説明

水蒸気分配ダクト

【課題】揮発性有機化合物を吸着することで揮発性有機化合物含有ガスを処理する吸着塔で、揮発性有機化合物を脱着させる際に、脱着され供出される有機化合物のピークを平準化させる。
【解決手段】水蒸気の吹込口11から繋がる主幹部12と、その主幹部12から下側へ延びる分配部21を有し、主幹部12に連結する下流放出部13a〜13cと、分配部21に連結する上流放出部22を少なくとも含む、複数の箇所に水蒸気の放出口を設けた水蒸気分配ダクト10を用いて、吸着層内に脱着用水蒸気を供給する。下流放出部13a〜13cから放出された水蒸気に脱着された有機化合物がまず供出され、タイミングをずらして、上流放出部22から放出された水蒸気に脱着された有機化合物が供出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、揮発性有機化合物含有ガスから揮発性有機化合物を吸着して分離する有機化合物処理装置の吸着塔において、吸着された有機化合物を脱着させるための水蒸気を吸着層内に分配供給するダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
工場から発生する排ガスには、そのまま大気中に排出すると問題を起こす揮発性有機化合物が含まれる場合がある。この場合、排ガスを大気中に排出する前に、含有している揮発性有機化合物を処理しなければならない。その方法として、活性炭等の吸着剤を内蔵した吸着塔で、排ガス中に含まれる揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ、ガス中の濃度を低減させて大気へ排出し、その後、吸着剤から揮発性有機化合物を脱着させて吸着塔を再利用可能にするとともに、揮発性有機化合物を処理するという吸脱着方式が一般的である。
【0003】
上記の脱着には、揮発性有機化合物を含まないガスを吸着剤に接触させることが必要である。一基の吸着塔で脱着と同時に吸着することはできないので、脱着は速やかに実行することが好ましい。脱着を速める方法としては、脱着用のガスを大量に導入する方法、真空ポンプで吸引して圧力を低下させる方法、吸熱反応である脱着を促進するために高温の脱着用水蒸気を導入する方法などがあり、コストや効率の点から、高温の脱着用水蒸気を用いる方法が多く採用されている。
【0004】
この脱着用水蒸気を生成するために、燃料を燃やす燃焼炉と、それにより水を加熱して水蒸気とする熱交換器を併設する場合が多い。その際に、燃料を節約するとともに、脱着した揮発性有機化合物の処理をも行うために、脱着した有機化合物含有水蒸気を燃焼炉に導入して、燃料とともに燃やす方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
ところが、脱着が吸着層全体で一気に進行してしまうと、その際に生じる有機化合物含有水蒸気が含む有機化合物の量が一時的に極大化し、それを燃焼炉に導入すると燃焼炉を過熱してしまうおそれがある。そこで、燃焼炉に到達する有機化合物含有水蒸気に含まれる有機化合物の量が時間経過に対して平準化させるための検討が行われている。
【0006】
例えば、特許文献2には吸着塔の高さ方向に複数段となる脱着用ガス(水蒸気)の導入口を設け、上方から順次導入口を開放する手法が記載されている(特許文献2、図1、0042段落)。この手法を採用すると、脱着用ガスを適用する箇所を徐々に拡大することで、吸着層全体から一気に脱着を起こさせるよりも、有機化合物含有水蒸気が含有する有機化合物含有量の時間に対するピークを低減し、平準化させることができる。また、特許文献3には、吸着塔を並列に複数基有する設備において、それぞれの吸着塔で脱着を起こすタイミングを調整することで、脱着用水蒸気の総需要量を抑制する手法が記載されているが、この手法を採用することで、複数基の吸着塔で同時に脱着のピークが生じることを回避し、脱着される揮発性有機化合物の量が集中することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−222736号公報
【特許文献2】特開2002−293754号公報
【特許文献3】特開2010−5579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載のように吸着塔の外壁に複数段の穴を空けてそれぞれの導入口の弁を制御しようとすると装置が複雑化し、吸着層の狙った部分のみを適切に脱着させることは難しかった。また、特許文献3に記載の手法は、複数基の吸着塔を同時に脱着させるものであるため、三基以上の吸着塔を並列で有する大規模系でしか適用できず、なおかつ、一基分の揮発性有機化合物については一度に脱着を起こすため、燃焼炉に導入して燃焼する際には熱負荷が大きすぎるという問題は残っていた。
【0009】
