説明

水蒸気発生温熱具

【課題】水蒸気発生温熱具が発熱し始めてから温感発現までの時間を短縮することができ、かつ適度な温感の長時間持続が可能な水蒸気発生温熱具を提供すること。
【解決手段】被酸化性金属の酸化による発熱に伴って水蒸気を放出する水蒸気発生部30を有する水蒸気発生温熱具10である。水蒸気発生温熱具10はカプサイシン類縁体及びメントール類を含有する。カプサイシン類縁体とメントール類との質量比(カプサイシン類縁体/メントール類)を1/300〜1/20000とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の身体に水蒸気及び温熱を付与し得る水蒸気発生温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄粉の酸化による発熱を利用した温熱具において、カプサイシンやメントールを含有させる技術が知られている。例えば特許文献1には、空気と接して発熱する発熱材が封入された通気性の袋体の皮膚との接触面に、膏薬の有効成分を含有する膏薬層を設けた温熱用具において、膏薬の有効成分として唐辛子エキスやl−メントールを用いることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、粘着層及び発熱物質を含む発熱層を有し、粘着層が、多価アルコール類と、該多価アルコール類に溶解又は膨潤するポリマーとを含む温熱ゲルを含有する温熱シートにおいて、該温熱ゲルにカプサイシン及びl−メントールを含有させてもよいことが記載されている。
【0004】
また、温熱具の技術分野ではないが、塗布外用剤や貼付剤として用いられる外用剤組成物において、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル基を含む温感成分と、カプサイシン等のワニリルアミド基を含む温感成分とを含有させることが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−136053号公報
【特許文献2】特開2003−210509号公報
【特許文献3】特開2003−250829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の温熱具では、カプサイシンの温感を持続させる技術や、カプサイシンの温感発現までの時間を短縮させる技術については、検討の余地があり、更なる技術の開発が望まれていた。
【0007】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術の温熱具の温感について、更に改良を加えた水蒸気発生温熱具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、温感刺激成分であるカプサイシン類縁体に対して過剰量のメントール類と水蒸気温熱を特定比率にて組み合わせて用いることで、カプサイシン類縁体特有の刺激感が緩和され、適度な温感が得られるのみならず、何と意外にも、適度な温感の持続性が向上し、かつ、水蒸気発生温熱具が発熱し始めてから温感発現までの時間を短縮することができることを見出した。
【0009】
本発明は、この知見に基づきなされたものであり、被酸化性金属の酸化による発熱に伴って水蒸気を放出する水蒸気発生部を有する水蒸気発生温熱具であって、
カプサイシン類縁体及びメントール類を含有し、
カプサイシン類縁体とメントール類との質量比(カプサイシン類縁体/メントール類)を1/300〜1/20000とした水蒸気発生温熱具を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適度な温感の長時間持続が可能であり、かつ、水蒸気発生温熱具を身体に適用してから温感発現までの時間を短縮することができる水蒸気発生温熱具が提供される。また本発明によれば、水蒸気発生温熱具が適用された部位のみならず、水蒸気発生温熱具が適用されていない部位についても、皮膚温度が上昇したり、疼痛が改善したりする効果が発現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、本発明の水蒸気発生温熱具の一実施形態を身体側シートの側からみた平面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるb−b線断面図である。
【図2】図2は、図1(a)及び(b)に示す水蒸気発生温熱具の一使用形態を示す図である。
【図3】図3は、実施例1及び比較例2で得られた水蒸気発生温熱具を適用していない方の肩の痛み変化を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例1及び比較例2で得られた水蒸気発生温熱具を適用していない方の肩における適用の前後での皮膚の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の水蒸気発生温熱具は、使用者の身体に取り付けられて、使用者の身体に水蒸気の発生を伴う水蒸気発生温熱を付与するために用いられる。この目的のために、本発明の水蒸気発生温熱具は水蒸気発生部を有している。この水蒸気発生部は被酸化性金属及び水を含んでおり、該被酸化性金属の酸化による発熱に伴って水蒸気を放出するように構成されている。
【0013】
本発明の水蒸気発生温熱具は、カプサイシン類縁体、メントール類、水蒸気及び温熱を組み合わせて用いる点に特徴の一つを有している。カプサイシン類縁体とは、カプサイシン及びその類似体をいい、具体的には、一般式(1)で表されるものを言う。具体的には、カプサイシンの他、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ビスホモカプサイシン、トリスホモカプサイシン、ノルノルカプサイシン、ノルカプサイシン、カプサイシノール、ノニル酸バニリルアミド、デシル酸バニリルアミド等を言い、これらは使用者に温感の付与が可能な物質として知られている。特に好ましいカプサイシン類縁体は、カプサイシ及びジヒドロカプサイシンである。本発明者らは、温感刺激成分であるカプサイシン類縁体に対して過剰量のメントール類を組み合わせて用いることで、適度な温感が得られるのみならず、驚くべきことに、身体に適用してから温感発現までの時間を短縮することができ、かつ適度な温感の持続性が向上することを見出した。また、水蒸気発生温熱具が適用された部位のみならず、水蒸気発生温熱具が適用されていない部位についても、皮膚温度が上昇したり、疼痛が改善したりする効果が発現することも見出した。なお、メントール類とは、l−メントール及びdl−メントールなどを言う。特に好ましいメントール類は、l−メントールである。カプサイシン類縁体は一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。メントール類も一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
