説明

水蒸気発生具

【課題】水蒸気が素早く発生し、かつ水蒸気の発生が長時間にわたって持続する水蒸気発生具を提供すること。
【解決手段】本発明の水蒸気発生具10は、被酸化性金属の酸化反応によって生じる熱を利用した水蒸気発生体201,202を少なくとも2個有する。2個の水蒸気発生体201,202は、その水蒸気の発生特性が互いに相違している。水蒸気発生体201,202においては、被酸化性金属の量に対する電解液の量が互いに相違しているか、又は該水蒸気発生体における収容体22の通気度が互いに相違していることで、水蒸気の発生特性が互いに相違していることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの皮膚に水蒸気を付与するために用いられる水蒸気発生具に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、簡易かつ手軽に用いることができるとともに、発熱によって生じる適度な量及び温度の水蒸気を効果的に顔の肌等の身体の一部に供給することのできる水蒸気発生具を提案した(特許文献1参照)。この水蒸気発生具は、シート材料を用いて身体の一部を覆う開口面を備える中空の保形立体形状となるように形成されたマスク本体と、シート材料によりマスク本体と一体に形成されたフラップ状保持片と、このフラップ状保持片によってマスク本体の表面に沿って取り付けられた、酸化反応により発熱して水蒸気を発散する面状発熱体とからなる。この水蒸気発生具においては、酸化反応による発熱を利用して発生した水蒸気を、マスク本体の内側に滞留させつつ、例えば開口面を顔の肌に対向させて、又は開口面で顔の肌を覆って使用される。
【0003】
上述の技術とは別に、特許文献2には、鼻と口及び両頬を覆う本体部と、前記本体部の左右両側から側方へ延出した一対の耳掛け部とを有するマスクが記載されている。このマスクにおける本体部には、本体部を形成する本体シートよりも剛性の高い補強体が設けられている。この補強体は、本体部を左右に二分する縦中心線から左右両側に離れた位置で、かつ本体部の上縁に接近した位置又は上縁に接する位置に部分的に設けられている。この補強体は、酸素が与えられたときに発熱する発熱体を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−073828号公報
【特許文献2】特開2006−102145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらマスク等の加温具は、水蒸気発生の立ち上がりと水蒸気持続性との両立に関して、依然検討の余地があった。
したがって、本発明の課題は、水蒸気発生の立ち上がりと水蒸気発生の持続性とを両立した水蒸気発生具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被酸化性金属の酸化反応によって生じる熱を利用した水蒸気発生体を少なくとも2個有し、それらの水蒸気発生体のうちの一の水蒸気発生体と、他の一の水蒸気発生体との水蒸気発生特性が相違している水蒸気発生具を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸素との接触によって水蒸気が素早く発生し、かつ水蒸気の発生が長時間にわたって持続する水蒸気発生具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の水蒸気発生具が、立体形状になる前の状態を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示す水蒸気発生具における各パネルの結合部を開いて展開した状態を示す展開図である。
【図3】図3は、図1に示す水蒸気発生具を立体形状にして使用する状態を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す水蒸気発生具における各パネルの構造を示す断面図である。
【図5】図5は、図1に示す水蒸気発生具における水蒸気発生体を示す一部破断斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態の水蒸気発生具が、立体形状になる前の状態を示す平面図(図1相当図)である。
【図7】図7は、本発明の第3実施形態の水蒸気発生具が、立体形状になる前の状態を示す平面図(図1相当図)である。
【図8】図8(a)は、本発明の第4実施形態の水蒸気発生具を立体形状にして使用する状態を示す斜視図であり、図8(b)は、図8(a)に示す水蒸気発生具をその開口部側からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の水蒸気発生具の第1の実施形態が示されている。同図に示す水蒸気発生具10は、平板状の第1パネル101と、同じく平板状の第2パネル102を備えている。両者はほぼ同形になっているが、一部異なる形状の部分も有している。各パネル101,102は、互いに平行な直線状の第1側縁10A、及び第2側縁10Bを有している。第2側縁10Bは、その下端に曲線状の部分も有している。また、各パネル101,102は、第1側縁10Aと第2側縁10Bとを連結する上縁10C及び下縁10Dを有している。各パネル101,102は、両パネル101,102が重ね合わされた状態で、パネル101,102の周縁部のうちの一部を残し、他の周縁部どうしが互いに結合することにより袋状をなしている。具体的には、第2側縁10Bを残し、他の周縁部である第1側縁10A、上縁10C及び下縁10Dが結合し、袋状をなしている。
