説明

水質改善具および水質改善方法

【課題】水槽、タンク、貯水池、魚介類養殖場等の水質を効果的に改善することのできる水質改善具と、これを使用する水質改善方法を提供する。
【解決手段】内外に通ずる複数の通孔を有し、その内部にゼオライト粒子を充填保持することのできる多孔質容器と、該多孔質容器の上部に連結具を介して連結された浮きとを備え、内部にゼオライト粒子を充填した前記多孔質容器を水中に沈めたとき、前記浮きの一部が水面上にあって、前記多孔質容器を水中で浮遊状態で保持するように構成されている水質改善具。この水質改善具を、不純物、放射性物質等の有害物質を含む水を貯めた貯水池、タンク等の内部に浮遊させることにより、水中に含まれる有害物質を多孔質容器内のゼオライトに吸着させて除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽、貯水池、魚介類の養殖場、原子炉用冷却水タンク等の水質を改善するために使用するに適した水質改善具、およびそれを用いる水質改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水槽、タンク、貯水池、魚介類の養殖場等の水質を改善する方法として、従来最も広く採用されてきた方法は、水をポンプで強制的に循環させつつろ過する方法である。この方法は、水中に浮遊する藻や異物を除去するには適しているが、水に溶け込んでいる不純物等の有害物質を除去することはできなかった。これを改善するものとして、水を活性炭や天然ゼオライトに接触させて、有害物質を吸着除去する方法が開発されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
上記活性炭やゼオライトを用いて水に含まれる有害物質を吸着除去する従来の方法は、水中に溶け込んでいる有害物質を効果的に除去できる点では優れているが、貯水されている水をゼオライト等に効率よく接触させることができなかった。上記特許文献1に記載のものは、多孔質容器内にゼオライト等を入れたものを河川等に投入して、水流で転動させながら有害物質を吸着除去するものであるが、大量の水のほんの一部しか処理することができないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−340482
【0005】
【特許文献2】特開2000−197890
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、特許文献2に記載のものは、水を流通させるための装置と動力を必要とするので、コストが高くつくという問題点がある。これらの方法以外に、天然ゼオライトの塊を貯水池の底に投入しておく方法も試みられているが、この方法では、ゼオライトに接触した水は浄化されるものの、貯水池全体の水質を改善することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、比較的簡単な構造で、水槽、タンク、貯水池、魚介類養殖場等の水質を効果的に改善することのできる水質改善具と、これを使用する水質改善方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、請求項1に記載の本発明にかかる水質改善具は、内外に通ずる複数の通孔を有し、その内部にゼオライト粒子を充填保持することのできる多孔質容器と、該多孔質容器の上部に連結具を介して連結された浮きとを備え、内部にゼオライト粒子を充填した前記多孔質容器を水中に沈めたとき、前記浮きの一部が水面上にあって、前記多孔質容器を水中で浮遊状態で保持するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の水質改善具は、多孔質容器の外周部に通孔として細長いスリットが設けられているものである。請求項3に記載の水質改善具は、多孔質容器が編籠で構成されているものである。
【0010】
さらに、請求項4に記載の水質改善具は、多孔質容器の底部に、必要に応じて内部の粒子を放出することのできる開口が設けられるとともに、該開口を覆蓋する開閉自在な蓋が設けられているものである。また、請求項5に記載の水質改善具は、多孔質容器の下側に柔軟な紐体で繋がれた重りが設けられていることを特徴としている。
【0011】
