説明

水質及び環境改善具

【課題】 第1金属と第2金属との接触境界部分が多く金属イオンを長期に亘って溶出させることができるとともに、製造コストの低減化が可能な水質及び環境改善具の提供
【解決手段】 イオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属である酸化した鉄材1とイオン化傾向の小さい又は/及び電気陰性度の高い方の第2金属として還元材である炭素材2とを混合して還元炉で還元鉄を製造する工程において還元途中の炭素分がある程度残留している段階で還元工程を中止して得られた還元鉄を、塊状又は粒状に砕いた状態の物3とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、池、湖、プール、河川、海等の水中に没することでこれらの水中に金属イオンを溶出させて水質を改善する水質及び環境改善具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水質改善具として特許文献1に記載の技術が公知になっている。
この従来の技術は、イオン化傾向又は/及び電気陰性度の異なる2種類の異種金属(例えば、イオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属として鉄と、イオン化傾向の小さい又は/及び電気陰性度の高い方の第2金属として炭素)を互いに密着させると共に、該2種類の異種金属の接触境界部分が水と接触する状態で露出形成されている構成とすることにより水中において該接触境界部分で局部電池が形成されてイオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属(例えば鉄)が酸化する際に水中に金属イオン(例えば鉄イオン)を溶出させて水に所定の機能を付加する水質及び環境改善具であって、2種類の異種金属のうちの一方の金属に対し、もう一方の金属がねじ込まれることにより2種類の異種金属が互いに密着され、2種類の金属のいずれか一方又は両方に、もう一方の金属とのねじ込み接触部分まで到達する複数の貫通孔が形成されることにより、2種類の異種金属の接触境界部分が貫通孔の底部においても形成され、これにより、金属イオンの溶出量を多くすることができるようにしたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−098352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来例の水質及び環境改善具にあっては、2種類の異種金属の接触境界部分が少なく、また、接触境界部分におけるイオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属(例えば鉄)が酸化して金属イオンを溶出することで、第1金属と第2金属とが接触不良状態に陥るため、金属イオンを長期に亘って溶出することができないという問題があった。
また、両金属の加工が面倒であるため、コストが高くつくという問題もあった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、第1金属と第2金属との接触境界部分が多く金属イオンを長期に亘って溶出させることができるとともに、製造コストの低減化が可能な水質及び環境改善具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、
イオン化傾向又は/及び電気陰性度の異なる2種類の異種金属を互いに密着させると共に該2種類の異種金属の接触境界部分が水と接触する状態で露出形成されている構成とすることにより水中において該接触境界部分で局部電池が形成されてイオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の金属が酸化する際に水中に金属イオンを溶出させて水に所定の機能を付加する水質及び環境改善具であって、
前記イオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属である酸化した鉄材とイオン化傾向の小さい又は/及び電気陰性度の高い方の第2金属として還元材である炭素材とを混合して還元炉で還元鉄を製造する工程において還元途中の炭素分がある程度残留している段階で得られた粗還元鉄を、塊状又は粒状に砕いた状態の物であることを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、
請求項1に記載の水質及び環境改善具において、
前記塊状又は粒状に砕いた状態のものが通水性を有する収容容器に収容されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明では、上述のように、イオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属である酸化した鉄材とイオン化傾向の小さい又は/及び電気陰性度の高い方の第2金属として還元材である炭素材とを混合して還元炉で還元鉄を製造する工程において還元途中の炭素分がある程度残っている時点で得られた粗還元鉄を、塊状又は粒状に砕いた状態の物とした。