【0010】
図2には、図1に示す水蒸気発生具10の製造前の展開図が示されている。製造前の状態の水蒸気発生具は、第1パネル101及び第2パネル102が一体になっている展開体10’を構成している。各パネル101,102は、第1側縁10Aの位置において連接している。そして、第1側縁10Aに沿って展開体10’を二つ折りし、二つ折りした状態下に、各パネル101,102の上縁10C及び下縁10Dが、所定の結合手段によって結合される。これによって、図1に示す形状の水蒸気発生具10が得られる。結合手段に特に制限はなく、パネル101,102を構成する材料に応じて適切な結合手段を採用することができる。例えば熱融着、接着剤による接着、超音波溶着等を用いることができる。
【0011】
第1パネル101は、第1水蒸気発生体201を備えている。また第2パネル102は、第2水蒸気発生体202を備えている。各水蒸気発生体201,202は同形のものであり、図2に示す展開体10’において、各水蒸気発生体201,202は、第1側縁10Aを挟んで対称な位置に配置されている。
【0012】
水蒸気発生具10は、その使用前の状態においては、図1に示すように平板状すなわち、平積みすることができる平らな形状をしている。一方、使用時においては、図3に示すように、第1パネル101及び第2パネル102の結合されていない周縁部である第2側縁10Bを拡開することで、開口部を有する略カップ状の立体形状をなすように構成されている。水蒸気発生具10が、平板状から立体形状への変形する詳細については後述する。
【0013】
図4には、図2に示す展開体10’におけるIV−IV線断面図が示されている。展開体10’は、水蒸気発生具10が、カップ状の立体形状に変形したときに、該水蒸気発生具10の内面を構成する第1シート11と、該水蒸気発生具10の外面を構成する第2シート12とを有している。第1シート11と、第2シート12とは、それらの周縁部の全域で結合されている。更に、第1シート11と、第2シート12とは、上述した第1側縁10Aに相当する位置においても連接されている。そして、周縁部よりも内側の領域(ただし、第1側縁10Aに相当する位置は除く)においては、両シート11,12は非結合状態になっている。
【0014】
第1シート11及び第2シート12は、それらのうちの少なくとも一方のシートが通気性を有していることが好ましい。通気性を有するシートとして用いられるものとしては、例えば不織布等の各種繊維シートや、微多孔性のフィルムなどを用いることができる。不織布の具体例としては、エアスルー不織布やスパンボンド不織布などが挙げられる。第1シート11及び/又は第2シート12が通気性を有する場合、その通気性の程度は、後述する水蒸気発生体201,202を構成する第1の面23及び第2の面24の通気性の程度よりも大きくする。
【0015】
第1シート11と第2シート12とが上述の態様で結合されることによって、両シート間には非結合部が存在する。該非結合部は空間になっており、該空間に平板状の水蒸気発生体201,202が配置されている。本実施形態においては、先に述べたとおり、第1パネル101に第1水蒸気発生体201が配置されており、第2パネル102に第2水蒸気発生体202が配置されている。前記の空間内での位置ずれを防止する目的で、各水蒸気発生体201,202は、その上面及び/又は下面が、それに対向する第1シート11及び/又は第2シート12と部分的に結合してもよい。例えば、後述する水蒸気発生体201,202の収容体22における使用者の肌から遠い側に位置する第2の面24と第2シート12とを接着剤等で接着することができる。水蒸気発生体201,202は、被酸化性金属及び水を含有しており、該被酸化性金属の酸化反応によって生じた熱を利用して水蒸気を発生させるものである。
【0016】
本発明の水蒸気発生具10は、これが酸素と接触してから水蒸気が発生するまでの時間が短く、かつ水蒸気の発生が長時間持続することを特徴の一つとしている。このような水蒸気の発生特性を発現させることを目的として、水蒸気発生具10においては、2個の水蒸気発生体201,202として、水蒸気の発生特性が互いに相違しているものを用いている。具体的には、2個の水蒸気発生体201,202のうち、一方の水蒸気発生体として、水蒸気発生の立ち上がり時間の早いものを用い、他方の水蒸気発生体として、水蒸気発生の持続時間の長いものを用いている。すなわち、本発明においては、立ち上がり時間の早い水蒸気発生体と持続時間の長い水蒸気発生体とを併用することで、立ち上がり時間が早く、かつ持続時間の長い水蒸気発生具10となしている。
【0017】
本明細書において、水蒸気発生の立ち上がり時間とは、水蒸気発生体を温度20℃、相対湿度60%環境の空気下に静置した場合に0.05g/min以上の水蒸気放出量になるまでの時間のことである。水蒸気発生の持続時間とは、水蒸気発生体を温度20℃、相対湿度60%環境の空気下に静置した場合に0.05g/min以上の水蒸気放出量が持続する時間のことである。ここで、水蒸気放出量とは、温度20℃,湿度60%環境の空気下に静置した場合に放出した水蒸気により減少する水蒸気発生体の質量変化を測定することにより求めることができる。水蒸気発生体201,202の水蒸気発生特性をコントロールするための手段については後述する。
【0018】
水蒸気発生体201,202においては、その一方における水蒸気発生の立ち上がり時間が0.4〜3分、特に0.6〜2分であることが好ましい。この場合、他方における水蒸気発生の立ち上がり時間は、一方における水蒸気発生の立ち上がり時間よりも遅く、且つ、0.8〜7分、特に1〜12分であることが好ましい。