そこでこの発明は、一の吸着塔に脱着用水蒸気を導入するにあたり、簡便に吸着層の一部のみに先行して脱着用水蒸気を導入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、吸着塔内の吸着層へ直接に水蒸気を導入する水蒸気分配ダクトとして、
水蒸気の吹込口から繋がる主幹部と、その主幹部から供出口より遠ざかる方向に分岐する分配部を有し、上記主幹部の一部、上記主幹部に連結する枝部、又はその両方と、上記分配部の一部、上記分配部に連結する枝部、又はその両方とを少なくとも含む、複数の箇所に水蒸気の放出口を設けた水蒸気分配ダクトを用いることにより、上記の課題を解決したのである。
【0011】
すなわち、この水蒸気分配ダクトを用いることにより、吸着層のうち、主幹部と、下側へ延びる分配部との上方部分のみが、先行して脱着を起こすことができる。単純に主幹部だけでは、主幹部の上の、吸着層の上層部だけを脱着させたに過ぎない。しかし、主幹部とともに、下側へ延びる分配部によって、その分配部より上だけを脱着させると、脱着を起こすタイミングは主幹部と分配部とでほぼ同時であっても、その脱着された有機化合物含有水蒸気が上昇して吸着層を抜け出るまでの時間に差が生じるため、有機化合物含有量のピークは分散することになる。この分配部の形状及び放出口の分布などをさらに工夫することで、時間差で後追いとして燃焼炉に到達することになる有機化合物含有水蒸気の量を調整することもできる。
【0012】
具体的には、主幹部と分配部とを、少なくとも供出口からの距離が異なる二段以上に分かれるように配する。供出口からの距離が近い方を下流、遠い方を上流とする。上流及び下流に分かれたそれぞれの放出口を設けた箇所を、それぞれ、上流放出部及び下流放出部、とする。吸着塔内における供出口への水蒸気の流れは、横方向でもよいし、下から上への鉛直方向でもよい。特に、熱い脱着用水蒸気は上昇しやすいので、供出口が吸着塔の最上段に設けてあり、放出部が上下方向に複数段に分かれていると運用効率がよい。またそのような上下方向の場合、上流及び下流の各段における放出部の放出口をそれぞれの部の上面のみに設けると、それぞれの部分から脱着を起こさせる部分を厳密に絞ることができるので好ましい。
【0013】
それぞれの放出部は、枝部に設けると流通させやすい。主幹部や分配部に設ける場合は、そこでの放出量を削減し、枝部にまで脱着用水蒸気が行き渡るように調整する。それぞれの放出部の放出口は、供出口に近い側の面に個々に微細な穴を空けるよりも、供出口に近い側の面を、吸着層を構成する活性炭の粒よりも目が細かい多孔板で構成すると、孔のある部分全体から水蒸気が拡散しやすくなるので、脱着むらが生じにくく、脱着工程を進行させ易い。
【0014】
上記上流放出部の放出口(以下、「上流放出口」という。)の総面積は、上記下流放出部の放出口(以下、「下流放出口」という。)の総面積に対して同じでなくてもよく、むしろ少ない方が望ましい。上記下流放出口より下流側の吸着層に吸着された揮発性有機化合物は、この水蒸気分配ダクトから供給される水蒸気によって脱着されて特に問題は無いが、上記上流放出口から放出される水蒸気によって脱着されることになる、上記下流放出口と上記上流放出口との間の吸着層に吸着された揮発性有機化合物の全てが脱着されてしまうと、この水蒸気分配ダクトからの水蒸気によって大半の揮発性有機化合物が脱着されてしまい、最後に吸着層より上流側から導入する水蒸気によって脱着される分がわずかとなってしまう。これでは、脱着量を時間に対して平準化する点でやや前半にピークが偏っていることになる。しかし、上記上流放出口の総面積が上記下流放出口の総面積よりも十分に小さいと、上記下流放出口より下流側の揮発性有機化合物が脱着された後で、上流放出口からの放出によって脱着される揮発性有機化合物は、上記上流放出口と上記下流放出口との間に吸着された有機化合物のうちの一部のみに絞ることができる。上記上流放出口と上記下流放出口との間に吸着された有機化合物のうちの残部は、吸着層より上流側から導入される後の脱着用水蒸気によって脱着されるが、既に一部が脱着されているので、残部による有機化合物の放出量は抑えられたものとなる。
【0015】
具体的には、上記上流放出口の面積が、上記下流放出口の面積の半分以下であるとよい。また、上記上流放出口の総面積の水平方向位置における重心が、上記下流放出口の総面積の水平方向位置における重心よりも、周縁部に寄っていると、上記の一部と残部とを明確に分けやすく、脱着用水蒸気の流れを制御しやすい。具体的には、上記下流放出口の総面積の水平方向位置における重心は、吸着塔の中央に位置する外周半径の三分の一の円内にあるとよく、上記上流放出口の総面積の水平位置における重心は、吸着塔の中央に位置する外周半径の半分の円外にあると望ましい。
【0016】