【化1】

【0015】
上述の効果を顕著なものとする観点から、本発明の水蒸気発生温熱具においては、カプサイシン類縁体とメントール類との質量比(カプサイシン類縁体/メントール類)を1/300〜1/20000に設定している。カプサイシン類縁体/メントール類の比率がこの範囲であると、カプサイシン類縁体の温感に、高揮発性のメントール類の刺激と蒸気温熱とが作用し、その結果、温感が速やかに発現し、かつ、適度な温感の持続も長くなるため非常に好ましい。これらの観点から、前記の質量比は、1/500〜1/15000とすることが好ましく、1/1000〜1/7000とすることが更に好ましい。
【0016】
本発明の水蒸気発生温熱具において、カプサイシン類縁体及びメントール類は、両者を混合した状態で存在させても良いが、カプサイシン類縁体及びメントール類を水蒸気発生温熱具における別々の部位に分けて存在させると上述の効果を顕著にする観点や保存安定性の観点等より非常に好ましい。カプサイシン類縁体に関しては、直接接触によって使用者の肌に移行し得る部位、例えば、本発明の水蒸気発生温熱具の部材のうち、使用者の肌に直接接する部材に存在させることが好ましい。一方、メントール類に関しては、本発明の水蒸気発生温熱具の部材のうち、使用者の肌に触れない部材に存在させておく方がよい。本発明の水蒸気発生温熱具は水蒸気の発生を伴うものなので、使用者の肌から離れた部材にメントール類を存在させておいても、メントール類はその揮発によって水蒸気の流れに随伴し、首尾良く使用者の肌にまで到達する。特に、メントール類は水蒸気発生部(以後、発熱部ともいう)中に存在させると良い。その理由は、後述する。
【0017】
図1には、本発明の水蒸気発生温熱具の一実施形態が示されている。この水蒸気発生温熱具10は扁平なものであり、包材20と、該包材20内に密封収容された発熱部30とを備えている。包材20は、水蒸気発生温熱具10の外形をなすものであり、扁平な形状をしている。包材20は、水蒸気発生温熱具10の使用時に使用者の肌側を向く肌対向面と、使用時に外側を向く外面とを有している。肌対向面は身体側シート21から構成されている。一方、外面は外側シート22から構成されている。身体側シート21と外側シート22とは略同形をしており、両シート21,22の周縁域23が所定の手段によって密封接合されている。
【0018】
発熱部30は、少なくとも一部に透気性を有するシートによって被覆されている。詳細には、発熱部30は、水蒸気発生温熱具10の使用時に使用者の肌側を向く第1のシート31と、使用時に外側を向く第2のシート32によって被覆されている。第1のシート31及び/又は第2のシート32は、少なくとも一部に透気性を有している。第1のシート31と第2のシート32とは略同形をしており、両シート31,32の周縁部(図示せず)が所定の手段によって密封接合されている。発熱部30に含まれる被酸化性金属は、シート31及び/又はシート32における透気性を有する部位を通じて透過してきた酸素と接触することによって、酸化発熱を生じる。また、第1のシート31と第2のシート32の透気度を適切に調製することで、第1のシート31を通じて水蒸気が優先的に放出されるように構成されている。具体的には、第2のシート32の透気度は第1のシート31の透気度よりも大きい。ここで、透気度はJIS P8117によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.42cm2の面積を通過する時間で定義される。したがって、透気度が大きいことが空気の通過に時間がかかること、すなわち透気性が低いことを意味している。逆に、透気度が小さいことは透気性が高いことを意味している。このように、透気度の大小と透気性の高低とは逆の関係を示す。本実施形態において、第1のシート31及び第2のシート32の透気性を比較すると、第1のシート31の方が、第2のシート32と同じか又はそれよりも高くなっている。具体的には、第1のシート31の透気度は、100〜30000秒/100mlのものが好ましく、500〜20000秒/100mlのものが更に好ましく、1000〜10000秒/100mlのものが更に好ましい。第2のシート32は透気性のあるもの、若しくは、透気性のないものが用いられ、透気性がある場合には第1のシート31の透気度と同等かそれよりも数値が高く、8000〜100000秒/100mlのものが好ましく、10000〜90000秒/100mlのものが更に好ましく、15000〜80000秒/100mlのものが更に好ましい。
【0019】
水蒸気発生温熱具10の包材20における身体側シート21の表面には粘着剤24が施されている。粘着剤24は、水蒸気発生温熱具10を使用者の身体に固着させるための手段として用いられる。粘着剤24は、水蒸気発生温熱具10の平面視において、発熱部30と重ならない位置に形成されている。具体的には、粘着剤24は、身体側シート21の周縁域の位置に、発熱部30を取り囲むように連続してあるいは不連続に施されている。粘着剤24が施されている領域は、図1(b)に示すように、身体側シート21と外側シート22とがそれらの周縁域において接合されている接合領域内に含まれていてもよく、あるいは、粘着剤24が施されている領域と、身体側シート21及び外側シート22が接合されている接合領域とが略同じでもよい。
【0020】
