説明

水蒸気圧縮冷凍機システム

【課題】1000w/m2超えのような大負荷の高温冷却負荷にも充分対応できる冷却塔フリークーリング回路が形成できる水蒸気圧縮冷凍機システムを提供することにある。
【解決手段】外部湿球温度計68の計測値が所定の値以上の場合に、圧縮機50を駆動し、第一のON−OFF制御弁45及び第三のON−OFF制御弁65を開放し、第二のON−OFF制御弁46及び第四のON−OFF制御弁66を閉止し冷凍サイクル運転を行わせ、外部湿球温度計68の計測値が所定の値以下の場合に、圧縮機50を停止し、第一のON−OFF制御弁45及び第三のON−OFF制御弁65を閉止し、第二のON−OFF制御弁46及び第四のON−OFF制御弁66を開放してフリークーリング運転を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリークーリング切替回路を備えた水蒸気圧縮冷凍機システムに係り、特に、年間を通じて大負荷冷房負荷/冷却負荷を有し、高温の冷水を要求する設備に適した冷凍機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水を冷凍サイクルを形成する冷媒として使用する水蒸気圧縮冷凍機システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、特許文献1では、蒸発器と凝縮器の差圧を位置水頭により確保し、もって膨張弁を排除している。
特許文献1では、中間期、冬期とも冷凍機を運転して冷水を冷凍している。そして、特許文献1では、例えば、冷水を20℃で取り出し、負荷側で熱交換して23℃で冷凍機へ戻せるので、あまりに低い冷水温度では、冷却する対象の周囲空気の含有湿分が冷熱熱交換する部位で結露し、その結露水が電子回路などで短絡を引き起こすことを防止するため、高温冷水を要求する半導体製造工場の設備冷却水や、データセンタの通年で非常に密度の高い発熱を発し、且つその発熱を速やかに除去することが要求されるサーバ冷却に使いやすい。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の水蒸気圧縮冷凍機システムでは、年中運転すると、折角冷却塔からの冷却水還り管の冷却水が23℃より低くなっても、ルーツ圧縮機を停止できず、省エネルギー効率が低いという問題がある。
この問題を解決するために、例えば、図3、図4のように、蒸発器1と凝縮器2との間のルーツ圧縮機3による水蒸気搬送管4に、その中間にバイパス制御弁6を設けたバイパス管5を並行に配置し、フリークーリング時にルーツ圧縮機3をバイパスして自然冷媒循環にて冷却塔フリークーリングを実現することが考えられる。
【0004】
図3、図4の水蒸気圧縮冷凍機システムでは、蒸発器1、凝縮器2、冷水ポンプ7、負荷側連結配管8、負荷側熱交換器9、ルーツ圧縮機3、バイパス管5、バイパス制御弁6、真空ポンプ10、冷却水往き管11、冷却水ポンプ12、冷却水還り管13、密閉式冷却塔14、冷却塔冷却水ポンプ15、冷却塔冷却水配管16、外気温度計測器17、連結配管18などを備えている。ここで、ルーツ圧縮機3が動作する冷凍機運転の場合の蒸発器1や凝縮器2における状態については、特許文献1に記載の通りである。
そして、図3に示すように、外気温度計測器17で外気温度を計測して(湿球温度で計測するのがさらに望ましい)、所定の温度以上の外気温度の場合には、TIC(温度コントローラ)19からバイパス制御弁6を閉じてルーツ圧縮機3による運転を行う信号が出され、ルーツ圧縮機3による冷凍機運転を行う。
【0005】
外気温度が低くなってきて、例えば、外気湿球温度が17℃を下回ってきた場合には、図4に示すように、TIC(温度コントローラ)19からの信号によって、ルーツ圧縮機3を停止してバイパス制御弁6を開くことで、密閉式冷却塔14により冷却水還り管13内を搬送する冷却水温度が19℃まで冷やすことができることとなる。
【0006】