上記主幹部から上記下流放出部へ通じる部分と上記分配部から上記上流放出部へと通じる部分は、隔壁で隔てられており、その隔壁に、上記主幹部及び上記分配部を通過する水蒸気を分配するためのオリフィス穴を空けておくとよい。また、上記主幹部と上記分配部との下部に水抜き用のドレン穴を設けてしまうと、そのドレン穴から水蒸気が下方へ抜けてしまうため、上記主幹部と上記分配部とにはドレン穴を設けない方がよい。一方で、枝部である上記下流放出部及び上記上流放出部には、底部にドレン穴を設け、上記隔壁に設けるオリフィス穴を、上記主幹部又は上記分配部内を流れる水も通過できる位置に設けて、オリフィス穴を通じて枝部(放出部)のドレン穴へ水を送り込めるようにするとよい。ドレン穴を設ける位置は、底面の中央でもよいし、底面を構成する辺の一部や、底辺の隅でもよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明にかかる水蒸気分配ダクトを吸着塔に取り付けて、そこから導入した水蒸気によって吸着層の一部について先行して脱着を行わせ、その後、残部について吸着層の下部から脱着用水蒸気を供給することで、脱着される揮発性有機化合物の量を時間経過に対して平準化することができる。水蒸気の導入について細かい制御は必要ではなく、吸着塔の側面に空ける孔も一箇所で済むため、導入、運用が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態にかかる水蒸気分配ダクトの斜視図
【図2】(a)この発明の実施形態にかかる水蒸気分配ダクトの平面図、(b)この発明の実施形態にかかる水蒸気分配ダクトの正面図、(c)この発明の実施形態にかかる水蒸気分配ダクトの左側面図
【図3】この発明の実施形態にかかる水蒸気分配ダクトのA−A断面図
【図4】(a)水蒸気分配ダクトを取り付けた吸着塔の平面図、(B)水蒸気分配ダクトを取り付けた吸着塔の斜視図
【図5】水蒸気分配ダクトを取り付けた吸着塔内の模式図
【図6】吸着塔と燃焼炉と熱交換器を含む有機物処理装置の例の構成図
【図7】別の実施形態にかかる水蒸気分配ダクトの断面図
【図8】別の実施形態にかかる水蒸気分配ダクトの斜視図
【図9】この発明にかかる水蒸気分配ダクトを用いた実施例での燃焼炉等温度グラフ
【図10】比較例での燃焼炉等温度グラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明にかかる水蒸気分配ダクトについて、実施形態を挙げて具体的に説明する。図1はこの実施形態にかかる水蒸気分配ダクトの斜視図、図2(a)はこの実施形態にかかる水蒸気分配ダクトの平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は左側面図である。全体はやステンレスなど、180℃前後の水蒸気にも耐えうる程度の耐熱性を有し、かつ、水蒸気や水と接しても錆びにくい素材からなる。
【0020】
円筒形の吹込口11に、その径よりもやや幅広の四角筒形である主幹部12が連結され、連結部分の内部には隔壁がなく連続している。主幹部12の長さは、この水蒸気分配ダクトを取り付ける吸着塔の径の2/3〜5/6程度である。
【0021】
主幹部12の、吹込口11との連結部分から三分の一ほど入った箇所より、下方へ分岐する分配部21が延びている。分配部21は四角筒形であり、主幹部12に対してほぼ垂直に取り付けてある。図3に、この実施形態にかかる水蒸気分配ダクトのA−A断面図を示す。主幹部12の、分配部21と接続している箇所は、分配部21の端部と同じ大きさの連結穴20が空いている。
【0022】
また、主幹部12の両側面(図2(a)における上下方向)には、吹込口11との連結部分から約三分の一に当たる箇所、三分の二に当たる箇所、終端近傍の箇所の計3箇所に、それぞれ、オリフィス穴15a、15a、15b、15b、15c、15cが空けられている。両側面に設けられたそれぞれのオリフィス穴15a〜15cは、いずれも底面に接しており、主幹部12の底面上に溜まった水が、それらのオリフィス穴15a〜15cを通じて抜け出られるようになっている。オリフィス穴15a〜15cの大きさは、主幹部12の高さよりも十分に小さく、主幹部12に流れ込む水蒸気を、流速を増加させて取り込むオリフィス効果を発揮する大きさであり、かつ、底面上に溜まった水によって塞がらない程度の大きさであることが必要である。ただし、本実施形態においては、オリフィス穴15bだけは、他のオリフィス穴15a,15cよりも大きくしておくことが望ましい。後述するように、オリフィス穴15bから通じる放出口は、他のオリフィス穴15a,15cから通じる放出口よりも広く、その分だけ余分に水蒸気を取り込むことが望ましいためである。
なお、オリフィス穴の大きさは、各枝部の風量バランスやダクト形状による圧力損失を考慮して決定することが望ましい。
【0023】