粘着剤の種類としては、使用中に剥がれずシートを保持することができ、特に、周縁域の全周にわたり発熱部30を取り囲むように連続して施された場合に、発熱部30から発生する水蒸気を外部に漏らさない状態を維持できるものが好ましく、例えば、従来公知の天然又は合成ゴム系、(メタ)アクリル酸エステル系、シリコーン系、ウレタン系などのホットメルト粘着剤から選定される。これらの樹脂は非転着性であることが好ましい。更に、本発明の効果を損なわない範囲内で、一般の粘着剤に添加されている、粘着付与剤、軟化剤、無機充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料等が添加されても良い。
【0021】
水蒸気発生温熱具10の包材20を構成するシートのうち、少なくとも身体側シート21は透気性を有しており、水蒸気の放出が可能になっている。そのような材料としては、繊維シート、多孔性フィルム、穿孔フィルム等が挙げられる。身体側シート21が使用者の肌に触れる部材であることを考慮すると、該シート21は、風合いの良好なものであることが好ましく、例えば、少なくともその一部が、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリル等からなる合成繊維や、セルロース、コットン、ウール、シルク等からなる天然繊維、又はこれらを複合した繊維等を用い、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法などにより製造された不織布からなることが好ましい。特に、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド6や、ポリアミド66等のポリアミド繊維、ポリ乳酸系繊維等の疎水性繊維の不織布からなるシートを用いると、発熱部30より発生した蒸気が効果的に皮膚に付与され、本発明の温感発現短縮効果や適度な温感の持続性向上効果を好適に発揮するためには、好ましい。外側シート22に関しては、水蒸気発生温熱具10の具体的な用途に応じて、透気性を有していてもよく、あるいは有していなくてもよい。外側シート22の材質に関しては、それが透気性であるか、そうでないかに応じて、適切なものを選択すればよい。
【0022】
図1に示す水蒸気発生温熱具10においては、その使用時に使用者の肌と直接接する部材である身体側シート21の少なくとも接触面である表面にカプサイシン類縁体が保持されていることが好ましい。水蒸気発生温熱具10の使用中に、カプサイシン類縁体を使用者の肌に首尾良く移行させることを考慮すると、カプサイシン類縁体は身体側シート21における粘着剤24の不存在部位、すなわち身体側シート21における中央域に保持されていることが好ましい。特にカプサイシン類縁体は、水蒸気発生温熱具10の平面視において、発熱部30と重なる位置に保持されていることが、適度な温感発現等の点から好ましい。
【0023】
身体側シート21にカプサイシン類縁体を保持させる手段としては、身体側シート21の材質に応じて適切な手段を採用すればよい。身体側シート21が例えば不織布からなる場合には、不織布を製造する際に、繊維間にカプサイシン類縁体を分散させて担持させておいたり、不織布の表面にカプサイシン類縁体を分散配合した液剤を塗工したり不織布を含浸したりすることによって、カプサイシン類縁体を首尾良く保持させることが可能となる。身体側シート21の少なくとも一部が例えば不織布からなる場合にも、不織布を製造する際に、繊維間にカプサイシン類縁体を分散させて担持させておいたり、不織布の表面にカプサイシン類縁体を分散配合した液剤を塗工したり、不織布を含浸したりすることによって、カプサイシン類縁体を首尾良く保持させることが可能となる。
【0024】
身体側シート21に保持させるカプサイシン類縁体の量は、カプサイシン類縁体に起因する温感の強度が好ましい程度となるようにする観点から、カプサイシン類縁体を施した部位の面積に基づき、0.05〜5.0μg/cm2とすることが好ましく、0.08〜3.0μg/cm2とすることが更に好ましい。
【0025】
メントール類の存在位置に関しては、上述のとおり、カプサイシン類縁体と同様に身体側シート21に保持させてもよく、あるいはそれ以外の部材、例えば発熱部30、シート31やシート32、又は外側シート22に保持させてもよい。水蒸気発生温熱具10の保存中におけるメントール類の安定性や、メントール類の保持させやすさを考慮すると、発熱部30に保持させることが好ましい。
【0026】
水蒸気発生温熱具10に保持させるメントール類の量は、カプサイシン類縁体とメントール類との質量比が上述の範囲を満たす量であって、かつ0.05〜10mg/cm2とすることが好ましく、0.1〜5.0mg/cm2とすることが更に好ましい。また、メントール類を発熱部30に保持させる場合には、該発熱部30に対するメントール類の割合を0.02〜5.0質量%、特に0.04〜2.5質量%とすることが好ましい。
【0027】
メントール類を、発熱部30に保持させる場合には、メントール類を、これを溶解する溶解剤とともに発熱部30に添加することが好ましい。特に、メントール類を溶解剤中に溶解した溶液状態下に発熱部30に添加することで、メントール類を発熱部30の全体に均一に行き渡らせることが可能となる。メントール類は一般に油性物質であることから、溶解剤は、油性物質の溶解が可能な物質であり、かつ身体に害のない有機溶剤であることが好ましい。更に、本発明では、発熱部30は化学反応で発熱させるものであって水を添加しているので、溶解剤は水との相溶性が良い有機溶剤であることが好ましい。水との相溶性が良い溶解剤を用いることで、発熱部30中に溶解剤を均一に行き渡らせることができる。そのような有機溶剤としては、25℃で液状物質のアルコール類であって、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール200やポリエチレングリコール400等のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等の多価アルコール類、またエタノール等の低級アルコールが挙げられる。これらのうち、特に25℃で液状物質の多価アルコールが多量のメントール類を放出する点で好ましい。また、本発明は化学反応による発熱を伴うことから、溶解剤も使用中ににおいが少ないものであることが好ましい。これらのうち、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールがメントール類の放出性を効果的に高めることができるので好ましい。
