蒸気プラズマが、250℃以上850℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載のアフラトキシン除去方法。
【請求項3】
前記水蒸気プラズマの照射時間が、3秒以上120秒以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアフラトキシン除去方法。
【請求項4】
前記水蒸気プラズマは、
流入した水蒸気を水蒸気プラズマとして流出させるとともに導電性を有する被加熱体と、前記被加熱体に巻回されるとともに、高周波が供給され前記被加熱体を電磁誘導加熱するコイルとを備えた水蒸気プラズマ生成装置であって、
前記被加熱体は、水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側へ向かって一体に連設された複数の被加熱部材により構成され、
前記複数の被加熱部材には、配置位置が水蒸気の流入側から水蒸気プラズマの流出側に向かうにつれて徐々に数が減らされた貫通孔と、それぞれが対向する面の少なくとも一方に前記貫通孔とともに水蒸気の通過域を構成する凹部とが形成され、
前記コイルは、その線体の中心に中空管を有し、前記中空管は冷却液が流される流路である、水蒸気プラズマ発生装置、
により発生した水蒸気プラズマであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のアフラトキシン除去方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のアフラトキシン除去方法によりアフラトキシンを処理する工程を含む農作物または食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−85791(P2012−85791A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234566(P2010−234566)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(502286432)
【出願人】(505197300)
【Fターム(参考)】