それぞれのオリフィス穴15a〜15cを設けた箇所から、主幹部12に対して垂直に、水平方向へ延びる枝部である下流放出部13a〜13cが延びている。それぞれの下流放出部13a〜13cは四角筒形であり、高さ及び横幅は主幹部12とほぼ同じである。下流放出部13a〜13cの底面高さ位置は主幹部12の底面高さ位置と同じか、それよりわずかに低く取り付けてあり、主幹部12の底面に溜まった水の一部はオリフィス穴15b、15cを通じて、下流放出部13b、13cに流れ込む。このため、主幹部12の底面よりも、下流放出部13b、13cの底面の方がわずかに下であると、水が主幹部12からオリフィス孔15b、15cを通じて抜け出て行きやすいので望ましい。なお、水の残部は分配部21の下方へ落下する。また、オリフィス孔15aは水を通過させる役割を有さず、主幹部12の底面高さよりもやや上に配置して、オリフィス孔としての効果のみを発揮する。
【0024】
また、真ん中の下流放出部13bは、他の下流放出部13a,13cよりも長い。これは後述するように円筒形の吸着塔内に設置するにあたり、周壁近傍まで出来るだけ広範囲に水蒸気を分配させるためである。すなわち、下流放出部13a、13a、13b、13b、13c、13cの外側端部は、概ね同一円周上に位置する。
【0025】
下流放出部13a〜13cの上面は、水蒸気の放出口となる多数の孔を有するパンチングメタル14a〜14cで構成されている。パンチングメタル14a〜14cのそれぞれの穴は、後述する吸着層を構成する活性炭の粒子よりも小さく、下流放出部13a〜13c内に活性炭の粒子が入り込まないようになっている。
【0026】
下流放出部13a〜13cの底面には、水抜きのためのドレン穴17a〜17cが設けてある。主幹部12から流れ込んだ水とともに、下流放出部13a〜13cに溜まった水はこのドレン穴17a〜17cから落下して、最終的には吸着塔の底部に設けた排水口から排出される。
【0027】
なお、下流放出部13a〜13cの両側面及び終端面には穴がなく、板で塞がっている。
【0028】
上記の分配部21は、四角筒形の鉛直方向に延びる長さが、取り付ける吸着塔の吸着層の高さの1/4〜1/2程度である。分配部21の縦横幅は、上記の主幹部12の高さ及び幅とほぼ同じである。分配部21の下端から、下流放出部13aと平行にかつほぼ同じ長さだけ横方向へ延びる上流放出部22、22が延びている。それぞれの上流放出部22の構成及び長さは上記の下流放出部13aと同様であり、上面は水蒸気の放出口となる多孔板のパンチングメタル23で構成されており、底面には水抜きのためのドレン穴24が設けてある。
【0029】
分配部21の周壁のうち、上流放出部22との間の周壁には、底面に接するオリフィス穴25、25が空けてある。上記のオリフィス穴15cと同様に、オリフィス効果を発揮させると同時に、分配部21の底に溜まった水を上流放出部22、22へ抜き出すための穴でもあるので、溜まった水が通っていても水蒸気を通すことができる大きさである必要がある。
【0030】
この発明にかかる水蒸気分配ダクトは、揮発性有機化合物含有ガスから揮発性有機化合物を吸着させて濃度を低減処理する有機物処理装置の、吸着を行う吸着塔の内部に取り付ける。この実施形態にかかる水蒸気分配ダクトを吸着塔31に取り付けた際の形態を図4(a)及び(b)に示す。図4(a)は、取り付けた吸着塔31を上から見た平面図であり、図4(b)は斜視図である。図4(a)において、上流放出部22は、下流放出部13aの陰になって見えない。取り付ける際には、吸着塔31の側面に空いた側面供給口32に、水蒸気分配ダクト10の吹込口11を挿入する。位置としては、中央の下流放出部13bと主幹部12との交点が、吸着塔31の断面中心近くとなるように固定する。上流放出部22は、吸着塔31の中央から半径の半分ほど離れた、やや側面供給口32に近い偏った位置に位置することとなる。実際の使用時には、この水蒸気分配ダクト10の周囲は吸着剤となる活性炭の粒子で満たされる。
【0031】
この水蒸気分配ダクト10は、吸着塔31に揮発性有機化合物含有ガスを導入し、揮発性有機化合物を吸着層に吸着させた後、吸着層から揮発性有機化合物を脱着させて再生する際に、脱着用水蒸気を導入するために用いる。水蒸気分配ダクト10に、吹込口11から脱着用水蒸気を導入すると、主幹部12を通過しつつ、オリフィス穴15a〜15cを通じて下流放出部13a〜13cへ脱着用水蒸気が流れ込む。それと併せて、一部の脱着用水蒸気は分配部21を下り、底部に到達したところでオリフィス穴25を通って上流放出部22へ流れ込む。下流放出部13a〜13cと上流放出部22とに流れ込んだ脱着用水蒸気は、それぞれの部位の上面に設けたパンチングメタル14a〜14c、23の多孔部分を放出口として、ダクト外、すなわち吸着塔31の吸着層へと放出される。
【0032】
このとき、この発明にかかる水蒸気分配ダクト10の効果によって、吸着層33の一部のみで脱着を先行して進行させることができる。その進行を、図5を用いて説明する。図5は水蒸気分配ダクト10を取り付けた吸着塔31の模式的な断面図である。吸着層33の底からやや上に、吸着層33の底板となるパンチングメタル39が張ってあり、その上に吸着剤となる活性炭の粒子を満たしている。吸着層33のさらに下には空洞があり、その下の底部に、脱着用水蒸気Fを底部から供給するための底部供給口35と、本来の目的である揮発性有機化合物含有ガスGを吸着層に吸着させた後の処理後ガスHを排出する排出口37、水蒸気が凝集した水を排出するための排水口40が設けてある。