つぎに、請求項6に記載の水質改善方法は、不純物、放射性物質等の有害物質を含む水を貯めた貯水池、タンク等の内部に請求項1乃至5のいずれかに記載の水質改善具を入れて浮遊させることにより、水中に含まれる有害物質を多孔質容器内のゼオライトに吸着させて除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この水質改善具は、多孔質容器内にゼオライト粒子を充填し、水中に入れて使用するが、浮きの浮力により、多孔質容器は水中に没した状態で浮遊する。浮きは多孔質容器の上方に連結具で連結されているので、当該浮きの上部は水面上に浮いた状態となり、ゼオライトを充填した多孔質容器は、その重みで水中に浮遊した状態となる。
【0013】
有害物質等を含む水は、この多孔質容器に充填されているゼオライトと接触することにより、溶解している不純物や有害物質が吸着除去される。この水質改善具の多孔質容器は、浮きが水面上に浮遊しているので、僅かな水流や風があっても浮遊し、当該浮遊によってゼオライトが常に新たな水と接触し、効果的な浄化が行われる。
【0014】
前記連結具の長さを調節可能としておけば、ゼオライトを入れた多孔質容器の深さを任意に調節できるので効果的である。浮遊深さの異なる複数の水質改善具を配置しておくと、きわめて効果的である。なお、連結具としては、ある程度の剛性を有するプラスチック、金属等で作られた細長いパイプや棒を使用すればよいが、場合によっては、連結具としてフレキシブルな紐状物を用いることもできる。
【0015】
多孔質容器としては、内外に連通する多数の通孔を有するものであればよい。その通孔の形状、寸法は、内部の粒子が大量に流出することがなく、水が自由に流入できるようなものであればよい。この多孔質容器は、請求項2に記載のような多数のスリットを形成した筒体、請求項3に記載のような網籠でつくられたものが実用的であるが、これらに限らす、例えば多数の円形又は角型の穴を形成した筒体等が使用できる。
【0016】
さらに、請求項4に記載のように、多孔質容器の底部に開閉自在な開口を設けておき、常時は該開口を蓋で閉じて内容物がこぼれないようにしておけば、必要により該開口を開いて内部の粒子を外部に放出でき、粒子の交換や水中への放出等を容易に行うことができるので便利である。また、請求項5に記載の発明のように、多孔質容器の下側に柔軟な紐体を介して重りを繋いでおけば、当該重りを水底に沈めることにより、アンカーの効果が得られ、多孔質容器の浮遊範囲を所定の範囲に限定することができる。
【0017】
つぎに、請求項6に記載の水質改善法によれば、不純物等の有害物質を吸着するゼオライトに効果的に接触させることができるので、有害物質を含む水を効果的に浄化できる。有害物質としては、水に溶ける種々の不純物のほか、放射性物質に対しても効果的である。例えば、セシウム等の放射性物質が溶解した水を容れた回収タンク内で、水に溶解した放射性物質を効果的に吸着除去することができるので、原子炉用冷却水の水質改善にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を表す外観図である。
【図2】その使用方法の説明図である。
【図3】上記と異なる実施形態の説明図である。
【図4】さらに異なる実施形態の説明図である。
【図5】浮遊範囲を規制する実施形態の説明図である。
【図6】多孔質容器に開閉式の開口を設けた実施形態であり、(a)は正面図、(b)は下面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について具体的に説明する。図1は本発明の水質改善具を例示するもので、この水質改善具1は、多孔質容器2と浮き3を備えてなる。
【0020】
多孔質容器2は、図1の図示例では金網(プラスチック製の網でもよい)4を円筒状に成形した網籠として形成されている。この多孔質容器2の底部には開口が形成されるとともに、底蓋6が取り付けられている。また、多孔質容器2の上端部にはキャップ7が取り付けられている。これら底蓋6とキャップ7は、金属、プラスチック、木材等適当な強度を有する材料で作られている。
【0021】
多孔質容器2のキャップ7には、棒状乃至パイプ状の連結具9が取り付けられており、この連結具9の上端部に中空成形体からなる浮き3が取り付けられている。なお、図1の図示例では、連結具9がねじ棒として形成され、そのねじ部9aを多孔質容器2のキャップ7に設けたねじ穴7aに螺合することにより、その延出長を調節可能に取り付けられる。このように、浮き3と多孔質容器2の間隔を調節可能としておくと、この間隔を好ましい値に調節することにより、任意の深さに多孔質容器2を沈めることができ、水質改善対象水深を広範囲にすることができるので好ましい。連結具9の有効長さ(浮き3と多孔質容器2の間隔)を調整可能とする方法としては、上記ねじ式に限らず、他の適当な方法を採用することができる。なお、場合によっては、連結具9をキャップに固定しておいてもよい。