真空ポンプ10にて例えば約6.3kPaの飽和水蒸気圧が達成できている凝縮器2の中で、噴霧ノズル2aから吹き出される19℃の冷却水により、凝縮器2内の水蒸気が盛んに凝縮されて20℃の水冷媒液が凝縮器2下方に溜まってくる。そして、図4に示すように、凝縮器2内に次々生じる凝縮水により、真空ポンプ10の減圧により蒸発器1と凝縮器2とでバランスし、ほぼ同じレベルとなっていた所定のそれぞれの水位が、凝縮器2側で高くなろうとしてしまう。よって、その凝縮器2側の上昇水位が位置ヘッドとなって、蒸発器1と凝縮器2の下部を連通している連結配管18の中を水が流れ、自然冷媒循環が形成される。蒸発器1には下部に設けた負荷側連結配管8の冷水往き管8aから20℃の冷水が継続して供給されるので、充分機能する。
バイパス制御弁6の開度の調整により、冷水出口温度制御がある程度行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−97989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図3、図4に示すシステムによる自然冷媒循環フリークーリングでは、負荷が100w/m2程度の建物であれば何とか賄えるが、1000w/m2超えの場合もある今日の冷凍設備では追いつかないので、結局ルーツ圧縮機3が動き続けることとなる。
【0009】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、1000w/m2超えのような大負荷の高温冷却負荷にも充分対応できる冷却塔フリークーリング回路が形成できる水蒸気圧縮冷凍機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の水蒸気圧縮冷凍機システムは、温度計を設ける密閉式の蒸発器と、散水管を内部に設ける密閉式の凝縮器と、蒸発器と凝縮器との冷媒液位のレベル差を確保する圧縮機と、各々が配管で接続される凝縮器、蒸発器、圧縮機及びその間を接続する配管内を30kPa以下の真空状態に保持する、凝縮器に接続される配管に設けられた真空ポンプと、を有する、水が冷凍サイクルを形成する冷媒として使用される水蒸気圧縮冷凍機を備えた水蒸気圧縮冷凍機システムであって、蒸発器の底部と凝縮器の底部とを連結する連通路と、第一のON−OFF制御弁、冷水ポンプ及び温度計を設け、蒸発器の底部に連結される冷水往き管と、流量計及び温度計を設け、蒸発器の上部に連結される冷水還り管とを有する冷水配管と、冷水往き管及び冷水還り管に連結される熱交換器である負荷と、圧縮機を蒸発器と凝縮器との間に位置させて連結する連結配管と、第三のON−OFF制御弁及び冷却水ポンプを設け、凝縮器の底部に連結される冷却水往き管と、温度計を設け、凝縮器の散水管に連結される冷却水還り管とを有する冷却水配管と、冷却水配管に熱交換器の水側が連結される密閉式冷却塔と、第二のON−OFF制御弁を設け、冷水配管の第一のON−OFF制御弁の下流部で冷水ポンプの上流側から分岐し、第二のON−OFF制御弁を介して凝縮器の底面に連絡する第一の分岐管と、第四のON−OFF制御弁を設け、冷却水配管の第三のON−OFF制御弁の下流部で冷却水ポンプの上流側から分岐し、第四のON−OFF制御弁を介して蒸発器の底面に連絡する第二の分岐管と、外部湿球温度計と、外部湿球温度計の計測値が所定の値以上の場合に、圧縮機を駆動し、第一のON−OFF制御弁及び第三のON−OFF制御弁を開放し、第二のON−OFF制御弁及び第四のON−OFF制御弁を閉止し冷凍サイクル運転を行わせ、外部湿球温度計の計測値が所定の値以下の場合に、圧縮機を停止し、第一のON−OFF制御弁及び第三のON−OFF制御弁を閉止し、第二のON−OFF制御弁及び第四のON−OFF制御弁を開放してフリークーリング運転を行わせる制御装置とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の水蒸気圧縮冷凍機システムは、請求項1記載の水蒸気圧縮冷凍機システムにおいて、制御装置は、冷水往き管の温度計と、冷水還り管の流