説明

水質分析計

【課題】
測定を長時間行っていない場合でも試薬流路に入った気泡を自動的に除去できるようにする。
【解決手段】
試薬が使用されていない時間を計時する時間カウンタ39を備え、時間カウンタ39による計時時間が予め定められた一定時間以上となった場合に、制御部24は測定動作に入る前に8ポートバルブ8、10とシリンジポンプ12を駆動させて各試薬の一定量を採取しドレイン用ポートから排出して試薬流路中の気泡を除去し、その後、測定動作に入る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工場や事業所などの排水、又は河川、湖沼、海洋などにおける環境水などに含まれる全有機態炭素、窒素化合物、リン化合物などの濃度を測定する水質分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
水質の汚染度を調べる水質分析計として、全有機態炭素(TOC)を測定するTOC計や、窒素化合物とリン化合物をともに分析する全窒素(TN)/全リン(TP)計がある。
【0003】
全窒素分析方法では全ての窒素化合物を硝酸イオンに変えて測定する。試料水中に存在する硝酸イオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオン又は有機態窒素などの全ての窒素化合物を硝酸イオンに変えるために、試料水に試薬として酸化剤であるアルカリ性ペルオキソ二硫酸カリウム溶液を加え、120℃で30分間加熱する。冷却後、試料液のpHを2〜3に調整し、波長220nmでの紫外線吸光度により硝酸イオンを測定している。
【0004】
全リン測定では全てのリン化合物をリン酸イオンに変えて測定する。試料水中に存在するリン酸イオン以外の加水分解性リンや有機態リンもリン酸イオンに変えるために、中性状態で試薬として酸化剤であるペルオキソ二硫酸カリウム溶液を添加し、120℃で30分間加熱する。リン酸イオンは特有の光吸収を持たないので、冷却後の試料液に試薬として発色剤であるモリブデン酸アンモニウム溶液とL−アスコルビン酸溶液を添加して発色させ、波長880nmでの吸光度よりリン酸イオンを測定している(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−48782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析を行うためには試薬を正確に計量する必要があるが、試薬流路に気泡が入ると試薬計量値が不正確になるため測定値に大きな影響がでる。停電などで測定を長期間行っていない場合には、配管の接合部やロータリーバルブの摺動面などから試薬流路に気泡が入ることがあるので、停電復帰後にそのまま測定を継続したときは測定値に影響がでることがある。そのため、測定を再開する前に作業者がメンテナンスを行い、試薬流路の気泡を除去する必要があった。
本発明は、測定を長時間行っていない場合でも試薬流路に入った気泡を自動的に除去できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流路を介して試薬を反応部に輸送する試薬供給機構と、試薬供給機構の駆動を制御して所定の試薬を反応部へ輸送させる制御部とを備え、反応部で試料と試薬を反応させて試料を分析する水質分析計であって、試薬が使用されていない時間を計時する時間カウンタをさらに備え、制御部は時間カウンタによる計時時間が予め定められた一定時間以上となった場合に試薬流路中の気泡を除去するために自動的に所定量の試薬を流す脱気部をさらに備えている。
時間カウンタは制御部が試薬供給機構の駆動を制御するときの信号によりリセットされるように構成することができる。
【発明の効果】
【0007】
水質分析計において試薬が使用されていない時間を計時して、その時間が一定時間以上となると試薬を自動的に流すことにより試薬流路中の気泡を除去するようにしたので、長時間測定を行っていない場合であっても、手動でメンテナンスなどを行わずに測定を開始することができる。
【0008】
時間カウンタは制御部が試薬供給機構の駆動を制御するときの信号によりリセットされるように構成しておけば、時間カウンタは試薬が使用されていない時間を確実に計時することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の水質分析計をTN/TP計に適用した概略構成図である。
2は試料水供給機構を兼ねた試薬供給機構であり、試料水や試薬の一定量を計量して採取し、酸化反応部であるリアクタ4に供給し、リアクタ4で酸化処理された試料を吸光度測定部6の測定セル6aへ導くためのものである。吸光度測定部6は酸化処理された試料水の吸光度を測定する。
【0010】
リアクタ4は、ペルオキソ二硫酸カリウム溶液32の添加された水溶液試料に紫外線を照射したり、加熱して酸化反応させることにより、試料水中の窒素化合物とリン化合物をそれぞれ硝酸イオンとリン酸イオンに酸化分解する。
【0011】
試薬供給機構2は、共通ポートと複数の分配ポートを備えた8ポートバルブ8、10と、8ポートバルブ8の共通ポートに接続されたシリンジポンプ12とで構成されており、8ポートバルブ10の共通ポートは連通管14を介して8ポートバルブ8の1つの分配ポートに接続されている。
【0012】
8ポートバルブ8のそれぞれの分配ポートには、試薬を供給するために、水酸化ナトリウム(NaOH)31につながる流路、ペルオキソ二硫酸カリウム溶液32につながる流路、pH値を調整するために添加する塩酸33につながる流路、硫酸34につながる流路、モリブデン酸アンモニウム溶液35につながる流路、L−アスコルビン酸溶液36につながる流路がそれぞれ接続され、残りの1つの分配ポートは気体導入・排出路として大気に開放されている。
【0013】
