説明

水解性不織布

【課題】強度と柔軟性とを有する水解性不織布。
【解決手段】水解性不織布が互いに機械的に絡み合う繊維であって、水中で攪拌されると絡み合いが解けて互いに分離する繊維によって形成される。その繊維のうちの10〜50重量%が、0.01〜0.5dtexの繊度と3〜10mmの繊維長とを有する極細の熱可塑性合成繊維によって占められる。その繊維のうちの90〜50重量%が、1〜2dtexの繊度と5〜20mmの繊維長とを有する化学繊維および600〜770ccの濾水度を有するパルプ繊維のうちの少なくとも一方によって占められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中にあって撹拌されると細片に分解可能である水解性不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
水中にあって撹拌されると細片に分解可能な水解性不織布は公知である。例えば、特開平9−78419号公報(特許文献1)には、この種の不織布が水崩壊性不織布として記載されている。この不織布は、繊維長5〜20mmの再生セルロース繊維または合成繊維70〜97重量%と、保水度が210〜450%の微細パルプ繊維3〜30重量%との混合物を抄紙してウェブを得たのち、このウェブに高圧ジェット水流を噴射して繊維どうしを機械的に交絡させ、しかる後に乾燥して得られるというものである。この不織布は、ウェットティッシュや掃除用ワイプス、おむつ、生理用ナプキン等の素材として使用することができるものであって、大量の水流によって容易に崩壊するというものでもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−78419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の不織布は、微細パルプ繊維を使用するものであって、湿潤状態において細かく叩解されて表面積が大きくなった微細パルプ繊維どうしは、それらが乾燥されるときに生じる水素結合が細かく叩解される前のパルプ繊維と比べて著しく増大して不織布の強度を向上させる一方、不織布を、硬くて柔軟性が乏しく、風合いの悪いものにするという傾向がある。また、この不織布は、抄紙工程と高圧ジェット水流の噴射工程とを経て製造されるものであるが、微細パルプ繊維は、これらの工程においてウェブから脱落し易いということや、ウェブに含まれる他の繊維と交絡することが難しいということがあり、不織布の製造が容易であるとはいい難い。
【0005】
そこで、この発明は、製造が容易であって、強度と柔軟性とを有する水解性不織布の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、互いに機械的に絡み合う繊維を含み、水中において撹拌されると前記絡み合う繊維が互いに分離することが可能である水解性不織布である。
【0007】
かかる水解性不織布において、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記繊維のうちの10〜50重量%が0.01〜0.5dtexの繊度と3〜10mmの繊維長とを有する極細の熱可塑性合成繊維によって占められている。前記繊維のうちの90〜50重量%は、1〜2dtexの繊度と5〜20mmの繊維長とを有する化学繊維および600〜770ccの濾水度を有するパルプ繊維のうちの少なくとも一方によって占められている。
【0008】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記極細の熱可塑性合成繊維が分割繊維を分割することによって形成されたものである。
【0009】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記水解性不織布が3〜10重量%の水溶性バインダを含むものである。
【0010】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記水解性不織布は、前記極細の熱可塑性合成繊維と、前記化学繊維および前記パルプ繊維の少なくとも一方とが水と混合されることによって形成されているスラリーから得られるウェブに高圧ジェット水流を噴射し、その後に前記ウェブを乾燥することによって得られたものである。