【0019】
水蒸気発生の持続時間に関しては、他方の水蒸気発生体は、水蒸気発生の持続時間が2.5〜20分、特に3〜15分であることが好ましい。この場合、一方における水蒸気発生の持続時間は、他方における水蒸気発生の持続時間よりも短く、且つ、1〜10分、特に2〜8分であることが好ましい。
【0020】
図5には、水蒸気発生体201を一部切り欠いた状態の斜視図が示されている。なお、図示していないが、もう一方の水蒸気発生体202も同様の構造になっている。水蒸気発生体201は、水蒸気発生部21及び該水蒸気発生部21を収容する収容体22を備えている。収容体22は扁平なものであり、水蒸気発生体201の輪郭をなしている。収容体22は、複数のシート材が貼り合わされることで、水蒸気発生部21が収容される密閉空間が形成されたものである。扁平な形状を有する収容体22は、着用者の肌に近い側に位置する第1の面23、及びそれと反対側であり、使用者の肌から遠い側に位置する第2の面24を有している。第1の面23は、第1シート11と対向している。一方、第2の面24は、第2シート12と対向している。
【0021】
水蒸気発生部21は被酸化性金属が酸素と接触することによる酸化反応で生じた熱を利用して、所定温度に加熱された水蒸気を発生する部位であり、水蒸気発生部21は被酸化性金属、反応促進剤、電解質及び水を含んでいる。被酸化性金属としては例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の粉末や繊維が挙げられる。これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄粉が好ましく用いられる。被酸化性金属が粉末である場合その粒径は0.1〜300μmであることが好ましい。反応促進剤としては、水分保持剤として作用する他に、被酸化性金属への酸素保持/供給剤としての機能も有しているものを用いることが好ましい。例えば活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、シリカ等が挙げられる。これらの中でも保水能、酸素供給能、触媒能を有する点から活性炭が好ましく用いられる。被酸化性金属と効果的に接触し得る点から、反応促進剤の粒径は0.1〜500μmであることが好ましい。電解質としては、水に溶解して電解液となるものであり、特に、被酸化性金属の酸化反応を更に促進するものであることが好ましく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コスト等の点から塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0022】
水蒸気発生部21は、例えば発熱シート又は発熱粉体からなる。水蒸気発生部21が発熱シートからなる場合には、該発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物、電解質及び水を含む、含水状態の繊維シートであることが好ましい。すなわち、該発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されていることが好ましい。ここで、繊維状物としては、コットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ等の天然繊維、又は例えばレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラ等の半合成繊維やポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等の合成高分子繊維等を用いることができる。発熱シートとしては、湿式抄造により得られたシート状物や、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。これら繊維状物は、その平均繊維長が0.1〜50mmであることが、発熱シートの強度確保及び繊維状物の水分散性の点から好ましい。そのような発熱シートは、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。
【0023】
一方、水蒸気発生部21が発熱粉体からなる場合には、該発熱粉体は被酸化性金属、反応促進剤、保水剤、電解質及び水を含んで構成されていることが好ましい。発熱シート及び発熱粉体のうち、どのような姿勢においても水蒸気を均一に適用し得る点から、発熱シートを用いることが好ましい。また、発熱シートは、発熱粉体に比較して、発熱の温度分布を均一化することが容易であり、また、被酸化性金属の担持能力が優れている点からも有利である。
【0024】
水蒸気発生部21は、賦香されていてもよい。これによって使用者は、水蒸気の発生とともに芳香を感じるようになり、水蒸気発生具10を用いたことによるリラックス感を一層感じるようになる。賦香のために用いられる材料としては、例えば、鎖状モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、モノテルペンアルコール若しくは脂環式アルコールの酢酸エステル類、ジヒドロジャスモン酸メチル、ヨノン、又はダマスコンなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0025】