量計及び温度計とに連絡し、2つの温度計及び流量計から負荷熱量を演算する負荷演算部と、蒸発器の温度計と、冷却水還り管の温度計と、外気湿球温度計とに連絡し、負荷演算部での演算に際し、外気湿球温度計の温度が所定の値以下になると、フリークーリング可能時期のトリガが与えられ、蒸発器の温度計の設定温度値と冷却水還り管の温度計の計測値との差、及び冷却水量からフリークーリング熱量を演算し、負荷熱量と比較し、フリークーリング熱量が負荷熱量より多ければフリークーリング運転に切り替える信号を出力する制御コントロール部と、圧縮機と、第一のON−OFF制御弁及び第三のON−OFF制御弁と、第二のON−OFF制御弁及び第四のON−OFF制御弁とに連絡し、制御コントロール部からの指令に基づいて、フリークーリング運転又は冷凍サイクル運転を行わせる信号を出力する信号出力部とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3の水蒸気圧縮冷凍機システムは、請求項2記載の水蒸気圧縮冷凍機システムにおいて、制御コントロール部は、負荷演算部での演算に際し、フリークーリング運転に切り替え後も、蒸発器内の温度計計測値と冷却水還り管の温度計計測値との温度差、及び冷却水量からフリークーリング熱量を演算し、負荷熱量と比較し続け、負荷熱量が多くなった場合、第一のON−OFF制御弁及び第三のON−OFF制御弁を開放し、第二のON−OFF制御弁及び第四のON−OFF制御弁を閉止し、圧縮機を駆動させる冷凍サイクル運転を行わせる信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蒸発器と凝縮器とを、低温水(負荷への供給水)と高温水(冷却塔への供給水)のバッファとしてとらえ、冷却塔で負荷への供給冷水の温度まで冷却できる時期に配管系を切り替えるだけで、冷凍機システム全体を冷却塔フリークーリング設備に簡単に変更できる。
冷却塔で十分に冷水をフリークーリングできる外気湿球温度を、例えば13℃で切り替えるようにすれば、冷却塔を殊更大型化して容量制御することなく、1000w/m2超えのような大負荷の高温冷却負荷にも充分対応できる冷却塔フリークーリング回路を形成することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る水蒸気圧縮冷凍機システムの冷凍機運転時の状態を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る水蒸気圧縮冷凍機システムのフリークーリングのみの運転時の状態を示す構成図である。
【図3】従来の水蒸気圧縮冷凍機システムの冷凍機運転時の状態を示す構成図である。
【図4】従来の水蒸気圧縮冷凍機システムのフリークーリング運転時の状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
本実施形態に係る水蒸気圧縮冷凍機システムは、図1、図2に示すように、水を冷凍サイクルを形成する冷媒として使用する密閉式の水冷媒冷凍機である水蒸気圧縮冷凍機30を有する。
【0016】
水蒸気圧縮冷凍機30は、密閉式の蒸発器35と、この蒸発器35の近傍位置に膨張弁を介設することなく直接に連通路48で相互連結することによって配置された密閉式の凝縮器47と、蒸発器35と凝縮器47との相互間を接続する蒸気ダクトである連結配管51に配設したインバータで制御されるルーツ圧縮機50と、第一のON−OFF制御弁45を設け、蒸発器35とサーバ等の負荷(冷却した水の冷熱を間接的に利用する箇所、つまり熱交換器)45とを繋ぐ冷水配管37の冷水往き管38と、第二のON−OFF制御弁46を設け、冷水配管37の冷水往き管38の第一のON−OFF制御弁45の下流側及び冷水ポンプ39の上流側から分岐し、凝縮器47とを繋ぐ第一の分岐管44と、第三のON−OFF制御弁65を設け、凝縮器47と密閉式冷却塔59とを繋ぐ冷却水配管52の冷却水往き管54と、第四のON−OFF制御弁66を設け、冷却水配管52の冷却水往き管54の第三のON−OFF制御弁65の下流側及び冷却水ポンプ53の上流側から分岐し、蒸発器35とを繋ぐ第二の分岐管64とを有する。