【0011】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記スラリーが水溶性バインダを含むものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る水解性不織布は、繊度が0.01〜0.5dtexで繊維長が3〜10mmの極細の熱可塑性合成繊維を使用して水解性不織布に含まれる繊維を互いに機械的に交絡させてあるので、水解性不織布は、その製造が容易であることに加えて、柔軟で引張強度の高いものになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】水解性不織布の製造工程の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る水解性不織布は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、痔疾パッド等の体液処理用品においての肌に当接させる表面シートや着衣に当接させる裏面シートとして使用したり、ドライワイプスやウエットワイプスとして使用したりすることに適したものであって、大量の水の中に投じられて撹拌されると複数の細片に分解することが可能なものである。かような水解性不織布は、0.15〜0.4mmの厚さと25〜60g/mの坪量とを有するものであって、0.01〜0.5dtexの繊度と3〜10mmの繊維長とを有する極細の熱可塑性合成繊維を10〜50重量%含んでいる。また、この不織布の90〜50重量%は1〜2dtexの繊度と5〜20mmの繊維長とを有する化学繊維および600〜770ccの濾水度を有するパルプ繊維のうちの少なくとも一方によって占められている。なお、この発明でいう熱可塑性合成繊維とは、押出し機を使用して溶融紡糸することのできる熱可塑性合成樹脂によって形成されている繊維を意味する。また、この発明でいう化学繊維には、熱可塑性合成繊維を含む合成繊維、半合成繊維、再生繊維が含まれる。半合成繊維の一例にはアセテート繊維があり、再生繊維の一例にはレーヨンがある。この発明に係る水解性不織布に含まれたこれらの繊維は、噴射される高圧ジェット水流の作用下に互いに機械的に交絡している。この水解性不織布はまた、その用途に応じて透液性を抑えたり引張強度を向上させたりするために水溶性バインダを含むことがあり、またそれとは反対に透液性や保液性を向上させるために親水化処理剤を含むことがある。
【0015】
図1は、この発明に係る水解性不織布の製造工程の一例を示す図であって、その水解性不織布には参照符号1が付してある。図1の工程は周知の抄紙工程を利用したものであって、第1ワイヤ部11、第2ワイヤ部12、第3ワイヤ部13、乾燥ドラム14、巻取機15を含んでいる。第1ワイヤ部11には、スラリー供給部16とジェット水噴射部17とが設けられている。スラリー供給部16では水解性不織布1を形成するための繊維混合物と水とを含むスラリー21が第1ワイヤ部11に供給されて、その繊維混合物によってウェブ22が形成される。ウェブ22は、噴射部17において機械方向(MD方向ともいう)に対する交差方向(CD方向ともいう)に複数のノズルがならぶノズル列18から高圧ジェット水を噴射されて、所要の噴射エネルギーの作用を受けてウェブ22に含まれる繊維どうしが機械的に交絡する。噴射部17には、噴射後の高圧ジェット水を吸引処理するためのサクションボックス19が設けられている。その後のウェブ22は、第2ワイヤ部12と第3ワイヤ部13とによって運ばれて、乾燥ドラム14の周面に載せられ、乾燥して水解性不織布1となり、巻取機15によって巻き取られる。
【0016】
かようにして得られる水解性不織布1が大量の水の中に投じられて撹拌されると、繊維どうしは機械的な交絡が解けて分離し、水解性不織布はいくつかの細片に分かれることが可能である。
【0017】
図1におけるスラリー21は、水解性不織布1を形成するための繊維混合物と水とが適宜の割合となるように、例えば繊維混合物の量が0.5〜1.5重量%となるように調整されている。その繊維混合物では、複数種類の繊維が水解性不織布1における各繊維の構成比率と同じ比率で混合されている。すなわち、水解性不織布1とスラリー21における繊維混合物は、0.01〜0.5dtexの繊度と3〜10mmの繊維長とを有する極細の熱可塑性合成繊維を10〜50重量%含んでいる。水解性不織布1とスラリー21とにおける繊維混合物はまた、(a)1〜2dtexの繊度と5〜20mmの繊維長とを有する化学繊維、および(b)叩解度の目安としての濾水度が600〜770ccであるパルプ繊維のうちの少なくとも一方を90〜50重量%含んでいる。