水蒸気発生体201を構成する収容体22における第1の面23は空気及び水蒸気の透過が可能なように通気性を有している。一方、第2の面24は、空気及び水蒸気の透過の程度が第1の面23よりも低くなっている。すなわち第2の面24は第1の面23よりも難通気性であるか、又は非通気性である。なお、第2の面24が難通気性であるか、それとも非通気性であるかは、水蒸気発生具10の具体的な用途に応じて適宜選択される。
【0026】
水蒸気発生体201における第1の面23及び第2の面24はいずれもシート材から構成されている。そして水蒸気発生体201の収容体22はその周縁に、第1の面23及び第2の面24をそれぞれ構成するシート材の周縁部を互いに結合して形成された閉じた形状の周縁結合部25を有している。周縁結合部25は連続に形成されている。収容体22は、周縁結合部25よりも内側の部分において第1の面23と第2の面24とが非結合状態になっている。それによって収容体22には、水蒸気発生部21を収容する単一の密閉空間が形成されている。水蒸気発生部21は収容体22に形成されている空間のほぼ全域を占めるように収容されている。
【0027】
水蒸気発生体201においては、第1の面23及び第2の面24の通気度を適切に調整することで、第1の面23を通じて水蒸気が優先的に放出されるように構成されている。具体的には、第2の面の通気度は、第1の面の通気度よりも大きい。ここで、通気度はJIS P8117によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.45cm2の面積を通過する時間で定義される。したがって、通気度が大きいことは空気の通過に時間がかかること、すなわち通気性が低いことを意味している。本実施形態において、第1の面23及び第2の面24の通気性を比較すると、第1面23の方が、第2の面24よりも高くなっている。すなわち、先に述べたとおり、第2の面24は非通気性であるか、又は難通気性(即ち、通気性を有するものの、第1の面23よりも低い通気性を有している)である。
【0028】
収容体22は、通気面である第1の面23と、それに対向する非通気面である第2の面24とを有する扁平な形態をしており、通気面である第1の面23を通じて所定温度に加熱された水蒸気が発生するようになされている。あるいは、収容体22は、通気面である第1の面23と、それに対向する難通気面である第2の面24とを有する扁平な形態をしており、通気面である第1の面23を通じて蒸気温熱が発生するようになされている。
【0029】
第2の面24が難通気性である場合、第1の面23と第2の面24の通気度をバランスさせることで、空気は第2の面24を通じて優先的に収容体22内に流入するとともに、水蒸気は第1の面23を通じて優先的に放出される。このように、該第2の面24を通じての空気の流入を確保しつつ、該面24を通じての水蒸気の放出を抑制させる観点から、第2の面24の通気度を、第1の面23の通気度の1.5倍以上、特に2倍以上とすることが好ましい。一方、第2の面24が非通気性である場合、収容体22内への空気の流入、及び水蒸気の発生は、専ら第1の面23を通じて行われる。
【0030】
第1の面23の通気度は、0.01〜5000秒/(100ml)、好ましくは、0.01〜2500秒/(100ml)、特に0.01〜1000秒/(100ml)とすることが好ましい。一方、第2の面24に関しては、これが難通気性である場合、該面24の通気度を7500秒/(100ml)以上、特に10000秒/(100ml)以上とすることが好ましい。
【0031】
水蒸気発生体201における第1の面23及び第2の面24はいずれもシート材から構成されている。通気度を支配しかつ粉体の漏れ出しを防止するシート材としては、メルトブローン不織布や透湿性フィルムが好適に用いられる。透湿性フィルムは、熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られたものであり、微細な多孔質構造になっている。種々の通気度及び透湿度を有するシート材を組み合わせて積層シートを構成することで、第1の面23及び第2の面24の通気度を所望の値に設定する自由度が増す。
【0032】
上述の構成を有する2つの水蒸気発生体201,202の一方において、水蒸気発生の立ち上がり時間や水蒸気発生の持続時間をコントロールするためには、例えば(イ)被酸化性金属の量に対する電解液の量をコントロールしたり、(ロ)収容体22の通気度をコントロールしたりすればよい。
【0033】
前記の(イ)に関しては、被酸化性金属の量に対する電解液の量を増やすことで、水蒸気発生の持続時間を長くすることができる。この場合には、水蒸気発生の立ち上がり時間は遅くなる傾向にある。逆に、被酸化性金属の量に対する電解液の量を減らすことで、水蒸気発生の立ち上がりを早くすることができる。この場合には、水蒸気発生の持続時間は短くなる傾向にある。したがって、2つの水蒸気発生体201,202において、被酸化性金属の量に対する電解液の量を互いに相違させることで、水蒸気発生具10全体としての水蒸気発生の立ち上がり時間を短くすることができ、かつ水蒸気発生の持続時間を長くすることができる。すなわち、水蒸気発生特性が相違している一の水蒸気発生体の、被酸化性金属の質量に対する電解液の質量の比率(電解液含有量/被酸化性金属含有量)は0.3〜0.75が好ましく、特に0.35〜0.55であるとより好ましい。また、他の一の水蒸気発生体の、被酸化性金属の質量に対する電解液の質量の比率(電解液含有量/被酸化性金属含有量)は、一の水蒸気発生体の比率よりも大きく且つ0.35〜0.85が好ましく、特に0.4〜0.75であるとより好ましい。