【0028】
溶解剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、メントール類を十分に溶解させて、発熱部30の全体に均一に行き渡らせるように添加し、更に発熱特性への影響を少なくする観点から、溶解剤は発熱部30の全重量に対して好ましくは0.01〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%、一層好ましくは0.5〜5質量%の濃度で用いる。また、メントール類を十分溶解させる観点から、溶解剤とメントール類との合計質量を100としたときに、溶解剤を好ましくは5〜99質量%、更に好ましくは10〜93質量%、一層好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは50〜80質量%用いる。
【0029】
メントール類を発熱部30に含有させるためには、例えばメントール類を溶解剤にあらかじめ溶解させた溶液を準備し、発熱部30を調製した後に該溶液を添加すればよい。添加の方法としては、例えば噴霧、塗布、浸漬などの方法が挙げられる。
【0030】
メントール類を、発熱部30に保持させる場合の別法として、メントール類を、これを溶解する溶解剤及び界面活性剤とともに発熱部30に添加することも好ましい。この場合、溶解剤として以下のA及びBの組み合わせを用いると、発熱部30からのメントール類の放出性が著しく良好になるという有利な効果が奏される。
・A)炭化水素油、エステル油、一価のアルコール、脂肪酸、シリコーン油、グリセライド及び植物油よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の25℃で液状の油剤からなる第1の溶解剤
・B)多価アルコールからなる第2の溶解剤
【0031】
第1の溶解剤としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールなどのエステル油、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、イソステアリルアルコールなどの一価のアルコール、イソステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シクロメチコンなどの環状又は直鎖状のシリコーン油、ジオレイン酸ジグリセライドなどのモノグリセライド、ジエチルヘキシルモノグリセライドなどのジグリセライド、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンなどのトリグリセライド、ホホバ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ひまし油などの植物油等が挙げられる。これらのうち、とりわけ炭素数16〜22の一価の高級アルコールはメントール類との相溶性が高いので、より少量でメントール類を発熱部30中に均一に配合可能である。そのため、発熱への影響が少なくなり、更に発熱時に異臭等の発生が観察されないことから特に好ましい。
【0032】
第1の溶解剤が、発熱部30中に好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.05〜3質量%、特に好ましくは0.1〜1質量%の割合で含まれていると、十分な発熱量が確保され好適である。第1の溶解剤とメントール類との質量比(第1の溶解剤/メントール類)は、好ましくは0.01〜2.0、更に好ましくは0.05〜1.0、一層好ましくは0.1〜0.5である。
【0033】
第2の溶解剤として用いられる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール200やポリエチレングリコール400等のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等が挙げられる。これらのうちポリエチレングリコールは、界面活性剤によるメントール類の乳化分散性を保ちつつメントール類の放出性を効果的に高めることができるので好ましく用いられる。
【0034】
第2の溶解剤が、発熱部30中に好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.05〜3質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%の割合で含まれていると、十分な発熱量が確保されるとともに、発熱部30からのメントール類の放出性が向上するので好適である。第2の溶解剤とメントール類との質量比(=第2の溶解剤/メントール類)は、好ましくは0.1〜5、更に好ましくは0.5〜3、一層好ましくは1〜2である。両者をこの割合で含有させることで、発熱の阻害が最小限に抑えられ、発熱部30の発熱に起因するメントール類の良好な放出が達成される。
【0035】
溶解剤の組み合わせはメントール類と水との相溶性や、界面活性剤と水との親和性に対する影響度を考慮して選択される。すなわち、第1の溶解剤と第2の溶解剤との好ましい組み合わせは、第1の溶解剤として一価の高級アルコールを用い、第2の溶解剤として多価アルコールを用いる組み合わせである。この組み合わせを用いることで、メントール類と発熱部30中の水との乳化が一層首尾良く行われ、発熱の阻害が最小限に抑えられ、かつ発熱時にメントール類の良好な放出が達成される。具体的には、第1の溶解剤として特に好ましく用いられるものは、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール等である。一方、第2の溶解剤として特に好ましく用いられるものは、ポリエチレングリコール、とりわけ分子量が200〜600のポリエチレングリコールである。
【0036】
メントール類及び上述の溶解剤とともに用いられる界面活性剤としては、化粧品、医薬品等に用いられ得るものであれば、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれをも用いることができる。なかでも、発熱部30に含まれる電解質水溶液とメントール類との乳化を首尾よく行うことができ乳化安定性が高く、かつ、発熱部30の発熱によりメントール類を良好に放出させることができ、かつ、発熱部30の発熱を阻害しづらいという観点から、非イオン界面活性剤を用いることが有利である。