8ポートバルブ10のそれぞれの分配ポートには、プラントなどからオンラインで試料を採取するためのオンライン試料用の流路、試料容器などから試料を採取するためのオフライン試料用の流路、校正液37につながる流路、反応部4につながる流路、希釈水38につながる流路、吸光度測定部6の測定セル6aにつながる流路がそれぞれ接続され、残りのポートはドレイン用ポートとなっている。
【0014】
8ポートバルブ8、10は制御部24により動作が制御されるパルスモータ(図示略)によって駆動されることにより、それぞれの分配ポートのいずれかのポートがそれぞれの8ポートバルブの共通ポートに接続される。
【0015】
制御部24は吸光度測定部6の出力を入力し、TN濃度やTP濃度を算出する。また、制御部24は8ポートバルブ8、10及びシリンジポンプ12の動作を制御する。制御部24には、表示部25や時間カウンタ39、キーボード、レコーダ等(図示略)が接続されている。
【0016】
時間カウンタ39は制御部24が8ポートバルブ8、10又はシリンジポンプ12の駆動を制御するときの信号によりリセットされ、次にリセットされるまでの時間を試薬が使用されていない時間として計時する。計測された時間は制御部24に送られる。
【0017】
本発明における脱気部は制御部24により実現され、時間カウンタ39による計時時間が予め定められた一定時間以上となった場合に、8ポートバルブ8、10とシリンジポンプ12を駆動させて試薬流路中の気泡を除去するために自動的に所定量の試薬を流す。
【0018】
制御部24はこのTN/TP計の専用のコンピュータであってもよく、汎用のパーソナルコンピュータを接続して実現されたものであってもよい。
この実施例では時間カウンタ39は制御部24の外部に設けられたものを使用するが、制御部がもつ時計機能を用いて実現することもできる。
【0019】
この実施例におけるTN測定とTP測定の動作は特許文献1に記載されたものと同じであり、かつ本発明とは直接関係がないので説明は割愛する。
次に、この実施例において試薬流路中の気泡を自動的に除去する動作を図2のフローチャートを参照して説明する。
【0020】
制御部24は8ポートバルブ8、10とシリンジポンプ12を駆動させて測定やメンテナンスを行なう、その信号を時間カウンタ39に送る。
時間時間カウンタ39はその信号を受けるとリセットし、カウントを開始する。通常の測定動作が行なわれているときは、測定の度に時間時間カウンタ39のリセットが繰り返される。
【0021】
時間カウンタ39はリセットから次のリセットまでの時間が一定時間に達すると、制御部24に信号を送る。この一定時間は停電による中断などを検知するためのものであり、通常の測定が繰り返されている場合には到達しないような適当な時間に設定される。
【0022】
制御部24は測定を開始する前に、その一定時間が経過したことを示す信号が時間カウンタ39から届いていたか否かを確認し、届いていなければ測定動作に入る。
もしその信号が届いていた場合は、一定時間以上にわたって試薬流路に試薬が送られていなかったことになるので、制御部24は測定動作に入る前に8ポートバルブ8、10とシリンジポンプ12を駆動させて各試薬の一定量を採取し、8ポートバルブ8又は10のドレイン用ポートから排出した後、測定動作に入る。
【0023】
この脱気のために流す試薬量は適当に設定しておくことができ、例えば測定1回分の試薬量とすることもできる。測定時の試薬量と同量としておけば、この脱気のための動作プログラムが簡単なものとなる。
【0024】
実施例では測定対象が全窒素と全リンを測定するTN/TP計を例示しているが、本発明の水質分析計は試薬が一定時間にわたって試薬流路を流れなかった場合に脱気することをその要旨としているものであるので、測定対象には制約を受けない。したがって、TN計、TP計、全有機態炭素計など、他の水質分析計にも適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、全有機態炭素、窒素化合物やリン化合物を初めとして、試薬を使用する水質分析計に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】同実施例の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
2 試薬供給機構
12 シリンジポンプ
14 連通管
4 リアクタ
6 吸光度測定部
6a 測定セル
24 制御部
25 表示部
31 水酸化ナトリウム
32 ペルオキソ二硫酸カリウム溶液
33 塩酸
34 硫酸
35 モリブデン酸アンモニウム溶液
36 L−アスコルビン酸溶液
37 校正液
38 希釈水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を介して試薬を反応部に輸送する試薬供給機構と、前記試薬供給機構の駆動を制御して所定の試薬を反応部へ輸送させる制御部とを備え、前記反応部で試料と試薬を反応させて試料を分析する水質分析計において、
試薬が使用されていない時間を計時する時間カウンタをさらに備え、
前記制御部は前記時間カウンタによる計時時間が予め定められた一定時間以上となった場合に試薬流路中の気泡を除去するために自動的に所定量の試薬を流す脱気部をさらに備えた水質分析計。
【請求項2】
前記時間カウンタは前記制御部が前記試薬供給機構の駆動を制御するときの信号によりリセットされる請求項1に記載の水質分析計。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−86041(P2007−86041A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278788(P2005−278788)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】