【0034】
前記の(ロ)に関しては、収容体22の通気度の値を大きくすることで、水蒸気発生の持続時間を長くすることができる。この場合には、水蒸気発生の立ち上がり時間は遅くなる傾向にある。逆に、収容体22の通気度の値を小さくすることで、水蒸気発生の立ち上がりを早くすることができる。この場合には、水蒸気発生の持続時間は短くなる傾向にある。したがって、2つの水蒸気発生体201,202において、収容体22の通気度の値を互いに相違させることで、水蒸気発生具10全体としての水蒸気発生の立ち上がり時間を短くすることができ、かつ水蒸気発生の持続時間を長くすることができる。すなわち、水蒸気発生特性が相違している一の水蒸気発生体の第1の面23の通気度は0.01〜5000秒/(100ml)が好ましく、特に0.01〜2500秒/(100ml)であるとより好ましく、第2の面24の通気度は7500秒/(100ml)以上が好ましく、特に10000秒/(100ml)以上であるとより好ましい。また、他の一の水蒸気発生体の第1の面23の通気度は、一の水蒸気発生体の通気度よりも大きく且つ1〜5000秒/(100ml)が好ましく、特に500〜5000秒/(100ml)であるとより好ましく、第2の面24の通気度も一の水蒸気発生体の通気度よりも大きく且つ7500秒/(100ml)以上が好ましく、特に7500〜90000秒/(100ml)であるとより好ましい。
【0035】
前記の(イ)と(ロ)を組み合わせることで、水蒸気発生具10全体としての水蒸気発生の立ち上がり時間及び水蒸気発生の持続時間を、一層精密にコントロールすることができる。また、(イ)及び/又は(ロ)の手段と、水蒸気発生体の使用個数等を組み合わせて採用することでも、水蒸気発生具10全体としての水蒸気発生の立ち上がり時間及び水蒸気発生の持続時間を、一層精密にコントロールすることができる。
【0036】
次に、水蒸気発生具10が平板状から立体形状へ変形する機構について説明する。図4に示すように、水蒸気発生具10の各パネル101,102は、第1シート11及び第2シート12のみからなる部位(例えば図2中、符号Aで示す部位)と、これらの部材に加えて、水蒸気発生体201,202からなる部位(例えば図2中、符号Bで示す部位)とを有している。そして、水蒸気発生体201,202が、後述するように被酸化性金属等を含んでいるので、固く形成されている。したがって、部位Aと部位Bとを対比すると、水蒸気発生体201,202を含んでいる分だけ、部位Bの方が、剛性が高くなっている。その結果、各パネル101,102は、部位Aと部位Bとの境界部において、換言すれば水蒸気発生体201,202の周縁部に沿って易折曲が可能になっている。したがって、例えば図1に示す平板状の状態の水蒸気発生具10を手で持ち、そのときに上縁10C及び下縁10Dに指を掛けて上下方向から力を加え、第2側縁10Bを拡開すると、水蒸気発生体201,202の下縁201D,202D(図2参照)に沿って各パネル101,102が内側へ向けて折曲し、図3に示すカップ状の立体構造となる。この場合、部位Bの剛性は高いので、パネル101,102にそれらの上下から力が加わっても、該部位Bは変形せず、平板状の状態を保ったままでいる。その結果、図3に示すように立体構造となった水蒸気発生具10の開口部30を正面からみたときに、該開口部30の開口端は、略直線の組み合わせから構成される略三角形、具体的には略二等辺三角形の形状になっている。なお、部位Bの剛性を補強するため、部位Aと部位Bの間に剛性を有する部位B’(図示せず)を更に挟み込んでもよい。
【0037】
水蒸気発生体201,202の下縁201D,202Dに沿って各パネル101,102が首尾良く折曲するようにするためには、部位Aと部位Bとの剛性の差が大きいことが好ましい。なお、剛性は、長辺70mm×短辺60mmの矩形試料の両短辺部をそれぞれ10mmの幅で支持体に固定し、両支持体から等距離の位置に、支持体に平行にアルミニウム製の平棒(長辺50mm×5mm、重さ5g)をのせ、該平棒の板上部から垂直に500g加重して、試料のたわみ量を加重後のアルミニウム平棒の降下部の距離として測定した。測定された部位Aと部位Bとのたわみ量の差が1〜7mm、特に2〜5mmであることが好ましい。また、各パネル101,102の第1側縁10Aと水蒸気発生体201,202の第1側縁201A,202A(図1参照)との距離が0mm〜30mm、特に0mm〜10mmであると、首尾よくカップ状の立体構造となるため好ましい。
【0038】
図3に示すように、略三角形の形状になっている開口部30の開口端は、三辺のうちの底辺30Bが、各パネル101,102を水蒸気発生体201,202の周縁部に沿って折曲した部位Aから構成されている。これに対して、2つの斜辺30Sは、上述した部位B、すなわち第1シート11及び第2シート12並びに水蒸気発生体201,202から構成されている。このような構成を採用することで、水蒸気発生具10の使用中には、主として、部位Aから構成される底辺30Bを含む面から空気が水蒸気発生具10内に流入する。そして流入した空気と被酸化性金属とが反応して生じた熱によって発生した水蒸気は、斜辺30Sを含む面から放出され、水蒸気発生具10内に充満する。このように、水蒸気発生具10においては、立体形状を構成する三面のうち、一面が空気の取り込み面であり、他の二面が水蒸気の放出面になっている。つまり、各面に異なる機能を付与している。その結果、水蒸気発生体201,202の発熱が安定するとともに、水蒸気の発生も安定する。