このように、鉄材として製鉄所などででる副産物である既酸化の鉄のミルスケールを用いることができるので、材料コストを低減することができる。
【0009】
また、還元鉄の製造工程の途中までで良いため、製造が簡単で制作費を低減することができる。
また、還元鉄の製造工程において鉄材と炭素材とが互いに結合した状態となるため、鉄材と炭素材との接触境界部分が多くなり、したがって、金属イオンの溶出効率が高まるとともに、金属イオンを長期に亘って溶出させることができるようになるという効果が得られる。
【0010】
また、イオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属として鉄(Fe)を用いることにより、二価鉄イオン(Fe2+)が溶出される。
すなわち、鉄(Fe)と炭素(C)の接触部分を無数に形成維持したり、密着部を無限に形成したFe/Cの混合混在物を液中に存置すると、Fe−Cの接触部(密着部)において、水(媒体)を介してFeとCの電気陰性度差による局部電位差の電池が生まれ、Fe側からC側へFeの電子eが流れてFeはeを失って、酸化すると、Fe2+となって媒体の水中へ溶出する。
そして水中に溶出したこの二価鉄イオン(Fe2+)の一部は、水中に溶存する化学物質で栄養塩類その他と結合して鉄の複合塩類を作る。例えば栄養塩類のリン酸や硝酸及び二酸化炭素が溶けてできる炭酸及びその他の塩類は鉄の化合物塩類を作り、溶存化学物質を減容し沈殿して水中底質の微生物及び植物の肥料、養分として供給することができる。
一方、結合しなかったFe2+(水溶性のまま)は、水中の動物、植物や植物プランクトンなどの生き物の必須ミネラルとして吸収される。これにより、食物連鎖など生物循環を活性化する効果が得られる。
なお、鉄も炭素も地球自然を構成する主な物質であるので安全性にも優れる。
【0011】
請求項2記載の発明では、上述のように、塊状又は粒状に砕いた状態のものが通水性を有する収容容器に収容されることにより、川底や海底などに散在させる以外に、浮きに吊したり、杭状の中空収容容器内に収容して定置網、養殖用海苔網などの漁業用網や養殖イカダを定置固定し、波浪と潮流などから網やイカダを守る杭あるいは錘として使用することができるようになるなど、使用用途を広げることができる。
また、収容容器に収容することにより、流れの早い場所での移動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の水質及び環境改善具を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、この実施例1の水質及び環境改善具は、イオン化傾向又は/及び電気陰性度の異なる2種類の異種金属を互いに密着させると共に該2種類の異種金属の接触境界部分が水と接触する状態で露出形成されている構成とすることにより水中において該接触境界部分で局部電池が形成されてイオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の金属が酸化する際に水中に金属イオンを溶出させて水に所定の機能を付加する水質及び環境改善具であって、図1に示すように、イオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属である酸化した鉄材1とイオン化傾向の小さい又は/及び電気陰性度の高い方の第2金属として還元材である炭素材2とを混合して還元炉で還元鉄を製造する工程において還元途中の炭素分がある程度残留している段階得られた粗還元鉄を、塊状又は粒状に砕いた状態の物3とした。
【0015】
炭素材3としては、石炭、ピッチなどを使ったコークス、人造黒鉛、天然黒鉛などが用いられる。
【0016】
さらに詳述すると、粗還元鉄を、塊状又は粒状に砕いた状態のもの3を、通水性を有する収容容器(図示を省略)に収容した状態で用いるようにしてもよい。
通水性を有する収容容器としては、その材料、形状、大きさなど任意であり、例えば、材料として多数の通水孔を有するものあるいは加工したものであれば、紙管、樹脂製パイプ、不織布袋、麻袋などを用いることができる。
【0017】
次に、この実施例1の作用・効果を説明する。
この実施例1の水質改善材にあっては、上述のように、イオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属である酸化した鉄材1とイオン化傾向の小さい又は/及び電気陰性度の高い方の第2金属として還元材である炭素材2とを混合して還元炉で還元鉄を製造する工程において還元途中の炭素分がある程度残っている時点で得られた粗還元鉄を、塊状又は粒状に砕いた状態の物3とした。