【0033】
水蒸気分配ダクト10に脱着用水蒸気が導入されると、吸着層33のうち、下流放出部13a〜13cより上の領域Aと、上流放出部22の真上及びその周辺の領域Bで同時に脱着が開始される。上流放出部22より下の領域Dと、上流放出部22より上でありかつ上流放出部22より離れた領域Cではほとんど脱着が進行しない。
【0034】
脱着されたことで揮発性有機化合物を含有することになった有機化合物含有水蒸気は、吸着層33内を徐々に上昇していき、供出口34から外部の燃焼炉などに送られる。このとき、供出口34に最初に到達するのは、下流放出部13a〜13cから放出された脱着用水蒸気により「領域Aの部分に吸着されていた揮発性有機化合物を同伴した有機化合物含有水蒸気」(以下、「含有水蒸気A」という。他の領域についても同じ。)である。含有水蒸気Bは、まだ吸着層33内を上昇中で吸着層33を抜けきっていない。揮発性有機化合物の脱着は初期時点で急激に進行するため、含有水蒸気Aは、最初に供出口34に到達した分の揮発性有機化合物の含有量が最も高くピークを示し、後はゆるやかに含有量が低下していく。その後で、含有水蒸気Bが到達して、供出口34を通過する揮発性有機化合物の量は再び増加する。しかし、上流放出部22が吸着層33の中心からずれており、上流放出部22から放出される脱着用水蒸気Fはほぼ領域Bの揮発性有機化合物を脱着させるだけで、領域Cの揮発性有機化合物は脱着させていないので、この時点で供出口34に到達する揮発性有機化合物の量は、領域Bの分だけとなり、揮発性有機化合物の量の増加は抑制される。このため、供出口34を通過するガスを燃焼炉に送り込んで脱着用水蒸気Fを得るための熱源としても、燃焼炉にかかる熱負荷の急上昇を抑えて、緩やかな燃料分の供給とすることができる。あるいは、凝縮器に供給して揮発性有機化合物のみを凝縮させて回収するとしても、揮発性有機化合物の増加量が少ないため、凝縮器にかかる負荷を低減できる。
【0035】
それから、底部供給口から水蒸気が供給されると領域C、領域Dの揮発性有機化合物が脱着される。このとき、領域C、領域Dを通過した含有水蒸気C、Dは、脱着の終了している領域A、領域Bを通過するときに、含有している揮発性有機化合物を再度吸着され、後続の水蒸気により再度脱着されて上昇する、という過程を繰り返す。従って、領域C、領域Dに含まれる有機化合物は、じわじわと全体的に供出口に向けて上昇する。
【0036】
上記のような効果を発揮させる有機化合物処理装置の構成例を図6に示す。この装置は、有機化合物含有ガスから有機化合物を除去する2基並列の吸着塔31、31と、熱源となる燃焼炉41と、水蒸気発生源である熱交換器50とからなる。吸着塔31の構成は上記の図5に示す通りである。
【0037】
燃焼炉41は上記の脱着用水蒸気Fを生成させるための熱を発生させるものであり、燃焼させるための燃料Jを供給する燃料供給口42を有しており、それとは別に、上記の吸着塔31の供出口34から送られてきた揮発性有機化合物含有水蒸気Kを供給する含有水蒸気供給口43も有している。また燃焼炉41は当然にバーナや煙突も有している(いずれも図示せず。)。さらに、内部温度を測定する燃焼炉内温度センサ44を有しており、温度上昇を検知して燃料Jの供給量を絞ったり、その逆の調整を行えるようにしてある。有機化合物含有水蒸気Kにより供給される揮発性有機化合物の増加は、この燃焼炉内温度センサ44における温度上昇として検知される。この燃焼炉41で発生した熱が、熱交換器50へ供給される。
【0038】
熱交換器50は、脱着用水蒸気Fの元となる水Eを供給する供給口51を備え、燃焼炉41から供給された熱により水Eを加熱して脱着用水蒸気Fを発生させる。生じた脱着用水蒸気Fは、水蒸気発生口52から水蒸気供給管60を通じて、上記の吸着塔31の側面供給口32(すなわち水蒸気分配ダクト10に通じる。)、及び底部供給口35へ供給される。また、熱交換器50は発生する水蒸気の温度を調整するために、内部温度を測定する水蒸気温度センサ56を有している。
【0039】
この装置での処理工程は次のようになる。まず揮発性有機化合物含有ガスGを、一方の吸着塔31の頂部にある導入口36に導入して、吸着層33の活性炭を通すことで、揮発性有機化合物を吸着させる。吸着により揮発性有機化合物の量が減少した処理後ガスHは、排出口37から大気へ放出させる。これを吸着層33の吸着性能が低下するまで行い、低下してきたら、他方の吸着塔31での吸着に切り替える。なお、吸着を行っている間は、その吸着塔31の側面供給口32,底部供給口35、供出口34の弁は閉鎖しておく。
【0040】