【0018】
水解性不織布1とスラリー21とに含まれる極細の熱可塑性合成繊維としては、例えば3.3dtexの繊度を有し11分割可能に形成されたポリエステルとナイロンとの市販の複合繊維を分割することによって得られるものを使用することができる。この複合繊維は、グラインダ等で機械的に処理することによって、約0.3dtexを有する11本の極細の熱可塑性合成繊維に分割することができる。また、3.3dtexの繊度を有し16分割可能に形成されたポリプロピレンとポリエステルとの市販の複合繊維を分割することによって得られる約0.21dtexを有する16本の極細の熱可塑性合成繊維を使用することもできる。これらの他に、繊度3.3dtexを有し16分割可能に形成されたポリエステルとナイロンとの市販の複合繊維を分割することによって得られる約0.21dtexの極細の熱可塑性合成繊維、繊度2.0dtexを有し16分割可能に形成されたポリプロピレンとポリエチレンとの市販の複合繊維を分割することによって得られる約0.13dtexの極細の熱可塑性合成繊維、繊度2.2dtexを有し8分割可能に形成されたポリエステルとポリエチレンとの市販の複合繊維を分割することによって得られる約0.28dtexの極細の熱可塑性合成繊維等を水解性不織布1に使用することができる。さらには、繊度が0.01〜0.51dtexの範囲にあり、繊維長が3〜10mmの範囲にあるメルトブローン繊維等の極細の熱可塑性合成繊維を使用することもできる。
【0019】
繊維長が3〜10mmの範囲にあるこれらの極細の熱可塑性合成繊維は、水解性不織布1を剛性の低い柔軟なものにすると同時に、乾燥時と湿潤時とにおける引張り強度の高いものにすることができる。この発明において、その剛性は、JIS L 1096に規定の剛軟性A法によって測定される値である。好ましい水解性不織布1は、それを製造するときの機械方向に平行な方向に長さ方向が一致している試験片とその機械方向に直交する交差方向に長さ方向が一致している試験片とについての剛性値の平均が80mm以下である。剛性値が80mmを越える不織布は、体液処理用品においての肌に当接させるシートとして使用した場合に、肌にフィットし難いという傾向があるので好ましいものではない。水解性不織布1の引張り強度は、幅25mm、長さ150mmの試験片について引張試験機のチャック間距離を100mmにセットし、引張速度を100mm/minにセットして引張ったときの破断強度を意味している。試験片は、その長さ方向を機械方向に一致させたものと交差方向に一致させたものとを用意し、それぞれの試験片について20℃、R.H.60%で24時間コンディショニングした後の強度をDRY強度とし、それぞれの試験片について重量の200%に相当するイオン交換水をスプレーして含浸させた後の強度をWET強度とした。好ましい水解性不織布1のDRY強度は、MD方向においてもCD方向においても、幅25mm当たりについて3.0N以上であり、WET強度は、MD方向においてもCD方向においても、幅25mm当たりについて2.0N以上である。
【0020】
この発明において、水解性不織布1の水解性の評価は次のように行われる。評価の方法には、目視観察法と分散率測定法とがある。目視観察法では、100×100mmの試験片について、100℃で2時間乾燥して乾燥重量(W)を求める。その後に、この試験片と蒸留水800mlとを縦型分液ロート振盪機(IWKI製SHKV−200)に入れて振盪速度240rpmで60分間振盪した後に、分液ロート内を目視観察する。この発明に係る水解性不織布1は、振盪後において原形をとどめない程度にまで分解しているか、少なくとも3つの細片となる程度にまで分解している。分散率測定法では、目視観察した分液ロート内の試験片と蒸留水とを2メッシュ(粒径1.5mm、目開き11.2mm、空間率77.8%)の金網でできた縦×横×高さ=100×100×120mmのかごに移し、かごの中に残った試験片を100℃で2時間乾燥して、乾燥重量(W)を求める。乾燥重量W,Wとから分散率を次式によって求める。