【0037】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等を用いることができる。これらの界面活性剤のうち、ポリオキシエチレン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等、なかでもポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンアルキルエーテル等は、第2の溶解剤と相互作用を呈し界面活性剤の水との親和力に作用するため好ましい。なかでも特に、HLBが好ましくは10〜20、更に好ましくは12〜18、一層好ましくは13〜17のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンアルキルエーテル、とりわけポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いると良い。なお、HLB値はGriffinの式(J. Soc. Cosmet. Chem., 1, 311(1949))から求めたものである。
【0038】
発熱部30中の界面活性剤の含有量は0.01〜5質量%が好ましく、更に好ましくは0.05〜3質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。このような含有量であれば、メントール類及び溶解剤の発熱部30中での分散が一層良好になるので、発熱部30中においてメントール類を一層均一に配合することが可能となり、発熱部30の発熱によりメントール類を良好に放出させることができ、更に発熱への影響も少なくなるので好ましい。とりわけ、第2の溶解剤の含有量との関係で、第2の溶解剤/界面活性剤の質量比は、好ましくは0.1〜5、更に好ましくは0.5〜2である。界面活性剤の使用量がこの範囲内の比率であると、発熱部30の発熱が一層阻害されにくくなり、かつメントール類と発熱部30に含まれる水との乳化安定性が一層高くなり、かつメントール類の良好な放出が達成される。
【0039】
先に述べたとおり、本実施形態の水蒸気発生温熱具10においては身体側シート21の中央域の外側に位置する周縁域に粘着剤24が施されて粘着剤層が形成されている。この粘着剤層が、中央域を取り囲むように連続して形成されている場合には、この粘着剤層によって水蒸気発生温熱具10を使用者の肌に貼付すると、身体側シート21の中央域が、周縁域に存在する粘着剤層によって密閉される。すなわち、使用者の肌と、身体側シート21の中央域と、周縁域に存在する粘着剤層とによって密閉部が画成される。この密閉部に、発熱部30から生じた水蒸気が充満するとともに、揮発したメントール類も充満し、加えてカプサイシン類縁体も身体側シート21の中央域から使用者の肌へ直接接触によって移行するので、上述した適度な温感の持続時間が長くなるという効果や、温感を知覚するまでの立ち上がり時間が短いという効果が一層顕著なものとなる。
【0040】
カプサイシン類縁体の温感立ち上がり向上効果や適度な温感の持続効果を一層顕著なものとするためには、水蒸気発生温熱具10はその水蒸気の発生量が十分であることも重要である。この観点から、水蒸気発生温熱具10は、身体に適用してから5時間までの間、単位面積あたり60分間に発生し肌に付与される水蒸気量が、5〜50mg/(cm2・60min)、特に6〜40mg/(cm2・60min)、とりわけ8〜35mg/(cm2・60min)であることが好ましい。
【0041】
水蒸気の発生量は、例えば、次のようにして測定される。容積4.2リットル、湿度1RH%以下とし、密閉系内に2.1リットル/minの乾燥空気を供給可能な試験機を準備し、その内部に水蒸気が蒸散可能なように所定寸法の水蒸気発生温熱具10を静置して発熱させる。そして、前記密閉系外に排出される空気の湿度を湿度計で測定し、下記式(1)を用いて発熱開始後に発生する水蒸気の量を求め、単位時間当たりの水蒸気量とする。そして、60分間の累積の水蒸気量を求め、単位面積当たりに換算する。ここで、eは水蒸気圧(Pa)、esは飽和水蒸気圧(Pa:JIS Z8806より引用)、Tは温度(℃:乾球温度)、sはサンプリング周期(秒)である。
相対湿度U(%RH)=(e/es)×100
絶対湿度D(g/m3)=(0.794×10-2×e)/(1+0.00366T)
=(0.794×10-2×U×es)/〔100×(1+0.00366T)〕
単位空気容積P(リットル)=(2.1×s)/60
単位時間当たりの水蒸気の発生量A(g)=(P×D)/1000・・・(1)
なお、ここで言う水蒸気発生量とは、第1のシート31及びその外側に位置する身体側シート21を透過して肌に付与される水蒸気量のことを言う。第1のシート31と第2のシート32の透気性とが異なる場合には、両者の透気度の比による重みづけをして、肌に付与される水蒸気の発生量を算出する。
【0042】
上述の水蒸気発生量を実現させるためには、例えば発熱部30を被覆する第1のシート31及び第2のシート32の透気度(JIS P8117)を適切にバランスさせればよい。例えば第1のシート31及び第2のシート32の透気度を比較すると、着用者の身体に対向する側に配置されているシートである第1のシート31の透気度よりも、第2のシートの透気度を高くすることで、第1のシート31を通じて水蒸気が優先的に外部へ放出されるようになる。
【0043】
カプサイシン類縁体の温感立ち上がり向上効果や適度な温感の持続効果を一層顕著なものとするためには、水蒸気発生温熱具10はその水蒸気の発生量が十分であることに加えて、発熱温度も十分であることが有利である。この観点から、水蒸気発生温熱具10は、これを使用者の肌に直接当接させた状態において、肌表面温度を1〜5時間にわたり38〜43℃に維持させるような発熱特性を有していることが好ましい。肌表面温度は、被験者の身体(例えば首の背面部や肩部)に装着した水蒸気発生温熱具10における発熱部直下の位置で測定する。発熱部直下の肌表面温度の測定には、例えば体温モニター(コアテンプCM−210:テルモ株式会社製、体表温度プローブ:PDK161)を用いる。
【0044】
