説明

水質分析計

【課題】筐体サイズを極力抑えたコンパクトな水質分析計を提供する。
【解決手段】所定位置に装着された燃焼管5をその筒軸Aの延長方向に移動させたとき燃焼管5の通過を可能にする寸法及び形状を有する孔7または切欠き8を筐体4の周壁(筐体底42を含む)面に開設した。これにより、燃焼管5の着脱は上記孔7または切欠き8を通して行うことが可能となり、筐体4の内部に燃焼管5の着脱のためのスペースを設ける必要がなく、筐体4のサイズを小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水、下水、環境水、プラント用水、上水等に含まれる全有機体炭素量や全窒素量を測定する全有機体炭素計、全窒素計等の水質分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
全有機体炭素計(以下、TOC計と略記する)は、試料を燃焼管内で接触燃焼させて発生する二酸化炭素濃度を非分散赤外線吸光分析法で測定することにより試料中の有機体炭素の全量を求める分析装置である。また、全窒素計は、試料を燃焼管内で熱分解して発生する一酸化窒素濃度を化学発光分析法で測定することにより試料中の全窒素量を求める分析装置である。
以下、TOC計を例示して説明する。TOC計の流路構成及び動作原理については、例えば本願発明者の先願になる特許文献1に従来技術として詳述されているので、ここでは説明を省略する。
【0003】
図3に従来のオンライン水質分析用TOC計の装置構成の一例を示す。
同図に示す如く、本装置は分析計本体部でもある機構部1と分析信号を処理して表示記録する電気部2とが架台3上に架設されて構成される。
機構部1は、筐体4内にほぼ密閉状態で収納されて周囲の湿気や塵埃から保護されており、前面の扉41を開けば調整や点検を行うことができる。
【0004】
筐体4内のほぼ中央部に電気炉6が配置され、その中に酸化触媒(図示しない)が充填された石英ガラスから成る燃焼管5が鉛直に装着されている。この他、筐体4内部には、燃焼管5に検水その他の薬液を注入するバルブ機構や燃焼により発生する二酸化炭素濃度を測定する赤外線分析部など(いずれも図示せず)が配置されるが、これらは本発明の説明上、特に必要がないのでこの図では省略されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−318089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃焼管は触媒交換等のメンテナンスに際して電気炉から取り出す必要がある。図3の例では、燃焼管は電気炉から上方に向けて抜去し、また上方から挿入するが、このため電気炉の上方の筐体内部に少なくとも燃焼管の長さ(一例として400mm程度)に相当するスペースが必要となる。燃焼管を電気炉の下方に取り出す構成も可能であり、その場合、上方に取り出す場合と特に機能上の相違はないが、上記と同様に電気炉の下方の筺体内部に燃焼管の長さ相当のスペースが必要である。このため、いずれの場合も装置全体のサイズ(高さ)が大きくなり、材料コスト、運送コストの上昇を招くばかりでなく、設置スペース面で制約を受ける場合が増加することも問題であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、筐体サイズを極力抑えたコンパクトな水質分析計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、所定位置に装着された燃焼管をその筒軸の延長方向に移動させたときこの燃焼管の通過を可能にする寸法及び形状を有する孔または切欠きを前記筒軸の延長線が貫く筐体周壁面に開設した。
これにより、燃焼管の装脱は上記孔または切欠きを通して行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記のように構成されているので、筐体内部に燃焼管の装脱のためのスペースを設ける必要がなく、筐体サイズを小さくすることができる。その結果として、材料コスト、運送コストの削減が可能となり、さらに設置スペース面の制約も緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す図である。
【図3】従来の構成例を示す図である。
【実施例1】
【0011】