【0017】
蒸発器35は、密閉型に構成され、その内部に入れた蒸発性液体、例えば水を大気圧より低い減圧の状態で蒸発させるものである。蒸発器35は、冷水溜まり内の水温度を計測する温度計36を有する。
この蒸発器35には、冷水往き管38及び冷水還り管41を有する冷水配管37を介して負荷45が連結されている。
【0018】
冷水配管37の冷水往き管38は、第一のON−OFF制御弁45、冷水ポンプ39及び温度計40を設け、蒸発器35の底部と負荷45とに連絡している。また、冷水配管37の冷水還り管41は、流量計42及び温度計43を設け、負荷45と蒸発器35の上部に連絡している。
第一のON−OFF制御弁45と冷水ポンプ39との間から第一の分岐管44が分岐している。第一の分岐管44には、第二のON−OFF制御弁46が設けられている。
【0019】
蒸発器35の底部には、凝縮器47の底部と繋ぐ連通路48が設けられている。この連通路48は、水蒸気圧縮冷凍機30を成り立たせるために設けられている連通配管に相当する。
また、蒸発器35の底部には、第四のON−OFF制御弁66を設けた第二の分岐管64が設けられている。
【0020】
蒸発器35内下部に貯留し蒸発器35内での蒸発水分による蒸発潜熱により温度が低くなった水は、冷水ポンプ39にて汲み出されて冷水配管37の冷水往き管38を介してサーバ等の負荷45に送られた後、熱交換器である負荷45から熱を授与され、冷水配管37の冷水還り管41を介して再び蒸発器35内に噴出して戻される。
凝縮器47は、密閉型に構成され、蒸発器35内での蒸発潜熱により周囲の熱を奪って蒸発発生した蒸気を連結配管51を介して導入し、この蒸気を、噴霧される冷却水水滴表面で発生する気化熱による冷却を行い凝縮するものである。
【0021】
凝縮器47の底部には、第一の分岐管44が設けられている。また、凝縮器47の底部には、第三のON−OFF制御弁65、冷却水ポンプ53を設けた冷却水往き管54が設けられている。
また、凝縮器47には、配管49aを介して真空ポンプ49が接続されている。
真空ポンプ49は、凝縮器47内の空気、つまり凝縮器47に空間として繋がっている連通路48、連結配管51及び蒸発器35と、さらに凝縮器47と蒸発器35に接続されたその他の配管内の空気を排出し、それらの空間内の空気圧力を少なくとも30kPa以下の真空状態とし、例えば、水の37℃飽和蒸気圧である6.3kPa程度の圧力値として凝縮器47内を真空状態とする。
【0022】
ルーツ圧縮機50は、蒸発器35と凝縮器47とを相互に連結する連結配管51に連結されている。ルーツ圧縮機50は、レベル的に併設された蒸発器35と凝縮器46との冷媒液位のレベル差△Lを確保するだけの圧力差を、真空状態において保持できるだけの能力を有している。ルーツ圧縮機50は、例えば、ルーツポンプであり、このルーツポンプはいわゆる真空用のブースタポンプであって、例えば、楕円形のシリンダ内に同形のまゆ型断面形状を有する2つのロータを互いに90°位相をずらせて隣接配置し、各ロータは互いに当速度で回転する。この2つのロータとシリンダとの間に閉じこめられた水蒸気を吸気口から排気口側つまり凝縮器47側に送流する。そして、2つのロータの回転制御はルーツポンプの軸端に接続されたタイミングギヤによって行ない、駆動軸の他端は軸封部を介して大気中に出しモータによって駆動される。そして、このルーツポンプの特徴点は、シリンダ内に摺動部がなく動力損が少なく高速回転が可能となると共に良好な排気特性が得られることにある。
【0023】