このように、鉄材1として製鉄所などででる副産物である既酸化の鉄のミルスケールを用いることができるので、リサイクルになって材料コストを低減することができる。
また、還元鉄の製造工程の途中までで良いため、製造が簡単で制作費を低減することができる。
【0018】
また、還元鉄の製造工程において鉄材1と炭素材2とが互いに結合した状態となるため、鉄材1と炭素材2との接触境界部分が多くなり、したがって、金属イオンの溶出効率が高まるとともに、金属イオンを長期に亘って溶出させることができるようになるという効果が得られる。
【0019】
また、イオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属として鉄(Fe)を用いることにより、二価鉄イオン(Fe2+)が溶出される。
すなわち、鉄(Fe)と炭素(C)の接触部分を無数に形成維持したり、密着部を無限に形成したFe/Cの混合混在物を液中に存置すると、Fe−Cの接触部(密着部)において、水(媒体)を介してFeとCの電気陰性度差による局部電位差の電池が生まれ、Fe側からC側へFeの電子eが流れてFeはeを失って、酸化すると、Fe2+となって媒体の水中へ溶出する。
そして水中に溶出したこの二価鉄イオン(Fe2+)の一部は、水中に溶存する化学物質で栄養塩類その他と結合して鉄の複合塩類を作る。例えば栄養塩類のリン酸や硝酸及びに酸化炭素が溶けてできる炭酸及びその他塩類は鉄の化合物塩類を作り、溶存化学物質を減容し沈殿して水中底質の微生物及び植物の肥料、養分として供給することができる。
一方、結合しなかったFe2+(水溶性のまま)は、水中の動物、植物や植物プランクトンなどの生き物の必須ミネラルとして吸収される。これにより、食物連鎖など生物循環を活性化する効果が得られる。
なお、鉄も炭素も地球自然を構成する主な物質であるので安全性にも優れる。
【0020】
また、塊状又は粒状に砕いた状態の物3が通水性を有する収容容器に収容されることにより、川底や海底などに散在させる以外に、浮きに吊したり、杭状の中空収容容器内に収容して定置網、養殖用海苔網などの漁業用網や養殖イカダを定置固定し、波浪と潮流などから網やイカダを守る杭あるいは錘として使用することができるようになるなど、使用用途を広げることができる。
また、収容容器に収容することにより、流れの早い場所での移動を防止することができる。
【0021】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0022】
例えば、実施例では、塊状又は粒状に砕いた状態の物3が通水性を有する収容容器に収容するようにしたが、塊状又は粒状に砕いた状態の物3をそのまま川底や海底に散在させたり、あるいは腐植土を混在させるようにしてもよい。
【0023】
また、収容容器内にゼオライト、珪藻土及び植物を炭化した木炭、竹炭、もみ殻炭その他ポーラス物体を混合混在させることにより、水中の不純物を吸着させるという付加価値が得られる。
【符号の説明】
【0024】
1 鉄材
2 炭素材
3 塊状又は粒状に砕いた状態の物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化傾向又は/及び電気陰性度の異なる2種類の異種金属を互いに密着させると共に該2種類の異種金属の接触境界部分が水と接触する状態で露出形成されている構成とすることにより水中において該接触境界部分で局部電池が形成されてイオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の金属が酸化する際に水中に金属イオンを溶出させて水に所定の機能を付加する水質及び環境改善具であって、
前記イオン化傾向の大きい又は/及び電気陰性度の低い方の第1金属である酸化した鉄材とイオン化傾向の小さい又は/及び電気陰性度の高い方の第2金属として還元材である炭素材とを混合して還元炉で還元鉄を製造する工程において還元途中の炭素分がある程度残留している段階で還元工程を中止して得られた還元鉄を、塊状又は粒状に砕いた状態の物であることを特徴とする水質及び環境改善具。
を特徴とする水質及び環境改善具。
【請求項2】
請求項1に記載の水質及び環境改善具において、
前記塊状又は粒状に砕いた状態のものが通水性を有する収容容器に収容されていることを特徴とする水質及び環境改善具。

【図1】
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【公開番号】特開2013−81901(P2013−81901A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223576(P2011−223576)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(593035696)
【Fターム(参考)】