他方の吸着塔31で吸着を行っている間に、一方の吸着塔31で脱着を行って吸着層33を再生させる。上記のように、この脱着の際にはまず脱着用水蒸気Fを側面供給口32に供給して、水蒸気分配ダクト10を通じて吸着層33内の領域A,Bの脱着を行う。脱着により生じた揮発性有機化合物含有水蒸気Kのうち、含有水蒸気Aがまず供出口34へ到達し、移送管38を通じて燃焼炉41へ送られる。燃焼炉41では、含有水蒸気Aが有する有機化合物を、燃料Jとともに燃焼させることで、熱交換器50で脱着用水蒸気Fを生成させるための熱源として用いる。これにより燃料Jが節約できる。この発明にかかる水蒸気分配ダクト10を用いることで、まず到達する有機化合物の量が領域Aのものに限られ、続いて領域Bの有機化合物が到着するので、燃焼炉41での急激な温度上昇を抑制することが出来、熱負荷が少なくなるので燃焼炉41を小型のものとすることができる。その後、領域Bの有機化合物が抜け出るタイミングに前後して、底部供給口35へも脱着用水蒸気Fを供給して、領域C、領域Dの脱着を進行させ、順次、移送管38を通じて燃焼炉41へ送って燃焼させる。
【0041】
この発明にかかる水蒸気分配ダクトの実施形態は、上記図1の形態に限られるものではない。以下、他の実施形態について説明する。
【0042】
上記の実施形態では、分配部21と下流放出部13aとが直交しているが、その位置がずれていてもよく、上流放出部22が下流放出部13aの真下でなくてもよい。また、上記の実施形態では下流放出部13a〜13cは主幹部12の両側に3本ずつ形成されているが、これも本数は特に限定されない。主幹部12の両側に、それぞれ同じ長さの下流放出部2本からなるものとしてもよいし、主幹部12の両側に、それぞれ4本の下流放出部を設け、うち両端の2本が短く、中間の2本が長くしてもよい。ただし、下流放出部の本数が多い方が、上記の領域Aにあたる部分の脱着が進行させやすい。一方で、本数が多すぎても脱着効果の向上はさほど見込めず、全体のバランスを取るのが難しくなってしまう。
【0043】
上記のパンチングメタル14a〜14c及び39は、必ずしもパンチングメタルである必要はなく、エキスパンドメタルやその他の多数の孔を有するもので、活性炭の粒子が入ってこない程度に孔が細かいものであれば利用可能である。
【0044】
上記のオリフィス穴15a〜15cは、主幹部12の底部に接するのではなく、主幹部12の高さ方向中程に設けてもよい。その実施形態の断面図を図7に、斜視図を図8に示す。
ただし、この実施形態の場合、オリフィス穴からは主幹部12の底面に溜まった水を抜き出すことができず、主幹部12に溜まった水は分配部21へ落下することになる。同様に、オリフィス穴25を、分配部21の底面から、上流放出部22の高さの半分ほどの位置に設けてもよい。この場合、オリフィス穴25からも水が抜け出ていかないため、分配部21の底面中央にドレン穴24aを設ける必要がある。
【0045】
吸着塔31に設ける側面供給口32は、縦方向に複数設けてもよい。すなわち、この発明にかかる水蒸気分配ダクトを、高さ方向に二段連ねてもよいし、上から二つめ以降の側面供給口32には、この発明にかかる水蒸気分配ダクトではなく、断面中心部に達するノズルを取り付けてもよいし、この発明にかかる水蒸気分配ダクトから分配部21及び上流放出部22を除外したダクトを取り付けてもよい。また、底部供給口35は、必ずしも吸着塔31の底部である必要はなく、吸着層33の全体に脱着用水蒸気を供給できるものであれば、パンチングメタル39に隣接したすぐ下に設けてもよい。いずれにしても、脱着用水蒸気の下流側、すなわち吸着塔における上側にある供給口から順に開放していく。
【0046】
なお、底部供給口35を開放するタイミングは、側面供給口32の開放により脱着された揮散性有機化合物が、吸着塔の上部(供出口34付近)において最大量を示す前であると、その揮散性有機化合物が燃焼炉41に到達するまでに、底部からの水蒸気による脱着が適度に進行し、揮散性有機化合物が燃焼炉41に到達する量の減少が比較的抑えられるので好ましい。
【0047】
上記の分配部21は必ずしも鉛直方向でなくてもよく、斜め下方向に延びるものでもよい。例えば、上記の下流放出部13bと直交する位置から、主幹部12の先端方向の斜め下へ分配部21が延び、上記の下流放出部13cのほぼ真下に上流放出部22が位置してもよい。また、上記の下流放出部13cと直交する位置から真下に延びる分配部21となって、下流放出部13cの真下に上流放出部22が位置してもよい。さらに、主幹部12の水平方向先端から、曲線状に下へ向いた分配部21としてもよい。
【0048】
ただし、分配部21及び上流放出部22の放出口は、吸着塔31の断面中心近傍から外れて、周壁近くに偏っていることが望ましい。断面中心近傍に設ける場合、供給される脱着用水蒸気Fの放出が吸着層33の断面全域に広がるのではなく、一部分に偏るようにすることが望ましい。
【0049】