【0022】
浮き3は、内部にゼオライト粒子5を充填した多孔質容器を水没した状態で浮遊可能に保持できるものであればよく、プラスチック、ガラス、金属等で作られた中空体をこの浮き3として採用することができる。図示例では、浮き3が魚の形に成形されているが、水草、船等、他の適当な形状とすることができる。単なる中空の球体としておいてもよいことは言うまでもない。なお、場合によっては、浮き3の全体が水没した状態で多孔質容器2を保持するようにしてもよい。このようにしても多孔質容器2を水中で浮遊させることは可能である。
【0023】
図2は、この水質改善具1の使用法を表すもので、図示例の水質改善具1は、水槽10の水質浄化用に使用されている。多孔質容器2の内部には、ゼオライト粒子5が充填されている。
【0024】
このゼオライト粒子5は、適当な粒度範囲を持つもので、例えば外径が+1mmのもの、+5mm、+10mm、+20mmのものを適当な比率で混合したものが好ましい。粒度が大きすぎると、比表面積が低減するので、吸着効率が悪くなる。逆に、細かすぎると、充填量(重量)が少なくなり、かつ寿命も短くなりやすい。
【0025】
上記多孔質容器2の目(隙間)dは、内部に充填されている細かい粒子が漏出しない程度の細かいものとするが、水の流通に支障をきたさない程度としておくべきである。なお、細かい粒子は、多孔質容器2の隙間dを通って外部へ漏出するが、この粒子が天然ゼオライトである場合は、魚が食べても害にならず、むしろ健康を促進すると期待される。
【0026】
この水質改善具1は、水流があれば貯められている水の中で自由に浮遊する。図示例の水槽では、魚が泳いでいるので、特別の動力を付与しなくても魚の移動による水流によって浮遊させることができる。この浮遊によって、多孔質容器2内のゼオライトが常に新たな水と接触し、溜められている水の大部分を浄化することができるのである。この場合、図2に示すように、多孔質容器2の深さ(棒状連結具の長さ)が異なる複数の水質改善具を併用すれば、対流等による水の循環がなくても、広範囲なレベルの水を浄化できるのである。
【0027】
つぎに、図3は上記と若干異なる実施形態を表すもので、この水質改善具1(B)は、多孔質容器2がプラスチック等の適当な材質で成形された円筒となっており、その外周部に多数の円形の通孔h,・・・が穿設されている。この通孔hも、内部のゼオライト粒子が漏出せず、しかも水の内外への流通が効果的に行われるような大きさに形成されている。
【0028】
図4はさらに異なる実施形態を表すもので、この実施形態では、多孔質容器2の通孔が細長いスリットsとして形成されている。上下複数段のスリット群の境界部には、角型乃至円形の通孔h,・・・が設けられている。スリットsの幅も粒子が漏出しない大きさである。なお、この実施形態では、浮き3の上部が水面を浮遊する水草の形状に成形されている。浮き3にこのような意匠を施しておくと、貯水池等で使用する場合に目障りになりにくいという利点がある。
【0029】
図5は、クルマエビ等の魚介類の養殖場や貯水池等で使用するに適した大型の水質改善具を例示するもので、この水質改善具1(C)の底部には、貯水池等の底に沈められている重り(アンカー)20が柔軟な紐体(ロープ、チェーン等)21で繋がれている。紐体21の長さは、多孔質容器2が所定の範囲内で自由に水平移動できる長さである。このようにしておくと、水質改善具が風力や一定方向の水流の作用を受けて貯水池や養殖池等のコーナー部や辺に押し付けられ、効果的な浄化ができなくなるというような問題を防止できる。また、複数の水質改善具1,・・・を適当な間隔は配置で入れておくことにより、貯水池等の全体にわたって万遍なく浄化できるという利点もある。
【0030】
本発明におけるゼオライトは、ゼオライト一般を対象としている。すなわち、天然ゼオライトでもよく、人工の合成ゼオライトでもよい。要は所望の有害物質を吸着除去できるものであればよい。なかでは、天然ゼオライトが好ましい。天然ゼオライトは、多孔質で物質吸着能に優れていることや、陽イオン交換能に優れている等の特性により、有害物質の吸着に使用されるもので、化学的に合成されたものではないので、環境を損なうおそれもない。天延ゼオライトには複数種があるが、本発明の用途には、モルでナイト系の高純度ゼオライトが好ましい。
【0031】