上述の水蒸気量や発熱温度の特性を有する水蒸気発生温熱具10を得るためには、主として発熱部30に含まれる被酸化性金属及び水の含有量や、発熱部30を被覆するシート31の透気度等の値をコントロールすればよい。
【0045】
発熱部30に含まれる被酸化性金属としては、鉄粉を始めとして当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを用いることができる。発熱部30を構成する成分は、発熱部30の構造に応じて適切なものが用いられる。例えば発熱部30としては、例えば被酸化性金属や反応促進剤等を含有する成形体に、電解質及び水を含有する電解液を注入して構成された発熱シートを用いることができる。更に、例えば被酸化性金属、反応促進剤、電解質及び水を含んで構成されている発熱粉体を用いることもできる。電解質及び水の含有量は、被酸化性金属や反応促進剤等を含有する成形体、若しくは粉体100重量部に対して、0.3〜10重量%、更に好ましくは0.5〜7重量%の電解質を含む電解質水溶液が20〜80重量部含有されていることが好ましい。
【0046】
本実施形態の水蒸気発生温熱具10は、例えば図2に示すように、使用者の肌に直接貼付して使用することができる。水蒸気発生温熱具10は、従来の温熱具と比較して、温感の立ち上がりが速く、適度な温感の持続性も良好であるため、小サイズにして局所的な加温を行うことができる。小サイズの温熱具10は、その分だけ被酸化性金属の含有量が少ないので、総発熱量は大サイズのものに比べて小さくなりがちであり、その結果、十分な時間にわたって温感を得られないとの懸念がある。しかし、そのような小サイズの温熱具10であっても、カプサイシン類縁体及びメントール類の併用によって適度な温感が持続されるので、非常に好ましい。この観点から、本実施形態の温熱具10は、発熱部30の平面視での面積が小さい場合、例えば、好ましくは1.0〜30cm2、更に好ましくは2.0〜20cm2の小面積を有する場合に、その特徴が顕著に発揮される。
【0047】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明はかかる実施形態に制限されず種々の改変が可能である。例えば水蒸気発生温熱具10の形状は図1に示すものに限られず、例えば円形、楕円形、矩形以外の多角形、それらの組み合わせ等、種々の形状を採用することができる。また、水蒸気発生温熱具10の適用部位は、図2に示す部位に限られず、身体の様々な部位を対象とすることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0049】
〔実施例1〕
図2に示す実施形態の水蒸気発生温熱具10を、以下の手順で作製した。
(1)シート状発熱部30の作製
<原料組成物配合>
・被酸化性金属:鉄粉、同和鉱業株式会社製、商品名「RKH」:83%
・繊維状物:パルプ繊維(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名 NBKP「Mackenzi(CSF200mlに調整)」):8%
・反応促進剤:活性炭(日本エンバイロケミカル株式会社製、商品名「カルボラフィン」、平均粒径45μm)9%
【0050】
前記原料組成物の固形分(被酸化性金属、繊維状物及び活性炭の合計)100部に対し、カチオン系凝集剤であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.7部及びアニオン系凝集剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、商品名「HE1500F」0.18部を添加した。更に、水(工業用水)を、固形分濃度が12%となるまで添加しスラリーを得た。
【0051】
<抄造条件>
前記スラリーを用い、これを抄紙ヘッドの直前で0.3%に水希釈し、傾斜型短網抄紙機によって、ライン速度15m/分にて抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
【0052】
<乾燥条件>
成形シートをフェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま140℃の加熱ロール間に通し、含水率が5%以下になるまで乾燥した。乾燥後の坪量は450g/m2、厚さは0.45mmであった。このようにして得られた成形シートの組成を熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて測定した結果、鉄83%、活性炭9%、パルプ8%であった。
【0053】
<シート状発熱部30の作製>
得られた成形シートを25mm×25mmに切り取り、4枚を重ね合わせ、該成形シート100部に対し表1に示す組成で調製したメントール類含有電解液を40部注入した。発熱部30の全質量に対するメントールの割合は0.9%、2−オクチルドデカノールの割合は0.2%、ポリエチレングリコール400の割合は1.4%及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)(HLB14.0)の割合は0.9%であった。毛管現象を利用してこれらを成形シート全体に浸透させて、矩形のシート状発熱部30(寸法25mm×25mm)を得た。このときのシート状発熱部30中のメントール量は2.18mg/cm2であった。このシート状発熱部30の全体を、ポリエチレン製透気フィルムで包んだ。この透気フィルムは、肌対向面側と外側とで通気度が異なるものを用いた。肌対向面側の透気フィルム31の透気度(JIS P8117)は2500秒/100mlであり、外側の透気フィルム32の透気度(JIS P8117)は30000秒/100mlであった。
【0054】
【表1】

【0055】
(2)水蒸気発生温熱具10の作製
包材20における身体側シート21として、ポリエチレンテレフタレート繊維からなるニードルパンチ不織布(坪量40g/m2)を用いた。外側シート22として、坪量50g/m2のポリプロピレン不織布を用いた。これらのシートからなる包材20内に、上述のポリエチレン製透気フィルム31,32で包まれた発熱部30を収容した。身体側シート21の中央域には、カプサイシン類縁体(カプサイシン及びジヒドロカプサイシン等)を0.032g/100ml含むトウガラシチンキを、揮発溶媒であるエタノールに混合し均一分散させ、該溶液を不織布に塗布し、その後、乾燥させる方法によって保持させた。保持量は0.54μg/cm2、保持面積は7.5cm2とした。また、身体側シート21の周縁域には、SIS共重合体からなるホットメルト粘着剤を連続して塗工した。塗工面積は15cm2とした。このようにして、目的とする水蒸気発生温熱具10を得た。