下流放出部13a〜13c及び、上流放出部22は、必ずしも四角筒形でなくてもよく、吸着塔31の周壁に沿った曲線部分を有するものでもよい。そのような形状とすることにより、吸着塔31の周壁近傍の脱着を起こしやすくすることができる。
【0050】
蒸気の放出口を設ける箇所は、必ずしも主幹部や分配部から延びた枝部でなくてもよく、主幹部12を延長させた部分や、分配部21を斜め下に向けた部分の上側面に設けてもよい。また、分配部21の側面部をパンチングメタルで形成することで、横方向に放出口を設けても良い。そうすることで、高さ方向に連続した放出口を設けることができ、供出口34に到達する揮発性有機化合物含有水蒸気の有機化合物濃度をさらに時間経過に対して平準化させることができる。
【実施例】
【0051】
(実施例)
次に、この発明にかかる水蒸気分配ダクトを実際に用いて吸着塔の脱着を行った実施例について具体的に説明する。有機物処理装置全体の構成は、図6に記載の通り、並列に二基の吸着塔を有し、燃焼炉と熱交換器により脱着用水蒸気を供給するものである。吸着塔
の直径は60cm、吸着層の高さは70cmで、吸着層の上から15cmとなる側面に側面供給口が空いている。この吸着塔内に取り付ける水蒸気分配ダクトは、図7及び図8に示す実施形態であり、主幹部のオリフィス穴が高さ方向中程に設けた実施形態である。側面供給口に、内部から吹込口を差し込み固定した後、底部からやや離れた箇所に孔径2mmのパンチングメタルを張った上に粒径5mmの活性炭を投下して吸着層を為す。
【0052】
吹込口は内径41mm、外径49mm、長さ94mmのSUS304製管からなり、それに、主幹部となる、一辺が52.5mmの角パイプが連結されている。主幹部の連結部から130mm、290mm、450mmとなる箇所の両側面の、高さ方向中央部に、それぞれ、孔径12mm、14mm、12mmのオリフィス穴を空けてある。オリフィス穴の先には、長さがそれぞれ155mm、225mm、155mmで、同じく一辺が52.5mmの角パイプが接続され、下流放出部を形成している。それぞれの角パイプの終端部は同素材の板で塞いである。それぞれの下流放出部の底面中央には、孔径5mmのドレン穴を空けてある。また、下流放出部を構成する角パイプの上面は切り取られており、換わりに、孔径2mmのパンチングメタルを溶接してある。
【0053】
また、主幹部の、連結部に最も近い下流放出部を取り付けた箇所の底面側に、縦横45mmの穴を空け、そこから下方向に向かう分配部として、一辺が52.5mm、長さ280mmの角パイプを取り付けてある。この角パイプの先端部(底面)は同素材の板で塞いであり、中央には孔径5mmのドレン穴が空けてある。分配部の両側面には、底面からの高さ22.5mmの場所に孔径12mmのオリフィス穴を設けてあり、オリフィス穴の先には、長さ155mmの下流放出部と同様の構成の上流放出部が連結されている。
【0054】
この水蒸気分配ダクトを取り付けた吸着塔に、揮発性有機化合物含有ガスとしてトルエンを0.15%混合した空気を3時間導入した後、LPGを燃焼させた燃焼炉で生じた熱を熱交換器に導入して生成させた160℃の水蒸気を、吸着塔の側面供給口から水蒸気分配ダクトに導入した。脱着により生じた有機化合物含有水蒸気は、吸着塔頂部の供出口から抜き出して、燃焼炉へ送り込みLPGと併用して燃焼させた。このときの燃焼炉の温度の変遷を図9に示す。
【0055】
最初の680℃までの温度上昇はLPGの燃焼による加熱の開始である。680℃まで到達した時点で熱交換器へ熱を供給しはじめるため、一度わずかに温度低下が見られた後、徐々に温度が上昇していく。この間に、熱交換器で脱着用水蒸気を160℃にまで加熱して、吸着塔の側面供給口に導入している。丁度、熱交換器で加熱生成する水蒸気温度が142℃に到達した13時34分に、側面供給口への導入を行っている(「領域A温度」の上昇)。下流放出口から放出された水蒸気に由来すると見られる有機化合物(上記の含有水蒸気A)が、3分後の13時40分頃に供出口まで到達し(「供出口温度」の上昇)、その1分後の13時41分ごろに燃焼炉に到達して、燃焼炉の温度が70℃ほど上昇する。上昇後はピークを生じることなく、5分間ほどなだらかに温度上昇していき、13時47分ごろにわずかなピークを生じる。ここで、上流放出口から放出された水蒸気によって脱着された有機化合物(上記の含有水蒸気B)が燃焼炉に到達したものと考えられる。しかしここでの到達量は限定されたものであるので、その後はゆっくりと温度が低下していく。
【0056】
一方、13時41分ごろに、底部供給口からの脱着用水蒸気の導入を開始する。なお、領域Dの温度上昇は導入からわずかに時間経過した13時43分以降に観測された。以後、領域C及び領域Dでの脱着を進行させながら徐々に上昇していった脱着用水蒸気は、14時2分ごろ燃焼炉に到達し始める。しかしここでの温度上昇は、既に領域Bでの脱着が終わっているために、初期時点で到達する有機化合物の量が少なくなっているので、緩やかな温度上昇となった。