【0039】
図3に示す形状の水蒸気発生具10を、例えば使用者の口及び鼻を覆うように装着する場合には、底辺30Bが使用者の口の下に位置し、2つの斜辺の交点である頂点が使用者の眉間近傍に位置するように装着する。このような装着形態を採用することで、水蒸気発生具10内の空間を十分に確保することができ、水蒸気の発生中に使用者が息苦しさを感じることが軽減される。
【0040】
なお、パネル101,102における水蒸気発生体201,202の配置の位置によっては、該パネル101,102が、水蒸気発生体201,202の下縁201D,202Dに沿って折曲する代わりに、又はそれに加えて、水蒸気発生体201,202の上縁201C,202C(図2参照)に沿って折曲する場合もある。パネル101,102が、水蒸気発生体201,202の下縁201D,202Dに沿って折曲するか、それとも上縁201C,202Cに沿って折曲するかは、水蒸気発生体201,202の下縁201D,202Dとパネル101,102の下縁10Dとの距離や、水蒸気発生体201,202の上縁201C,202Cとパネル101,102の上縁10Cとの距離に依存する。一般的に言って、この距離が大きいほど、折曲は起こりやすくなる。パネル101,102が、水蒸気発生体201,202の下縁201D,202D及び上縁201C,202Cに沿って折曲する場合には、水蒸気発生具10の開口部30を正面からみたときに、該開口部30の開口端は略直線の組み合わせから構成される略多角形になる。
【0041】
図2に示すように、図1に示す水蒸気発生具10の製造前の展開体10’においては、各パネル101,102はほぼ同形であるが、一部形状が異なっている。具体的には、第1パネル101では、第2側縁10Bにおける直線状の部分と、曲線状の部分との交点が、鈍角の角部Cとなっている。これに対して、第2パネル102では、第1パネル101の角部Cに対応する部位が、湾曲状に切りかかれており、切り欠き部Nとなっている。そして、第1パネル101と第2パネル102とを重ねると、図1に示すように、第2パネル102に切り欠き部Nが形成されていることによって、第1パネル101の角部Cが第2パネル102側からみたときに露出するようになっている。角部Cが露出していることで、図1に示す状態の平板状の水蒸気発生具10を立体形状に変形させるときに、第2側縁10Bを拡開しやすくなり、変形の操作を行い易くなるという利点が生じる。
【0042】
図1に示すように、水蒸気発生具10は、パネル101,102の下縁10Dから下方に垂下する片部31を有している。片部31は、下縁10Dの延びる方向と同方向に延びている。そして片部31は、その延びる方向の中央域に、凹陥部31Aを有している。凹陥部31Aは、図1に示す平板状の水蒸気発生具10を、図3に示す立体形状に変形させる動作を行い易くするために設けられている。詳細には、図1に示す平板状の状態の水蒸気発生具10を手で持ち、そのときに上縁10C及び片部31に指を掛けて上下方向から力を加える場合、片部31に凹陥部31Aが設けられていると、該凹陥部31Aに指を掛け易くなり、力を加えやすくなる。また、凹陥部31Aは指を掛けるときの目印にもなり、初めて水蒸気発生具10を使用する者であっても、立体変形の操作を円滑に行うことができる。
【0043】
図1及び図2に示すように、水蒸気発生具10においては、水蒸気発生体201,202が、開口部の周縁部である第2側縁10Bから所定距離Dだけ隔てた位置に配置されている。開口部の周縁部のすぐ近くに水蒸気発生体201,202が配置されていると、該水蒸気発生体20から生じた水蒸気が、使用者に直接当たりやすく、息苦しさを感じることがあるが、開口部の周縁部から距離を隔てて水蒸気発生体201,202を配置することで、そのような息苦しさを低減させることができる。この観点から、第2側縁10Bから水蒸気発生体201,202までの距離Dは、該水蒸気発生体201,202の水蒸気発生能にもよるが、5〜30mmであることが好ましく、5〜25mmであることが更に好ましい。
【0044】
水蒸気発生具10は、典型的には、上述したとおり、使用者の口及び鼻を覆うように装着してスチームマスクとして用いることができる。この場合、水蒸気発生具10に耳掛け部(図示せず)を取り付けて、該耳掛け部によって水蒸気発生具10を保持してもよく、あるいはそのような耳掛け部を用いずに、水蒸気が発生している期間にわたり、水蒸気発生具10を使用者が手で保持していてもよい。また、水蒸気発生具10は、これを使用者の口及び鼻以外の部位の皮膚に接触させて使用してもよい。
【0045】
水蒸気発生具10を用いることで、それから発生する水蒸気が人体に付与され、喉や鼻孔を潤したり、人体のその他の部位の皮膚を潤したりすることができる。また、リラックス感を付与することもできる。
【0046】
次に、本発明の第2ないし第4の実施形態について、図6ないし図8を参照しながら説明する。これらの実施形態については、先に述べた実施形態と異なる点について説明し、特に説明しない点については、先に述べた実施形態に関する説明が適宜適用される。また、図6ないし図8において、図1ないし図5と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0047】