【0056】
〔実施例2〕
実施例1においてメントールの保持量を0.24mg/cm2とする以外は実施例1と同様にして水蒸気発生温熱具10を得た。
【0057】
〔実施例3〕
実施例1においてメントールの保持量を0.53mg/cm2とする以外は実施例1と同様にして水蒸気発生温熱具10を得た。
【0058】
〔実施例4〕
実施例1においてメントールの保持量を3.90mg/cm2とする以外は実施例1と同様にして水蒸気発生温熱具10を得た。
【0059】
〔実施例5〕
実施例1において、カプサイシン類縁体と同様に、メントールも外側シート22に保持させた以外は実施例1と同様にして水蒸気発生温熱具10を得た。
【0060】
〔実施例6〕
実施例1において、カプサイシン類縁体の保持量を1.3μg/cm2とする以外は実施例1と同様にして水蒸気発生温熱具10を得た。
【0061】
〔実施例7〕
実施例1において、カプサイシン類縁体の保持量を0.13μg/cm2とする以外は実施例1と同様にして水蒸気発生温熱具10を得た。
【0062】
〔実施例8〕
実施例1において、第1のシート31の透気度を10000秒/ml、第2のシート32の透気度を10000秒/mlのように変更して、水蒸気発生量を7.3mg/(cm2・60min)とする以外は、実施例1と同様にして水蒸気発生温熱具10を得た。
【0063】
〔比較例1〕
本比較例は、乾熱の温熱具の例である。実施例1において、発熱部30を製造するときに、成形シート100部に対し電解液量(5.0%食塩水)が40部となるように、電解液を注入した。これ以外は実施例1と同様にして乾熱の温熱具を得た。
【0064】
〔比較例2〕
本比較例は、メントール類を使用しない例である。実施例1においてメントールを使用しない以外は実施例1と同様にして水蒸気発生温熱具を得た。
【0065】
〔比較例3〕
本比較例は、メントール類を超大過剰に使用した例である。メントールを超大過剰に使用した以外は実施例6と同様にして水蒸気発生温熱具を得た。
【0066】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた温熱具について、以下の方法で温感の発現の早さ、適度な温感の持続性、皮膚刺激感強度を評価した。また、上述の方法で水蒸気の発生量及び肌表面温度を測定した。それらの結果を以下の表2に示す。
【0067】
〔温感の発現の早さ〕
専門パネラー3名による温感の発現の早さの評価を行った。実施例及び比較例の水蒸気発生温熱具及び乾熱の温熱具を肩部に3時間適用した際の温感強度を「0:感じない」「1:弱く感じる」「2:やや弱く感じる」「3:ちょうどよく感じる」「4:やや強く感じる」「5:強く感じる」の6段階で評価し、温感の経時変化を検討した。温感発現の早さは、温熱具を肩部に適用してから温感を「1:弱く感くじる」までの時間を測定し、平均値を求めた。
【0068】
〔適度な温感の持続性(温感持続時間)〕
専門パネラー3名による適度な温感の持続性の評価を行った。実施例及び比較例の水蒸気発生温熱具及び乾熱の温熱具を肩部に3時間適用した際の温感の強度を「0:感じない」「1:弱く感じる」「2:やや弱く感じる」「3:ちょうどよく感じる」「4:やや強く感じる」「5:強く感じる」の6段階で評価し、温感の経時変化を検討した。適度な温感の持続性は、温感の強度が「2:やや弱く感じ」から「4:やや強く感じる」の間に維持される時間を測定し、平均値を求めた。
【0069】
〔皮膚刺激感強度〕
専門パネラー3名による皮膚刺激感強度の評価を行った。実施例及び比較例の水蒸気発生温熱具及び乾熱の温熱具を肩部に3時間適用した際の皮膚刺激感強度を、「0:感じない」「1:弱く感じる、弱すぎる」「2:やや弱く感じる」「3:ちょうどよく感じる」「4:やや強く感じる」「5:強く感じる、強すぎる」の6段階で評価し、平均値を求めた。
【0070】
【表2】

【0071】
表2に示す結果から明らかなように、各実施例の水蒸気発生温熱具によれば、不快な刺激感を与えずに適度な温感強度が得られるとともに、温感の発現が早く、かつ適度な温感の持続性が長いことが判る。これに対して、水蒸気の発生を伴わない乾熱の温熱具(比較例1)では、十分な温感が得られない。メントール類を用いていない温熱具(比較例2)では、温感はあるものの、その発現は遅く、かつ、不快な刺激感も強くなってしまう。また、メントール類を超大過剰に用いた温熱具(比較例3)では、適度な温感が持続しなかった。
【0072】
前記の各評価とは別に、実施例1及び比較例2で得られた水蒸気発生温熱具について、以下の方法で肩の痛み変化及び皮膚の温度変化を評価した。それらの結果を図3及び図4に示す。
【0073】
〔肩の痛み変化〕
両肩部に痛みを訴える対象者10名に対し、片方の肩に当該温熱具を3時間適用し、当該温熱具を適用していないもう一方の肩(非適用肩)の痛みレベルの適用前後での変化を、知覚・痛覚定量分析装置(Pain Vision PS−2100、(株)オサチ社製)を用いて下記1)〜5)の手順にて評価し、結果を図3に示した。
1)知覚閾値測定
まず、あらかじめ対象者の知覚閾値を測定した。左前腕内側に、2つの電極パッドを2cm離して取り付け電流を流した。電流値を徐々に高めていき、対象者が左前腕内側に何らかの皮膚感覚を感じた時点で申告させ、そのときの電流値を「電流知覚閾値」とした。
2)非適用肩痛み度(適用前)算出
次に、蒸気発生温熱具適用前の対象者の肩の痛みのレベルを測定した。肩の痛みは、「肩を押す」「肩を回す」などの外部刺激により生じるため、プッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング(株)社製)にて肩部において対象者が痛みを訴えるポイントを一定圧力(4.5kg/15mmφ)で加圧し痛みを発生させた上で、左前腕内側に、1)と同様に2つの電極パットを2cm離して取り付け電流を流し、電流値を徐々に高めていき、電流による刺激が肩の痛みと同程度になった時点で申告させ、そのときの電流値を「非適用肩痛み対応電流値(適用前)」とした。そして下記式(1)に従って痛み度を算出し、この値を「非適用肩痛み度(適用前)」とした。