{(W−W)/W}×100=分散率(%)
【0021】
この発明に係る水解性不織布1は、50%以上の分散率を有するものである。
【0022】
繊維長が3〜10mmの範囲にある極細の熱可塑性合成繊維はまた、図1の工程においてスラリー21からウェブ22が形成されるときに、一方向へ規則的に配向することが少なく、またウェブ22における繊維と複雑に交絡することもないので、ウェブ22は繊維分布にむらのない均質なものになり易く、そのウェブから得られる水解性不織布1は、水解が容易なものになり易い。繊維長が10mmを越える極細の熱可塑性合成繊維は、均質なウェブ22を得ることの妨げになったり、水解が容易な水解性不織布1を得ることの妨げになったりすることがある。一方、繊維長が3mm未満の極細の熱可塑性合成繊維には、繊維どうしを交絡させることができないとか、第1ワイヤ11からの脱落が多いとかという難点がある。
【0023】
水解性不織布1における極細の熱可塑性合成繊維の量が50重量%を越えるようになるときの図1の工程のウェブ22は、濾水性が悪く、水解性不織布1の生産性が低下する原因となる。
【0024】
この発明において使用されるパルプ繊維は、水解性不織布1を吸液性のものや透液性のものにするために使用することができるものであるが、水解性不織布1を極力柔軟なものにするためや図1の工程におけるウェブ22に含まれているときに第1ワイヤ11から脱落することを防止するために、未叩解であるかまたは低叩解であることが好ましい。より具体的には、叩解度の目安として、JIS P 2181に準拠しカナディアンスタンダードフリーネステスタを使用して濾水度(フリーネス)を測定し、その値が600〜770ccの範囲にあるパルプ繊維を使用することが好ましい。そのようなパルプ繊維であっても、それを使用した水解性不織布1は密度が高くて高剛性のものになる傾向がある。パルプ繊維を含み比較的高い剛性を有する水解性不織布1は、ワイプスとして使用するのに好適である。
【実施例】
【0025】
図1の工程において、スラリー21に含まれる繊維混合物の組成と噴射部17の噴射条件とを変化させることによって、35g/mの坪量を有する実施例の水解性不織布と比較例の不織布とを得た。実施例の水解性不織布と比較例の不織布との組成、評価項目、評価方法および評価結果は、表1および以下に示すとおりである。
【0026】
【表1】

(表1における組成)
1.NBKPは、Nadelholz Bleached Kraft Pulpの略であり、針葉樹晒クラフトパルプを意味する。このパルプであって、カナディアンフリーネススタンダードフィルタを使用して測定したときの濾水度が720ccのものを実施例において使用し、400ccのものを比較例において使用した。
2.PETは、ポリエチレンテレフタレート繊維の略である。
3.分割繊維−1には、3.3dtexの繊度と5mmの繊維長とを有し、11分割可能に形成されたPET/ナイロンの複合繊維を分割することによって得られた約0.3dtexの極細の繊維を使用した。
4.分割繊維−2には、3.3dtexの繊度と5mmの繊維長とを有し、16分割可能に形成されたポリプロピレン/PETの複合繊維を分割することによって得られた約0.21dtexの繊維を使用した。
5.水溶性バインダには、スルホポリエステル樹脂(Eastman Chemical Company製AQ5SS)を使用した。
(図1および表1の噴射処理条件)
1.図1の噴射部17では、孔径95μの噴射ノズルが交差方向へ0.5mmのピッチで並ぶノズル列18を機械方向に4列配置した。
2.各ノズル列18の噴射処理条件は、次式によって求められる処理エネルギー量を変化させることによって調整した。その処理エネルギー量は、噴射圧力によって変化させた。
処理エネルギー量(kW/m
=1.63×噴射圧力(kg/cm)×噴射流量(m/min)/
処理速度(m/min)/60
噴射流量(m/min)
=750×オリフィス開孔総面積(m)×噴射圧力(kg/cm0.495
噴射ノズル:孔径95μ,ピッチ0.5mm
第1、第2、第3ワイヤ:日本フィルコン(株)製LL−70E
(表1における評価項目)
1.坪量
3枚の100×100mmの試験片について求めた坪量の平均値である。
2.厚さ