まず、本発明の第2実施形態の水蒸気発生具10について、図6に基づいて説明する。図6に示す第2の実施形態の水蒸気発生具10は、各パネル101,102にそれぞれ2個の水蒸気発生体が配されている。4つの水蒸気発生体はいずれも同形である。図6に示す使用前の状態において、2つの第1水蒸気発生体201a,202aは完全に重なり合う位置に配置されている。2つの第2水蒸気発生体201b,202bについても同様である。第1水蒸気発生体201aと第2水蒸気発生体201bは、水蒸気発生具10の幅方向(図6中、左右方向)に沿って並列配置されている。第1水蒸気発生体202aと第2水蒸気発生体202bも、水蒸気発生具10の幅方向(図6中、左右方向)に沿って並列配置されている。第1のパネル101は、第1水蒸気発生体201aと第2水蒸気発生体201bを有している。第2のパネル102は、第1水蒸気発生体202aと第2水蒸気発生体202bを有している。各パネル101,102においては、第2水蒸気発生体201b,202b,が第1水蒸気発生体201a,202aよりも水蒸気発生具10の開口部に近い側に位置している。
【0048】
第1水蒸気発生体201a,202aは、第2水蒸気発生体201b,202bに比べて水蒸気発生の立ち上がり時間の早いものである。また、第2水蒸気発生体201b,202bは、第1水蒸気発生体201a,202aに比べて水蒸気発生の持続時間の長いものである。このように、第1水蒸気発生体201a,202aと第2水蒸気発生体201b,202bとで、水蒸気の発生特性が相違していることで、次に述べる有利な効果が奏される。すなわち、第1水蒸気発生体201a,202aは、第2水蒸気発生体201b,202bに比べて、水蒸気発生の立ち上がり時間が早く、水蒸気発生の持続時間が短くなっている。このような特性を有する第1水蒸気発生体201a,202aを水蒸気発生具10の奥側、すなわち使用者の肌から遠い側に配することで、使用者に過度の熱さを与えることなく、短い立ち上がり時間で多量の水蒸気を付与することができる。しかし、第1水蒸気発生体201a,202aが奥側に配されていることに起因して、発生した水蒸気が使用者の肌に到達するまでの間に、水蒸気の温度が低下する懸念がある。そこで、第1水蒸気発生体201a,202aよりも手前側に第2水蒸気発生体201b,202bを配置して、それから生じる熱(水蒸気)を利用して、第1水蒸気発生体201a,202aから発生した水蒸気の保温を行っている。このように、第1水蒸気発生体201a,202aは、主として水蒸気の発生のために用いられるものであり、第2水蒸気発生体201b,202bは、主として水蒸気の保温のために用いられるものである。
【0049】
第1水蒸気発生体201a,202aは、水蒸気発生の立ち上がり時間の早くするために、収容体22の第1の面23の通気度を、0.01〜100秒/(100ml)、特に0.01〜10秒/(100ml)に設定し、収容体22の第2の面24の通気度を、7500秒/(100ml)以上、特に10000秒/(100ml)以上に設定することが好ましい。第2水蒸気発生体201b,202bは、水蒸気発生の持続時間を長くするようにし、使用者に水蒸気の温度の低下を感じさせないようにするために、収容体22の第1の面23の通気度を、1000〜5000秒/(100ml)、特に1000〜2500秒/(100ml)に設定し、収容体22の第2の面24の通気度を、7500秒/(100ml)以上、特に10000秒/(100ml)以上に設定することが好ましい。
【0050】
なお、図6に示す実施形態においては、2つの第1水蒸気発生体201a,202aの水蒸気発生量や発熱温度を同じにしてもよく、あるいは異ならせてもよい。2つの第2水蒸気発生体201b,202bに関しても同様である。
【0051】
次に、本発明の第3実施形態の水蒸気発生具10について、図7に基づいて説明する。図7に示す第3の実施形態の水蒸気発生具10は、第1水蒸気発生体201a,202aと第2水蒸気発生体201b,202bとの配置の位置が図6に示す実施形態と異なる以外は、図6に示す実施形態と同じになっている。図7に示す実施形態においては、水蒸気発生具10の高さ方向(図7中、上下方向)に沿って、第1水蒸気発生体201a,202aと第2水蒸気発生体201b,202bとが配置されている。具体的には、水蒸気発生具を使用者の口及び鼻を覆うように使用者の顔に当接させた使用状態での水蒸気発生具において使用者の眉間近傍に当接された側を水蒸気発生具の上側とし、水蒸気発生具において使用者の口の下に当接された側を水蒸気発生具の下側としたときに、第1水蒸気発生体201a,202aが下側に位置し、その上側に第2水蒸気発生体201b,202bが位置している。その結果、第1水蒸気発生体201a,202aは、使用者の口に近い位置に配置され、第2水蒸気発生体201b,202bは、使用者の鼻に近い位置に配置されている。水蒸気発生具10の幅方向(図7中、左右方向)に関しては、第1水蒸気発生体201a,202aは、第1側縁10Aに近い側に位置し、一方、第2水蒸気発生体201b,202bは、第2側縁10Bに近い側に位置している。
【0052】
本実施形態の水蒸気発生具10によれば、第1水蒸気発生体201a,202aによって、水蒸気発生の立ち上がり時間が早いため、初期から水蒸気を付与することができる。しかし、第1水蒸気発生体201a,202aが下側に配されていることに起因して水蒸気が上側に向けて上昇するため、その結果、発生した水蒸気が使用者の肌に到達するまでの間に、水蒸気の温度が低下する懸念がある。そこで、第1水蒸気発生体201a,202aよりも上側に第2水蒸気発生体201b,202bを配置して、それから生じる熱(水蒸気)を利用して、第1水蒸気発生体201a,202aから発生した水蒸気の保温を行っている。また、水蒸気発生の持続時間が長い第2水蒸気発生体201b,202bを、使用者の鼻の近くに位置させることで、第1水蒸気発生体201a,202aからの水蒸気発生が終了した後の急激な温度低下に起因する鼻閉感を、第2水蒸気発生体201b,202bの発熱によって低減することができる。