非適用肩痛み度(適用前)=〔(非適用肩痛み対応電流値(適用前)−電流知覚閾値)/電流知覚閾値〕×100 ・・・(1)
3)右前腕部痛み度(適用前)算出
更に、右前腕部をプッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング(株)社製)にて一定圧力(4.5kg/15mmφ)で加圧し痛みを発生させた上で、左前腕内側に、1)と同様に2つの電極パットを2cm離して取り付け電流を流し、電流値を徐々に高めていき、電流による刺激が右前腕部の痛みと同程度になった時点で申告させ、そのときの電流値を「右前腕部痛み対応電流値(適用前)」とした。そして下記式(2)に従って痛み度を算出し、この値を「右前腕部痛み度(適用前)」とした。
右前腕部痛み度(適用前)=〔(右前腕部痛み対応電流値(適用前)−電流知覚閾値)/電流知覚閾値〕×100 ・・・(2)
4)非適用肩相対痛み度(適用前)算出
これら2)及び3)より得られた「非適用肩痛み度(適用前)」及び「右前腕部痛み度(適用前)」より、下記式(3)に従って非適用肩相対痛み度(適用前)を算出した。
非適用肩相対痛み度(適用前)=(非適用肩痛み度(適用前)/右前腕部痛み度(適用前))×100・・・(3)
5)非適用肩相対痛み度(適用後)算出
片方の肩に当該温熱具を3時間適用した後、2)〜4)と同様の操作を行って当該温熱具を適用していないもう一方の肩(非適用肩)の「非適用肩痛み度(適用後)」及び「右前腕部痛み度(適用後)」を測定し、非適用肩相対痛み度(適用後)を算出した。
【0074】
〔皮膚の温度変化〕
両肩部に痛みを訴える対象者10名に対し、片方の肩に当該温熱具を3時間適用し、蒸気発生温熱具を適用していないもう片方の肩(非適用肩)の皮膚温度(3分間の平均値)の適用前後での変化を、温度ロガー(LT−8、グラム(株)社製)を用いて評価し、結果を図4に示した。
【0075】
図3から明らかなように、実施例1で得られた水蒸気発生温熱具を被験者の一方の肩に適用した場合、意外にも、水蒸気発生温熱具を適用していない方の肩についても、痛みの改善について有意差が認められる。これに対し、比較例2で得られた水蒸気発生温熱具を被験者の一方の肩に適用した場合、水蒸気発生温熱具を適用していない方の肩について、痛みの改善について有意差は認められない。
【0076】
また、図4から明らかなように、実施例1で得られた水蒸気発生温熱具を被験者の一方の肩に適用した場合、意外にも、水蒸気発生温熱具を適用していない方の肩についても、皮膚温度の上昇について有意差が認められる。これに対し、比較例2で得られた水蒸気発生温熱具を被験者の一方の肩に適用した場合、水蒸気発生温熱具を適用していない方の肩について、皮膚温度の上昇について有意差は認められない。
【符号の説明】
【0077】
10 水蒸気発生温熱具
20 包材
21 身体側シート
22 外側シート
23 周縁域
30 発熱部
31 第1のシート
32 第2のシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被酸化性金属の酸化による発熱に伴って水蒸気を放出する水蒸気発生部を有する水蒸気発生温熱具であって、
カプサイシン類縁体及びメントール類を含有し、
カプサイシン類縁体とメントール類との質量比(カプサイシン類縁体/メントール類)を1/300〜1/20000とした水蒸気発生温熱具。
【請求項2】
カプサイシン類縁体を水蒸気発生温熱具の部材のうち、使用者の肌に直接接する部材に存在させ、かつメントール類を水蒸気発生温熱具の部材のうち、使用者の肌に触れない部材に存在させる請求項1記載の水蒸気発生温熱具。
【請求項3】
包材と該包材内に密封収容された水蒸気発生部とを備えており、
前記包材が使用時に使用者の肌側を向く肌対向面と、外側を向く外面とを有し、
肌対向面が身体側シートから構成されており、該身体側シートにカプサイシン類縁体が保持されており、
身体側シートに保持させるカプサイシン類縁体の量が、カプサイシン類縁体を施した部位の面積に基づき0.05〜5.0μg/cm2である請求項1又は2記載の水蒸気発生温熱具。
【請求項4】
水蒸気発生部中にメントール類が存在している請求項1ないし3のいずれか一項に記載の水蒸気発生温熱具。
【請求項5】
単位面積あたり60分間に発生する水蒸気量が、5〜50mg/(cm2・60min)である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の水蒸気発生温熱具。
【請求項6】
身体側シートの少なくとも一部が不織布からなる請求項3ないし5のいずれか一項に記載の水蒸気発生温熱具。
【請求項7】
カプサイシン類縁体が、一般式(1)で表されるものである請求項1ないし6のいずれか一項に記載の水蒸気発生温熱具。
【請求項8】
メントール類が、l−メントール及び/又はdl−メントールである請求項1ないし7のいずれか一項に記載の水蒸気発生温熱具。
【請求項9】
水蒸気発生部の面積が、平面視で1.0〜30cm2である請求項1ないし8のいずれか一項に記載の水蒸気発生温熱具。
【請求項10】
水蒸気発生部が、少なくとも一部に透気性を有するシートによって被覆されており、該シートは水蒸気発生温熱具の使用時に使用者の肌側を向く第1のシートと、使用時に外側を向く第2のシートとを有しており、第1のシートの透気度よりも第2のシートの透気度が大きい請求項1ないし9のいずれか一項に記載の水蒸気発生温熱具。
【請求項11】
使用者の肌に直接当接された状態において肌表面温度を1〜5時間にわたり38〜43℃に維持させるような発熱特性を有している請求項1ないし10のいずれか一項に記載の水蒸気発生温熱具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−16587(P2012−16587A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128684(P2011−128684)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】