なお、本実施形態に係る水蒸気冷凍機システムは、蒸発器35の出口冷水温度は20℃程度の高温が最適ではあるが、そうでなくとも、冷凍機システムの内部真空度を高くし、蒸発器35と凝縮器46との水位差を大きく取る必要があり装置が大がかりになるができなくはない。しかし、冷却塔による年間を通した冷却水の冷却温度から、装置のコストパフォーマンス上有利なのは、例えば、負荷45の入口20℃、出口23℃である温度差3℃であれば、蒸発器35と凝縮器47との水位差ΔLが現実的な数十センチとなる。具体的には、真空ポンプ49によって、凝縮器47の凝縮圧力値6.3kPaになるように真空引きし、蒸発器35の蒸発圧力値1.7kPaになるようにルーツ圧縮機50で圧縮すると、差圧が4.6kPaで47cmの水位差ΔLで冷凍サイクルが成立する。このときに、ルーツ圧縮機50の圧縮比は、2.2あればよい。
なお、凝縮器46内の圧力値を夏外気の湿球温度から、負荷45の入口出口冷水温度は、出口冷水温度では凝縮器内圧力基準とした温度から、入口冷水温度は水位差で規定できる差圧から、それぞれ成り立つよう設計すれば、異なる温度系の冷凍機システムができのはいうまでもない。以下には、上記の負荷入口20℃、出口23℃の冷水条件での数値を示していく。
【0024】
冷却水配管51は、第三のON−OFF制御弁65、冷却水ポンプ53を設けた冷却水往き管54と、温度計57を設けた冷却水還り管56と、冷却水往き管54と冷却水還り管56とを繋ぐ熱交換器コイル55とを有する。冷却水還り管56は、凝縮器47内に設けた散水管58に連絡している。熱交換器コイル55は、密閉式冷却塔59に内蔵されている。
【0025】
密閉式冷却塔59は、熱交換器コイル55に散水管63から循環水を散布して冷却するために、冷却水ポンプ61を設け、下部水槽60と散水管63とを連結する外部水配管62を設けている。
密閉式冷却塔59では、凝縮器47で温まった冷却水を冷却水往き管53から密閉式冷却塔58内蔵の熱交換器コイル55を経て冷却した後、冷却水還り管56を介して凝縮器47内に導き、その上部に散水管58より噴出することにより、連結配管51を介して導入される蒸気を、散水管58から噴出される冷たい冷却水水滴上で冷却凝縮し、この凝縮にて温度が上昇して凝縮器47内の底に溜まった冷却水を、冷却水往き管54を介して再び密閉式冷却塔59へ送る循環を行うように構成されている。
【0026】
冷却水往き管54の第三のON−OFF制御弁65と冷却水ポンプ53との間から第二の分岐管64が分岐している。第二の分岐管64には、第四のON−OFF制御弁66が設けられている。
【0027】
本実施形態に係る水蒸気圧縮冷凍機システムの運転を制御する制御装置67は、負荷演算部67aと、制御コントロール部67bと、信号出力部67cとを有する。
負荷演算部68aには、冷水配管37の冷水往き管38の温度計40と、冷水配管37の冷水還り管41の流量計42及び温度計43が連絡している。負荷演算部67aでは、温度計40,43及び流量計42の計測値から負荷熱量を演算する。
【0028】
制御コントロール部67bには、蒸発器35の温度計36と、冷却水配管51の冷却水還り管56の温度計57と、フリークーリングの冷却能力を司る外気湿球温度計68とに連絡している。
制御コントロール部67bでは、負荷演算部67aでの演算に際し、外気が高温である季節から低温の中間期にかかってくると、外気湿球温度計68の温度が所定の温度を下回り、フリークーリング可能時期のトリガが与えられる。そして、蒸発器35の温度計36の温度(20℃で制御)と冷却水還り管56の温度計57の温度との温度差、及び冷却水量からフリークーリング熱量を演算し、負荷熱量と比較し多ければフリークーリング運転に切り替える出力信号を信号出力部67cへ送る。
【0029】
信号出力部67cには、冷水配管37の冷水往き管38の第一のON−OFF制御弁45と、ルーツ圧縮機50のモータ及びインバータ制御部と、第二の分岐管44の第二のON−OFF制御弁46と、冷却水配管52の第三のON−OFF制御弁65と、第二の分岐管64の第四のON−OFF制御弁66とに連絡している。信号出力部67cでは、制御コントロール部67bからの指令に基づいて、冷水配管37の冷水往き管38の第一のON−OFF制御弁45と、ルーツ圧縮機50のモータ及びインバータ制御部と、第二の分岐管44の第二のON−OFF制御弁46と、冷却水配管52の第三のON−OFF制御弁65と、第二の分岐管64の第四のON−OFF制御弁66とにフリークーリング運転に切り替える信号を出力する。