ダイアルシックネスゲージを使用し、3g/cmの測定圧で測定した3枚の試験片の厚さの平均値である。
3.密度
坪量と厚さとから計算した値である。
4.DRY強度
幅25mm、長さ150mmの試験片を20℃、R.H.60%で24時間調湿し、その試験片についてチャック間隔100mm、引張速度100mm/minで引張ったときの破断強度を示す。試験片は、その長さ方向を機械方向(MD)と交差方向(CD)とに一致させたものを3本ずつ用意し、各方向について3本の試験片の引張強度の平均値を求めた。この発明に係る水解性不織布のDRY強度はMD,CD両方向において、3kg以上であることが好ましい。
5.DRY伸度
DRY強度を測定したときの試験片の破断時における伸度の平均値を求めた。この発明に係る水解性不織布のDRY伸度は、MD,CD両方向において、10%以上であることが好ましい。
6.WET強度
試験片にその重量の200%に相当するイオン交換水をスプレーして含浸させた以外は、DRY強度の測定条件と同じ条件で引張強度を求めた。この発明に係る水解性不織布のWET強度は、MD,CD両方向において2kg以上であることが好ましい。
7.WET伸度
WET強度を測定したときの試験片の破断時における伸度の平均値を求めた。この発明に係る水解性不織布のWET伸度は、MD,CD両方向において20%以上であることが好ましい。
8.剛性
JIS L 1096のセクション8.19.1に規定の剛軟性A法(45度カンチレバー法)に準拠して測定した。試験結果は、長さ方向をMD方向に一致させた3枚の試験片の測定値と、長さ方向をCD方向に一致させた3枚の試験片の測定値とを平均した値である。
9.水解性
(目視観察法)
100×100mmの試験片1枚について、100℃で2時間乾燥して乾燥重量(W)を求める。乾燥後の試験片と蒸留水800mlとを縦型分液ロート振盪機(IWKI製SHKV−200)に入れて振盪速度240rpmで60分間振盪する。その後に、分液ロート内を観察し、試験片がその原形をとどめない程度に分解しているときを高度水解性(○印)、試験片が少なくとも3つの細片に分解しているか、目視によっては本数を数えることができない程度の本数に繊維が分離しているときを中程度水解性(△印)、試験片の分解が中程度水解性にまで及ばないときを難水解性(×印)と判断した。この発明に係る水解性不織布は高度水解性または中程度水解性を有している。
(分散率測定法)
目視観察した後の分液ロート内の試験片と蒸留水とを2メッシュ(粒径1.5mm、目開き11.2mm、空間率77.8%)の金網でできた縦×横×高さ=100×100×120mmのかごに移し、かごの中に残った試験片を100℃で2時間乾燥して、乾燥重量(W)を求める。この乾燥重量Wと、目視観察するときに求めた乾燥重量Wとから分散率を次式によって求める。
分散率(%)={(W−W)/W}×100
10.保液率
100×100mmの大きさのJIS P 3801に規定のろ紙を5枚重ね、その上に100×100mmの試験片(重量W)を載せる。試験片にはビュレットを使用して10mmの高さから、1ccの生理用食塩水を1cc/2秒の速度で滴下する。滴下してから30秒経過後の試験片の重量(W)を求め、次式によって保液率を算出する。
保液率(%)={(W−W)/W}×100
この発明に係る水解性不織布1は、パルプ繊維および/またはレーヨン繊維を含むことによって保液率が高くなる。保液率が20%よりも高い水解性不織布1は、ドライワイプスやウエットワイプスとして使用するのに好適なものである。
11.吸液時間
保液率の測定時に、生理用食塩水の滴下終了後、試験片の表面から生理用食塩水の水滴が消失するまでの時間を測定する。表1において、測定時間が1秒とあるのは、水滴の消失する時間が1秒以下であったことを意味している。
この発明に係る水解性不織布1は、吸液時間が3秒以下であるときに透液性の水解性不織布として体液処理用品に使用することが可能であり、水溶性バインダを含むことによって吸液時間が6〜8秒になるものは、難透液性の水解性不織布として体液処理用品に使用することが可能である。
12.拡散面積
保液率測定時に、生理用食塩水を滴下してから30秒経過後に、試験片表面において生理用食塩水がMD方向へ広がった寸法ML(mm)と、CD方向へ広がった寸法CL(mm)とを測定し、次式により拡散面積を求める。
拡散面積=ML×CL