【0053】
次に、本発明の第4実施形態の水蒸気発生具10について、図8に基づいて説明する。図8(a)に示す第4の実施形態の水蒸気発生具10は、これまでの実施形態と異なり、4つのパネル101,102,103,104を有している。各パネルには、1つずつ水蒸気発生体201,202,203,204が配されている。4つの水蒸気発生体は、それらのうちの少なくとも一つが、他の水蒸気発生体と比べて、水蒸気の発生特性が相違している。
【0054】
この水蒸気発生具10においては、その使用状態において、上下方向に隣り合う水蒸気発生体201,202の間,203,204の間,201,203の間,202,204の間においてパネルの折曲が生じる。その結果、水蒸気発生具10をその開口部30側からみると、図8(b)に示すように、開口部30が略四角形(略菱形)をしたカップ状の形状となる。本実施形態によれば、水蒸気発生具10にて使用者の鼻及び口を覆うことが一層容易になる。
【0055】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば各パネル101,102の形状は上述のものに限られることなく、他の形状であってもよい。
【0056】
また前記の実施形態においては、片部31が各パネル101,102に設けられていたが、これに代えて一方のパネルにのみ設けられていてもよい。また、平板状の形状から立体形状への変形を容易に行える場合には、片部31は設けなくてもよい。
【0057】
また前記の実施形態においては、各パネル101,102に水蒸気発生体20が1個ずつ配置されていたが、これに代えて2個以上の水蒸気発生体を配置してもよい。また、各パネル101,102における水蒸気発生体の数は同じでなくてもよい。この場合、各水蒸気発生体の水蒸気発生特性は同じであっても良いし相違していても良い。
【符号の説明】
【0058】
10 水蒸気発生具
10A 第1側縁
10B 第2側縁
10C 上縁
10D 下縁
201,202 水蒸気発生体
30 開口部
31 片部
31A 凹陥部
101 第1パネル
102 第2パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被酸化性金属の酸化反応によって生じる熱を利用した水蒸気発生体を少なくとも2個有し、それらの水蒸気発生体のうちの一の水蒸気発生体と、他の一の水蒸気発生体との水蒸気発生特性が相違している水蒸気発生具。
【請求項2】
水蒸気発生特性が相違している前記一の水蒸気発生体と他の一の水蒸気発生体とは、被酸化性金属の量に対する電解液の量が相違している請求項1記載の水蒸気発生具。
【請求項3】
各水蒸気発生体は、通気性を有する収容体内に被酸化性金属を含む水蒸気発生部が収容されており、
水蒸気発生特性が相違している前記一の水蒸気発生体と他の一の水蒸気発生体とは、前記収容体の通気度が相違している請求項1又は2記載の水蒸気発生具。
【請求項4】
第1パネル及び第2パネルを備え、
両パネルは、両パネルが重ね合わされた状態で、該パネルの周縁部のうちの一部を残し、互いに結合することにより袋状をなしており、
両パネルの結合されていない周縁部を拡開することで、開口部を有する略カップ状の形状をなすように構成されており、
第1パネル及び第2パネルはそれぞれ、前記水蒸気発生体を少なくとも1個備え、
第1パネルに備えられている水蒸気発生体のうちの一の水蒸気発生体と、第2パネルに備えられている水蒸気発生体のうちの一の水蒸気発生体とは、水蒸気発生特性が相違している請求項1ないし3のいずれかに記載の水蒸気発生具。
【請求項5】
前記第1パネル及び第2パネルは、各パネルが、水蒸気発生の立ち上がり時間の早い第1の水蒸気発生体と、水蒸気発生の持続時間の長い第2の水蒸気発生体とを備え、
各パネルにおいて、第2の水蒸気発生体が第1の水蒸気発生体よりも前記開口部に近い側に位置している請求項4記載の水蒸気発生具。
【請求項6】
前記第1パネル及び第2パネルの結合されていない周縁部を拡開して形成される開口部は、使用者の口及び鼻を覆う大きさであって、
前記第1パネル及び第2パネルは、各パネルが、水蒸気発生の立ち上がり時間の早い第1の水蒸気発生体と、水蒸気発生の持続時間の長い第2の水蒸気発生体とを備え、
水蒸気発生具を使用者の口及び鼻を覆うように使用者の顔に当接させた使用状態での水蒸気発生具において使用者の眉間近傍に当接された側を水蒸気発生具の上側とし、水蒸気発生具において使用者の口の下に当接された側を水蒸気発生具の下側としたときに、各パネルにおいて、第1の水蒸気発生体が相対的に水蒸気発生具の下側に位置し、かつ第2の水蒸気発生体が相対的に水蒸気発生具の上側に位置するように、各水蒸気発生体が各パネルに配置されている請求項4記載の水蒸気発生具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−206222(P2011−206222A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76391(P2010−76391)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】