【0030】
次に、本実施形態に係る水蒸気圧縮冷凍機システムの作用を説明する。
本実施形態に係る水蒸気圧縮冷凍機システムは、図1に示すように、膨張弁を排除しており、蒸発器35、ルーツ圧縮機50、凝縮器47、冷却塔59及び負荷側の冷水配管37を密閉式として接続し、この内部を真空状態にし、ルーツ圧縮機50を運転することで蒸発器35内の水蒸気が蒸発し、蒸発器35内の温度を低下させる。
【0031】
次に、ルーツ圧縮機50によってその水蒸気を圧縮した後、水蒸気は高温となって凝縮器47に導かれる。凝縮器47では、冷却塔59からの冷却水によって凝縮され、再び水に戻る。高温水蒸気の凝縮によって昇温された冷却水は、冷却塔59に送られ、その熱を冷却塔59により外部へ放熱する。凝縮器47内の凝縮水は、凝縮器47と蒸発器35とを連結した連通路48により蒸発器35へ戻り、両容器の圧力差に相当する水位差ΔLを維持する。
【0032】
本実施形態において、水蒸気は、蒸発器35から連結配管51内を流送し、ルーツ圧縮機50に流れ、さらに、凝縮器47に流れ込む。そして、蒸発時に蒸発器35の水を冷却し、冷水を製造する。蒸発器35の出口側は冷水温度が例えば20℃であり、冷水は冷水ポンプ39によりサーバ等の負荷45の入力側に流送される。そこで、負荷45の出口側から例えば23℃の冷水を放出し、蒸発器35内に例えば23℃の冷水として戻される。
【0033】
密閉式冷却塔59は、冷却水配管52に熱交換器コイル55の水側が接続されており、この冷却水配管52により供給される冷却水は熱交換器コイル55内を流れ密閉式冷却塔59内の空気とは接触せず、コイル壁を通して冷却される。そして、凝縮器47の上部入口側から内部に延設される散水管58に導かれた冷却水は、凝縮器47内に噴霧される。この冷却水の温度は、夏期ピーク時において、例えば、32℃である。このとき、凝縮器47の底部に滞留する水冷媒液の温度は、例えば、37℃となっていて、約6.3kPaの飽和水蒸気圧を有し、その出口側から37℃の冷却水が冷却水ポンプ53により密閉式冷却塔59に流送される。
【0034】
本実施形態に係る水蒸気圧縮冷凍機システムでは、凝縮器47の底部に滞留している水冷媒液は、連結配管51から送給される蒸気が凝縮器47中で連続して凝縮し、滞留部分に水冷媒が供給されるため、ルーツ圧縮機50で保持しようとする所定の水位以上に滞留水冷媒液位が上昇する。この水頭により、連通路48を介して余剰の水冷媒液が蒸発器35へ送られる。本実施形態に係る水蒸気圧縮冷凍機システムでは膨張弁を排除できており、蒸発器35及び凝縮器47の圧力差を、凝縮器47内及び蒸発器35内の水位差による水頭差をルーツ圧縮機50により保持し、冷媒のサイクル循環を実現している。
そして、本実施形態に係る水蒸気圧縮冷凍機システムでは、制御装置67によって常時下記のように監視する。
【0035】
負荷演算部67aでは、冷水配管37の温度計40,43及び流量計42による計測値に基づいて、負荷熱量を演算する。
そして、外気が高温である季節から低温の中間期にかかり、外気湿球温度計68の温度が所定の温度を下回ると、フリークーリング可能時期のトリガが与えられる。
制御コントロール部67bでは、蒸発器35内の温度計36による温度(20℃で制御)と冷却水還り管56の温度計57による温度との温度差、及び冷却水量からフリークーリング熱量を演算し、負荷熱量と比較し多ければ、図2に示すように、フリークーリング運転に切り替える。
【0036】
これによって、信号出力部67cは、ルーツ圧縮機50を停止し、第一のON−OFF制御弁45及び前記第三のON−OFF制御弁65を閉止し、前記第二のON−OFF制御弁46及び前記第四のON−OFF制御弁66を開放する指令を出す。