この発明に係る水解性不織布1は、親水性繊維であるレーヨンおよび/またはパルプ繊維を含むことによって、拡散面積が大きくなる傾向にある。拡散面積が2000mmよりも大きな水解性不織布1は、ドライワイプスやウエットワイプスとして使用するのに好適なものである。拡散面積が1800mmよりも小さい水解性不織布1は、スポット吸収に優れた体液処理用品を作るのに好適なものである。
【0027】
(実施例1)
図1の工程のスラリーにおける繊維混合物として、極細の熱可塑性合成繊維である分割繊維−1を20重量%、繊度が1.1dtexの化学繊維であるレーヨン繊維を80重量%含むものを使用し、図1における噴射処理条件として0.0063kW/mの噴射エネルギーを有するノズル列を4列使用して、この繊維混合物と同一組成であって、35g/mの坪量と0.24mmの厚さとを有する水解性不織布を得た。この水解性不織布の評価結果は、表1のとおりであった。
【0028】
(実施例2)〜(実施例8)
実施例2〜実施例8においては、スラリーにおける繊維混合物の組成および水解性不織布としての繊維混合物の組成を実施例1に代えて表1のとおりとした以外は、実施例1と同様にして水解性不織布を得た。これら水解性不織布の評価結果は、表1のとおりであった。実施例2と実施例5との水解性不織布は、密度と剛性が比較的高いもので、吸液性のワイプスとして使用するのに好適である。
【0029】
(実施例9)
実施例1で使用したスラリーに水溶性バインダを添加して水解性不織布が8重量%の水溶性バインダを含む以外は、実施例1の水解性不織布と同様な組成を有する水解性不織布を得た。この水解性不織布の評価結果は表1のとおりであって、DRY強度とWET強度が高く、吸液時間が高いので、この水解性不織布は、体液処理用品における水解性の裏面材として使用するのに好適である。
【0030】
(比較例1)〜(比較例4)
これら比較例の不織布は、図1の工程のスラリーにおける繊維混合物の組成が実施例1における繊維混合物の組成と異なるもので、その組成においては実施例1と同様な条件で作られている。比較例1〜比較例4の不織布の評価結果は、表1のとおりである。
【0031】
(比較例5)〜(比較例6)
これら比較例の不織布は、噴射処理条件が実施例1のそれと異なるもので、それ以外においては実施例1と同様な条件で作られている。比較例5、比較例6の不織布の評価結果は、表1のとおりである。
【符号の説明】
【0032】
1 水解性不織布
21 スラリー
22 ウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに機械的に絡み合う繊維を含み、水中において撹拌されると前記絡み合う繊維が互いに分離することが可能である水解性不織布であって、
前記繊維のうちの10〜50重量%が0.01〜0.5dtexの繊度と3〜10mmの繊維長とを有する極細の熱可塑性合成繊維によって占められ、
前記繊維のうちの90〜50重量%が、1〜2dtexの繊度と5〜20mmの繊維長とを有する化学繊維および600〜770ccの濾水度を有するパルプ繊維のうちの少なくとも一方によって占められている、ことを特徴とする前記水解性不織布。
【請求項2】
前記極細の熱可塑性合成繊維が分割繊維を分割することによって形成されたものである請求項1記載の水解性不織布。
【請求項3】
前記水解性不織布が3〜10重量%の水溶性バインダを含むものである請求項1または2記載の水解性不織布。
【請求項4】
前記極細の熱可塑性合成繊維と、前記化学繊維および前記パルプ繊維の少なくとも一方とが水と混合されることによって形成されているスラリーから得られるウェブに高圧ジェット水流を噴射し、その後に前記ウェブを乾燥することによって得られたものである請求項1または2記載の水解性不織布。
【請求項5】
前記スラリーが水溶性バインダを含むものである請求項4記載の水解性不織布。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180510(P2010−180510A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26718(P2009−26718)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】