【0057】
(比較例)
実施例において、分配部及び上流放出部が無い水蒸気分配ダクトを用いて、同様の試験を行った。その際の燃焼炉の温度の変遷を図10に示す。最初の680℃までの温度上昇と、その後のわずかな温度低下と、770℃までの温度上昇は実施例と同じである。一方で、熱交換器で加熱生成する水蒸気温度が142℃に到達する10時44分過ぎに、側面供給口への脱着用水蒸気の導入を行った。脱着された有機化合物が約5分後の10時49分ごろに燃焼炉に到達して、燃焼炉の温度が上昇する。しかし、この後領域Bからの有機溶剤は燃焼炉に到達しないため、燃焼炉での温度は一度ピークを示した後、低下傾向を示す(10時54分〜11時07分)。そこで、低下傾向が始まる前の10時50分ごろに、底部供給口からの脱着用水蒸気の導入を開始する。領域B,C,Dでの脱着を進行させながら上昇していった脱着用水蒸気は、11時8分ごろ燃焼炉に到達し始める。ここでの温度上昇は、領域Bの脱着分も同伴しているため、実施例の場合よりも急激であり、燃焼炉にかかる負荷が実施例よりも高くなった。
【符号の説明】
【0058】
A〜D 領域
E 水
F 脱着用水蒸気
G 揮発性有機化合物含有ガス
H 処理後ガス
J 燃料
K 揮発性有機化合物含有水蒸気
10 水蒸気分配ダクト
11 吹込口
12 主幹部
13a,13b,13c 下流放出部(枝部)
14a,14b,14c パンチングメタル
15a,15b,15c オリフィス穴
17a,17b,17c ドレン穴
20 連結穴
21 分配部
22 上流放出部(枝部)
23 パンチングメタル
24,24a ドレン穴
25 オリフィス穴
31 吸着塔
32 側面供給口
33 吸着層
34 供出口
35 底部供給口
36 導入口
37 排出口
38 移送管
39 パンチングメタル
40 排水口
41 燃焼炉
42 燃料供給口
43 含有水蒸気供給口
44 燃焼炉内温度センサ
50 熱交換器
51 供給口
52 水蒸気発生口
56 水蒸気温度センサ
60 水蒸気供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を吸着する吸着剤を充填した吸着層と、吸着した揮発性有機化合物を脱着させる水蒸気の供給口と供出口を有する有機化合物処理装置の吸着塔に取り付ける水蒸気分配ダクトであって、
水蒸気の吹込口から繋がる主幹部と、その主幹部から供出口より遠ざかる方向に分岐する分配部を有し、
少なくとも上記主幹部の一部、上記主幹部に連結する枝部、又はその両方と、上記分配部の一部、上記分配部に連結する枝部、又はその両方とを少なくとも含む、複数の箇所に水蒸気の放出口を設けた水蒸気分配ダクト。
【請求項2】
前記複数の放出口が、上流放出部と、上流放出部より前記供出口側にある下流放出部とに設けられた請求項1の水蒸気分配ダクト。
【請求項3】
上記の枝部として、
上記主幹部から延びる下流放出部を有し、
上記分配部は、上記主幹部の途中から前記供出口より遠ざかる方向へ分岐した先で主幹部と平行方向に延びる上流放出部を有し、
上記下流放出部と上記上流放出部の両方の上面に水蒸気の放出口を設けた請求項2に記載の水蒸気分配ダクト。
【請求項4】
上記放出口が、それぞれの部位の上記供出口に近い側の面を多孔板としたことで形成される請求項1乃至3のいずれかに記載の水蒸気分配ダクト。
【請求項5】
前記供出口から離れた上流放出部の放出口の面積が、前記上流放出部より前記供出口に近い下流放出部の放出口の面積より小さい、請求項2又は3に記載の水蒸気分配ダクト。
【請求項6】
上記下流放出部及び上記上流放出部には、底面にドレン穴が設けてあり、
上記主幹部から上記下流放出部へ通じる部分と上記分配部から上記上流放出部へと通じる部分を隔てる隔壁には、水蒸気の通過を可能とするオリフィス穴が、上記主幹部又は上記分配部内を流れる水も通過できる位置に設けてある、請求項2乃至5のいずれかに記載の水蒸気分配ダクト。
【請求項7】
揮発性有機化合物含有ガスから揮発性有機化合物の吸着を行う有機化合物処理装置であって、
請求項1乃至6のいずれかに記載の水蒸気分配ダクトを、その吹込口を、側面に空けた側面供給口に連結させて内部に取り付けた吸着塔と、
その吸着塔で脱着した揮発性有機化合物含有水蒸気を、燃料とともに燃焼させる燃焼炉と、
その燃焼炉で発生した熱により、上記吸着塔で脱着に用いる脱着用水蒸気を生成する熱交換器とからなる有機化合物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−99728(P2013−99728A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245438(P2011−245438)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】