制御装置67は、フリークーリング運転に切り替えた後も、蒸発器35内の温度計36の温度計測値(20℃で制御)と冷却水還り管56の温度計57の温度計測値との温度差、及び冷却水量からフリークーリング熱量を演算し、負荷熱量と比較し続ける。
【0037】
そして、負荷熱量が多くなり、蒸発器35内の温度計36の温度が所定の温度を超えた場合には、第三のON−OFF制御弁65を開放し、同時に第四のON−OFF制御弁66を閉止し、ルーツ圧縮機50を運転した後第一のON−OFF制御弁45を開放し、同時に第二のON−OFF制御弁46を閉止し、ルーツ圧縮機50による冷凍機運転を行わせる。
【0038】
このように、冷凍機運転と冷却塔フリークーリング運転とを、負荷熱量及びフリークーリング熱量を見ながら切り替えて運転する。
さらに、蒸発器35内の温度が所定の温度を超えると、強制的に、第三のON−OFF制御弁65を開放し、同時に第四のON−OFF制御弁66を閉止し、ルーツ圧縮機50を運転した後第一のON−OFF制御弁45を開放し、同時に第二のON−OFF制御弁46を閉止し、ルーツ圧縮機50による冷凍機運転を行わせる。
【0039】
なお、本実施形態において、冷却水量は、例えば、下記のようにして求められる。
密閉式冷却塔59の熱交換量の調整のため、密閉式冷却塔59へ入る手前の冷却水往き管54と、密閉式冷却塔59から出る冷却水還り管56との間に、図示しないバイパス管と3方弁(逆動作する2方弁×2でも良い)が設けられていて、温度計57の温度で3方弁が制御され、フリークーリング運転に切り替わった際には、この図示しないバイパス管に流さないように強制的に3方弁を動作させる。
【0040】
この場合は、冷却水ポンプ53の流量は一定なので、流量は固定値となる。
また、図示しないバイパス管と3方弁を設置することを取り止めて、冷却水ポンプ53を回転数制御する場合は、冷却水ポンプ53の回転数から演算して冷却水量を求めるか、冷却水還り管56に流量計を別途設けて計測しても良い。
以上のように、本実施形態によれば、1000w/m2超えのような大負荷の高温冷却負荷にも充分対応できる冷却塔フリークーリング回路が形成できた。
【0041】
なお、上記実施形態では、ルーツ圧縮機50をインバータ制御する方式で説明したが、インバータ方式に限らない。
また、負荷45として、データセンタのサーバ冷却について説明したが、各種の設備冷却水としても良い。
【符号の説明】
【0042】
30 水蒸気圧縮冷凍機
35 蒸発器
36、40、43、57 温度計
37 冷水配管
38 冷水往き管
39 冷水ポンプ
41 冷水還り管
42 流量計
44 第一の分岐管
45 負荷
46 第二のON−OFF制御弁
47 凝縮器
48 連通路
49 真空ポンプ
50 ルーツ圧縮機
51 連結配管
52 冷却水配管
53 冷却水ポンプ
54 冷却水往き管
55 熱交換器コイル
56 冷却水還り管
58、63 散水管
59 密閉式冷却塔
61 冷却水ポンプ
62 外部水配管
64 第二の分岐管
65 第三のON−OFF制御弁
66 第四のON−OFF制御弁
67 制御装置
67a 負荷演算部
67b 制御コントロール部
67c 信号出力部
68 外気湿球温度計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度計を設ける密閉式の蒸発器と、散水管を内部に設ける密閉式の凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器との冷媒液位のレベル差を確保する圧縮機と、各々が配管で接続される前記凝縮器、前記蒸発器、前記圧縮機及びその間を接続する配管内を30kPa以下の真空状態に保持する、前記凝縮器に接続される配管に設けられた真空ポンプと、を有する、水が冷凍サイクルを形成する冷媒として使用される水蒸気圧縮冷凍機を備えた水蒸気圧縮冷凍機システムであって、
前記蒸発器の底部と前記凝縮器の底部とを連結する連通路と、
第一のON−OFF制御弁、冷水ポンプ及び温度計を設け、前記蒸発器の底部に連結される冷水往き管と、流量計及び温度計を設け、前記蒸発器の上部に連結される冷水還り管とを有する冷水配管と、