図1に本発明の一実施例を示す。同図に示す如く、本実施例装置は分析計本体部でもある機構部1と分析信号を処理して表示記録する電気部2とが架台3上に架設されて構成される。機構部1は、筐体4内にほぼ密閉状態で収納されて周囲の湿気や塵埃から保護されており、前面の扉41を開けば調整や点検を行うことができる。
筐体4内のほぼ中央部に電気炉6が配置され、その中に酸化触媒(図示しない)が充填された石英ガラスから成る燃焼管5が鉛直に装着されている。
【0012】
本実施例が図3に示す従来例と相違する主要な点は、電気炉6内に装着された燃焼管5の直下の筐体底42に燃焼管5の外径よりも大きい直径を有する円形の孔7を開設したことである。例えば、燃焼管5の外径が22mmの場合、孔7の直径は40mm程度とする。孔7を設けたことにより、触媒交換等のために燃焼管5を取り外す際は、矢印Bで示すように、孔7を通して筐体4の下方に抜き出し、また、逆に燃焼管5を装着する際も筐体4の下方から孔7を通して電気炉6内に挿入することができる。
【0013】
上記構成により、電気炉6の上方(または下方に)に燃焼管5を抜き出すためのスペースを設ける必要がなくなり、筐体4のサイズ(高さ)を小さくすることができる。数値例を示すと、従来は電気炉6の上端から筐体4の天井面まで約500mmの距離をあける必要があったが、本実施例ではこの距離をおよそ250mmに半減させることができる。
なお、孔7は、常時は塵埃や湿気の侵入を防ぐためにグロメットゴム(図示しない)等で塞いでおく。
【0014】
図1に示す実施例では孔7は円形であるが、その形状は円形に限らず、燃焼管5が通過できる形状であればよく、例えば四角形などでもよい。また、一般に孔7は、所定位置に装着された燃焼管5の筒軸Aの延長線が貫く筐体周壁(筐体底42、筐体側壁43を含む)面に開設すべきであり、例えば、燃焼管5が水平に設けられた装置の場合は、孔7は筐体側壁43に開設される。
【実施例2】
【0015】
図2に本発明の他の実施例を示す。同図に示す如く、本実施例装置は分析計本体部でもある機構部1と分析信号を処理して表示記録する電気部2とが架台3上に架設されて構成される。機構部1は、筐体4内にほぼ密閉状態で収納されて周囲の湿気や塵埃から保護されており、前面の扉41を開けば調整や点検を行うことができる。
筐体4内のほぼ中央部に電気炉6が配置され、その中に酸化触媒(図示しない)が充填された石英ガラスから成る燃焼管5が鉛直に装着されている。
【0016】
本実施例では、筐体4の底部を大きく切り欠いた切欠き8を設けると共に、この切欠き8を覆う開閉式の底蓋44を設けた。この構成により、扉41と底蓋44を開けば、燃焼管5の着脱は大きな切欠き8を通して矢印Bで示す方向に行うことができるので作業が容易であり、また、通常使用時は扉41と底蓋44を閉じておくことで筐体4内部をほぼ密閉状態に保つことができる。なお、Aは筒軸、43は筐体側壁である。
【0017】
以上、TOC計を例示して説明したが、本発明はこれに限らず全窒素計等にも適用できる。また、燃焼管5内では燃焼だけでなく熱分解反応も生じるが、その場合でも慣例的に「燃焼管」の呼称を用いるものとし、その呼称は管内で生じる反応を燃焼に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明はTOC計等の水質分析計に利用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 機構部
2 電気部
3 架台
4 筐体
5 燃焼管
6 電気炉
7 孔
8 切欠き
41 扉
42 筐体底
43 筐体側壁
44 底蓋
A 筒軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に設置された筒状の燃焼管内で試料を接触燃焼または熱分解させることにより発生するガスをガス濃度検出手段に導いてその濃度を測定する水質分析計において、前記燃焼管を所定の装着位置からその筒軸の延長方向に移動させたとき該燃焼管の直径より大きな径の通過孔または燃焼管の直径より大きな開口を形成できる切欠きを前記筒軸の延長線が貫く筐体周壁面に開設したことを特徴とする水質分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−27488(P2011−27488A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171808(P2009−171808)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】