上記のような用途において、長時間使用したゼオライトは吸着能が飽和し、効果的な浄化が行われにくくなる。このような場合は、多孔質容器2内のゼオライトを新しいものと交換すればよい。この場合、長時間使用したゼオライトは、貯水池等の底に沈めてしまうのが効果的である。このようにすると、水底部の更なる浄化を期待できる。
【0032】
図6は、上記使用済みゼオライトの排出を容易にした実施形態を表す。この実施形態は、多孔質容器2の底部に開口30を設け、当該開口を開閉する蓋31を設けたもので、必要に応じて容器2の底を開閉できるようになっている。図示例では、蓋31がそれぞれ蝶番33によって上下回動自在に取り付けられた概略半円形の二つの部材32,32から構成されている。これら二つの蓋部材32,32には、切欠き32aがそれぞれ形成され、蓋の開状態では、その中央部に長穴34が形成されるようになっている。
【0033】
一方、上記浮き3を多孔質容器2に連結する棒状連結具9は、該容器2の底部に達する長さに形成され、その下端部にフック35が取り付けられている。このフック35は、前記蓋部材32,32の長穴34に嵌合する形状となっていて、この長穴34を通して蓋31の下側へ突出させることができるようになっている。
【0034】
蓋31の下側へ突出したフック35を、前記棒状連結具9の軸回りに適当な角度(例えば90度程度)だけ回転させることにより、フック35が長穴34と交差した状態となり、該長穴を通り抜けられなくなる結果、当該フックによって蓋31が閉状態で保持されるのである。
【0035】
この状態から棒状連結具9を回転させ、フック35が長穴34に沿う位置に復帰させると、当該長穴34をフック35が通過可能となるので、蓋部材32,32が重力で下向きに回動し、多孔質容器2の底が開放される。これにより、内部のゼオライト粒子が重力により落下放出される。このように、浮き3の操作により、多孔質容器2の底が解放されるようにしておけば、実用上便利である。
【0036】
なお、開閉式蓋の構造や、これを開閉する機構は、上記実施形態に限らず、種々の構造を採用することができる。例えば、上記実施形態では、棒状連結具9を軸回りに回転することにより、蓋の開閉を行うようになっているが、棒状連結具9を多孔質容器2に対し牽引又は押圧することにより、蓋の開閉を行うようにしてもよい。場合によっては、このような棒状連結具9による開閉操作機構を採用せず、例えば蓋を多孔質容器本体にねじで螺着する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 水質改善具
2 多孔質容器
3 浮き
4 網
5 ゼオライト
6 底蓋
7 キャップ
9 連結具
30 開口
31 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外に通ずる複数の通孔を有し、その内部にゼオライト粒子を充填保持することのできる多孔質容器と、該多孔質容器の上部に連結具を介して連結された浮きとを備え、内部にゼオライト粒子を充填した前記多孔質容器を水中に沈めたとき、前記浮きの一部が水面上にあって、前記多孔質容器を水中で浮遊状態で保持するように構成されていることを特徴とする水質改善具。
【請求項2】
多孔質容器の通孔が、複数の細長いスリットである請求項1に記載の水質改善具。
【請求項3】
多孔質容器が網籠で構成されている請求項1又は2に記載の水質改善具。
【請求項4】
多孔質容器の底部に、必要に応じて内部の粒子を放出することのできる開口が設けられるとともに、該開口を覆蓋する開閉自在な蓋が設けられている請求項1乃至3に記載の水質改善具。
【請求項5】
多孔質容器の下側に柔軟な紐体で繋がれた重りが設けられている請求項1乃至4のいずれかに記載の水質改善具。
【請求項6】
不純物、放射性物質等の有害物質を含む水を貯めた貯水池、タンク等の内部に請求項1乃至5のいずれかに記載の水質改善具を入れて浮遊させることにより、水中に含まれる有害物質を多孔質容器内のゼオライトに吸着させて除去することを特徴とする水質改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−17978(P2013−17978A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155439(P2011−155439)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(511172025)
【出願人】(511172047)
【Fターム(参考)】