前記冷水往き管及び前記冷水還り管に連結される熱交換器である負荷と、
前記圧縮機を前記蒸発器と前記凝縮器との間に位置させて連結する連結配管と、
第三のON−OFF制御弁及び冷却水ポンプを設け、前記凝縮器の底部に連結される冷却水往き管と、温度計を設け、前記凝縮器の散水管に連結される冷却水還り管とを有する冷却水配管と、
前記冷却水配管に前記熱交換器の水側が連結される密閉式冷却塔と、
第二のON−OFF制御弁を設け、前記冷水配管の前記第一のON−OFF制御弁の下流部で冷水ポンプの上流側から分岐し、前記第二のON−OFF制御弁を介して前記凝縮器の底面に連絡する第一の分岐管と、
第四のON−OFF制御弁を設け、前記冷却水配管の前記第三のON−OFF制御弁の下流部で冷却水ポンプの上流側から分岐し、前記第四のON−OFF制御弁を介して前記蒸発器の底面に連絡する第二の分岐管と、
外部湿球温度計と、
前記外部湿球温度計の計測値が所定の値以上の場合に、前記圧縮機を駆動し、前記第一のON−OFF制御弁及び前記第三のON−OFF制御弁を開放し、前記第二のON−OFF制御弁及び前記第四のON−OFF制御弁を閉止し前記冷凍サイクル運転を行わせ、
前記外部湿球温度計の計測値が所定の値以下の場合に、前記圧縮機を停止し、前記第一のON−OFF制御弁及び前記第三のON−OFF制御弁を閉止し、前記第二のON−OFF制御弁及び前記第四のON−OFF制御弁を開放してフリークーリング運転を行わせる制御装置と
を備えることを特徴とする水蒸気圧縮冷凍機システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水蒸気圧縮冷凍機システムにおいて、
前記制御装置は、
前記冷水往き管の温度計と、前記冷水還り管の流量計及び温度計とに連絡し、2つの前記温度計及び前記流量計から負荷熱量を演算する負荷演算部と、
前記蒸発器の温度計と、前記冷却水還り管の温度計と、前記外気湿球温度計とに連絡し、前記負荷演算部での演算に際し、前記外気湿球温度計の温度が所定の値以下になると、前記フリークーリング可能時期のトリガが与えられ、前記蒸発器の温度計の設定温度値と前記冷却水還り管の温度計の計測値との差、及び冷却水量からフリークーリング熱量を演算し、前記負荷熱量と比較し、前記フリークーリング熱量が前記負荷熱量より多ければフリークーリング運転に切り替える信号を出力する制御コントロール部と、
前記圧縮機と、前記第一のON−OFF制御弁及び前記第三のON−OFF制御弁と、前記第二のON−OFF制御弁及び前記第四のON−OFF制御弁とに連絡し、前記制御コントロール部からの指令に基づいて、前記フリークーリング運転又は前記冷凍サイクル運転を行わせる信号を出力する信号出力部と
を備えることを特徴とする水蒸気圧縮冷凍機システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水蒸気圧縮冷凍機システムにおいて、
前記制御コントロール部は、
前記負荷演算部での演算に際し、前記フリークーリング運転に切り替え後も、前記蒸発器内の温度計計測値と前記冷却水還り管の温度計計測値との温度差、及び冷却水量からフリークーリング熱量を演算し、前記負荷熱量と比較し続け、前記負荷熱量が多くなった場合、前記第一のON−OFF制御弁及び前記第三のON−OFF制御弁を開放し、前記第二のON−OFF制御弁及び前記第四のON−OFF制御弁を閉止し、前記圧縮機を駆動させる前記冷凍サイクル運転を行わせる信号を出力する
ことを特徴とする水蒸気圧縮冷凍機システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−230266(P2010−230266A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79716(P2009−79716)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)